説明

切り屑回収装置

【課題】不断水切断時に生じた切り屑が回収された後に切り屑回収装置の構成部材を取り出し易く、かつ確実に切り屑を捕捉することができる切り屑回収装置を提供すること。
【解決手段】切り屑回収装置3は、網部10c及び帯片10a,10aから成り流体管1内部で径方向に展張若しくは収縮可能な捕捉網10と、捕捉網10が取付けられた支持体11と、捕捉網10及び支持体11を収容する収容部5と、捕捉網10及び支持体11を、収容部5と流体管1内部との間で移動させる移動操作、及び捕捉網10を流体管1内部で展張若しくは収縮させる展張収縮操作が可能な操作部8と、から構成され、流体管1内部で周方向に沿って移動する押圧体15,15が、操作可能に支持体11に設けられ、押圧体15は、帯片10a,10aを流体管1内壁に沿って周方向に押圧することで、捕捉網10を展張する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管を不断流状態で切断若しくは穿孔する際に生じる切り屑を回収する切り屑回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体管の中央に密封ケーシングで覆われた切断機により流体管を密封状態で切断する不断水切断により生じ、密封ケーシングや流体管の底面に落下した切り屑は、切り屑回収装置により回収される。
【0003】
この種の切り屑回収装置は、外周を形成する屈曲自在の弾性帯片と、弾性帯片の周囲に取着された網部と、弾性帯片の内周面を押圧する伸縮部材と、を有するものがあり、不断水切断を行う前に、予め切断機が切断する箇所とは異なる流体管の周壁に形成した開口に、これら弾性帯片、網部及び伸縮部材が挿入される。この弾性帯片、網部及び伸縮部材を挿入していくことで、伸縮部材が流体管の径方向に伸長し、この伸長した伸縮部材が弾性帯片の内周面を押圧するため、弾性帯片とともに網部が流体管の内周面に当接する。この網部により、不断水切断時に生じた切り屑が回収される。
【0004】
【特許文献1】特開2003−329192号公報(第3頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の記載の切り屑回収装置にあっては、不断水切断時に生じた切り屑が回収された後、弾性帯片、網部及び伸縮部材が挿入された開口から流体管の外部に抜き出す場合には、弾性帯片、網部及び伸縮部材が収縮することで、弾性帯片の一部及び網部の一部を流体管の外部に抜き出すことができるものの、弾性帯片、網部及び伸縮部材を抜き出す過程において、収縮した伸縮部材の一部が開口の外部に抜き出され、伸縮部材の他部が開口の内部に残存する状態で伸縮部材が開口に引っ掛かり、この伸縮部材が開口に引っ掛かった状態で伸縮部材を抜き出そうとしても伸縮部材が収縮せず、弾性帯片、網部及び伸縮部材を取り出しにくい虞がある。
【0006】
また、伸縮部材の伸縮度が大きい場合には、伸縮部材が弾性帯片の内周面を押圧する押圧力が小さくなるため、網部が流体管の内周面と離間し、弾性帯片及び網部と流体管の内周面の間に隙間が生じ、切り屑の一部が網部に捕捉されないといった虞がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、不断水切断時に生じた切り屑が回収された後に切り屑回収装置の構成部材を取り出し易く、かつ切り屑を漏れなく捕捉することができる切り屑回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の切り屑回収装置は、
流体管を不断流状態で切断若しくは穿孔する際に生じる切り屑を回収する切り屑回収装置であって、
前記切り屑回収装置は、
柔軟性を有する網部及び可撓性を有し前記網部の周縁に沿って取付けられた帯片から成り流体管内部で径方向に展張若しくは収縮可能な捕捉網と、
該捕捉網が取付けられた支持体と、
流体管に形成された開口を介し内部に連通するように流体管に外嵌し、前記捕捉網及び支持体を収容する収容部と、
前記捕捉網及び支持体を、前記収容部と流体管内部との間で移動させる移動操作、及び前記捕捉網を流体管内部で展張若しくは収縮させる展張収縮操作が可能な操作部と、
