切削工具
【課題】切削工具の工具本体のコンパクト化を図る。
【解決手段】軸線O回りに回転される工具本体1の先端部に穴加工工具12が挿入され、工具本体1の先端部外周に切刃4Cを備えたスライダー5が軸線Oに対して傾斜した方向に進退可能に設けられ、工具本体1後端部の取付穴1Aの先端側にはスライダー5を進退せしめるカップリング部材3が収容され、取付穴1Aの後端側からは、穴加工工具12を出没せしめる軸線O方向に進退可能な駆動軸9が先端側に向けてカップリング部材3に当接可能に挿入され、カップリング部材3の後端部には、軸線Oに平行に後端側に延びてその後端部に内周側に突出する係合凸部11Aが形成された係合爪11が突設させられ、駆動軸9の外周部には、係合凸部11Aを収容可能な係合溝9Aが軸線O方向に延びるように形成されていて、この係合溝9A先端側の溝壁部9Bが係合凸部11Aに当接可能とされている。
【解決手段】軸線O回りに回転される工具本体1の先端部に穴加工工具12が挿入され、工具本体1の先端部外周に切刃4Cを備えたスライダー5が軸線Oに対して傾斜した方向に進退可能に設けられ、工具本体1後端部の取付穴1Aの先端側にはスライダー5を進退せしめるカップリング部材3が収容され、取付穴1Aの後端側からは、穴加工工具12を出没せしめる軸線O方向に進退可能な駆動軸9が先端側に向けてカップリング部材3に当接可能に挿入され、カップリング部材3の後端部には、軸線Oに平行に後端側に延びてその後端部に内周側に突出する係合凸部11Aが形成された係合爪11が突設させられ、駆動軸9の外周部には、係合凸部11Aを収容可能な係合溝9Aが軸線O方向に延びるように形成されていて、この係合溝9A先端側の溝壁部9Bが係合凸部11Aに当接可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被削材に形成された下穴を穴加工工具により仕上げ加工するとともに、この下穴の開口部周縁を工具本体に設けた切刃によって下穴と同軸的に切削加工する切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンにおけるシリンダーヘッドのバルブ穴の仕上げ加工を行う切削工具として、特許文献1には、軸線回りに回転される工具本体の先端部に挿入されたリーマ等の穴加工工具をこの軸線に沿って出没させることにより、バルブステムが挿通されるバルブ穴のステム穴を加工するとともに、このバルブ穴のバルブシート面を、同じ工具本体の先端部外周に設けられたスライダーを上記軸線に対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退させることにより、このスライダーに取り付けた切刃によってステム穴と同軸の円錐面状に切削加工するものが記載されている。
【0003】
このような切削工具は、自動車のエンジンのような多気筒エンジンのシリンダーヘッドのバルブ穴を加工する場合には、複数の切削工具が1つの加工機に配列されて、シリンダーヘッドの複数のバルブ穴に対して一斉に仕上げ加工を行うことにより、加工効率の向上を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−181706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような自動車用のエンジンにおいては、近年のエンジン自体のコンパクト化、軽量化のために、そのシリンダー同士の間隔を極力小さく設計する傾向にある。このため、シリンダーヘッドにおいても隣接するシリンダーのバルブ穴同士の間隔は小さくならざるを得ず、かかるバルブ穴を仕上げ加工する切削工具においても、上記加工機に配列されるもの同士の間隔は小さくせざるを得ない。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の切削工具では、カップリング部材(駆動部材)を介して上記スライダーを進退せしめる駆動軸(第一可動軸)が中空軸状をとされていて、その内周部に上記リーマを出没せしめる駆動軸(第二可動軸)が挿入された二重管構造をなしており、これらの駆動軸が各々独自に進退してステム穴の穴加工とバルブシート面の切削加工を行うため、各駆動軸にはそれぞれ、スライダーに取り付けた切刃によってバルブシート面を切削するときに作用する抵抗と、リーマによってバルブ穴を加工するときに作用する抵抗とが個別に作用する。このため、リーマを出没させる駆動軸にはある程度の外径が必要とされるとともに、スライダーを進退させる中空軸状の駆動軸にも十分な厚さが必要となり、結果的にこれらの駆動軸を収容する工具本体にも、ある程度の大きさの外径を確保しなければならない。
【0007】
従って、上述のようにシリンダーヘッドのバルブ穴同士の間隔が小さくなると、加工機において隣接する切削工具同士で工具本体が干渉してしまうおそれが生じるため、1つの加工機において配列し得る切削工具の数は自ずと制限されることになる。このため、そのような間隔の小さいバルブ穴の加工を行うには、例えば2つの加工機に半数ずつの切削工具をバルブ穴の間隔の倍の間隔で配列して、これらの加工機で間隔をずらして交互に1つのシリンダーヘッドのバルブ穴の仕上げ加工を行うようにしなければならなくなって、加工効率や経済性を損なう結果となる。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、切削工具の工具本体のコンパクト化を図ることにより、1つの加工機に配列可能な切削工具の数が制限されるのを避けることができて、効率的で経済的な加工を維持することが可能な切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転される工具本体の先端部に、上記軸線に沿って出没可能に穴加工工具が挿入される貫通穴が形成されるとともに、上記工具本体の先端部外周には、切刃を備えたスライダーが上記軸線に対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退可能に設けられ、上記工具本体の後端部に上記貫通穴と連通するように形成された取付穴の先端側には、上記スライダーと係合して該スライダーを進退せしめるカップリング部材が、上記工具本体に対して上記軸線方向に進退自在かつ該軸線回りに一体に回転可能に収容されるとともに、上記取付穴の後端側からは、上記穴加工工具を保持して出没せしめる上記軸線方向に進退可能な駆動軸が、上記工具本体および上記カップリング部材に対して上記軸線回りに一体回転可能かつ該軸線方向先端側に向けて上記カップリング部材に当接可能に挿入されており、上記カップリング部材の後端部には、上記軸線に平行に後端側に延びてその後端部に内周側に突出する係合凸部が形成された係合爪が突設させられているとともに、上記駆動軸の外周部には、上記係合爪の係合凸部を収容可能な係合溝が上記軸線方向に延びるように形成されていて、この係合溝の上記軸線方向先端側の溝壁部が上記係合凸部に当接可能とされていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された切削工具においては、工具本体の取付穴後端側から挿入される穴加工工具の駆動軸が軸線方向に進退可能とされていて、この駆動軸を先端側に前進させたときには、取付穴先端側に収容されてスライダーを進退せしめるカップリング部材に当接させられることにより、これら駆動軸とカップリング部材が工具本体に対して一体に前進可能とされる。従って、この駆動軸の前進のストロークを、穴加工工具を前進させることによって下穴の加工を行うストロークと、その後に駆動軸とカップリング部材を一体に前進させることによってスライダーの切刃により開口部周縁の加工を行うストロークとで構成することにより、駆動軸1軸だけを前進させるだけで、これら下穴の加工とその開口部周縁の加工とを連続して行うことが可能となる。
【0011】
一方、この駆動軸の外周部には、カップリング部材の後端側に延びる係合爪の係合凸部を収容可能な係合溝が軸線方向に形成されており、この係合溝の軸線方向先端側の溝壁部が係合凸部に当接させられることにより、駆動軸を軸線方向後端側に後退させたときには、この溝壁部が係合凸部に当接したところでカップリング部材は、係合爪によって引っ張られるようにして駆動軸と一体に後退可能とされる。従って、この係合爪には、こうしてカップリング部材を後退させるときの引っ張り応力が作用するだけであって、下穴開口部周縁を切削するときの抵抗が作用したりすることがないため、係合爪の径方向の厚さを薄くすることができて取付穴の小径化を図ることができ、これに伴い工具本体の外径も小さくして切削工具をコンパクト化することができる。
【0012】
ここで、このように係合爪を薄くすることができることから、カップリング部材の後端部に複数の係合爪を周方向に間隔をあけて突設しても、取付穴の小径化による切削工具のコンパクト化を阻害することがない。そして、これに応じて、駆動軸の外周部に、これらの係合爪の係合凸部を収容可能な複数の係合溝が形成することにより、カップリング部材の安定した後退動作を促すことが可能となる。
【0013】
