説明

分離膜のファウリングの評価方法及び膜分離設備の運転方法

【課題】分離膜のファウリング状態を正しく評価でき、分離膜の適切な洗浄が可能な分離膜のファウリングの評価方法を提供する。
【解決手段】膜分離槽4内に浸漬配置され、槽内の活性汚泥から透過液を得る膜分離装置6に備えた分離膜のファウリング評価方法であって、膜分離槽4内の活性汚泥を1800〜6000Gの重力加速度で遠心分離して得られる上澄み液中の有機物濃度と、前記分離膜の透過液中の有機物濃度とをそれぞれ測定し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差若しくは比率、または差若しくは比率の変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液から透過液を得る膜分離装置に備えた分離膜のファウリング評価方法及び膜分離設備の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性排水などを処理する方法として、活性汚泥中の微生物を用いた浄化処理とともに活性汚泥を固液分離する膜分離活性汚泥法が広く実施されている。固液分離の方法として、精密ろ過膜、限外ろ過膜等の分離膜を備えた膜分離装置を用いて、被処理液を固液分離する方法が種々検討されている。
【0003】
このような膜分離装置は被処理液中に浸漬状態で配置され、活性汚泥自体や原水から持ち込まれる夾雑物などの固形分が分離膜表面に付着してろ過効率が低下しないように分離膜の下部に設置した散気装置を備え、散気装置によって空気等を曝気し、気泡及び上昇流による分離膜の振動効果と撹拌効果によって、分離膜表面の付着物の付着を抑制したり剥離させている。
【0004】
しかし、被処理液に含まれる難溶性成分や高分子の溶質、コロイド、微小固形物等が膜面に付着・堆積する、いわゆるファウリングにより分離膜が閉塞して処理効率が低下してしまうという問題がある。そこで、ファウリングの予防対策が必要であったり、ファウリングによる膜閉塞が発生すると分離膜を取り出して薬液洗浄したり、分離膜にろ過方向とは逆方向に薬液や透過液を通流して逆洗する必要があった。
【0005】
例えば、特許文献1には、膜分離活性汚泥法による廃水の処理方法であって、活性汚泥の水相中のウロン酸ユニット濃度が所定の値以上になったとき、または活性汚泥中のウロン酸ユニット濃度に有機性廃水中の多価陽イオン濃度を乗じた値が所定の値以上となったときに、活性汚泥または有機性廃水を多価陽イオン捕捉手段と接触させてから、分離膜装置による固液分離を行うことで膜ファウリングを防止する方法が提案されている。
【0006】
特許文献2には、分離膜が設置された活性汚泥処理槽により、被処理液を処理する方法において、被処理液を遠心分離して得られる上澄み液の糖濃度を測定し、該糖濃度が特定の範囲内である場合に、分離膜の膜間差圧の上昇を抑制する差圧抑制工程を行うことを特徴とする被処理液の処理方法が提案されている。
【0007】
特許文献3には、浸漬型膜分離装置を透過した膜ろ液中のCODを測定し、浸漬型膜分離装置のろ過膜の細孔より大きい所定口径の細孔を有するろ過手段で生物処理槽内の活性汚泥混合液をろ過したろ過手段ろ液中のCODを測定し、ろ過手段ろ液中のCODから膜ろ液中のCODを減算したCOD差値が所定値以上であるときに、第2分離手段によって活性汚泥混合液から生物由来ポリマーを含む液相分を分離除去する処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−66589号公報
【特許文献2】特開2007―75754号公報
【特許文献3】特許第4046661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された廃水処理方法は、活性汚泥の水相中のみのウロン酸ユニット濃度を検出する構成であり、必ずしも分離膜のファウリングの原因とならない分離膜を透過するウロン酸等も検出してしまうため、分離膜のファウリング状態を正しく評価できないという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載された被処理液の処理方法は、被処理液を遠心分離して得られる上澄み液の糖濃度を測定するものであるが、遠心分離の際の重力加速度が8000から12000Gと範囲が高く、分離膜のファウリングの原因となる糖を分離してしまい糖濃度を過小評価してしまうという問題があった。また、上澄み液のみの糖濃度によって評価する構成であるため、必ずしも分離膜のファウリングの原因とならずに分離膜を透過する糖も検出し、分離膜のファウリング状態を正しく評価できないという問題があった。
【0011】
