説明

切断了知機構付き塗膜転写具

【課題】塗膜を被転写面に転写させている途中では了知機構が作動しにくく、転写を終了させるときに初めて了知機構が作動しやすくする塗膜転写具を提供することである。
【解決手段】基材テープ表面に塗膜を形成している転写テープが、繰出しリールから転写ヘッドを介して巻取りリールに巻回されて、繰出しリールと巻取りリールの連動機構と共に、ケースに配置された自動巻取り式の塗膜転写具において、転写ヘッドは、ケース外に突設されて、かつ、弾発部材にて転写ヘッドの支軸方向におけるケース内方向へ後退可能及びケース外方向に復帰可能に配置されており、転写ヘッドがケース内方向への後退で切断了知機構が作動することを特徴とする切断了知機構付き塗膜転写具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材テープ表面に塗膜を形成している転写テープを、転写ヘッドにて押圧して、塗膜を被転写面に転写させるために用いる自動巻取り式の塗膜転写具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動巻取り式の塗膜転写具は、典型的な外形意匠の例として意匠登録第1289652号公報が挙げられる。その他にも、例えば意匠登録第1223792号公報や意匠登録第1343344号公報のようなものもあり、様々な外形意匠のものが販売されている。これら外形意匠は異なるが、塗膜転写具の内部構成は基本的に同じである。
【0003】
図1は、自動巻取り式の塗膜転写具1の内部構成の説明図である。基材テープ2表面に塗膜3を形成している転写テープ4が、繰出しリール5から転写ヘッド6を介して巻取りリール7に巻回されて、繰出しリール5と巻取りリール7の連動機構と共に、ケース8に配置されている内部構成である。
【0004】
塗膜3を被転写面9に転写させる塗膜転写具1の使用方法は、ケース8外に突設された転写ヘッド6にて転写テープ4を押圧して、被転写面9において塗膜3を転写させたい部分に接触させながら、塗膜転写具1を被転写面9に対して斜めに傾けて移動させる方法である。図1では、右斜め45度程度に傾けて、図面右方向へ塗膜転写具1を移動させている。
【0005】
転写を終了させるには、移動を停止して力を抜いて押圧をやめて、被転写面から塗膜転写具を離れさせればよい。この離れさせる時に、被転写面に転写された塗膜と基材テープ表面にある転写されていない塗膜との間で、引きちぎられるように切断される。
【0006】
引きちぎられるような切断なので、塗膜の種類によってはテープ幅方向一直線にきれいに切断されずに、糸を引くように基材テープ表面から塗膜が剥離してしまうことがある。また、塗膜が切断される前に、転写テープが引っ張られ、繰出しリールが余分に回転してしまい、テープがたるでしまうこともある。
【0007】
そこで、特開平05−178525号公報や特開平11−227386号公報では、転写ヘッドの押圧動作に連係した、リールの回転を阻止する回転阻止部材などを設けたものが提案されている。
【0008】
一方で、塗膜の切れ性を向上させたものも開発している。例えば特願2009−158468号公報では、塗膜は紙などを張り合わせる粘着層であるが、粘着層中にボイドを形成することで、切れ性を向上させている。
【0009】
粘着塗膜であれば、この手法が使えるが、あらゆる塗膜に対してこの手法が使えるわけではない。そこで塗膜転写具の構造によって、切れ性を向上させる必要があった。我々は、特願2010−105898号公報にあるような切断を了知させる機構を付けた塗膜転写具を開発した。この切断了知機構によって、切断したことを明確に意識させることができ、塗膜の種類によらずテープ幅方向一直線にきれいに切断させることができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】意匠登録第1289652号公報
【特許文献2】意匠登録第1223792号公報
【特許文献3】意匠登録第1343344号公報
【特許文献4】特開平05−178525号公報
【特許文献5】特開平11−227386号公報
【特許文献6】特願2009−158468号公報
