説明

分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置

【課題】 分離膜モジュールの管板に、分離膜エレメントをシール部材を介して取り付ける作業、あるいはまた分離膜エレメントの取替え等のメンテナンス作業の作業性が容易であり、しかも各種使用条件下での耐性に優れているうえに、コスト的に有利である、分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置を提供する。
【解決手段】 分離膜モジュール1における分離膜エレメント3の取付装置は、シール部材が、例えばグラファイト製の平面よりみて欠円形を有する複数個の欠円形パッキン7によって構成されている。分離膜エレメント3の上端部3aに複数個の欠円形パッキン7が複数段重ねられて嵌め被せられ、上下に隣り合う欠円形パッキン7a,7bの欠損部8,8同士が、平面よりみて相互に異なる位置に配せられ、複数段の欠円形パッキン7が管板取付孔11の内方突出環状受け部12に受け止められ、押さえ金具20のねじ込みにより複数段の欠円形パッキン7が環状受け部12に押圧せしめられて、密封が果たされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合気体や溶液等の流体の分離に用いる分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置、とりわけ、分離膜エレメントの取付けシール構造に関するものである。より詳しくは、本発明による分離膜エレメントの取付装置は、各種ガス分離や、溶剤系の脱水など、ゼオライト分離膜を使って流体を分離する分離膜モジュールについて適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、混合気体または溶液中の成分を分離するための装置として、分離膜モジュールが知られており、この分離膜モジュールに搭載される管状分離膜エレメントとしては、一般に、アルミナ、ジルコニアなどの材料で形成される管状のセラミックス多孔質基体に、分子程度の大きさの微細孔を有するゼオライト薄膜がコーティングされている管状分離膜エレメント本体と、分離膜エレメント本体の一端に、緻密質セラミックス製の接続管が接合され、同分離膜エレメント本体の他端に、緻密質セラミックス製の封止栓が接合されてなる一体型の管状無機分離膜エレメントが用いられている。
【0003】
このような管状分離膜エレメントを、分離膜モジュールへ組み込む際の取り付け構造に関する従来技術としては、下記の特許文献1に記載のように、管状分離膜エレメントの上端部にフッ素ゴム系などの材質のO−リングを嵌め被せ、押さえ金具のねじ込みにより、O−リングを上から潰すことによって、シール空間を埋める構造や、テフロン(登録商標)系材質のいわゆるオムニシールと呼ばれる実用運転時に生じる圧力差を利用してシールする構造のものなどが知られている。
【0004】
また、下記の特許文献2に記載のように、管状分離膜エレメントの上端部に金属環を嵌め被せ、グランドパッキンと、加熱膨張性マットを介して金属環に把持してシールさせる構造も知られている。
【0005】
さらに、下記の特許文献3に記載のように、管状分離膜エレメントの上端部に横断面台形状の金属製シールリングを嵌め被せ、押さえ金具のねじ込みにより、横断面台形状のリングを、テーパー状の受け部に押圧して、シールするべき面に密着させることで、シールする構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−226374号公報
【特許文献2】実公平6−25760号公報
【特許文献3】特開2011−72972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のO−リングを用いる従来法によれば、O−リングがフッ素ゴムなどの柔らかい材質によりつくられているため、シールの際の押付け変形が容易であり、従って、シールすべき空間が埋まりやすく、確実なシール性が確保できる反面、高温・高圧環境下や扱う媒体に制限があり、用途としては中性溶剤系などに限られているという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献1に記載のいわゆるオムニシール構造のシール部材を用いる従来法によれば、シール部材がテフロン(登録商標)系材質であるため、これも使用温度・圧力に制限があるという問題があり、また、寸法的に隙間が小さい構造を取らざるをえないため、管状分離膜エレメントの取付作業では、比較的手間がかかるという問題があった。
【0009】
上記特許文献2に記載の金属環把持グランドパッキンを用いる従来法によれば、グランドパッキン以外にも、加熱膨張性マットを使用し、金属環に管状分離膜エレメントを取り付けたうえで、管板に取り付ける構造であるため、付加部品が非常に多く、必然的に管状分離膜エレメントの取付ピッチが大きくなり、分離膜モジュールとしての容積効率の低下を招く可能性が高いという問題があった。
【0010】
上記特許文献3に記載の台形状金属シールリングを用いる従来法によれば、その構造的な面から、ヤング率が小さい(つまり変形しやすい)銅やアルミニウムなどでは適用できるが、逆に、銅やアルミニウムでは、取り扱いできる媒体(流体)が限られてくるという問題があった。
【0011】