から構成されており、
流体管内部で周方向に沿って移動する押圧体が、前記操作部により操作可能に前記支持体に設けられ、前記押圧体は、前記帯片を流体管内壁に沿って周方向に押圧することで、前記捕捉網を展張することを特徴としている。
この特徴によれば、捕捉網と支持体とを、操作部により移動操作することで収容部から開口を介し流体管内部に設置した後、操作部により展張操作することで流体管内壁に沿って周方向に移動する押圧体が、可撓性を有する帯片を流体管内壁に沿って周方向に押圧することで、帯片を取付けた網部の周縁が流体管内壁との隙間を生じさせることなく径方向に確実に展張されることになり、流体管を不断流状態で切断若しくは穿孔する際に生じる切り屑を、漏れなく捕捉することが出来る。また、切り屑を回収した後、操作部の収縮操作により、押圧体が、捕捉網が展張する前において捕捉網と支持体とを流体管内部に設置した状態に復帰することで、帯片を取付けた網部も収縮し、捕捉網が展張する前において捕捉網と支持体とを流体管内部に設置した状態に復帰するため、操作部の移動操作により、これら切り屑回収装置の構成部材である押圧体、帯片及び網部を開口に引っ掛けることなく流体管内部から収容部に移動し易くすることができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の切り屑回収装置は、請求項1に記載の切り屑回収装置であって、
前記押圧体は、前記支持体に枢着した枢着部と、該枢着部を中心に回動し前記帯片を流体管内壁に沿って周方向に押圧する回動端部と、から成る棒状体であることを特徴としている。
この特徴によれば、棒状体である押圧体を、枢着部を中心に回動させるだけで、回動端部を流体管内壁に沿って周方向に回動させることが出来るため、操作部による捕捉網の展張操作が容易になるばかりか、棒状体を開口に対し軸方向に進入させることで、開口を小さく抑えて流体管の強度を維持することが出来る。
【0010】
本発明の請求項3に記載の切り屑回収装置は、請求項2に記載の切り屑回収装置であって、
前記押圧体は、一方の端部に前記枢着部、他方の端部に前記回動端部が設けられた棒状体であって、該棒状体は前記枢着部を略同軸にした別体から成り、各々の回動端部が流体管の管上頂部に形成された開口近傍の上頂高さ位置から、互いに離間して、前記別体の棒状体が略水平の直線状を形成する中央高さ位置まで回動するように成っていることを特徴としている。
この特徴によれば、別体の棒状体の各々の回動端部を開口近傍の上頂高さ位置から中央高さ位置まで回動させることで、捕捉網を比較的展張し難い中央高さ位置よりも上方の内壁において、押圧体が帯片を押圧することで捕捉網を順次展張しながら中央高さ位置まで回動し、中央高さ位置において別体の棒状体が略水平の直線状を形成して、両回動端部で捕捉網の展張状態を維持できる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の切り屑回収装置は、請求項3に記載の切り屑回収装置であって、
前記支持体と前記棒状体とに介設され、前記支持体に沿って前記収容部と前記流体管内部との間を略上下方向に移動するアーム部材が、前記棒状体毎に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、支持体と棒状体とに介設され、支持体に沿って収容部と流体管内部との間を略上下方向に移動するアーム部材が、棒状体毎に設けられていることで、単純な略上下方向の移動動作を利用して、アーム部材を介して設けられた押圧体を周方向に動作できる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の切り屑回収装置は、請求項4に記載の切り屑回収装置であって、
前記捕捉網の帯片は、前記別体の棒状体の回動する軌跡に各々が沿うように、有端で且つ別体に設けられ、各々の帯片の両端部が、前記支持体の先端側と前記アーム部材の収容部側とに、それぞれ取付けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、支持体及び棒状体に介設されたアーム部材の、収容部から流体管内部への間の移動を利用して、アーム部材に取付けられた帯片を、押圧体の動きとリンクさせて流体管内部に送り出すことができる。
