説明

切断機

【課題】例えば、卓上形の丸鋸盤であって、切断材を載置するテーブルと、電動モータにより回転する鋸刃を有する切断機本体を備えた切断機において、電動モータ付近で発生する高周波電流がテーブル側で増幅されて周辺機器に対するノイズとなる現象が発生する場合があり、本発明ではこのノイズを低減することを目的とする。
【解決手段】切断機本体20をテーブルを主体とする本体支持部50側に対して上下動可能に支持する傾動支軸15に絶縁部材16,16を装着して高周波電流の導通を遮断する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば卓上形丸鋸盤若しくはテーブルソー等の定置式の丸鋸盤又は携帯丸鋸等の切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、卓上形の丸鋸盤は、切断材を載置するテーブルと、テーブルの上方に上下動操作可能に支持された切断機本体を備えるもので、切断機本体は電動モータを駆動源として回転する円形の切断刃を備えている。使用者は、切断機本体を下動させて回転する切断刃を切断材に切り込ませて切断加工を行うことができる。係る丸鋸盤に関する技術が、例えば下記の特許文献に開示されている。
一般に、この種の切断機においては、電動モータを備える切断機本体に対してこれを上下動可能に支持するテーブル及びその関連部材が鋼材等の金属材料あるいはアルミニウム等の非鉄金属材料を素材として製作されている。一方、電動モータの主としてカーボンブラシ若しくはその周辺部位からは微少な高周波電流が発生することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−370201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この電動モータ付近で発生した高周波電流が、切断機本体及びこれを支持するテーブル側の金属製構成部材を経て導通され、これが比較的大きな面積を有する平坦なテーブル等によって増幅されて、周辺の他電子機器に対して悪影響を及ぼすノイズとなることが考えられる。この現象は、卓上形丸鋸盤に限らず、切断材に乗せ掛けるベースの上面側に切断機本体を傾動可能に支持した携帯形の切断機についても同様に発生すると考えられる。
このように電動モータを駆動源とする切断機本体と、これを支持するテーブル若しくはベース等の本体支持部を備える切断機の場合、周辺の他電子機器等への悪影響を考慮すれば係るノイズについても確実に排除若しくは低減する必要がある。
そこで、本発明は、この種の切断機について、切断機本体側で発生する高周波電流が本体支持部側で増幅されない若しくは増幅されにくいようにすることでこの種のノイズの発生を低減若しくは排除することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成の切断機とした。
請求項1記載の切断機によれば、切断機本体側の金属部品と本体支持部側の金属部品との間の導通が絶縁部材によって遮断されるので、電動モータで発生した高周波電流が本体支持部側へ伝わって増幅されることが低減し、若しくはなくすことができ、これにより当該切断機の全体としてノイズの発生を低減し、若しくはなくすことができ、ひいては周辺の他電子機器への悪影響をなくすことができる。
請求項2記載の切断機によれば、電動モータを備えた切断機本体側と、これを支持する本体支持部との間であって、切断機本体の変位に伴って相互に変位する2金属部品間に、電気を導通させない絶縁部材が介在されているため、電動モータで発生した高周波電流が切断機本体側で遮断されて本体支持部側に伝わることがない。このことから、切断機本体側で発生した高周波電流が、切断材を保持するために比較的大きな面積を有する平坦なテーブルを有する本体支持部側で増幅されることがないので、当該切断機の全体としてノイズの発生を低減若しくは排除することができ、これにより周辺の他電子機器への悪影響を排除することができる。
請求項3記載の切断機によれば、電動モータで発生した高周波電流が、切断機本体を本体支持部側に上下に傾動可能に支持する傾動支軸を経て本体支持部側に導通されることを防止でき、これによりノイズの発生を低減若しくは排除することができる。