【特許文献7】特願2010−105898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特願2010−105898号公報では押圧力が大きければ、塗膜を被転写面に転写させている途中でも、つまり、塗膜転写具を被転写面に対して斜めに傾けて移動させている途中でも、了知機構が作動することがあった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、塗膜を被転写面に転写させている途中では了知機構が作動しにくく、転写を終了させるときに初めて了知機構が作動しやすくする塗膜転写具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
転写を終了させるとき、図2のように塗膜転写具を被転写面に対して垂直に立てると、テープ幅方向一直線にきれいに切断できることがある。
【0014】
塗膜転写具を被転写面に対して斜めに傾けて移動させて転写している状態から、移動を停止する。転写ヘッドと被転写面との接点を支点にして、図2のように塗膜転写具を被転写面に対して垂直に立てる。力を抜いて押圧をやめて、被転写面から塗膜転写具を離れさせると、テープ幅方向一直線にきれいに切断できることがある。
【0015】
また、押圧をやめる前に、一旦押圧を強くすることで、よりきれいに切断することができる。この操作を意識づける切断了知機構を備えたものである。
【0016】
本発明における切断了知機構とは、転写ヘッドにて転写テープを押圧する操作と連動させて、塗膜が確実に切断されたことを使用者に了知させる機構である。
【0017】
この切断了知機構が作動したときには、転写ヘッドにて転写テープの塗膜が被転写面に強く押圧されており、被転写面から塗膜転写具を離れさせる時に、被転写面に転写された塗膜と基材テープ表面にある転写されていない塗膜との間で、テープ幅方向一直線にきれいに切断されることになる。逆に言えば、そのように切断される状況になったときに、切断了知機構が作動するように設定するものである。
【0018】
切断了知機構には、音、光、振動、匂いなどが発生する機構などがある。これらによって、使用者に了知させる機構である。
【0019】
音発生の場合は、部材同士が当たって音が鳴る簡単な構成にすることができる。光発生の場合は、LEDなどを組み込んで発光するような構成にすることができる。振動発生の場合は、モーターなどを組み込んで振動するような構成にすることができる。匂い発生の場合も、スイッチによって電気的に匂いが放出するような構成にすることができる。これらから適宜選択することができる。
【0020】
さらに、切断了知機構の作動は転写ヘッドに連動させているので、転写テープがたるんで不具合を起こさないように、転写ヘッドがケース内方向への後退とケース外方向への復帰とが、使用者に意識させることなくスムースに行われる必要がある。そのために、弾発部材を用いている。
【0021】
本発明は、基材テープ表面に塗膜を形成している転写テープが、繰出しリールから転写ヘッドを介して巻取りリールに巻回されて、繰出しリールと巻取りリールの連動機構と共に、ケースに配置された自動巻取り式の塗膜転写具において、転写ヘッドは、ケース外に突設されて、かつ、弾発部材にて転写ヘッドの支軸方向におけるケース内方向へ後退可能及びケース外方向に復帰可能に配置されており、転写ヘッドがケース内方向への後退で切断了知機構が作動することを特徴とする切断了知機構付き塗膜転写具である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の塗膜転写具により、塗膜を被転写面に転写させている途中では了知機構が作動しにくく、転写を終了させるときに初めて了知機構が作動しやすくする塗膜転写具を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】塗膜転写具の内部構成の説明図である。
【図2】被転写面に対して垂直に立てた塗膜転写具である。
【図3】実施例1の塗膜転写具の説明図である。
【図4】切断了知機構ユニットの動作の説明図である。
【図5】転写ヘッドの動作の説明図である。
【図6】本発明の塗膜転写具の使用説明図である。
【図7】切断了知機構ユニットの外観説明図である。
【図8】切断了知機構ユニットの内部構成の説明図である。
【図9】音発生の仕組み説明図である。
