説明

切卸し製織制御装置を有する織機

【課題】切卸し製織において、製織中に何らかの都合で製織量を変更する場合、作業性を損なうことなく製織量の変更を可能とすると共に、次回以降の切卸し製織では、製織量が過不足なく確実に維持されること。
【解決手段】製織中に製織量を計測すると共に、計測値が設定量に達したか否かを判断し、設定量に達したときに切卸しのための所定の動作を実行する切卸し製織制御装置を有する織機において、設定量として第一設定量と第二設定量を設定する製織量設定器と、第一設定量から第二設定量への切替指令を出力する手動の指令出力器とを備え、切卸し製織制御装置は、製織開始後、前記第一設定量に基づく上記判断を行い、計測値が第一設定量に達する前に切替指令が入力されると、第二設定量に基づく上記判断を行うと共に、計測値が第二設定量に達した以降に、第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーバッグやタオル等の製織に適用され、織布を所定の製織量ごとに織機から取り外す切卸し製織の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアーバッグやタオル等は、所定の製織量ごとに織機から取り外す、所謂切卸し製織によって、一般に生産されており、設定された製織量の製織後に、所定の動作、例えば、切断用の切卸し端を製織し、切卸し端の製織後に次回の切卸しとなるタオル等の製織に移行し、切卸し端が織布経路上の切卸し位置に達すると、換言すれば、設定された製織量に対応する織布の終端部が織布経路上の切卸し位置に達すると、作業者は、織布を切卸し端部分で切断して織機から取り外すと共に、新しい布巻ロールを織機に装着する(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−3749号公報([0024]〜[0027])
【0003】
しかしながら、操業時間、次工程の要求等の時間的制約を理由として、設定された製織量に達する前に早期に切り卸す場合がある。また、生産ロットによっては、設定された製織量では織布巻径に余裕があると、作業者が製織中に織布巻径を目視または計測して判断する場合があり、設定された製織量に達した後も製織が継続され、通常よりも製織量を多くして切り卸す場合がある。
【0004】
このように設定された製織量以外で切卸す場合、作業者は、所望の製織量に対応する織布の終端部が前記切卸し位置に達して切り卸し可能となるまで、待っている必要があり、生産性、作業性が悪くなる。
【0005】
また、設定された製織量に対応する織布の終端部が前記切卸し位置に達すると、織機を自動的に停止させると共に、製織量の設定量を所望の製織量に製織中に変更可能とすることが、対策の一つとして考えられる。この場合、次回の切卸し製織では、設定量を元に戻す作業を必要とするほか、作業者間の引き継ぎミス等の人為的ミスにより、製織量の過不足が発見されるまで、複数回に亘って設定量が元に戻されない恐れがあり、次工程を含めて生産効率を低下させたり、生産管理を煩雑にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、切卸し製織において、製織中に何らかの都合で一時的に製織量を変更する場合、作業性を損なうことなく製織量の変更を可能とすると共に、次回以降の切卸し製織では、製織量が過不足なく確実に維持されることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、製織中に製織量を計測すると共に、計測値が設定量に達したか否かを判断し、設定量に達したときに切卸しのための所定の動作を実行する切卸し製織制御装置を有する織機を前提とする。
【0008】
そして、請求項1の発明は、前記設定量として第一設定量と第二設定量を設定する製織量設定器と、第一設定量から第二設定量への切替指令を出力する手動の指令出力器とを備え、切卸し製織制御装置は、製織開始後、前記第一設定量に基づく上記判断を行い、計測値が第一設定量に達する前に前記切替指令が入力されると、前記第二設定量に基づく上記判断を行うと共に、計測値が第二設定量に達した以降に、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明では、計測値が第二設定量に達した以降の製織量、あるいは第二設定量に達した以降の所定の時点を起点として時間が所定値に達したとき、切卸し製織制御装置は前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替える。計測値が第二設定量に達した以降の製織量として、センサを用いて製織長さを測定するほか、織機主軸の1回転を1ステップとして、積算ステップ数に基づいて第二設定量に達した以降の製織量を測定してもよく、製織量が所定値に達すると第一設定量に基づく上記判断に切り替える。計測値が第二設定量に達した以降の製織量の所定値を0としてもよく、その場合、計測値が第二設定量に達すると同時に、第一設定量に基づく上記判断に切り替える。また、計測値が第二設定量に達した以降の所定の時点を起点として、タイマーを用いて時間を計測して所定時間後に切り替えてもよく、前記所定の時点として、計測値が第二設定量に達した時点、計測値が第二設定量に達した時点から所定ステップ数だけ製織された時点等を用いる。
【0010】
更に、請求項3の発明では、前記切卸しのための所定動作は、織機停止信号を出力することを含み、切卸し製織制御装置は、手動操作による織機の再起動時までの所定の時期にまたは再起動以降の所定の時期に、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替える。
【0011】
更に、請求項4の発明では、前記切卸しのための所定の動作は、計測値が第二設定量に達した後も製織を継続すると共に、第二設定量の製織に対応する織布の終端部が織布経路上の所定位置に達したときに、報知または織機を停止させるものである。報知として、専用の報知灯を点灯、点滅させるほか、織機停止灯を通常の停止時と同一、または異なるパターンで点灯、点滅させる。
【0012】
第二設定量として、第二設定量そのものを入力して設定するものであってもよいが、更に、請求項5の発明では、製織量設定器は、予め追加製織量を記憶しており、前記切替指令が入力されると、入力された時点の計測値に追加製織量を加算した値を前記第二設定量として設定する。
