説明

分離処理用の充填材の製造方法

【課題】 充填材を浸漬・撹拌などのバッチ方式で洗浄するのではなく、充填材に溶剤を流通させて洗浄することにより、障害となるような不純物を実質的に含まない充填材を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 流路中に配置させた未洗浄の充填材からなる充填材層に対し、前記充填材層の上流側から洗浄液を流入させるとともに下流側から前記洗浄液を流出させることにより、前記未洗浄の充填材を洗浄して充填材とすることを特徴とする分離処理用の充填材の製造方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、クロマトグラフィー用カラムや固相抽出用カートリッジに用いられる分離処理用の充填材の製造方法、充填材、クロマトグラフィー用カラム、固相抽出用カートリッジ、および処理対象物質の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体中からの試料の抽出には液体吸収法が、また液体中からの試料の抽出には液−液抽出法が多く用いられてきたが、これらの方法は、作業が繁雑で時間と経験を要すること、溶媒を多量に使用することなどの問題があった。これに対して、液体クロマトグラフィーの原理を応用して開発された固相抽出法は、作業が簡単なうえに短時間ですみ、しかも溶媒の使用量が少ないという特長を持っており、近年頻繁に採用されるようになっている。
【0003】
固相抽出法が近年急速に浸透したことの背景には、吸脱着性能のよい多孔性粒子が開発され、それらが固相抽出用吸着剤として複数のメーカーから市場に提供されるようになったことが挙げられる。固相抽出用吸着剤としては、液体クロマトグラフィーに使用されるものと機能的に類似したものが多く、例えば官能基を導入したシリカゲル粒子、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などのポリマー粒子、活性炭やカーボングラファイトのような炭素粒子などの他、最近では、種々の合成繊維を焼成・賦活処理して作られる活性炭素繊維やカラム内重合(希釈剤存在下での塊状重合)により形成したロッド状の多孔質連続体(モノリス)など、様々な形態のものがあり、用途に応じて適切なものが選ばれてる。
【0004】
また、近年、種類及び量が著しく増加している化学物質に関して環境汚染状況の把握の要求が強まり、より微量の成分を検出する必要が生じている。それに伴い、精製や濃縮に使用される分析用充填材には、分析を妨害する溶出不純物がより少ない清浄なものが求められるようになってきている。充填材の製造過程における洗浄方法は、従来、温水や有機溶媒を用いて充填材を数回に渡って繰り返し洗浄する所謂バッチ法が用いられてきた(特許文献1)。より具体的には、洗浄液に充填材を懸濁させてから撹拌し、その後に洗浄液を濾別過して取り除く一連の操作を繰り返す方法(特許文献2)や、洗浄液に充填材を懸濁させる際に超音波を加え、その後、撹拌及び洗浄液の濾別を繰り返し行う方法(特許文献3)などが挙げられる。
【0005】
更に、気体または液体中に存在する極微量の化学物質を効率よく精製・濃縮・分析・分取するための用具として、シリカゲル粒子、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などのポリマー粒子、活性炭やカーボングラファイトなどを充填したディスクやカラム、カートリッジなどがある。通常、これらの充填材には、原料や製造工程等に由来する不純物が含まれており、その不純物が目的物質の検出、分取を妨害することがある。そのため、あらかじめ充填材を十分に洗浄しておくことが必要となる。従来の洗浄方法としては、適当な容器中で水、湯、有機溶媒などの液に未洗浄の充填材を浸漬、撹拌、分散、超音波処理等行った後、液と充填材を濾別するなどがある。
【特許文献1】特開2004−271522号公報
【特許文献2】特開平7−260762号公報
【特許文献3】特開2004−99790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3に記載のバッチ方式による洗浄法では、洗浄回数を増やす毎に清浄度は高まるが、操作上の手間がかかるうえ、理論上溶出不純物がゼロになることはなく、近年求められるようになってきた清浄度のレベルに十分応えることができなくなってきた。
【0007】