【図10】実施例2の塗膜転写具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、自動巻取り式の塗膜転写具1の内部構成の説明図である。基材テープ2表面に塗膜3を形成している転写テープ4が、繰出しリール5から転写ヘッド6を介して巻取りリール7に巻回されて、繰出しリール5と巻取りリール7の連動機構と共に、ケース8に配置されている内部構成である。
【0025】
基材テープ2としては、グラシン紙等の紙基材や、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等の合成樹脂基材のものを用いればよい。基材テープ2表面上には離型層を設けてもよいし、基材自体を離型処理してもよい。
【0026】
塗膜3としては、修正塗膜、粘着塗膜、絵柄塗膜などの任意のものを形成することができる。また、これら以外の機能を持たせた機能性塗膜を形成することができる。
【0027】
繰出しリール5と巻取りリール7の連動機構としては、繰出しリール5と巻取りリール7に設けたギアの噛合によって連動させる機構や、Oリング等の無端状のゴムベルトによって連動させる機構などを用いることができる。
【0028】
また、繰出しリール5や巻取りリール7には、テープが余分に繰り出されたり、巻き取られたりしないように、繰出しリール5や巻取りリール7の逆回転を防止する逆回転防止機構を備えた方がよい。逆回転防止機構としては、一般的な機構でよく、いらゆるラチェットのような機構がある。
【0029】
図1では、ケース8内部の主要部材だけを表している。主要部材が図1のように見える場合、ケース8に関連する部分は断面となるので、その断面は斜線で表している。
【0030】
ケース8の外枠以外で関連する主要な部分として、次の5箇所を表している。繰出しリール5の支軸となる円筒形断面のリール中心軸10、巻取りリール7の支軸となる円筒形断面のリール中心軸10、繰出しリール5から繰り出された転写テープ4を転写ヘッド6に導いている円柱形断面のテープガイド11、転写ヘッド6から塗膜3を転写した基材テープ2を巻取りリール7に導いている円柱形断面のテープガイド11、転写ヘッド6を支持している円筒形断面の転写ヘッド支持部12である。
【0031】
繰出しリール5は、円筒形断面のリール中心軸10に直接接してはおらず、その間にある中間部材13の4箇所と接している。中間部材13は、繰出しリール5と巻取りリール7の連動機構であるギア14に接続されている。
【0032】
ギア14とケース8との間で、ラチェットのような逆回転防止機構を備えているが、図では繰出しリール5に隠れて見えていない。
【0033】
中間部材13の4箇所は、弾性を有したものである。これにより、連動機構と逆回転防止機構との間でタイミングが合わなくなるなど、何かしらの強い力で転写テープ4が引っ張られることがあると、繰出しリール5が接している中間部材13の4箇所ですべるようになっている。これで、余計な引出しによるたるみやテープの破断などの不具合を防ぐことができる。
【0034】
転写ヘッド6は、ケース8外に突設されており、ケース8内に向かって、太い支軸と細い支軸からなり、細い支軸の端に図面奥行方向に対して円柱形状のものを有している。その円柱が、円筒形断面の転写ヘッド支持部12によって、支持されている。なお、図における転写ヘッド6は、点を施して表している。
【0035】
この転写ヘッド6と被転写面9との接点から転写ヘッド支持部12中心への方向が、転写ヘッドの支軸方向である。
【0036】
巻取りリール7は、円筒形断面のリール中心軸10に直接接して、回動自在になっているが、隠れて見えていない巻取りリール7のギアが繰出しリール5のギア14と噛合している。これにより、巻取りリール7は、繰出しリール5の回転に連動した規制された動きとなる。
【0037】
また、巻取りリール7の構造として、リール中心軸10に接している巻取りリール7の円筒部から4本の短いスポークがあり、巻取りリール7の側面には波形溝15がある。波形溝15は、波形状であるが、図では円形扇のように外周へ向かう直線で表している。この波形溝15は、テープがたるんだ時など巻き締めるために利用する溝である。
【0038】