【0013】
更に、請求項6の発明では、織機は切替指令の取消しスイッチを備え、切卸し製織制御装置は、第二設定量に基づく上記判断中に取消しスイッチが操作されると、該操作時点が第一設定量および第二設定量に達する前の場合には、第一設定量に基づく上記判断に切り替える。
【0014】
更に、請求項7の発明では、織機は第二設定量に基づく上記判断のリピートスイッチを備え、切卸し製織制御装置は、第二設定量に基づく上記判断を実行し、計測値が第二設定量に達した後の製織では、第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替え、計測値が第一設定量および第二設定量に達するまでにリピートスイッチが操作されると、第二設定量に基づく上記判断に切り替える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1によれば、指令出力器を操作して、計測値が設定量に達したか否かの判断を、第二設定量に基づく判断に切り替えた場合、切卸し製織制御装置は、計測値が第二設定量に達したときに切卸しのための所定の動作を実行するので、第一設定量に基づく判断の場合と同様、切卸しの作業性が確保される。また、切卸し製織制御装置は、計測値が第二設定量に達した以降に、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替えるので、次回以降の切卸し製織において、第一設定量に基づく上記判断に戻す作業を必要としないほか、人為的ミスが生じず、製織量が過不足なく確保される。
【0016】
請求項2によれば、計測値が第二設定量に達した以降の製織量、あるいは第二設定量に達した以降の所定の時点を起点として時間が所定値に達したとき、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替えるので、第一設定量に基づく上記判断に確実に戻される。
【0017】
請求項3によれば、織機の再起動時までの所定の時期にまたは再起動以降の所定の時期に、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替えるので、織機の再起動後の切卸し製織では、作業者による特別の切り替え作業を必要とせずに、確実に第一設定量に基づく上記判断を行う。
【0018】
請求項4によれば、第二設定量の製織に対応する織布の終端部が織布経路上の所定位置に達したときに、報知または織機を停止させるので、作業者は、指令出力器を操作して第二設定量に基づく判断に切り替えた後、織機から離れて他の作業を行うことが可能であり、生産性が向上する。
【0019】
請求項5によれば、製織量設定器は、予め追加製織量を記憶しており、切替指令が入力されると、入力された時点の計測値に追加製織量を加算した値を第二設定量として設定するので、作業者が、計測値と追加製織量とを加算して第二設定量を設定する必要がなくなり、作業性が向上するほか、計算ミス、桁数の多い数字を入力する際の入力ミスによる製織量異常を回避する。
【0020】
請求項6によれば、間違って第二設定量に基づく判断に切り替えた場合等に対処して、第一設定量に基づく判断に戻すことが可能であるほか、取消しスイッチを操作して、一旦、第一設定量に基づく判断に戻した後、新たな第二設定量を設定することにより、第二設定量の設定を変更することが可能となる。従って、前記指令出力器に、第一設定量から第二設定量への切替指令を出力する機能のほかに、現在の第二設定量から別の第二設定量への切替指令を出力する新たな機能を付加することなく、所望の製織量の変更に対応可能となる。即ち、製織量設定器は、予め追加製織量を記憶しており、切替指令が入力されると、入力された時点の計測値に追加製織量を加算した値を第二設定量として設定する場合であっても、また、第二設定量として、第二設定量そのものが入力されて設定される場合であっても、取消しスイッチを操作して、一旦、第一設定量に基づく判断に戻すことができるので、前記指令出力器に新たな機能を付加することなく、所望の製織量への変更が可能となる。
【0021】
請求項7によれば、前回の切卸し製織における第二設定量の製織量を、容易に得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1、図2は、本発明が適用される切卸し製織の実施例において、計測値が設定量に達したか否かの判断の切り替えと、切卸しのための所定の動作とを、製織量に対応して時系列で表した図であり、図の右側から左側に向かって進む時系列を示す。図1は、前回の切卸し製織の終了後、切卸し製織が再開され、製織中に第二設定量に基づく判断に変更されて織機が自動停止された後、次回の切卸し製織が再開されるまでを表し、図2は、製織中に第二設定量に基づく判断に変更された後、第一設定量に基づく判断に戻される切卸し製織を表す。図3は、本発明が織機として織布移動式のテリーモーション装置5を備えるタオル織機に適用され、該タオル織機の綜絖2、筬3、織布移動式のテリーモーション装置5の一部、および巻取装置を示す。図4はタオル織機の制御ブロック線図であり、切卸し製織制御装置19が切卸しのために実行する動作を表す。図5〜図7は、切卸し製織制御装置19の製織量に基づく判断手順と、切卸しのための所定の動作手順とを示すフローチャートであり、一部、作業者による織機の運転開始操作、切卸し作業を表す。
【0023】
タオル織機は、図3に示すように、経糸経路の上流側に配置される図示しないパイル経糸のワープビーム、および地経糸のワープビームから経糸1をそれぞれ送り出し、経糸1が綜絖2、及び筬3を経由して織布4の織前に導かれる。図示しない緯糸が筬打ちされて経糸1と緯糸は織布4となり、織布4は、織前の下流側に織布経路に沿って順次配置されたテリーモーション装置5、服巻きロール6、複数のプレストロール7を経由して布巻きロール8に巻き取られる。
【0024】
