説明

分離液状ドレッシングの製造方法

【課題】 複雑、且つ煩雑な製造工程を必要とせず、さらに加熱殺菌が可能でありながら、消費者が該ドレッシングを振とうするなどして一度均一分散すると、長時間分散状態が保持される、分離液状ドレッシングの製造方法並びに該分離ドレッシングを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含んだ水相部を、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンのゲル化点以上の温度で容器に充填した後、該水相部の品温を前記ゲル化点未満に低下させることにより前記容器内にて該水相部をゲル化させることを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを製造する方法;並びに分離液状ドレッシングの水相部にキサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含有することを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分離液状ドレッシングに関し、詳細には、分離液状ドレッシングの使用時の水相部と油相部の均一分散状態を長時間保つ技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドレッシングには乳化液状ドレッシングや分離液状ドレッシングがある。乳化液状ドレッシングとは油脂を乳化し、コロイド状態としたものであり、クリーミーな食感と風味が特徴である。一方、分離液状ドレッシングとは油相と水相が分かれたセパレートタイプのドレッシングであり、さっぱりとした食感と風味が特徴である。
分離液状ドレッシングの場合、消費者はドレッシングの水相部と油相部を振とうや混合により均一化した状態で野菜、肉などの食材にかけて食することが通常である。
しかしながら、従来の一般的な分離液状ドレッシングは、このように均一化したドレッシングをすぐに野菜、肉などにかけないと再び分離してしまうし、また、均一状態で食材にかけたとしてもすぐに食べないと再び分離し味が不均一になってしまうものであったため、長時間均一な状態を保持する技術が望まれていた。
【0003】
この課題を解決する方法として、例えば、水相部を高粘度にすることで油の分離を防ぐ事も可能であるが、ドレッシングの物性として不適切なものとなってしまうという欠点があった。
別の方法として、水相部を一旦ゲル化して解膠したのちに充填することで、水相部と油相部を一度均一分散した後はこの分散状態を長時間保つ方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
これらの方法によって、水相部と油相部とを長時間にわたり均一分散させることは可能と思われる。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法では、ゲル化のために水相部分を一旦冷却し、ゲルを解膠したのち充填するといった工程が必要であり、製造工程が煩雑になってしまうものであった。さらに、特許文献1の方法では、ゲルが溶解してしまわないために殺菌工程を踏む事ができないという問題があった。また、特許文献2に記載の方法では、解膠したゲルの充填後に再加温をする必要があるなど、製造工程をさらに複雑、且つ煩雑にしてしまうものであった。
【0004】
【特許文献1】特公平6−57126号公報
【特許文献2】特開平8−116920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような複雑、且つ煩雑な製造工程を必要とせず、さらに加熱殺菌が可能でありながら、長時間均一分散状態を保持することのできる分離液状ドレッシングを提供することを目的とするものであり、消費者が該ドレッシングを振とうするなどして一度均一分散すると、長時間分散状態が保持される分離液状ドレッシングを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みて本発明者は鋭意検討を重ねた。
本発明者は、水相部を容器に充填した後にゲル化させて使用時にゲルを崩すことによっても水相部と油相部の均一分散が長時間保持できることを見出した。さらに、本発明者は、適切なゲル化をしないと、容器に入った状態のドレッシングを消費者が振とうしてもゲルが崩れなかったり、またゲルが崩れても水相と油相の均一分散が長時間保持できないなど、の問題があるため、増粘剤の種類、量を適切に選択して組み合わせることが極めて重要であることを見出した。
【0007】
すなわち、請求項1に係る本発明は、分離液状ドレッシングの水相部にキサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含有することを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングに関する。
