説明

分離装置

【課題】複雑で様々な形状からなり、相互に絡み合った被処理物を篩分けて大きさ別に分
離するとともに、これと並行して、当該被処理物に含まれる軽量物質を吸引、除去するこ
とができるようにした分離装置を提供すること。
【解決手段】篩網31上に供給された被処理物Wに篩網31を介して振動を付与して篩分
けを行いながら、被処理物Wを搬送する振動篩3と、篩網31の表面に向けて矩形の吸引
口41を開口するようにした被処理物Wに含まれる軽量物質Wdを吸引する吸引ノズル4
とを備えた分離装置において、吸引ノズル4の振動篩上流側の壁面42a及び振動篩下流
側の壁面42bを吸引ノズル4の中心軸Lを含む横断面に対して非対称に形成するように
する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離装置に関し、篩網上に供給された被処理物に篩網を介して振動を付与し
て篩分けを行いながら、該被処理物を搬送する振動篩を備えた分離装置に関するものであ
る。
【背景技術】
【0002】
従来、篩網上に供給された被処理物に篩網を介して振動を付与して篩分けを行いながら
、該被処理物を搬送する振動篩を備えた分離装置が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、振動篩による被処理物の篩分けと並行して、当該被処理物に含まれる微細分等
の軽量物質を吸引、除去するために、篩網の表面に向けて吸引口を開口する吸引ノズルを
備えた分離装置も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−284468号公報
【特許文献2】特許第3021501号公報
【0004】
ところで、特許文献1に記載のものは、被処理物に篩網を介して振動を付与して篩分け
を行うものであるため、被処理物を大きさ別に分離できる反面、被処理物を重量(比重)
別に分離する機能を備えたものではなかった。
このため、例えば、被処理物として廃棄物を対象とした場合には、「分別されていない
ものは選別を行い、安定型廃物焼却炉から排出されるスラグ産業廃棄物の熱しゃく減量を
5%以下とすること。」(廃棄物処理法施行令第6条第1項第3号ロ)という産業廃棄物
の埋立処分の基準を満たすためには、別途可燃物の分離、選別を行わねばならないという
問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載のものは、振動篩による被処理物の篩分けと並行して、当該被
処理物に含まれる微細分等の軽量物質を吸引、除去するための吸引ノズルを備えているが
、この装置は、廃物焼却炉から排出されるスラグに含まれる最大2mmの粒度を有する微
細分を分離、除去するためのもので、この装置を廃棄物の選別に適用しても、複雑で様々
な形状からなり、相互に絡み合った廃棄物を、上記産業廃棄物の埋立処分の基準を満たす
ように選別することができるものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の分離装置の有する問題点に鑑み、複雑で様々な形状からなり、相
互に絡み合った被処理物を篩分けて大きさ別に分離するとともに、これと並行して、当該
被処理物に含まれる軽量物質を吸引、除去することができるようにした分離装置を提供す
ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の分離装置は、篩網上に供給された被処理物に篩網を
介して振動を付与して篩分けを行いながら、該被処理物を搬送する振動篩と、篩網の表面
に向けて矩形の吸引口を開口するようにした被処理物に含まれる軽量物質を吸引する吸引
ノズルとを備えた分離装置において、前記吸引ノズルの振動篩上流側の壁面及び振動篩下
流側の壁面を吸引ノズルの中心軸を含む横断面に対して非対称に形成したことを特徴とす
る。
【0008】
この場合において、吸引ノズルの振動篩上流側の壁面の篩網の表面に対する角度が、振
動篩下流側の壁面の篩網の表面に対する角度より小さくなるように設定することができる

【0009】
また、吸引ノズルの吸引口の被処理物の搬送方向の寸法とこれと直交する方向の寸法の
比が、1:0.5〜2.0にすることができる。
【0010】
また、振動篩を振動させる回転偏心重錘機構を吸引ノズルの振動篩上流側の壁面の背部
