説明

分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導法における生着能の向上

【課題】魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等において、移植した生殖細胞の宿主生殖腺への生着能を向上させて、分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導方法における移植効率を増大する方法を提供すること。
【解決手段】魚類の分離生殖細胞を、宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をトリプシン処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより、生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宿主魚類を用い、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等において、移植した生殖細胞の宿主生殖腺への生着能を向上させて、分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導方法における移植効率を増大する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚類のES細胞株樹立の試みは、多くの研究者によりなされており、形態学的、生化学的特徴はマウス由来のES細胞に類似した細胞株がメダカ(蛋白質核酸酵素,40,2249-2256,1995;Fish Phys. Biochem. 22,165-170, 2000)、ゼブラフィッシュ(Methods Cell Biol. 59: 29-37, 1999)、及びヨーロッパヘダイ(Biomolecular Engineering, 15, 125-129, 1999)の胞胚細胞から樹立されている。これらの細胞を胞胚期前後の宿主胚に移植すると、移植細胞は種々の体細胞に分化することは既に確認されている。
【0003】
しかし、上記のように魚類のES細胞株樹立の試みは、多くの研究者によりなされているが、魚類ES様細胞が生殖細胞系列に分化し、次世代の作出に貢献したという論文は発表されていなかった。実際にはin vitroで数日間しか培養していない細胞は生殖系列にも分化するが(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 2261-2266, 2001)、培養期間を延長すると生殖細胞への分化能力は急激に消失する。
【0004】
魚類の生殖細胞がどのような機構によって他の体細胞から分化してくるかは未だ明らかではないが、近年、親の卵巣内で成熟途上の卵内に蓄積されたRNAやタンパク質等の母性因子が、生殖細胞系列の決定に重要な役割を果たしている可能性を示唆するデータが示されている(月刊海洋,31-5,266-271,1999)。そして、これらの母性因子が受精卵中に不均一に存在するため、細胞分裂により一部の割球のみがこの因子を受け取ることとなる。その結果、母性因子を受け取った一部の細胞のみが、将来生殖細胞系列へと分化していくと考えられている。一方、ES細胞が生殖細胞系列に分化することが知られているマウスでは、未分化な状態を維持している細胞集団が、周辺細胞からの刺激により生殖細胞へと分化していくと考えられている(蛋白質核酸酵素,43,405-411,1998)。
【0005】
従来より、魚類のような脊椎動物においても、トランスジェニック動物やクローン動物の作製のための動物個体の改変やクローン化の試みがなされてきた。しかし、魚類のような脊椎動物の場合は、このように遺伝的に改変した、或いはクローン化を目的とした細胞を、宿主個体に移植し、これを分化誘導して、新たな個体として変換する技術が確立していなかった。したがって、魚類のような脊椎動物において、その個体を遺伝的に改変して、或いはクローン化して、その育種を行い或いはクローン動物の作製を行うためには、改変或いは分離した細胞を、宿主個体に移植し、これを分化誘導して、新たな個体として変換する技術の確立が重要な課題となっていた。
【0006】
そこで、先に、本発明者らは、特に魚類のような変温脊椎動物において、遺伝的に改変した或いは分離した細胞を、宿主個体に移植し、これを生殖細胞系列へ分化誘導する方法、及び、該分化誘導法を用いて、魚類のような脊椎動物の増殖或いは育種を行う方法について、鋭意検討する中で、(1)魚類のような脊椎動物においては、親の卵巣内で成熟途上の卵内に蓄積されたRNAやタンパク質等の母性因子が、生殖細胞系列の決定に重要な役割を果たしており、そして、これらの母性因子が受精卵中に不均一に存在するため、細胞分裂により一部の割球のみがこの因子を受け取ることとなり、その結果、母性因子を受け取った一部の細胞のみが、将来生殖細胞系列へと分化していくと考えられること、(2)このような生殖細胞系列の決定機構を考慮すると、魚類のような脊椎動物の場合は“生殖細胞への分化を決定する母性因子を含むこと”であること、(3)以上のような事実を考慮すると、魚類のような脊椎動物において、遺伝的に改変した或いは分離した細胞を、宿主個体に移植し、これを生殖細胞系列へ分化誘導する際に用いるべき細胞(すなわち、宿主個体に移植後、卵子又は精子に分化し、次世代個体に改変可能な細胞)は、未分化な胚細胞ではなく、将来生殖細胞に分化することが決定付けられている生殖細胞の幹細胞、すなわち始原生殖細胞(生殖細胞)であることをつきとめた。
【0007】
そして、該生殖細胞を、魚類のような脊椎動物の孵化前後の魚類個体に移植することにより、生殖細胞を、生殖細胞系列へ分化誘導することができること、即ち、魚類のような脊椎動物由来の分離生殖細胞を、宿主脊椎動物の孵化前後の魚類個体へ移植することにより、特に、孵化前後の発生段階にある魚類個体の腹腔内腸管膜裏側へ移植することにより、該生殖細胞を生殖細胞系列へ分化誘導することが可能であることを見い出し、魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法の確立に成功した(特許第4300287号公報)。
【0008】
そこで、上記のような魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法を実施するに際しては、宿主魚類に導入する生殖細胞を調製することが必要であるが、該宿主魚類に導入する生殖細胞の調製には、生殖細胞を供給する魚類の精巣をトリプシン等のタンパク質分解酵素処理により解離(分散処理)し、精巣に含まれる体細胞を除去する等の処理を行うことが必要となる。また、上記特許第4300287号公報の方法では、導入する生殖細胞を緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:GFP)や、EGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)で可視化し、蛍光を発している生殖細胞と蛍光を発していない他の体細胞とを、セルソーターにより、分離することにより、精製する方法も採られている。しかしながら、これらの処理により調製、取得した分離生殖細胞は、移植後の生殖細胞の宿主生殖腺への生着能が弱く、十分な移植効率が得られないという問題が残されている。
