説明

分離膜

【課題】充分なアルカリ耐性、耐塩素性及び耐熱性を合わせ保有する分離膜を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布を基材とし、該基材上に分離層としてポリスルホン系樹脂組成物を一体形成したものを分離膜とすることにより、充分なアルカリ耐性、耐塩素性及び耐熱性を付与することができるとともに分離層が基材層から剥がれるのを防止でき、分離膜の耐久性が向上するとともに、長期運転を図ることが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布によって耐アルカリ性、耐塩素性及び耐熱性を合わせもった分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より逆浸透膜、限外ろ過膜、精密ろ過膜等が、生体高分子含有溶液から特定の分子をろ過及び分離または濃縮したり、細胞抽出物からのプロテインまたは生体高分子の精製、汚染物質からの合成化学薬品の精製、又は、混合された化学薬品の分離、分子の分離など様々な分野で用いられている。特に、近年、乳業は食品産業の中で最も分離技術の導入が進んだ分野であり、乳業において各種乳成分の分離等に膜分離が用いられているが、乳成分の場合、非常に分離膜がファウリングし易いため、頻繁に60℃の高温でアルカリ溶液や塩素溶液による膜の洗浄が行なわれる。このため、膜には特に高温及び薬品に対する耐久性と薬品回復性が必要とされる。
【0003】
このような分離膜としては、織布や不織布等からなるシート状の基材上に分離活性層を直接形成したものが提案されている。例えば特許文献1にはポリエステル不織布を用いたポリスルホン限外ろ過膜が開示されている。しかしながら、ポリエステルはアルカリ溶液により容易に加水分解されて損傷を受け、高pHの溶液処理には使用できない。
【0004】
また、特許文献2にはポリプロピレン不織布を用いたポリスルホン限外ろ過膜が開示されている。かかるポリプロピレン不織布は常温のアルカリ溶液には耐性を有するが、ポリプロピレン繊維の熱融着性が低いため昇温下では不織布が損傷を受け、高温、高pH領域の溶液処理には用いることができない。また、ポリプロピレンは次亜塩素酸ナトリウムに代表される塩素系酸化剤に対する耐性(耐塩素性)が低いため、このような塩素を使用した薬品洗浄を繰り返して行なう事が困難である。
【0005】
さらに、特許文献3にはポリプロピレンを芯として用い、その外周をポリエチレンでコートした芯−鞘構造を有する繊維を用いた不織布に表面熱処理を施して基材とすることにより耐アルカリ性と耐塩素性、耐熱性を付与した不織布からなる分離膜が開示されている。しかしながら、不織布の製法過程において、ポリプロピレンを芯として用い、その外周をポリエチレンでコートした芯−鞘構造を有する繊維を融着させる場合、鞘であるポリエチレンが熱で溶融されバインダー効果となり、芯であるポリプロピレン繊維を繋ぎ合わせ不織布となるが、その時、被覆していたポリエチレンの一部が溶け、芯のポリプロピレンが表面に現れてしまい、塩素存在下ではポリプロピレン繊維が劣化し不織布が損傷を受けてしまう。特に、高温下では塩素によるポリプロピレン繊維の劣化の進行が著しいため、高温下では塩素を用いることができない。
【0006】
また、特許文献4には界面重縮合によって得られた架橋ポリアミドからなる超薄膜層を多孔質指示膜上に被覆してなる複合半透明膜において、該多孔質支持膜がポリフェニレンサルファイドを主成分とする事を特徴とする複合半透明膜が開示されている。かかる多孔質支持膜は、ポリフェニレンサルファイド繊維の不織布で強化されているものの、機能層であるポリアミド膜は塩素によって劣化され、選択分離が低下してしまい塩素下では用いることができない。
【0007】
このように各種溶液(特にアルカリ廃液)の処理に分離膜を用いるには、充分な耐アルカリ性、耐塩素性及び耐熱性を合わせ保有する必要があるが、これらを満足する分離膜は得られていない。
【特許文献1】特開昭54−14376号公報
【特許文献2】特開昭56−152705号公報
【特許文献3】特開2001−17842号公報
【特許文献4】特開平3−278823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術の上述した問題点を解決し、充分なアルカリ耐性、耐塩素性及び耐熱性を併せ保有する分離膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、次の(1)〜(5)に述べる構成からなる。
(1)分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材とが一体となる分離膜。