例えば卓上形の丸鋸盤であって、切断材を載置する本体支持部としてのテーブルと、このテーブルに対して上下に傾動操作可能に支持された切断機において、切断機本体を傾動支持する傾動支軸と切断機本体との間、あるいは傾動支軸とテーブル側との間が絶縁部材によって電気的に絶縁されているため、電動モータで発生した高周波電流がこの絶縁部材によって遮断されて本体支持部としてのテーブル側に傾動支軸を経て伝わることがない。このことから、電動モータで発生した高周波電流がテーブル側で増幅されず、若しくは増幅されにくくなるので、当該切断機のノイズを大幅に低減若しくは排除することができ、従って周辺の他電子機器への悪影響をなくすことができる。
請求項4記載の切断機によれば、電動モータで発生した高周波電流が、切断機本体を例えば上動方向に付勢する捩りばねを経て本体支持部側に導通されることを防止でき、これによりノイズの発生を低減若しくは排除することができる。
例えば卓上形の丸鋸盤であって、切断材を載置する本体支持部としてのテーブルと、このテーブルに対して上下に傾動操作可能に支持された切断機において、切断機本体を上動側に付勢するための捩りばねが介装されている場合に、この捩りばねの一端側は切断機本体側に係合され、他端側は本体支持部側に係合されて、それぞれ切断機本体側と本体支持部側に相互に接触される。しかしながら、捩りばねの一端側若しくは他端側の少なくとも一方と切断機本体側又は本体支持部側との間に絶縁部材が介装されていることにより、切断機本体と本体支持部との間での当該捩りばねを経た導通が遮断されている。このため、切断機本体の電動モータで発生した高周波電流が捩りばねを経て本体支持部側で増幅されることがなく、この点で切断機のノイズを低減若しくは排除することができる。
請求項5記載の切断機によれば、電動モータで発生した高周波電流がカバー開閉用のリンクレバーを経て本体支持側に導通されることを防止でき、これによりノイズの発生を低減若しくは排除することができる。
例えば、切断機本体は、切断刃を開閉するカバーを備えており、このカバーと本体支持部との間にリンクレバーが介装されて、切断機本体の上下動作に連動してこのカバーが開閉される構成である場合に、カバーひいては切断機本体に対するリンクレバーの結合部、あるいは本体支持部側に対するリンクレバーの結合部の少なくとも一方に絶縁部材が介装されていることによって、切断機本体と本体支持部との間での当該リンクレバーを経た導通が遮断される。このことから、切断機本体の電動モータで発生した高周波電流が当該リンクレバーを介して本体支持部側で増幅されることがなく、この点で切断機のノイズを低減し、若しくは排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態に係る卓上形切断機の全体側面図である。
【図2】切断機本体の本体支持部に対する支持部の平面図である。本図では、第1のノイズ対策が施された部位が横断面で示されている。
【図3】切断機本体の本体支持部に対する支持部の縦断面図である。本図では、第2のノイズ対策が施された部位が示されている。
【図4】図1の(IV)-(IV)線一部断面矢視図であって、可動カバー開閉用のリンクレバーの本体支持部側の支持部を前側から見た図である。本図では、第3のノイズ対策が施された部位が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る切断機1の全体を示している。図示するように本実施形態では、切断機1の一例として卓上形の切断機であって、切断機本体20を前後にスライドさせることができるスライドマルノコを例示している。図1において、切断機1の右側に使用者が位置する。以下の説明では、使用者側(図1において右側)を前側とし、使用者から遠ざかる側(図1において左側)を後ろ側とする。また、左右方向については使用者を基準とする。通常の切断作業では、切断機本体20を使用者が手前側から後ろ側へ移動させることによって切断加工が進行する。従って、以下の説明では、後ろ側へ向かう方向を切断進行方向とも言う。