【0009】
一方で、従来、細胞の生着を促進する方法として、いくつかの方法が開示されている。例えば、特表2000−500327号公報には、精子を含む試料をアラビノース、ガラクトース、及び/又はヘキスロン酸を含有する多糖を含む溶液と接触させて、精子回収の際の精子の受精の可能性を高める方法について開示されている。また、特開平8−27011号公報には、IgA産生促進効果を有するビフィドバクテリウム属の菌体を有効成分とする妊娠動物用の胎児定着増強剤を用いて、胎児の発育異常と脱落防止を図り、胎児の定着を安定化する方法が開示されている。更に、特表2009−517078号公報には、骨髄移植(BMT)等において、細胞生着能を高めるために、細胞集団を、所定量のニコチンアミドで処理する方法について開示されている。しかしながら、これらの方法は、いずれも、上記のような、魚類の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法における移植後の生殖細胞の宿主生殖腺への生着能の向上に適用できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−27011号公報。
【特許文献2】特表2000−500327号公報。
【特許文献3】特表2009−517078号公報。
【特許文献4】特許第4300287号公報。
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】蛋白質核酸酵素,40,2249-2256,1995。
【非特許文献2】Fish Phys. Biochem. 22,165-170, 2000。
【非特許文献3】Methods Cell Biol. 59: 29-37, 1999。
【非特許文献4】Biomolecular Engineering, 15, 125-129, 1999。
【非特許文献5】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98, 2261-2266, 2001。
【非特許文献6】月刊海洋,31-5,266-271,1999。
【非特許文献7】蛋白質核酸酵素,43,405-411,1998。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、宿主魚類を用い、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等において、移植した生殖細胞の宿主生殖腺への生着能を向上させて、分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導方法における移植効率を増大する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、魚類由来の分離生殖細胞(精原細胞)を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内へ移植した、精原細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上させる方法について鋭意検討する中で、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をトリプシン処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより、生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上させ、生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着率を大幅に増大することができることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、魚類由来の分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより行なうことを特徴とする生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法からなる。なお、ここで「生殖細胞が培養容器にゆるく接着する」とは、接着した細胞を通常のピペッティングでは、はがれないものの、EDTA処理でははがれる状態」と説明できる。
【0015】
本発明のメカニズムについて説明すると、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖(代理親技法)等において、宿主魚類に移植する分離生殖細胞である生殖細胞の調製は、精巣をトリプシンなどのタンパク質分解酵素により、ばらばらにする(解離する)ことにより行われている。そして、従来、かかる生殖細胞の宿主魚類への移植は、精巣をトリプシンやコラゲナーゼで処理した生殖細胞と体細胞の混合細胞をそのまま宿主魚類の腹腔内へ移植していたので、移植効率は低くかった。また、導入する始原細胞(生殖細胞)を緑色蛍光タンパク質GFPや、EGFPで可視化し、セルソーターにより、分離することにより精製する方法も採られていたが(特許第4300287号公報)、大幅な生着率の向上に繋がっていない。これらの原因は、精巣からの生殖細胞の分散(解離)に際して、トリプシンのようなタンパク質分解酵素の処理により、生殖細胞がダメージを受けることによるものと推測された。
【0016】
すなわち、生殖細胞の宿主生殖腺への生着には、種々の細胞表面タンパク質が重要な役割を果たしていると予想される。本発明者による生殖細胞の移植実験では、宿主の腹腔内へと移植したドナー生殖細胞が宿主生殖腺へのケモタキシス(chemotaxis:走化性)により移動し、生殖腺に取り込まれ、生殖細胞の支持細胞と細胞間連絡を再構築されることが認められている。これら一連のステップには、ケモカインの膜受容体(例えば、実際に、ゼブラフィッシュの始原生殖細胞の移動にはSDF−1の受容体であるCXCR4が重要な役割を果たすことが示されている)や、各種細胞外マトリックスが重要な役割を果たしていることが伺える。したがって、移植用細胞の調製のためにトリプシンのようなタンパク質分解酵素で処理すると、該タンパク質分解酵素は、これらの重要な膜タンパク質や細胞外マトリックスを分解しているものと推測される。受容体や細胞間接着因子等の膜タンパク質は、細胞の移動や増殖、更には、分化に重要な役割を果たしており、これらの分子の一部は細胞外へと飛び出しているため、この細胞外領域はタンパク質分解酵素により、容易に消化されることが危惧される。この細胞外領域がダメージを受けると、細胞の正常な振る舞いが維持できなくなり、特に、生殖細胞の宿主生殖腺への移植の場合においては、細胞の宿主生殖腺への移動が重要となることから、宿主生殖腺へ移植した細胞の生着の成否に係わってくる。
【0017】
