説明

切削工具用カバー、切削用ホルダ及び切削装置

【課題】 切削粉が撒き散らされてしまうことを防止する。
【解決手段】 一端側の途中に閉塞部を備えた中空の軸体を有し、少なくとも一つのインサートが前記軸体の一端面に取り付けられるとともに、前記閉塞部よりも他端側の中空部分に連通する連通口が前記軸体の側面に設けられ、前記軸体を回転させつつ前記インサートをワークに当接させることで切削を行う切削工具に対してセットされる切削工具用カバーであある。切削工具用カバーには、軸体の先端部に固定され、一端面がワークの表面に対向する本体部と、本体部の一端面に形成された開口と、開口から切削工具の連通口まで連通する流路部とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具用カバー、切削用ホルダ及び切削装置に係り、特にFRP等の表面を切削するための切削工具用カバー、切削用ホルダ及び切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属等を切削する場合に発生する切削粉を回収すべく、切削工具の軸芯に吸引口を設け、当該吸引口から切削粉を吸引・回収する切削装置が知られている(例えば特許文献1参照)。近年においては、繊維強化樹脂複合材(FRP:Fiber Reinforced Plastics)を切削する場合もあるが、金属と比して切削粉が細かいために、切削工具の周辺に切削粉がまき散らされるという弊害があった。このため、切削工具の周囲に、切削粉が撒き散らされることを防止するカバーを設ける技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−274147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、切削時においては、切削工具のインサートと切削対象であるワークとは接しているものの、カバーとワークとの間には隙間を形成する必要がある。この隙間があるため、カバーを設けていたとしても結局微少な切削粉が切削工具周辺に撒き散らされてしまうという問題があった。また、切削時に発生する切削熱が切削工具本体へと蓄熱され、インサート切れ刃とワーク(FRP)との接触部で温度上昇を促進し、その影響からFRP自体にデラミネーション(層間剥離)を発生させてしまう場合もあるという問題もあった。
このため、本発明の課題は、切削粉が撒き散らされてしまうことを防止することである。また、本発明の他の課題は、工具本体へと蓄熱される熱量を効果的に冷却し、切削時におけるインサートの温度上昇を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、
一端側の途中に閉塞部を備えた中空の軸体を有し、少なくとも一つのインサートが前記軸体の一端面に取り付けられるとともに、前記閉塞部よりも他端側の中空部分に連通する連通口が前記軸体の側面に設けられ、前記軸体を回転させつつ前記インサートをワークに当接させることで切削を行う切削工具に対してセットされる切削工具用カバーであって、
前記軸体の先端部に固定され、一端面が前記ワークの表面に対向する本体部と、
前記本体部の前記一端面に形成された開口と、
前記開口から前記切削工具の連通口まで連通する流路部とを有することを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の切削工具用カバーにおいて、
前記軸体の側面には、前記閉塞部よりも先端側の中空部分に連通する補助連通口が形成されていて、
前記本体部は、当該本体部の側面に形成された補助開口と、前記補助開口から前記補助連通口まで連通する補助流路部とを有することを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の切削工具用カバーにおいて、
前記補助開口は、前記軸体の回転方向の先方側を向けて開放されていることを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の切削工具用カバーにおいて、
前記本体部の側面における前記補助開口に対応する位置には、前記軸体の回転方向の先方側を開放したダクトが設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の発明に係る切削用ホルダは、
一端側の途中に閉塞部を備えた中空の軸体を有し、少なくとも一つのインサートが前記軸体の一端面に取り付けられるとともに、前記閉塞部よりも他端側の中空部分に連通する連通口が前記軸体の側面に設けられ、前記軸体を回転させつつ前記インサートをワークに当接させることで切削を行う切削工具と、
前記切削工具に対してセットされる切削工具用カバーとを備え、
前記切削工具用カバーは、
前記軸体の先端部に固定され、一端面が前記ワークの表面に対向する本体部と、