(2)前記不織布基材の厚みが0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m、通気度が20〜100cc/cm/sec、乾燥状態の抗張力が縦0.5kg/15mm以上、横0.5kg/15mm以上であり、膜厚のバラツキが平均値±0.02mmである上記(1)に記載の分離膜。
(3)前記分離層がポリスルホン系樹脂からなる上記(1)または(2)に記載の分離膜。
(4)生体高分子含有溶液をろ過及び分離または濃縮する上記(1)〜(3)に記載の分離膜。
(5)前記生体高分子がタンパク質、酵素、単糖類、多糖類、脂肪類、核酸である上記(4)記載の分離膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布を基材とすることにより充分なアルカリ耐性と耐塩素性、耐熱性を付与することができる。したがって、分離膜の耐久性が向上され、長期運転を図ることが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材とが一体となる分離膜である。
【0012】
基材である不織布には、公知のポリフェニレンサルファイド繊維が用いられ、特に短繊維が好ましく用いられる。このような繊維から公知の製法により不織布を製造することができる。この不織布は、膜厚が0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m、通気度が20〜100cc/cm/sec、乾燥状態の抗張力が縦0.5kg/15mm以上、横0.5kg/15mm以上であり、膜厚のバラツキが平均値±0.02mmであることが好ましい。ここで通気度とはJIS L 1079に規定された方法により測定された値である。
【0013】
膜厚が0.08mmより薄く、坪量が20g/m未満、通気度が100cc/cm/secより大きいと、分離膜の強度が低くなる場合がある。また、膜厚が0.5mmより厚いとエレメント化するときの作業性が悪く、且つ、エレメントの有効膜面積の低下をもたらす場合がある。坪量が100g/mより大きく、通気度が20cc/cm/sec未満であれば分離膜として十分な透水性確保の妨げとなる場合がある。又、膜厚のバラツキが平均値±0.02mmより大きいと安定した製膜が行えない場合がある。このような不織布として市販のものとしては、例えばPS0060 (廣瀬製紙(株)製)などが挙げられる。
【0014】
不織布は、膜厚のバラツキの低減、ポリフェニレンサルファイド繊維の充分な融着をはかるために熱処理することが好ましい。熱処理方法は特に限定されないが、例えばカレンダーロールでの熱処理加工方法等を用いることができる。熱処理温度は100〜300℃、好ましくは150〜250℃である。この熱処理にあたってはカレンダーロールによる熱プレスが好ましい。
【0015】
また、本発明の不織布を構成するポリフェニレンサルファイド繊維は180℃における乾熱収縮率が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下である。乾熱収縮率を15%以下とすることで、湿式不織布の製造工程において、カレンダーロールでの熱処理加工時に抄紙表面にシワなどの欠点を防ぐ事ができ、さらに、寸法安定性に優れた不織布とし、高温環境下での使用用途においても変形などを防ぐことができる。
【0016】
分離膜の素材としては耐アルカリ性を有する樹脂から選ばれ、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン等のポリスルホン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリフェニレンスルフィルド、ポリフェニレンスルフィルドスルフォンあるいはこれらの2種以上からなる混合物が好ましく用いられる。
【0017】
前記基材の上に分離層を形成するには、まず分離層を形成する素材と添加剤の溶液を調製する。
【0018】
添加剤としては、柔軟性の付与、膜ファウリングの抑制、可塑剤とポリスルホン系樹脂との強固な結びつきを有する可塑剤が用いられる。可塑剤は、可塑剤中のポリプロピレンオキサイドセグメントとポリエチレンオキサイドセグメントのそれぞれの繰り返し単位のモル比が10:90〜90:10であることが好ましく、より好ましくは15:85〜85:15、さらに好ましくは20:80〜80:20である。ポリエーテルセグメントを有する可塑剤として、BASF社のPluronic(登録商標)シリーズや三洋化成工業株式会社のニューポール(登録商標) PEシリーズが挙げられる。
【0019】
