説明

分離型ドレッシング

【課題】水相部と油相部との分離が良好であって、且つ食する際に風味のバラツキを感じさせない分離型ドレッシング、及びかかる分離型ドレッシングを製造するための油脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物は、乳化剤が0.02〜1.2質量%配合されていることを特徴とする。本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物をドレッシングの製造に使用すると、油相部に水相部の風味が付与されるので、食する際に風味のバラツキを感じさせない分離型ドレッシングが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離型ドレッシング用油脂組成物及び分離型ドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
ドレッシングには、乳化型と分離型とがある。乳化型はクリーミーな食感と風味とが特徴であるのに対し、分離型はあっさりとした風味を有する。分離型は、水相部と油相部とからなり、使用する際に強く振盪し均一な乳化状態にした後、サラダ等にかけて食する。
【0003】
ところが、分離型は、使用前に乳化状態にしたとしても、すぐにその状態が壊れて水相部と油相部とに分離してしまうため、食する際には水相部と油相部とを別々に口にすることになる。風味成分は、水相部には溶解しているが油相部には溶解していないため、油相部を口にしても風味が感じられず、一口毎に風味のバラツキがあった。そのため、振盪後の乳化状態を維持させる試みが種々、なされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ショ糖脂肪酸エステルを配合してなる分離型ドレッシングが開示されている。これによれば、ショ糖脂肪酸エステルの有する乳化特性を利用することで、振盪後の乳化状態を一定時間維持できる。
【特許文献1】特開昭53−101574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分離型ドレッシングは、本来あっさりとした風味を有するのが特徴であり、特許文献1のように乳化状態を持続させるものはクリーミーであるため、好ましくない。また、時間が経つにつれて、水相部と油相部とが分離した本来の形態に戻るため、経時的に安定した風味を感じることはできなかった。
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水相部と油相部との分離が良好であり、且つ食する際に風味のバラツキを感じさせない分離型ドレッシングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ある一定量の乳化剤と油脂とを含む油脂組成物を分離型ドレッシングの製造に使用することにより、乳化することなく、油相部に水相部の風味を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物は、乳化剤が0.02〜1.2質量%配合されていることを特徴とする。本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物では、乳化剤は、HLB1〜9であることが好ましく、また、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。さらに、乳化剤の配合量は、0.1/(EHLB1/2〜3/(EHLB1/2質量%(EHLBは、乳化剤のHLBを示す。)であることが好ましく、乳化剤を構成する脂肪酸残基の50質量%以上が不飽和脂肪酸残基であることが好ましい。
【0009】
そして、本発明の分離型ドレッシングは、油脂と乳化剤とが98.8:1.2〜99.98:0.02の割合で配合されていることを特徴とする。そしてさらに、本発明の方法は、油脂と乳化剤とを98.8:1.2〜99.98:0.02の割合で配合することにより、分離型ドレッシングの油相部に水相部の風味を付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分離型ドレッシングの水相部と油相部との良好な分離を維持しつつ、油相部に水相部の風味を付与することができる。したがって、水相部と油相部との両方から風味がもたらされるので、水相部と油相部とのどちらを口に入れた場合であっても、風味を感じることができ、風味のバラツキがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0012】
本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物は、乳化剤が0.02〜1.2質量%配合されていることを特徴とする。本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物では、分離型ドレッシングの水相部と油相部との分離を維持しつつ、油相部に水相部の風味を付与するために、油脂と乳化剤とがかかる割合で配合されている。