この切断機1は、切断機本体20とこれを支持する本体支持部50とに大別できる。先ず、本体支持部50は、切断材Wを載置するためのテーブル2と、このテーブル2を水平回転可能に支持するベース3と、テーブル2に対して切断機本体20を支持するための本体支持アーム部10を備えている。テーブル2は、ベース3の上面に水平回転可能に支持されている。テーブル2の前部には、当該テーブル2のベース3に対する回転位置について一定の角度位置に位置決め及び固定するための位置決め機構6が設けられている。
テーブル2の上面側には、切断材Wをテーブル面方向に位置決めするための位置決めフェンス7が設けられている。この位置決めフェンス7は、テーブル2の上方を左右に跨った状態でベース3側に支持されており、その下端部とテーブル2の上面との間には僅かな隙間が設けられて当該テーブル2の回転が許容されるようになっている。
【0008】
次に、テーブル2の後部に、本体支持アーム部10が設けられている。この本体支持アーム部10は、切断機本体20をテーブル2に対して水平方向(使用者から見て前後方向、図1において左右方向)にスライド可能かつ左右(図1において紙面に直交する方向)に傾動可能かつ上下に傾動可能に支持するもので、下スライド機構11、左右傾動機構12、上スライド機構13、上下傾動機構14を備えている。
下スライド機構11は、テーブル2の後部側に取り付けた軸受け11a,11aと、この軸受け11aを介してテーブル2の下面に沿って軸方向にスライド可能に支持した左右一対のスライドバー11b,11bを主体とするもので、両スライドバー11b,11bの後端部に左右傾動機構12が取り付けられている。この左右傾動機構12によって切断機本体20を使用者から見て左右に傾動させることができ、これによりいわゆる傾斜切りを行うことができる。左右傾動機構12を直角位置に固定するといわゆる直角切りを行うことができる。
左右傾動機構12の傾動アーム12aの上部に上スライド機構13が取り付けられている。この上スライド機構13も、軸受け13a,13aと左右一対のスライドバー13b,13bを主体とするもので、上下のスライド機構11,13のスライド方向は相互に平行に設定されている。
上スライド機構13の前部に上下傾動機構14が設けられている。上下傾動機構14の傾動支軸15を介して切断機本体20が上下に傾動可能に支持されている。
切断機本体20は、本体ケース21を備えており、この本体ケース21の支持アーム部21aが傾動支軸15を介して上下傾動機構14に上下に傾動可能に支持されている。本体ケース21は、支持アーム部21aの他に固定カバー部21bを備えている。固定カバー部21bによって円形の切断刃22の上側ほぼ半周の範囲が覆われている。
支持アーム部21aの上部には、切断加工により固定カバー部21b内に吹き上げられた切り粉を排出するための排出口21cが設けられている。図示は省略されているが、この排出口21cには、集塵袋が装着され、あるいは集塵機の集塵ホースが接続される。
【0009】
切断刃22の下側ほぼ半周の範囲は開閉可能な可動カバー23によって覆われる。この可動カバー23は、支軸23aを介して固定カバー部21bに上下に回動可能に支持されている。また、この可動カバー23は、リンクレバー25を介して本体支持部50側の上下傾動機構14に連係されている。このため、この可動カバー23は、切断機本体20の下動に伴って図1中反時計回り方向に回動して開かれ、切断機本体20の上動に伴って時計回り方向に回動して閉じられる。可動カバー23が開かれると切断刃22の下側が露出され、この露出部分が切断材Wに切り込まれる。切断機本体20の上動に伴って可動カバー23が閉じられると、切断刃22が固定カバー部21bと可動カバー23によってほぼ完全に覆われた状態となる。図1は、切断機本体20が上動端に戻されて可動カバー23が全閉された状態を示している。
固定カバー部21bの背面側(図2において右側面)には、駆動源としての電動モータ4が取り付けられている。この電動モータ4は、本体ケース21の背面側に取り付けられている。この電動モータ4を駆動源として円形の切断刃22が回転する。
また、本体ケース21の背面側には、使用者が把持するハンドル部5が設けられている。このハンドル部5は、横ループ形を有するもので、その内周側にスイッチレバー(図示省略)が配置されている。使用者がこのスイッチレバーを指先で引き操作すると、電動モータ4が起動して切断刃22が回転する。
【0010】