【0013】
本発明の請求項6に記載の切り屑回収装置は、請求項5に記載の切り屑回収装置であって、
前記アーム部材に、前記押圧体により前記帯片が押圧されることで回動し、流体管の前記開口近傍における前記捕捉網の帯片を、内壁に沿って支持可能な回動片が枢着されていることを特徴としている。
この特徴によれば、アーム部材の流体管内部への移動とともに回動片を回動し、捕捉網の帯片を流体管の前記開口近傍の内壁に沿って支持することで、周方向に連続する内壁が途切れ押圧し難く、帯片の隙間が生じ易い開口近傍における内壁と帯片との間に隙間が生じることを極力防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る切り屑回収装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例における切り屑回収装置と穿孔装置が流体管に配設された状態を示す一部断面図である。図2は、切り屑回収装置を示す断面図である。図3は、捕捉網が流体管内部に移動した状態を示す一部断面図である。図4は、押圧体が回動している状態を示す一部断面図である。図5は、図4の押圧体が更に回動した状態を示す一部断面図である。図6は、回動片が回動している状態を示す拡大断面図である。図7は、捕捉網が切り屑を回収している状態を示す一部側断面図である。以下、図1及び図2の上下左右側を切り屑回収装置の上下左右側、紙面手前側を切り屑回収装置の前方側、紙面奥側を切り屑回収装置の後方側として説明する。
【0016】
図1に示されるように、符号1は上水を上流側(図示左側)から下流側(図示右側)に輸送する水輸送管、例えばスチール製の流体管1を示し、この流体管1は、筐体12に水密に囲繞されている。筐体12における図示左側の連通部12aの上部には、開閉弁30が連結され、この開閉弁30のハウジングに、流体管1を切断する切断用カッタ32と、進退移動させるストローク33と、切断用カッタ32を内部に収容する胴体31と、から構成された切断装置34が水密的に連結接続されている。
【0017】
一方、筐体12における図示右側、すなわち下流側の連通部12bの上部には、開閉弁6が連結され、この開閉弁6のハウジングに、流体管1を切断する際に生じる切り屑を回収する後述する切り屑回収装置3が取付けられている。
【0018】
後述する切り屑回収装置3は、切り屑を回収する捕捉網10と、該捕捉網10を収容する収容部5と、操作ネジ8aにより収容部5、開閉弁6及び連通部12bと流体管1内部との間で捕捉網10を移動操作するとともに、操作ネジ8fにより捕捉網10を流体管1内部で展張若しくは収縮操作する操作部8と、を有している。また、流体管1の上部には、捕捉網10が流体管1内部に移動するための開口U(図7参照)が管頂上部に形成され、開口Uを介して流体管1内部と連通部12bの内部が連通している。
【0019】
次に、切り屑回収装置3について具体的に説明する。図2及び図5に示されるように、切り屑回収装置3は、主に、柔軟性を有する網部10c、及び可撓性を有し網部10cの周縁に沿って取付けられた薄板のステンレス製の帯片10a,10aから成り、流体管1内部で径方向に展張若しくは収縮可能な捕捉網10と、捕捉網10を流体管1内部で展張若しくは収縮する機構を構成するアーム部材16を介して捕捉網10に取付けられた支持体11と、捕捉網10及び支持体11を収容する収容部5と、捕捉網10を展張する一対で別体の押圧体15,15と、前述した操作部8と、から構成されている。
【0020】
連通部12bは、流体管1に形成された開口Uを介し内部に連通するように流体管1に外嵌し、この連通部12bの上面に開閉弁6が連設されている。また、この開閉弁6の上面に収容部5が連設されており、収容部5の上面に操作部8の下面が取付けられている。
【0021】