【0013】
ここで、分離型ドレッシング用油脂組成物とは、分離型ドレッシングの油相部を構成するものである。一般的に、分離型ドレッシングは、水相部と油相部とからなる。水相部は、水分を主体とし、これに必要に応じて水溶解性の或いは水分散性の原料を配合したものから構成される。主な構成原料としては、食酢、醗酵原料、香味原料等が挙げられる。また、油相部は、油脂を主体とし、これに必要に応じて油溶解性の或いは油分散性の原料を配合したものから構成される。本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物は、水相部に相当するものと合わせることで、簡単に分離型ドレッシングを調製することができる。
【0014】
本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物では、油脂は、食用であれば特に限定されるものではなく、植物由来であるか、動物由来であるか、また、合成品であるかも問わない。例えば、大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、コーン油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、紅花油、高オレイン酸紅花油、とうもろこし油、綿実油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、オリーブ油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂、魚脂、アザラシ脂、藻類脂、品質改良によって低飽和化されたこれらの油脂及びこれらの水素添加油脂、グリセリンと脂肪酸のエステル化油、エステル交換油、分別油脂等が挙げられる。また、遺伝子組換えの技術を用いて品種改良した植物、例えば、大豆、菜種、コーン、ヤシ、パーム、オリーブ、亜麻仁、ひまわり、紅花、つばき、綿実等から抽出したものであってもよい。さらに、かかる油脂を1種類、又は2種類以上の組み合わせの形態で使用してもよい。
【0015】
本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物では、乳化剤は、特に限定されるものではなく、食品添加物として用いられる全ての乳化剤を使用することができる。例えばショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。また、HLBは、1〜9であることが好ましく、より好ましくは2〜9、さらに好ましくは4〜9である。HLBが9以下であると、水に溶けにくい性質が水に溶けやすい性質よりも強いため、油脂への乳化剤の溶解性が増すとともに風味成分が油相部に移行しやすくなる。なお、ここでいう「HLB」とは、最終的に使用する乳化剤全体のHLBであり、複数の乳化剤を使用する場合には、それらの乳化剤のHLBを加重平均して求めたものである。
【0016】
さらに、乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。本発明において、グリセリン脂肪酸エステルとは、第7版 食品添加物公定書(日本食品添加物協会)に記載されているグリセリン脂肪酸エステルであり、脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンのエステル及びその誘導体である。グリセリンの部分エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、グリセリン酢酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が挙げられる。中でも、ポリグリセリン脂肪酸エステルは風味が良好であるという点において好ましい。
【0017】
本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物では、乳化剤の配合量は、0.02〜1.2質量%である。かかる範囲の配合量では、ドレッシングを振っても水相部と油相部とを良好に分離することができ、また、水相部の風味成分を油相部に溶け込ませることができる。さらに、乳化剤の不快な臭いを感じることがない。なお、上限は1.0質量%以下が好ましく、下限は0.03質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましい。
【0018】
さらに、乳化剤の配合量は、0.1/(EHLB1/2〜3/(EHLB1/2質量%(EHLBは、乳化剤のHLBを示す。)であることが好ましい。かかる範囲では、ドレッシングを振ってもすばやく分離することができ、また、水相部の風味成分を油相部に溶け込ませることができる。なお、HLBが高い乳化剤の場合には乳化しやすいので、上限は2/(EHLB1/2質量%以下が好ましく、1/(EHLB1/2質量%以下がより好ましい。
【0019】
