説明

切断装置

【課題】 形状の揃ったチョップドストランドを供給可能で、保守・点検が容易であり、カッターブレードの損傷を抑えた切断装置を提供する。
【解決手段】 待機姿勢において対象物配設空間5の一方の側に複数のカッターブレード12を備えたカッターホルダ1と他方の側に前記カッターブレード12が嵌入可能な複数のスリット21を備えたカッターガイド2を備え、前記カッターブレード12が前記スリット21内に位置する切断姿勢まで相対移動して切断対象物3を切断する切断装置であり、前記複数のカッターブレード12が夫々切断片31移動路13を介して平行に固定された前記カッターホルダ1と前記スリット21と前記切断片31、移動路13に嵌入可能な押出し部材22とが設けられた前記カッターガイド2を備え、前記カッターブレード12の後方で前記押出し部材22の相対移動方向先端側に切断片31回収空間14を備えた切断装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切断装置に関し、特に、複数のカッターブレードを備えた切断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、繊維束(例えば、長繊維フィラメントを収束剤で収束した繊維束)を切断するための切断装置としては、その表面に多数のカッターブレードを突設したカッターローラーと押さえローラーを対向させてなる切断装置が知られている。この種の切断装置にあっては、前記繊維束を巻回した前記カッターローラーを高速回転させつつ前記押さえローラー圧接させることによって、前記繊維束を押圧切断する。そして、このようにして生じたチョップドストランドは下方に落下するので、上記のローラーの下方に回収部(例えば、コンベヤ)を設けて、これを回収する。又、前記カッターローラーと前記押さえローラーを対向して設けて、これれらのローラーの間に、繊維束を挿入可能に構成した繊維束切断装置も知られている。この種の繊維束切断装置にあっては、前記カッターローラーと前記押さえローラーとを圧接した状態で高速回転させつつ、これらのローラーの間に繊維束を連続的に供給して、前記繊維束に押圧切断する。このようにして生じたチョップドストランドも、やはり下方に落下することとなるので、上記のローラーの下方に回収部を設けて回収する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した2種の切断装置を用いると、前記繊維束は、高速回転する前記カッターローラーに掻き取られるようにして切断されるので、束が分解したり、夫々の束が回収部内に散乱したりして、チョップドストランドの回収・輸送に手間がかかるという問題点があった。又、繊維の表面が毛羽立ったり、長さや形状が規格に合わないチョップドストランド(ミスカット)が生じ易かった。従って、従来の切断装置を用いた場合には、歩留まりが低いために生産効率が低いという問題点があった。更に、前記チョップドストランドが前記カッターブレードの間に詰まって、目詰まりを起こし易いために、保守・点検に手間がかかるという問題点があった。更に又、前記繊維束を切断するに際して、前記カッターブレードを高速回転した状態で押さえローラーに圧接するために、カッターブレードの疲労破壊が生じ易かった。そのため、前記カッターブレードの寿命が短いという問題点があった。
【0004】従って、本発明の目的は、上記欠点に鑑み、繊維束を切断して形状の揃ったチョップドストランドを供給することができる切断装置を提供することにある。又、本発明の他の目的は、保守・点検が容易であると共に、カッターブレードの損傷を抑えて寿命を延ばすことができる切断装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するための本発明の繊維束切断装置の特徴構成は、請求項1に記載されているように、待機姿勢において、切断対象物が配設される対象物配設空間の一方の側に複数のカッターブレードを備えたカッターホルダを、他方の側に前記カッターブレードが嵌入可能な複数のスリットを備えたカッターガイドを備えて構成され、前記待機姿勢から、前記カッターホルダと前記カッターガイドの一方が他方に対して、前記カッターブレードが前記スリット内に位置する切断姿勢まで相対移動して、前記切断対象物を切断する切断装置であって、前記複数のカッターブレードが、夫々切断片移動路を介して平行に固定された前記カッターホルダと、前記スリットと前記切断片移動路に嵌入可能な押出し部材とが、交互に設けられている前記カッターガイドを備え、前記待機姿勢から前記切断姿勢への相対移動にあって、前記カッターブレードが前記スリットに、前記押出し部材が夫々前記切断片移動路に嵌入し、前記カッターブレードの後方で、前記押出し部材の相対移動方向先端側に、前記切断姿勢において、前記切断対象物の切断片が前記押出し部材によって押し出される切断片回収空間を備えた点にある。上記特徴構成において、請求項2に記載されているように、前記カッターホルダ、前記カッターガイドの少なくともいずれか一方を、他方に対して平行移動させる駆動部を備えていることが好ましく、更に、請求項3に記載されているように、前記切断対象物が複数の繊維が束ねられた繊維束であることが好ましい。そして、その作用・効果は以下の通りである。
