説明

分離肺換気装置

【課題】可撓性チューブを挿入する際に、医療関係者の技量にかかわらず所望とする気管支方向に容易に挿入しうる分離肺換気装置を提供する。
【解決手段】第1のチューブ8が第2の内孔4を構成する第2のチューブ10に対して所定距離長く形成された可撓性チューブ12と、該可撓性チューブ12の先端部外周に設置された気管用カフ14と、第1のチューブ8の延長部分16の先端部外周に設置された気管支用カフ18と、第1の内孔2内に着脱自在に挿入され、先端部に気管支用カフ18を所定の位置に誘導できるように作られた形状のカフ20が設置された第1の導入棒22と、第2の内孔4内に着脱自在に挿入され、先端部にカフ18を所定の気管支内に配置できる様、適宜な形状に設計されたカフ24が設置された第2の導入棒26と、から構成され、少なくとも、第1のチューブ8の延長部分16が、熱処理により予め一方向に変形するように屈曲形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胸部外科手術などに使用される分離肺換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
胸部外科手術などでは、例えば、特許文献1に開示されているように、患者の気管から気管支にかけて細い可撓性チューブを挿入して先端部を適正な位置に配置するとともに損傷した肺を分離し閉塞させ、かつ他方の肺に空気を供給するため、可撓性チューブを挿入する必要が生じている。
【0003】
このような分離肺換気装置では、所望とする一方の肺に向かって可撓性チューブの先端部を確実に挿入すること、あるいは挿入後に仮に患者が動いたとしても、可撓性チューブの気管用カフおよび気管支用カフが所定位置から抜けたり動いたりしない様、確実に固定することが求められている。
【0004】
また、この種の分離肺換気装置では、可撓性チューブが、挿入の際に気管や気管支などの内壁に衝突して、これらの気管を損なってしまうことを注意深く避けなればならない。特に、カリーナと称される2つの気管支の分岐部を通過するときには十分な注意が必要である。
【0005】
ここで、カリーナから2つに分岐する気管支は、心臓とは反対の右側の気管支が口腔から内部を見て略真っ直ぐな方向に見えるのに対し、心臓に近い左側の気管支は若干曲がった方向に見えるのが一般的である。しかしながら、これら2つの気管支は患者の年齢、男女差などにより形成方向、大きさなどに個人差がある。そのため、医療関係者は、分離肺換気装置の可撓性チューブを扱うに際し、その可撓性チューブ先端部の曲がり具合、挿入方向などを正しく見定める必要がある。
【0006】
仮に、可撓性チューブの先端部が患者の気管支に対し正しく挿入されなかった場合には、その可撓性チューブを一旦引き抜いて、再度挿入し直さなければならない。しかし、このような作業は、患者に対する負担増となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−505925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、可撓性チューブを挿入する際に、特に、患者のカリーナ周辺部の損傷を防止し、しかも医療関係者の技量にかかわらず誰でも容易に所望とする気管支に可撓性チューブの先端部を挿入し、所定の位置で気管用カフと気管支用カフとを確実に固定することができるとともに、仮に位置ずれが生じた場合にも患者に対する負担を少なくして再び所定の位置に位置決めすることができる分離肺換気装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る分離肺換気装置は、
第1の内孔2と第2の内孔4とが隔壁6により隔絶状態に仕切られるとともに、前記第1の内孔2を構成する第1のチューブ8が前記第2の内孔4を構成する第2のチューブ1
0に対して所定距離長く形成された可撓性チューブ本体12と、
前記第1のチューブ8と前記第2のチューブ10とから構成される可撓性チューブ本体12の先端部外周に設置された気管用カフ14と、
前記第2のチューブ10に対して所定距離長く形成された前記第1のチューブ8の延長部分16の先端部外周に設置された気管支用カフ18と、
前記第1の内孔2内に着脱自在に挿入され、先端部に気管支用カフ18を所定の位置に誘導できる様に作られた形状のカフ20が設置された第1の導入棒22と、
前記第2の内孔4内に着脱自在に挿入され、先端部に気管支用カフ18を所定の気管支内に配置できる様、適宜な形状に設計されたカフ24が設置された第2の導入棒26と、から構成され、