塗膜3を被転写面9に転写させる塗膜転写具1の使用方法は、ケース8外に突設された転写ヘッド6にて転写テープ4を押圧して、被転写面9において塗膜3を転写させたい部分に接触させながら、塗膜転写具1を被転写面9に対して斜めに傾けて移動させる方法である。図1では、右斜め45度程度に傾けて、図面右方向へ塗膜転写具1を移動させている。
【0039】
このように移動させることで、テープが走行して、転写テープ4が繰り出されて繰出しリール5が回り、繰出しリール5のギア14も回り、噛合している巻取りリール7のギアによって、巻取りリール7が回る。これらギア比とリール径比を調整して、基材テープ2が巻き取られるようになっている。こうして自動巻取りされることになる。なお、この調整のために、巻取りリール7のスポークを設けている。
【0040】
このような通常の使用では、上記のような内部構成からなる塗膜転写具1なので、テープがたるむことなどは起こらないが、何かしらのタイミングのずれによってたるんだ時には、巻取りリール7の波形溝15によって巻き締めることができる。
【0041】
図2は、被転写面9に対して垂直に立てた塗膜転写具1である。図2は、塗膜転写具1の傾きが異なること以外は、図1と同じである。
【0042】
転写を終了させるとき、図2のように塗膜転写具1を被転写面9に対して垂直に立てると、テープ幅方向一直線にきれいに切断できることがある。
【0043】
塗膜転写具1を被転写面9に対して斜めに傾けて移動させて転写している図1の状態から、移動を停止する。転写ヘッド6と被転写面9との接点を支点にして、図2のように塗膜転写具1を被転写面9に対して垂直に立てる。力を抜いて押圧をやめて、被転写面9から塗膜転写具1を離れさせると、テープ幅方向一直線にきれいに切断できることがある。
【0044】
また、押圧をやめる前に、一旦押圧を強くすることで、よりきれいに切断することができる。本発明は、この操作を意識づける切断了知機構を備えたものである。
【実施例1】
【0045】
図3は、実施例1の塗膜転写具1の説明図である。塗膜転写具1が切断了知機構ユニット16を具備している。転写ヘッド6は、ケース8内に向かって、太い支軸と細い支軸からなる。その細い支軸が、切断了知機構ユニット16の接続部17と接続されている。切断了知機構ユニット16は、ケース8に固定されている。これ以外の図3の構成は、図2と同じである。
【0046】
これより図において、被転写面9に対する垂直方向が、転写ヘッドの支軸方向である。この方向に押圧を強くすることで、切断了知機構が作動して、よりきれいに切断することを意識づけすることができる。
【0047】
図4は、切断了知機構ユニット16の動作の説明図である。図4(a)は、切断了知機構が作動していない状態であり、図4(b)は、作動した状態である。接続部17が後退することで作動するものである。また、切断了知機構ユニット16内に弾発部材を設置して、接続部17が後退から復帰できるように、つまり、図4(b)から図4(a)に戻るようになっている。
【0048】
この切断了知機構ユニット16が塗膜転写具1に固定されていて、転写ヘッド6が切断了知機構ユニット16の接続部17と接続されている。これが図3である。
【0049】
押圧をやめる前に、一旦押圧を強くすることで、転写ヘッド6が後退して、さらに、接続している接続部17が後退して、切断了知機構が作動する。
【0050】
図5は、転写ヘッド6の動作の説明図である。塗膜転写具1における転写ヘッド6周辺だけを表したものであり、内部構成を表さず、外観だけを表わした図である。図4(a)と(b)がそれぞれ、図5(a)と(b)に対応している。
【0051】
図5(a)は、切断了知機構が作動していない状態であり、図5(b)は、作動した状態である。図5(b)の転写ヘッド6は、図5(a)よりも後退している。ただし、被転写面9に対する転写ヘッド6の位置は、図5(a)と図5(b)とで同じにしているので、図5(b)のケース8が図面下方向へ移動している。
【0052】
切断了知機構ユニット16内に弾発部材を設置して、接続部17が後退から復帰できるようになっているので、転写ヘッドは、弾発部材にて転写ヘッドの支軸方向におけるケース内方向へ後退可能及びケース外方向に復帰可能に配置されている。
【0053】