そこで、本発明においては、魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により分散(解離)した後、分散(解離)した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養することによって、この短期間培養中に、トリプシン処理による精巣の分散(解離)処理で一旦分解された膜タンパク質が修復され、かつ、活性化することが見い出された。そして、本発明においては、かかる短期間の培養により膜タンパク質が修復され、かつ、活性化された生殖細胞を培養器(ディッシュ)からの緩やかな回収により、細胞への傷害がほとんど無い状態で、すなわち、膜タンパク質の修復と活性化を維持した状態で回収し、該生殖細胞を宿主魚類の腹腔内へ移植することにより、生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着率を大幅に増大することが可能であることが見い出された。
【0018】
本発明の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法においては、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞の調製に際して、魚類の精巣をトリプシンのようなタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養することにより、タンパク質分解酵素処理による精巣の分散(解離)処理でダメージを受けた生殖細胞の修復と、活性化とを行うが、かかる短期間の培養期間としては、培養開始後、3〜6日の期間が採用される。該短期間の培養期間としては、ニジマスでは培養開始後、4〜5日の期間が採用され、特に望ましい培養期間として、培養開始後5日の期間が採用される。マグロでは培養開始後、3〜6日の期間が採用され、特に望ましい培養期間として、培養開始後3日の期間が採用される。
【0019】
また、本発明の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法においては、魚類の精巣をトリプシン処理により解離した細胞を、培養容器中において、短期間培養することにより、トリプシン処理によりダメージを受けた生殖細胞の修復と、活性化とを行うが、かかる培養は、コラーゲンコート或いはゼラチンコートを施した培養容器内で、レイボヴィッツL−15培地に、ウシ胎児血清、サケ血清及びアデノシンの1又は2以上を添加した培養液を用いて行なうことができる。
【0020】
更に、本発明の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法においては、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞の調製に際して、魚類の精巣をトリプシン処理により解離した細胞を、短期間培養した後、培養した生殖細胞を培養器から分離・採取するが、該培養した生殖細胞を培養器から分離・採取するに際して、生殖細胞と魚類の精巣から分離した精巣体細胞の培養容器への接着力の相違により、生殖細胞を血球系の細胞、精巣体細胞から分離して採取することができる。
【0021】
すなわち、本発明においては、精巣をトリプシン処理により解離した後、得られた細胞をコラーゲンコート或いはゼラチンコートを施した培養容器内(シャーレ内)で、レイボヴィッツL−15培地にウシ胎児血清、或いはサケ血清及び/又はアデノシンを添加した培養液を用いて短期間培養されるが、本条件下で培養を行うと、まず体細胞が優先的にディッシュの底面へと強力に接着し、その後数日の間に生殖細胞が弱く体細胞へと接着するという現象が認められる。そこで、この接着性の差異を利用した生殖細胞の濃縮技法を採用することができる。すなわち、まず、接着していない血球系の細胞を分離する。次に、体細胞のシートの上面に弱く接着している生殖細胞のみをマイルドな細胞剥離処理により回収する。
【0022】
かかる体細胞のシートの上面に弱く接着している生殖細胞をマイルドな細胞剥離処理により回収するに際しては、接着している生殖細胞の細胞剥離を促進するためにEDTA溶液で処理することができる。例えば、0.25重量%のEDTA溶液で短時間のピペッティング処理を施すことにより、細胞剥離を促進し、マイルドな細胞剥離処理により生殖細胞の生着活性を維持した状態で、精殖細胞のみを剥離して採取することができる。
【0023】
上記のとおり、本発明においては培養後接着している生殖細胞の剥離にEDTAを用いるが、EDTAとトリプシンの作用の相違について説明すると、トリプシンは細胞同士を連結しているタンパク質を消化するが(アミノ酸同士の結合を切り離してしまう不可逆な反応)、EDTAは、これらのタンパク質のうちカドヘリンの接着機能を阻害する。すなわち、タンパク質カドヘリンの持つ分子の接着機能の活性には、金属イオンが必要であるが、EDTAはこの金属イオンを捕獲してしまうために、その結果カドヘリンは接着機能を発揮できず、細胞がはがれやすくなる。しかし、EDTAの場合、細胞間結合はEDTAにより緩むが、その後金属イオンを含む溶液に細胞を入れれば細胞は元の機能を回復することとなる。このような作用の相違により、本願発明においては、培養後接着している生殖細胞の剥離にEDTAを用いて、細胞にダメージを与えることなく、緩やかに回収することが可能となる。
【0024】
本発明の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法は、宿主魚類と、該宿主魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して、生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等に適用することができる。例えば、宿主魚類として、ニジマスのようなサケ科魚類、ニベ、及びサバ科魚類から選択される宿主魚類を用い、異種の魚類として、マグロのような魚類を用いて、行うことができる。本発明の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法は、移植した生殖細胞の宿主生殖腺への生着能を向上させて、分離生殖細胞の移植効率を大幅に増大することができる。
【0025】
すなわち具体的には本発明は、(1)魚類由来の分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより行なうことを特徴とする生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法や、(2)魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、培養開始後、3〜6日の期間であることを特徴とする上記(1)記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法や、(3)魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において精原細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、サケ科魚類では培養開始後、4〜5日の期間であることを特徴とする上記(2)記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法からなる。
【0026】