例えば、分離膜モジュールと同材質であるステンレス鋼レベルのヤング率になると、これをシール部材として用いて、混合気体や溶液等の流体の分離に用いる分離膜モジュールにおける分離膜エレメントのシール構造とすることは、実際には困難な状況であるという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、分離膜モジュールの管板に、分離膜エレメントをシール部材を介して取り付ける作業、あるいはまた分離膜エレメントの取替え等のメンテナンス作業の作業性が容易であり、しかも各種使用条件下での耐性に優れているうえに、コスト的に有利である、分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置の発明は、管板(10)を具備するケーシング(2)と、管板(10)に吊下状かつ並列状に取り付けられる複数の管状分離膜エレメント(3)と、各管状分離膜エレメント(3)を管板(10)にシール部材を介して固定するための押さえ金具(20)とを備え、管板(10)の分離膜エレメント(3)取付箇所に取付孔(11)が貫通状にあけられ、取付孔(11)の内周面下部に内方突出環状受け部(12)が設けられるとともに、取付孔(11)の内周面上部に雌ねじ部(14)が設けられ、押さえ金具(20)は、ガス通過孔(23)を有する頂壁(21)とこれの外周部に連なる筒形垂下壁(22)とよりなりかつ筒形垂下壁(22)の外周面に雄ねじ部(24)が設けられている分離膜モジュール(1)において、シール部材が、平面よりみて欠円形を有する複数個の欠円形パッキン(7)によって構成され、管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に複数個の欠円形パッキン(7)が複数段重ねられて嵌め被せられ、上下に隣り合う欠円形パッキン(7a)(7b)の欠損部(8)(8)同士が、平面よりみて相互に異なる位置に配せられるとともに、これらの欠円形パッキン(7)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に受け止められ、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられて、取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の先端部により複数段の欠円形パッキン(7)が取付孔(11)周面下部の環状受け部(12)に押圧せしめられ、これらの欠円形パッキン(7)を介して取付孔(11)の内周面と分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面とが密封されていることを特徴としている。
【0014】
上記請求項1に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置において、欠円形パッキン(7)が、グラファイト製であることが好ましい。
【0015】
請求項3に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置の発明は、管板(10)を具備するケーシング(2)と、管板(10)に吊下状かつ並列状に取り付けられる複数の管状分離膜エレメント(3)と、各管状分離膜エレメント(3)を管板(10)にシール部材を介して固定するための押さえ金具(20)とを備え、管板(10)の分離膜エレメント(3)取付箇所に取付孔(11)が貫通状にあけられ、取付孔(11)の内周面下部に内方突出環状受け部(12)が設けられるとともに、取付孔(11)の内周面上部に雌ねじ部(14)が設けられ、押さえ金具(20)は、ガス通過孔を有する頂壁とこれの外周部に連なる筒形垂下壁(22)とよりなりかつ筒形垂下壁(22)の外周面に雄ねじ部(24)が設けられている分離膜モジュール(1)において、シール部材が、上方に向かって開口した横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)によって構成され、管板(10)の取付孔(11)内周面下部の環状受け部(12)に下方に向かって漸次先細となるテーパー面(13)が設けられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の下端に薄肉先端部(25)が設けられていて、該薄肉先端部(25)は、環状受け部(12)のテーパー面(13)より下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間の間隙に嵌り込み可能な厚さとなされており、管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が、その開口部(9a)を上向きにして嵌め被せられ、この横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に受け止められ、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられて、取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の薄肉先端部(25)が、横断面凹形のリング状パッキン(9)の上向き開口部(9a)に上方から入り込んで、この薄肉先端部(25)により横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が上から押さえ込まれることにより、金属薄板製リング状パッキン(9)が、押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)の外面に沿うように変形せしめられて、この変形金属薄板製リング状パッキン(9)および押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)を介して、環状受け部(12)のテーパー面(13)およびこれより下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間が密封されていることを特徴としている。