また、ディスク、カラム、カートリッジ等に充填された充填材を洗浄する場合も特許文献1〜3における課題と同様に、繰り返し行ったとしても不純物がゼロになることはなく、精製・濃縮・分析・分取の際に障害となり、とくに精製・濃縮を目的とした固相抽出用の用具などで、使用前の洗浄操作が充分に行えない場合などは大きな問題が生じるおそれがあった。
【0008】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、気体または液体中に存在する極微量の化学物質を効率よく精製・濃縮・分析・分取するため、それら目的物質の分析の障害となる不純物が少ない分離処理用の充填材の製造方法、充填材、クロマトグラフィー用カラム、固相抽出用カートリッジ、および処理対象物質の処理方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、充填材を浸漬・撹拌などのバッチ方式で洗浄するのではなく、充填材に溶剤を流通させて洗浄することにより、障害となるような不純物を実質的に含まない充填材を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の(1)〜(13)の構成からなる。
【0010】
(1) 流路中に配置させた未洗浄の充填材からなる充填材層に対し、前記充填材層の上流側から洗浄液を流入させるとともに下流側から前記洗浄液を流出させることにより、前記未洗浄の充填材を洗浄して充填材とすることを特徴とする分離処理用の充填材の製造方法。
(2) 前記充填材がクロマトグラフィー用充填材であることを特徴とする前項(1)に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
(3) 前記未洗浄の充填材をクロマトグラフィー用カラムに充填して前記充填材層を形成することを特徴とする前項(2)に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
(4) 前記充填材が固相抽出用充填材であることを特徴とする前項(1)に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
(5) 前記未洗浄の充填材を固相抽出用カートリッジに充填して前記充填材層を形成することを特徴とする前項(4)に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
(6) 前記洗浄液が、前記充填材を膨潤させるものであることを特徴とする前項(1)〜(5)のいずれかに記載の分離処理用の充填材の製造方法。
(7) 前記充填材が、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、オクタデシル基を化学結合させたシリカゲル、ジビニルベンゼン−エチレンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体、ジビニルベンゼン−グリセリンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体、活性炭、のいずれかであることを特徴とする前項(1)〜(6)のいずれかに記載の分離処理用の充填材の製造方法。
(8) 前項(1)〜(7)のいずれかに記載の充填材の製造方法によって製造されたことを特徴とする分離処理用の充填材。
(9) 前項(8)に記載の分離処理用の充填材が充填されてなることを特徴とするクロマトグラフィー分析用カラム。
(10) 前項(8)に記載の分離処理用の充填材が充填されてなることを特徴とするクロマトグラフィー分取用カラム。
(11) 前項(8)に記載の分離処理用の充填材が充填された固相抽出用カートリッジ。
(12) 処理対象物質が含有された液体若しくは気体試料を、前項(9)または前項(10)に記載のカラムまたは前項(11)に記載のカートリッジに流通させて、前記処理対象物質を前記液体または気体試料から分離することを特徴とする処理対象物質の処理方法。
(13) 前記処理対象物質が、環境汚染物質、ダイオキシン類、環境ホルモン、農薬、界面活性剤、生物毒素、天然薬物、天然色素、天然香料、及び天然調味料よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする前項(12)に記載の処理対象物質の処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法により、溶出する不純物が極めて少ない分離処理用の充填材を得ることができ、その充填材をクロマトグラフィーカラムや固相抽出カートリッジに用いることで、気体中または液体中に含まれる極微量の化合物、例えば環境ホルモン、化学汚染物質、生物毒素、農薬、医薬などの精製・濃縮・分析・分取が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1及び図2には、本実施形態の分離処理用の充填材(以下「充填材」とする)の製造方法を説明するための工程図を示す。尚、図1は、洗浄液を下向流で流す場合の工程図の一例であり、図2は、洗浄液を上向流で流す場合の工程図の一例である。