少なくとも、前記第2のチューブ10に対して所定距離長く形成された第1のチューブ8の延長部分16の基端部28は、熱処理により予め一方向に変形するように屈曲形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明では、前記気管用カフ14と前記気管支用カフ18の周辺部分には、チューブ内、或いはチューブ内孔内に、内部の様子を確認するために使用されるLED、イメージセンサなどの検出器46が埋設あるいは付設されていることが好ましい。
【0011】
このような構成の分離肺換気装置40は、以下のようにして使用する。すなわち、分離肺換気装置40では、可撓性チューブ12内に予め第1の導入棒22と第2の導入棒26とを挿入し、カフ20およびカフ24を膨張させておく。そして、これらのカフ20,24を膨張させた状態で可撓性チューブ12を口腔内に挿入し、可撓性チューブ12を所定距離前進させる。ここで、可撓性チューブ12が気管32の内方に挿入されて最初に第1の導入棒22の先端部に設けられたカフ20が、気管支分岐点であるカリーナに当接するが、カフ20が柔軟であるため、カリーナが損傷されることはない。カフ20がカリーナに到達した後、カフ20を脱気し、このカフ20を萎ませる。そして、カフ20が萎んだ状態にしてから第1の導入棒22を手前の口元側に若干に引き上げれば、第1のチューブ8の延長部分16が製造時のように屈曲した状態に戻るので、可撓性チューブ12の延長部分16を左気管支34側に向けることができる。そして、可撓性チューブ12をさらに前進させれば、気管支用カフ18を所望とする左気管支34内に前進させることができる。
【0012】
一方、第1のチューブ8の延長部分16を元の屈曲姿勢に戻してから可撓性チューブ12を前進させると、第2の導入棒26の先端のカフ24がカリーナに当接する。そして、このカフ24のカリーナに対する当接により、可撓性チューブ12のそれ以上の前進が規制される。なお、カフ24がカリーナに当接してもカフ24のクッション作用により、カリーナ周辺部が損傷されることはない。
【0013】
カリーナにカフ24が当接した状態から、気管用カフ14と気管支用カフ18とに、それぞれ空気を導入して膨らませれば、第1のチューブ8の延長部分16を左気管支34内に配置した状態で固定することができる。すなわち、気管支用カフ18と気管用カフ14とにより可撓性チューブ12を2ヶ所で位置決めし、かつ固定することができる。その後、カフ24を脱気すれば、第2の導入棒26を第2のチューブ10から引き抜くことができる。
【0014】
また、位置ずれが生じてしまった場合には、第2の導入棒26を第2の内孔に挿入し、先端部のカフ24を膨らませた状態で可撓性チューブ12を前進させれば、再度の位置決めを容易に行なうことができる。
【0015】
なお、気管用カフと気管支用カフの周辺部に、LED,イメージセンサなどを設置して
おけば、必要に応じて内部の様子を外方から確認することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の分離肺換気装置によれば、医療関係者の技量に係わらず、誰でも容易に所望とする気管支内に可撓性チューブを挿入し、気管用カフおよび気管支用カフを所定の位置に位置決めし、確実に固定することができる。これにより、所望とする気管支に空気を供給することができる。
【0017】
また、仮に、気管用カフおよび気管支用カフの位置決めが完了した後に、患者が動いたりしてカフの位置ずれが生じた場合には、第2の導入棒を再度挿入し、その第2の導入棒の先端部のカフを膨らませるとともに、このカフを膨らませてから可撓性チューブを若干前進させれば、再び正しい位置に位置決めすることができる。これにより、患者に対する負担を極力少なくして再度の位置決めを行なうことができる。
【0018】
また、気管用カフと気管支用カフの周辺部分に、LED,イメージセンサなどの検出器を設けておくことにより、気管支用カフの位置などを外方から確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(A)は、本発明の一実施例に係る分離肺換気装置を示した分解斜視図、図1(B)は図1(A)におけるB−B線方向の断面図である。
【図2】図2は、図1の分離肺換気装置を組み込んだ状態で気管内に挿入して、第1の導入棒の先端部に設けたカフがカリーナに到達した状態を示す概略図である。
【図3】図3は、図2の状態から先端部のカフの空気を脱気して、第1のチューブの延長部分が製造時のように屈曲した姿勢に戻った状態を示す概略図である。
【図4】図4は、図3の状態から可撓性チューブをさらに前進させて、第2のチューブの先端部に設けたカフがカリーナに到達した状態を示す概略図である。
【図5】図5は、図4の状態から気管用カフと気管支カフに空気を導入し、位置決めを行なったときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る分離肺換気装置の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る分離肺換気装置40を示したものである。