また本発明は、(4)魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、マグロ類では培養開始後、3〜6日の期間であることを特徴とする上記(2)記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法や、(5)魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞の培養容器中における培養を、コラーゲンコート或いはゼラチンコートを施した培養容器内で、レイボヴィッツL−15培地にウシ胎児血清、サケ血清及びアデノシンの1又は2以上を添加した培養液を用いて行なうことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法や、(6)培養した生殖細胞を分離・採取するに際して、生殖細胞と魚類の精巣から分離した精巣体細胞の培養容器への接着力の相違により、生殖細胞を血球系の細胞、精巣体細胞から分離して採取することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法からなる。
【0027】
さらに本発明は、(7)生殖細胞を精巣体細胞から分離して採取するに際し、接着している生殖細胞の細胞剥離を促進するためにEDTA溶液で処理することを特徴とする上記(6)記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法や、(8)魚類由来の分離生殖細胞が、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類由来の生殖細胞であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法や、(9)宿主魚類が、サケ科魚類、ニベ、及びサバ科魚類から選択され、異種の魚類がマグロであることを特徴とする上記(8)記載の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法からなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、分離生殖細胞の移植による生殖細胞系列への分化誘導方法において、移植した生殖細胞の宿主生殖腺への生着能を向上させて、分離生殖細胞の移植効率を大幅に増大する方法を提供する。本発明の生殖細胞系列への分化誘導方法は、宿主魚類を用い、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等に、有効に適用することができ、親魚養成が困難な大型魚種の稚魚を、飼育が容易な魚種に生産させるような代理親魚養殖に有効に適用することができる。例えば、宿主魚類として、サケ科魚類、ニベ、及びサバ科魚類から選択される宿主魚類を用い、異種の魚類として、マグロのような魚類を用いて、効率よく稚魚を生産し、養殖に供することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例におけるvasa-Gfp遺伝子を導入した生殖細胞(精原細胞)の短期間の培養における試験において、培養0日目における培養下の生殖細胞の様子を写した写真である。図1−aは、培養0日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真であり、図1−bは、培養0日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。図1−c、1−dは、それぞれ培養1日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下、明視野像、緑色蛍光像として写した写真である。更に、図1−e、1−fは、それぞれ培養2日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下、明視野像、緑色蛍光像として写した写真である。
【図2】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の短期間の培養における試験において、培養5日目における培養下の生殖細胞の様子を写した写真である。図2−aは、培養3日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真であり、図2−bは、培養3日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。図2−c、2−dは、それぞれ培養4日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下、明視野像、緑色蛍光像として写した写真である。更に、図2−e、2−fは、それぞれ培養5日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下、明視野像、緑色蛍光像として写した写真である。
【図3】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の短期間の培養後のEDTA溶液処理により回収された生殖細胞の性状について、EDTA処理前(図3−a)、EDTA処理中(図3−b)、EDTA処理後(図3―c)のウェル底面における顕微鏡の同一視野像を写すした写真である。
【図4】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の短期間の培養後のEDTA溶液処理により回収された生殖細胞の性状について、EDTA溶液処理により回収した生殖細胞の様子を写した写真である。図4−aは、EDTA溶液処理により回収する前の生殖細胞の様子を、図4−bは、EDTA溶液処理により回収した後の生殖細胞の様子を示す。
【図5】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の短期間の培養後のEDTA溶液処理により回収された生殖細胞の性状について、EDTA溶液処理により回収された細胞の生殖細胞の割合について示す図である。
【図6】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の短期間の培養後のEDTA溶液処理による回収について、EDTA溶液処理による生殖細胞の回収率について示す図である。
【図7】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の短期間の培養後のEDTA溶液処理により回収された生殖細胞の性状について、回収した生殖細胞を、培養液を充填したウェルに播種後15時間での培養下の細胞の様子を写した写真を示す。図7−aは、EDTA処理して回収した生殖細胞の様子を、図7−bは、トリプシン処理した細胞を、通常分散した状態の生殖細胞の様子を示す。
【図8】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の腹腔内腸管膜の生殖腺内への移植試験において、移植10日後のニジマス個体の腹腔内腸管膜裏側の生殖腺内の様子を写した写真である。図8−b、8−c、8−dは、本発明の方法によって調製された未成熟精巣をトリプシン酵素処理により分散(解離)後、短期間の培養を行った生殖細胞を移植した場合(培養区)の生殖腺内の様子を、図8−aは、魚類精巣をトリプシンを用いて分散(解離)した状態の短期間の培養を行わない生殖細胞(対照)を移植した場合(培養区)の生殖腺内の様子を示す。