一方、このような切削工具の工具本体は、加工機に着脱可能に取り付けられるのが一般的であるが、駆動軸は加工機の駆動軸進退手段に連結されることになるため、この駆動軸は加工機側に残したまま工具本体を着脱可能とするのが望ましい。そこで、上記駆動軸の外周部には、上記係合溝に対して周方向の一方の側に連通して上記係合凸部を収容可能な脱着溝を上記軸線方向に延びるように形成しておいて、この脱着溝を、上記軸線方向先端側に溝壁部を有することなく、上記駆動軸の先端側に貫通させることにより、工具本体をこの周方向の一方の側にカップリング部材ごと回転させてその係合爪の係合凸部を脱着溝に収容し、そのまま工具本体を先端側に引き抜くだけで、駆動軸や穴加工工具は加工機側に残したまま容易に工具本体の取り外しを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、穴加工工具による下穴の加工とスライダーに備えられた切刃による開口部周縁の加工とを、駆動軸1軸の前進により行うことができて、切削抵抗に抗してカップリング部材を前進させる駆動軸を要することがなく、またこのカップリング部材を後退させる係合爪の厚さも薄くすることができるので、工具本体の小径化による切削工具のコンパクト化を図ることができる。従って、例えば上述のようにエンジンのコンパクト化によりシリンダーヘッドのバルブ穴同士の間隔が小さくなっても、1つの加工機に配列可能な切削工具の数が制限されるのを避けることができて、この1つの加工機により1度の加工でシリンダーヘッドのすべてのバルブ穴加工を効率的かつ経済的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の他の側断面図である。
【図3】図1に示す実施形態の正面図である。
【図4】図2におけるYY拡大断面図である。
【図5】図1におけるZZ拡大断面図である。
【図6】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図7】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図8】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図9】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図10】図1に示す実施形態の変形例を示す側断面図である。
【図11】図10に示す変形例のアダプタ7を後端側から見た一部破断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1ないし図9は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態の切削工具は、その工具本体1が鋼材等により形成されて、この工具本体1の外形は、先端側(図1、図2、図6ないし図9において左側)の部分が後端側(同図1、図2、図6ないし図9において右側)に向かうに従い漸次拡径する軸線Oを中心とした多段円錐状をなすとともに、後端側の部分は該軸線Oを中心とした円柱状とされ、この軸線O回りに工具回転方向Tに回転させられることにより、上述のような4サイクルエンジンのシリンダーヘッドにおけるバルブ穴とその開口部周縁とを切削加工する。
【0017】
この工具本体1の先端部には、小径円筒状のガイド2が軸線Oに沿って挿通されて取り付けられており、このガイド2の内周部が、上記バルブ穴のステム穴を仕上げ加工するリーマ等の穴加工工具が挿入される貫通穴2Aとされている。一方、工具本体1の後端部には、この貫通穴2Aに連通して工具本体1の後端面に開口する内径の大きな取付穴1Aが軸線Oを中心として形成されており、この取付穴1Aの先端側には、概略円筒状をなすカップリング部材3が、キー3Aを介して工具本体1に対し軸線O方向に進退自在かつ軸線O回りに一体回転可能に嵌挿されている。なお、取付穴1Aの後端側開口部はカップリング部材3が嵌挿された先端側よりも内径が一段拡径されるとともに後端側に向かうに従いこの内径が僅かに拡径するテーパ穴1Bとされ、しかもその軸線O方向中央部にはさらに内径を一段拡径するように環状溝1Cが形成されている。
【0018】
また、工具本体1の先端外周部には、周方向に略等間隔に3つの切刃4A〜4Cが配設されている。これらの切刃4A〜4Cは、バルブ穴の開口部周縁を切削加工するものであって、このうち2つの切刃4A、4Bは、この工具本体1の先端外周部に着脱可能かつその軸線O方向の位置が微調整可能に固定されて取り付けられた超硬合金等の硬質材料よりなる切削インサートに形成される一方、残りの切刃4Cは、同様に超硬合金等の硬質材料よりなる切削インサートに形成されているものの、この切刃4Cが形成された切削インサートは、上述のように円錐状をなすこの先端部の母線の方向に沿って進退可能に設けられたスライダー5に、着脱可能かつその軸線O方向の位置が微調整可能に取り付けられている。
【0019】
ここで、工具本体1の先端部外周には、上記母線に沿ってスライド溝1Dが形成されていて、スライダー5は、このスライド溝1Dに沿って摺動自在に該スライド溝1D内に挿入されている。また、スライド溝1Dの底面には、上記取付穴1Aに連通する長穴が上記母線方向に沿って形成されているとともに、スライダー5の底面からは上記母線方向に垂直にピン5Aがこの長穴を通して取付穴1A内に突出させられており、このピン5Aが、やはり上記母線方向に垂直に上記カップリング部材3の先端外周部に形成された穴部3Bに嵌挿されることにより、カップリング部材3の軸線O方向への進退に伴ってスライダー5は、上記母線方向すなわち軸線Oに対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退可能とされる。
【0020】
なお、このスライド溝1Dには、スライダー5のガイド機構6が備えられている。このガイド機構6は、スライド溝1Dの工具回転方向T後方側の内壁に、工具回転方向T側を向く側面に図示されないセレーションが上記母線方向に沿って延びるように形成されたガイドプレート6Aが取り付けられて、このセレーションが、スライダー5の工具回転方向T後方側を向く側面に形成されたやはり図示されないセレーションと噛合させられるとともに、スライド溝1Dの工具回転方向T側の内壁には、スプリング等の付勢部材6Bによって工具回転方向T後方側に付勢された押圧プレート6Cが備えられた構成とされ、この押圧プレート6Cによってスライダー5が工具回転方向T後方側に押圧されることにより上記セレーションが噛合させられて、スライダー5が上記母線方向に案内されつつ進退させられるようになされている。
【0021】
こうして工具本体1の先端外周部に配設された切刃4A〜4Cは、固定された一方の切刃4Aが、工具本体1の先端内周側に位置して軸線Oに対し小さな傾斜角で後端側に向かうに従い外周側に向かうように、また固定された他方の切刃4Bは、切刃4Aよりも後端外周側に位置して軸線Oに対し大きな傾斜角で後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜させられる。そして、スライダー5に配設された切刃4Cは、このスライダー5を上述のように母線方向に進退させたときの軌跡が、切刃4A、4Bの軸線O回りの回転軌跡とそれぞれ交差して、軸線Oに対し切刃4Aよりは大きく、切刃4Bよりは小さな傾斜角で、後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜させられる。
【0022】
一方、この工具本体1が装着される加工機の主軸Aにはアダプタ7がクランプネジにより取り付けられ、工具本体1はこのアダプタ7を介して主軸Aに装着されて軸線O回りに回転させられる。このアダプタ7は、軸線O方向中央部が工具本体1後端部と略同径となるように拡径した外形略多段円筒状をなすアダプタ本体7Aに、工具本体1を着脱可能にクランプするクランプ機構8が備えられたもので、このクランプ機構8は、アダプタ本体7Aの内周部に軸線O回りに回転自在に嵌挿されたクランパー8Aと、アダプタ本体7A中央部の一段拡径したフランジ部7Bに収容されてクランパー8Aを回転させるクランプギア8Bと、フランジ部7Bの先端側の円筒壁部7Cを径方向に貫通する孔部7Dに収容された鋼球等のクランプボール8Cとにより構成されている。
【0023】
ここで、アダプタ本体7Aの内周部は後端側に向けて内径が一段拡径するように形成されるとともに、クランパー8Aは、外径が後端側に向けて一段拡径する多段円筒状とされて、その先端側の小径部をアダプタ本体7A内周部の先端側の小径部に摺動可能に挿入させて回転自在に嵌挿されている。また、一段拡径したクランパー8A後端部の外周にはクランプギア8Bと噛み合わされるギア部8Dが形成されており、クランプギア8Bを回転させることによりクランパー8Aは軸線O回りに回転可能とされている。なお、アダプタ本体7A内周部の一段拡径した後端部にはC字状のリング8Eが取り付けられてクランパー8Aを抜け止めしている。
【0024】
さらに、アダプタ本体7Aの上記円筒壁部7Cは、その外周面が、工具本体1の取付穴1A後端側のテーパ穴1Bと等しいテーパ角で後端側に向かうに従い外径が僅かに拡径するテーパ面とされて、該テーパ穴1Bに密着可能とされている。また、この円筒壁部7Cに形成される上記孔部7Dは、こうして円筒壁部7Cの外周面をテーパ穴1Bに密着させ、かつ工具本体1の軸線Oに垂直な後端面を、同じく軸線Oに垂直とされたフランジ部7Bの先端側を向く面に当接させた状態で、軸線O方向においてテーパ穴1Bの上記環状溝1Cと連通する位置に形成されるとともに、軸線O回りの周方向には等間隔をあけて複数箇所(本実施形態では3箇所)に形成されている。
【0025】