前記本体部の前記一端面に形成された開口と、
前記開口から前記切削工具の連通口まで連通する流路部とを有することを特徴としている。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の切削用ホルダにおいて、
前記軸体の側面には、前記閉塞部よりも先端側の中空部分に連通する補助連通口が形成されていて、
前記本体部は、当該本体部の側面に形成された補助開口と、前記補助開口から前記補助連通口まで連通する補助流路部とを有することを特徴としている。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の切削用ホルダにおいて、
前記補助開口は、前記軸体の回転方向の先方側を向けて開放されていることを特徴としている。
【0012】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の切削用ホルダにおいて、
前記本体部の側面における前記補助開口に対応する位置には、前記軸体の回転方向の先方側を開放したダクトが設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項9記載の発明に係る切削装置は、
一端側の途中に閉塞部を備えた中空の軸体を有し、少なくとも一つのインサートが前記軸体の一端面に取り付けられるとともに、前記閉塞部よりも他端側の中空部分に連通する連通口が前記軸体の側面に設けられ、前記軸体を回転させつつ前記インサートをワークに当接させることで切削を行う切削工具と、
前記切削工具に対してセットされる切削工具用カバーと、
前記切削工具の切削により発生した切削粉を、前記切削工具の中空部分を介して吸引する吸引部とを備え、
前記切削工具用カバーは、
前記軸体の先端部に固定され、一端面が前記ワークの表面に対向する本体部と、
前記本体部の前記一端面に形成された開口と、
前記開口から前記切削工具の連通口まで連通する流路部とを有することを特徴としている。
【0014】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の切削装置において、
前記軸体の側面には、前記閉塞部よりも先端側の中空部分に連通する補助連通口が形成されていて、
前記本体部は、当該本体部の側面に形成された補助開口と、前記補助開口から前記補助連通口まで連通する補助流路部とを有することを特徴としている。
【0015】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の切削装置において、
前記補助開口は、前記軸体の回転方向の先方側を向けて開放されていることを特徴としている。
【0016】
請求項12記載の発明は、請求項10記載の切削装置において、
前記本体部の側面における前記補助開口に対応する位置には、前記軸体の回転方向の先方側を開放したダクトが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、切削工具用カバーの開口から切削工具の連通口まで連通する流路部が形成されているので、切削工具の中空部から吸引が行われると、開口、流路部及び連通口を介して吸引が行われることになる。そして、流路部の開口はインサートの外側に配置されるために、遠心力によってインサートの切れ刃から外周側に排出された切削粉を開口によって捕捉することができる。したがって、切削粉が撒き散らされてしまうことを防止することができる。
また、連通口が切削工具の内部に形成されるとともに、流路部が切削工具用カバーの内部に形成されているので、工具本体へ蓄熱された熱量を効果的に冷却することができる。これにより、切削時におけるインサートの温度上昇を抑制することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る切削装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る切削用ホルダの一部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本実施形態にかかる切削工具の概略構成を示す正面図である。
【図4】本実施形態にかかる切削工具の概略構成を示す一端面図である。
【図5】本実施形態にかかる切削工具の概略構成を示す他端面図である。
【図6】本実施形態にかかる切削工具用カバーの概略構成を示す正面図である。
【図7】図6におけるVII-VII切断線から見た断面図である。
【図8】図7の切削工具用カバーが切削工具にセットされた状態を示す一端面図である。
【図9】切削時における切削用ホルダとワークとの関係を模式的に示す説明図である。
【図10】図9に示す切削工具用カバーの変形例を模式的に示す説明図である。
【図11】図7に示す切削工具用カバーの変形例を示す断面図である。