操作部8は、主に、ハウジング8eと、操作ネジ8a、8fと、ネジ軸8d、8hとから構成されており、ハウジング8e内に、歯車8b、8c、8g、及び8iが収容されている。ネジ軸8dには、歯車8cが取付けられており、この歯車8cは、操作ネジ8aの先端に取付けられた歯車8bに噛合している。これらの構成により、操作ネジ8aをその軸回りに回動操作することで、歯車8bに噛合した歯車8cが回動し、ネジ軸8dが軸方向に回動動作するようになっている。
【0022】
一方、ネジ軸8hには、歯車8i、8jが取付けられており、歯車8iは、操作ネジ8fの先端に取付けられた歯車8gに噛合している。これらの構成により、操作ネジ8fをその軸回りに回動操作することで、歯車8gに噛合した歯車8iが回動し、ネジ軸8h及び歯車8jが軸方向に回動動作するようになっている。また、本実施例では、ネジ軸8h及び歯車8jは、スプラインとその軸受けで構成されており、歯車8jはネジ軸8hに対し、軸回りには回動し、且つ上下方向には相対移動可能に取付けられている。
【0023】
支持体11は、下部がネジ部21bとして形成されている支持軸21と、支持軸21の上部2箇所に取付けられる上支持板22及び下支持板23と、支持軸21の径方向の移動を規制するために、支持軸21に取付けられる規制筒24、25と、支持体11の底部を形成する支持台29と、を有している。
【0024】
支持軸21の上部21aにおいて、歯車8jと噛合するように、歯車28が、上部21aに形成されたフランジ部21cの下面に、複数のネジ60,60により取付けられている。前述したように操作ネジ8fにより歯車8jが回動することで、この歯車28も回動し、同期して支持軸21が回動するようになっている。
【0025】
また、支持軸21の上部21aは、上支持板22の中央部に貫通して回動自在になっており、上支持板22に対して上下の相対移動が規制されている。この上支持板22の下方位置において、規制筒24の上部は、下支持板23の中央部に貫通しており、下支持板23の上下で螺合されたナット間において、後述する捕捉網10が流体管1の径方向に展張する向きで回動不能に固定されている。
【0026】
上支持板22の外周側部及び下支持板23の外周側部には、ネジ軸8dを貫通する貫通孔22a、23aが略同軸に形成され、ネジ軸8hを貫通する貫通孔22b、23bが略同軸に形成されている。よって、前述したように操作ネジ8aによりネジ軸8dが回動することで、貫通孔22b、23bがネジ軸8hに貫通された状態で上支持板22及び下支持板23が上下動可能となる。そして、支持軸21の上部21aは、上支持板22に対して上下の相対移動が規制され、規制筒24の上部は、下支持板23に対して上下の相対移動が規制されるため、この上支持板22及び下支持板23が上下動することで、支持体11や支持体11に取付けられた後述する捕捉網10も上下動することができるようになっている。結果として操作ネジ8aを回動操作することで、歯車8b、8c、操作ネジ8d、上支持板22及び下支持板23を介し、捕捉網10及び支持体11が上下方向に動作する移動操作が可能となる。
【0027】
尚、上支持板22の下面と下支持板23の上面との間には、上支持板22及び下支持板23に対して回動不能に嵌合された長尺ナット51が介設されており、ネジ軸8dが長尺ナット51に螺合している。
【0028】
規制筒24の下端部には、二重筒から成る規制筒25の上端部が複数のボルト58,58により取付けられ、規制筒25の内筒の外周面には、嵌合キー26が規制筒25の軸方向に沿って突設されており、移動片38が嵌合キー26に沿って移動可能に嵌合されている。また、規制筒25の外筒の下端部には、円柱状の円柱片41,41が取付けられている。
【0029】
規制筒25の下端部には、支持軸21の下端部が貫通してボルト57により回動可能に取付けられている。更に、規制筒25の下端部には、支持台29の上端部が固着されている。また、支持台29の下部の左右両端部には、左右に突出する突出部29a,29aが形成されており、この突出部29a,29aに、ネジ54,54により回動部材29b,29bが回動可能に取付けられている。
【0030】
アーム部材16は、アーム部材16の上端部が移動片38に対し取り付けられるとともに、アーム部材16の下端部は移動部16aとして回転不能にネジ部21bと螺合している。よって、前述したように操作ネジ8fにより、支持軸21のネジ部21bが回動することで、アーム部材16が上下に移動するようになっている。