これらの孔部7Dに収容されるクランプボール8Cは、球体の表面のうち、この球体の中心を通る1つの直径線の両端部と交差する部分を該直径線に直交する平面で面取りしたような形状とされるとともに、孔部7Dは、このクランプボール8Cの上記直径線に沿った断面と略等しい断面形状とされて、クランプボール8Cの面取りされた平面部分に対応した平面部分を軸線Oに直交する平面上に位置させるようにして、これらの平面部分を摺接させるように該クランプボール8Cを収容している。一方、クランパー8Aの先端側小径部の外周面には、軸線Oに沿った断面がクランプボール8Cの半径と等しい半径の凹円弧状をなす溝部8Fが、孔部7Dの内周側にそれぞれ連通して周方向に延びるように、かつこの周方向の一方の側に向かうに従い溝深さが漸次深くなるように形成されている。
【0026】
また、アダプタ本体7Aのフランジ部7Bにおける上記先端側を向く面にはピン7Eが突設される一方、上述のようにこの先端側を向く面と密着する工具本体1の後端面には、ピン7Eに対応する位置に、軸線Oを中心として円弧状をなして該ピン7Eを収容する円弧溝1Eが形成されている。さらに、上記クランプボール8Cの直径は、上記溝部8Fの最深部にクランプボール8Cの内周側部分が収容されていても円筒壁部7Cの外周面から突出するようにされており、工具本体1の後端面から環状溝1Cにかけては、ピン7Eを円弧溝1Eの一端に位置させた状態で、こうしてクランプボール8Cが円筒壁部7C外周面から突出した位置にそれぞれ対応する位置に、クランプボール8Cの突出部分を通過させる断面円弧状の通過溝1Fが軸線Oに平行に形成されている。
【0027】
このようなクランプ機構8によって工具本体1をアダプタ7にクランプするには、まずこうしてクランプボール8Cが溝部8Fの最深部に位置して円筒壁部7C外周面からの突出量が最も小さくされた状態で、ピン7Eが円弧溝1Eの一端に位置するようにして、クランプボール8Cを通過溝1Fに通し、工具本体1の後端面をアダプタ本体7Aのフランジ部7Bの先端側を向く面に当接させるとともに、取付穴1Aのテーパ穴1Bに円筒壁部7Cの外周面を密着させる。次いで、ピン7Eが円弧溝1Eの他端に位置するように工具本体1を軸線O回りに所定角度回転させた上で、クランプギア8Bを回転させることにより、溝部8Fの最浅部がクランプボール8Cの位置に来るようにクランパー8Aを回転させると、クランプボール8Cは円筒壁部7Cの外周面から突出して環状溝1Cの先端側を向く壁面を押圧するので、工具本体1の後端面がフランジ部7Bに押しつけられるようにして工具本体1がアダプタ7に固定される。
【0028】
なお、本実施形態では、クランプギア8Bは平歯車状とされて軸線Oと平行な回転軸回りに回転されるようにアダプタ本体7Aに支持され、軸線O方向先端側からレンチ等の作業用工具をこのクランプギア8Bの回転操作部に係合させて回転するようになされており、工具本体1にはピン7Eが円弧溝1Eの他端に位置した状態でこの回転操作部に臨んで上記作業用工具を挿通できるように、該工具本体1を軸線O方向に貫通する貫通穴1Gが形成されている。ただし、これに代えて、図10および図11に示す変形例のようにクランプギア8Bをウォームギアとして軸線Oに垂直な平面上に回転軸を配置し、アダプタ7の側方からの操作によってクランパー8Aを回転させるようにしてもよい。なお、この変形例において第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。
【0029】
また、駆動軸9は、こうして主軸Aに取り付けられたアダプタ7のクランパー8A内周部を通って工具本体1の取付穴1Aに軸線Oに沿って後端側から挿入されており、主軸Aと一体回転させられるとともに、この主軸A側に設けられた駆動軸進退手段により該主軸Aに対して軸線O方向に進退駆動される。この駆動軸9の先端部には、工具本体1の貫通穴2Aに挿通させられた穴加工工具のシャンクを把持するチャック機構10が備えられている。このチャック機構10は、駆動軸9の先端面から穿設された凹穴に、軸線O方向に押圧されることによって縮径して上記シャンクを締め付けるように把持するコレットチャック等のチャック本体10Aが収容されるとともに、このチャック本体10Aの先端側には該チャック本体10Aを軸線O方向に押圧する押圧ネジ部材10Bがねじ込まれて構成されている。
【0030】
さらに、この押圧ネジ部材10Bの先端部には、駆動軸9の外径よりも一段小径な平歯車状のギア部10Cが形成されていて、このギア部10Cと駆動軸9の先端部とが、カップリング部材3の内周部に後端側から挿入される。ここで、上述のように概略円筒状をなすカップリング部材3の内周部には、穴加工工具のシャンクが挿通される先端側の小径部に続いて後端側に、ギア部10Cが収容される中径部と、駆動軸9の先端部が挿入される大径部とが形成されており、このうち中径部と大径部との間には、軸線Oに垂直な円環面状の段差面3Cが形成されて、押圧ネジ部材10Bの外周側に位置する駆動軸9の円環面状の先端面に当接可能とされている。
【0031】
また、カップリング部材3の先端部外周には、こうして中径部に挿入されたギア部10Cが露出するように該中径部に連通する切欠が形成されるとともに、工具本体1の取付穴1A先端側には、この切欠から露出したギア部10Cに向けて突出して該ギア部10Cに噛合させられるギア部材10Dが軸線Oと平行な回転軸回りに回転自在に備えられており、こうしてギア部10Cと噛合したギア部材10Dを、工具本体1先端側から挿入したレンチ等の作業用工具によって回転させることにより、押圧ネジ部材10Bが凹穴9A内にねじ込まれてチャック本体10Aを押圧し、穴加工工具のシャンクを把持するようになされている。なお、このギア部材10Dは、ギア部10Cを回転させるとき以外は、カップリング部材3の進退に干渉しないように、コイルスプリング等の付勢手段によって先端側に引き込まれている。
【0032】
そして、上記カップリング部材3の後端部には、軸線Oに平行に後端側に向けて延びる係合爪11が突設させられていて、この係合爪11の後端部には内周側に向けて突出する係合凸部11Aが形成されるとともに、駆動軸9の外周部には、この係合爪11の係合凸部11Aを収容可能な係合溝9Aが軸線O方向に延びるように形成されており、こうして係合凸部11Aを収容した係合溝9Aは、その軸線O方向先端側に位置する溝壁部9Bが係合凸部11Aに当接可能とされている。
【0033】
ここで、本実施形態における係合爪11は、カップリング部材3の内周部後端側に収容されてネジ止めされる円筒状の本体11Bの後端面から、複数(本実施形態では4本)の係合爪11が周方向に等間隔に一体形成されて後端側に延びるようにされており、これに対応して駆動軸9の外周部にも係合爪11と同数の係合溝9Aが周方向に等間隔に形成されている。なお、この本体11Bの内径は、カップリング部材3内周部の上記大径部の内径と略同じか、僅かに小さくされている。
【0034】
また、各係合爪11は、軸線Oに直交する断面が軸線Oを中心とした円弧状をなしていて、その周方向の幅は隣接する係合爪11同士の周方向の間隔よりも十分小さくされるとともに、その厚さは、この周方向の幅よりも小さくされていて、アダプタ7のクランパー8Aの内径と駆動軸9の外径との差の1/2すなわち両者の半径の差よりも小さくされている。そして、係合爪11は、これら駆動軸9の外周部とクランパー8Aの内周部との間を軸線O方向後端側に向けて延びるように配設されている。
【0035】
さらに、係合凸部11Aは、これらの係合爪11の後端の内周部に、軸線Oに対する径方向に扁平した断面矩形の平板状をなして突出するように一体形成されていて、軸線O方向先端側を向く端面は該軸線Oに垂直に突出させられており、ただしその突出量は係合爪11の厚さと略同等かこれよりも小さくされている。なお、複数の係合爪11は互いに同形同大とされ、係合凸部11Aの軸線O方向の位置も互いに等しくされている。
【0036】
このような係合凸部11Aが収容される駆動軸9外周の係合溝9Aは、この駆動軸9の外周面を軸線Oに垂直な断面においてL字状に切り欠くようにして形成されたものであって、駆動軸9の先端から僅かに軸線O方向後端側に間隔をあけた位置から該軸線Oに平行に後端側に延びるようにされており、この駆動軸9の先端から間隔をあけた位置に、軸線O方向先端側の溝壁部9Bが該軸線に垂直な平面として形成されている。このような係合溝9Aに、係合凸部11Aは、上記溝壁部9B以外とは接することのないように極小さな間隔をあけるようにして収容される。
【0037】
また、駆動軸9の外周部には、上記係合溝9Aの周方向に隣接して連通するようにして、やはり係合凸部11Aを収容可能な大きさの脱着溝9Cが軸線O方向に延びるように形成されている。この脱着溝9Cは、周方向において係合溝9Aに対し、上記クランパー8Aの溝部8Fの溝深さが深くなる上記一方の側に連通するように形成されたものであって、軸線Oに直交する断面が係合溝9Aと略同じ深さで係合凸部11Aよりも大きな幅の「コ」字状をなして外周側に開口するように形成されている。また、この脱着溝9Cは、駆動軸9の先端側に貫通して開口するように形成されていて、係合溝9Aのように係合凸部11Aに当接する軸線O方向先端側の溝壁部9Bが形成されることがないようにされている。
【0038】