請求項2に係る本発明は、分離液状ドレッシングの水相部に、水相部の全質量に対してキサンタンガムを0.06〜0.17質量%、κカラギーナンを0.1〜0.5質量%及びガラクトマンナンを0.004〜0.017質量%含有することを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングに関する。
請求項3に係る本発明は、分離液状ドレッシングの水相部の物性が、最大荷重0.3〜1.0Nであり、且つ破断変形4.5〜7.0mmである請求項1又は2に記載の水相部がゲル状の分離液状ドレッシングに関する。
請求項4に係る本発明は、分離液状ドレッシングの水相部のpHが3〜5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水相部がゲル状の分離液状ドレッシングに関する。
請求項5に係る本発明は、分離液状ドレッシングの製造方法において、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含んだ水相部を、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンのゲル化点以上の温度で容器に充填した後、該水相部の品温を前記ゲル化点未満に低下させることにより前記容器内にて該水相部をゲル化させることを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを製造する方法に関する。
請求項6に係る本発明は、分離液状ドレッシングの製造方法において、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含んだ水相部を容器に充填した後に、前記ゲル化点以上の温度まで加熱し、その後、該水相部の品温を前記ゲル化点未満に低下させることにより前記容器内にて該水相部をゲル化させることを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを製造する方法に関する。
請求項7に係る本発明は、前記水相部として、水相部の全質量に対して、キサンタンガムを0.06〜0.17質量%、κカラギーナンを0.1〜0.5質量%及びガラクトマンナンを0.004〜0.017質量%含んだものを用いる、請求項5又は6に記載の水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複雑、且つ煩雑な製造工程を必要とせずに、さらに加熱殺菌が可能でありながら、水相部と油相部の均一分散状態を長時間保持することのできる、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングの製造方法を提供することが可能となる。
また、本発明によって提供する水相部がゲル状の分離液状ドレッシングは、容器を振とうすることで食用油脂が水相部中に均一に分散され、長時間分散状態を保持する事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるドレッシングとは、野菜や肉などに味付けや食感付与のために振り掛ける液状又は半固形状の、水相部と油相部とからなる調味液である。本発明の効果を奏する限りは、たれ、ソースなどと呼ばれるものも当然に含めた概念である。
また、「分離液状」とは、「水相部と油相部とが乳化されていない」という意味であり、例えば、水相部に香味油を含んだドレッシングや乳化剤を添加した胡麻ドレッシングのような、一部乳化又は擬乳化状態のものであっても本発明の効果を奏する限り構わない。
このドレッシングの水相部には、食酢、醤油、果汁等から適宜選択された原料を用いることができる。これらに食塩、糖類、調味料、各種香辛料、さらには玉葱などの野菜類、ゴマ等を適宜添加混合しても良い。
【0010】
本発明においては、水相部を容器に充填した後にゲル状にすることが重要である。ここでいうゲル状とは、強固なゲルを形成しているわけではないが、流動性の非常に小さい状態を指す。また、ここでいうゲル状とは、単に粘度が高いだけでは求める性質は望めず、例えば、ゲルの最大荷重が0.3〜1.0N、破断変形4.5〜7.0mmであるものが好ましく、さらには、ゲルの最大荷重が0.4〜0.6N、破断変形4.9〜6.5mmであるものがより好ましい。ゲルの最大荷重と破断変形がいずれもこれ未満では均一分散状態を長時間保持しにくく、また、ゲルの最大荷重と破断変形がいずれもこれを超えるとゲルが硬くなり、振とうによって調味油と調味液がうまく混合されない可能性がある。