【0016】
上記請求項3に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置において、上方に向かって開口した横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が、ステンレス鋼製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置の発明は、管板(10)を具備するケーシング(2)と、管板(10)に吊下状かつ並列状に取り付けられる複数の管状分離膜エレメント(3)と、各管状分離膜エレメント(3)を管板(10)にシール部材を介して固定するための押さえ金具(20)とを備え、管板(10)の分離膜エレメント取付箇所に取付孔(11)が貫通状にあけられ、取付孔(11)の内周面下部に内方突出環状受け部(12)が設けられるとともに、取付孔(11)の内周面上部に雌ねじ部(14)が設けられ、押さえ金具(20)は、ガス通過孔(23)を有する頂壁(21)とこれの外周部に連なる筒形垂下壁(22)とよりなりかつ筒形垂下壁(22)の外周面に雄ねじ部(24)が設けられている分離膜モジュール(1)において、シール部材が、平面よりみて欠円形を有する複数個の欠円形パッキン(7)によって構成され、管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に複数個の欠円形パッキン(7)が複数段重ねられて嵌め被せられ、上下に隣り合う欠円形パッキン(7a)(7b)の欠損部(8)(8)同士が、平面よりみて相互に異なる位置に配せられるとともに、これらの欠円形パッキン(7)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に受け止められ、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられて、取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の先端部により複数段の欠円形パッキン(7)が取付孔(11)周面下部の環状受け部(12)に押圧せしめられ、これらの欠円形パッキン(7)を介して取付孔(11)の内周面と分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面とが密封されていることを特徴とするもので、請求項1の発明によれば、分離膜モジュールの管板に、分離膜エレメントをシール部材を介して取り付ける作業、あるいはまた分離膜エレメントの取替え等のメンテナンス作業の作業性が容易であり、しかも各種使用条件下での耐性に優れているうえに、コスト的に有利であるという効果を奏する。
【0018】
上記請求項1に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置において、欠円形パッキン(7)が、グラファイト製であることが好ましい。
【0019】
請求項3に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置の発明は、管板(10)を具備するケーシング(2)と、管板(10)に吊下状かつ並列状に取り付けられる複数の管状分離膜エレメント(3)と、各管状分離膜エレメント(3)を管板(10)にシール部材を介して固定するための押さえ金具(20)とを備え、管板(10)の分離膜エレメント(3)取付箇所に取付孔(11)が貫通状にあけられ、取付孔(11)の内周面下部に内方突出環状受け部(12)が設けられるとともに、取付孔(11)の内周面上部に雌ねじ部(14)が設けられ、押さえ金具(20)は、ガス通過孔を有する頂壁とこれの外周部に連なる筒形垂下壁(22)とよりなりかつ筒形垂下壁(22)の外周面に雄ねじ部(24)が設けられている分離膜モジュール(1)において、シール部材が、上方に向かって開口した横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)によって構成され、管板(10)の取付孔(11)内周面下部の環状受け部(12)に下方に向かって漸次先細となるテーパー面(13)が設けられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の下端に薄肉先端部(25)が設けられていて、該薄肉先端部(25)は、環状受け部(12)のテーパー面(13)より下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間の間隙に嵌り込み可能な厚さとなされており、管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が、その開口部(9a)を上向きにして嵌め被せられ、この横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に受け止められ、