従って、上述のように工具本体1をアダプタ7にクランプする際には、カップリング部材3の係合爪11の周方向の位置が駆動軸9の脱着溝9Cの位置に合わされて、係合凸部11Aが駆動軸9先端から脱着溝9C内に挿通され、次いで工具本体1を所定角度回転させることにより、係合凸部11Aが係合溝9Aに収容される。なお、係合溝9Aおよび脱着溝9Cの軸線O方向後端側の溝壁部は、駆動軸9の先端面をカップリング部材3の上記段差部3Cに当接させた状態で、係合凸部11Aとの間に僅かに間隙が開けられるようにされており、従ってこの後端側の溝壁部が係合凸部11Aに接することはない。
【0039】
このように係合溝9Aに係合爪11の係合凸部11Aを収容して、上述のように工具本体1をクランプ機構8によってアダプタ7にクランプした上で、バルブ穴のステム穴Bのような下穴に仕上げ加工を施すとともに、この下穴の開口部周縁Cの切削加工を行うには、まず図6に示すように駆動軸9およびカップリング部材3を後退させて、リーマ等の穴加工工具12を貫通穴2A内に収容するとともにスライダー5を工具本体1の後端外周側に後退させた状態としておいて、工具本体1を回転させつつ先端側に前進させ、その先端に固定された切刃4A、4Bにより下穴開口部周縁Cの最外周部分と最内周部分を、それぞれの切刃4A、4Bの上記傾斜角に応じたテーパ角となるように切削加工を行う。
【0040】
次いで、図7に示すように工具本体1を僅かに後退させてから、駆動軸9を前進させて穴加工工具12をステム穴Bに挿入し、図8に示すように穴加工工具12の先端がステム穴Bを貫通するようにしてこのステム穴Bの内周を仕上げ加工する。そして、こうして穴加工工具12をステム穴Bに挿入したまま、駆動軸9をさらに前進させると、駆動軸9の上記円環面状の先端面がカップリング部材3の上記段差面3Cに当接してカップリング部材3が前進させられ、これに伴いスライダー5もスライド溝1Dに案内されつつ上記母線方向に沿って工具本体1の先端内周側にスライドさせられて、図9に示すようにこのスライダー5に配設された切刃4Cにより、下穴開口部周縁Cの上記最外周部分と最内周部分との間に、該切刃4Cを上記母線方向に進退させたときの軌跡がなす上記傾斜角に応じたテーパ角で、バルブが密着するバルブ穴のバルブシート面となる加工面がステム穴Bと同軸となるように形成される。
【0041】
こうしてバルブ穴のステム穴Bとその開口部周縁Cの切削加工が終了したなら、駆動軸9を後退させて、まず穴加工工具12をステム穴Bから引き抜いて貫通穴2A内に収容し、次いで工具本体1を後退させてから、駆動軸9をさらに後退させる。すると、駆動軸9外周の係合溝9Aの先端側の溝壁部9Bに係合爪11の係合凸部11Aが当接して後端側に向けて係合し、さらにそのまま駆動軸9を後退させると、係合爪11ごとカップリング部材3が引っ張られるように後退させられて、これに伴いスライダー5も工具本体1の後端外周側にスライドして、図6に示したような元の状態に戻る。すなわち、このように構成された切削工具では、駆動軸9の1軸のみの進退によってこれらバルブ穴のステム穴Bと開口部周縁Cのバルブシート面との切削を行うことができる。
【0042】
そして、上記構成の切削工具においては、係合爪11にはこうしてカップリング部材3およびスライダー5を後退させるときに引っ張り応力が作用するだけで、特許文献1に記載の切削工具における中空軸状の駆動軸(第一可動軸)のようにカップリング部材を前進させるときの圧縮応力による挫屈やスライダーに配設された切刃に作用する切削抵抗に対する強度を必要としないので、この係合爪11の径方向の厚さを小さくすることができる。このため、カップリング部材3の後端側における取付穴1Aの内径を小さくすることができて、これに伴い工具本体1の外径を小さくし、すなわち切削工具のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
例えば、本実施形態では上記係合爪11はアダプタ7のクランパー8A内周部に挿通されており、従ってこのクランパー8Aの内外径および該クランパー8Aが挿入されるアダプタ本体7Aの円筒壁部7Cの内外径を小さくすることができるので、この円筒壁部7Cが挿入される工具本体1の取付穴1A後端側のテーパ穴1Bの内径も小さくして、結果的に工具本体1後端部の外径およびアダプタ本体7Aの外径も小さくすることができる。このため、上記構成の切削工具によれば、シリンダーヘッドのバルブ穴を加工するような場合において、エンジンのコンパクト化によりバルブ穴同士の間隔が小さくなっても、1つの加工機にすべてのバルブ穴を加工することのできる数の切削工具を配列することができて、1つのシリンダーヘッドのバルブ穴加工を1度で行うことが可能となり、効率的かつ経済的な切削加工を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では複数の係合爪11が周方向に間隔をあけてカップリング部材3から後端側に延びるように形成されており、これに合わせて駆動軸9の外周部にも同数の複数の係合溝9Aが形成されているため、駆動軸9を後退させたときに上記引っ張り応力を分散させるとともにカップリング部材3を全周に亙って均一に引っ張って安定的に後退させることができる。そして、このように複数の係合爪11を設けても、個々の係合爪11の厚さは上述のように小さくすることができるため、上記構成の切削工具によれば工具本体1の小径化によるコンパクト化が妨げられることはない。
【0045】
一方、本実施形態では、工具本体1がアダプタ7を介して加工機の主軸Aに着脱可能に取り付けられるようになされており、このアダプタ7への工具本体1の装着操作では、アダプタ7に備えられたクランプ機構8のクランプボール8Cに工具本体1の通過溝1Fの位置を合わせて、アダプタ7の円筒壁部7Cが取付穴1A後端のテーパ穴1Bに挿入されるようにし、次いで工具本体1を周方向に所定角度回転させてクランプボール8Cを抜け止めしてから、工具本体1先端側あるいはアダプタ7側方からの操作によってクランプギア8Bを回転させてクランプボール8Cを外周側にせり出すことにより、工具本体1をアダプタ7のフランジ部7Bに押し付けて固定するようにしている。また、工具本体1を取り外す際にはこれと反対の操作をする。
【0046】
そして、これに合わせて、本実施形態の駆動軸9には、上記係合溝9Aに対して上記装着操作の際の工具本体1の回転方向とは反対側の周方向の一方の側に係合溝9Aと連通する脱着溝9Cが形成されており、この脱着溝9Cは先端側の溝壁部を有することなく駆動軸9の先端側に貫通して開口しているので、この脱着溝9Cの位置が、上記クランプボール8Cの位置に通過溝1Fの位置を合わせた状態で、周方向において係合爪11の係合凸部11Aの位置と一致するようにしておくことにより、工具本体1をアダプタ7に着脱する際に、駆動軸9は主軸A側の駆動軸進退手段に連結したままで着脱操作を行うことが可能となる。このため、工具本体1の着脱の際に駆動軸9も主軸Aに対して着脱したりする必要がなく、より簡単かつ短時間で工具本体1の着脱を行うことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、こうして工具本体1を着脱する際の上記クランプボール8Cを工具本体1の環状溝1Cに出没させる操作が、工具本体1の軸線O方向先端側からレンチ等の作業用工具をクランプギア8Bに係合させて回転させることにより行われ、リーマ等の穴加工工具12を駆動軸9に着脱する操作も同様に先端側からの操作であることとも相俟って、上述した変形例のようにアダプタ7側方からの操作と比べ、特に1つの加工機における複数の切削工具同士の間隔が小さくならざるを得ない場合でも、これらの着脱操作を支障なく行うことができるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0048】
1 工具本体
1A 取付穴
2A 貫通穴
3 カップリング部材
4A〜4C 切刃
5 スライダー
7 アダプタ
8 クランプ機構
9 駆動軸
9A 係合溝
9B 係合溝9Aの先端側の溝壁面
9C 脱着溝
10 チャック機構
11 係合爪
11A 係合凸部
12 穴加工工具
O 工具本体1の軸線
T 工具回転方向
A 主軸
B バルブ穴のステム穴
C バルブ穴の開口部周縁
【技術分野】
【0001】
本発明は、被削材に形成された下穴を穴加工工具により仕上げ加工するとともに、この下穴の開口部周縁を工具本体に設けた切刃によって下穴と同軸的に切削加工する切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
4サイクルエンジンにおけるシリンダーヘッドのバルブ穴の仕上げ加工を行う切削工具として、特許文献1には、軸線回りに回転される工具本体の先端部に挿入されたリーマ等の穴加工工具をこの軸線に沿って出没させることにより、バルブステムが挿通されるバルブ穴のステム穴を加工するとともに、このバルブ穴のバルブシート面を、同じ工具本体の先端部外周に設けられたスライダーを上記軸線に対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退させることにより、このスライダーに取り付けた切刃によってステム穴と同軸の円錐面状に切削加工するものが記載されている。
【0003】