図6は、本発明の塗膜転写具1の使用説明図である。塗膜転写具1が切断了知機構ユニット16を具備している。転写ヘッド6は、ケース8内に向かって、太い支軸と細い支軸からなる。その細い支軸が、切断了知機構ユニット16の接続部17と接続されている。切断了知機構ユニット16は、ケース8に固定されている。これ以外の図6の構成は、図1と同じである。また、図6は、塗膜転写具1の傾きが異なること以外は、図3と同じである。
【0054】
これより図において、被転写面9に対する右斜め45度程度の方向が、転写ヘッドの支軸方向である。この方向に押圧を強くすることで、切断了知機構が作動する。
【0055】
塗膜3を被転写面9に転写させる塗膜転写具1の使用方法は、ケース8外に突設された転写ヘッド6にて転写テープ4を押圧して、被転写面9において塗膜3を転写させたい部分に接触させながら、塗膜転写具1を被転写面9に対して斜めに傾けて移動させる方法である。図6では、右斜め45度程度に傾けて、図面右方向へ塗膜転写具1を移動させている。
【0056】
このように移動させることで、テープが走行して、転写テープ4が繰り出されて繰出しリール5が回り、繰出しリール5のギア14も回り、噛合している巻取りリール7のギアによって、巻取りリール7が回る。これらギア比とリール径比を調整して、基材テープ2が巻き取られるようになっている。こうして自動巻取りされることになる。
【0057】
このような通常の使用では、上記のような内部構成からなる塗膜転写具1なので、テープがたるむことなどは起こらないが、何かしらのタイミングのずれによってたるんだ時には、巻取りリール7の波形溝15によって巻き締めることができる。
【0058】
図のような使用方法であると、具備している切断了知機構ユニット16によって転写ヘッド6は支軸方向には後退可能であるが、図面右方向へ塗膜転写具1を移動させるので、転写ヘッド6は支軸方向のケース8内方向へは後退しにくい構成になっている。
【0059】
これにより、塗膜を被転写面に転写させている途中では了知機構が作動しにくく、転写を終了させるとき、図3のように被転写面9に対して垂直に立てることで、初めて了知機構が作動しやすくなっている。
【0060】
図7は、切断了知機構ユニット16の外観説明図である。斜視図で表している。円柱形状物であり、塗膜転写具に固定するための部位は省略している。固定されたら、円柱形状物でも円周方向へ回転することはない。接続部17が後退して、切断了知機構が作動する。切断了知機構ユニット16は、この形状物に限定されるものではない。
【0061】
このようなユニットであれば、切断了知機構には、音、光、振動、匂いなどが発生する機構などがあるので、これら発生機構の異なるユニットを複数用意して、目的によって交換することが可能となる。塗膜転写具1への固定も、交換可能な固定にすればよい。
【0062】
図8は、切断了知機構ユニット16の内部構成の説明図である。ここでの切断了知機構は、音発生機構である。切断了知機構ユニット16を分解して、部材を斜視図で表している。この音発生機構は、説明をわかりやすくするため、ノック式筆記具の機構に類似させたものであるが、この機構に限定されるものではない。
【0063】
切断了知機構ユニット16は、5つの部材からなる。カバー21、弾発部材であるコイルバネ22、回転部材23、可動部材24、位置決め部材25からなる。
【0064】
カバー21と位置決め部材25とが、図では嵌合部を示していないが、嵌合され固定される。固定されると、図7のようになる。これにより、弾発部材であるコイルバネ22、回転部材23、可動部材24を内部に有したものとなり、回転部材23と可動部材24とが決まった位置を動くようになる。ただし、可動部材24の一部である接続部17が、位置決め部材25の左下方向から突出して、図7のようになる。
【0065】
コイルバネ22の左下の一端が、回転部材23の右上の天面26に接触して、カバー21と位置決め部材25とが嵌合されると、コイルバネ22が天面26を常に押している状態となる。コイルバネ22と天面26とは固定していないため、天面26を有する回転部材23は、コイルバネ22で押されながらも回転可能となる。
【0066】