本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物では、乳化剤を構成する脂肪酸残基の50質量%以上が不飽和脂肪酸残基であることが好ましい。ドレッシングは冷蔵保管されるため、耐冷性のある乳化剤を配合することが好ましい。したがって、かかる乳化剤を構成する脂肪酸残基は、不飽和脂肪酸残基が多い方が好ましく、50質量%以上であれば、耐冷性が向上し、ドレッシングを冷蔵保管しても乳化剤が結晶化しにくい。ここで、脂肪酸残基とは、脂肪酸からカルボキシル基のOHを取った基である。不飽和脂肪酸は、特に限定されないが、炭素数16〜22の脂肪酸が好ましく、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、中でもオレイン酸を多く含む乳化剤は耐冷性と乳化剤の酸化安定性とが良好であり好ましい。
【0020】
なお、本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物は、後述する実施例にて記載の方法により製造できるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の分離型ドレッシングでは、油脂と乳化剤とが98.8:1.2〜99.98:0.02の割合で配合されていることを特徴とし、好ましくは、98.8:1.2〜99.97:0.03であり、より好ましくは、99.0:1.0〜99.9:0.1である。油脂と乳化剤とが98.8:1.2〜99.98:0.02の割合で配合されていると、すばやく水相部と油相部とを良好に分離することができ、また、水相部の風味成分を油相部に溶け込ませることができる。そのため、食する際に油相部と水相部とのどちらか一方のみを口にしても、水相部からも油相部からも風味がもたらされるので、風味のバランスが良い。
【0022】
本発明の分離型ドレッシングは、主としてサラダ料理類に使用される分離液状の調味料であり、水相部と油相部とからなる。そして、風味に応じて、和風ドレッシング、中華ドレッシング、フレンチドレッシング、イタリアンドレッシング、醤油ドレッシング、ゴマ風味ドレッシング等に分類される。水相部に使用される成分は、主として食酢、醗酵原料、香味原料であり、油相部に使用される成分は油脂であり、上述の本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物に使用するものと同様である。
【0023】
食酢には合成酢と穀類又は果実を酢酸発酵させた醸造酢がある。穀物酢としては、米酢、かす酢、黒酢、モルト酢、玄米酢等が挙げられる。果実酢としては、りんご酢、ワインビネガーやバルサミコ酢等のブドウ酢等が挙げられる。醗酵原料とは、微生物又は酵素の作用による醗酵法を利用して生産された原料であり、例えば、米酢、穀物酢、果実酢等の食酢、ワイン、清酒、梅酒等の酒類、醤油、味噌、みりん、みりん風調味料、ヨーグルト、チーズ、発酵乳、納豆、キムチ、コチジャン、トウバンジャン、テンメンジャン、漁醤等が挙げられる。香味原料とは、香辛料、香味野菜、ハーブ、その他を含み、その風味は特に香味が重視される性質を持ち、例えば、胡椒、パプリカ、バジル、ディル、ローズマリー、クミン、タラゴン、コリアンダー、スターアニス、クローブ、カルダモン、ローレル、ターメリック、フェンネル、マスタード、タイム、セージ、メース、オールスパイス、セロリシード、山椒、わさび、とうがらし、オレガノ、カイエンペッパー、チリパウダー、ケッパー等のハーブ及び香辛料類、コーン、くるみ、ゴマ、松の実、アーモンド等の種実類、ツナ、ホタテ、かつおぶし、うに、たらこ等の魚介類、ベーコン、コンビーフ、ハム等の加工肉製品類、鶏卵の全卵、卵黄、卵白等の卵類、あさつき、かぼちゃ、しそ、しょうが、セロリー、だいこん、たけのこ、たまねぎ、トマト、にんじん、にんにく、ねぎ、パセリ、ピーマン、赤ピーマン、黄ピーマン、ピクルス、ザーサイ、ホースラディッシュ、みょうが、わけぎ、グリーンピース、しその実等の香味野菜類、梅干し、うめ、かぼす、オリーブ、グレープフルーツ、すだち、パインアップル、ぶどう、マンゴー、もも、ゆず、ライム、りんご、レモン、みかん、キウイフルーツ、夏みかん、はっさく、パッションフルーツ等の果実類の実及びその果汁、しいたけ、マッシュルーム、きくらげ等のきのこ類、コンブ、のり、ひじき、わかめ等の藻類、コンソメ、ケチャップ、風味調味用、チリソース、トマトソース、オイスターソース、ウスターソース等の調味料及びソース類、天然エキス、酵母エキス、肉エキス、魚介類エキス、野菜エキス等のエキス類が挙げられる。
【0024】
また、本発明の分離型ドレッシングには、その目的とする風味、香り、品質に応じて、食塩、酸味料、うまみ調味料(アミノ酸、核酸等)たんぱく加水分解物、糖類、甘味料、香料、酸化防止剤、増粘剤、乳化剤、水、豚肉・牛肉・鶏肉のひき肉等の獣鳥鯨肉類等を加えることができる。
【0025】
本発明の分離型ドレッシングでは、油相部は、ドレッシング全体の10〜90質量%が風味のバランスという点で好ましく、20〜60質量%がより好ましい。