このような切削工具は、自動車のエンジンのような多気筒エンジンのシリンダーヘッドのバルブ穴を加工する場合には、複数の切削工具が1つの加工機に配列されて、シリンダーヘッドの複数のバルブ穴に対して一斉に仕上げ加工を行うことにより、加工効率の向上を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−181706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような自動車用のエンジンにおいては、近年のエンジン自体のコンパクト化、軽量化のために、そのシリンダー同士の間隔を極力小さく設計する傾向にある。このため、シリンダーヘッドにおいても隣接するシリンダーのバルブ穴同士の間隔は小さくならざるを得ず、かかるバルブ穴を仕上げ加工する切削工具においても、上記加工機に配列されるもの同士の間隔は小さくせざるを得ない。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の切削工具では、カップリング部材(駆動部材)を介して上記スライダーを進退せしめる駆動軸(第一可動軸)が中空軸状をとされていて、その内周部に上記リーマを出没せしめる駆動軸(第二可動軸)が挿入された二重管構造をなしており、これらの駆動軸が各々独自に進退してステム穴の穴加工とバルブシート面の切削加工を行うため、各駆動軸にはそれぞれ、スライダーに取り付けた切刃によってバルブシート面を切削するときに作用する抵抗と、リーマによってバルブ穴を加工するときに作用する抵抗とが個別に作用する。このため、リーマを出没させる駆動軸にはある程度の外径が必要とされるとともに、スライダーを進退させる中空軸状の駆動軸にも十分な厚さが必要となり、結果的にこれらの駆動軸を収容する工具本体にも、ある程度の大きさの外径を確保しなければならない。
【0007】
従って、上述のようにシリンダーヘッドのバルブ穴同士の間隔が小さくなると、加工機において隣接する切削工具同士で工具本体が干渉してしまうおそれが生じるため、1つの加工機において配列し得る切削工具の数は自ずと制限されることになる。このため、そのような間隔の小さいバルブ穴の加工を行うには、例えば2つの加工機に半数ずつの切削工具をバルブ穴の間隔の倍の間隔で配列して、これらの加工機で間隔をずらして交互に1つのシリンダーヘッドのバルブ穴の仕上げ加工を行うようにしなければならなくなって、加工効率や経済性を損なう結果となる。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、切削工具の工具本体のコンパクト化を図ることにより、1つの加工機に配列可能な切削工具の数が制限されるのを避けることができて、効率的で経済的な加工を維持することが可能な切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転される工具本体の先端部に、上記軸線に沿って出没可能に穴加工工具が挿入される貫通穴が形成されるとともに、上記工具本体の先端部外周には、切刃を備えたスライダーが上記軸線に対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退可能に設けられ、上記工具本体の後端部に上記貫通穴と連通するように形成された取付穴の先端側には、上記スライダーと係合して該スライダーを進退せしめるカップリング部材が、上記工具本体に対して上記軸線方向に進退自在かつ該軸線回りに一体に回転可能に収容されるとともに、上記取付穴の後端側からは、上記穴加工工具を保持して出没せしめる上記軸線方向に進退可能な駆動軸が、上記工具本体および上記カップリング部材に対して上記軸線回りに一体回転可能かつ該軸線方向先端側に向けて上記カップリング部材に当接可能に挿入されており、上記カップリング部材の後端部には、上記軸線に平行に後端側に延びてその後端部に内周側に突出する係合凸部が形成された係合爪が突設させられているとともに、上記駆動軸の外周部には、上記係合爪の係合凸部を収容可能な係合溝が上記軸線方向に延びるように形成されていて、この係合溝の上記軸線方向先端側の溝壁部が上記係合凸部に当接可能とされていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された切削工具においては、工具本体の取付穴後端側から挿入される穴加工工具の駆動軸が軸線方向に進退可能とされていて、この駆動軸を先端側に前進させたときには、取付穴先端側に収容されてスライダーを進退せしめるカップリング部材に当接させられることにより、これら駆動軸とカップリング部材が工具本体に対して一体に前進可能とされる。従って、この駆動軸の前進のストロークを、穴加工工具を前進させることによって下穴の加工を行うストロークと、その後に駆動軸とカップリング部材を一体に前進させることによってスライダーの切刃により開口部周縁の加工を行うストロークとで構成することにより、駆動軸1軸だけを前進させるだけで、これら下穴の加工とその開口部周縁の加工とを連続して行うことが可能となる。
【0011】
一方、この駆動軸の外周部には、カップリング部材の後端側に延びる係合爪の係合凸部を収容可能な係合溝が軸線方向に形成されており、この係合溝の軸線方向先端側の溝壁部が係合凸部に当接させられることにより、駆動軸を軸線方向後端側に後退させたときには、この溝壁部が係合凸部に当接したところでカップリング部材は、係合爪によって引っ張られるようにして駆動軸と一体に後退可能とされる。従って、この係合爪には、こうしてカップリング部材を後退させるときの引っ張り応力が作用するだけであって、下穴開口部周縁を切削するときの抵抗が作用したりすることがないため、係合爪の径方向の厚さを薄くすることができて取付穴の小径化を図ることができ、これに伴い工具本体の外径も小さくして切削工具をコンパクト化することができる。
【0012】
ここで、このように係合爪を薄くすることができることから、カップリング部材の後端部に複数の係合爪を周方向に間隔をあけて突設しても、取付穴の小径化による切削工具のコンパクト化を阻害することがない。そして、これに応じて、駆動軸の外周部に、これらの係合爪の係合凸部を収容可能な複数の係合溝が形成することにより、カップリング部材の安定した後退動作を促すことが可能となる。
【0013】
一方、このような切削工具の工具本体は、加工機に着脱可能に取り付けられるのが一般的であるが、駆動軸は加工機の駆動軸進退手段に連結されることになるため、この駆動軸は加工機側に残したまま工具本体を着脱可能とするのが望ましい。そこで、上記駆動軸の外周部には、上記係合溝に対して周方向の一方の側に連通して上記係合凸部を収容可能な脱着溝を上記軸線方向に延びるように形成しておいて、この脱着溝を、上記軸線方向先端側に溝壁部を有することなく、上記駆動軸の先端側に貫通させることにより、工具本体をこの周方向の一方の側にカップリング部材ごと回転させてその係合爪の係合凸部を脱着溝に収容し、そのまま工具本体を先端側に引き抜くだけで、駆動軸や穴加工工具は加工機側に残したまま容易に工具本体の取り外しを行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、穴加工工具による下穴の加工とスライダーに備えられた切刃による開口部周縁の加工とを、駆動軸1軸の前進により行うことができて、切削抵抗に抗してカップリング部材を前進させる駆動軸を要することがなく、またこのカップリング部材を後退させる係合爪の厚さも薄くすることができるので、工具本体の小径化による切削工具のコンパクト化を図ることができる。従って、例えば上述のようにエンジンのコンパクト化によりシリンダーヘッドのバルブ穴同士の間隔が小さくなっても、1つの加工機に配列可能な切削工具の数が制限されるのを避けることができて、この1つの加工機により1度の加工でシリンダーヘッドのすべてのバルブ穴加工を効率的かつ経済的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の他の側断面図である。
【図3】図1に示す実施形態の正面図である。
【図4】図2におけるYY拡大断面図である。
【図5】図1におけるZZ拡大断面図である。
【図6】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図7】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図8】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図9】図1に示す実施形態によって下穴(バルブ穴)の切削加工を行う場合を説明する図である。
【図10】図1に示す実施形態の変形例を示す側断面図である。
【図11】図10に示す変形例のアダプタ7を後端側から見た一部破断背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1ないし図9は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態の切削工具は、その工具本体1が鋼材等により形成されて、この工具本体1の外形は、先端側(図1、図2、図6ないし図9において左側)の部分が後端側(同図1、図2、図6ないし図9において右側)に向かうに従い漸次拡径する軸線Oを中心とした多段円錐状をなすとともに、後端側の部分は該軸線Oを中心とした円柱状とされ、この軸線O回りに工具回転方向Tに回転させられることにより、上述のような4サイクルエンジンのシリンダーヘッドにおけるバルブ穴とその開口部周縁とを切削加工する。
【0017】