織布移動式のテリーモーション装置5は、パイル組織の製織時、織布4を経糸方向に移動することにより織前の位置を変位させており、織前の位置が筬3に向かって前進したファーストピック時に、筬打ちに伴ってパイル経糸がループ状に緩んでパイルが形成される。1枚のタオル9、即ち1単位柄パターンのタオル9、正確には、1単位柄パターンの製織によって織成されるタオル9は、通常、テリーモーション装置5が作動して製織されるパイル組織と、テリーモーション装置5が不作動状態で製織されるボーダ組織とを含み、ボーダ組織は、通常、パイル組織の両端に配置されるが、両端に加えてパイル組織の間に配置される場合もある。また、単位柄パターンによっては、1枚のタオル9は、パイル組織のみで形成され、ボーダ組織を含まない場合がある。タオル9の製織は、1単位柄パターンの製織によるタオル9を1単位製織量、即ちタオル1枚として、1単位柄パターンに基づく製織が繰り返して行われ、所定の製織量(製織枚数)のタオル9が生産される。タオル9の製織は、織布4を所定の製織量ごと、即ち所定の枚数ごとに切断して織機から取り外す、所謂切卸し製織が一般に行われている。本実施例の切卸し製織では、所定製織量の製織に対応する織布4の終端部41に引き続いて、切卸し端11が製織されており、切断作業を容易としている。切卸し端11は、切卸し端パターンに基づいて製織され、ボーダ組織、またはボーダ組織と異なる切卸し端専用の組織によって形成されて、テリーモーション装置5が不作動状態で製織されており、パイル組織を含まない。本実施例の切卸し製織では、所定の製織量に達して織布4の終端部41が製織されるのに引き続いて、切卸し端パターンに基づく切卸し端製織が開始され、切卸し端パターンを構成するステップ、正確には、織機主軸17の1回転を1ステップとして切卸し端パターンを構成するステップに亘って、切卸し端11が製織され、図1、図3に記載されるように、終端部41に隣接して切卸し端11がB長さだけ製織される。切卸し端11の製織に引き続いて1単位柄パターンに基づく製織、即ち次回の切卸しとなる織布4の製織が実行され、図1、図3に記載されるように、1単位柄パターンの製織開始からSステップまで製織されてから、本実施例では、織機は自動停止される。これにより、1単位柄パターンに基づく織布4が、C長さだけ製織され、1枚目または複数枚目のタオル9の製織途中で、織機は自動停止される。図3は、製織量が設定量に達して切卸し端11が製織され、切卸し端11に続いて次回の切卸しとなる1単位柄パターンの織布4が所定のSステップだけ製織された後、織機が自動停止した状態を示す。切卸し端11の製織後に1単位柄パターンの織布4が所定のSステップだけ製織されることにより、切卸し端11は服巻きロール6よりも下流側に位置することになる。織布4は、切卸し端11よりも上流側が服巻きロール6、プレストロール7に把持されており、切卸し端11での切断を可能とし、切断によって弛むのが回避される。本実施例では、切卸し端11が下流側のプレストロール7と布巻きロール8との間に達した状態で、織機が自動停止されるように、ステップ数Sが設定されおり、切卸し作業の作業性を良くしている。
【0025】
図3に示す織布移動式のテリーモーション装置5は、図示しない駆動装置と、下端部を支点とする左右一対の揺動レバー12と、中間部が駆動装置に連結されるとともに一端が揺動レバー12の中間部に連結される連動レバー13と、左右一対の揺動レバー12の上端部に両端が固定されて織り幅方向に架けわたされるテリーロール14とを含む。連動レバー13の他端は、地経糸の図示しないテンションロールを支持する図示しない揺動レバーに連結されおり、テリーロール14とテンションロールとは、駆動装置によって連動レバー13を介し連動して前後方向、即ち経糸方向に駆動される。これにより、テリーロール14に巻掛けられている織布4は、テリーロール14と共に経糸方向に移動する。その際、前記テンションロールが、テリーロール14と同一方向に連動して移動するため、織布4の移動に伴う経糸経路長さの変化が吸収されるので、織布4は、後側(送出側)に移動しても地経糸張力低下による弛みが生ぜず、また、前側(巻取側)に移動しても地経糸張力増大による過張力が加わることがなく、織布4の織前は経糸方向に確実に変位する。
【0026】
次に、図4のタオル織機の制御ブロック線図に基づき、切卸し製織制御装置19の製織量監視動作を実行するための制御を説明する。織機は、織機制御装置15からの指令によってモータ16を駆動し、モータ16は織機主軸17を回転する。織機主軸17に接続したエンコーダ18は、主軸回転角を検出し、主軸回転角情報を織機制御装置15、および切卸し製織制御装置19に出力する。
【0027】
織機制御装置15は、エンコーダ18、柄パターン設定器21、および切卸し製織制御装置19、並びに図示しない開口パターン設定器、緯入パターン設定器、テリーモーションパターン設定器等からの信号が入力される。また、織機制御装置15は、これらの入力信号を利用して、テリーモーション装置5等の各種装置を駆動する。
【0028】
柄パターン設定器21は、1単位柄パターンと切卸し端パターンとを織機制御装置15に設定するものである。織機制御装置15は、主軸回転角情報に基づくパターンにおける現時点のステップ進度情報と、柄パターン設定器21によって設定されたパターンを構成するステップ数の情報とに基づいて、現時点のステップがパターンにおける最後のステップであることを把握し、1単位柄パターン、および切卸し端パターンの最後のステップごとに、終端信号を切卸し製織制御装置19に出力する。
【0029】
切卸し製織制御装置19は、製織量を計測して、計測値が設定量に達したか否かを判断し、設定量に達したときに切卸しのための所定の動作を実行する。本実施例では、切卸しのための前記所定の動作として、切卸し製織制御装置19は、切卸し端製織開始指令を織機制御装置15に出力し、切卸し端製織開始後の製織量に基づき、切卸し端11が織布経路上の切卸し位置に達したと思われるときに、織機停止指令を織機制御装置15に出力する一連の動作である。
【0030】
計測値の判断基準となる設定量は、切卸し製織制御装置19に接続された製織量設定器22で設定する。製織量設定器22は、設定量として切卸し製織における1単位柄パターンの製織量(製織枚数、即ちタオル枚数)を設定するもので、第1の製織量設定部23と、第2の製織量設定部24を備えている。
【0031】
第1の製織量設定部23は、切卸し製織の製織量が通常の設定量、即ち第一設定量を設定するものである。
【0032】