特許文献3に記載された汚水の処理方法は、浸漬型膜分離装置のろ過膜の細孔より大孔径の細孔(細孔比で10倍以上)が形成された不織布等からなるろ過膜で構成されるろ過手段が用いられるが、当該不織布等に形成された細孔から分離膜のファウリングの原因となる物質は活性汚泥の一部とともに除去されてしまうため、ろ過膜の透過液のCODが低く検出されることになり、つまり、ファウリングの原因となる物質を過小評価するという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、分離膜のファウリング状態を正しく評価でき、分離膜の適切な洗浄が可能な分離膜のファウリングの評価方法及び膜分離設備の運転方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による分離膜のファウリングの評価方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、被処理液から透過液を得る膜分離装置に備えた分離膜のファウリング評価方法であって、前記被処理液を1800〜6000Gの重力加速度で遠心分離して得られる上澄み液中の有機物濃度と、前記分離膜の透過液中の有機物濃度とをそれぞれ測定し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差若しくは比率、または差若しくは比率の変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する点にある。
【0014】
活性汚泥等の被処理液を1800Gより小さな重力加速度で遠心分離して得られた上澄み液中には活性汚泥やその他の懸濁物質等が大量に残存しているため、有機物濃度を的確に測定できない虞がある。一方、活性汚泥等の被処理液を6000Gより大きな重力加速度で遠心分離すると、分離膜のファウリングの原因となるような有機物までもが固形分とともに分離されてしまい、上澄み液の有機物濃度が低く測定されてしまう虞がある。
【0015】
遠心分離を1800〜6000Gの重力加速度で行うことで、活性汚泥等の被処理液を分離しながら、上澄み液中に含まれる有機物濃度を的確に測定することができ、つまり、被処理液に含まれる有機物濃度を的確に測定できる。
【0016】
処理槽内に流入する被処理液の性状は常に一定とは限らず、また、水温等の環境により、槽内の有機物濃度は常に変化している。前記上澄み液中の有機物濃度が高くても、すべてがファウリングの原因となる物質ではないため、分離膜のファウリング状態が悪いとは限らず、逆に前記上澄み液中の有機物濃度が低くても、分離膜がファウリングが発生していないとは限らない。
【0017】
また、槽内の被処理液に含まれる有機物は、すべてが分離膜のファウリングの原因となるものではなく、分離膜を透過するものも含んでいる。そこで、分離膜を透過した透過液中の有機物濃度を測定し、上述した上澄み液中の有機物濃度の測定値との差若しくは比率、または差若しくは比率の変化率をみることで、分離膜のファウリングの原因となる有機物濃度を算出することができるので、分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0018】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、被処理液から透過液を得る膜分離装置に備えた分離膜のファウリング評価方法であって、遠心分離後の上澄み液の濁度が0.015(ABS660nm)より大きく0.025(ABS660nm)より小さな範囲となる重力加速度で前記被処理液を遠心分離して得られる上澄み液中の有機物濃度と、前記分離膜の透過液中の有機物濃度とをそれぞれ測定し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差若しくは比率、または差若しくは比率の変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する点にある。
【0019】
活性汚泥等の被処理液を、遠心分離後の上澄み液の濁度が0.025(ABS660nm)以上となるような重力加速度で遠心分離して得られた上澄み液中には活性汚泥等が大量に残存しているため、有機物濃度を的確に測定できない虞がある。一方、活性汚泥等の被処理液を、遠心分離後の上澄み液の濁度が0.015(ABS660nm)以下となるような重力加速度で遠心分離すると、分離膜のファウリングの原因となるような有機物までもが固形分とともに分離されてしまい、上澄み液の有機物濃度が低く測定されてしまう虞がある。
【0020】
遠心分離を遠心分離後の上澄み液の濁度が0.015(ABS660nm)より大きく0.025(ABS660nm)より小さな範囲となる重力加速度で行うことで、活性汚泥等中の固形分を分離しながら、上澄み液中に含まれる有機物濃度を的確に測定することができ、つまり、槽内の被処理液に含まれる有機物濃度を的確に測定できる。
【0021】
これにより、上述の第1特徴構成を備えた分離膜のファウリングの評価方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0022】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値が所定の第1閾値よりも小さい場合に、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の差またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値が前記第1閾値以上の場合に、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の比率またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する点にある。
【0023】