この工具本体1の先端部には、小径円筒状のガイド2が軸線Oに沿って挿通されて取り付けられており、このガイド2の内周部が、上記バルブ穴のステム穴を仕上げ加工するリーマ等の穴加工工具が挿入される貫通穴2Aとされている。一方、工具本体1の後端部には、この貫通穴2Aに連通して工具本体1の後端面に開口する内径の大きな取付穴1Aが軸線Oを中心として形成されており、この取付穴1Aの先端側には、概略円筒状をなすカップリング部材3が、キー3Aを介して工具本体1に対し軸線O方向に進退自在かつ軸線O回りに一体回転可能に嵌挿されている。なお、取付穴1Aの後端側開口部はカップリング部材3が嵌挿された先端側よりも内径が一段拡径されるとともに後端側に向かうに従いこの内径が僅かに拡径するテーパ穴1Bとされ、しかもその軸線O方向中央部にはさらに内径を一段拡径するように環状溝1Cが形成されている。
【0018】
また、工具本体1の先端外周部には、周方向に略等間隔に3つの切刃4A〜4Cが配設されている。これらの切刃4A〜4Cは、バルブ穴の開口部周縁を切削加工するものであって、このうち2つの切刃4A、4Bは、この工具本体1の先端外周部に着脱可能かつその軸線O方向の位置が微調整可能に固定されて取り付けられた超硬合金等の硬質材料よりなる切削インサートに形成される一方、残りの切刃4Cは、同様に超硬合金等の硬質材料よりなる切削インサートに形成されているものの、この切刃4Cが形成された切削インサートは、上述のように円錐状をなすこの先端部の母線の方向に沿って進退可能に設けられたスライダー5に、着脱可能かつその軸線O方向の位置が微調整可能に取り付けられている。
【0019】
ここで、工具本体1の先端部外周には、上記母線に沿ってスライド溝1Dが形成されていて、スライダー5は、このスライド溝1Dに沿って摺動自在に該スライド溝1D内に挿入されている。また、スライド溝1Dの底面には、上記取付穴1Aに連通する長穴が上記母線方向に沿って形成されているとともに、スライダー5の底面からは上記母線方向に垂直にピン5Aがこの長穴を通して取付穴1A内に突出させられており、このピン5Aが、やはり上記母線方向に垂直に上記カップリング部材3の先端外周部に形成された穴部3Bに嵌挿されることにより、カップリング部材3の軸線O方向への進退に伴ってスライダー5は、上記母線方向すなわち軸線Oに対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退可能とされる。
【0020】
なお、このスライド溝1Dには、スライダー5のガイド機構6が備えられている。このガイド機構6は、スライド溝1Dの工具回転方向T後方側の内壁に、工具回転方向T側を向く側面に図示されないセレーションが上記母線方向に沿って延びるように形成されたガイドプレート6Aが取り付けられて、このセレーションが、スライダー5の工具回転方向T後方側を向く側面に形成されたやはり図示されないセレーションと噛合させられるとともに、スライド溝1Dの工具回転方向T側の内壁には、スプリング等の付勢部材6Bによって工具回転方向T後方側に付勢された押圧プレート6Cが備えられた構成とされ、この押圧プレート6Cによってスライダー5が工具回転方向T後方側に押圧されることにより上記セレーションが噛合させられて、スライダー5が上記母線方向に案内されつつ進退させられるようになされている。
【0021】
こうして工具本体1の先端外周部に配設された切刃4A〜4Cは、固定された一方の切刃4Aが、工具本体1の先端内周側に位置して軸線Oに対し小さな傾斜角で後端側に向かうに従い外周側に向かうように、また固定された他方の切刃4Bは、切刃4Aよりも後端外周側に位置して軸線Oに対し大きな傾斜角で後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜させられる。そして、スライダー5に配設された切刃4Cは、このスライダー5を上述のように母線方向に進退させたときの軌跡が、切刃4A、4Bの軸線O回りの回転軌跡とそれぞれ交差して、軸線Oに対し切刃4Aよりは大きく、切刃4Bよりは小さな傾斜角で、後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜させられる。
【0022】
一方、この工具本体1が装着される加工機の主軸Aにはアダプタ7がクランプネジにより取り付けられ、工具本体1はこのアダプタ7を介して主軸Aに装着されて軸線O回りに回転させられる。このアダプタ7は、軸線O方向中央部が工具本体1後端部と略同径となるように拡径した外形略多段円筒状をなすアダプタ本体7Aに、工具本体1を着脱可能にクランプするクランプ機構8が備えられたもので、このクランプ機構8は、アダプタ本体7Aの内周部に軸線O回りに回転自在に嵌挿されたクランパー8Aと、アダプタ本体7A中央部の一段拡径したフランジ部7Bに収容されてクランパー8Aを回転させるクランプギア8Bと、フランジ部7Bの先端側の円筒壁部7Cを径方向に貫通する孔部7Dに収容された鋼球等のクランプボール8Cとにより構成されている。
【0023】
ここで、アダプタ本体7Aの内周部は後端側に向けて内径が一段拡径するように形成されるとともに、クランパー8Aは、外径が後端側に向けて一段拡径する多段円筒状とされて、その先端側の小径部をアダプタ本体7A内周部の先端側の小径部に摺動可能に挿入させて回転自在に嵌挿されている。また、一段拡径したクランパー8A後端部の外周にはクランプギア8Bと噛み合わされるギア部8Dが形成されており、クランプギア8Bを回転させることによりクランパー8Aは軸線O回りに回転可能とされている。なお、アダプタ本体7A内周部の一段拡径した後端部にはC字状のリング8Eが取り付けられてクランパー8Aを抜け止めしている。
【0024】
さらに、アダプタ本体7Aの上記円筒壁部7Cは、その外周面が、工具本体1の取付穴1A後端側のテーパ穴1Bと等しいテーパ角で後端側に向かうに従い外径が僅かに拡径するテーパ面とされて、該テーパ穴1Bに密着可能とされている。また、この円筒壁部7Cに形成される上記孔部7Dは、こうして円筒壁部7Cの外周面をテーパ穴1Bに密着させ、かつ工具本体1の軸線Oに垂直な後端面を、同じく軸線Oに垂直とされたフランジ部7Bの先端側を向く面に当接させた状態で、軸線O方向においてテーパ穴1Bの上記環状溝1Cと連通する位置に形成されるとともに、軸線O回りの周方向には等間隔をあけて複数箇所(本実施形態では3箇所)に形成されている。
【0025】
これらの孔部7Dに収容されるクランプボール8Cは、球体の表面のうち、この球体の中心を通る1つの直径線の両端部と交差する部分を該直径線に直交する平面で面取りしたような形状とされるとともに、孔部7Dは、このクランプボール8Cの上記直径線に沿った断面と略等しい断面形状とされて、クランプボール8Cの面取りされた平面部分に対応した平面部分を軸線Oに直交する平面上に位置させるようにして、これらの平面部分を摺接させるように該クランプボール8Cを収容している。一方、クランパー8Aの先端側小径部の外周面には、軸線Oに沿った断面がクランプボール8Cの半径と等しい半径の凹円弧状をなす溝部8Fが、孔部7Dの内周側にそれぞれ連通して周方向に延びるように、かつこの周方向の一方の側に向かうに従い溝深さが漸次深くなるように形成されている。
【0026】
また、アダプタ本体7Aのフランジ部7Bにおける上記先端側を向く面にはピン7Eが突設される一方、上述のようにこの先端側を向く面と密着する工具本体1の後端面には、ピン7Eに対応する位置に、軸線Oを中心として円弧状をなして該ピン7Eを収容する円弧溝1Eが形成されている。さらに、上記クランプボール8Cの直径は、上記溝部8Fの最深部にクランプボール8Cの内周側部分が収容されていても円筒壁部7Cの外周面から突出するようにされており、工具本体1の後端面から環状溝1Cにかけては、ピン7Eを円弧溝1Eの一端に位置させた状態で、こうしてクランプボール8Cが円筒壁部7C外周面から突出した位置にそれぞれ対応する位置に、クランプボール8Cの突出部分を通過させる断面円弧状の通過溝1Fが軸線Oに平行に形成されている。
【0027】
このようなクランプ機構8によって工具本体1をアダプタ7にクランプするには、まずこうしてクランプボール8Cが溝部8Fの最深部に位置して円筒壁部7C外周面からの突出量が最も小さくされた状態で、ピン7Eが円弧溝1Eの一端に位置するようにして、クランプボール8Cを通過溝1Fに通し、工具本体1の後端面をアダプタ本体7Aのフランジ部7Bの先端側を向く面に当接させるとともに、取付穴1Aのテーパ穴1Bに円筒壁部7Cの外周面を密着させる。次いで、ピン7Eが円弧溝1Eの他端に位置するように工具本体1を軸線O回りに所定角度回転させた上で、クランプギア8Bを回転させることにより、溝部8Fの最浅部がクランプボール8Cの位置に来るようにクランパー8Aを回転させると、クランプボール8Cは円筒壁部7Cの外周面から突出して環状溝1Cの先端側を向く壁面を押圧するので、工具本体1の後端面がフランジ部7Bに押しつけられるようにして工具本体1がアダプタ7に固定される。
【0028】
なお、本実施形態では、クランプギア8Bは平歯車状とされて軸線Oと平行な回転軸回りに回転されるようにアダプタ本体7Aに支持され、軸線O方向先端側からレンチ等の作業用工具をこのクランプギア8Bの回転操作部に係合させて回転するようになされており、工具本体1にはピン7Eが円弧溝1Eの他端に位置した状態でこの回転操作部に臨んで上記作業用工具を挿通できるように、該工具本体1を軸線O方向に貫通する貫通穴1Gが形成されている。ただし、これに代えて、図10および図11に示す変形例のようにクランプギア8Bをウォームギアとして軸線Oに垂直な平面上に回転軸を配置し、アダプタ7の側方からの操作によってクランパー8Aを回転させるようにしてもよい。なお、この変形例において第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。