ここでいうゲルの最大荷重及び破断変形は、いずれもクリープメーター(RHEONERII RE2−3305S:YAMADEN社製)を使用して測定した値であり、その条件はプランジャー8mmφ、試料台の上昇スピード1mm/secで厚さ16mmのサンプル中に8mm進入させたときの最大荷重及び破断変形を示す。測定するサンプルは、製造したドレッシグの水相部を85℃まで再加熱し、ゲル化点以上の温度でロードセルに充填し、その後、20℃に調整しクリープメーターにて最大荷重及び破断変形を測定する。
【0011】
上記したような範囲の適切なゲル強度(最大荷重及び破断変形)を有する水相部を作製するためには、用いる増粘剤の種類及び量を適切に選択することが極めて重要となる。
本発明における増粘剤の種類としては、ゲル化剤(ガム)であるキサンタンガム及びκカラギーナン、並びにガラクトマンナンが必須となる。
【0012】
キサンタンガムは、耐熱性、耐塩性、耐酸性に優れたドレッシングには最適のゲル化剤である。また適度な粘度を付与するだけでなく、ガラクトマンナンと非常に高い反応性を有し、弾力性に富んだゲルを形成するため、本発明においては必須となっている。
また、κカラギーナンも同様にガラクトマンナンとの反応性を有するが、キサンタンガムとガラクトマンナンのゲルと比較すると脆いゲルを形成する。これらを混合する事で弾力があるにも関わらず振とうによって容易に壊れる理想的なゲルの製造が可能となった。
【0013】
また、本発明においては、上記のように、ガラクトマンナンも必須である。ガラクトマンナンは、キサンタンガム及びκカラギーナンと反応性を有し、特にキサンタンガムと高い反応性を有するため、これがないとキサンタンガムのみではゲルを形成することが出来ず、求める効果を期待する事が出来ないためである。
なお、ガラクトマンナンとは、ガラクトマンノース構造を有する増粘多糖類の総称であり、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガムなどが含まれる。特に、ローカストビーンガムは、キサンタンガム、κカラギーナンと非常に反応性が高いため本発明において使用が最も望ましい。
【0014】
本発明者らは上記した増粘剤の適切な含量を、試行錯誤を繰り返した結果ようやく見つけ出すことに成功した。
すなわち、本発明の分離液状ドレッシングの水相部には、水相部の全質量に対して、キサンタンガムを0.06〜0.17質量%、κカラギーナンを0.1〜0.5質量%、ガラクトマンナンを0.004〜0.017質量%含有することが必要である。
これらの含量を逸脱すると、ゲルが形成されなかったり、ゲルが硬すぎて振とうしてもゲルが崩れずに水相部と油相部が均一に分散できなかったり、又はゲルが弱く水相部と油相部の均一分散が長時間保持できなかったりと、本発明の効果を奏することができない可能性がある。例えば、κカラギーナンの濃度が低すぎると、形成したゲルの強度が強すぎてしまい、振とうしてもうまく混ざらない。また、ローカストビーンガムの濃度が高すぎても同様にうまく混ざらない。
【0015】
また、本発明に適したゲルの性質を形成するためには、pHも重要な役割を果たしており、水相部のpHは3〜5、特にpH3.5〜4.5にすることが好ましい。ここで水相部のpHが3未満では、ゲル形成が阻害されやすく水相と油相の均一分散状態を長時間保持しにくい。また、pHが5より大きい場合は、酸味が弱くなるためドレッシングとして好ましくない風味となってしまう。
【0016】
本発明の水相部がゲル状の分離液状ドレッシングは、次のような方法によって製造することができる。
すなわち、本発明の水相部がゲル状の分離液状ドレッシングは、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含んだ水相部を容器に充填した後、該水相部をゲル化させることによって、製造することができる。
【0017】
まず、水相部の全質量に対して、前記所定量を含有するようにキサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを水に溶解した後、前記した水相部を構成する、適宜選択された原料、即ち、目的とするドレッシングの製造に際して使用される原料を、その配分に準じて添加する量を決定し、添加混合する。
なお、ドレッシングの製造に際して使用される原料及び配合割合として、醤油ドレッシングを製造する場合を具体的に示すと、水相部の全質量に対して、液糖5〜20質量%、醸造酢5〜30質量%、食塩1〜5質量%、醤油10〜30質量%を添加することができる。
また、このときに、当該水相部のpHは、前記した所定の範囲、即ちpHは3〜5、好ましくはpH3.5〜4.5であることを確認する。前記所定の範囲にない場合には、前記所定の範囲になるように調整する。ここでのpHの調整には、例えばpHを下げる場合には食酢、クエン酸などを用いることができ、pHを上げる場合にはグルタミン酸ソーダなど用いることができる。
【0018】