【0022】
本実施例の分離肺換気装置40は、可撓性チューブ12と、可撓性チューブ12の先端部外周に設置された気管用カフ14と、第1のチューブ8の延長部分16の先端部外周に設置された気管支用カフ18と、第1の内孔2内に着脱自在に挿入される第1の導入棒22と、第2の内孔4内に着脱自在に挿入される第2の導入棒26と、から構成されている。
【0023】
上記分離肺換気装置40の可撓性チューブ12は、半透明体であり、第1の内孔2が形成された第1のチューブ8と、第2の内孔4が形成された第2のチューブ10とから構成され、それらの内孔2,4が隔壁6により隔絶されているが、第1のチューブ8と第2のチューブ10とは、一体的に形成されている。また、第1のチューブ8は、その先端部が第2のチューブ10よりも所定距離長く形成されている。
【0024】
なお、本実施例では、第1のチューブ8の先端部は、傾斜面30として形成されている。このように、第1のチューブ8の先端部が傾斜面30として形成されていれば、後述するように、第1のチューブ8内に挿入された第1の導入棒22のカフ20を膨らませたと
きに、そのカフ20を容易に変形させることができる。しかしながら、第1のチューブ8の先端部は傾斜面30でなくても良い。カフ20の形状を工夫することで同様の機能を発揮することができる。
【0025】
また、第1のチューブ8の先端側に設けられた第1のチューブ8の延長部分16は、可撓性チューブ12と同一の材質から形成されていても良く、あるいは別の材質で形成されていても良い。材質が異なる場合は、可撓性チューブ12より柔軟な材質から形成されていることが好ましい。
【0026】
可撓性チューブ12および延長部分16は、例えば、シリコーンゴム、ウレタン、ナイロン11、塩化ビフェニールなどから形成される。
【0027】
また、この第1のチューブ18における延長部分16の長さは、図4に示したように、第2の導入棒26のカフ24がカリーナ36に当接したときに、第1のチューブ8の傾斜面30の開口が、左上幹39に達しない長さに予め設定されている。したがって、本実施例では、第2の導入棒26の先端部設けたカフ24がカリーナ36に当接すれば、第1のチューブ8の延長部分16の開口を、左上幹39の手前の位置で停止させることができる。
【0028】
図1に示したように、第1のチューブ8の延長部分16は、可撓性チューブ12の自然な方向に延びる軸線Sに対して、予め一方向に屈曲して形成されている。屈曲させる方向は、図2に示したように、気管32から左気管支34に分岐する方向である。この第1のチューブ8の延長部分16を屈曲させるには、どのような方法を採用しても良いが、例えば、図1に示したように、延長部分16の基端部28付近を熱処理することにより、この部位から延長部分16全体を屈曲させることができる。このように、基端部28付近を熱処理により屈曲させれば、コスト的にも安価である。
【0029】
さらに、第1のチューブ8と第2のチューブ10とが隔壁6を介して一体化された部分の先端部外周には気管用カフ14が、第1のチューブ8の延長部分16の外周には、気管支用カフ18がそれぞれ設置されている。
【0030】
これら気管用カフ14と気管支用カフ18は、図1(B)に示したように、可撓性チューブ12の壁体内に形成された管路13と管路15を介して、可撓性チューブ12の外方に付設されたそれぞれ第1のパイロットバルーン31と第2のパイロットバルーン32とに接続されている。なお、これら第1のパイロットバルーン31と、第2のパイロットバルーン32には、弁機構が具備されている。
【0031】
したがって、気管用カフ14は、第1のパイロットバルーン31から管路13を介して空気を導入することにより、所定の大きさに膨張させることができる。また、同じ管路13を介して空気が脱気されることにより、元の萎んだ状態に戻すことができる。
【0032】
一方、気管支用カフ18は、第2のパイロットバルーン32から、管路15を介して空気を導入することにより、所定の大きさに膨張させることができる。また、同じ管路15を介して空気が脱気されることにより、元の萎んだ状態に戻すことができる。
【0033】
以下に、第1の内孔2と第2の内孔4とに着脱自在に挿入される第1の導入棒22と第2の導入棒26とについて説明する。
【0034】
第1の導入棒22および第2の導入棒26は、屈曲可能な樹脂あるいは軟質金属などからなり、中空に形成されている。これにより、第1の導入棒22と第2の導入棒26の内
部には、空気通路が形成されている。
【0035】
一方、これら第1の導入棒22と、第2の導入棒26の手元側の基端部には、それぞれ弁機構を備えたパイロットバルーン35、37が具備されている。したがって、パイロットバルーン35、37から空気を導入すれば、先端側のカフ20、24を膨出させることができる。一方、パイロットバルーン35、37から空気を脱気すれば、カフ20、カフ24を萎ませることができる。