【0029】
また、駆動軸9は、こうして主軸Aに取り付けられたアダプタ7のクランパー8A内周部を通って工具本体1の取付穴1Aに軸線Oに沿って後端側から挿入されており、主軸Aと一体回転させられるとともに、この主軸A側に設けられた駆動軸進退手段により該主軸Aに対して軸線O方向に進退駆動される。この駆動軸9の先端部には、工具本体1の貫通穴2Aに挿通させられた穴加工工具のシャンクを把持するチャック機構10が備えられている。このチャック機構10は、駆動軸9の先端面から穿設された凹穴に、軸線O方向に押圧されることによって縮径して上記シャンクを締め付けるように把持するコレットチャック等のチャック本体10Aが収容されるとともに、このチャック本体10Aの先端側には該チャック本体10Aを軸線O方向に押圧する押圧ネジ部材10Bがねじ込まれて構成されている。
【0030】
さらに、この押圧ネジ部材10Bの先端部には、駆動軸9の外径よりも一段小径な平歯車状のギア部10Cが形成されていて、このギア部10Cと駆動軸9の先端部とが、カップリング部材3の内周部に後端側から挿入される。ここで、上述のように概略円筒状をなすカップリング部材3の内周部には、穴加工工具のシャンクが挿通される先端側の小径部に続いて後端側に、ギア部10Cが収容される中径部と、駆動軸9の先端部が挿入される大径部とが形成されており、このうち中径部と大径部との間には、軸線Oに垂直な円環面状の段差面3Cが形成されて、押圧ネジ部材10Bの外周側に位置する駆動軸9の円環面状の先端面に当接可能とされている。
【0031】
また、カップリング部材3の先端部外周には、こうして中径部に挿入されたギア部10Cが露出するように該中径部に連通する切欠が形成されるとともに、工具本体1の取付穴1A先端側には、この切欠から露出したギア部10Cに向けて突出して該ギア部10Cに噛合させられるギア部材10Dが軸線Oと平行な回転軸回りに回転自在に備えられており、こうしてギア部10Cと噛合したギア部材10Dを、工具本体1先端側から挿入したレンチ等の作業用工具によって回転させることにより、押圧ネジ部材10Bが凹穴9A内にねじ込まれてチャック本体10Aを押圧し、穴加工工具のシャンクを把持するようになされている。なお、このギア部材10Dは、ギア部10Cを回転させるとき以外は、カップリング部材3の進退に干渉しないように、コイルスプリング等の付勢手段によって先端側に引き込まれている。
【0032】
そして、上記カップリング部材3の後端部には、軸線Oに平行に後端側に向けて延びる係合爪11が突設させられていて、この係合爪11の後端部には内周側に向けて突出する係合凸部11Aが形成されるとともに、駆動軸9の外周部には、この係合爪11の係合凸部11Aを収容可能な係合溝9Aが軸線O方向に延びるように形成されており、こうして係合凸部11Aを収容した係合溝9Aは、その軸線O方向先端側に位置する溝壁部9Bが係合凸部11Aに当接可能とされている。
【0033】
ここで、本実施形態における係合爪11は、カップリング部材3の内周部後端側に収容されてネジ止めされる円筒状の本体11Bの後端面から、複数(本実施形態では4本)の係合爪11が周方向に等間隔に一体形成されて後端側に延びるようにされており、これに対応して駆動軸9の外周部にも係合爪11と同数の係合溝9Aが周方向に等間隔に形成されている。なお、この本体11Bの内径は、カップリング部材3内周部の上記大径部の内径と略同じか、僅かに小さくされている。
【0034】
また、各係合爪11は、軸線Oに直交する断面が軸線Oを中心とした円弧状をなしていて、その周方向の幅は隣接する係合爪11同士の周方向の間隔よりも十分小さくされるとともに、その厚さは、この周方向の幅よりも小さくされていて、アダプタ7のクランパー8Aの内径と駆動軸9の外径との差の1/2すなわち両者の半径の差よりも小さくされている。そして、係合爪11は、これら駆動軸9の外周部とクランパー8Aの内周部との間を軸線O方向後端側に向けて延びるように配設されている。
【0035】
さらに、係合凸部11Aは、これらの係合爪11の後端の内周部に、軸線Oに対する径方向に扁平した断面矩形の平板状をなして突出するように一体形成されていて、軸線O方向先端側を向く端面は該軸線Oに垂直に突出させられており、ただしその突出量は係合爪11の厚さと略同等かこれよりも小さくされている。なお、複数の係合爪11は互いに同形同大とされ、係合凸部11Aの軸線O方向の位置も互いに等しくされている。
【0036】
このような係合凸部11Aが収容される駆動軸9外周の係合溝9Aは、この駆動軸9の外周面を軸線Oに垂直な断面においてL字状に切り欠くようにして形成されたものであって、駆動軸9の先端から僅かに軸線O方向後端側に間隔をあけた位置から該軸線Oに平行に後端側に延びるようにされており、この駆動軸9の先端から間隔をあけた位置に、軸線O方向先端側の溝壁部9Bが該軸線に垂直な平面として形成されている。このような係合溝9Aに、係合凸部11Aは、上記溝壁部9B以外とは接することのないように極小さな間隔をあけるようにして収容される。
【0037】
また、駆動軸9の外周部には、上記係合溝9Aの周方向に隣接して連通するようにして、やはり係合凸部11Aを収容可能な大きさの脱着溝9Cが軸線O方向に延びるように形成されている。この脱着溝9Cは、周方向において係合溝9Aに対し、上記クランパー8Aの溝部8Fの溝深さが深くなる上記一方の側に連通するように形成されたものであって、軸線Oに直交する断面が係合溝9Aと略同じ深さで係合凸部11Aよりも大きな幅の「コ」字状をなして外周側に開口するように形成されている。また、この脱着溝9Cは、駆動軸9の先端側に貫通して開口するように形成されていて、係合溝9Aのように係合凸部11Aに当接する軸線O方向先端側の溝壁部9Bが形成されることがないようにされている。
【0038】
従って、上述のように工具本体1をアダプタ7にクランプする際には、カップリング部材3の係合爪11の周方向の位置が駆動軸9の脱着溝9Cの位置に合わされて、係合凸部11Aが駆動軸9先端から脱着溝9C内に挿通され、次いで工具本体1を所定角度回転させることにより、係合凸部11Aが係合溝9Aに収容される。なお、係合溝9Aおよび脱着溝9Cの軸線O方向後端側の溝壁部は、駆動軸9の先端面をカップリング部材3の上記段差部3Cに当接させた状態で、係合凸部11Aとの間に僅かに間隙が開けられるようにされており、従ってこの後端側の溝壁部が係合凸部11Aに接することはない。
【0039】
このように係合溝9Aに係合爪11の係合凸部11Aを収容して、上述のように工具本体1をクランプ機構8によってアダプタ7にクランプした上で、バルブ穴のステム穴Bのような下穴に仕上げ加工を施すとともに、この下穴の開口部周縁Cの切削加工を行うには、まず図6に示すように駆動軸9およびカップリング部材3を後退させて、リーマ等の穴加工工具12を貫通穴2A内に収容するとともにスライダー5を工具本体1の後端外周側に後退させた状態としておいて、工具本体1を回転させつつ先端側に前進させ、その先端に固定された切刃4A、4Bにより下穴開口部周縁Cの最外周部分と最内周部分を、それぞれの切刃4A、4Bの上記傾斜角に応じたテーパ角となるように切削加工を行う。
【0040】
次いで、図7に示すように工具本体1を僅かに後退させてから、駆動軸9を前進させて穴加工工具12をステム穴Bに挿入し、図8に示すように穴加工工具12の先端がステム穴Bを貫通するようにしてこのステム穴Bの内周を仕上げ加工する。そして、こうして穴加工工具12をステム穴Bに挿入したまま、駆動軸9をさらに前進させると、駆動軸9の上記円環面状の先端面がカップリング部材3の上記段差面3Cに当接してカップリング部材3が前進させられ、これに伴いスライダー5もスライド溝1Dに案内されつつ上記母線方向に沿って工具本体1の先端内周側にスライドさせられて、図9に示すようにこのスライダー5に配設された切刃4Cにより、下穴開口部周縁Cの上記最外周部分と最内周部分との間に、該切刃4Cを上記母線方向に進退させたときの軌跡がなす上記傾斜角に応じたテーパ角で、バルブが密着するバルブ穴のバルブシート面となる加工面がステム穴Bと同軸となるように形成される。
【0041】
こうしてバルブ穴のステム穴Bとその開口部周縁Cの切削加工が終了したなら、駆動軸9を後退させて、まず穴加工工具12をステム穴Bから引き抜いて貫通穴2A内に収容し、次いで工具本体1を後退させてから、駆動軸9をさらに後退させる。すると、駆動軸9外周の係合溝9Aの先端側の溝壁部9Bに係合爪11の係合凸部11Aが当接して後端側に向けて係合し、さらにそのまま駆動軸9を後退させると、係合爪11ごとカップリング部材3が引っ張られるように後退させられて、これに伴いスライダー5も工具本体1の後端外周側にスライドして、図6に示したような元の状態に戻る。すなわち、このように構成された切削工具では、駆動軸9の1軸のみの進退によってこれらバルブ穴のステム穴Bと開口部周縁Cのバルブシート面との切削を行うことができる。
【0042】