【図12】図9に示す切削工具用カバーの変形例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0020】
図1は本実施形態に係る切削装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように切削装置1は、ベッド2と、該ベッド2の奥部分に立設されたコラム3と、該コラム3の前面に上下方向(Z軸方向)に移動自在に支持された主軸頭4と、前記ベッド2の手前部分に前後方向(Y軸方向)に移動自在に支持されたサドル5と、該サドル5上に左右方向(X軸方向)に移動自在に支持されたテーブル6とを備えている。テーブル6には、例えばFRP等から形成された被切削物であるワークWが載置されている。
【0021】
主軸頭4内には、主軸7が回転自在に支持され、該主軸7は主軸頭4に内蔵された駆動モータ(不図示)により回転駆動される。主軸7の下端部には、着脱自在の切削用ホルダ10が取り付けられるようになっている。また、主軸頭4の上部には、切削用ホルダ10に連通する配管8が設けられている。この配管8の他端部には、切削用ホルダ10によって発生した切削粉を吸引する吸引部9が接続されている。
【0022】
次に、切削用ホルダ10について詳細に説明する。
図2は切削用ホルダ10の一部の概略構成を示す斜視図である。図2に示すように切削用ホルダ10には、ワークWを切削するための切削工具11と、切削工具11に対してセットされた切削工具用カバー12とが備えられている。
【0023】
図3〜図5は、切削工具11の概略構成を示す説明図であり、図3は正面図、図4は一端面図、図5は他端面図である。この図3〜5に示すように切削工具11には、軸体111と、軸体111の先端面に設けられたインサート112及び補助ブロック113とが設けられている。本実施形態では、インサート112と補助ブロック113とが4組設けられている場合を例示して説明するが、インサート112と補助ブロック113とは何組設けられていてもよい。
【0024】
軸体111は、主軸頭4に固定される固定軸114と、固定軸114の先端部側に設けられたインサート固定部115とを備えている。そして、軸体111には、その軸芯上に形成された中空部分116が全長にわたって設けられている。中空部分116のインサート固定部115側の端部は開放されていて、中空部分116の固定軸114側の端部は配管8に接続されている。つまり中空部分116は配管8を介して吸引部9と連通している。
また、軸体111の側面には、中空部分116に連通する連通口111aが形成されている。この連通口111aは、軸芯から放射状に等間隔で4つ形成されており、いずれも軸芯に直交する平面に沿って形成されている。なお、中空部分116における連通口111aよりも先端部側には、当該中空部分116を閉塞する閉塞部15が設けられている。なお、閉塞部15よりも先端側においては中空部分116は開放されている。以下の説明においては、中空部分116における閉塞部15よりも基端部側を第一中空部116aとし、中空部分116における閉塞部15よりも先端部側を第二中空部116bと称す。
【0025】
固定軸114における先端部側外周には、切削工具用カバー12を固定するための固定穴117が形成されている。また、インサート固定部115の先端部には、インサート112を取り付けるためのインサート取付座118と、補助ブロック113を収容するブロック用収容凹部119とが形成されている。インサート取付座118は、インサート固定部115の先端面を四分割する直線上にそれぞれ配置されている。ブロック用収容凹部119は、各インサート取付座118における回転方向先方側に配置されている。
【0026】
インサート取付座118に収容されたインサート112は、その一側面112aが回転方向に対して直交する面に略平行であって、当該回転方向の先方側を向くように配置されている。そして、インサート取付座118に収容されたインサート112は、その先端部がワークWに接触するようにインサート固定部115の先端から先方に向けて突出している。つまり、インサート112が回転してワークWを切削すると、インサート112の一側面112a上に切削粉が溜まることになる。
一方、ブロック用収容凹部119に収容された補助ブロック113と、インサート固定部115とには、外周から中空部分116まで空気を案内するための流路120(図4においては斜線部)が形成されている。この流路120は、インサート112の一側面112a上を通過するように空気を案内する。
【0027】
また、インサート固定部115の第二中空部116bに連通する補助連通口16が形成されている。この補助連通口16は、直径方向に沿って配置されるように2つ形成されている。2つの補助連通口16は、いずれも軸芯に直交する平面に沿って形成されている。補助連通口16は、連通口111aからずれた位置に形成されている(図5参照)。
【0028】