第2の製織量設定部24は、作業者の判断等に基づいて第一設定量を変更する場合の設定量、即ち第二設定量を設定するものである。本実施例では、第2の製織量設定部24は、入力器25と、記憶器26と、演算器27とから構成される。作業者が入力器25に1以上の枚数を入力して登録操作を実行すると、入力された枚数が追加製織量として記憶器26に保存される、即ち登録される。作業者によって操作されて指令出力器32から第二設定量に切替の指令が入力されると、演算器27は、記憶器26に登録された追加製織量を読み出すと共に、第二設定量を演算して該第二設定量を切卸し製織制御装置19に出力する。即ち、演算器27は、読み出した追加製織量と、枚数カウンタ28から切卸し製織制御装置19を経由して入力された現在の計測値、即ち指令出力器32からの指令の入力時点の計測値(製織枚数)とを加算し、演算値を第二設定量として切卸し製織制御装置19に出力する。
【0033】
枚数カウンタ28は、柄パターン終端信号が、織機制御装置15から1単位柄パターンの最後のステップで切卸し製織制御装置19を経由して入力されるごとに、保持している積算値に1を加算すると共に、積算値、即ち計数を計測値として切卸し製織制御装置19に出力する。切卸し製織制御装置19は、前記計測値が設定量に達したか否かを判断し、前記計測値が第一設定量または第二設定量に達したとき、織布4の終端部41に繋がる切卸し端11の製織開始指令を、織機制御装置15に出力する。また、切卸し端11の製織が終了すると、切卸し製織制御装置19からリセット信号が枚数カウンタ28に入力され、枚数カウンタ28は積算値、即ち計測値を0とする。
【0034】
また、切卸し製織制御装置19には、停止ステップ数設定器29、およびステップカウンタ31が接続されている。停止ステップ数設定器29は、切卸し端11の製織終了後に実行される1単位柄パターンの製織のステップ数、即ち織機主軸17の1回転を1ステップとしてステップ数Sを設定する。
【0035】
切卸し端11の製織が終了すると、即ち切卸し端パターンの最後のステップで、織機制御装置15から切卸し端終端信号が切卸し製織制御装置19に出力される。切卸し製織制御装置19は、切卸し端終端信号が入力されると、リセット信号をステップカウンタ31に出力し、ステップカウンタ31の積算値、即ち計測値をリセットする。切卸し製織制御装置19は、エンコーダ18からの主軸回転角情報に基づいて織機主軸17の1回転、即ち製織の1ステップを把握し、1ステップごとに、ステップカウンタ31に計数アップ信号としてパルス信号を出力する。ステップカウンタ31は、計数アップ信号に基づいて製織のステップ数を積算し、積算値を計測ステップ数として切卸し製織制御装置19に出力する。切卸し製織制御装置19は、ステップカウンタ31から入力される計測ステップ数が、停止ステップ数設定器29で設定されたステップ数Sに達すると、織機停止信号を織機制御装置15に出力する。これにより織機は、切卸し端11が織布経路上の切卸し位置に達した状態で停止される。
【0036】
切卸し製織制御装置19には、リピートスイッチ33、取消しスイッチ34、表示器35、および、報知灯36も接続されている。
【0037】
リピートスイッチ33は、手動操作されて、前回の切卸し製織における第二設定量に基づく判断を再び実行する指令を、切卸し製織制御装置19に出力する。本実施例では、切卸し製織制御装置19は、前回の切卸し製織における判断が、第一設定量または第二設定量に基づくに係わらず、前回の切卸し製織における製織量を、今回の切卸し製織における切卸し端製織の終了まで記憶、即ち保存しており、リピートスイッチ33からの前記指令に基づいて読み出すことにより、前回の切卸し製織における第二設定量に基づく判断を再び実行可能としている。しかし、前回の切卸し製織における判断が第二設定量に基づく場合のみ、前回の製織量が保存されるようにしてもよい。
【0038】
取消しスイッチ34は、手動操作されて、第二設定量に基づく判断を取消す指令、即ち第一設定量に基づく判断に切り替える指令を切卸し製織制御装置19に出力するものであり、取消しスイッチ34からの指令に基づき、切卸し製織制御装置19は第一設定量に基づく判断に切り替える。
【0039】
表示器35は、計測値(現在までの製織枚数)、第一設定量、第二設定量、第2の製織量設定部24で入力された追加製織量(登録枚数)、並びに切卸し製織制御装置19に記憶されている前回、または今回の切卸し製織の製織量を表示するものである。
【0040】
切卸し製織の終了時、即ち切卸し端11が製織され、その後の製織によって切卸し端11が織布経路上の切卸し位置に達したと思われる時に、織機が自動停止されるのに伴って、切卸し製織制御装置19から点灯信号が出力され、報知灯36は点灯または点滅する。また、報知灯36は、本実施例では自動的に消灯されており、次回の切卸し製織の織機運転開始時に、切卸し製織制御装置19は消灯信号の出力、または点灯信号の出力停止を実行する。
【0041】
図5〜図7のフローチャートに基づき、切卸し製織制御装置19の製織量に基づく判断手順と、切卸しのための所定の動作手順とを、一部、作業者による操作、作業を含んで説明する。
【0042】
まず、第一設定量に基づく判断のみが実行される場合、即ち、切替指令やリピート指令のない場合を説明する。
【0043】
図5に示すSTEP1では、切卸し製織制御装置19は、第一設定量に基づく計測値の判断を自動的に実行している。作業者が運転開始スイッチを操作すると、織機制御装置15は、モータ16を駆動して織機主軸17を回転させると共に、切卸し製織開始信号を切卸し製織制御装置19に出力し、切卸し製織制御装置19は、切卸し製織開始信号に基づき報知灯36を消灯させる。
【0044】
続いて、STEP2に進み、1単位柄パターンの終端信号の入力があるか否かを切卸し製織制御装置19は判定する。運転開始直後はNOとなり、NOの場合、1単位柄パターンの終端信号の入力があるまでこの判定処理は継続される。そして、エンコーダ18からの主軸回転角情報に基づく1単位柄パターンにおける現時点のステップ進度情報と、柄パターン設定器21によって設定された1単位柄パターンを構成するステップ数の情報とに基づいて、現時点のステップが1単位柄パターンにおける最後のステップであることを把握し、織機制御装置15は、1単位柄パターンの終端信号を切卸し製織制御装置19に出力する。これにより、1単位柄パターンの製織が終了するとYESの判定となり、YESの場合、STEP3に進み、切卸し製織制御装置19は計数アップ信号としてパルス信号を枚数カウンタ28に出力し、枚数カウンタ28はそれまでの積算数、即ち計数に1を加算する。