【図9】本発明の実施例における生殖細胞(精原細胞)の腹腔内腸管膜の生殖腺内への移植試験において、移植20日後のニジマス個体の腹腔内腸管膜裏側の生殖腺内の様子を写した写真である。図9−b、9−c、9−dは、本発明の方法によって調製された未成熟精巣をトリプシン酵素処理により分散(解離)後、短期間の培養を行った生殖細胞を移植した場合(培養区)の生殖腺内の様子を、図9−aは、魚類精巣をトリプシンを用いて分散(解離)した状態の短期間の培養を行わない生殖細胞(対照)を移植した場合(培養区)の生殖腺内の様子を示す。
【図10】図10−a、10−bは、本発明の実施例におけるクロマグロの生殖細胞のニベ宿主生殖腺への移植試験において、ニベ宿主生殖腺内で生着しているクロマグロの生殖細胞の状態を写した写真である。
【図11】ニジマスの精巣分散−短期間培養生殖細胞(精原細胞)の宿主生殖腺への移植試験における、魚類精巣をトリプシンのようなタンパク質分解酵素を用いて分散(解離)した状態の生殖細胞を、宿主生殖腺に導入する従来の方法による概念図を示す。
【図12】ニジマスの精巣分散−短期間培養生殖細胞(精原細胞)の宿主生殖腺への移植試験における、魚類精巣をトリプシンのようなタンパク質分解酵素を用いて分散(解離)した後、短期間の培養と、EDTA処理による生殖細胞の回収により、宿主生殖腺への生着能を活性化した本発明の方法による概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、魚類由来の分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより行なうことを特徴とする生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法からなる。
【0031】
本発明は、本発明の方法によって調製された魚類由来の分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することにより行われるが、かかる方法において、分離生殖細胞を宿主魚類の腹腔内へ移植する方法自体は、本発明者の先の特許出願における明細書に具体的に開示された方法を用いて行うことができる(特許第4300287号公報)。
【0032】
本発明の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞の調製には、まず、魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により分散(解離)し、精原細胞を採取する。本発明において、該採取された精原細胞は、培養容器中において精原細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養する。該短期間の培養を行うことにより、タンパク質分解酵素処理による精巣の分散(解離)処理でダメージを受けた生殖細胞の修復と、精原細胞の生着性能についての活性化とを行うことができる。
【0033】
かかる短期間の培養における、精原細胞の培養方法自体は、先に、本発明者らが開発した魚類の精原細胞の培養方法を適用することができる(識名信也、吉崎悟朗「代理親魚養殖を目指したニジマス精原細胞のinvitro培養技術の開発」日本繁殖生物学会 vol.55 P.J121(2009.8.25);Shinya SHIKINA, Shoko IHARA, Goro YOSHIZAKI“Culture conditions for Maintaining the Survival and Mitotic Activity of Rainbow Trout Transplantable Type A Spermatogonia”Molecular reproduction and development vol75 P529-537,2008)。
【0034】
すなわち、本発明における短期間の培養は、コラーゲンコート或いはゼラチンコートを施した培養容器内で、レイボヴィッツL−15培地に、ウシ胎児血清、サケ血清及びアデノシンの1又は2以上を添加した培養液を用いて行なうことができる。かかる短期間の培養期間としては、培養開始後、3〜6日の期間が採用される。該短期間の培養期間としては、ニジマスでは培養開始後、3〜5日、特に望ましくは5日の期間が、また、マグロでは培養開始後、3〜6日、特に望ましくは3日の期間を採用することができる。
【0035】
本発明において、魚類の精巣をトリプシン処理により分散(解離)し、短期間培養した生殖細胞は、培養器から分離・採取することにより、移植細胞を調製するが、かかる培養した生殖細胞を培養器から分離・採取するに際しては、生殖細胞と魚類の精巣から分離した精巣体細胞の培養容器への接着力の相違により、生殖細胞を血球系の細胞、精巣体細胞から分離して採取することができる。
【0036】
すなわち、本発明においては、精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した後、得られた細胞をコラーゲンコート或いはゼラチンコートを施した培養容器内(シャーレ内)で、レイボヴィッツL−15培地にウシ胎児血清、サケ血清及びアデノシンの1又は2以上を添加した培養液を用いて短期間培養されるが、該条件下で培養を行うと、まず体細胞が、早期に、優先的にディッシュの底面へと強力に接着し、その後数日の間に生殖細胞が弱く体細胞へと接着するという現象が認められる。そこで、この接着性の差異を利用した生殖細胞の濃縮技法を採用することができる。すなわち、まず、接着していない血球系の細胞を分離する。次に、体細胞のシートの上面に弱く接着している生殖細胞のみを緩く振るようなマイルドな細胞剥離処理により回収する。
【0037】
かかる体細胞のシートの上面に弱く接着している生殖細胞のみをマイルドな細胞剥離処理により回収するために、接着している生殖細胞をEDTA溶液で処理することができる。該処理により、生殖細胞の細胞剥離を促進することができ、生殖細胞のみのマイルドな細胞剥離を可能にして、生殖細胞の生着活性を損なうことなく、体細胞のシートの上面に弱く接着している精殖細胞のみを剥離して採取することができる。該処理は、例えば、0.25重量%のEDTA溶液で短時間のピペッティング処理を施すことにより、行うことができる。
【0038】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
[ニジマスの生殖細胞(精原細胞)の分離と培養:移植ニジマスの生殖細胞の調製]
<レイボヴィッツL−15/FBS培養液の調整>
レイボヴィッツ(Leibovitz’s)L−15培地粉末(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)1.374g、HEPES(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)0.598gをDeionized distilled water (Invitrogen Corporation, 15230-162)80mlに溶解した。続いて、10N NaOH及び1N NaOHを用いてpH7.8に調整し、これを89.7mlにメスアップした後に、孔径0.2μmのシリンジ用滅菌フィルター(Dismic-25cs, Advantec, 東京)を用いて濾過滅菌した。更に、2.5mlのサケ血清、10mlのウシ胎児血清(FBS)を加え、最後に50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、50μg/mlアンピシリンの濃度となるように抗生物質を添加した。