回転部材23の円柱部27が回転可能に挿入できる回転孔28を、可動部材24に設けている。回転部材23の円柱部27の円周外壁面に、回転駆動突起29を3箇所に設けている。図では2箇所しか見えていない。回転駆動突起29は、天面26の裏側30から左下方向に幅を持って伸びて、円周に対して斜め形状である。
【0067】
可動部材24の円筒部31の円周外壁面に、摺動突起32を3箇所に設けている。図では2箇所しか見えていない。また、可動部材24の円筒部31右上円筒端面には、6組の山と谷からなる可動カム歯33を設けている。
【0068】
位置決め部材25の円筒内部に構造があり、図では細線で表している。位置決め部材25の円筒内部は、第一の内壁面34と第二の内壁面35からなる。第一の内壁面34よりも第二の内壁面35の方が内径が小さい。
【0069】
第一の内壁面34は、図における位置決め部材25の右上円筒内部であり、第二の内壁面35は、図における位置決め部材25の左下円筒内部であり、第一の内壁面34と第二の内壁面35の境目に構造を有している。
【0070】
第一の内壁面34には、回転部材23の天面26の円周外壁面や回転駆動突起29の外壁面が接し、また、可動部材24の摺動突起32の外壁面が接する。第二の内壁面35には、可動部材24の円筒部31のの円周外壁面が接する。
【0071】
位置決め部材25の円筒内部構造である、第一の内壁面34と第二の内壁面35の境目における構造として、円周に対して斜め形状である、6組の斜め形状(波形状)からなる位置決めカム歯36を設けており、3箇所の斜め形状下側に摺動溝37を設けている。
【0072】
可動部材24の摺動突起32の径方向厚さは、位置決め部材25の摺動溝37の径方向厚さにほぼ等しく設定している。この設定により、位置決め部材25の摺動溝37に可動部材24の摺動突起32が嵌って、図面右上左下方向へ可動することになる。つまり、位置決め部材25に対して、摺動溝37に摺動突起32が嵌っている限り、可動部材24は回転することなく、図面右上左下方向だけに動くことになる。
【0073】
また、回転部材23の回転駆動突起29の径方向厚さは、可動部材24の可動カム歯33の径方向厚さと位置決め部材25の位置決めカム歯36の径方向厚さとを合わせた厚さにほぼ等しく設定している。この設定により、回転部材23の回転駆動突起29が、可動部材24の可動カム歯33と位置決め部材25の位置決めカム歯36のどちらかまたは両方に接することになる。
【0074】
このような構成からなる音発生機構である。次に音発生の仕組みを図面を用いて詳細に説明する。
【0075】
図9は、音発生の仕組み説明図である。回転駆動突起29のひとつを図の中心に固定して、その円周上におけるおよそ2/3の構成を、説明のために平面図で表したものである。
【0076】
回転駆動突起29は、回転部材23にあり、天面26の裏側30から図面下方向に幅を持って伸びて、円周に対して斜め形状である。図8の円周外壁面では3箇所設けている。
【0077】
可動カム歯33は、可動部材24にあり、図面上下方向に対して山と谷の形状である。図8の円筒端面では6組設けている。
【0078】
位置決めカム歯36は、位置決め部材25にあり、円周に対して斜め形状(波形状)からなる。円筒内壁面では6組設けている。ただし、3箇所の斜め形状下側に摺動溝37を設けている。
【0079】
図9(a)は、図4(a)や図5(a)の切断了知機構が作動していない状態である。回転駆動突起29が、位置決めカム歯36の摺動溝37を設けた斜め形状下側にいる。位置決めカム歯36の斜め形状上側が、回転部材23の天面26の裏側30に当たっている。可動カム歯33の山の頂が、回転駆動突起29の斜め形状中央付近にある配置である。
【0080】
図示していないが、可動部材24の摺動突起32が位置決め部材25の摺動溝37に嵌っているので、可動部材24の可動カム歯33と位置決め部材25の位置決めカム歯36は、図において左右の位置は変わらず、可動カム歯33が位置決めカム歯36に対して上下することになる。
【0081】
また、実際は回転部材23が回転するので、回転部材23の回転駆動突起29が図面で移動することになるが、図面では回転駆動突起29を固定しているので、可動カム歯33と位置決めカム歯36が、図面左へ移動していくことになる。
【0082】