【0045】
次にSTEP4に進み、リピート指令が入力されているか否かを切卸し製織制御装置19は判定する。リピート指令がない場合の説明なので、判定はNOとなり、NOの場合、STEP5に進み、指令出力器32からの切替指令の入力が有るか否かを切卸し製織制御装置19は判定する。切替指令が無い場合の説明なので、判定はNOとなる。NOの場合、STEP11に進み、枚数カウンタ28の計数、正確には枚数カウンタ28による計測値が、第一設定量(切卸し製織において設定される第1の製織枚数)に達したか否かを切卸し製織制御装置19は判定する。第一設定量として1よりも大きい数が設定されているので判定はNOとなり、NOの場合、再度、STEP2に戻る。製織が継続され、STEP1〜5、および11の処理が繰り返されるうちに、STEP11において枚数カウンタ28の計測値が第一設定量に一致し、YESとなる。
【0046】
YESの場合、図7に示すSTEP31に進み、切卸し製織制御装置19は切卸し端11の製織開始指令を織機制御装置15に出力する。その後、STEP32に進み、切卸し製織制御装置19は、切卸し端終端信号の入力が有るか否かを判定する。切卸し端11の製織開始直後、この判定はNOとなり、この判定処理は継続される。そして、エンコーダ18からの主軸回転角情報に基づく切卸し端パターンにおける現時点のステップ進度情報と、柄パターン設定器21によって設定された切卸し端パターンを構成するステップ数の情報とに基づいて、現時点のステップが切卸し端パターンにおける最後のステップであることを把握し、織機制御装置15は、切卸し端パターンの終端信号を切卸し製織制御装置19に出力する。終端信号の入力により、判定はYESとなり、YESの場合、STEP33に進み、切卸し製織制御装置19はステップカウンタ31にリセット信号を出力する。また、切卸し製織制御装置19は、前回の切卸し製織量(製織枚数)の記憶を消去すると共に、枚数カウンタ28による計測値、即ち今回の切卸し製織量(製織枚数)を記憶してから、枚数カウンタ28にリセット信号を出力する。また、織機制御装置15は、切卸し端製織終了後も製織を続行し、1単位柄パターンに基づく製織を再開する。
【0047】
その後、STEP34に進み、ステップカウンタ31の計数、即ちステップカウンタ31から入力される計測ステップ数が、停止ステップ数設定器29によって設定された所定のステップ数Sに達したか否かを、切卸し製織制御装置19は判定する。1単位柄パターンの製織を再開した時点では、この判定はNOとなって、この判定処理は継続される。計測ステップ数がステップ数Sに一致して判定がYESとなると、STEP35に進み、織機停止信号を織機制御装置15に出力すると共に、報知灯36に点灯信号を出力する。これにより織機は、切卸し端11が織布経路上の切卸し位置に達した状態で、停止されると共に、報知灯36の点灯または点滅によって、作業者に切卸し作業を促す。また、計測値の判断基準となる切卸し製織量の設定量を、第一設定量に設定する。切卸し製織量が既に第一設定量に設定されているので、切卸し製織制御装置19は、切卸し製織量として第一設定量をそのまま維持することになる。その後、STEP36に進み、織機制御装置15は、織機を自動停止する。作業者は切卸し作業を行って、製織量が第一設定量である織布4の終端部41に繋がる切卸し端11において、ほぼ中央部分で切断し、織布4を織機から取り外すと共に、次回の切り卸し製織用の布巻きロール8を織機に装着する。次にSTEP37に進み、リピート指令が入力されているか否かを切卸し製織制御装置19は判定する。リピート指令がない場合の説明なので、判定はNOとなり、NOの場合、STEP38に進み、織機の運転が開始されたか否かを判定する。STEP38でNOの判定の場合、STEP37に戻ることにより、リピート指令が入力されているか否かの判定処理が継続して実行される。次回の切卸し製織が開始されて織機の運転が開始されると、STEP38でYESの判定となって終了に移行する。
【0048】
次に、第一設定量に基づいて計測値の判断が実行されている間に、作業者が指令出力器32を操作して、第二設定量に基づく判断が実行される場合を、図5のSTEP5に戻って説明する。
【0049】
この場合、STEP5で、指令出力器32からの切替指令の入力が有るか否かの判定がYESとなる。YESの場合、STEP6に進み、切卸し製織制御装置19は、計測値の判断基準を第一設定量から第二設定量(切卸し製織における第二の製織枚数)に切り替えると共に、切替指令を消去する。
【0050】
続いて、STEP7に進み、切卸し製織制御装置19は、取消しスイッチ34から取消し指令が入力されているか否かを判定する。取消しスイッチ34が操作されていないと仮定して説明を続けると、この判定はNOとなる。
【0051】
NOの場合、STEP8に進み、切卸し製織制御装置19は、枚数カウンタ28による計測値が第二設定量に達しているか否かを判定する。指令出力器32を操作した直後、この判定はNOとなり、STEP2の処理に戻る。製織が継続され、STEP2〜8の処理を繰り返すうちに、枚数カウンタ28の計測値が第二設定量に一致すると、STEP8で切卸し製織制御装置19の判定は、YESとなる。YESの場合、前述のSTEP31に進み、以後、STEP32〜38の処理が行われる。STEP35で、切卸し製織制御装置19は、計測値の判断基準となる設定量を、第一設定量に設定する、即ち第二設定量から第一設定量に基づく判断に切り替える。その後、STEP36に進み、織機は自動停止され、作業者は切卸し作業を行う。
【0052】
なお、STEP7の処理で、判定がYESとなる場合もある。例えば、指令出力器32を誤って操作をした場合、作業者が取消しスイッチ34を操作することにより、第一設定量に基づく判断に戻すことができる。また、指令出力器32を操作をして第二設定量に基づく判断に切り替えた後、第二設定量を変更したい場合に、作業者は取消しスイッチ34を操作する。即ち、作業者は取消しスイッチ34を操作して第一設定量に基づく判断に一旦戻した後、指令出力器32を操作して、新たな第二設定量に基づく判断に切り替える。