上澄み液中の有機物濃度が所定の第1閾値より小さい場合は、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の比率、または、その比率の変化率による分離膜のファウリング状態の評価がしにくい。そこで、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の差またはその差の変化率に基づくことで、分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0024】
逆に、上澄み液中の有機物濃度の測定値が所定の第1閾値以上の場合は、有機物濃度の測定誤差を考慮すると、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の比率またはその比率の変化率に基づいた方が、前記分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0025】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差が所定の第2閾値よりも小さい場合に、各測定値の差またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差が前記第2閾値以上の場合に、各測定値の比率またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する点にある。
【0026】
上澄み液中の有機物濃度の測定値と透過液中の有機物濃度の測定値との差が所定の第2閾値より小さい場合は、有機物濃度の測定誤差を考慮すると、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の比率、または、その比率の変化率による分離膜のファウリング状態の評価がしにくい。前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の差またはその差の変化率に基づくことで、分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0027】
逆に、上澄み液中の有機物濃度の測定値と透過液中の有機物濃度の測定値との差が所定の第2閾値以上の場合は、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の比率またはその比率の変化率に基づいた方が、前記分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0028】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記有機物濃度が、全糖、全タンパク質、ウロン酸の少なくとも何れかの濃度である点にある。
【0029】
活性汚泥が充填された槽内に多種多様な被処理液が流入しても、全糖、全タンパク質、ウロン酸の少なくとも何れかの有機物濃度に基づくことで、分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0030】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記有機物濃度が、TOC計、COD計、紫外線吸光光度計の何れかの測定器により測定される点にある。
【0031】
全有機炭素、化学的酸素要求量、紫外線の吸光度は、被処理液中及び透過液中の有機物濃度と相関がある。よって、TOC計、COD計、紫外線吸光光度計の何れかの測定器により測定される何れかの指標に基づいて有機物濃度を正しく算出することができる。
【0032】
本発明による膜分離設備の運転方法の第一特徴構成は、同請求項7に記載した通り、被処理液から透過液を得る膜分離装置を備えた膜分離設備の運転方法であって、前記膜分離装置を介して透過液を得るろ過運転工程の実行中または停止中に、上述の第一から第六の何れかの特徴構成を備えた分離膜のファウリングの評価方法による評価工程を実行し、前記評価工程で前記分離膜にファウリングが発生しつつある、または、ファウリングが発生したと評価されると、前記膜分離装置の分離膜を洗浄する洗浄工程を実行する点にある。
【0033】
上述の第一から第六の何れかの特徴構成を備えた分離膜のファウリングの評価方法により分離膜にファウリングが発生したと評価されると、分離膜にろ過方向とは逆方向に透過液等の流体を流す等の洗浄工程を実行して分離膜を洗浄することでファウリングを解消することができ膜閉塞を防止できる。
【0034】
また、分離膜にファウリングが発生しつつあると評価されると、被処理液中に凝集剤を添加して、ファウリングの原因となる物質を凝集させる等の除去工程を実行することで、ファウリングの進行を抑制することができる。
【0035】
なお、ファウリングの評価の頻度は、例えば一日一回であったり、一週間に一回であったり、適用される被処理液の性状や処理槽、分離膜の構成に応じて適宜設定される。このとき、膜分離装置を介して透過液を得るろ過運転工程の実行中または停止中の何れであってもよい。
【0036】
同第二の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、さらに、前記ろ過運転工程の実行中に前記分離膜の膜間差圧、または、透過液流量を測定し、前記膜間差圧、または、前記透過液流量の測定値が予め設定されたファウリング判定用の差圧閾値以上になると、前記評価工程を実行する点にある。
【0037】