次に、前記水相部は、必要に応じて70〜95℃、好ましくは80℃程度で殺菌を行う。殺菌時間は求める製品組成や物性等によって異なるが、例えば、80〜90℃から選ばれた殺菌温度に達温させた後、20〜30分程度の時間をかけて70℃程度まで冷却し、その後に下記の充填工程によって水相部を容器に充填することができる。また、必要に応じて殺菌温度に達温させた後、30分程度保持してその後冷却工程に移ってもよい。なお、前記した殺菌温度及び冷却する温度は、水相部に添加したキサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンのゲル化点以上の温度である。ただし、前記冷却によって水相部をゲル化点以下まで冷却させてゲル化させ、その後、再度ゲル化点以上に加熱させた後に容器に充填するという製造方法を排除する意味ではない。
加熱殺菌は、水相部の品温を前記所定の範囲に保つできことができれば、如何なる方法を用いることができるが、具体的には、熱交換器、ジャケットタンク、クッカーなどにより行うことができる。
なお、当該加熱殺菌は、水相部の原料の混合工程の直後に行うことができるが、混合工程の直後には行わずに、以下に記載する充填工程の後に行ってもよい。また、水相部の原料の混合工程と充填工程の両方の工程の後に加熱殺菌を行うこともできる。なお、充填工程の後に行う殺菌方法としては、熱水シャワーや湯煎などの方法を採用することができる。
【0019】
次いで、上記工程から得られた水相部の上部に、油相部を添加する。
水相部と油相部との割合(質量比)は特に限定されないが、95:5〜80:20とすることが好ましく、90:10〜80:20とすることが最も適当である。
本発明の分離液状ドレッシングの油相部としては、常温で液体の菜種油、大豆油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油、ゴマ油、パーム油、香味油、綿実油、亜麻仁油、魚油、等が挙げられるが、具体的には菜種油やゴマ油を用いることが風味や価格の点から望ましい。
なお、これらは単独で用いてもよく、2以上を組み合わせて用いることもできる。具体的には菜種油やゴマ油を用い、さらに香味油を少量用いることで風味が引き立つために望ましい。
【0020】
容器への充填は、水相部に添加したキサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンのゲル化点以上の温度である60℃以上、好ましくは60℃〜100℃で、容器に充填することが好ましい。容器への充填はホットパック充填することが望ましい。
本発明において、分離液状ドレッシングを充填する容器としては、耐熱性を備えたものであれば如何なるものでも用いることができる。具体的には、ペットボトル、ガラス瓶、紙パック、などを用いることができる。また、容器の容量としては、10〜2000mlを充填できる容器であることが望ましい。
【0021】
容器への充填工程は、容器に水相部を充填後、その上に油相部を添加し充填することが一般的であるが、容器に先に油相部を充填した後に水相部を充填しても構わないし、水相部と油相部を混合した状態で容器に充填しても構わない。
【0022】
上記工程で得られた、容器に充填された分離液状ドレッシングは、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンのゲル化点未満の温度である0〜45℃に冷却することで、水相部をゲル化させることができる。なお、冷却する手段としては、冷媒と接触させることにより行うことができるが、具体的には、水との接触による水冷によって冷却することが好ましい。
【0023】
如上の如き工程で製造された、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングは、振とうにより容易にゲルを崩すことができ、一度均一分散させると、長時間分散状態を保持することができる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0025】
試験例1
(1)ドレッシングの製造
以下、本発明の効果を検証するために、醤油ドレッシングにおけるキサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンの配合比と分散安定性の関係を調べた。
キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを、表1に示す各配合割合にて冷水に溶解後、水相部の全質量に対して、醤油16質量%、液糖12質量%、醸造酢20質量%、食塩2.2質量%となるようにこれらの原料を加え、80℃で20分間加熱殺菌した。