【0053】
このように取消しスイッチ34が操作されると、STEP7での判定がYESとなって、STEP9に進み、切卸し製織制御装置19は、枚数カウンタ28の計数に基づく計測値が、第一設定量に達しているか否かを判定する。計測値が第一設定量に達している場合、判定はYESとなってSTEP31に進み、第一設定量に基づく判断に切り替えられない。例えば、第一設定量を100枚、追加製織量を15枚とし、計測値が95枚の時点で指令出力器32を操作した場合、第二設定量を95枚+15枚=110枚として、第二設定量に基づく判断に切り替えられる。製織が進行し、計測値が105枚の時点で、取消しスイッチ34が操作された場合、計測値が第一設定量に達しているので、切卸し製織制御装置19は、取消指令の第一設定量に基づく判断に切り替える指令を無効とすると共に、次のステップに進む。次のステップとして、第二設定量に基づく判断を行うSTEP8に進んでもよいが、本実施例では、既に所望の製織量に達したものとして、STEP31に進み、切卸し端11の製織開始指令を出力する。計測値が第一設定量に達しておらずSTEP9でNOの判定の場合、STEP10に進み、切卸し製織制御装置19は、第一設定量に基づく判断に切り替えると共に、取消指令を消去する。その後、STEP11に進み、前述の処理が行われる。
【0054】
次に、切卸し製織制御装置19が第一設定量に基づく判断を実行している製織中に、作業者がリピートスイッチ33を操作した場合を、STEP4に戻って説明する。
【0055】
第一設定量に基づく判断の実行中は、STEP2〜5,および11の処理が繰り返されている。この繰り返し中、計測値が第一設定量に達する前にリピートスイッチ33が操作されると、リピートスイッチ33からリピート指令、即ち、第一設定量に基づく判断から、前回の切卸し製織における第二設定量に基づく判断に切り替える信号が出力される。そして、STEP4で、リピートスイッチ33からのリピート指令の入力が有るか否かの判定がYESとなる。
【0056】
YESの場合、図6に示すSTEP21に進み、切卸し製織制御装置19は、現在の計測値が、前回の切卸し製織における第二設定量として保存されている前回の切卸し製織量に達しているか否かを判定する。現在の計測値が前回の切卸し製織量に達しており、YESの場合、リピート指令は無効となってSTEP5に進む。NOの場合、STEP22に進み、切卸し製織制御装置19は、前回の切卸し製織のSTEP33で保存された前回の切卸し製織量(製織枚数)に基づく判断に切り替えることにより、前回の第二設定量に基づく判断に切替ると共に、リピート指令を消去する。
【0057】
STEP22の後、引き続き、STEP23に進み、取消し指令が入力されているか否かを切卸し製織制御装置19は判定する。YESの場合、図5のSTEP10に戻り、切卸し製織制御装置19は第一設定量に基づく判断に切り替え、その後、STEP11の処理に移る。一方、STEP23でNOの場合、STEP24に進み、枚数カウンタ28から入力される計測値が、保存された前回の切卸し製織量に達しているか否かを切卸し製織制御装置19は判定する。NOの場合、STEP25に進み、1単位柄パターンの終端信号の入力が有るか否かを、切卸し製織制御装置19は判定する。NOの場合、この判定処理は継続される。1単位柄パターン分の製織が終わり1単位柄パターンの終端信号の入力があって、YESとなった場合、STEP26に進み、計数アップ信号としてパルス信号を枚数カウンタ28に出力し、STEP23の処理に戻る。
【0058】
製織が継続されてSTEP23〜26の処理を繰り返すうちに、枚数カウンタ28から入力される計測値が、保存されている前回の切卸し製織量、即ち前回の第二設定量に達すると、STEP24でYESとなり、図7のSTEP31の処理に移って、切卸し端製織が開始される。
【0059】
最後に、切卸し製織制御装置19が第二設定量に基づく判断を実行し、切卸し製織終了後から次回の切卸し製織開始時までに、正確には、織機停止信号の出力に伴って第一設定量に基づく判断に自動的に切り替えた後から、次回の切卸し製織開始時までに、作業者がリピートスイッチ33を操作した場合を、図7を参照して説明する。図5のSTEP8で、枚数カウンタ28による計測値が、第二設定量に達して判定がYESとなると、図7のSTEP31に進み、切卸し端製織が開始される。その後、STEP33で前回の切卸し製織量の記憶が消去されると共に、今回の切卸し製織量が記憶されることにより、第二設定量が今回の切卸し製織量として記憶される。その後、STEP35で第一設定量に基づく判断に切り替えられる。STEP36で織機の自動停止後、STEP37に進み、切卸し製織終了後、正確には、織機停止信号の出力に伴って第一設定量に基づく判断に自動的に切り替えた後、リピートスイッチ33が操作された場合、判定はYESとなってSTEP39に進む。STEP39で、保存されている今回の切卸し製織量に基づく判断に切り替えられることにより、今回の第二設定量に基づく判断に切り替えられて終了に移行し、次回の切卸し製織は、今回の第二設定量に基づく判断で開始される。STEP37で判定がNOの場合、STEP38に進み、織機の運転が開始されたか否かを判定する。STEP38でNOの判定の場合、STEP37に戻ることにより、リピート指令が入力されているか否かの判定処理が継続して実行される。次回の切卸し製織が開始されて織機の運転が開始されると、STEP38でYESの判定となって終了に移行し、次回の切卸し製織は、第一設定量に基づく判断で開始される。
【0060】