本実施形態に係る切断機1は、電動モータ4の主としてカーボンブラシ付近で発生する高周波電流が、本体支持部50側で増幅されて電磁気的なノイズとなることを低減若しくは排除するための構成を備える点に大きな特徴を有している。本実施形態では、切断機1の3箇所についてこのノイズ対策を施している。
第1のノイズ対策は、切断機本体20の上下傾動機構14に対する傾動支持部についてなされている。この第1のノイズ対策が図2に示されている。上下傾動機構14は、傾動ブラケット14aを備えている。この傾動ブラケット14aは、上スライド機構13のスライドバー13b,13bの先端部間に取り付けられている。この傾動ブラケット14aには、2つの支持壁部14b,14bが設けられている。この2つの支持壁部14b、14b間に跨った状態で傾動支軸15が取り付けられている。
傾動支軸15は、金属製で適度な強度及び耐摩耗性を有している。この傾動支軸15は、本体ケース21の支持アーム部21aを左右に貫通しており、その両端部はそれぞれ当該支持アーム部21aの側部から側方へ突き出されている。この左右両突き出し端部15a,15aがそれぞれ支持壁部14bの支持孔14cに回転自在に支持されている。傾動支軸15の突き出し端部15a,15aには、それぞれ第1の絶縁部材16が装着されている。両突き出し端部15a,15aは、それぞれこの第1の絶縁部材16を介して支持孔14c内に支持されている。両絶縁部材16,16は、それぞれ電気を導通させない非金属を素材として一体形成されたもので、本実施形態では、合成樹脂の一体成形に製作されている。この両絶縁部材16,16は、円筒部16aとその端部に一体形成されたフランジ部16bを備えている。円筒部16aの内周側に傾動支軸15の突き出し端部15aが回転自在に挿入されている。この円筒部16aが支持壁部14bの支持孔14c内に挿入されている。フランジ部16bは、本体ケース21の支持アーム部21aと支持壁部14bとの間に、当該本体ケース21aの上下傾動動作を許容する状態で挟み込まれている。
この左右の第1の絶縁部材16,16によって、傾動支軸15の端部15aが支持壁部14bの支持孔14cに直接接触することが防止され、かつ支持アーム部21aと左右支持壁部14b,14bが相互に直接接触することが防止され、これにより傾動支軸15の端部15aと支持壁部14bの支持孔14cとの間、及び本体ケース21と左右支持壁部14b,14bとの間は、金属部品同士が直接接触することがなく電気的に完全に遮断(絶縁)されている。このため、電動モータ4で発生した高周波電流が傾動支軸15を経て本体支持部50側に伝達されることが防止される。
【0011】
図3には第2のノイズ対策が示されている。第2のノイズ対策も、切断機本体20の上下傾動機構14に対する傾動支持部についてなされている。図3に示すように傾動支軸15の周囲には金属製の捩りばね17が介装されている。この捩りばね17の一端部17aは、本体ケース21aの係合孔21dに引き掛けられている。この捩りばね17の他端部17bは、傾動ブラケット14aの係合孔14dに引き掛けられている。捩りばね17の他端部17bには、第2の絶縁部材18が取り付けられている。この第2の絶縁部材18は、他端部17bを覆う状態に取り付けられている。捩りばね17の他端部17bは、この第2の絶縁部材18を間にして係合孔14dに引き掛けられている。このため、捩りばね17の他端部17bと傾動ブラケット14aの係合孔14dとの間は、金属部品同士が直接接触することがなく電気的に絶縁されている。このため、電動モータ4で発生した高周波電流が捩りばね17を経て本体支持部50側に伝達されることが防止される。
図4には、第3のノイズ対策が示されている。この第3のノイズ対策は、切断機本体20の上下動作に連動して可動カバー23を開閉させるためのリンクレバー25に付いてなされている。このリンクレバー25も金属製で、切断機本体20側と本体支持部50側との間であって、それぞれ金属製である支持アーム部21aと上下傾動機構14の傾動ブラケット14aとの間に介装されている。