図6及び図7は、切削工具用カバー12の概略構成を示す説明図であり、図6は正面図、図7は図6におけるVII-VII切断線から見た断面図である。
【0029】
切削工具用カバー12の本体部121は、金属により略円筒形状に形成されている。本体部121は、切削工具11の軸体111に固定されて、軸体111の先端部であるインサート固定部115を覆うものである。軸体111に固定されると、本体部121の一端面121aがワークWの表面に対向することになる。本体部121の基端部側には、固定軸114の固定穴117に係合するための係合部123(図2参照)が形成されている。この係合部123と固定穴117とを重ねて図示しないネジを固定穴117に螺入することで、切削工具用カバー12が切削工具11に取り付けられる。
【0030】
本体部121の内部は、その基端側が小径部125となっていて、先端側が小径部よりも内径の大きい大径部126となっている。小径部125内には切削工具11の固定軸114が収容され、大径部126内には切削工具11のインサート固定部115が収容されるようになっている。
そして、本体部121の一端面121aには、4つの開口127が形成されている。図8は、切削工具用カバー12が切削工具11にセットされた状態を示す一端面図である。この図8に示すように、4つの開口127のそれぞれは、各インサート112に対向する位置に形成されている。具体的には、各開口127は、インサート112に対向しているものの、該インサート112に対して回転方向の上流側にずれた位置に形成されている。
【0031】
また、図6に示すように、各開口127と小径部125の内面とが4つの流路部128によって連通している。流路部128は、開口127から軸芯に対して平行に沿って内部に延出する第一流路128aと、第一流路128aの奥側端部から小径部125の内面まで、軸芯に対して直交する平面に沿って形成された第二流路128bとを備えている。この第二流路128bの内面側端部は、切削工具用カバー12が切削工具11にセットされた際に、切削工具11の連通口111aに連通することになる。
【0032】
また、本体部121には、当該本体部121の外側面に形成された補助開口17と、補助開口17から補助連通口16まで連通する補助流路部18が設けられている。補助流路部18は、補助開口17から軸芯に対して直交する平面に沿って、大径部126の内面まで形成されている。この補助流路部18の内面側端部は、切削工具用カバー12が切削工具11にセットされた際に、切削工具11の補助連通口16に連通することになる。
また、本体部121の側面における補助開口17に対応する位置には凹部19が形成されている。この凹部19は、その回転方向の下流側半分の表面が下流側に向けて徐々に外側となる傾斜面となっている。また凹部19の上流側の表面は、上流側に向けて徐々に外側となる傾斜面となっている。この上流側半分の表面上に補助開口17が形成されている。このように、補助開口17が、軸体111の回転方向の先方側に向けて開放されていると、切削用ホルダ10の回転に伴って補助開口17内に空気が取り込まれ、補助流路部18及び補助連通口16に内側に向けた気流が発生することになる。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
まず、切削前には、吸引部9を駆動させて中空部分116の先端部から空気を吸引させておき、吸引が維持された状態で切削を開始する。
図9は切削時における切削用ホルダ10とワークWとの関係を模式的に示す説明図である。なお図9においては切削用ホルダ10の右半分は内部形状を示している。図9に示すように、切削加工は横送りのフライス加工(平面加工)で行われる。このとき、ワークWの表面と切削工具用カバー12との間には、クリアランスが設けられている。吸引部9による吸引が行われていると、中空部分116だけでなく、流路部128にも吸引による気流が発生する。図9中、矢印Y1が中空部分116内の気流を表し、矢印Y2が流路部128及び連通口111a内の気流を表している。さらに、切削用ホルダ10の回転に伴って、補助開口17内に空気が取り込まれ、補助流路部18及び補助連通口16に内側に向けた気流が発生しているので、その気流によって第二中空部116b内にも下方へと向かう気流が発生する(図9中、矢印Y3)。第二中空部116bからワークWに向けて放出された気流は、クリアランスを通過して外側へと向かう(図9中、矢印Y4)。この気流によって、切削粉は外側へ向けて強制的に排出されるものの、開口127、流路部128及び連通口111aで吸引され、第一中空部116aに至ることになる。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、切削工具用カバー12の開口127から切削工具11の連通口111aまで連通する流路部128が形成されているので、開口127、流路部128及び連通口111aが切削工具11の中空部分116に連通することになる。このため、切削工具11の中空部分116を介した吸引が行われると、中空部分116からだけでなく、開口127、流路部128及び連通口111aを介しても吸引が行われる。そして、流路部128の開口127はインサート112の外側に配置されるために、インサート112の切れ刃から外周側に排出された切削粉を開口127によって捕捉することができる。したがって、切削粉が撒き散らされてしまうことを防止することができる。