【0040】
<供試魚(可視化)>
水温10℃の流水で屋外飼育されたニジマス雌3年魚、及び屋内飼育された、pvasa pvasa−Gfp遺伝子導入ニジマス雄2年魚より、それぞれ採卵及び採精し、1%NaHCO浸漬法による媒精を経て、受精卵を作製した。作製した受精卵は屋内飼育し、8〜10ヶ月齢に達した個体を供試魚として実験に用いた。
【0041】
<精巣の単離および結合組織の剥離>
供試魚(ニジマス)を350ppmの2−フェノキシエタノール(和光純薬工業株式会社)溶液中で麻酔処理を施した後、体表面の水気をふき取り、70%エタノールを入れた容器内で約1分間静置することで無菌化した。続いて、クリーンベンチ内に供試魚を入れ、精巣を外科的に摘出した。このとき、幽門垂および腸管を傷つけないようにすることで、精巣を無菌的に単離した。単離した精巣は、L−15/FBS10%(pH7.8)培養液を200μl入れた48ウェルプレート中で一時保存した。なお、保存用ウェルプレート内の培養液の温度上昇を防ぐために、ウェルプレートはクリーンベンチ内に入れた氷冷剤上で維持した。その後、クリーンベンチ内に実体顕微鏡(SMZ-10: Nikon, Tokyo)を入れ、冷却したPBS(−)を満たした滅菌シャーレ内に単離した精巣を移し、実体顕微鏡下で精巣間膜および精巣間膜に付随する血管を、ピンセットを用いて剥離した。
【0042】
<精巣の分散(剥離)>
血管及び結合組織を剥離した精巣5〜20尾分を、1ツ穴血液反応板の上にまとめ、ウェッケルシザース(MB-41,NAPOX, 株式会社夏目製作所)を用いて精巣砕片の状態にした。続いて、0.855 Unitトリプシン/PBS(+)溶液1ml中に精巣片を移し、10℃で約2時間インキュベートした。インキュベート中、精巣砕片の分散を促進するために、30分ごとにピペッティング処理を施した。酵素処理後、細胞懸濁液を15ml tubeに全て移し、スイングローターを用いて10℃、1、000rpmで10分間遠心することで精巣細胞を沈殿させ、ペレットを形成させた。続いて、ペレットを吸わないように注意しながら上清を捨て、L−15/FBS10%(pH7.8)培養液を3ml加えた。なお、酵素溶液を完全に取り除くために、同様の遠心操作によるリンスを2度行った。酵素溶液除去後、L−15/FBS10%(pH7.8)培養液を2ml加え、ピペッティング操作により撹拌した後に、得られた精巣細胞懸濁液を目開き42μmのナイロンメッシュ(NBC Inc, Tokyo)を通すことで、不完全な分散により生じた精巣片を取り除いた。
【0043】
<培養皿のゼラチンコート>
実験には、ゼラチンで底面をコーティング処理した96ウェルプレート、及び6ウェルプレートを用いた。まず、粉末ゼラチンを0.1%の濃度で蒸留水に溶解した。続いて、クリーンベンチ内で孔径0.2μmのシリンジ用滅菌フィルター(Dismic-25cs, Advantec)を用いて溶液を濾過することで、0.1% ゼラチン溶液を無菌化した。その後、調整した溶液を96ウェルプレート、6ウェルプレートに対し、それぞれ1ウェルあたり100μl、1,000μlずつ加え、30分間以上室温で放置した。最後に溶液を全て取り除き、クリーンベンチ内で完全に乾燥させることでウェルの底面をゼラチンでコーティングした。
【0044】
<精巣細胞の播種>
精巣の分散(剥離)・採取により得られた精巣細胞懸濁液中の細胞数を、血球算定板を用いて測定した。その後、ゼラチンコーティングした6ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific)の各ウェルに1.5×10細胞/ウェルの細胞密度で播種し、L−15/FBS・サケ血清(pH7.8)培養液を用いて10℃にて培養した。
【0045】
<精巣細胞の培養>
6ウェルプレートの1ウェルに約1.5×10細胞播種した精巣細胞を、10℃にて静置培養した。培養下の生殖細胞(精原細胞)の様子は以下のとおりである:
【0046】
[培養0日目](0時間〜):培養0日目における培養下の精原細胞の様子を写した写真を図1−a、1−bに示す。図1−aは、培養0日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真である。図1−bは、培養0日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。該写真において、緑色蛍光を発しているのは、生殖細胞(精原細胞)である。播種した細胞のほとんどが接着せずに、浮遊して存在している。図1−a中、矢印は赤血球(楕円形)を示す。
【0047】
[培養1日目](24時間〜):培養1日目における培養下の生殖細胞(精原細胞)の様子を写した写真を図1−c、1−dに示す。図1−cは、培養1日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真である。図1−dは、培養1日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。一部の精巣の体細胞が培養皿底面に接着・伸展しはじめる。蛍光視野像内の緑色蛍光を発する細胞が生殖細胞である。ほとんどの生殖細胞は浮いてるか、培養皿底面に接着した体細胞に軽く接着している。図1−c中、矢印は赤血球(楕円形)を、矢じり(▲)は、接着し始めた体細胞を示す。
【0048】
[培養2日目](48時間〜):培養2日目における培養下の生殖細胞(精原細胞)の様子を写した写真を図1−e、1−fに示す。図1−eは、培養2日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真である。図1−fは、培養2日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。精巣の体細胞のほとんどが培養皿底面に接着、一部は進展を開始している。蛍光視野像内の緑色蛍光を発する細胞が生殖細胞である。精巣体細胞と軽く接着しているか浮いている状態にある。
【0049】
[培養3日目](72時間〜):培養3日目における培養下の生殖細胞(精原細胞)の様子を写した写真を図2−a、2−bに示す。図2−aは、培養3日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真である。図2−bは、培養3日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。接着した精巣の体細胞のほとんどが培養皿底面に進展し始める。蛍光視野像内の緑色蛍光を発する細胞が生殖細胞である。一部は強く精巣体細胞と接着しているが、緩く接着している。矢印は赤血球(楕円形)を、矢じり(▲)は、進展した体細胞を示す。血球系の細胞は浮いた状態にある。
【0050】
[培養4日目](96時間〜):培養4日目における培養下の生殖細胞(精原細胞)の様子を写した写真を図2−c、2−dに示す。図2−cは、培養4日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真である。図2−dは、培養4日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。接着した精巣の体細胞が培養皿底面に広く進展している。矢印は赤血球(楕円形)を、矢じり(▲)は、進展した体細胞を示す。蛍光視野像内の緑色蛍光を発する細胞が生殖細胞である。生殖細胞も伸展したした精巣体細胞上に接着している。血球を除くほとんどの細胞が培養皿底面、及び培養皿に接着した体細胞上に接着した状態にある。