これら溶液は、前記の素材と可塑剤を溶解させることができる溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン等の含窒素化合物、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等の多価アルコール及びその誘導体、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチル-ブチルエーテル等のエーテル・アセタール類やスルホランなどが用いられる。これらの溶媒は単独、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。更に、10重量%以下の貧溶媒、例えば水やメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類を添加しても良い。
【0020】
製膜原液の組成において、ポリスルホン系樹脂からなる樹脂は15〜30重量%、添加剤は0.1重量%から10重量%、溶媒は60重量%から84.9重量%、非溶媒0〜4重量%の範囲が好ましい。なかでもポリスルホン系樹脂が極端に少ないと分離層の強度が低くなり、多すぎると製膜原液の粘度が高過ぎ製膜が困難になると共に、膜が緻密化し目的とする構造が得られ難いので、20〜25重量%の範囲がより好ましい。
【0021】
添加剤である可塑剤の添加量が少ないと目的の分画分子量が得られ難く、極端に多すぎると製膜原液の粘度が高過ぎ製膜が困難になり目的とする分離膜が得られ難い。従って、より好ましくは3重量%〜7重量%の範囲である。
【0022】
また、非溶媒は、あまり多すぎると製膜原液のゲル化がおこりやすくなることから、より好ましくは添加しないことである。
【0023】
なお、製膜原液の温度は、20℃〜60℃の範囲で選定するのが好ましく、より好ましくは30℃〜50℃の範囲である。凝固液の温度が20℃以下になると添加剤が析出してしまいゲル化が生じ、均質な膜が得られない。
【0024】
一方凝固浴としては、特に限定されないが、非溶媒、または非溶媒と溶媒を含む混合溶液を用いることができる。溶媒は上記の溶媒をもちいることができ、また、非溶媒としては水や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類及びこれらの少なくとも2種からなる混合溶液等がもちいることができる。
【0025】
製膜原液にも非溶媒を用いる場合、凝固浴における非溶媒は、凝固浴の少なくとも80重量%とするのが好ましい。少なすぎるとポリエーテルスルホン系樹脂の凝固が遅くなり細孔径が大きくなったりする。より好ましくは、95重量%から100重量%の範囲である。
【0026】
なお、凝固液の温度は,0〜60℃の範囲で選定するのが好ましく、より好ましくは2〜30℃である。凝固液の温度が60℃を越えると急激にゲル化が生じ、得られる膜が疎な構造になる。このため充分な阻止性能を有する膜が得られず、例えばデキストランに対するふるい係数が大きくなるため、いわゆる分画分子量の小さい膜が得られ難い。一方、凝固温度が0℃より低いと凝固液が凍るなど製膜に支障がある。
【0027】
凝固液中に浸漬した際、固化過程にある膜面に常に新しい凝固液を供給することが必要である。膜面に新しい凝固液が供給されなかった場合、膜面の凝固液中には限外濾過膜素材を溶解させる溶媒が混合され、限外濾過膜素材の固化が阻害され膜面が疎な構造となる。かかる固化過程にある膜面に常に新しい凝固液を供給する方法としては特に限定されないが、例えば、製膜溶液を塗布した織布、不織布等の基材を連続的に凝固液中を移動させる、又は、凝固液自体を循環させる等の方法が取られる。
【0028】
製膜溶液を塗布した不織布の基材を連続的移動させる場合、その速度は1〜30m/分の範囲が好ましく、より好ましくは2〜20m/分の範囲である。該条件により常に新しい凝固液を膜面に供給する速度により膜表面を密又は疎にすることが可能である。又、50m/分より速いと、製膜の際膜面に不均一部分が生ずる。
【0029】
膜の形状は平膜状が好ましいが、チューブ状、中空糸状など他の形態であってもよい。平膜状の場合、例えば、該不織布基材に上記溶液をキャスティングやディッピング方法で塗布した後、凝固液中に浸漬する。これらの基材への溶液の塗布厚は25〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは30〜250μmの範囲である。
【0030】
更に得られた該多孔質支持膜表面を緻密化させるために、熱水洗浄による熱処理をさせる。熱処理温度は50℃〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは70℃〜98℃である。この場合、熱水洗浄の溶液は水に浸漬するのが好ましい。
【0031】