【0031】
図6に示されるように、アーム部材16の上端部には、ネジ52により回動部材19aが回動可能に取付けられており、この回動部材19aには、捕捉網10の帯片10aの上端部、及び帯片10aの上端部を流体管1の開口U近傍における内壁に沿って支持可能な支持片19bが、ネジ53により取付けられている。これら回動部材19aと支持片19bにより、回動片19が構成されている。
【0032】
図2及び図5に示されるように、捕捉網10は、柔軟性を有する網部10cと、可撓性を有し網部10cの周縁に沿って図示しないリベットにより取付けられた、有端で且つ別体の帯片10a,10aと、から成っており、帯片10a,10aは、後述する押圧体15,15の回動する軌跡に各々が沿うように配置されている(図3〜図5参照)。
【0033】
また、図6に示されるように、各々の帯片10a,10aの上端部は、ネジ53により、回動部材19aと支持片19bと一体的に取付けられている。すなわち、帯片10a,10aの各々の上端部が、アーム部材16の収容部5側に、それぞれ取付けられている。一方、図2及び図5に示されるように、帯片10a,10aの各々の下端部は、図示しないネジにより、回動部材29b,29bに固着されている。すなわち、各々の帯片10a,10aの下端部が、支持台29の先端側に、それぞれ取付けられている。
【0034】
図2及び図5に示されるように、押圧体15,15は、アーム部材16を介してネジ部21bに枢着した枢着部15a,15aと、枢着部15a,15aを中心に回動し、帯片10a,10aを流体管1の内壁に沿って周方向に押圧する回動端部15b,15bと、から成る棒状体として形成されている。
【0035】
枢着部15a,15aは、各々の回動端部15b,15bが位置する開口U近傍の上頂高さ位置(図3参照)から、押圧体15,15が略水平の直線状を形成する中央高さ位置(図5参照)まで、押圧体15,15が回動するように、ネジ55によりアーム部材16の移動部16aに枢着されている。また、押圧体15,15には、前方側から後方側に向かって貫通する平行溝状の貫通孔15c,15cが形成されており、このボルト56,56が貫通孔15c,15cを相対移動できるように、ボルト56,56がこの貫通孔15c,15cに挿通されて移動部16aに取付けられている。
【0036】
図7に示されるように、回動端部15b,15bの側面部の前後方向の寸法は、帯片10a,10aの前後方向の寸法よりも若干長く、この側面部が、帯片10a,10aを流体管1の内壁に沿って周方向に押圧するようになっている。
【0037】
次に、捕捉網10の展張工程について説明する。
【0038】
先ず、操作ネジ8aを操作する移動操作により、捕捉網10、支持体11及びアーム部材16を、図2における捕捉網10及びアーム部材16を収容部5に収容されている収容位置から、図3に示されるように、支持台29の底面が流体管1の内壁と当接する設置位置まで、下降する。図3の状態において、回動端部15b,15bが開口U近傍の上頂高さ位置に位置しており、ボルト56,56は、貫通孔15c,15cにおいて枢着部15a,15aから最も離間した離間位置に位置している。また、帯片10a、10aは、その上端部が開口Uよりも上方、すなわち流体管1の外部に位置し、下端部が流体管1内部の最下位置近傍に位置しており、帯片10a、10aは、上下方向に略直線状に形成されている。
【0039】
次に、操作ネジ8fを操作することにより、図3の状態から、図4に示されるように、アーム部材16を下降し、このアーム部材16が下降することで、ボルト56,56は、貫通孔15c,15cを枢着部15a,15aに向かって移動し、回動端部15b,15bが枢着部15a,15aを中心に互いに離間して回動する。アーム部材16の下降に伴い、アーム部材16の上端部に取付けられた帯片10aの上端部も、順次下方の流体管1内部に送り出される。
【0040】
このように、支持体11に沿って収容部5と流体管1内部との間を略上下方向に移動するアーム部材16が、支持体11及び別体の押圧体15,15に介設されているため、単純な略上下方向の移動動作を利用して、アーム部材16を介して設けられた押圧体15,15を周方向に動作できる。