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられて、取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の薄肉先端部(25)が、横断面凹形のリング状パッキン(9)の上向き開口部(9a)に上方から入り込んで、この薄肉先端部(25)により横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が上から押さえ込まれることにより、金属薄板製リング状パッキン(9)が、押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)の外面に沿うように変形せしめられて、この変形金属薄板製リング状パッキン(9)および押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)を介して、環状受け部(12)のテーパー面(13)およびこれより下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間が密封されていることを特徴とするもので、請求項3の発明によれば、分離膜モジュールの管板に、分離膜エレメントをシール部材を介して取り付ける作業、あるいはまた分離膜エレメントの取替え等のメンテナンス作業の作業性が容易であり、しかも各種使用条件下での耐性に優れているうえに、コスト的に有利であるという効果を奏する。
【0020】
上記請求項3に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置において、上方に向かって開口した横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が、ステンレス鋼製であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】分離膜エレメントの一例を示す縦断面図である。
【図2】分離膜モジュールの一例を示す縦断面図である。
【図3】本発明の分離膜エレメントの取付装置の第1実施形態を示す拡大断面図である。
【図4】図3の分離膜エレメントの取付装置に使用する欠円形パッキンの拡大斜視図である。
【図5】本発明の分離膜エレメントの取付装置の第2実施形態を示す拡大断面図で、管状分離膜エレメントの上端部に金属薄板製リング状パッキンを取り付けた状態を示している。
【図6】図5の分離膜エレメントの取付装置に使用する金属薄板製リング状パッキンの一部切欠きの拡大斜視図である。
【図7】図5の本発明の分離膜エレメントの取付装置の拡大断面図で、管状分離膜エレメントの上端部に嵌め被せた押さえ金具のねじ込みにより金属薄板製リング状パッキンが変形したシール状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明による分離膜エレメントの取付装置は、各種ガス分離や、溶剤系の脱水など、ゼオライト分離膜を使って流体を分離する分離膜モジュールについて適用されるものである。
【0024】
図1は、管状分離膜エレメント(3)の一例を示す縦断面図である。図2は、図1の管状分離膜エレメント(3)を具備する分離膜モジュール(1)の一例を示す縦断面図である。
【0025】
まず、図1において、管状分離膜エレメント(3)は、アルミナ、ジルコニアなどの材料で形成される管状のセラミックス多孔質基体に、分子程度の大きさの微細孔を有するゼオライト薄膜がコーティングされている管状分離膜エレメント本体(4)と、分離膜エレメント本体(4)の一端に、緻密質セラミックス製の接続管(5)が接合され、同分離膜エレメント本体(4)の他端に、緻密質セラミックス製の封止栓(6)が接合されてなるもので、一体型の管状無機分離膜エレメント(3)が用いられている。
【0026】
つぎに、図2において、分離膜モジュール(1)は、ケーシング(2)内の頂壁近くに水平状管板(10)が設けられ、この管板(10)に、上記図1に示す管状分離膜エレメント(3)が所要数、吊下状かつ並列状に取り付けられている。ケーシング(2)内において管板(10)の下方には、所要数のバッフル板(30)が管板(10)と平行状に設けられている。バッフル板(30)の取付数は、ケーシング(2)の大きさにもよるが、通常、2〜30枚である。各バッフル板(30)には複数の開口部が設けられており、これらの開口部を管状分離膜エレメント(3)が貫通している。また、バッフル板(30)はケーシング(2)の内面に気密に係合している。
【0027】
そして、ケーシング(2)の胴壁上部に被処理流体入口(31)が設けられ、ケーシング(2)の底壁に被処理流体出口(32)が設けられ、ケーシング(2)の頂壁中央部には透過ガス排出口(33)が設けられている。なお、被処理流体入口(31)と被処理流体出口(32)の出入口は、上記実施形態の場合に限らず、逆の配置としてもよい。
【0028】
上記多管式の分離膜モジュール(1)を用いて、例えば、水素(H)と二酸化炭素(CO)の混合流体を分離する場合、被処理流体入口(31)からケーシング(2)内に、水素(H)と二酸化炭素(CO)の混合流体を供給する。混合流体は、バッフル板(30)同士の間の間隙および管状ゼオライト膜エレメント(3)同士の間の間隙を、正面よりみてジグザグ状に蛇行してケーシング(2)内を通過する。各管状膜エレメント(3)を透過してくる二酸化炭素(CO)が透過ガス排出口(33)より排出され、非透過流体である水素(H)は、バッフル板(30)と管状膜エレメント(3)同士の間の間隙および管状膜エレメント(3)同士の間の間隙を通過して、最終的に排出口(32)から流出する。