【0026】
本発明の分離型ドレッシングは、後述する実施例にて記載の方法により製造できるが、これに限定されるものではなく、通常公知の方法を用いることができる。一般的には、食用油脂以外の各種原材料を加温可能な攪拌槽に投入し、加熱攪拌を行い、水相部を調製する。加熱攪拌は、原材料の均一な分散、溶解、及び殺菌を目的とし、これを達成できれば特に条件は制限されない。加熱攪拌は、加圧、減圧、常圧下で可能であり、通常は常圧下で行われる。温度条件は制限されるものではなく、原材料の溶解、殺菌がなされればよい。通常は、40〜95℃、好ましくは60〜95℃で行われる。攪拌は、原料の均一な分散等がなされればよく、プロペラ、ホモミキサー、ブレンダー、ディスパー、パドルミキサー、コロイドミル、連続ミキサー、スタティックミキサー、超音波等の攪拌機又は方法を用いることができ、回転数、攪拌時間は原材料が均一に分散されれば、特に制限されない。その後、水相部を常温程度まで冷却し、食用油脂を中心として別途調製された油相部と合わせることでドレッシング類が得られる。
【0027】
本発明の方法は、油脂と乳化剤とを98.8:1.2〜99.98:0.02の割合で配合することにより、分離型ドレッシングの油相部に水相部の風味を付与することを特徴とする。ここで、「水相部の風味」とは、水相部の主成分である食酢、醗酵原料、香味原料からもたらされる口に入れた際に感じる風味・香りをいう。また、「油相部に水相部の風味を付与する」とは、水相部に存在する風味成分を油相部に溶け込ませることをいう。油相部は、油脂独特のコクやマイルド感をもたらすが、油相部だけでは水相部を口にした際の風味を感じることはない。そのため、ドレッシングが水相部と油相部とに分離するとバランスの良い風味を感じることができない。本発明では、油脂と乳化剤とを上記割合で配合することにより、水相部に溶けている風味成分が油相部に移行しやすくなるので、油相部だけを口にした場合であっても風味を感じることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。
【0029】
<製造例1>分離型ドレッシング用油脂組成物
約10質量部の油脂と乳化剤とをプロペラ攪拌機付きの加温可能な容器に投入した。次いで、200rpmで攪拌しながら40℃に加温し、均一組成物とした。さらに、室温の油脂を攪拌しながら加え、合計100質量部の分離型ドレッシング用油脂組成物を得た。配合表を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
<製造例2>分離型醤油ドレッシング
表2に示す配合比の水相部原料をプロペラ攪拌機付きの加温可能な容器に投入し、100rpmで攪拌しながら品温が90℃になるまで加熱した。そしてさらに、品温を90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。その後、品温が20℃になるまで冷却し、油相部と合わせることで分離型醤油ドレッシングを得た。
【0032】
【表2】

【0033】
<製造例3>分離型フレンチドレッシング
表3に示す配合比の水相部原料をプロペラ攪拌機付きの容器に投入した。そして、室温にて200rpmで攪拌した後、油相部と合わせることで分離型フレンチドレッシングを得た。
【0034】
【表3】

【0035】
<評価方法1>水相部と油相部との分離評価
製造例2に従って製造した分離型醤油ドレッシングを振った後、しばらく静置し、水相部と油相部との分離状態を確認した。評価は、10名のパネラーによって行った。評価基準を以下に示す。パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、平均値が2.5点以上となったものを評価A、2.0点以上2.5点未満となったものを評価A’、1.0点以上2.0点未満となったものを評価B、1.0点未満となったものを評価Cとした。かかる評価の結果、「A」、「A’」及び「B」を分離型ドレッシングとして商品価値があると判断した。
【0036】
<評価基準>
3点:良好
2点:やや良好
1点:悪い
【0037】
<評価方法2>分離型ドレッシング用油脂組成物の風味評価
分離型ドレッシング用油脂組成物の全体の風味について評価を行った。評価は、10名のパネラーによる、1〜10の10段階評価(5を標準とし、10に近いほど風味が良好である)とした。そして、パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入して評価点とした。
【0038】
<評価方法3>ドレッシングの風味評価
ドレッシングを振った後、野菜サラダにかけ、その全体の風味について評価を行った。また、ドレッシングを振った後、分離した油相部の風味についても評価を行った。評価は、10名のパネラーによる、1〜10の10段階評価(5を標準とし、10に近いほど風味が良好である)とした。そして、パネラー全員の評価点数の平均値を算出し、小数点第1位を四捨五入して評価点とした。