図1および図2に示すように、本実施形態の充填材の製造方法は、未洗浄の充填材からなる充填材層6に対し、充填材層6の上流側から洗浄液3を流入させるとともに下流側から洗浄液3を流出させることにより、未洗浄の充填材を洗浄して充填材とする、というものである。また、本発明に係る充填材の洗浄工程は、特に限定されるものではなく目的に応じてどの段階でいつ行っても良いが、不純物除去という目的の観点から充填材の製造工程の終盤において行うことが好ましい。
【0013】
本実施形態における充填材としては、シリカゲル粒子、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ジビニルベンゼン−エチレンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体、ジビニルベンゼン−グリセリンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体などのポリマー粒子、活性炭やカーボングラファイト、またはそれらを骨格として様々な官能基の付与、表面処理、薬品の含浸等の操作を施したものなどを提示できる。
また、ここで「未洗浄の充填材」とは、洗浄液による洗浄を行う前の充填材を指す。具体的には、未洗浄のシリカゲル粒子とは、例えばシリカゲルの焼成工程後のシリカゲル粒子を指し、未洗浄のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体等の共重合体とは、重合反応工程に付随する通常の洗浄工程を経たものを指す。活性炭、グラファイトの場合には、充填材用に成形、選別したもので、特に洗浄されていないものをいう。
【0014】
図1及び図2において、充填材槽4の形状はとくに制限されるものではないが、槽内を均一に溶剤が流れるように留意したものが必要である。通液時の圧力に耐えられる強度を持つと同時に、洗浄時に不要な成分を溶出しない材質であることが望ましく、図1及び図2に示すようにガラス、ステンレスなどからなる筒型容器等が好適である。洗浄時に気泡の混入があると偏流が生じ、効率的な洗浄が行えないが、ガラス容器の場合は、目視での確認も可能である。また、一般的に溶剤の液温が高いほうが洗浄効率は良くなるため、充填材槽4に保温ジャケットを付けるのも良い。また、この充填材槽4の内部には、洗浄液を流通させるとともに充填材を充填するための流路4aが設けられている。
【0015】
未洗浄の充填材は、気泡が混入しないように洗浄液3とともに充填材槽4の流路4aに流し込まれ、洗浄工程中に漏れ出ないように保持材5a、5bによって保持されている。このようにして充填材層6が形成されている。また、保持材5a、5bは、充填材層6を保持すると同時に洗浄液3を均一に通液させうるもので、かつ洗浄時に不要な成分を溶出しないものが選択される。例えば、ポリエチレンの粒子やガラス粒子、金属粒子などを焼結して厚さ0.5〜3mm程度に成形したものや紙やガラス繊維でできたフィルターが用いられるが、必要がなければ用いなくても良い。
【0016】
洗浄液3は、目的により選択される。水溶性の不純物を除去する場合は、冷水、温水などが用いられる。非水溶性の不純物を除去する場合は、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ヘキサン、等の有機溶媒が用いられる。これらの洗浄液3は単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。また、異なる洗浄液3で連続して洗浄操作を行うこともできる。洗浄液3は、充填材粒子の表面を洗浄するだけでなく、充填材粒子の細孔内部まで効率的に洗浄できるよう、充填材を膨潤させるものが好適に用いられる。ただし、充填材そのものを溶解してしまうものであってはならない。例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体は架橋構造を持つため、テトラヒドロフラン(THF)に溶解されることなく膨潤する一方、同共重合体に含まれる未反応のスチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー、重合開始剤の分解物などはTHFに溶解して洗浄液3と共に洗い流される。また、充填材の種類や除去したい不純物成分によっては、洗浄液3に塩類を加えたり、洗浄液3のpHを調整したりすることもできる。