【0029】
なお、分離膜モジュール(1)の構造としては、上記実施形態の場合に限らず、管状分離膜エレメント(3)とその外管(図示略)が一対となっている二重管構造としてもよい。
【0030】
図3は、本発明の分離膜エレメントの取付装置の第1実施形態を示す拡大断面図であり、図4は、図3の分離膜エレメントの取付装置に使用する欠円形パッキン(7)の拡大斜視図である。
【0031】
同図において、分離膜モジュール(1)は、管板(10)を具備するケーシング(2)と、管板(10)に吊下状かつ並列状に取り付けられる複数の管状分離膜エレメント(3)と、各管状分離膜エレメント(3)を管板(10)にシール部材を介して固定するための押さえ金具(20)とを備えている。
【0032】
そして、管板(10)の分離膜エレメント(3)取付箇所に取付孔(11)が貫通状にあけられ、取付孔(11)の内周面下部に内方突出環状受け部(12)が設けられるとともに、取付孔(11)の内周面上部に雌ねじ部(14)が設けられている。
【0033】
押さえ金具(20)は、ガス通過孔(23)を有する頂壁(21)とこれの外周部に連なる筒形垂下壁(22)とよりなりかつ筒形垂下壁(22)の外周面に雄ねじ部(24)が設けられている。
【0034】
分離膜モジュール(1)の管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に複数個の欠円形パッキン(7)が複数段重ねられて嵌め被せられ、上下に隣り合う欠円形パッキン(7a)(7b)の欠損部(8)(8)同士が、平面よりみて相互に異なる位置に配せられるとともに、これらの欠円形パッキン(7)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に、この実施形態では、金属製受けリング(15)を介して受け止められ、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられている。
【0035】
なお、この実施形態における金属製受けリング(15)を欠円形パッキン(7)の受けとすることで、分離膜エレメント(3)を取付孔(11)に挿通した後に、欠円形パッキン(7)を金属製受けリング(15)と一緒にセットすることができ、その結果、分離膜エレメント(3)を取り付ける作業を行う上で、挿通しやすい状態を作ることができることになる。
【0036】
そして、管板(10)の取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の先端部により複数段の欠円形パッキン(7)が取付孔(11)周面下部の環状受け部(12)に押圧せしめられ、これらの欠円形パッキン(7)を介して取付孔(11)の内周面と分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面とが密封されている。
【0037】
ここで、平面よりみて欠円形を有する欠円形パッキン(7)は、まず材質の観点から、グラファイト製であることが好ましい。すなわち、グラファイトは、高温・高圧環境下や、酸・アルカリなどの各種媒体にも、幅広く耐性があり、リング成形品として汎用的に入手できる状況にある。
【0038】
また、このグラファイト製欠円形パッキン(7)は、成形品ではあるが、棒状のグラファイトをリング状に成型加工する方法によって製造されており、完全なリング状ではなく、欠損部(割れ目)(8)が存在する。
【0039】
そこで、このグラファイト製欠円形パッキン(7)を、2〜4段、好ましくは3段に重ね、しかも重ねる際には、欠損部(割れ目)(8)が重ならないよう、ローテーションを考慮する。例えば、欠円形パッキン(7)を2段重ねなら、欠損部(8)の配置を180°に振り分け、欠円形パッキン(7)を3段重ねなら、欠損部(8)の配置を120°に振り分けて取り付けることが好ましい。これにより、シール性がより一層確保されることになる。
【0040】
このように、本発明の分離膜エレメントの取付装置は、構造的には、ねじ構造の押さえ金具(20)を使用し、複数段重ねたグラファイト製等の欠円形パッキン(7)に上下の圧縮力を与えることで、各グラファイト製欠円形パッキン(7)が水平方向に扁平になるように変形せしめられ、分離膜エレメント取付部分の隙間が埋まり、シールが確保されるものである。
【0041】
上記本発明の第1実施形態の分離膜エレメントの取付装置によれば、分離膜モジュール(1)の管板(10)に、分離膜エレメント(3)を、複数段重ねたグラファイト製欠円形パッキン(7)を介して取り付ける作業、あるいはまた分離膜エレメント(3)に取り付けられている複数段の欠円形パッキン(7)を取り替えるメンテナンス作業等の作業性が容易であり、しかも各種使用条件下での耐性に優れているうえに、コスト的にも有利である。
【0042】
つぎに、図5は、本発明の分離膜エレメントの取付装置の第2実施形態を示す拡大断面図で、管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)に金属薄板製リング状パッキン(9)を取り付けた状態を示している。図6は、図5の分離膜エレメントの取付装置に使用する金属薄板製リング状パッキン(9)の一部切欠きの拡大斜視図である。
【0043】
この第2実施形態において、上記第1実施形態の場合と異なる点は、分離膜エレメント(3)の取付装置に使用するシール部材の形状にある。