【0036】
このようにカフ20を備えた第1の導入棒22と、カフ24を備えた第2の導入棒26とを、可撓性チューブ12内に装着する場合には、予め空気を脱気して外形を小さくしてから装着する。
【0037】
そして、第1の内孔2内に第1の導入棒22が装着されると、第1のチューブ8の延長部分16は、屈曲した姿勢が略真っ直ぐにされて、第1の導入棒22の形状に沿った姿勢になる。
【0038】
一方、第1の導入棒22を第1の内孔2から引き抜けば、延長部分16を再び屈曲した製造時の姿勢に戻すことができる。
【0039】
可撓性チューブ12の頭部には、Y字アダプタ33が設置され、このY字アダプタ33を介して第1の内孔2と第2の内孔4に対するガス供給が行われる。
【0040】
本実施例の分離肺換気装置40は、左気管支34にカフ18を固定するために使用される。したがって、屈曲自在な第1の導入棒22と第2の導入棒26とは、左気管支用として適宜な角度に屈曲されているか、或いは真っ直ぐになっていても良い。
【0041】
これら第1の導入棒22と第2の導入棒26とは、例えば、Y字アダプタ33から先端側に向けて挿入される。
【0042】
係る構成による分離肺換気装置40は、以下のようにして使用する。
【0043】
先ず、カフ20から脱気した状態で第1の導入棒22を第1の内孔2内に挿入する。同様に、カフ24から脱気した状態で第2の導入棒26を第2の内孔4内に導入する。第1の導入棒22が第1の内孔2内に挿入されることにより、特に、第1のチューブ8の延長部分16の屈曲した変形が正されて、その延長部分16は第1の導入棒22の姿勢に沿った姿勢となる。第1の導入棒22が第1の内孔2内に挿入された状態からカフ20とカフ24とに空気を導入する。
【0044】
このように、第1の導入棒22と第2の導入棒26とが、それぞれ第1の内孔2と第2の内孔4とに挿入され、さらにカフ20、カフ24に空気が導入された状態を初期状態とし、この初期状態から、可撓性チューブ12が患者の咽頭内に挿入される。
【0045】
なお、第1のチューブ8の延長部分16の先端面は、傾斜面30とされているので、第1の導入棒22が挿入された状態でカフ20が膨出されると、このカフ20は傾斜面30に沿って斜めの姿勢となる。すなわち、図2に示したように、カフ20が変形する。また、傾斜面30が形成されていない場合でも、カフ20の形状を工夫することで同様の機能が発揮される。
【0046】
図2に示したように、可撓性チューブ12が気管32内に挿入されると、先ず、第1の導入棒22の先端部のカフ20が、左右の気管支の分岐点であるカリーナ36付近に到達
する。
【0047】
このとき、第1の導入棒22の先端部に形成されたカフ20は、上述したように、傾斜した状態となる。カリーナ36にカフ20が到達した状態から、第1の導入棒22に付設されたパイロットバルーン35を操作してカフ20から空気を脱気する。そして、カフ20を小さく萎ませてから、図3に示したように、第1の導入棒22を引き上げる。
【0048】
なお、カフ20がカリーナ36に到達したことを気管支鏡、光ファイバーケーブル、イメージセンサなどで確認することもできる。また、可撓性チューブの位置を確認するため、第1のチューブ8の延長部分16に、X線不透過線などを付しておいても良い。
【0049】
カフ20がカリーナ36に到達してから、第1の導入棒22を第1のチューブ8から引き上げると、第1のチューブ8の延長部分16は製造時のように屈曲した状態に戻る。これにより、図3に示したように、可撓性チューブ12の延長部分16を左気管支34側に向けることができる。そして、この状態から可撓性チューブ12をさらに内方に向かって前進させれば、気管支用カフ18を左気管支34内に前進させることができる。
【0050】
一方、第1のチューブ8の延長部分16が元の屈曲姿勢に戻ってから可撓性チューブ12を内方に前進させると、今度は、図4に示したように、第2の導入棒26のカフ24がカリーナ36に当接する。このように、カフ24がカリーナ36に当接してもカフ24のクッション作用により衝撃力が吸収されるので、カリーナ36が損傷されることはない。
【0051】
カフ24がカリーナ36に当接したとき、カフ24を予め適宜な形状に設計しておけば、気管支用カフ18は、気管支34内の所定位置に配置される。すなわち、延長部分16の傾斜面30の開口は、左上幹39の手前で停止する。
【0052】
図4の状態、すなわち、カリーナ36にカフ24が当接した状態から、気管用カフ14と気管支用カフ18とにそれぞれ空気を導入してカフ14,18を膨らませれば、所定の位置において、可撓性チューブ12を確実に固定することができる。よって、第1のチューブ8の延長部分16の先端部開口から所定のガスを気管支34内に供給することが可能となる。
