説明

切断機

【課題】吊りピース等の突起物を切断する自走式の切断機を提供する。
【解決手段】鉄鋼部に突設される突起物を切断する切断機11であって、鉄鋼部に着脱自在に取り付ける取付部13と、取付部13に接続するレールガイド支柱14と、レールガイド支柱14同士に渡って設ける移動用レール15と、移動用レール15に沿って移動可能なガイド板16と、ガイド板16に連設されると共に中央部に突起物を通過するための切断開口部を有する取付基板17と、取付基板17に設けられる駆動モータ18と、駆動モータ18の駆動に連動して駆動すると共に取付基板17に設けられる駆動ローラ19と、駆動ローラ19と相対して取付基板17に設けられる一対の従動ローラ20と、従動ローラ20と駆動ローラ19とで回転するカッター21と、取付基板17を移動用レール15に沿って牽引する牽引手段22とを備え、取付部13は、鉄骨材を挟持し、且つ、交換可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断機に関するものであり、更に詳しくは、鉄骨材あるいは鋼床版等に突設される吊りピース、エレクションピース、ガイドピース又はジョイントプレート等の突起物をガスバーナーを使用することなく切断することができる自走式の切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば鉄骨材の吊りピース等を切断して除去する場合は、当該吊りピース等から所定の間隔離した位置でガスバーナーを使用して切断しているのが現状である(特許文献1参照)。
【0003】
一方、この種の吊りピース等の突起物を切断する切断機としては、次のような構成のものが知られている。この切断機は、門型に形成された本体フレームと、本体フレームに設けられる切断用のバンドソーと、本体フレームを移動可能に設ける走行レールと、走行レールの下部にレールガイドを介して設けられる電磁石とから構成されている(特許文献2参照)。
【0004】
このような構成の切断機は、切断したい突起物に対して、電磁石を鉄鋼部にセットして吸着させ、バンドソーの高さ調整をした後に、このバンドソーを高速に回転させ、次いで、手動又は自重によって本体フレームを走行レールに沿って突起物方向に押し出し、バンドソーで当該突起物を根本から切断するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−185114号公報
【特許文献2】特開2006−21265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例のガスバーナーを使用して吊りピース等を切断する場合においては、作業性が悪いだけでなく、鉄骨材等を火熱で損傷させてしまったり、火花粉塵の飛散や煙が発生するという問題点を有する。
【0007】
更には、ガスバーナーでは吊りピース等の突起物を根本から切断できないために鉄骨材等の表面に切断痕が残存し、その仕上げ作業にも手間と時間とを必要とするという問題点も有する。
【0008】
また、従来例の切断機は、電磁石を鉄鋼部に吸着させるので、鉄鋼部の塗装厚等の関係で電磁石の吸着力が弱い場合には、電磁石を鉄鋼部に確実に取り付けることができないという問題点を有する。
【0009】
従って、従来例における吊りピース等の突起物の切断作業においては、火炎での損傷や火花粉塵の飛散等の問題を解消して作業手間が掛からないようにすることと、電磁石の吸着力が弱い場合でも鉄鋼部に確実かつ強固に取り付けることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、鉄骨材又は鋼床版等の鉄鋼部に突設される吊りピース、エレクションピース、ガイドピース又はジョイントプレート等の突起物を切断する切断機であって、前記鉄鋼部に着脱自在に取り付ける取付部と、該取付部に接続するレールガイド支柱と、該レールガイド支柱同士に渡って設ける少なくとも一対の移動用レールと、該移動用レールに沿って移動可能なガイド板と、該ガイド板に連設されると共に中央部に前記突起物を通過するための切断開口部を有する取付基板と、該取付基板に設けられる駆動モータと、該駆動モータの駆動に連動して駆動すると共に前記取付基板に設けられる駆動ローラと、該駆動ローラと相対して前記取付基板に設けられる一対の従動ローラと、該従動ローラと前記駆動ローラとで回転するカッターと、前記取付基板を前記移動用レールに沿って平行に牽引すべく設けられた牽引手段とを備え、前記取付部は、鉄骨材を挟持自在な挟持式又は鉄鋼部に着脱自在な電磁石式であり、且つ交換可能であることである。