【0017】
洗浄液3の通液方向は、通常、上向流か下向流で行われるが、目的により選択される。通常は、図2に示すように均一な流路を妨げる気泡を排除するために上向流が好ましい。一方、除去したい成分の比重が洗浄液3より大きい場合や、2種類の洗浄液を順次流して洗浄する際に先に流す洗浄液の比重が後に流す洗浄液の比重より大きい場合等は、図1に示すような下向流の方が効率が良い。
【0018】
図1に示すように、洗浄液3を下向流で流す場合には、充填材槽4よりも高い位置に洗浄液槽1を設置し、洗浄液槽1に貯留されている洗浄液3を充填材槽4に流下させる。この場合、充填材層6の上端側が上流6a側となり、下端側が下流側6bとなる。洗浄液3は充填材層6を通過して上流6a側から下流6b側に至り、その後、充填材槽4から排出される。洗浄液槽1の下端及び充填材槽4の下端にはそれぞれ流量調整コック2a、2bが取り付けられており、流量調整コック2a、2bによって充填材層6に対する通液速度が制御される。尚、洗浄液3を流下させる場合、自然に流下させても良く、洗浄液槽1内の洗浄液3をポンプ等により加圧して加圧流下させても良い。
【0019】
一方、図2に示すように、洗浄液3を上向流で流す場合には、定量ポンプ7等の送液手段を用いて、洗浄液3を充填材槽4の下側から上側に流通させる。定量ポンプ7の下流側には洗浄液3を貯留する洗浄液槽11が備えられており、洗浄液3が定量ポンプ7によって充填材槽4に送液されるようになっている。この場合、充填材層6の下端側が上流6a側となり、上端側が下流側6bとなる。洗浄液3は充填材層6を通過して上流6a側から下流6b側に至り、その後、充填材槽4から排出される。充填材層6に対する洗浄液3の通液速度は、定量ポンプ7の送液量により調整される。また、定量ポンプを使用せず、洗浄液槽11を充填材槽4より高い位置に配置することによっても同様の操作を行うことができる。
【0020】
洗浄液3の通液速度は、洗浄対象の充填材の性状や粒径、除去したい不純物成分の溶解性などにより左右されるが、遅すぎると工程時間が長くかかり好ましくなく、速過ぎると洗浄効率が下がるため必要となる洗浄液3の量が増して好ましくない。空間速度(SV)で0.1〜5となるように設定するのが良い。好ましくは0.2〜2であり、より好ましくは0.25〜1の範囲である。
【0021】
また、十分な洗浄に必要な洗浄液3の量は、バッチ方式より効率が良くなるため従来の方法に比べ削減できる。洗浄する充填材の性状や粒径、除去したい不純物成分の溶解性などにより左右されるが、充填材層6の容積の0.5〜30倍量で良く、好ましくは1〜20倍量で、より好ましくは2〜10倍量である。洗浄液量が少ないと不純物の除去が不完全となるので好ましくなく、洗浄液量が多いと工程時間が長くかかり好ましくない。
【0022】
洗浄が終了した充填材は、通常は乾燥させる。この場合、充填材槽4から充填材を取りだして乾燥しても良いが、充填材を充填材槽4に入れたままで充填材槽4に清浄な窒素や空気を通気させて乾燥させるのが効率的で良い。このようにして分離処理用の充填材が製造される。
【0023】
上記の洗浄工程を経て製造された充填材は、特に限定はないが用途に応じてディスクやカラム、カートリッジなどに小分け、再充填し、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、GPC等のクロマトグラフィー用分析カラム、クロマトグラフィー用分取カラム、固相抽出カートリッジとし、目的化合物の精製・濃縮・分析・分取用具として用いることができる。図3に一例としてカートリッジに充填した化合物精製・濃縮用具を示す。
【0024】
また、上記の洗浄工程を経て製造された充填材は、処理対象物質が含有された液体若しくは気体試料等から、処理対象物質を分離して処理する際に好適に用いられる。即ち、本実施形態の充填材が充填されてなるディスク、カラム、カートリッジに液体若しくは気体試料等を流通させることにより、処理対象物質を充填材に吸着させるか、あるいは液体または気体試料中の共存物質を充填材に吸着させ、処理対象物質を流出させることにより、分離処理を行うことができる。
【0025】