透過液流量を設定したろ過運転工程の実行中の分離膜の膜間差圧は、分離膜のファウリング、または、分離膜表面や分離膜の間へ活性汚泥の付着や、被処理液中のカルシウム分等により生起する無機塩の付着や、透過液の吸引管の閉塞や、散気装置の故障による曝気量の減少等を原因にして上昇する。
【0038】
分離膜のファウリングを原因とするものは、分離膜を取り出して薬液洗浄したり、分離膜にろ過方向とは逆方向に薬液や透過液を通流して逆洗することで解消する。
【0039】
しかし、分離膜表面や分離膜の間へ活性汚泥等の付着や、透過液の吸引管の閉塞や、散気装置の故障による曝気量の減少等を原因とするものの場合は、分離膜からの透過液の吸引量を変更したり散気装置の曝気量を変更したり、分離膜を取り出して作業員により付着物の除去を行ったり、吸引管の清掃や、散気装置の修理等によらないと解消しない。
【0040】
よって、分離膜表面や分離膜の間へ活性汚泥等の付着や、透過液の吸引管の閉塞や、散気装置の故障による曝気量の減少等により膜間差圧が上昇している場合に、つまり、分離膜にファウリングが発生していないのにもかかわらず、ファウリングが発生していると判断して薬液による逆洗を頻繁に行うと、薬液が無駄になってしまうという問題や、このような膜分離活性汚泥処理の効率そのものが低下するという問題がある。無駄な逆洗をなくすためには、膜間差圧の上昇の原因を確認するために分離膜を処理槽から引き上げて作業員が目視する作業が必要であり煩雑であるという問題がある。
【0041】
上述の構成によれば、ろ過運転工程の実行中に測定した前記分離膜の膜間差圧の測定値が予め設定されたファウリング判定用の差圧閾値以上かつ、ファウリングが発生していると評価されたときにのみ逆洗等の洗浄工程を実行することができるので上述の問題が解決できる。
【0042】
自然水頭ろ過などの膜間差圧を設定したろ過運転工程の実行中の分離膜にファウリング、または、分離膜表面や分離膜の間へ活性汚泥の付着や、被処理液中のカルシウム等により生起する無機塩の付着や、透過液の吸引管の閉塞や、散気装置の故障による曝気量の減少等が発生すると、分離膜の透過液量が減少する。
【0043】
そこで、ろ過運転工程の実行中に測定された前記分離膜の透過液量の測定値が予め設定されたファウリング判定用の液量閾値以下となったときに、評価工程を実行することで、上述の膜間差圧を測定する場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0044】
さらに、分離膜の膜間差圧と透過液量の何れも測定し、評価工程のトリガーとすることで、よりファウリング状態を正しく評価することができる。
【0045】
同第三の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、さらに、前記ろ過運転工程の実行中に前記膜分離槽で処理される原水に含まれる難分解性有機物の濃度を測定し、前記難分解性有機物の濃度の測定値が予め設定されたファウリング判定用の濃度閾値以上になると、前記評価工程を実行する点にある。
【0046】
難分解性有機物はすべてが分離膜のファウリングの原因とならなくとも、ファウリングの原因となる有機物との相関がみられるため、前記ろ過運転工程の実行中に前記膜分離槽で処理される原水に含まれる難分解性有機物の濃度を測定し、予め設定されたファウリング判定用の濃度閾値と比較することで、上述の第一または第二の何れかの特徴構成を備えた膜分離設備の運転方法と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0047】
以上説明した通り、本発明によれば、分離膜のファウリング状態を正しく評価でき、分離膜の適切な洗浄が可能な分離膜のファウリングの評価方法及び膜分離設備の運転方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】汚水処理設備の説明図
【図2】制御装置の説明図
【図3】重力加速度と得られた上澄み液の濁度の関係の説明図
【図4】各重力加速度における上澄み液の積算流量と透過流束の説明図
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明による分離膜のファウリングの評価方法及び膜分離設備の運転方法を説明する。
図1に示すように、汚水処理設備1は、前処理設備2と、流量調整槽3と、活性汚泥が充填された膜分離槽4と、膜分離槽4に浸漬配置され槽内の被処理液から透過液を得る膜分離装置6と、処理水槽5を備えている。
【0050】
前処理設備2には原水に混入している夾雑物を除去するバースクリーン2a等が設けられ、バースクリーン2a等で夾雑物が除去された被処理液が流量調整槽3に一旦貯留される。原水の流入量が変動する場合であっても、ポンプやバルブ等の流量調整機構3aによって、流量調整槽3からは一定流量の被処理液が膜分離槽4に安定供給されるように構成されている。
【0051】
膜分離装置6は、複数の分離膜と、分離膜の下方に設置された散気装置7を備えている。複数の分離膜は各膜面が縦姿勢となるように一定間隔を隔てて配列されている。各分離膜には集液管を介してろ過ポンプ8が接続され、ろ過ポンプ8による差圧で膜分離槽4内の被処理液が分離膜を透過する。
【0052】
散気装置7は複数の散気孔が形成された散気管と、散気管に空気等を供給するブロワやコンプレッサなどの給気源を備えている。なお、散気装置7やろ過ポンプ8は、制御装置10により夫々制御されている。
【0053】