【0041】
また、回動端部15b,15bの回動により、帯片10a,10aと対向する回動端部15b、15bが、帯片10a,10aを押圧しながら流体管1の内壁に沿って周方向に移動する。この帯片10a,10aが押圧されることで、帯片10a,10aの下端部に取付けられた回動部材29b,29bが回動し、かつ帯片10a,10aの上部が円柱片41と当接しながら下降するため、円柱片41の下方側で帯片10a,10aが流体管1の内壁に沿って屈曲する。そして、この帯片10a,10aの屈曲により、網部10cが径方向に広がる。結果として、操作ネジ8fを回動操作することにより、アーム部材16を介し、網部10cが展張する展張操作が可能となる。
【0042】
このように、棒状体である押圧体15,15を、枢着部15a,15aを中心に回動させるだけで、回動端部15b,15bを流体管1の内壁に沿って周方向に回動させることが出来るため、操作ネジ8fによる捕捉網10の展張操作が容易になるばかりか、棒状体を開口Uに対し軸方向に進入させることで、開口Uを小さく抑えて流体管1の強度を維持することが出来る。
【0043】
また、各々の帯片10a,10aの上下の両端部が、支持体11の先端側とアーム部材16の収容部5側とに、それぞれ取付けられているため、支持体11及び別体の押圧体15,15に介設されたアーム部材16の、収容部5側から流体管1内部への間の移動を利用して、アーム部材16に取付けられた帯片10a,10aを、押圧体15の動きとリンクさせて流体管1内部に順次送り出すことができる。
【0044】
更に、図4の状態から、アーム部材16を下降することで、回動端部15b,15bが互いに更に離間して回動し、帯片10a,10aが流体管1の内壁に沿って漸次当接する。
【0045】
図6に示されるように、押圧体15,15が略水平の直線状を形成する中央高さ位置まで回動する(図5参照)直前の状態において、帯片10aの上端部が流体管1の内壁に向かって引っ張られる。この帯片10aの上端部が引っ張られることで、帯片10aの上端部に一体的に取付けられた図示一点鎖線の回動部材19a及び支持片19bが、帯片10aの上端部に追随し、流体管1の内壁に向かって回動する(図示実線の回動部材19a及び支持片19b参照)。
【0046】
そして、図5に示されるように、押圧体15,15が略水平の直線状を形成する中央高さ位置まで回動することで、網部10cの周縁と流体管1の内壁に隙間が生じることなく、帯片10a,10aの全体が流体管1の内周面と当接し、網部10cが径方向に展張される。また、支持片19bも更に回動して帯片10aと当接し、帯片10aを流体管1の開口U近傍の内壁に沿って支持する(図6参照)。図5の状態において、捕捉網10の展張工程が完了する。
【0047】
このように、別体の押圧体15,15の各々の回動端部15b,15bを開口U近傍の上頂高さ位置から中央高さ位置まで回動させることで、捕捉網10を斜上方に向かって比較的展張し難い中央高さ位置よりも上方の内壁において、押圧体15,15が帯片10a,10aを押圧することで捕捉網10を順次展張しながら中央高さ位置まで回動し、中央高さ位置において別体の棒状体である押圧体15,15が略水平の直線状を形成して、両回動端部15b,15bで捕捉網10の展張状態を維持できる。
【0048】
また、支持片19bが回動し、帯片10aを流体管1の開口U近傍の内壁に沿って支持することで、周方向に連続する内壁が途切れ押圧し難く、帯片10aの隙間が生じ易い開口U近傍における内壁と帯片10aとの間に隙間が生じることを極力防止することができる。
【0049】
捕捉網10の展張作業が完了した後、図7に示されるように、後述する流体管1の切断工程を行い、この切断工程の際に生じる切り屑が上流側から下流側に向かって(図示白抜矢印参照)上水とともに流れ、この流れている切り屑が捕捉網10により回収される。
【0050】