図9(b)は、一旦押圧を強くし始めた状態である。転写ヘッド6の支軸と接続されている可動部材24の可動カム歯33の山が、回転駆動突起29を図面上方向へ移動させて、回転駆動突起29が位置決めカム歯36の斜め形状上側にわずかに係っている状態になったところである。
【0083】
図9(c)は、さらに押圧された状態である。わずかに係っている状態からはずれて、回転駆動突起29が、弾発部材の力によって、可動カム歯33の谷へ一気に動く。この時、回転駆動突起29の図右下の鋭角部分が可動カム歯33の谷にぶつかり、音が発生することになる。
【0084】
可動カム歯33の谷へ動く分だけ、回転駆動突起29のある回転部材23が実際は回転するが、図面では可動カム歯33と位置決めカム歯36が左へ移動している。
【0085】
図9(d)は、押圧をやめた状態である。弾発部材の力によって、回転駆動突起29が可動カム歯33を図面下方向へ押し下げ、回転駆動突起29が位置決めカム歯36に接触することになる。
【0086】
図9(e)は、押圧をやめて、すべての力を抜いた状態である。弾発部材の力によって、回転駆動突起29が位置決めカム歯36の斜め形状下側へ一気に動く。この時、回転駆動突起29の図右側壁が位置決めカム歯36の図上下方向の垂直壁にぶつかり、また音が発生することになる。
【0087】
位置決めカム歯36の斜め形状下側へ動く分だけ、回転駆動突起29のある回転部材23が実際は回転するが、図面では可動カム歯33と位置決めカム歯36が左へ移動している。
【0088】
それとともに、可動カム歯33も押し下げられ、可動カム歯33のある可動部材24に接続している転写ヘッド6も元の位置に戻る。
【0089】
これらが一連の動作になる。図9(a)と図9(e)とでは、位置決めカム歯36の谷に摺動溝37があるとないとの違いがあるが、部材の動作としては同じである。
【0090】
音を文字で表現して「カッチャ」と表せば、図9(c)で「カッ」と音が発生して、図9(e)で「チャ」と音が発生する。
【実施例2】
【0091】
図10は、実施例2の塗膜転写具の説明図である。ケース内にさらに内部ケースを用いて、配置したものである。ケース開閉機構などの詳細な構造は省略しているが、内部ケースを入れ替えることで、テープの詰め替えが可能となる。例えば、内部ケースをテープ詰め替えカートリッジとして提供してもよい。
【0092】
基材テープ2表面に塗膜3を形成している転写テープ4が、繰出しリール5から転写ヘッド6を介して巻取りリール7に巻回されて、繰出しリール5と巻取りリール7の連動機構と共に、内部ケース40に配置されており、その内部ケース40がケース8に配置されたものである。
【0093】
この内部ケース40を接続した弾発部材にて、転写ヘッド6が転写ヘッド6の支軸方向におけるケース8内方向へ後退可能及びケース8外方向に復帰可能に配置されており、転写ヘッド6がケース8内方向への後退で切断了知機構が作動するものである。なお、これら内部ケース40がなめらかに動くために必要な溝や突起などの部分は、図において省略している。また、内部ケースをテープ詰め替えカートリッジとして提供する場合には、内部ケース40と弾発部材との間で嵌め込みと取り外しが可能な構成にすればよい。
【0094】
図10の内部ケース40は、直方体である。2枚の長方形の透明板が平行に位置しており、それらを4枚の垂直壁で接続している。図では、一方の透明板41だけが見えており、4枚の垂直壁42は断面となるので、ケース8断面と同じく、斜線で表している。
【0095】
内部ケース40の透明板41に、主要な部材の支軸が配置されている。図では、繰出しリール5と巻取りリール7のそれぞれのリール中心軸10、2つのテープガイド11、転写ヘッド支持部12が配置されているが、これらに限定されるものではない。繰出しリール5や巻取りリール7は、部分的に内部ケース40からはみ出している。
【0096】
転写ヘッド6は、内部ケース40から突出しており、さらに、内部ケース40のケース8内の配置によって、ケース8外に突設されている。
【0097】
塗膜転写具1が切断了知機構ユニット16を具備している。内部ケース40が直接、切断了知機構ユニット16の接続部17と接続されている。切断了知機構ユニット16は、ケース8に固定されている。切断了知機構ユニット16は図8のような構成であるので、弾発部材は切断了知機構ユニット16に配置されている。このように内部ケース40が弾発部材に接続されている。