上記の分離処理の方法についてより具体的に説明すると、充填材が充填されてなるディスク、カラム、カートリッジ等に液体若しくは気体試料等を流通させ、処理対象物質の測定を妨害する物質を吸着させることによって処理対象物質を精製したり、処理対象物質を充填材に一旦吸着させた後、溶媒で溶出させることによって処理対象物質を精製・濃縮したり、処理対象物質をその他の共存物質と分離したうえで適当な検出器を用いて定量したり、処理対象物質を分取したりする。具体例として、固相抽出カートリッジを用いた環境汚染物質の捕捉・濃縮が挙げられる。このように本実施形態の処理方法によれば、処理対象物質を精製、濃縮、分析、分取するために好適に用いることができる。
【0026】
なお、固相抽出カートリッジを用いた処理対象物質の精製・濃縮の場合は、充填材と、その充填材両端に充填材を保持する流体透過板とを樹脂製などの容器に充填して作製したカートリッジを用いることができるが、一般的には使い捨てであり、使用の前に充分な時間をかけて洗浄操作を行うことはしない。通常、そのまま使用するか、使用の前に少量の有機溶媒を通液する程度であるため、充填材に少量でも不純物が含まれている場合、精製・濃縮した液中にその不純物が混入し、その後の分析等に障害を及ぼすことが少なくない。したがって、実質的に不純物を含まないように製造された本発明の充填材を用いた用具は極めて有用である。
【0027】
本実施形態における処理対象物質としては、環境水、底質または大気中に存在するダイオキシン類、環境ホルモン、生物毒素、農薬など、動植物の体液または組織中に存在する化合物である医薬、農薬、界面活性剤、ホルモン、神経伝達物質、ビタミン及びそれらの代謝物など、また、天然物に含まれている化合物である天然薬物、天然色素、天然香料、天然調味料など、からなる群より選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。
【0028】
また、処理対象物質を含む液体または気体試料としては、雨水、河川水、湖沼水、上水、下水、工場廃水、海水のような環境水;尿、血液などの体液またはそれらからの分離液や抽出液;植物または動物の組織からの抽出液;焼却炉排気ガス、各種製造設備排気ガス、室内空気、自動車排気ガス、幹線道路上空捕集大気のような環境大気またはそれらを通気させて得られる吸収液などが挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
市販の大気用固相抽出カートリッジのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体充填材(Waters社製Sep-Pak PS Air):10gにアセトン40mlを加えてスラリー状とし、ガラスカラム(容積50ml)に気泡ができないように静かに流し込んだ。図2の装置で高速液体クロマトグラフィー用のポンプを用いてアセトンを上向流で空間速度(SV)=0.34(注入速度:10ml/hr)で室温にて21時間通液した後、アセトンを抜き取り、活性炭カラムを通した窒素を100ml/minで12時間通気乾燥した。その後、充填材をステンレス皿に取り出して60℃で12時間の減圧乾燥を行った。この操作で使用したアセトンは約250mlであった。取得した洗浄充填材1gを容器に取り、10mlのアセトンで緩やかに撹拌しながら15分程度抽出を行った。抽出した液に窒素を緩やかに吹付けて1mlまで濃縮した。未洗浄の充填材も同様の抽出、濃縮操作を行い、両者のGC/MSスペクトルのトータルイオンクロマトグラムを比較したところ、未洗浄の充填材の抽出液からは多数のピーク(図4)が検出されたが、洗浄した充填材の抽出液ではほとんどのピークがみられなかった(図5)。
【0030】
(GC−MS分析条件)
キャリアーガス:ヘリウム 2.0mL/min コンスタントフロー
分析カラム:J&W DB−5 60m×0.25mm 250μm
カラム昇温条件:50℃、0min→20℃/min→180℃、0min→ 2℃/min→280℃
測定法:SCANモード
測定イオン:188(モノクロルPCBの定量イオン)
【0031】
「比較例1」
実施例1と同じ市販の大気用固相抽出カートリッジのスチレン−ジビニルベンゼン共重合体充填材10gにアセトン50mlを加え、時々撹拌しながら4時間程度浸漬した後、濾別した。この操作を5回行った後、実施例1と同様に乾燥し、未洗浄の充填材抽出液のGC/MSスペクトルピークと比較したところ、まだ多数のピークが残存していた(図6)。
【0032】
以上のように、本発明の充填材の製造方法によれば、充填材に含まれる不純物量を大幅に低減させることができ、気体中または液体中に含まれる極微量の化合物、例えば環境ホルモン、化学汚染物質、生物毒素、農薬、医薬などの精製・濃縮・分析・分取を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の充填材洗浄方法の一例である自然滴下を利用した装置の概要図である。