【0039】
<実施例1>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.9質量%と、乳化剤としてペンタオレイン酸デカグリセリン(サンソフトQ−175S、HLB4.5:太陽化学(株)製)0.1質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
【0040】
分離型醤油ドレッシング及び分離型フレンチドレッシングについては、水相部と油相部との分離評価を行った。評価は、評価方法1に従った。
分離型ドレッシング用油脂組成物、分離型醤油ドレッシング、及び分離型フレンチドレッシングについては、風味の評価を行った。なお、分離型醤油ドレッシング及び分離型フレンチドレッシングについては、全体の風味及び油相部の風味の評価を行った。評価方法は、分離型ドレッシング用油脂組成物については評価方法2、分離型醤油ドレッシング及び分離型フレンチドレッシングについては評価方法3に従った。
評価結果を表4に示す。
【0041】
<実施例2>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.5質量%と、乳化剤としてペンタオレイン酸デカグリセリン(サンソフトQ−175S、HLB4.5:太陽化学(株)製)0.5質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0042】
<実施例3>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.0質量%と、乳化剤としてペンタオレイン酸デカグリセリン(サンソフトQ−175S、HLB4.5:太陽化学(株)製)0.5質量%と、乳化剤としてショ糖オレイン酸エステル(リョートーシュガーエステルO−170、HLB1:三菱化学フーズ(株)製)0.5質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0043】
<実施例4>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.9質量%と、乳化剤としてオレイン酸デカグリセリン(リョートーポリグリセリンエステルO−50D、HLB7.4:三菱化学フーズ(株)製)0.1質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0044】
<実施例5>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.5質量%と、乳化剤としてオレイン酸デカグリセリン(リョートーポリグリセリンエステルO−50D、HLB7.4:三菱化学フーズ(株)製)0.5質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0045】
<実施例6>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.0質量%と、乳化剤としてオレイン酸デカグリセリン(リョートーポリグリセリンエステルO−50D、HLB7.4:三菱化学フーズ(株)製)1.0質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0046】
<実施例7>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.6質量%と、乳化剤としてクエン酸モノオレイン酸グリセリン(サンソフトNo.623M、HLB7.0:太陽化学(株)製)0.2質量%と、乳化剤としてモノオレイン酸ソルビタン(サンソフトNo.81S、HLB5.1:太陽化学(株)製)0.2質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0047】
<実施例8>
表1に示すように、油脂として精製パーム分別油(日清オイリオグループ(株)製)99.6質量%と、乳化剤としてモノ・ジオレイン酸ジグリセリン(サンソフトQ−17B、HLB6.5:太陽化学(株)製)0.4質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0048】
<比較例1>
表1に示すように、精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)100質量%を分離型ドレッシング用油脂組成物とした。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0049】
<比較例2>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)99.99質量%と、乳化剤としてペンタオレイン酸デカグリセリン(サンソフトQ−175S、HLB4.5:太陽化学(株)製)0.01質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0050】