図2に示すように、制御装置10は、流量調整機構3aを制御する流量制御部11と、散気装置7を制御する散気制御部12と、ろ過ポンプ8を制御するポンプ制御部13を備えた主制御部14と、膜分離槽4内に設置された水位センサからの水位の測定値Lや、分離膜の膜間差圧を測定する圧力計からの圧力の測定値Pや、分離膜からの透過液量を測定する流量計からの測定値Q等の各信号が入力される信号入力部15と、分離膜のファウリング状態を評価するファウリング評価部16と等を備え、膜分離活性汚泥設備の運転を行うように構成されている。なお、各制御部等はシーケンサやマイクロコンピュータで構成されている。
【0054】
通常、制御装置10は、膜分離槽4内に設置された水位計からの水位の測定値Lに基づいて、槽内の水位が一定に維持されるように、流量調整機構3aを制御して流量調整槽3から膜分離槽4に供給する被処理液を調整し、散気装置7による曝気を行い、ろ過ポンプ8を制御して活性汚泥によって生物学的に処理された被処理液を膜分離装置6の分離膜によって固液分離するろ過運転工程を実行している。
【0055】
膜分離装置6の分離膜の透過液は、処理水槽5に導かれて一時貯留され、必要に応じて消毒され放流される。なお、膜分離槽4で増殖した余剰汚泥は槽外に引き抜かれるように構成されている。
【0056】
膜分離槽4では、流量調整槽3からの被処理液の流入量が調整され、また余剰汚泥が引き抜かれることで、槽内が一定の汚泥濃度に保たれるように制御されているが、槽内に流入する被処理液の性状は常に一定とは限らず、また、水温等の変化により槽内の有機物濃度は常に変化しており、分離膜にはファウリングが発生し得る環境となっている。
【0057】
ここで、槽内の有機物濃度が高くても、被処理液に含まれる有機物のすべてがファウリングの原因となる物質ではないため、分離膜のファウリング状態が悪いとは限らず、逆に槽内の有機物濃度が低くても、その他条件により分離膜にファウリングが発生していないとは限らない。さらに、ファウリングが発生していても、活性汚泥の処理により経時的に解消する場合もある。
【0058】
そこで、制御装置10は、このような散気装置7とろ過ポンプ8を作動させて被処理液を分離膜に透過させて設定流量の透過液を得るろ過運転工程の実行中に、本発明による分離膜のファウリングの評価方法による評価工程を実行し、評価工程で分離膜にファウリングが発生したと評価されると、膜分離装置6の分離膜を洗浄する洗浄工程を実行する。
【0059】
なお、制御装置10は、ろ過運転工程の実行中に圧力計から入力される分離膜の膜間差圧の測定値Pが予め設定されたファウリング判定用の差圧閾値Pth以上になると、評価工程を実行するように構成されている。
【0060】
評価工程は、膜分離槽4内の被処理液を遠心分離する遠心分離工程と、前記遠心分離工程で得られた上澄み液中の有機物濃度を測定する第一測定工程と、分離膜の透過液中の有機物濃度を測定する第二測定工程とを備え、第一測定工程で測定された第一測定値と、第二測定工程で測定された第二測定値に基づいてファウリング状態を評価するように構成されている。
【0061】
遠心分離工程では、作業員が公知の遠心分離機を用いて膜分離槽4内の活性汚泥を所定の重力加速度で遠心分離して上澄み液を得る。なお、遠心分離工程は、サンプリング装置等を用いて自動化することも可能である。
【0062】
図3は、被処理液を遠心分離する際の重力加速度と、得られた上澄み液の濁度の関係を示している。濁度は、得られた上澄み液を分光光度計で660nmにおける吸光度を測定することにより算出した。
【0063】
例えば、遠心分離の重力加速度が1000Gより小さな範囲であるときは、遠心分離後の上澄み液の濁度が0.05(ABS660nm)より大きく、被処理液中の活性汚泥やその他の懸濁物質が沈降せずに大量に残っているため、有機物濃度を的確に測定できない。よって、このような被処理液中の活性汚泥やその他の懸濁物質がほぼ沈降するような濁度が0.025(ABS660nm)より小さい範囲となる1800G程度の重力加速度で遠心分離することが好ましい。
【0064】
一方、被処理液を、遠心分離後の上澄み液の濁度が0.015(ABS660nm)以下となるような重力加速度、例えば6000Gより大きい重力加速度で遠心分離すると、分離膜のファウリングの原因となるような有機物までもが活性汚泥等とともに分離されてしまい、上澄み液の有機物濃度が低く測定されてしまう虞がある。
【0065】
図4には、2000G、4000G、6000G、8000G、10000G、12000Gの各重力加速度でファウリングの原因となる有機物を含んだ被処理液を遠心分離して得られた上澄み液を、分離膜に透過させたときの積算流量と単位膜間差圧あたりの透過流束の関係が示されている。
【0066】
2000G、4000G、6000Gの重力加速度で被処理液を遠心分離して得られた上澄み液に比べて、8000G、10000G、12000Gの重力加速度で被処理液を遠心分離して得られた上澄み液は、積算流量が増加しても透過流束の低下の程度が緩やかであり、つまり,分離膜のファウリングの原因となるような有機物までもが活性汚泥等とともに分離されてしまい、分離膜のファウリングの原因となるような有機物の濃度を過小評価することになる。
【0067】
よって、遠心分離工程では、公知の遠心分離機を用いて膜分離槽4内の活性汚泥を1800〜6000Gの重力加速度で遠心分離して上澄み液を得る。なお、重力加速度は、1800〜4000Gの範囲が好ましく、2000〜3000Gの範囲がさらに好ましい。