そして、分離膜の分離層がポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材層の上に形成された分離膜において、分離層を構成する樹脂、例えばポリスルホン系樹脂組成物の一部が、基材層中に入り込み、一体となっていることが必須である。一体となる、すなわち基材層に分離層を構成する樹脂が入り込むことで、いわゆるアンカー効果によって分離層が基材層に堅固に定着され、分離層が基材層から剥がれるのを防止できるようになる。分離層は、基材層に対して、片面に偏って存在しても構わないし、また、両面に存在しても構わない。分離層は、基材層に対して、対称構造であっても、非対称構造であっても構わない。また、分離層が基材層に対して両面に存在する場合には、両面の分離層が基材層に介して連続的であっても構わないし、不連続であっても構わない。
【0032】
この尺度として剥離強度が挙げられる。剥離強度の値は2kgf/cm以上が好ましく、より好ましくは3kgf/cm以上である。剥離強度が2kgf/cmより小さい場合は不織布と分離活性層の接着性が低いことを意味し、逆圧(不織布側からの圧力)がかかった場合に分離活性層と不織布が容易に剥がれてしまい、膜の破損を生ずる。このような物性値は前記の不織布物性と製膜条件を満足することにより得られる。
【0033】
これらの分離膜は前記のように耐アルカリ性を有している。かかる耐アルカリ性の測定方法としては種々の方法があり、例えば、JIS K 7113に基づく引っ張り試験により分離膜の破断強度を測定することができる。例えば、十分な耐アルカリ性を示すためには、水酸化ナトリウム10重量%の60℃溶液に試験片を一週間浸漬した時、初期値に対し80%以上、好ましくは90%以上の保持率を有していることが良い。保持率が80%未満であると耐アルカリ性が不十分である。又、実用上、分離膜を洗浄する必要があることを考え、洗浄剤である酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液に対し耐性を有する必要がある。例えば、次亜塩素酸ナトリウム5%の93℃溶液に試験片を一週間浸漬した時、初期値に対し10%以上、好ましくは20%以上の保持率を有していることが良い。保持率が10%未満であると耐酸化剤性が不十分であり洗浄の面から好ましくない。
【0034】
本発明の分離膜は、耐熱性が高く、オートクレーブによる無菌化処理が可能であるため、特に生物由来成分含有溶液に処理に好適に使用できる。生物由来成分とは、例えばタンパク質、酵素、多糖類、単糖類、脂肪類、核酸をあげることができる。このような生物由来成分の濃縮、精製、分離、培養を行なう際に、該成分以外の物質による汚染、該成分によるファウリングを防止するために、高温下での頻繁な薬品洗浄・殺菌が必要となる。本発明の分離膜は、耐熱性・耐薬品性を併せ有するために、ラインから取り出して洗浄・殺菌操作を行わずに、インラインでの洗浄・殺菌操作が可能であり、洗浄・殺菌に要するコストを低減することができる。
【実施例】
【0035】
実施例、比較例における分離膜は、次のように測定した。
【0036】
(1)剥離強度
剥離強度の測定方法はとしては種々の方法は、分離膜(12.56cm)を評価用セル(ザルトリウス製濾過器SM165088)に接着剤で貼りさらにその上から加工したセルの蓋をしめ分離膜が剥がれないように固定し、分離膜の裏側(不織布側)から空気で圧力をかけ、目視で分離層が剥がれた時の圧力を読み取って剥離強度を求めた。
【0037】
(2)破断強度
破断強度は、分離膜をJIS K 7113に基づき試験片をカットし、薬液処理してない状態での引張強力をもとめ、また、種々の薬液処理した後の分離膜の引張強力から、破断強度を求めた。
初期値に対する破断強度(%)=薬品処理後の破断強力/初期値の破断強力×100
(3)デキストランに対するふるい係数(Sc)測定
デキストランに対するふるい係数測定は、平膜の分離膜を所定の大きさカット(直径46mm)し、カットした分離膜を評価用セル(UHP−43K、アドバンテック東洋(株)製)にセットし、25℃に温度調整した評価用デキストラン水溶液原水を20cc評価セルに入れ、評価圧力100kPaの窒素圧で原水を攪拌しながら、5cc予備透過をした後、5ccの透過液を採取した。
【0038】
これらのデキストラン水溶液を東ソー社製GPC(HLC−8220GPC)装置で同社製TSK−GEL(G3000PWXL)カラムを使用し、FLOW RATE1.0ml、カラム温度40℃での条件で処理し、その結果得られた示差屈折率からデキストランの重量平均分子量を求めた。
【0039】
なお、デキストラン水溶液の原液は、FULKA社製、重量平均分子量〜1200〔No.31394〕、〜6000〔No.31388〕、15000〜20000〔No.31387〕、〜40000〔No.31389〕、〜60000〔31397〕、〜200000〔No.31398〕をそれぞれ0.5mg/mlになるように作成した。溶質全体では3.0mg/mlにした。
【0040】