切卸し製織を第一設定量から第二設定量に基づく判断に切り替える場合について、図1を参照して時系列に基づき説明する。図1は右側から左側に向かって進む時系列を示しており、織機は、1単位柄パターンの製織による織布を長さAの1枚の織布として、第一設定量をN枚としている。枚数カウンタ28の計数、即ち枚数カウンタ28による計測値がNとなり、織布をN枚製織すると、織布の終端部41に繋がって切卸し端11の製織が始まる。1切卸し端パターン分製織して長さBだけ製織すると、枚数カウンタ28とステップカウンタ31とをリセットし、次回の切卸しとなる1単位柄パターンの製織を引き続き行う。停止ステップ数設定器29によって設定される所定のステップ数S分製織して、長さCだけ製織すると、織機は自動停止し、報知灯36が点灯または点滅する。作業者は、織布を切卸し端部分で切断して、織機から取り外す、所謂切卸し作業を行い、新しい布巻きロール8を織機に装着する。その後、運転開始スイッチを作業者が操作すると、第一設定量に基づく判断を自動的に実行し、1単位柄パターンを繰り返して製織し、長さAの織布を繰り返して製織する。1単位柄パターンの製織ごとに、枚数カウンタ28の計数値が増える。M+1枚目の製織中に、作業者が追加製織量として入力器25に2を入力し、指令出力器32を操作すると、その操作時点での枚数カウンタ28の計測値はMなので、M+2を第二設定量として、第二設定量に基づく判断に切り替わる。M+2だけ製織され枚数カウンタ28の計測値がM+2となると、切卸し端11の製織が開始される。
【0061】
次に、切卸し製織を第一設定量から第二設定量に基づく判断に切り替え、その後、取消しスイッチ34を操作して第一設定量に基づく判断に戻す場合について、図2を参照して説明する。M+2を第二設定量として第二設定量に基づく判断に切り替えるまでは同じであるが、M+2枚目の製織中に、取消しスイッチ34が操作されると、第一設定量に基づく判断に切り替わり、以後、1単位柄パターンの製織ごとに、枚数カウンタ28の計数値が増えていく。
【0062】
本実施例では、第一設定量および第二設定量の製織に対応する織布4の終端部41に繋がって、切卸し端11が製織されることにより、切卸し作業の際の切断作業を容易としているが、切卸し端11は必ずしも製織されなくてもよく、2回の切卸し製織における織布4同士の境目、即ち、織布4の終端部41または終端部41近傍で切断される。
【0063】
また、本実施例では、切卸し端11が織布経路上の切卸し位置に達したときに、即ち、織布4の終端部41が織布経路上の所定位置に達したとき、織機は自動停止されているが、必ずしも織機は自動停止されなくてもよい。即ち、織布経路上において、終端部41が所定位置に在って服巻きロール6の巻掛け位置よりも下流側に位置すれば、織布4は終端部41で切断されても上流側で弛みが生ぜず、織機運転を継続しながら切卸し作業は実施可能である。作業者は、終端部41が織布経路上の所定位置に達してからの報知灯36の点灯または点滅から、切卸し時期であることを視覚に基づいて報知され、報知灯36の消灯操作を含めて切卸し作業を実行する。
【0064】
更に、本実施例では、設定量は、1単位柄パターンごとの枚数を使用しているが、ヤード、メートルなどの長さの単位を使用してもよい。また、停止ステップ数設定器29は、ステップ数Sを設定する方式のほか、実際の製織長さを設定する方式をとってもよく、この場合、好ましくは、入力された製織長さが、緯糸密度等に基づきステップ数Sに換算されて設定される。
【0065】
更に、本実施例では、ステップカウンタ31の計数が設定されたステップ数Sに達したことを検知して第一設定量に基づく判断に切り替えて、織機停止信号および報知灯36の点灯信号の出力に伴って切り替えることにより、織機の再起動時までの所定の時期に、または再起動以降の所定の時期に切り替えることに対応しており、所定の時期を織機停止信号の出力時としている。しかし、織機停止信号の出力に伴ってタイマーが作動し、織機停止信号の出力から所定時間後に切り替えるようにしてもよい。更に、再起動の手動操作に連動して自動的に切り替えられたり、再起動の手動操作に連動してカウンタまたはタイマーによる計測が自動的に開始され、再起動から製織量として所定ステップ数分の製織後、または所定時間の経過後に、第一設定量に基づく判断に自動的に切り替えてもよい。更に、本実施例では、第二設定量に達した以降の製織量あるいは時間が所定値に達したとき、第一設定量に基づく判断に自動的に切り替えるため、上記のように切り替える所定の時期を、織機停止信号、点灯信号の出力時として対応しているが、織機停止信号、点灯信号の出力前に切り替えてもよい。例えば、枚数カウンタ28の計測値が第二設定量に達したことを検知して第一設定量に基づく判断に切り替えてもよい。また例えば、切卸し端製織の最後の緯入れステップにおける終端信号に基づいて切り替えてもよい。また例えば、枚数カウンタ28の計測値の第二設定量に達したことの検出時点、または切卸し端製織の最後の緯入れステップにおける終端信号の検出時点を起点として、タイマーによる計測を開始し、所定時間後に切り替えてもよい。更に、センサやリミットスイッチを設けて布巻きロール8の脱着を検出すること等により、切卸し作業の実行を検出して自動的に切り替えてもよい。以上のいずれにおいても、第一設定量に基づく判断に切り替えることに関し、作業者による切り替えるためだけの特別の操作を必要としない。
【0066】
また、本実施例では、表示器35、第2の製織量設定部24の入力器25、第1の製織量設定部23の図示しない入力器、リピートスイッチ33、取消しスイッチ34、停止ステップ数設定器29の図示しない入力器、および指令出力器32は、全て操作パネルの同一液晶画面に設けられている。しかし、これらのうち幾つかの機器は、操作パネルの異なる液晶画面上に設けてもよいし、市販の機器を用いる等により、液晶画面上に設けなくてもよい。
【0067】
更に、本実施例では、第2の製織量設定部24は、第二設定量に基づく判断の実行中、第二設定量に達するまでは、追加製織量として入力器25に入力する枚数を変更可能である。しかし、記憶器26に所定の枚数を変更不能に登録してもよく、この場合、入力器25を省略することができる。また、入力器25に入力した枚数を、追加製織量ではなく、第二設定量そのものとして設定してもよく、この場合、演算器27を省略することができる。
【0068】
更に、第2の製織量設定部24は、入力器25に入力した枚数を登録する操作信号を、第二設定量に基づく判断への切替指令と兼用してもよく、この場合、指令出力器32を省略できる。
【0069】