【0011】
また、前記挟持式の取付部は、取付プレートを介して前記レールガイド支柱に取り付ける一対のコ字状部材からなり、前記取付プレートは、ボルトを螺入して前記コ字状部材を取り付けるための横長の長孔が形成され、該長孔に対して前記ボルトを横移動して前記コ字状部材同士の間隔を調整する構成であること、;
前記切断開口部は、縁部が垂直に形成され、又は縁部が上部に行くに沿って拡開して形成されること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る切断機によれば、ガスバーナーを使用しないので、火炎での損傷や火花粉塵の飛散等の問題が解消する。また、取付部を鉄骨材に確実に挟持させることができるだけでなく、取付部を電磁石式のものなどに適宜に交換できるという種々の優れた効果を奏する。
【0013】
また、挟持式の取付部は、取付プレートを介してレールガイド支柱に取り付ける一対のコ字状部材からなり、取付プレートは、ボルトを螺入して前記コ字状部材を取り付けるための横長の長孔が形成され、該長孔に対して前記ボルトを横移動して前記コ字状部材同士の間隔を調整する構成であることによって、コ字状部材を様々な長さのフランジ部に対応させて取り付けることができるという優れた効果を奏する。
【0014】
そして、切断開口部は、縁部が垂直に形成され、又は縁部が上部に行くに沿って拡開して形成されることによって、縁部が垂直に形成される場合は、垂直に突設する突起物を確実に切断できる。また、縁部が上部に行くに沿って拡開して形成される場合は、傾斜した状態の突起物であっても切断することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る切断機11の正面図である。
【図2】本発明に係る切断機11の背面図である。
【図3】本発明に係る切断機11の平面図である。
【図4】本発明に係る切断機11の底面図である。
【図5】本発明に係る切断機11の左側面図である。
【図6】本発明に係る切断機11の右側面図である。
【図7−A】電磁石式の取付部13を示す要部の左側面図である。
【図7−B】同要部の正面図である。
【図8】切断開口部25の他の実施例を示す、一部を破断した切断機11の左側面図である。
【図9】牽引手段22の他の実施例を示す切断機11の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1から図6において、符号11は切断機を示し、この切断機11は、鉄鋼部12に着脱自在に取り付ける挟持式の取付部13と、取付部13に接続するレールガイド支柱14と、レールガイド支柱14同士に渡って設ける移動用レール15と、移動用レール15に沿って移動可能なガイド板16と、ガイド板16に連設される取付基板17と、取付基板17に設けられる駆動モータ18と、駆動モータ18の駆動に連動して駆動すると共に取付基板17に設けられる駆動ローラ19と、駆動ローラ19と相対して取付基板17に設けられる一対の従動ローラ20と、従動ローラ20と駆動ローラ19とで回転するカッター21と、取付基板17を移動用レール15に沿って平行に牽引すべく設けられた牽引手段22とから構成される。
【0017】
鉄鋼部12は、鉄骨構造物又は鉄筋コンクリート構造物等におけるH形鋼、鉄骨材あるいは鋼床版等であって、切断機11は、これらの鉄鋼部12に突設される吊りピース、エレクションピース、ガイドピース又はジョイントプレート等の突起物23を切断する。
【0018】
取付部13は、図1及び図5に示すように、コ字状に形成された一対のコ字状部材13eであって、このコ字状部材13eでH形鋼24のフランジ部24aを両側から挟持できるようになっている。そして、コ字状部材13eの下端部13fからボルト13gを螺着してフランジ部24aに着脱自在に取り付けることができる。
【0019】
コ字状部材13eは、2本のボルト13hで取付プレート13iに取り付けられており、この取付プレート13iがボルト13jでレールガイド支柱14に取り付けられる(図1及び図5参照)。
【0020】
取付プレート13iは、板状部材であって、ボルト13hが挿通する横長の長孔13kが2箇所に形成されており(図5参照)、この長孔13kに対してボルト13hを横移動することで、コ字状部材13e同士の間隔を調整することができる。従って、コ字状部材13eは、様々な幅のフランジ部24aに対応させて取り付けることができる。