流体管1の切断工程について説明すると、図1に示されるように、先ず、開閉弁30の弁軸30aの操作により弁体30bを動作させることで開閉弁30を開状態とし、切断用カッタ32の切断刃32aが流体管1の全断面を通過するように、ストローク33により切断用カッタ32を下降動作させる。切断用カッタ32の回転動作及び下降動作により、流体管1と流体管切断片とに分断される。この際に生じる流体管1の切り屑は、切断箇所よりも下流位置で展張した捕捉網10により回収される。
【0051】
そして、流体管1の切断動作後に、胴体31の内部に配設した切断用カッタ32と、センタードリル32bの掛止片32cに掛止した切断後の流体管切断片とを外部に搬出する。次に、切断用カッタ32を、流体管1内部を移動自在な吸引ノズルを備えた切り屑吸引装置(図示略)に置き換え、この切り屑吸引装置により、捕捉網10の上流側に滞留した切り屑の全部、及び捕捉網10に捕捉された切り屑の一部を吸引して回収する。そして、切り屑を回収した後の捕捉網10を収縮し、収縮した捕捉網10を、捕捉した残りの切り屑とともに上方に移動させ、弁軸6aの操作により弁体6bを動作させることで開閉弁6を閉状態とする。
【0052】
具体的には、切り屑を回収した後、操作ネジ8fを操作することにより、アーム部材16を上昇し、このアーム部材16が上昇することで、枢着部15a,15aを中心に回動端部15b,15bが互いに近接するように回動する。また、アーム部材16の上昇により、帯片10a,10aの上部も上昇し、帯片10a,10aが収縮するため、網部10cも収縮する。すなわち、この操作ネジ8fの操作により、押圧体15,15が、捕捉網10が展張する前において捕捉網10と支持体11とを流体管1内部に設置した状態に復帰することで、帯片10a,10aを取付けた網部10a,10aも収縮し、捕捉網10が展張する前において捕捉網10と支持体11とを流体管1内部に設置した状態に復帰する収縮操作が可能となる(図3参照)。
【0053】
そして、網部10cを収縮させた後、操作ネジ8aを操作することにより、捕捉網10、支持体11及びアーム部材16を上昇して退避する。
【0054】
流体管1の切断作業及び切り屑回収作業を終了した後、切断装置34及び開閉弁30を退避させ、筐体12に、例えば制水弁が設置されることで、流体管1に流れる水を制水するようになっている。
【0055】
以上に説明したように、実施例の切り屑回収装置3において、捕捉網10と支持体11とを、操作部8により移動操作することで収容部5、開閉弁6及び連通部12bから開口Uを介し流体管1内部に設置した後、操作部8により展張操作することで流体管1の内壁に沿って周方向に移動する押圧体15,15が、可撓性を有する帯片10a,10aを流体管1内壁に沿って周方向に押圧することで、帯片10a,10aを取付けた網部10cの周縁が流体管1の内壁との隙間を生じさせることなく径方向に確実に展張されることになり、流体管1を不断流状態で切断若しくは穿孔する際に生じる切り屑を、漏れなく捕捉することが出来る。また、切り屑を回収した後、操作部8の収縮操作により、押圧体15,15が、捕捉網10が展張する前において捕捉網10と支持体11とを流体管1内部に設置した状態に復帰することで、帯片10a,10aを取付けた網部10cも収縮し、捕捉網10が展張する前において捕捉網10と支持体11とを流体管1内部に設置した状態に復帰するため、操作部8の移動操作により、これら切り屑回収装置3の構成部材である押圧体15,15、帯片10a,10a及び網部10cを開口Uに引っ掛けることなく流体管1内部から収容部5に移動し易くすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0057】
例えば、前記実施例では、流体管1は、その内部を流れる流体が上水である水輸送管として構成されているが、流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管にも適用可能である。
【0058】
また、前記実施例では、押圧体10,10は別体の別体から成っているが、これに限定されるものではなく、例えば、1本の棒状体である押圧体で構成されたものであっても良い。この場合、押圧体の中央部を流体管の管軸に配置し、押圧体の中央部を中心に回動することで、押圧体の両端が帯片を押圧するようにしても良い。