に配設することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分離装置によれば、振動篩によって、振動篩の篩網上に供給された被処理物に
篩網を介して振動を付与して篩分けを行いながら、該被処理物を搬送するとともに、これ
と並行して、篩網の表面に向けて矩形の吸引口を開口するようにした吸引ノズルによって
、被処理物に含まれる軽量物質を吸引することができる。
そして、吸引ノズルの振動篩上流側の壁面及び振動篩下流側の壁面を吸引ノズルの中心
軸を含む横断面に対して非対称に形成するようにすることにより、振動篩の篩網上を搬送
されている被処理物に対して継続して吸引力を付与するために、被処理物の搬送方向に長
さを有する吸引ノズルでも、その中間部に吸引力が弱まる部位が生じることによる振動篩
の篩網上での被処理物の滞留を防止し、振動篩の篩網上を被処理物を円滑に搬送しながら
被処理物に含まれる軽量物質を吸引、除去することができる。
これにより、例えば、廃棄物の選別に適用することによって、複雑で様々な形状からな
り、相互に絡み合った廃棄物を、上記産業廃棄物の埋立処分の基準を満たすように選別す
ることができ、廃棄物の処理コストを低減することができる。
【0012】
また、吸引ノズルの振動篩上流側の壁面の篩網の表面に対する角度が、振動篩下流側の
壁面の篩網の表面に対する角度より小さくなるように設定することにより、被処理物に含
まれる軽量物質のうち、より軽い物質から比較的重い物質までを、順に確実に吸引、除去
することができる。
【0013】
また、吸引ノズルの吸引口の被処理物の搬送方向の寸法とこれと直交する方向の寸法の
比が、1:0.5〜2.0にすることにより、被処理物に含まれる軽量物質のうち、より
軽い物質から比較的重い物質までを、効率よく、順に確実に吸引、除去することができる

【0014】
また、振動篩を振動させる回転偏心重錘機構を吸引ノズルの振動篩上流側の壁面の背部
に配設することにより、吸引ノズルに回転偏心重錘機構が発生する振動を伝達するように
し、これによって、吸引された被処理物が吸引ノズルに付着したり、吸引された被処理物
によって吸引ノズルが閉塞することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の分離装置の一実施例を示す説明図である。
【図2】同要部拡大図である。
【図3】吸引ノズル内の気流の流れを示す解析図で、(a)は本発明の実施例を、(b)は比較例を示す。
【図4】本発明の分離装置の異なる実施例を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図5】本発明の分離装置の異なる実施例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の分離装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図3に、本発明の分離装置の一実施例を示す。
この分離装置は、定量フィーダ1からコンベア2を介して篩網31上に供給された被処
理物Wに篩網31を介して振動を付与して篩分けを行いながら、被処理物Wを搬送する振
動篩3と、篩網31の表面に向けて矩形の吸引口41を開口するようにした被処理物Wに
含まれる軽量物質Wdを吸引する吸引ノズル4とを備えた分離装置において、吸引ノズル
4の振動篩上流側の壁面42a及び振動篩下流側の壁面42bを吸引ノズル4の中心軸L
を含む横断面に対して非対称に形成するようにしている。
【0018】
この場合において、振動篩3は、従来公知の任意の構造のものを使用することができる
が、本実施例においては、特許文献1に開示した、篩網31に一端を固定し、被処理物の
搬送方向に延びる共振ばねロッド32a及び共振ばねロッド32aの他端に設けられた共
振重錘32bからなる共振機構32と、共振機構32を共振させる回転偏心重錘機構33
と、回転偏心重錘機構33を回転駆動するモータ34とを備えている。
【0019】
そして、本実施例においては、振動篩3を振動させる回転偏心重錘機構33を吸引ノズ
ル4の振動篩上流側の壁面42aの背部に配設するようにしている。
これにより、吸引ノズル4に回転偏心重錘機構33が発生する振動を伝達するようにし
、これによって、吸引された軽量物質Wdが吸引ノズル4に付着したり、吸引された軽量