このリンクレバー25の一端側は、支軸26を介して傾動ブラケット14aの支持台座部14eに上下に傾動可能に支持されている。しかも、リンクレバー25の一端側は、第3及び第4の絶縁部材27,28を介して支持台座部14eの側部に支持されている。第3の絶縁部材27は、電気を導通させない非金属材料を素材とするもので、本実施形態では合成樹脂の一体成形により製作されている。この第3の絶縁部材27の内周側に支軸26が挿通されている。この第3の絶縁部材27は、円筒部27aとフランジ部27bを有している。円筒部27aは、リンクレバー25の支持孔25a内に挿入されている。フランジ部27bは、リンクレバー25と、傾動ブラケット14aの支持台座部14eの側面との間に挟み込まれている。
図示するように本実施形態では支軸26として、ねじ(六角孔付きのキャップスクリュー)が用いられている。この支軸26の頭部とリンクレバー25との間に第4の絶縁部材28が挟み込まれている。この第4の絶縁部材28には、平板形状の非金属部品が用いられている。本実施形態は、この絶縁部材28には、合成樹脂製の平板が用いられている。この第4の絶縁部材28によって、リンクレバー25と支軸26との間の導通も遮断されている。
【0012】
このように、リンクレバー25は、第3及び第4の絶縁部材27,28によって、支軸26及び支持台座部14eの双方に対して絶縁されている。このため、電動モータ4で発生した高周波電流がこのリンクレバー25を経て切断機本体20側から本体支持部50側へ流されることが防止される。
図1に示すようにこのリンクレバー25の他端側(傾動先端側)は、可動カバー23の回動中心(支軸23a)付近に延びている。可動カバー23の回動中心付近には、作動板部23bが一体に設けられている。リンクレバー25の他端部は、この作動板部23bに突き当てられている。また、リンクレバー25の長手方向中央部には、当該長手方向に長く僅かに湾曲した円弧形の作動孔25bが形成されている。この作動孔25bには、本体ケース21に設けた作動軸21eが挿入されている。切断機本体20の下動動作に伴う、支軸25と作動軸21eとの相対変位によりリンクレバー25の他端部が支軸23aの周囲を図1において反時計回り方向に円弧移動し、これにより作動板部23bが押されて可動カバー23が開かれる。この可動カバー23は、図示省略した引っ張りばねによって閉じ方向に付勢されている。この引っ張りばねの付勢力に抗してリンクレバー25が変位することにより可動カバー23が開かれ、切断機本体20の上動動作によりリンクレバー25が退避すると、可動カバー23が引っ張りばねの付勢力及びその自重によって閉じられる。
【0013】
以上説明した本実施形態の切断機によれば、第1〜第4の絶縁部材16,18,27,28によって、切断機本体20とこれを支持する本体支持部50との間が電気的に遮断されている。このため、電動モータ4の主としてカーボンブラシ付近で発生する高周波電流が本体支持部50側へ導通されなくなることから、当該高周波電流が本体支持部50側であって例えばテーブル2によって増幅されるといった現象を未然に回避することができ、これにより当該切断機1からの電磁気的なノイズの発生を低減若しくはなくすことができる。
また、本体ケース21あるいは傾動支軸15そのものを非金属材料を素材として製作する構成ではなく、必要箇所について最小限の範囲で絶縁を図る構成であるので、切断機としての必要な剛性を確保しつつ、低コストで目的を達成することができる。さらに、必要最小限の範囲に小物部品(第1〜第4絶縁部材16,18,27,28)を装着する構成であるので、後付けが容易で、広範な機種について適用することができる。
【0014】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、第1〜第4の絶縁部材16,18,27,28をそれぞれ合成樹脂を素材として製作した構成を例示したが、例えば木材、紙、ゴム、植物、石等の電気を導通させない材料(非金属材料)を素材としてこれら各絶縁部材を製作することもできる。
また、切断機本体20を本体支持部50に対して上下に傾動可能に支持する傾動支軸15と、切断機本体20を上動側に付勢する捩りばね17と、リンクレバー25を本体支持部50側に支持する支軸26について絶縁部材を装着した構成を例示したが、その他の部位であって、切断機本体20の上下動作に伴って相対的に変位する当該切断機本体20側の構成部材若しくは本体支持部50側の構成部材のいずれか一方又は双方の部材について、絶縁部材を装着する構成としてもよい。