【0021】
このような構成の挟持式の取付部13は、後述する電磁石式の取付部13が、塗装厚等の関係で磁力による吸着力が弱い場合などに、取付部13を電磁石式から挟持式に交換して使用すればよい。
【0022】
このように、取付部13は、ボルト13jを取り外して交換可能であり、例えば図7−A及び図7−Bに示すような電磁石式のものに交換することができる。
【0023】
電磁石式の取付部13は、電磁石スイッチ13aのON/OFF操作により、鉄鋼部12に強固に吸着させ、又は取り外することができる(図7−A及び図7−B参照)。
【0024】
また、取付部13は、上部に取付板13bが連設されており、この取付板13bを介してボルト13cでレールガイド支柱14に取り付けられる。
【0025】
取付板13bは、ボルト13cが挿通する縦長の長孔13dが形成されており(図7−A及び図7−B参照)、この長孔13dをボルト13cに対して上下移動及び回動することで、取付部13の取付高さ及び取付角度を調整することができる。このように、取付部13の取付角度等を調整できるので、取付部13は平面状の部位だけでなく、例えば鋼管のような曲面状の部位であっても取り付けることが可能である。
【0026】
レールガイド支柱14は、平板状の角柱部材であって、上述のように、それぞれの取付部13の上部にボルト13j(13c)で取り付けられる。
【0027】
移動用レール15は、図1及び図3に示すように、レールガイド支柱14同士の上部に渡って一対設けられている。また、図2に示す切断機11の背面側には、レールガイド支柱14同士の下方に渡っても移動用レール15が設けられている。つまり、図1に示すように切断機11の正面側に1本と、図2に示す背面側に2本の、合計3本の移動用レール15が設けられている。
【0028】
なお、図5及び図6に示す符号32は、レールガイド支柱14同士の幅方向の間隔を維持するための側部支柱を示す。
【0029】
ガイド板16は、移動用レール15の内側部及び上下部を囲繞するよう略コ字状に形されており、このガイド板16が3本の移動用レール15に設けられて、当該移動用レール15に沿って摺動状態に移動が可能である。
【0030】
取付基板17は、所定大きさの板状に形成されており、この取付基板17が、図1から図3に示すように、ガイド板16に接続しており、このガイド板16の移動と共に移動する仕組みになっている。また、取付基板17の中央部には、突起物23を通過するための切断開口部25が形成されている。
【0031】
切断開口部25は、図5及び図6に示すように、縁部25aが垂直に形成されている。従って、縁部25aに沿って垂直に突設する突起物23を確実に切断できることとなる。
【0032】
次に、切断開口部25の他の実施例を示す。切断開口部25dは、図8に示すように、縁部25bが上部25cに行くに沿って拡開して形成され、換言すれば、切断開口部25dが逆三角形状を呈して上部25cが膨出した形状に形成される。この場合は、傾斜した状態の突起物であっても切断することができる。
【0033】
駆動モータ18は、取付基板17に設けられており、図示しないON/OFFスイッチによって駆動と停止の操作がなされる。
【0034】
駆動ローラ19は、駆動モータ18の駆動に連動して駆動する仕組みになっており、取付基板17に設けられる。また、駆動ローラ19は、従動ローラ20よりも大径に形成されたプーリからなり、当該従動ローラ20と伝動すべく回転式のカッター21が掛け回されている。
【0035】
従動ローラ20は、駆動ローラ19と相対して取付基板17に一対設けられる。そして、従動ローラ20は、取付基板17の下端側の二隅に取り付けられた左右一対のプーリからなり、突起物23に対しカッター21が直交するように配設されている。
【0036】
カッター21は、ワイヤー式の回転式カッター、例えばワイヤソーからなり、駆動ローラ19と一対の従動ローラ20を介して高速に回転される。また、カッター21は、通常は図示しないベルトカバーで覆われている。
【0037】
牽引手段22は、具体的には巻取式の帯状牽引バネ22aであり、取付基板17を移動用レール15に沿って平行に、図1の矢印A方向に牽引するために設けられている。図1から図4に示すように、レールガイド支柱14の途中に、L字状の取付アーム26が設けられており、この取付アーム26の先端部に、帯状牽引バネ22aの一端部27が取り付けられる。また、取付基板17には、帯状牽引バネ22aを回動自在に巻き取るための巻回装置28が設けられている。