さらに、第二中空部116bに連通する補助連通口16、補助流路部18及び補助開口17が形成されているので、回転に伴って補助開口17から空気が取り込まれた際に、補助開口17から補助流路部18、補助連通口16、第二中空部116b、ワークWに至るまでの気流を発生させることができる。そして、この気流は、インサート112を内側から通過して開口127に至ることになるため、切削粉がスムーズに開口127に案内されることになり、切削粉の捕捉がより効率的となる。
【0035】
また、連通口111a及び補助連通口16が切削工具11の内部に形成されるとともに、流路部128及び補助流路部18が切削工具用カバー12の内部に形成されているので、工具本体へ蓄熱された熱量を効果的に冷却することができる。これにより、切削時におけるインサート112の温度上昇を抑制することも可能となる。
【0036】
そして、軸体111の回転方向の先方側を向けて補助開口17が開放されているので、回転に伴って補助開口17内に空気を取り込むことができる。
【0037】
また、4つの開口127のそれぞれが、各インサート112に対向する位置に形成されているので、インサート112の切れ刃から排出された切削粉を確実に捕捉することができる。特に、本実施形態では、各開口127が、インサート112に対して回転方向の上流側にずれた位置に配置されているので、回転によって開口127が、排出された切削粉の軌道上に配置されることになり、より確実に切削粉を捕捉することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。以下の説明においては、上記実施形態と同一部分においては同一符号を付し、その説明を省略する。
例えば、上記実施形態では、第二流路128b及び連通口111aが軸芯に直交する平面に平行に形成されている場合を例示したが、図10に示すように、第一流路128aと第二流路128cとがなす角度が90度よりも大きくなるように、第二流路128c及び連通口111cを形成してもよい。この場合、第一流路128aと第二流路128cとの角部が鈍角となるため、吸引した切削粉が前記角部に留まってしまうことを防止できる。なお、前記角部がなめらかに湾曲するように形成しておけば、切削粉の流れをよりスムーズにすることができる。
【0039】
また、上記実施形態では、回転方向の先方側を向けて開放した補助開口17を凹部19により形成しているが、図11に示すように、切削工具用カバー12の本体部121の側面における補助開口17dに対応する位置にダクト20を設けても良い。このダクト20の開口21は、軸体111の回転方向の先方側で開放されているため、この場合においても、回転に伴って補助開口17d内に空気を取り込むことができる。
さらに、凹部19とダクト20とを組み合わせるとより多くの空気を補助開口17,17d内に取り込むことが可能となる。
【0040】
また、図12に示すように、補助開口17、補助流路部18及び補助連通口16を省略したとしても、流路部128の開口127がインサート112の外側に配置されているために、インサート112から外側に排出された切削粉を開口127によって捕捉することができる。
なお、この場合、補助開口17、補助流路部18及び補助連通口16を単に省略しただけでは第二中空部116b内に切削粉が溜まってしまうため、中空部分116の先端部全体を閉塞部15eにより閉塞することが好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 切削装置
2 ベッド
3 コラム
4 主軸頭
5 サドル
6 テーブル
7 主軸
8 配管
9 吸引部
10 切削用ホルダ
11 切削工具
12 切削工具用カバー
15 閉塞部
16 補助連通口
17 補助開口
18 補助流路部
19 凹部
20 ダクト
21 開口
111 軸体
111a 連通口
112 インサート
112a 一側面
113 補助ブロック
114 固定軸
115 インサート固定部
116 中空部分
116a 第一中空部
116b 第二中空部
117 固定穴
118 インサート取付座
119 ブロック用収容凹部
120 流路
121 本体部
121a 一端面
123 係合部
125 小径部
126 大径部
127 開口
128 流路部
128a 第一流路
128b 第二流路