【0051】
[培養5日目](120時間〜):培養5日目における培養下の生殖細胞(精原細胞)の様子を写した写真を図2−e、2−fに示す。図2−eは、培養5日目における培養下の生殖細胞の様子を、明視野像で写した写真である。図2−fは、培養5日目における培養下の生殖細胞の様子を蛍光顕微鏡下の緑色蛍光像として写した写真である。接着した精巣の体細胞が培養皿底面に広く進展している。矢印は赤血球(楕円形)を示す。蛍光視野像内の緑色蛍光を発する細胞が生殖細胞である。ほとんどの生殖細胞は伸展した精巣体細胞上に接着している。
【0052】
<培養生殖細胞(精原細胞)の分離、採取>
培養し、ウェル底面に接着している生殖細胞を分離、採取した。ウェル底面に接着している生殖細胞を分離、採取するに際し、ウェル底面において、該底面に接着している精巣の体細胞にゆるく接着している精原細胞の解離を促進するために、EDTA溶液で処理を行った。すなわち、該処理は、0.25%EDTA/PBS溶液で処理(5〜10分)を行い、精原細胞の接着を弱め、時々揺らすことにより効果的に遊離させた。遊離後、EDTA溶液を除去し、培養液を加えてピペッティングすることで生殖細胞を選択的に回収することができる。精巣体細胞は、ウェル底面に接着したまま分離することができる。EDTA溶液にて培養下の細胞を処理することにより、90%以上の純度で生殖細胞を回収することができた。
【0053】
<EDTA溶液処理により回収した生殖細胞(精原細胞)の性状>
EDTA溶液処理により回収した精原細胞の性状について、以下に示す:図3は、EDTA処理により、短期間培養下から回収する生殖細胞について、EDTA処理前(図3−a)、EDTA処理中(図3−b)、EDTA処理後(図3−c)のウェル底面における顕微鏡の同一視野像を写した写真を示す。EDTA処理前及びEDTA処理中においては、生殖細胞の付着が観察されるが(緑色蛍光像)、EDTA処理後は、生殖細胞の付着を示す緑色蛍光像がほとんどみられない。このことより、0.25%EDTA処理後にピペッティングを行うことにより、培養下の生殖細胞をトリプシンのようなタンパク質分解酵素を使用することなく回収することが可能であることが示される。
【0054】
図4は、EDTA溶液処理により回収した生殖細胞の様子を写した写真である。図4−aは、EDTA溶液処理により回収する前の生殖細胞の様子を示す写真であり、図4−bは、EDTA溶液処理により回収した後の生殖細胞の様子を示す写真である。EDTA溶液処理により回収した後の生殖細胞は、体細胞等が除去された生殖細胞のみの集団であることが(緑色蛍光増)示されている。EDTA溶液処理による生殖細胞の回収について、該処理により回収された細胞の生殖細胞の割合について、図5に示す。図中、GFP+(%)は、回収された細胞中における生殖細胞の割合を示す。また、かかる回収における生殖細胞の回収率について、図6に示す。
【0055】
EDTA溶液処理により回収した生殖細胞の性状について、回収した生殖細胞を、培養液を充填したウェルに播種後15時間での培養下の細胞の様子を写した写真を図7に示す。図7−aは、EDTA処理して回収した生殖細胞の様子を示す。該生殖細胞では、細胞が付着構造を保持したまま浮遊している(生着活性:細胞間接着能が高い)様子が示されている。図7−bは、トリプシン処理した細胞を、通常分散した状態の生殖細胞の様子を示す。細胞は、丸い形状で(付着形状ではない)浮遊する状態のものが示されている。
【実施例2】
【0056】
[ニジマスの精巣分散−短期間培養生殖細胞(精原細胞)の宿主生殖腺への移植]
実施例1により調製した、ニジマスの未成熟精巣を酵素処理により分散(解離)し、0.25%サケ血清、及び1%ウシ胎児血清等を含むL−15培養液下で5日間培養し、続いて、EDTA溶液による処理により回収したニジマスの生殖細胞を用いて、宿主生殖腺へ導入し、該細胞の宿主生殖腺への生着能について試験した。魚類生殖細胞を用いて、該細胞を宿主生殖腺へ導入し、該細胞の宿主生殖腺における生着能を試験した概念図を、図11及び図12に示す。図11は、魚類精巣をトリプシンのようなタンパク質分解酵素を用いて分散(解離)した状態の生殖細胞を、宿主生殖腺に導入する従来の方法による概念図を、図12は、上記のように魚類精巣をトリプシンのようなタンパク質分解酵素を用いて分散(解離)した後、短期間の培養と、EDTA処理による生殖細胞の回収により、宿主生殖腺への生着能を活性化した本発明の方法による概念図を示す。
【0057】
<短期間培養生殖細胞のニジマス初期胚への移植と分化誘導>
実施例1で調製した短期間培養生殖細胞のニジマス初期胚への移植を行った。該生殖細胞のニジマス初期胚への移植は、特許第4300287号公報に開示する「分離始原生殖細胞(生殖細胞)のニジマス初期胚への導入方法」に従った。すなわち、実施例1で調製した、未成熟精巣をトリプシン酵素処理により分散(解離)し、0.25%サケ血清、及び1%ウシ胎児血清等を含むL−15培養液で5日間培養し、続いてEDTA溶液により細胞剥離した約5,000の培養生殖細胞(vasa-Gfp遺伝子導入により、緑色蛍光蛋白質(GFP)で可視化)を孵化稚魚の腹腔内へ移植した。対照として、魚類精巣をトリプシンを用いて分散(解離)した状態の短期間の培養を行わない生殖細胞を用いた。
【0058】
該ニジマスの初期胚への生殖細胞の導入は、ニジマスの孵化前後の胚(水温10℃で飼育した場合、受精後30−40日の胚、孵化は受精後32日)から、実施例1で調製した精原細胞を、マイクロインジェクターに装着したガラス製のマイクロピペットで吸引し、同じ発生段階のニジマス個体の腹腔内腸管膜裏側に移植した。
【0059】
<移植した生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導>
初期発生段階のニジマス個体の腹腔内腸管膜裏側に移植した生殖細胞は、自発的に未熟生殖腺に向かって移動を開始し、そこで生殖腺内に取り込まれる。移植10日後のニジマス個体の腹腔内腸管膜裏側の生殖腺内の様子を図8に示す。図8−b、8−c、8−dは、本発明の方法によって調製された未成熟精巣をトリプシン酵素処理により分散(解離)後、短期間の培養を行った生殖細胞を移植した場合(培養区)の生殖腺内の様子を、図8−aは、魚類精巣をトリプシンを用いて分散(解離)した状態の短期間の培養を行わない生殖細胞(対照)を移植した場合(培養区)の生殖腺内の様子を示す。写真に示されるように、培養区では、非培養区に比較して多数の生殖細胞が生殖腺内に入っている様子(緑色蛍光発光)が伺える。
【0060】
移植20日後のニジマス個体の腹腔内腸管膜裏側の生殖腺内の様子を図9に示す。図9−b、9−c、9−dは、本発明の方法によって調製された未成熟精巣をトリプシン酵素処理により分散(解離)後、短期間の培養を行った生殖細胞を移植した場合(培養区)の生殖腺内の様子を、図9−aは、魚類精巣をトリプシンを用いて分散(解離)した状態の短期間の培養を行わない生殖細胞(対照)を移植した場合(非培養区)の生殖腺内の様子を示す。写真に示されるように、培養区では、非培養区に比較して多数の生殖細胞が生殖腺内に生着している様子(緑色蛍光発光)が伺える。これに対して、非培養区では、生殖細胞が生殖腺内にほとんど生着していない様子が伺える。