【0038】
このような構成の牽引手段22によれば、取付基板17を移動用レール15に沿って牽引するので自走可能となり、取付基板17を自走させながら、カッター21で鉄鋼部12に突設される突起物23をフラットに切断することができる。
【0039】
次に、牽引手段22の他の実施例を示す。牽引手段22は、図9に示すように、スプリング式バネ29であって、このスプリング式バネ29の一端部30が取付アーム26の先端部に取り付けられ、他端部31が取付基板17に接続される。このスプリング式バネ29は、上述の帯状牽引バネ22aと同様に、取付基板17を移動用レール15に沿って平行に図1の矢印A方向に牽引して、カッター21で鉄鋼部12に突設される吊りピース等の突起物23をフラットに切断する。
【0040】
以上のように構成される切断機11は、切断する突起物23に相対して、コ字状部材13eでH形鋼24のフランジ部24aを両側から挟持して、下端部13fからボルト13gを螺着して取り付ける。次いで、カッター21を高速に回転させて、帯状牽引バネ22aの一端部27を取付アーム26に取り付けて牽引力を発生させることによって、取付基板17が移動用レール15に沿って自走し、当該取付基板17の切断開口部25が突起物23を通過して、カッター21が突起物23をフラットに切断するのである。
【符号の説明】
【0041】
11 切断機
12 鉄鋼部
13 取付部
13a 電磁石スイッチ
13b 取付板
13c ボルト
13d 長孔
13e コ字状部材
13f 下端部
13g、13h ボルト
13i 取付プレート
13j ボルト
13k 長孔
14 レールガイド支柱
15 移動用レール
16 ガイド板
17 取付基板
18 駆動モータ
19 駆動ローラ
20 従動ローラ
21 カッター
22 牽引手段
22a 帯状牽引バネ
23 突起物
24 H形鋼
24a フランジ部
25 切断開口部
25a、25b 縁部
25c 上部
25d 切断開口部
26 取付アーム
27 一端部
28 巻回装置
29 スプリング式バネ
30 一端部
31 他端部
32 側部支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨材又は鋼床版等の鉄鋼部に突設される吊りピース、エレクションピース、ガイドピース又はジョイントプレート等の突起物を切断する切断機であって、
前記鉄鋼部に着脱自在に取り付ける取付部と、
該取付部に接続するレールガイド支柱と、
該レールガイド支柱同士に渡って設ける少なくとも一対の移動用レールと、
該移動用レールに沿って移動可能なガイド板と、
該ガイド板に連設されると共に中央部に前記突起物を通過するための切断開口部を有する取付基板と、
該取付基板に設けられる駆動モータと、
該駆動モータの駆動に連動して駆動すると共に前記取付基板に設けられる駆動ローラと、
該駆動ローラと相対して前記取付基板に設けられる一対の従動ローラと、
該従動ローラと前記駆動ローラとで回転するカッターと、
前記取付基板を前記移動用レールに沿って平行に牽引すべく設けられた牽引手段とを備え、
前記取付部は、鉄骨材を挟持自在な挟持式であり、且つ交換可能であること
を特徴とする切断機。
【請求項2】
前記挟持式の取付部は、取付プレートを介して前記レールガイド支柱に取り付ける一対のコ字状部材からなり、
前記取付プレートは、ボルトを螺入して前記コ字状部材を取り付けるための横長の長孔が形成され、
該長孔に対して前記ボルトを横移動して前記コ字状部材同士の間隔を調整する構成であること
を特徴とする請求項1に記載の切断機。
【請求項3】
前記切断開口部は、縁部が垂直に形成され、又は縁部が上部に行くに沿って拡開して形成されること
を特徴とする請求項1に記載の切断機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−A】
image rotate

【図7−B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−71193(P2013−71193A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210632(P2011−210632)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(599115376)
【Fターム(参考)】