【0068】
前記第一測定工程では、遠心分離工程で得られた上澄み液中の有機物濃度が測定される。前記第二測定工程では分離膜の透過液中の有機物濃度が測定される。ここで、有機物濃度とは、全糖、全タンパク質、ウロン酸の少なくとも何れかの濃度であり、各有機物濃度は、TOC計、COD計、紫外線吸光光度計の何れかの測定器により測定され、測定値がTOC計、COD計、紫外線吸光光度計等の測定器と信号線を介して接続された制御装置10のファウリング評価部16へ入力される。または、作業員によって該測定値がファウリング評価部16へ入力される。
【0069】
なお、紫外線吸光光度計により有機物濃度を測定する場合は、220〜300nmの範囲の波長での吸光度を測定する。特に、250〜260nmの範囲の波長での吸光度を測定すると、分離膜のファウリングの原因となる有機物濃度を的確に測定できる点で好ましい。
【0070】
以上のように、前記第一測定工程で測定された上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と前記第二測定工程で測定された透過液中の有機物濃度の測定値C2が、制御装置10のファウリング評価部16に入力される。
【0071】
ファウリング評価部16は、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と前記透過液中の有機物濃度の測定値C2から、その差D(=C1−C2)若しくは比率R(=C1/C2)、または差の変化率Dr(=Dn+1−D)若しくは比率の変化率Rr(=Rn+1/R)の少なくとも何れかを算出し、算出結果に基づいて分離膜のファウリング状態を評価する。
【0072】
なお、ファウリング評価部16は、前記算出結果を記憶する記憶部を備え、前記記憶部は、前記算出結果を経時的に記憶する。差の変化率を算出する際の差Dn+1とは、記憶部に記憶された差Dの次の算出結果を示す。なお、差Dは差Dn+1の直前のみの結果であってもよく、差Dn+1を算出するより前に記憶した所定回数分の算出結果の平均値Dnavであってもよい。
【0073】
同様に、比率の変化率を算出する際の比率Rn+1とは、記憶部に記憶された比率Rの次の算出結果を示す。なお、比率Rは比率Rn+1の直前のみの結果であっても良く、比率Rn+1を算出するより前に記憶した所定回数分の算出結果の平均値Rnavであってもよい。
【0074】
以上のように、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と前記透過液中の有機物濃度の測定値C2から算出された結果に基づいて、ファウリング評価部16は以下のように分離膜のファウリング状態を評価する。
【0075】
ファウリング評価部16は、差D(=C1−C2)が、予め設定された所定のファウリング評価閾値Dth以上となると、分離膜にファウリングが発生している、または、ファウリングが発生しつつあると評価する。
【0076】
または、ファウリング評価部16は、比率R(=C1/C2)が、予め設定された所定のファウリング評価閾値Rth以上となると、分離膜にファウリングが発生している、または、ファウリングが発生しつつあると評価する。
【0077】
または、ファウリング評価部16は、差の変化率Dr(=Dn+1−D)が、予め設定された所定のファウリング評価閾値Drth以上となると、ファウリングが発生している、または、ファウリングが発生しつつあると評価する。
【0078】
または、ファウリング評価部16は、比率の変化率Rr(=Rn+1/R)が、予め設定された所定のファウリング評価閾値Rrth以上となると、ファウリングが発生している、または、ファウリングが発生しつつあると評価する。
【0079】
ここで、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1が所定の第1閾値Cthより小さい場合は、有機物濃度の測定誤差を考慮すると、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と透過液中の有機物濃度の測定値C2の比率R(=C1/C2)、または、その比率の変化率Rr(=Rn+1/R)による分離膜のファウリング状態の変動幅が大きくなり評価がしにくい。
【0080】
そこで、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と透過液中の有機物濃度の測定値C2の差D(=C1−C2)またはその差の変化率Dr(=Dn+1−D)に基づくことで、分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0081】
逆に、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1が所定の第1閾値Cth以上の場合は、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と透過液中の有機物濃度の測定値C2の比率R(=C1/C2)またはその比率の変化率Rr(=Rn+1/R)に基づいた方が、分離膜のファウリング状態を正しく評価することができる。
【0082】
このように、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と所定の第1閾値Cthとを比較して算出方法を適宜選択することで、分離膜のファウリング状態をより正しく評価できる。