【0098】
それで、転写ヘッド6を配置している内部ケース40が弾発部材にて転写ヘッド6の支軸方向におけるケース8内方向へ後退可能及びケース8外方向に復帰可能に配置されていることになる。これにより、転写ヘッド6は、ケース8外に突設されて、かつ、弾発部材にて転写ヘッド6の支軸方向におけるケース8内方向へ後退可能及びケース8外方向に復帰可能に配置されており、転写ヘッド6がケース内方向への後退で切断了知機構が作動する。
【0099】
実施例2の塗膜転写具1の使用説明は、塗膜転写具1の内部構成は異なるが、図6の使用説明と同じである。図6と同じであるので、被転写面9に対する右斜め45度程度の方向が、転写ヘッドの支軸方向である。この方向に押圧を強くすることで、切断了知機構が作動する。
【0100】
塗膜3を被転写面9に転写させる塗膜転写具1の使用方法は、ケース8外に突設された転写ヘッド6にて転写テープ4を押圧して、被転写面9において塗膜3を転写させたい部分に接触させながら、塗膜転写具1を被転写面9に対して斜めに傾けて移動させる方法である。図6では、右斜め45度程度に傾けて、図面右方向へ塗膜転写具1を移動させている。
【0101】
このように移動させることで、テープが走行して、転写テープ4が繰り出されて繰出しリール5が回り、繰出しリール5のギア14も回り、噛合している巻取りリール7のギアによって、巻取りリール7が回る。これらギア比とリール径比を調整して、基材テープ2が巻き取られるようになっている。こうして自動巻取りされることになる。
【0102】
このような通常の使用では、上記のような内部構成からなる塗膜転写具1なので、テープがたるむことなどは起こらないが、何かしらのタイミングのずれによってたるんだ時には、巻取りリール7の波形溝15によって巻き締めることができる。
【0103】
図のような使用方法であると、具備している切断了知機構ユニット16によって転写ヘッド6は支軸方向には後退可能であるが、図面右方向へ塗膜転写具1を移動させるので、転写ヘッド6は支軸方向のケース8内方向へは後退しにくい構成になっている。
【0104】
これにより、塗膜を被転写面に転写させている途中では了知機構が作動しにくく、転写を終了させるとき、図10のように被転写面9に対して垂直に立てることで、初めて了知機構が作動しやすくなっている。
【符号の説明】
【0105】
1 塗膜転写具
2 基材テープ
3 塗膜
4 転写テープ
5 繰出しリール
6 転写ヘッド
7 巻取りリール
8 ケース
9 被転写面
10 リール中心軸
11 テープガイド
12 転写ヘッド支持部
13 中間部材
14 ギア
15 波形溝
16 切断了知機構ユニット
17 接続部
21 カバー
22 コイルバネ
23 回転部材
24 可動部材
25 位置決め部材
26 天面
27 円柱部
28 回転孔
29 回転駆動突起
30 天面の裏側
31 円筒部
32 摺動突起
33 可動カム歯
34 第一の内壁面
35 第二の内壁面
36 位置決めカム歯
37 摺動溝
40 内部ケース
41 長方形の透明板
42 垂直壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材テープ表面に塗膜を形成している転写テープが、繰出しリールから転写ヘッドを介して巻取りリールに巻回されて、繰出しリールと巻取りリールの連動機構と共に、ケースに配置された自動巻取り式の塗膜転写具において、転写ヘッドは、ケース外に突設されて、かつ、弾発部材にて転写ヘッドの支軸方向におけるケース内方向へ後退可能及びケース外方向に復帰可能に配置されており、転写ヘッドがケース内方向への後退で切断了知機構が作動することを特徴とする切断了知機構付き塗膜転写具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−25133(P2012−25133A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168766(P2010−168766)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000115119)ユニオンケミカー株式会社 (67)
【Fターム(参考)】