ふるい係数は以下の式で求めた。ここで、CF=透過液濃度、CB=原液濃度とした。
デキストランふるい係数(%)=CF×100/CB
(4)可塑剤A
ポリプロピレンオキサイドセグメント/ポリエチレンオキサイドのそれぞれの繰り返し単位のモル比が25:75、重量平均分子量が12,600のBASF社製Pluronic F127を可塑剤Aとして使用した。
【0041】
[実施例1]
ポリスルホン系樹脂としてポリエーテルスルホン(BASF Ultrason(登録商標) E 6020P)、添加剤として可塑剤A、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリエーテルスルホン(PES) :23.0重量%
可塑剤A : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン(NMP) :72.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水に4分間浸漬して、熱処理と共に溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及び添加剤の一部を洗い流して分離膜を得た。
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m、通気度33.7cc/cm/sec、乾燥状態の抗張力が縦2.85kg/15mm、横1.86kg/15mmであり、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても0.26%の熱収縮率とほとんど熱収縮がみられなかった。
【0042】
次に、得られた分離膜のデキストランに対するふるい係数(Sc)測定を求めた結果、重量平均分子量10,000のデキストランに対するふるい係数が0.1以下であった。
【0043】
得られた分離膜を10%の水酸化ナトリウム溶液中に温度60℃にて1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対しほぼ98%であった。また、この膜を次亜塩素酸ナトリウムの1%溶液(温度60℃)に1週間浸漬した時の破断強度は初期値に対し86%であった。それら結果を表1に示す。
【0044】
[実施例2]
ポリスルホン系樹脂としてポリエーテルスルホン(BASF Ultrason(登録商標) E 6020P)、添加剤として可塑剤A、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリエーテルスルホン(PES) :25.0重量%
可塑剤A : 5.4重量%
N−メチル−2−ピロリドン(NMP) :69.6重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水に4分間浸漬して、熱処理と共に溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及び添加剤の一部を洗い流して分離膜を得た。
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m、通気度33.7cc/cm/sec、乾燥状態の抗張力が縦2.85kg/15mm、横1.86kg/15mmであり、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても0.25%の熱収縮率とほとんど熱収縮がみられなかった。
【0045】
次に、得られた分離膜のデキストランに対するふるい係数(Sc)測定を求めた結果、重量平均分子量10,000のデキストランに対するふるい係数が0.06以下であった。
【0046】
得られた分離膜を10%の水酸化ナトリウム溶液中に温度60℃にて1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対しほぼ99%であった。また、この膜を次亜塩素酸ナトリウムの1%溶液(温度60℃)に1週間浸漬した時の破断強度は初期値に対し87%であった。
【0047】
[実施例3]
ポリスルホン系樹脂としてポリエーテルスルホン(BASF Ultrason(登録商標) E 6020P)、添加剤として可塑剤A、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリエーテルスルホン(PES) :23.0重量%
可塑剤A : 0重量%
N−メチル−2−ピロリドン(NMP) :77.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリフェニレンサルファイド繊維製不織布(PS0060 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水に4分間浸漬して、熱処理と共に溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及び添加剤の一部を洗い流して分離膜を得た。