【0083】
以上のように、ファウリング評価部16により何れかの算出結果により分離膜にファウリングが発生したと評価されると、制御装置10は分離膜の洗浄工程を実施する。
【0084】
また、前記算出結果により分離膜にファウリングが発生しつつあると評価されると、制御装置10はファウリングの原因となる物質の除去工程を実施する。
【0085】
なお、洗浄工程とは、分離膜にろ過方向とは逆方向に薬液や透過液を通流して逆洗したり、または、分離膜を取り出して薬液洗浄する等の工程であり、除去工程とは、ファウリングを抑制するための凝集剤等を槽内に注入したり、余剰汚泥として被処理液を排出する工程であり、制御装置10によって自動制御される構成であってもよく、作業員による手作業で行われる構成であってもよい。
【0086】
また、流量調整機構3aによる膜分離槽4へ供給される被処理液の流量、及び、ろ過ポンプ8による透過液の流量や吸引圧力を低減させ、膜分離槽4内での被処理液の滞留時間を長くし、さらに散気装置7による曝気量を増加させ、ファウリングの解消を促すような構成であってもよい。
【0087】
なお、ファウリング評価部16が、ファウリングが発生していないと判断すると、膜間差圧の上昇は分離膜のファウリングを原因とするもの以外の、例えば、分離膜表面や分離膜の間へ活性汚泥の付着や、被処理液中のカルシウム分等により生起する無機塩の付着や、透過液の吸引管の閉塞や、散気装置の故障による曝気量の減少等であると考えられるため、有機物を対象とした薬液洗浄等を行わずに、分離膜からの透過液の吸引量を変更したり散気装置の曝気量を変更したり、分離膜を取り出して作業員により付着物の除去を行ったり、吸引管の清掃や、散気装置の修理等を行う。
【0088】
上述した実施形態では、制御装置10は、ろ過運転工程の実行中に圧力計から入力される分離膜の膜間差圧の測定値Pが予め設定されたファウリング判定用の差圧閾値Pth以上になると、評価工程を実行し、評価工程で分離膜にファウリングが発生している、または、ファウリングが発生しつつあると評価されると洗浄工程が実行される構成について説明したが、膜間差圧の測定値Pが予め設定されたファウリング判定用の差圧閾値Pthより小さくても、定期的に評価工程を実行し、膜間差圧の測定値Pが予め設定されたファウリング判定用の差圧閾値Pth以上となったときに、前記評価工程で分離膜にファウリングが発生している、または、ファウリングが発生しつつあると評価されていれば洗浄工程が実行されるように構成してもよい。
【0089】
また、制御装置10は、ろ過運転工程の実行中に流量計から入力される分離膜の透過液量の測定値Qが、予め設定されたファウリング判定用の液量閾値Qth以下になると、前記評価工程を実行するように構成してもよく、また、ろ過運転工程の実行中に膜分離槽4で処理される原水に含まれる難分解性有機物の濃度の測定値Crが予め設定されたファウリング判定用の濃度閾値Crth以上になると、前記評価工程を実行するように構成してもよい。
【0090】
上述した分離膜のファウリングの評価工程では、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と所定の第1閾値Cthを比較して、ファウリングの評価条件を決定する構成について説明したが、上澄み液中の有機物濃度の測定値C1と透過液中の有機物濃度の測定値C2との差D(=C1−C2)が所定の第2閾値D2よりも小さい場合に、各測定値の差D(=C1−C2)またはその変化率Dr(=Dn+1−D)に基づいて分離膜のファウリング状態を評価し、差D(=C1−C2)が第2閾値D2以上の場合に、各測定値の比率R(=C1/C2)またはその変化率Rr(=Rn+1/R)に基づいて分離膜のファウリング状態を評価するように構成してもよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、制御装置10は、ろ過運転工程の実行中に、本発明による分離膜のファウリングの評価方法による評価工程を実行する構成について説明したが、前記評価工程をろ過運転工程の停止中に実行する構成であってもよい。
【0092】
また、分離膜のファウリングの評価方法による評価工程はファウリング評価部16によるものに限らず、作業員がTOC計等の各測定装置からの測定値に基づいてファウリング状態を算出及び評価する構成であってもよい。
【0093】
上述した実施形態では、吸引ポンプ8の制御により被処理液を分離膜を透過させる構成について説明したが、吸引ポンプ8は必ずしも備える必要はなく、自然水頭を利用して、分離膜の表裏間に差圧を発生させて、被処理液を分離膜に透過させる構成であってもよい。
【0094】
上述した実施形態では、膜分離槽内に膜分離装置が浸漬配置されている構成について説明したが、膜分離装置が被処理液の貯留槽の外部に配置され、前記貯留槽と前記膜分離装置との間で被処理液を循環させながら分離膜を透過した透過液を得る構成であってもよい。
【0095】
上述した実施形態では、分離膜のファウリングの原因物質が有機物である構成について説明したが、ファウリングの原因物質としてカルシウムやリンといった成分を含んだ無機物にも適用できる。この場合も同様に、被処理液を遠心分離した上澄み液中の無機物濃度と分離膜の透過液中の無機物濃度からファウリング状態を評価可能である。
【0096】