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側の途中に閉塞部を備えた中空の軸体を有し、少なくとも一つのインサートが前記軸体の一端面に取り付けられるとともに、前記閉塞部よりも他端側の中空部分に連通する連通口が前記軸体の側面に設けられ、前記軸体を回転させつつ前記インサートをワークに当接させることで切削を行う切削工具に対してセットされる切削工具用カバーであって、
前記軸体の先端部に固定され、一端面が前記ワークの表面に対向する本体部と、
前記本体部の前記一端面に形成された開口と、
前記開口から前記切削工具の連通口まで連通する流路部とを有することを特徴とする切削工具用カバー。
【請求項2】
請求項1記載の切削工具用カバーにおいて、
前記軸体の側面には、前記閉塞部よりも先端側の中空部分に連通する補助連通口が形成されていて、
前記本体部は、当該本体部の側面に形成された補助開口と、前記補助開口から前記補助連通口まで連通する補助流路部とを有することを特徴とする切削工具用カバー。
【請求項3】
請求項2記載の切削工具用カバーにおいて、
前記補助開口は、前記軸体の回転方向の先方側を向けて開放されていることを特徴とする切削工具用カバー。
【請求項4】
請求項2記載の切削工具用カバーにおいて、
前記本体部の側面における前記補助開口に対応する位置には、前記軸体の回転方向の先方側を開放したダクトが設けられていることを特徴とする切削工具用カバー。
【請求項5】
一端側の途中に閉塞部を備えた中空の軸体を有し、少なくとも一つのインサートが前記軸体の一端面に取り付けられるとともに、前記閉塞部よりも他端側の中空部分に連通する連通口が前記軸体の側面に設けられ、前記軸体を回転させつつ前記インサートをワークに当接させることで切削を行う切削工具と、
前記切削工具に対してセットされる切削工具用カバーとを備え、
前記切削工具用カバーは、
前記軸体の先端部に固定され、一端面が前記ワークの表面に対向する本体部と、
前記本体部の前記一端面に形成された開口と、
前記開口から前記切削工具の連通口まで連通する流路部とを有することを特徴とする切削用ホルダ。
【請求項6】
請求項5記載の切削用ホルダにおいて、
前記軸体の側面には、前記閉塞部よりも先端側の中空部分に連通する補助連通口が形成されていて、
前記本体部は、当該本体部の側面に形成された補助開口と、前記補助開口から前記補助連通口まで連通する補助流路部とを有することを特徴とする切削用ホルダ。
【請求項7】
請求項6記載の切削用ホルダにおいて、
前記補助開口は、前記軸体の回転方向の先方側を向けて開放されていることを特徴とする切削用ホルダ。
【請求項8】
請求項6記載の切削用ホルダにおいて、
前記本体部の側面における前記補助開口に対応する位置には、前記軸体の回転方向の先方側を開放したダクトが設けられていることを特徴とする切削用ホルダ。
【請求項9】
一端側の途中に閉塞部を備えた中空の軸体を有し、少なくとも一つのインサートが前記軸体の一端面に取り付けられるとともに、前記閉塞部よりも他端側の中空部分に連通する連通口が前記軸体の側面に設けられ、前記軸体を回転させつつ前記インサートをワークに当接させることで切削を行う切削工具と、
前記切削工具に対してセットされる切削工具用カバーと、
前記切削工具の切削により発生した切削粉を、前記切削工具の中空部分を介して吸引する吸引部とを備え、
前記切削工具用カバーは、
前記軸体の先端部に固定され、一端面が前記ワークの表面に対向する本体部と、
前記本体部の前記一端面に形成された開口と、
前記開口から前記切削工具の連通口まで連通する流路部とを有することを特徴とする切削装置。
【請求項10】
請求項9記載の切削装置において、
前記軸体の側面には、前記閉塞部よりも先端側の中空部分に連通する補助連通口が形成されていて、
前記本体部は、当該本体部の側面に形成された補助開口と、前記補助開口から前記補助連通口まで連通する補助流路部とを有することを特徴とする切削装置。
【請求項11】
請求項10記載の切削装置において、
前記補助開口は、前記軸体の回転方向の先方側を向けて開放されていることを特徴とする切削装置。
【請求項12】
請求項10記載の切削装置において、
前記本体部の側面における前記補助開口に対応する位置には、前記軸体の回転方向の先方側を開放したダクトが設けられていることを特徴とする切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−91271(P2012−91271A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240688(P2010−240688)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【出願人】(000233066)日立ツール株式会社 (299)
【Fターム(参考)】