【0048】
なお、この不織布はポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布であり、膜厚136μm、坪量63.8g/m、通気度33.7cc/cm/sec、乾燥状態の抗張力が縦2.85kg/15mm、横1.86kg/15mmであり、膜厚のバラツキが平均値±0.20mmである。また、この不織布は240℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブにおいても0.26%の熱収縮率とほとんど熱収縮がみられなかった。
【0049】
次に、得られた分離膜のデキストランに対するふるい係数(Sc)測定を求めた結果、重量平均分子量10,000のデキストランに対するふるい係数が0.6であった。
【0050】
得られた分離膜を10%の水酸化ナトリウム溶液中に温度60℃にて1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対しほぼ99%であった。また、この膜を次亜塩素酸ナトリウムの1%溶液(温度60℃)に1週間浸漬した時の破断強度は初期値に対し86%であった。
【0051】
[比較例1]
ポリスルホン系樹脂としてポリエーテルスルホン(BASF Ultrason(登録商標) E 6020P)、添加剤として可塑剤A、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をそれぞれ用い、60℃の温度下で十分に攪拌し、次の組成を有する製膜原液を得た。
ポリエーテルスルホン(PES) :23.0重量%
可塑剤A : 5.0重量%
N−メチル−2−ピロリドン(NMP) :72.0重量%
次に上記製膜原液を30℃に冷却した後、ポリプロピレンを芯としその外周をポリエチレンでコートした芯−鞘構造を有する繊維製不織布(HOP−60CF 廣瀬製紙(株)製)上に厚さ100μmで連続塗布し、塗布後、直ちに20℃の純水中に5分間浸漬しさらに95℃の熱水に4分間浸漬して、熱処理と共に溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及び添加剤の一部を洗い流して分離膜を得た。
【0052】
なお、この不織布はポリプロピレンを心材としポリエチレンを鞘材とする複合繊維からなる不織布HOP−60CF(廣瀬製紙(株)製)膜厚160μm、坪量46g/m、通気度60cc/cm/sec、乾燥状態の抗張力が縦10kg/15mm、横3.5kg/15mmであり、膜厚のバラツキが平均値±0.015mmである。また、この不織布は130℃にて熱ロール間を通過させ熱処理したものであり、160℃/5分間の条件下のオートクレーブで熱処理では、不織布が大きく変形し4%の熱収縮率を示した。
【0053】
次に、得られた分離膜のデキストランに対するふるい係数(Sc)測定を求めた結果、重量平均分子量10,000のデキストランに対するふるい係数が0.1以下であった。
【0054】
得られた分離膜を10%の水酸化ナトリウム溶液中に温度60℃にて1週間浸漬し、破断強度を測定した結果、初期値に対しほぼ63%であった。また、この膜を次亜塩素酸ナトリウムの1%溶液(温度60℃)に1週間浸漬した時の破断強度は初期値に対し1%と非常に低い値であり実用上問題のあるレベルであった。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離層とポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布基材とが一体となる分離膜。
【請求項2】
前記不織布基材の厚みが0.08〜0.5mm、坪量が20〜100g/m、通気度が20〜100cc/cm/sec、乾燥状態の抗張力が縦0.5kg/15mm以上、横0.5kg/15mm以上であり、膜厚のバラツキが平均値±0.02mmである請求項1に記載の分離膜。
【請求項3】
前記分離層がポリスルホン系樹脂からなる請求項1または2に記載の分離膜。
【請求項4】
生物由来成分含有溶液をろ過及び分離または濃縮する請求項1〜3に記載の分離膜。
【請求項5】
前記生物由来成分がタンパク質、酵素、単糖類、多糖類、脂肪類、核酸である請求項4に記載の分離膜。

【公開番号】特開2009−202076(P2009−202076A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45618(P2008−45618)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】