【図2】図2は、本発明の充填材洗浄方法の一例である定量ポンプを利用した装置の概要図である。
【図3】図3は、本発明の化合物精製・濃縮用具の一例であるカートリッジの概要図である。
【図4】図4は、未洗浄充填材のアセトン抽出液のトータルイオンクロマトグラムである。
【図5】図5は、本発明の洗浄操作を行った実施例の充填材のアセトン抽出液のトータルイオンクロマトグラムである。
【図6】図6は、比較例として洗浄操作を行った充填材のアセトン抽出液のトータルイオンクロマトグラムである。
【符号の説明】
【0034】
1…洗浄液槽、2a、2b…流量調整コック、3…洗浄液、4…充填材槽、5a、5b…保持材、6…充填材層(充填材)、7…定量ポンプ、8a、8b…流体透過板、9…カートリッジ(固相抽出用カートリッジ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路中に配置させた未洗浄の充填材からなる充填材層に対し、前記充填材層の上流側から洗浄液を流入させるとともに下流側から前記洗浄液を流出させることにより、前記未洗浄の充填材を洗浄して充填材とすることを特徴とする分離処理用の充填材の製造方法。
【請求項2】
前記充填材がクロマトグラフィー用充填材であることを特徴とする請求項1に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
【請求項3】
前記未洗浄の充填材をクロマトグラフィー用カラムに充填して前記充填材層を形成することを特徴とする請求項2に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
【請求項4】
前記充填材が固相抽出用充填材であることを特徴とする請求項1に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
【請求項5】
前記未洗浄の充填材を固相抽出用カートリッジに充填して前記充填材層を形成することを特徴とする請求項4に記載の分離処理用の充填材の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄液が、前記充填材を膨潤させるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分離処理用の充填材の製造方法。
【請求項7】
前記充填材が、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、オクタデシル基を化学結合させたシリカゲル、ジビニルベンゼン−エチレンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体、ジビニルベンゼン−グリセリンジメタクリレート−N−ビニルアセトアミド3元共重合体、活性炭、のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の分離処理用の充填材の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の充填材の製造方法によって製造されたことを特徴とする分離処理用の充填材。
【請求項9】
請求項8に記載の分離処理用の充填材が充填されてなることを特徴とするクロマトグラフィー分析用カラム。
【請求項10】
請求項8に記載の分離処理用の充填材が充填されてなることを特徴とするクロマトグラフィー分取用カラム。
【請求項11】
請求項8に記載の分離処理用の充填材が充填された固相抽出用カートリッジ。
【請求項12】
処理対象物質が含有された液体若しくは気体試料を、請求項9または請求項10に記載のカラムまたは請求項11に記載のカートリッジに流通させて、前記処理対象物質を前記液体または気体試料から分離することを特徴とする処理対象物質の処理方法。
【請求項13】
前記処理対象物質が、環境汚染物質、ダイオキシン類、環境ホルモン、農薬、界面活性剤、生物毒素、天然薬物、天然色素、天然香料、及び天然調味料よりなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項12に記載の処理対象物質の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−349356(P2006−349356A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172200(P2005−172200)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】