更に、本実施例では、指令出力器32は、第一設定量から第二設定量への切替指令を出力する機能のみを有するが、現在の第二設定量から別の第二設定量への切替指令を出力する新たな機能が付加されてもよい。現在の第二設定量から所望の別の第二設定量へ切り替える場合、取消しスイッチ34を操作して、一旦、第一設定量に基づく判断に戻す方法のほか、指令出力器32を操作することにより、第一設定量に基づく判断に戻すことなく所望の別の第二設定量に切り替える方法を用いることができる。
【0070】
枚数カウンタ28、ステップカウンタ31は、切卸し製織制御装置19とは別個に設けることに代えて、切卸し製織制御装置19に組み込んでもよい。つまり、計測値の判断と該判断に伴う切卸しのための動作用のプログラムを実行することによって、プログラムと切卸し製織制御装置19の一部が各カウンタを構成して、各カウンタの動作を協働で行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】切卸し製織における設定量に基づく判断の切り替えと、切卸しのための動作とを、製織量に対応して時系列で表した説明図である。
【図2】切卸し製織における設定量に基づく判断の切り替えと、切卸しのための動作とを、製織量に対応して時系列で表した説明図である。
【図3】本発明が適用されたタオル織機の綜絖、筬、織布移動式のテリーモーション装置の一部、および巻取装置を示す説明図である。
【図4】タオル織機の制御ブロック線図である。
【図5】切卸し製織制御装置の製織量に基づく判断手順と、切卸しのための動作手順とを示すフローチャートであり、手順の前半の処理を示す。
【図6】切卸し製織制御装置の製織量に基づく判断手順と、切卸しのための動作手順とを示すフローチャートであり、手順の途中の処理を示す。
【図7】切卸し製織制御装置の製織量に基づく判断手順と、切卸しのための動作手順とを示すフローチャートであり、手順の後半の処理を示す。
【符号の説明】
【0072】
1経糸、2綜絖、3筬、4織布、5テリーモーション装置、6服巻きロール、
7プレストロール、8布巻きロール、9タオル、11切卸し端、12揺動レバー
13連動レバー、14テリーロール、15織機制御装置、16モータ、17織機主軸、
18エンコーダ、19切卸し製織制御装置、21柄パターン設定器、22製織量設定器、
23第1の製織量設定部、24第2の製織量設定部、25入力器、26記憶器、
27演算器、28枚数カウンタ、29停止ステップ数設定器、31ステップカウンタ、
32指令出力器、33リピートスイッチ、34取消しスイッチ、35表示器、
36報知灯、41終端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製織中に製織量を計測すると共に、計測値が設定量に達したか否かを判断し、設定量に達したときに切卸しのための所定の動作を実行する切卸し製織制御装置(19)を有する織機において、
前記設定量として第一設定量と第二設定量を設定する製織量設定器(22)と、第一設定量から第二設定量への切替指令を出力する手動の指令出力器(32)とを備え、
切卸し製織制御装置(19)は、製織開始後、前記第一設定量に基づく上記判断を行い、計測値が第一設定量に達する前に前記切替指令が入力されると、前記第二設定量に基づく上記判断を行うと共に、計測値が第二設定量に達した以降に、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替えることを特徴とする切卸し製織制御装置を有する織機。
【請求項2】
計測値が第二設定量に達した以降の製織量、あるいは第二設定量に達した以降の所定の時点を起点として時間が所定値に達したとき、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替えることを特徴とする請求項1記載の切卸し製織制御装置を有する織機。
【請求項3】
前記切卸しのための所定動作は、織機停止信号を出力することを含み、手動操作による織機の再起動時までの所定の時期にまたは再起動以降の所定の時期に、前記第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替えることを特徴とする請求項2記載の切卸し製織制御装置を有する織機。
【請求項4】
前記切卸しのための所定の動作は、計測値が第二設定量に達した後も製織を継続すると共に、第二設定量の製織に対応する織布の終端部(41)が織布経路上の所定位置に達したときに、報知または織機を停止させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の切卸し製織制御装置を有する織機。
【請求項5】
製織量設定器(22)は、予め追加製織量を記憶しており、前記切替指令が入力されると、入力された時点の計測値に追加製織量を加算した値を前記第二設定量として設定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の切卸し製織制御装置を有する織機。
【請求項6】
切替指令の取消しスイッチ(34)を備え、切卸し製織制御装置(19)は、第二設定量に基づく上記判断中に取消しスイッチ(34)が操作されると、該操作時点が第一設定量および第二設定量に達する前の場合には、第一設定量に基づく上記判断に切り替えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の切卸し製織制御装置を有する織機。
【請求項7】
第二設定量に基づく上記判断のリピートスイッチ(33)を備え、切卸し製織制御装置(19)は、第二設定量に基づく上記判断を実行し、計測値が第二設定量に達した後の製織では、第一設定量に基づく上記判断に自動的に切り替え、計測値が第一設定量および第二設定量に達するまでにリピートスイッチ(33)が操作されると、第二設定量に基づく上記判断に切り替えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の切卸し製織制御装置を有する織機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−102781(P2009−102781A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277740(P2007−277740)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】