【0059】
また、前記実施例では、帯片10aは薄板のステンレス製で構成されているが、可撓性を有するものであれば材質は限定されるものではなく、例えば、帯片はプラスチックであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例における切り屑回収装置と穿孔装置が流体管に配設された状態を示す一部断面図である。
【図2】切り屑回収装置を示す断面図である。
【図3】捕捉網が流体管内部に移動した状態を示す一部断面図である。
【図4】押圧体が回動している状態を示す一部断面図である。
【図5】図4の押圧体が更に回動した状態を示す一部断面図である。
【図6】回動片が回動している状態を示す拡大断面図である。
【図7】捕捉網が切り屑を回収している状態を示す一部側断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 流体管
3 切り屑回収装置
5 収容部
8 操作部
10 捕捉網
10a 帯片
10c 網部
11 支持体
15 押圧体
15a 枢着部
15b 回動端部
16 アーム部材
19 回動片
U 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管を不断流状態で切断若しくは穿孔する際に生じる切り屑を回収する切り屑回収装置であって、
前記切り屑回収装置は、
柔軟性を有する網部及び可撓性を有し前記網部の周縁に沿って取付けられた帯片から成り流体管内部で径方向に展張若しくは収縮可能な捕捉網と、
該捕捉網が取付けられた支持体と、
流体管に形成された開口を介し内部に連通するように流体管に外嵌し、前記捕捉網及び支持体を収容する収容部と、
前記捕捉網及び支持体を、前記収容部と流体管内部との間で移動させる移動操作、及び前記捕捉網を流体管内部で展張若しくは収縮させる展張収縮操作が可能な操作部と、
から構成されており、
流体管内部で周方向に沿って移動する押圧体が、前記操作部により操作可能に前記支持体に設けられ、前記押圧体は、前記帯片を流体管内壁に沿って周方向に押圧することで、前記捕捉網を展張することを特徴とする切り屑回収装置。
【請求項2】
前記押圧体は、前記支持体に枢着した枢着部と、該枢着部を中心に回動し前記帯片を流体管内壁に沿って周方向に押圧する回動端部と、から成る棒状体であることを特徴とする請求項1に記載の切り屑回収装置。
【請求項3】
前記押圧体は、一方の端部に前記枢着部、他方の端部に前記回動端部が設けられた棒状体であって、該棒状体は前記枢着部を略同軸にした別体から成り、各々の回動端部が流体管の管上頂部に形成された開口近傍の上頂高さ位置から、互いに離間して、前記別体の棒状体が略水平の直線状を形成する中央高さ位置まで回動するように成っていることを特徴とする請求項2に記載の切り屑回収装置。
【請求項4】
前記支持体と前記棒状体とに介設され、前記支持体に沿って前記収容部と前記流体管内部との間を略上下方向に移動するアーム部材が、前記棒状体毎に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の切り屑回収装置。
【請求項5】
前記捕捉網の帯片は、前記別体の棒状体の回動する軌跡に各々が沿うように、有端で且つ別体に設けられ、各々の帯片の両端部が、前記支持体の先端側と前記アーム部材の収容部側とに、それぞれ取付けられていることを特徴とする請求項4に記載の切り屑回収装置。
【請求項6】
前記アーム部材に、前記押圧体により前記帯片が押圧されることで回動し、流体管の前記開口近傍における前記捕捉網の帯片を、内壁に沿って支持可能な回動片が枢着されていることを特徴とする請求項5に記載の切り屑回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−60025(P2010−60025A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225198(P2008−225198)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【Fターム(参考)】