【0044】
すなわち、この第2実施形態においては、シール部材が、上方に向かって開口した横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)によって構成されている点にある。
【0045】
そして、分離膜モジュール(1)の管板(10)の取付孔(11)内周面下部の環状受け部(12)に下方に向かって漸次先細となるテーパー面(13)が設けられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の下端に薄肉先端部(25)が設けられていて、該薄肉先端部(25)は、環状受け部(12)のテーパー面(13)より下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間の間隙に嵌り込み可能な厚さとなされている。
【0046】
管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が、その開口部(9a)を上向きにして嵌め被せられ、この横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に受け止められている。
【0047】
つぎに、図7に示すように、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられて、取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の薄肉先端部(25)が、横断面凹形のリング状パッキン(9)の上向き開口部(9a)に上方から入り込んで、この薄肉先端部(25)により横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が上から押さえ込まれることにより、金属薄板製リング状パッキン(9)が、押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)の外面に沿うように変形せしめられて、この変形金属薄板製リング状パッキン(9)および押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)を介して、環状受け部(12)のテーパー面(13)およびこれより下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間が密封されている。
【0048】
ここで、元来、管状膜エレメント(3)側のシール部分となる接続管(5)は、緻密質セラミックス製であり、この緻密質セラミックスは、各種金属と比較してもヤング率が高く、基本的に変形しないことを想定しないといけない。
【0049】
従って、分離膜エレメント(3)の取付装置として、いわゆるスウェジロックのようなイメージの金属固着によるシールは想定しにくい。そこで、ヤング率が高いステンレス製であっても変形しやすい形状で、かつ変形によってシール面にフィットする形状が望ましい。
【0050】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、分離膜エレメント(3)の取付装置に使用するシール部材として、例えば厚さ0.1〜0.5mmの肉厚の薄いステンレス鋼薄板製リング状パッキンを用い、その形状としては、上方に向かって開口した横断面凹形(いわゆる半月状)のステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)としたものである。
【0051】
そして、この上方に向かって開口した横断面凹形のステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)が、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に、その開口部(9a)を上向きにして嵌め被せられるとともに、このリング状パッキン(9)が管板取付孔(11)の内方突出環状受け部(12)に受け止められ、一方、この環状受け部(12)には、下方に向かって漸次先細となるテーパー面(下細りテーパー面)(13)が設けられており、ステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)リングの上面内側を、上方からネジ構造の押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)によって環状受け部(12)の下細りテーパー面(13)部分へ押し込み、横断面凹形のステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)が変形して、その外面が、管板(10)の環状受け部(12)のテーパー面(13)およびこれより下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面にフィットすることで、シールされる構造としたものである。
【0052】
本発明の分離膜エレメント(3)の取付装置に使用するステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)によれば、ヤング率の高いステンレス鋼製であっても、その肉厚を薄くすることで、分離膜エレメント(3)への着脱が容易で、かつ変形しやすいために、確実にシールできるようにしたところが、本発明のポイントである。
【0053】