加熱殺菌後、この水相部を70℃(ゲル化点以上の温度)で、1000ml容のボトルに充填し、この水相部の上部に、水相部と油相部の割合(質量比)が90:10となるように常温で食用油脂(菜種油)を添加し、ホットパック充填した。その後、5℃以下まで水冷する事により醤油ドレッシング(試料A〜M)を得た。
なお、表1において、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンの数値は、水相部の全質量に対しての質量%を表す。
【0026】
また、得られた醤油ドレッシング(試料A〜M)のゲルの物性について、最大荷重(N)と破断変形(mm)の値を測定した。最大荷重(N)と破断変形(mm)の値は、いずれもクリープメーター(RHEONERII RE2−3305S:YAMADEN社製)を使用して測定した。
測定値は、プランジャー8mmφ、試料台の上昇スピード1mm/secで厚さ16mmのサンプル中に8mm進入させたときの最大荷重及び破断変形である。測定するサンプルは、製造したドレッシグの水相部を85℃まで再加熱し、ゲル化点以上の温度でロードセルに充填し、その後、20℃に調整しクリープメーターにて最大荷重及び破断変形を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
(2)水相部と油相部の分散状態についての確認方法
製造したドレッシングのボトルをよく振とうし、直後に50mlプラスチックチューブにサンプリングした。その後、サンプリングしたボトルを静置し、3時間後、5時間後に同様にサンプリングした。このプラスチックチューブを20℃、2200g、10分間、遠心分離機にかけ、サンプリングしたドレッシングの水相と油相とを分離させた。
振とう直後、3時間静置後、5時間静置後のそれぞれの時間ごとに水相と油相の比率を確認し、長時間たった後も均一に水相に調味油が分散している事を確認した。結果を表1に示す。
ここで、表1の分散安定性評価は、振とう直後と5時間後の差が5%以下の場合を「+」とし、5%以上の場合を「−」とした。
【0028】
(3)結果
表1から明らかなように、水相部の全質量に対して、キサンタンガムを0.06〜0.17質量%、κカラギーナンを0.1〜0.5質量%及びガラクトマンナンを0.004〜0.017質量%含有するドレッシング(試料C,E,F,H〜M)は、製造した当初は分離液状ドレッシングの外観を呈しているが、ゲル化後の水相部は、最大荷重0.3〜0.94Nであり、且つ破断変形4.9〜6.55mmという範囲内の値の物性を示すゲルとなることが示された。これらの分離液状ドレッシング(試料C,E,F,H〜M)は、振とうによって速やかにゲルが崩れて水相部と油相部とが混合でき、振とう後は油分が速やかに分離する事がないことがわかった。
すなわち、本発明によって提供する分離液状ドレッシングは、分離液状ドレッシング特有のさっぱりとした風味を有しているにも関わらず、一旦振とうすれば長時間分散状態を保持するため、使用の度に振とうする必要がなく、非常に使い勝手の良いドレッシングであることが示された。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例1
キサンタンガム1.2kg(水相部の全質量に対して0.134質量%)、κカラギーナン1.5kg(水相部の全質量に対して0.168質量%)、ローカストビーンガム0.05kg(水相部の全質量に対して0.006質量%)を水530kgに溶解後、液糖120kg、醸造酢60kg、食塩22kg、醤油160kgを加え、80℃で20分間加熱殺菌した。
この水相部を70℃(ゲル化点以上の温度)で、1000ml容の容器に充填し、その水相部の上に、水相部と油相部の割合(質量比)が90:10の割合となるように常温で食用油脂(菜種油)を添加し、ホットパック充填した。その後、45℃以下まで水冷する事により水相部がゲル化した分離液状ドレッシング(本発明実施品1)を得た。
【0031】
水相部と油相部の分散状態の確認は、試験例1と同様の方法により行った。結果を表2に示す。
表2に示すように、この分離液状ドレッシング(本発明実施品1)は、使用前に容器を振とうすることにより、油が均等に分散し、且つ長時間分散状態が続くドレッシングとなることが示された。
【0032】
実施例2
キサンタンガム0.7kg(水相部の全質量に対して0.087質量%)、κカラギーナン1.5kg(水相部の全質量に対して0.186質量%)、ローカストビーンガム0.04kg(水相部の全質量に対して0.005質量%)を水220kgに溶解後、液糖130kg、醸造酢200kg、食塩21kg、醤油170kg、ごま65kgを加え、80℃で20分間加熱殺菌した。
この水相部を70℃(ゲル化点以上の温度)で、1000ml容の容器に充填し、その水相部の上に、水相部と油相部の割合(質量比)が80:20の割合となるように常温で食用油脂(菜種油とゴマ油の50対50の混合品)を添加し、ホットパック充填した。その後、45℃以下まで水冷する事により水相部がゲル化した分離液状ドレッシング(本発明実施品2)を得た。