上述した実施形態は本発明の一態様であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成や制御態様は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0097】
1:膜分離装置
2:前処理装置
3:流量調整槽
a:流量調整機構3
4:膜分離槽
5:処理水槽
6:膜分離槽値
7:散気装置
8:吸引ポンプ8
10:制御装置
11:流量制御部
12:散気制御部
13:ポンプ制御部
14:主制御部
15:信号入力部
16:ファウリング評価部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液から透過液を得る膜分離装置に備えた分離膜のファウリング評価方法であって、
前記被処理液を1800〜6000Gの重力加速度で遠心分離して得られる上澄み液中の有機物濃度と、前記分離膜の透過液中の有機物濃度とをそれぞれ測定し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差若しくは比率、または差若しくは比率の変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する分離膜のファウリングの評価方法。
【請求項2】
被処理液から透過液を得る膜分離装置に備えた分離膜のファウリング評価方法であって、
遠心分離後の上澄み液の濁度が0.015(ABS660nm)より大きく0.025(ABS660nm)より小さな範囲となる重力加速度で前記被処理液を遠心分離して得られる上澄み液中の有機物濃度と、前記分離膜の透過液中の有機物濃度とをそれぞれ測定し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差若しくは比率、または差若しくは比率の変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する分離膜のファウリングの評価方法。
【請求項3】
前記上澄み液中の有機物濃度の測定値が所定の第1閾値よりも小さい場合に、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の差またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値が前記第1閾値以上の場合に、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値の比率またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する請求項1または2記載の分離膜のファウリングの評価方法。
【請求項4】
前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差が所定の第2閾値よりも小さい場合に、各測定値の差またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価し、前記上澄み液中の有機物濃度の測定値と前記透過液中の有機物濃度の測定値との差が前記第2閾値以上の場合に、各測定値の比率またはその変化率に基づいて前記分離膜のファウリング状態を評価する請求項1または2記載の分離膜のファウリングの評価方法。
【請求項5】
前記有機物濃度が、全糖、全タンパク質、ウロン酸の少なくとも何れかの濃度である請求項1から4の何れかに記載の分離膜のファウリングの評価方法。
【請求項6】
前記有機物濃度が、TOC計、COD計、紫外線吸光光度計の何れかの測定器により測定される請求項1から4の何れかに記載の分離膜のファウリングの評価方法。
【請求項7】
被処理液から透過液を得る膜分離装置を備えた膜分離設備の運転方法であって、
前記膜分離装置を介して透過液を得るろ過運転工程の実行中または停止中に、請求項1から6の何れかに記載の分離膜のファウリングの評価方法による評価工程を実行し、前記評価工程で前記分離膜にファウリングが発生しつつある、または、ファウリングが発生したと評価されると、前記膜分離装置の分離膜を洗浄する洗浄工程を実行する膜分離設備の運転方法。
【請求項8】
さらに、前記ろ過運転工程の実行中に前記分離膜の膜間差圧、または、透過液流量を測定し、前記膜間差圧、または、前記透過液流量の測定値が予め設定されたファウリング判定用の差圧閾値以上になると、前記評価工程を実行する請求項7記載の膜分離設備の運転方法。
【請求項9】
さらに、前記ろ過運転工程の実行中に前記膜分離槽で処理される原水に含まれる難分解性有機物の濃度を測定し、前記難分解性有機物の濃度の測定値が予め設定されたファウリング判定用の濃度閾値以上になると、前記評価工程を実行する請求項7または8記載の膜分離設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200631(P2012−200631A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65398(P2011−65398)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 省水型・環境調和型水循環プロジェクト 水循環要素技術研究開発 省エネ型膜分離活性汚泥法(MBR)技術の開発 委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】