本発明の上記第2実施形態の分離膜エレメントの取付装置によれば、分離膜モジュール(1)の管板(10)に、分離膜エレメント(3)を、横断面凹形のステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)を介して取り付ける作業、あるいはまた分離膜エレメント(3)に取り付けられているステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)を取り替えるメンテナンス作業等の作業性が容易であり、しかも各種使用条件下での耐性に優れているうえに、コスト的にも有利である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
実施例1
まず、上記図3と図4に示す本発明の分離膜エレメントの取付装置により、分離膜モジュール(1)の管板(10)の取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に2個のグラファイト製欠円形パッキン(7)が2段に重ねられて嵌め被せられ、上下に隣り合う欠円形パッキン(7a)(7b)の欠損部(8)(8)同士を、平面よりみて相互に異なる位置に配せられように、グラファイト製欠円形パッキン(7)を分離膜エレメント(3)を介して取り付ける作業の手順は容易であり、難点はないことを確認した。
【0056】
つぎに、2段重ねたグラファイト製欠円形パッキン(7)の実際のシール性について、分離膜エレメント(3)の代わりに、緻密質セラミックス製の膜エレメント接続管(5)と同径の円柱棒(図示略)を使い、管板(10)の下側を密閉容器構造として、その密閉容器内を窒素(N)ガスによる圧力1.0MPaの加圧状態を作って、内容積が既知の密閉容器の一定時間における圧力降下を計測することにより、窒素(N)ガスのリーク量を測定した。その結果、分離膜エレメント1本当たり0.15mL/minのリーク量を計測した。
【0057】
これを、例えば、管状分離膜エレメント(3)によって水素(H)と二酸化炭素(CO)の混合流体を分離する場合などの実流体環境において、どの程度の影響があるかを試算した。透過性能が低い分離膜エレメント(3)の方がそのリーク性に対して厳しい評価となるが、仮に2.0×10−8mol/(m・s・Pa)という、かなり低透過性能[例えばCO分離膜では、その性能目標値として1.0×10−6mol/(m・s・Pa)程度が目安]の分離膜エレメント(3)を用い、計測されたリーク量相当の原料ガスが透過側に漏れたと仮定すると、分離係数α=250の分離膜エレメント(3)の分離性能が、分離係数α=240前後になる程度の低下であり、実状としては全く問題ないレベルであった。
【0058】
ここでいう、「混合流体に対する分離係数α」とは、例えば、管状分離膜エレメント(3)によって水素(H)と二酸化炭素(CO)の混合流体を分離する場合、ケーシング(2)内に水素(H)と二酸化炭素(CO)の混合流体を供給し、管状分離膜エレメント(3)に二酸化炭素(CO)を透過させる場合、管状膜エレメント(3)のゼオライト膜を隔てた供給側と透過側のガス濃度に基づき、(透過側のCO濃度/透過側のH濃度)/(供給側のCO濃度/供給側のH濃度)にて算出されるものである。
【0059】
実施例2
まず、上記図5〜図7に示す本発明の分離膜エレメントの取付装置により、分離膜モジュール(1)の管板(10)に、分離膜エレメント(3)を、ステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)を介して取り付ける作業の手順は容易であり、難点はないことを確認した。
【0060】
つぎに、ステンレス鋼薄板製リング状パッキン(9)の実際のシール性については、上記実施例1の場合と同様の試験を実施した結果、分離膜エレメント1本当たり0.13mL/minのリーク量が計測され、また、実流体環境における分離係数αに対する影響の試算についても、上記実施例1の2段重ねたグラファイト製欠円形パッキン(7)の場合と同等のレベルであり、実状としては全く問題ないレベルであった。
【符号の説明】
【0061】
1:分離膜モジュール
3:管状分離膜エレメント
3a:上端部
4:分離膜エレメント本体
7:欠円形パッキン
7a:欠円形パッキン
7b:欠円形パッキン
8:欠損部
9:金属薄板製リング状パッキン
9a:上向き開口部
10:管板
11:取付孔
12:内方突出環状受け部
13:テーパー面
14:雌ねじ部
20:押さえ金具
22:筒形垂下壁
24:雄ねじ部
25:薄肉先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板(10)を具備するケーシング(2)と、管板(10)に吊下状かつ並列状に取り付けられる複数の管状分離膜エレメント(3)と、各管状分離膜エレメント(3)を管板(10)にシール部材を介して固定するための押さえ金具(20)とを備え、管板(10)の分離膜エレメント取付箇所に取付孔(11)が貫通状にあけられ、取付孔(11)の内周面下部に内方突出環状受け部(12)が設けられるとともに、取付孔(11)の内周面上部に雌ねじ部(14)が設けられ、押さえ金具(20)は、ガス通過孔(23)を有する頂壁(21)とこれの外周部に連なる筒形垂下壁(22)とよりなりかつ筒形垂下壁(22)の外周面に雄ねじ部(24)が設けられている分離膜モジュール(1)において、シール部材が、平面よりみて欠円形を有する複数個の欠円形パッキン(7)によって構成され、管