【0053】
一方、気管用カフ14および気管支用カフ18に空気を導入して固定した後、カフ24を脱気して小さくすれば、図5に示したように、第2の導入棒26を第2のチューブ10から引き抜くことができる。
【0054】
なお、気管支用カフ18が所定の位置に配置されているか否かなどの状態を、気管支鏡、光ファイバーケーブル、イメージセンサなどで確認することもできる。その場合、LEDなどの発光素子を利用して内部を照射しながら、行なうことが好ましい。内部の様子を確認するために使用されるLED、イメージセンサなどの検出器46は、図1に示したように、気管用カフ14の先にあるチューブ壁内、或いはチューブ内孔内などに予め付設しておくことが望ましい。
【0055】
なお、気管支用カフ18が正しい位置に配置されたとしても、仮に患者が動いてしまった場合などには、分離肺換気装置40が所定の位置からずれてしまうことがある。このような場合には、本実施例では、再度、第2の導入棒26を第2の内孔4内に挿入し、その後、カフ24を膨出させ、その状態から可撓性チューブ12を前進させれば、このカフ24がカリーナ36に当接し、再び気管支用カフ18を所定の位置に配置することができる。すなわち、本発明では、カフ24がカリーナ36に当接することにより、気管支用カフ18の位置が一義的に決められるので、繰り返しの位置合わせを容易に行なうことができ
る。
【0056】
よって、患者が動いた場合であっても、上記の手順を行なうことにより、扱う人の技量に係わり無く、また患者に大きな負担をかけずに可撓性チューブの確実な位置決めと確実な固定を行なうことができる。
【0057】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されない。
【0058】
例えば、上記実施例では、左気管支用として説明したが、勿論、右気管支用にも適用可能である。その場合には、右気管支用として第1のチューブ8の延長部分16を変形させる必要がある。
【符号の説明】
【0059】
2 第1の内孔
4 第2の内孔
6 隔壁
8 第1のチューブ
10 第2のチューブ
12 可撓性チューブ
14 気管用カフ
16 第1のチューブの延長部分
18 気管支用カフ
20 カフ
22 第1の導入棒
24 カフ
26 第2の導入棒
28 基端部
30 傾斜面
32 気管支
34 左気管支
36 カリーナ
40 分離肺換気装置
46 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の内孔(2)と第2の内孔(4)とが隔壁(6)により隔絶状態に仕切られるとともに、前記第1の内孔(2)を構成する第1のチューブ(8)が前記第2の内孔(4)を構成する第2のチューブ(10)に対して所定距離長く形成された可撓性チューブ本体(12)と、
前記第1のチューブ(8)と前記第2のチューブ(10)とから構成される可撓性チューブ本体(12)の先端部外周に設置された気管用カフ(14)と、
前記第2のチューブ(10)に対して所定距離長く形成された前記第1のチューブ(8)の延長部分(16)の先端部外周に設置された気管支用カフ(18)と、
前記第1の内孔(2)内に着脱自在に挿入され、先端部に気管支用カフ(18)を所定の位置に誘導できる様に作られた形状のカフ(20)が設置された第1の導入棒(22)と、
前記第2の内孔(4)内に着脱自在に挿入され、先端部に気管支カフ(18)を所定の気管支内に配置できる様、適宜な形状に設計されたカフ(24)が設置された第2の導入棒(26)と、から構成され、
少なくとも、前記第2のチューブ(10)に対して所定距離長く形成された第1のチューブ(8)の延長部分(16)の基端部(28)は、熱処理により予め一方向に変形するように屈曲形成されていることを特徴とする分離肺換気装置。
【請求項2】
前記第2のチューブ(10)に対して所定距離長く形成された前記第1のチューブ(8)の先端部端面は傾斜面(30)として形成され、前記第1の導入棒(22)が前記第1の内孔(2)に挿入された状態で前記気管支閉塞用カフ(20)が膨らんだ状態にあるときに、このカフ(20)が前記傾斜面(30)に当接して当該カフ(20)が予め傾斜姿勢に配置されることを特徴とする請求項1に記載の分離肺換気装置。
【請求項3】
前記気管用カフ(14)と前記気管支用カフ(18)の周辺部分には、チューブ内、或いはチューブ内孔内に、内部の様子を確認するために使用されるLED、イメージセンサなどの検出器が埋設あるいは付設されていることを特徴とする請求項2に記載の分離肺換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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