そして、上記構成の切削工具においては、係合爪11にはこうしてカップリング部材3およびスライダー5を後退させるときに引っ張り応力が作用するだけで、特許文献1に記載の切削工具における中空軸状の駆動軸(第一可動軸)のようにカップリング部材を前進させるときの圧縮応力による挫屈やスライダーに配設された切刃に作用する切削抵抗に対する強度を必要としないので、この係合爪11の径方向の厚さを小さくすることができる。このため、カップリング部材3の後端側における取付穴1Aの内径を小さくすることができて、これに伴い工具本体1の外径を小さくし、すなわち切削工具のコンパクト化を図ることができる。
【0043】
例えば、本実施形態では上記係合爪11はアダプタ7のクランパー8A内周部に挿通されており、従ってこのクランパー8Aの内外径および該クランパー8Aが挿入されるアダプタ本体7Aの円筒壁部7Cの内外径を小さくすることができるので、この円筒壁部7Cが挿入される工具本体1の取付穴1A後端側のテーパ穴1Bの内径も小さくして、結果的に工具本体1後端部の外径およびアダプタ本体7Aの外径も小さくすることができる。このため、上記構成の切削工具によれば、シリンダーヘッドのバルブ穴を加工するような場合において、エンジンのコンパクト化によりバルブ穴同士の間隔が小さくなっても、1つの加工機にすべてのバルブ穴を加工することのできる数の切削工具を配列することができて、1つのシリンダーヘッドのバルブ穴加工を1度で行うことが可能となり、効率的かつ経済的な切削加工を行うことができる。
【0044】
また、本実施形態では複数の係合爪11が周方向に間隔をあけてカップリング部材3から後端側に延びるように形成されており、これに合わせて駆動軸9の外周部にも同数の複数の係合溝9Aが形成されているため、駆動軸9を後退させたときに上記引っ張り応力を分散させるとともにカップリング部材3を全周に亙って均一に引っ張って安定的に後退させることができる。そして、このように複数の係合爪11を設けても、個々の係合爪11の厚さは上述のように小さくすることができるため、上記構成の切削工具によれば工具本体1の小径化によるコンパクト化が妨げられることはない。
【0045】
一方、本実施形態では、工具本体1がアダプタ7を介して加工機の主軸Aに着脱可能に取り付けられるようになされており、このアダプタ7への工具本体1の装着操作では、アダプタ7に備えられたクランプ機構8のクランプボール8Cに工具本体1の通過溝1Fの位置を合わせて、アダプタ7の円筒壁部7Cが取付穴1A後端のテーパ穴1Bに挿入されるようにし、次いで工具本体1を周方向に所定角度回転させてクランプボール8Cを抜け止めしてから、工具本体1先端側あるいはアダプタ7側方からの操作によってクランプギア8Bを回転させてクランプボール8Cを外周側にせり出すことにより、工具本体1をアダプタ7のフランジ部7Bに押し付けて固定するようにしている。また、工具本体1を取り外す際にはこれと反対の操作をする。
【0046】
そして、これに合わせて、本実施形態の駆動軸9には、上記係合溝9Aに対して上記装着操作の際の工具本体1の回転方向とは反対側の周方向の一方の側に係合溝9Aと連通する脱着溝9Cが形成されており、この脱着溝9Cは先端側の溝壁部を有することなく駆動軸9の先端側に貫通して開口しているので、この脱着溝9Cの位置が、上記クランプボール8Cの位置に通過溝1Fの位置を合わせた状態で、周方向において係合爪11の係合凸部11Aの位置と一致するようにしておくことにより、工具本体1をアダプタ7に着脱する際に、駆動軸9は主軸A側の駆動軸進退手段に連結したままで着脱操作を行うことが可能となる。このため、工具本体1の着脱の際に駆動軸9も主軸Aに対して着脱したりする必要がなく、より簡単かつ短時間で工具本体1の着脱を行うことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、こうして工具本体1を着脱する際の上記クランプボール8Cを工具本体1の環状溝1Cに出没させる操作が、工具本体1の軸線O方向先端側からレンチ等の作業用工具をクランプギア8Bに係合させて回転させることにより行われ、リーマ等の穴加工工具12を駆動軸9に着脱する操作も同様に先端側からの操作であることとも相俟って、上述した変形例のようにアダプタ7側方からの操作と比べ、特に1つの加工機における複数の切削工具同士の間隔が小さくならざるを得ない場合でも、これらの着脱操作を支障なく行うことができるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0048】
1 工具本体
1A 取付穴
2A 貫通穴
3 カップリング部材
4A〜4C 切刃
5 スライダー
7 アダプタ
8 クランプ機構
9 駆動軸
9A 係合溝
9B 係合溝9Aの先端側の溝壁面
9C 脱着溝
10 チャック機構
11 係合爪
11A 係合凸部
12 穴加工工具
O 工具本体1の軸線
T 工具回転方向
A 主軸
B バルブ穴のステム穴
C バルブ穴の開口部周縁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転される工具本体の先端部に、上記軸線に沿って出没可能に穴加工工具が挿入される貫通穴が形成されるとともに、上記工具本体の先端部外周には、切刃を備えたスライダーが上記軸線に対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退可能に設けられ、上記工具本体の後端部に上記貫通穴と連通するように形成された取付穴の先端側には、上記スライダーと係合して該スライダーを進退せしめるカップリング部材が、上記工具本体に対して上記軸線方向に進退自在かつ該軸線回りに一体に回転可能に収容されるとともに、上記取付穴の後端側からは、上記穴加工工具を保持して出没せしめる上記軸線方向に進退可能な駆動軸が、上記工具本体および上記カップリング部材に対して上記軸線回りに一体回転可能かつ該軸線方向先端側に向けて上記カップリング部材に当接可能に挿入されており、上記カップリング部材の後端部には、上記軸線に平行に後端側に延びてその後端部に内周側に突出する係合凸部が形成された係合爪が突設させられているとともに、上記駆動軸の外周部には、上記係合爪の係合凸部を収容可能な係合溝が上記軸線方向に延びるように形成されていて、この係合溝の上記軸線方向先端側の溝壁部が上記係合凸部に当接可能とされていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
上記カップリング部材の後端部には複数の上記係合爪が周方向に間隔をあけて突設されているとともに、上記駆動軸の外周部には、これらの係合爪の上記係合凸部を収容可能な複数の上記係合溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
上記駆動軸の外周部には、上記係合溝に対して周方向の一方の側に連通して上記係合凸部を収容可能な脱着溝が上記軸線方向に延びるように形成されていて、この脱着溝は、上記軸線方向先端側に溝壁部を有することなく、上記駆動軸の先端側に貫通させられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削工具。
【請求項1】
軸線回りに回転される工具本体の先端部に、上記軸線に沿って出没可能に穴加工工具が挿入される貫通穴が形成されるとともに、上記工具本体の先端部外周には、切刃を備えたスライダーが上記軸線に対して後端側に向かうに従い外周側に向けて傾斜した方向に進退可能に設けられ、上記工具本体の後端部に上記貫通穴と連通するように形成された取付穴の先端側には、上記スライダーと係合して該スライダーを進退せしめるカップリング部材が、上記工具本体に対して上記軸線方向に進退自在かつ該軸線回りに一体に回転可能に収容されるとともに、上記取付穴の後端側からは、上記穴加工工具を保持して出没せしめる上記軸線方向に進退可能な駆動軸が、上記工具本体および上記カップリング部材に対して上記軸線回りに一体回転可能かつ該軸線方向先端側に向けて上記カップリング部材に当接可能に挿入されており、上記カップリング部材の後端部には、上記軸線に平行に後端側に延びてその後端部に内周側に突出する係合凸部が形成された係合爪が突設させられているとともに、上記駆動軸の外周部には、上記係合爪の係合凸部を収容可能な係合溝が上記軸線方向に延びるように形成されていて、この係合溝の上記軸線方向先端側の溝壁部が上記係合凸部に当接可能とされていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
上記カップリング部材の後端部には複数の上記係合爪が周方向に間隔をあけて突設されているとともに、上記駆動軸の外周部には、これらの係合爪の上記係合凸部を収容可能な複数の上記係合溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
上記駆動軸の外周部には、上記係合溝に対して周方向の一方の側に連通して上記係合凸部を収容可能な脱着溝が上記軸線方向に延びるように形成されていて、この脱着溝は、上記軸線方向先端側に溝壁部を有することなく、上記駆動軸の先端側に貫通させられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−11290(P2011−11290A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157293(P2009−157293)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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