物質Wdによって吸引ノズル4が閉塞することを防止することができる。
【0020】
振動篩3の下方には、振動篩3の篩網31を通過した被処理物Waを搬送するコンベア
5を配設するようにしている。
【0021】
振動篩3の下流側には、振動篩3の篩網31を通過せずに排出された被処理物Wbが落
下する際に空気を吹き付けることにより被処理物Wbに含まれる軽量物質Wcを分離する
エアー噴出ノズル6を配設するようにしている。
【0022】
吸引ノズル4は、ブロア8に接続されることにより、振動篩3の篩網31上を搬送され
ている被処理物Wに含まれる軽量物質Wdを吸引し、吸引した軽量物質Wdをサイクロン
7で分離するようにしている。
【0023】
そして、吸引ノズル4は、振動篩上流側の壁面42a及び振動篩下流側の壁面42bを
吸引ノズル4の中心軸Lを含む横断面に対して非対称に形成するようにしているが、より
具体的には、吸引ノズル4の振動篩上流側の壁面42a(本実施例においては、壁面42
aを途中で屈曲させたり構造42a1、42a2としている。)の篩網31の表面に対す
る角度α11、α12(当該角度は、具体的には、10°〜60°、本実施例においては
、α11を20°、α12を45°程度に設定するようにしている。)が、振動篩下流側
の壁面42bの篩網31の表面に対する角度α2(当該角度は、具体的には、80°〜1
20°、本実施例においては、110°程度に設定するようにしている。)より小さくな
るように設定するようにしている。
これにより、被処理物Wに含まれる軽量物質Wdのうち、より軽い物質から比較的重い
物質までを、順に確実に吸引、除去することができる。
【0024】
また、吸引ノズル4の吸引口41は、振動篩3の篩網31に対して、篩網31上を搬送
されている被処理物Wが衝突しない距離を隔てて設けるようにする。
この場合、篩網31上を搬送される被処理物Wは、篩網31を通過する被処理物Waの
量だけ減量するため、吸引ノズル4の吸引口41は、振動篩3の篩網31に対して、振動
篩下流側を接近させて(振動篩3の篩網31に対する角度βを数°〜10°、本実施例に
おいては、5°程度傾斜させて)設けるようにすることが望ましい。
【0025】
また、吸引ノズル4の吸引口41の被処理物Wの搬送方向の寸法L1とこれと直交する
方向の寸法L2(図示省略)の比が、1:0.5〜2.0にすることができる。
これにより、被処理物Wに含まれる軽量物質Wdのうち、より軽い物質から比較的重い
物質までを、効率よく、順に確実に吸引、除去することができる。
なお、L1/L2が0.5より小さいと、搬送中の被処理物Wから軽量物質Wdを吸引
する時間が相対的に短くなり、軽量物質Wdの吸引、除去の割合(確実性)が低下し、一
方、L1/L2が2.0より大きいと、搬送中の被処理物Wから軽量物質Wdを吸引する
時間が相対的に長くなり、軽量物質Wdの吸引、除去の割合(確実性)が向上する反面、
エネルギ消費が増大し、効率が低下することとなり、好ましくない。
【0026】
次に、この分離装置の作用について説明する。
この分離装置は、振動篩3によって、振動篩3の篩網31上に供給された被処理物Wに
篩網31を介して振動を付与して篩分けを行いながら、被処理物Wを搬送するとともに、
これと並行して、篩網31の表面に向けて矩形の吸引口41を開口するようにした吸引ノ
ズル4によって、被処理物Wに含まれる軽量物質Wdを吸引することができる。
そして、吸引ノズル4の振動篩上流側の壁面42a及び振動篩下流側の壁面42bを吸
引ノズル4の中心軸Lを含む横断面に対して非対称に形成するようにすることにより、振
動篩3の篩網31上を搬送されている被処理物Wに対して継続して吸引力を付与するため
に、被処理物Wの搬送方向に長さを有する吸引ノズル4でも、その中間部に吸引力が弱ま
る部位が生じることによる振動篩3の篩網31上での被処理物Wの滞留を防止し、振動篩
3の篩網31上を被処理物Wを円滑に搬送しながら被処理物Wに含まれる軽量物質Wdを
吸引、除去することができる。
図3の吸引ノズル内の気流の流れを示す解析図からも明らかなように、図3(a)に示
す本発明の実施例の吸引ノズル4の場合は、吸引ノズル4の中間部Aに吸引力が弱まる部
位が生じにくく、被処理物Wの滞留を防止できるのに対して、図3(b)に示す比較例(
吸引ノズル4’の振動篩上流側の壁面及び振動篩下流側の壁面を吸引ノズル4’の中心軸