さらに、切断機として、上下二段のスライド機構11,13と左右傾動機構12を備える構成を例示したが、これらの各機構を備えない切断機についても同様の適用することができる。
また、切断機1として卓上形丸鋸盤(スライドマルノコ)を例示したが、電動モータにより回転する切断刃を有するその他の形態の切断機、例えば携帯形の切断機、据え付け形のテーブルソーについても同様に適用することができる。携帯型の切断機の場合、切断材に乗せ掛けるベースの上面に切断機本体が支持されており、この切断機本体を切り込み深さ調整に伴いベースに対して変位させる機能、若しくは傾斜切りのために相対変位させる機能を備える場合に、当該切断機本体をベースに対して傾動支持する部位について非金属製の絶縁部材を介在させて切断機本体側と本体支持部(ベース)側との間の導通を遮断することができ、これにより電動モータ付近で発生する高周波電流がベース側で増幅される現象を排除して、ノイズの発生を低減若しくはなくすことができる。
【符号の説明】
【0015】
W…切断材
1…切断機(スライドマルノコ)
2…テーブル
3…ベース
4…電動モータ
5…ハンドル部
10…本体支持アーム部
11…下スライド機構、11a…軸受け、11b…スライドバー
12…左右傾動機構、12a…傾動アーム
13…上スライド機構、13a…軸受け、13b…スライドバー
14…上下傾動機構
14a…傾動ブラケット、14b…支持壁部、14c…支持孔、14d…係合孔
14e…支持台座部
15…傾動支軸、15a…突き出し端部
16…第1の絶縁部材、16a…円筒部、16b…フランジ部
17…捩りばね,17a…一端部、17b…他端部
18…第2の絶縁部材
20…切断機本体
21…本体ケース
21a…支持アーム部、21b…固定カバー部、21c…排出口、21e…作動軸
22…切断刃
23…可動カバー、23a…支軸、23b…作動板部
25…リンクレバー、25a…支持孔、25b…作動孔
26…支軸
27…第3の絶縁部材、27a…円筒部、27b…フランジ部
28…第4の絶縁部材
50…本体支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としての電動モータと該電動モータにより回転する切断刃を有する切断機本体と、該切断機本体を切断材に対して支持する本体支持部を備えた切断機であって、
前記切断機本体側の金属部品と前記本体支持部側の金属部品との間に絶縁部材を介在させた切断機。
【請求項2】
請求項1記載の切断機であって、前記本体支持部に対する前記切断機本体の相対変位に伴って、相互に変位する本体支持部側の金属部品と切断機本体側の金属部品との間に絶縁部材を介在させた切断機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の切断機であって、前記切断機本体は、傾動支軸を介して前記本体支持部に傾動可能に支持されており、該傾動支軸と、前記切断機本体及び/又は前記本体支持部との間に前記絶縁部材を介在させた切断機。
【請求項4】
請求項1又は2記載の切断機であって、前記切断機本体は、傾動支軸を介して前記本体支持部に傾動可能に支持され、かつ捩りばねを介して一方の傾動方向にばね付勢されており、該捩りばねの端部と、前記切断機本体及び/又は前記本体支持部との間に前記絶縁部材を介在させた切断機。
【請求項5】
請求項1又は2記載の切断機であって、前記切断機本体は、傾動支軸を介して前記本体支持部に傾動可能に支持され、かつ前記切断機本体と前記本体支持部との間に、前記切断刃のカバーを前記切断機本体の傾動動作に連動して開閉させるためのリンクレバーが介装されており、該リンクレバーと、前記切断機本体及び/又は前記本体支持部との間に前記絶縁部材を介在させた切断機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−253630(P2010−253630A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107726(P2009−107726)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】