【0061】
移植10日、及び20日後のニジマス個体の腹腔内腸管膜裏側の生殖腺内の生着について、各観察個体数に対する生着個体数についての観察結果を、表1〜表4に示す。表1及び表2に示されるように、移植後10日、20日目において、培養区は、非培養区(対照)に比べ、多くの生殖細胞が生着している。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【実施例3】
【0066】
[クロマグロの生殖細胞の分離・培養とニベ宿主生殖腺への移植]
【0067】
<クロマグロの分離・培養生殖細胞の調製>
実施例1に記載の方法により、クロマグロの精巣をトリプシン処理により解離した後、得られた細胞をコラーゲンコートを施したシャーレ内で短期間培養した。該培養には、l−15培地を基にサケ血清、アデノシ等の添加因子を加えた培養液を用いた。該培養した生殖細胞の回収には0.25%のEDTA溶液で短時間のピペッティング処理を施す方法により、細胞を付着しているシャーレから剥離する方法により回収した。
【0068】
<分離・培養した生殖細胞のニベ宿主生殖腺への移植>
上記実施例1に記載の方法により、クロマグロの精巣をトリプシン処理により解離した後、得られた細胞をコラーゲンコートを施したシャーレ内で短期間(3日)培養し、EDTA溶液で短時間のピペッティング処理を施す方法により回収した生殖細胞をニベ宿主生殖腺へ移植した。移植後、20日目の段階で、ニベ宿主の生殖腺にクロマグロ由来の精原細胞が生着しているのが確認された(図10−a、10−b)。蛍光を発する細胞は、生殖細胞を示す。ニベの生殖腺内に生着しているクロマグロの生殖細胞が確認される。
【0069】
従来、クロマグロの生殖細胞は数百匹のニベ宿主へと移植を行った場合でも、宿主生殖腺へドナー細胞が取り込まれることはなかったが、本発明のクロマグロの精巣をリプシン処理により解離した後、短期間培養法を行った移植法では、確実なクロマグロ生殖細胞の生着が認められた。また、ニベ生殖腺に取り込まれた生殖細胞の蛍光細胞の形態を共焦点レーザー顕微鏡で観察した結果、宿主生殖腺に取り込まれた細胞は生殖細胞様の形態を保持していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の生殖細胞系列への分化誘導方法は、宿主魚類を用い、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類の分離生殖細胞を宿主魚類に移植して生殖細胞系列への分化誘導を行う代理親魚養殖等に、有効に適用することができ、親魚養成が困難な大型魚種の稚魚を、飼育が容易な魚種に生産させるような代理親魚養殖に有効に適用することができる。例えば、宿主魚類として、サケ科魚類、ニベ、及びサバ科魚類から選択される宿主魚類を用い、異種の魚類として、マグロのような魚類を用いて、効率よく稚魚を生産し、養殖に供することを可能とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類由来の分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、宿主魚類の腹腔内への移植に用いる魚類由来の分離生殖細胞を、魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した後、解離した細胞を培養容器中において、生殖細胞が培養容器にゆるく接着するまでの短期間培養し、該培養した生殖細胞を分離・採取することによって調製し、該分離・採取した分離生殖細胞を孵化前後の宿主魚類の腹腔内へ移植することにより行なうことを特徴とする生殖細胞の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項2】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、培養開始後、3〜6日の期間であることを特徴とする請求項1記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項3】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において精原細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、サケ科魚類では培養開始後、4〜5日の期間であることを特徴とする請求項2記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項4】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞を、培養容器中において生殖細胞が培養容器にゆるく接着までの短期間培養する期間が、マグロ類では培養開始後、3〜6日の期間であることを特徴とする請求項2記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項5】
魚類の精巣をタンパク質分解酵素処理により解離した細胞の培養容器中における培養を、コラーゲンコート或いはゼラチンコートを施した培養容器内で、レイボヴィッツL−15培地にウシ胎児血清、サケ血清及びアデノシンの1又は2以上を添加した培養液を用いて行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項6】
培養した生殖細胞を分離・採取するに際して、生殖細胞と魚類の精巣から分離した精巣体細胞の培養容器への接着力の相違により、生殖細胞を血球系の細胞、精巣体細胞から分離して採取することを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項7】
生殖細胞を精巣体細胞から分離して採取するに際し、接着している生殖細胞の細胞剥離を促進するためにEDTA溶液で処理することを特徴とする請求項6記載の宿主魚類生殖腺への生着能を向上した分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項8】
魚類由来の分離生殖細胞が、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類由来の生殖細胞であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
【請求項9】
宿主魚類が、サケ科魚類、ニベ、及びサバ科魚類から選択され、異種の魚類がマグロであることを特徴とする請求項8記載の分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−200169(P2011−200169A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70582(P2010−70582)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、農林水産省、イノベーション創出基礎的研究推進事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504196300)国立大学法人東京海洋大学 (83)
【Fターム(参考)】