【0033】
水相部と油相部の分散状態の確認は、試験例1と同様の方法により行った。結果を表2に示す。
表2に示すように、この分離液状ドレッシング(本発明実施品2)は、使用前に容器を振とうすることにより、油が均等に分散し、且つ長時間分散状態が続くドレッシングとなることが示された。
【0034】
実施例3
キサンタンガム1.0kg(水相部の全質量に対して0.118質量%)、κカラギーナン2.0kg(水相部の全質量に対して0.236質量%)、ローカストビーンガム0.1kg(水相部の全質量に対して0.012質量%)を水330kgに溶解後、液糖160kg、醸造酢200kg、食塩34kg、醤油100kg、玉葱20kgを加え、80℃で20分間加熱殺菌した。
この水相部を70℃(ゲル化点以上の温度)で、1000ml容の容器に充填し、その水相部の上に、水相部と油相部の割合(質量比)が85:15の割合となるように常温で食用油脂(菜種油)を添加し、ホットパック充填した。その後、45℃以下まで水冷する事により水相部がゲル化した分離液状ドレッシング(本発明実施品3)を得た。
【0035】
水相部と油相部の分散状態の確認は、試験例1と同様の方法により行った。結果を表2に示す。
表2に示すように、この分離液状ドレッシング(本発明実施品3)は、使用前に容器を振とうすることにより、油が均等に分散し、且つ長時間分散状態が続くドレッシングとなることが示された。
【0036】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、調味料(水相部)と調味油(油相部)の均一分散状態を長時間保持できる分離液状ドレッシングを、複雑、且つ煩雑な製造工程を必要とせずに、さらに加熱殺菌が可能な方法で製造することが可能となる。
また、本発明によって提供される、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングは、調味料と調味油の均一分散状態を長時間保持することができるため、食材にかけても分離することなく、加工食品分野、飲食産業分野等、様々な分野での利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離液状ドレッシングの水相部にキサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含有することを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシング。
【請求項2】
分離液状ドレッシングの水相部に、水相部の全質量に対してキサンタンガムを0.06〜0.17質量%、κカラギーナンを0.1〜0.5質量%及びガラクトマンナンを0.004〜0.017質量%含有することを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシング。
【請求項3】
分離液状ドレッシングの水相部の物性が、最大荷重0.3〜1.0Nであり、且つ破断変形4.5〜7.0mmである請求項1又は2に記載の水相部がゲル状の分離液状ドレッシング。
【請求項4】
分離液状ドレッシングの水相部のpHが3〜5である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水相部がゲル状の分離液状ドレッシング。
【請求項5】
分離液状ドレッシングの製造方法において、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含んだ水相部を、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンのゲル化点以上の温度で容器に充填した後、該水相部の品温を前記ゲル化点未満に低下させることにより前記容器内にて該水相部をゲル化させることを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを製造する方法。
【請求項6】
分離液状ドレッシングの製造方法において、キサンタンガム、κカラギーナン及びガラクトマンナンを含んだ水相部を容器に充填した後に、前記ゲル化点以上の温度まで加熱し、その後、該水相部の品温を前記ゲル化点未満に低下させることにより前記容器内にて該水相部をゲル化させることを特徴とする、水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを製造する方法。
【請求項7】
前記水相部として、水相部の全質量に対して、キサンタンガムを0.06〜0.17質量%、κカラギーナンを0.1〜0.5質量%及びガラクトマンナンを0.004〜0.017質量%含んだものを用いる、請求項5又は6に記載の水相部がゲル状の分離液状ドレッシングを製造する方法。