Lを含む横断面に対して対称に形成したもの。)の場合は、吸引ノズル4’の中間部Aに
吸引力が弱まる(渦が発生している)部位が生じ、被処理物Wの滞留が起こっている。
これにより、例えば、廃棄物の選別に適用することによって、複雑で様々な形状からな
り、相互に絡み合った廃棄物を、上記産業廃棄物の埋立処分の基準を満たすように選別(
上記軽量物質Wc、Wdに可燃物が含まれることが多い。)することができ、廃棄物の処
理コストを低減することができる。
【0027】
ところで、上記実施例においては、被処理物Wを、定量フィーダ1からコンベア2を介
して篩網31上に供給するようにしたが、図4に示す分離装置のように、被処理物Wを、
定量フィーダ1から篩網31上に直接供給するようにすることもできる。
なお、図4に示す分離装置において、吸引ノズル4の吸引口41の被処理物Wの搬送方
向の寸法L1(810mm)とこれと直交する方向の寸法L2(810mm)の比は、1
:1に設定されている。
また、図4に示す分離装置のその他の構成及び作用は、図1〜図3に示す分離装置と同
様である。
【0028】
また、上記実施例においては、振動篩3を振動させる回転偏心重錘機構33を吸引ノズ
ル4の振動篩上流側の壁面42aの背部に配設するようにしたが、図5に示す分離装置の
ように、振動篩3を振動させる回転偏心重錘機構33を振動篩3の下方のフレームFに配
設するようにすることもできる。
なお、図5に示す分離装置のその他の構成及び作用は、図1〜図3に示す分離装置と同
様である。
【0029】
以上、本発明の分離装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実
施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜
その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の分離装置は、複雑で様々な形状からなり、相互に絡み合った被処理物を篩分け
て大きさ別に分離するとともに、これと並行して、当該被処理物に含まれる軽量物質を吸
引、除去することができる特性を有していることから、廃棄物からの可燃物の分離、選別
の用途に好適に用いることができるほか、広く一般の分離の用途にも用いることができる

【符号の説明】
【0031】
1 定量フィーダ
2 コンベア
3 振動篩
31 篩網
32 共振機構
32a 共振ばねロッド
32b 共振重錘
33 回転偏心重錘機構
34 モータ
4 吸引ノズル
41 吸引口
42a 振動篩上流側の壁面
42b 振動篩下流側の壁面
5 コンベア
6 エアー噴出ノズル
7 サイクロン
8 ブロア
F フレーム
L 吸引ノズルの中心軸
W 被処理物
Wd 軽量物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
篩網上に供給された被処理物に篩網を介して振動を付与して篩分けを行いながら、該被
処理物を搬送する振動篩と、篩網の表面に向けて矩形の吸引口を開口するようにした被処
理物に含まれる軽量物質を吸引する吸引ノズルとを備えた分離装置において、前記吸引ノ
ズルの振動篩上流側の壁面及び振動篩下流側の壁面を吸引ノズルの中心軸を含む横断面に
対して非対称に形成したことを特徴とする分離装置。
【請求項2】
吸引ノズルの振動篩上流側の壁面の篩網の表面に対する角度が、振動篩下流側の壁面の
篩網の表面に対する角度より小さくなるように設定したことを特徴とする請求項1記載の
分離装置。
【請求項3】
吸引ノズルの吸引口の被処理物の搬送方向の寸法とこれと直交する方向の寸法の比が、
1:0.5〜2.0であることを特徴とする請求項1又は2記載の分離装置。
【請求項4】
振動篩を振動させる回転偏心重錘機構を吸引ノズルの振動篩上流側の壁面の背部に配設
したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250204(P2012−250204A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126135(P2011−126135)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(390015967)株式会社キンキ (29)
【Fターム(参考)】