<比較例3>
表1に示すように、油脂として精製菜種油(日清オイリオグループ(株)製)98.0質量%と、乳化剤としてオレイン酸デカグリセリン(リョートーポリグリセリンエステルO−50D、HLB7.4:三菱化学フーズ(株)製)2.0質量%と、を使用して分離型ドレッシング用油脂組成物を製造した。製造方法は、製造例1に従った。
また、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型醤油ドレッシングを製造した。配合表を表2に示す。製造方法は、製造例2に従った。
さらに、この分離型ドレッシング用油脂組成物を使用して分離型フレンチドレッシングも製造した。配合表を表3に示す。製造方法は、製造例3に従った。
評価項目及び評価方法については、実施例1と同様である。評価結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
<分離型ドレッシング用油脂組成物の風味>
表4に示すとおり、本発明の分離型ドレッシング用油脂組成物(実施例1、2、4、5及び8)では、乳化剤に由来する風味が感じられなかった。実施例3、6、及び7では、乳化剤の風味がわずかに感じられたが、食するには全く問題のないレベルであった。乳化剤が2.0質量%配合されている油脂組成物(比較例3)では、乳化剤に由来する不快な風味が強く感じられた。
【0053】
<分離型醤油ドレッシングの水相部と油相部との分離>
表4に示すとおり、本発明の分離型醤油ドレッシング(実施例1、3、4、5、7及び8)では、水相部と油相部とが良好に分離した。また、これらには若干、劣るものの、実施例2及び6についても、製品として問題のないレベルの分離状態を示した。しかし、油脂と乳化剤とが98.0:2.0の割合で配合されている分離型醤油ドレッシングでは、水相部と油相部との境界線付近が乳化により白濁し、分離状態が非常に悪かった(比較例3)。
【0054】
<分離型醤油ドレッシングの風味>
表4に示すとおり、本発明の分離型醤油ドレッシング(実施例1〜8)では、乳化剤が配合されていないドレッシング(比較例1)と比較して、油相部の風味が顕著に向上した。これは、水相部の風味成分が油相部に溶け込んだためと考えられる。また、ドレッシング全体の風味も向上した。しかし、油脂と乳化剤とが99.99:0.01の割合で配合されている分離型ドレッシングでは、油相部の風味もドレッシング全体の風味も変わらなかった(比較例2)。なお、比較例3は、水相部と油相部との分離が悪いため、測定を行わなかった。
【0055】
<分離型フレンチドレッシングの風味>
表4に示すとおり、本発明の分離型フレンチドレッシング(実施例1〜8)では、上述の分離型醤油ドレッシングほど顕著ではないが、乳化剤が配合されていないドレッシング(比較例1)と比較して、油相部の風味が向上した。これについても、水相部の風味成分が油相部に溶け込んだためと考えられる。また、ドレッシング全体の風味も向上した。しかし、油脂と乳化剤とが99.99:0.01の割合で配合されている分離型ドレッシングでは、油相部の風味も全体の風味も変わらなかった(比較例2)。なお、比較例3は、水相部と油相部との分離が悪いため、測定を行わなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤が0.02〜1.2質量%配合されていることを特徴とする分離型ドレッシング用油脂組成物。
【請求項2】
前記乳化剤がHLB1〜9であることを特徴とする請求項1記載の分離型ドレッシング用油脂組成物。
【請求項3】
前記乳化剤がグリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1又は2記載の分離型ドレッシング用油脂組成物。
【請求項4】
前記乳化剤の配合量が0.1/(EHLB1/2〜3/(EHLB1/2質量%(EHLBは、乳化剤のHLBを示す。)であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の分離型ドレッシング用油脂組成物。
【請求項5】
前記乳化剤を構成する脂肪酸残基の50質量%以上が不飽和脂肪酸残基であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の分離型ドレッシング用油脂組成物。
【請求項6】
油脂と乳化剤とが98.8:1.2〜99.98:0.02の割合で配合されていることを特徴とする分離型ドレッシング。
【請求項7】
油脂と乳化剤とを98.8:1.2〜99.98:0.02の割合で配合することにより、分離型ドレッシングの油相部に水相部の風味を付与する方法。

【公開番号】特開2009−278932(P2009−278932A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135542(P2008−135542)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】