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に複数個の欠円形パッキン(7)が複数段重ねられて嵌め被せられ、上下に隣り合う欠円形パッキン(7a)(7b)の欠損部(8)(8)同士が、平面よりみて相互に異なる位置に配せられるとともに、これらの欠円形パッキン(7)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に受け止められ、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられて、取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の先端部により複数個の欠円形パッキン(7)が取付孔(11)周面下部の環状受け部(12)に押圧せしめられ、これらの欠円形パッキン(7)を介して取付孔(11)の内周面と分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面とが密封されていることを特徴とする、分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置。
【請求項2】
欠円形パッキン(7)が、グラファイト製であることを特徴とする、請求項1に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置。
【請求項3】
管板(10)を具備するケーシング(2)と、管板(10)に吊下状かつ並列状に取り付けられる複数の管状分離膜エレメント(3)と、各管状分離膜エレメント(3)を管板(10)にシール部材を介して固定するための押さえ金具(20)とを備え、管板(10)の分離膜エレメント取付箇所に取付孔(11)が貫通状にあけられ、取付孔(11)の内周面下部に内方突出環状受け部(12)が設けられるとともに、取付孔(11)の内周面上部に雌ねじ部(14)が設けられ、押さえ金具(20)は、ガス通過孔を有する頂壁とこれの外周部に連なる筒形垂下壁(22)とよりなりかつ筒形垂下壁(22)の外周面に雄ねじ部(24)が設けられている分離膜モジュール(1)において、シール部材が、上方に向かって開口した横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)によって構成され、管板(10)の取付孔(11)内周面下部の環状受け部(12)に下方に向かって漸次先細となるテーパー面(13)が設けられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の下端に薄肉先端部(25)が設けられていて、該薄肉先端部(25)は、環状受け部(12)のテーパー面(13)より下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間の間隙に嵌り込み可能な厚さとなされており、管板(10)の取付孔(11)に、分離膜エレメント(3)の上端部(3a)が挿通されるとともに、取付孔(11)内において分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面に横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が、その開口部(9a)を上向きにして嵌め被せられ、この横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が管板取付孔(11)の内周面下部の内方突出環状受け部(12)に受け止められ、管板(10)の取付孔(11)に押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)が嵌め入れられて、取付孔(11)の雌ねじ部(14)に押さえ金具(20)の雄ねじ部(24)がねじ合わせられ、押さえ金具(20)の筒形垂下壁(22)の薄肉先端部(25)が、横断面凹形のリング状パッキン(9)の上向き開口部(9a)に上方から入り込んで、この薄肉先端部(25)により横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が上から押さえ込まれることにより、金属薄板製リング状パッキン(9)が、押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)の外面に沿うように変形せしめられて、この変形金属薄板製リング状パッキン(9)および押さえ金具(20)の薄肉先端部(25)を介して、環状受け部(12)のテーパー面(13)およびこれより下側の受け部(12)内周面と管状分離膜エレメント(3)の上端部(3a)外周面との間が密封されていることを特徴とする、分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置。
【請求項4】
上方に向かって開口した横断面凹形の金属薄板製リング状パッキン(9)が、ステンレス鋼製であることを特徴とする、請求項3に記載の分離膜モジュールにおける分離膜エレメントの取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−239949(P2012−239949A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110056(P2011−110056)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】