【0006】請求項1に記載されている前記切断装置では、前記待機姿勢から前記切断姿勢への相対移動にあたって、前記カッターブレードが、前記対象物配設空間に配設された切断対象物を、前記カッターブレードの配置間隔で横方向に平行に切断した後に、前記スリットに嵌入する様に構成され、同時に、前記カッターガイドに備えられた前記押出し部材は、前記切断片移動路に嵌入する様に構成されているため、前記カッターブレードは、従来の切断装置の様に前記切断対象物を掻き取るように押圧切断するのではなく、一方向から前記切断対象物をせん断することとなる。従って、前記切断面が毛羽立ち難くなり、又、切断長が揃った切断片を得ることができる。更に、前記カッターブレードが、接圧ローラー等、切断対象物以外の物に接触しないため、前記カッターブレードの損壊を最小限にとどめることができる。従って、前記カッターブレードの交換寿命を延ばすことも出来る。更に又、前記押出し部材が、その移動方向の後方から、前記切断片をその塊のままで、前記カッターブレードの上面に沿って摺動させるので、カッターブレードの間で目詰まりすることなく、又、前記切断片の塊を分解することなく、前記切断片回収空間に押し出して回収することができる。本発明に係る切断装置は、このように簡単な構成であるため、保守点検が容易である。
【0007】更に、前記カッターホルダ、前記カッターガイドのいずれか一方、又は、双方を、他方に対して平行移動させる駆動部を備えると、前記カッターブレードを、前記スリットに的確に嵌入させることができるので、前記切断対象物の切断をスムーズに行なうことができる。又、同様に、前記押出し部材を、前記切断片移動路に的確に嵌入して、前記対象物配設空間の方向に移動させることができる。こうすると、前記切断対象物の切断片を、その塊のままで、スムーズに前記対象物配設空間まで移動させることができるので、前記切断片が分解して散乱したりし難くなり、回収が容易となる。
【0008】又、上記の切断装置は、複数の繊維が束ねられた繊維束を切断対象物とした場合に上述した作用効果が顕著に表われ、前記繊維束の切断をスムーズに行なうことができるので、ミスカットが生じ難く、又、チョップドストランドが毛羽立ったりし難い。又、同様に、前記切断片移動路に嵌入した前記押出し部材が、前記チョップドストランドを後押しして、スムーズに前記対象物配設空間まで移動させることができるので、前記チョップドストランドが分解したり、散乱したりし難くなって、回収が容易となる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を、切断対象物が、複数の繊維が束ねられた繊維束である場合を例に、図面に基づいて説明する。本発明に係る切断装置は、図1及び図4に示すように、本体11に複数のカッターブレード12を備えたカッターホルダ1と前記カッターブレード12が嵌入可能な形状を有するカッターブレード12の枚数に対応した数のスリット21を備えたカッターガイド2とを備え、一方が他方に対して相対移動することによって、前記カッターブレード12が前記スリット21に対して嵌入又は離脱可能に構成されている。又、前記カッターブレード12が前記スリット21に嵌入せず、前記カッターホルダ1と前記カッターガイド2が離間した待機状態において、前記カッターホルダ1と前記カッターガイド2の間に、切断対象物3が配設される対象物配設空間5を形成している。尚、前記スリット21の深さは、前記カッターブレード12が全幅に亘って嵌入することができるように、前記カッターブレード12の幅より長くする。前記カッターホルダ1には、前記複数のカッターブレード12が、前記切断対象を切断して得られる切断片31の長さに対応した間隔をおいて、夫々切断片移動路13を介して平行に固定されている。又、前記カッターガイド2は、前記スリット21と、前記切断片移動路13に嵌入可能な形状を有する押出し部材22とが、夫々の切断片31の位置に対応するように、交互に設けられている。
【0010】前記切断装置は、図2、3に示すように、前記切断対象物3を切断するときには、前記カッターホルダ1若しくは前記カッターガイド2の少なくともいずれか一方が、他方に対して相対移動して、前記カッターブレード12が前記スリット21内に位置する姿勢(切断姿勢)に変化する。この移動に際しては、前記切断装置に設けられた駆動部4(例えば、空気圧シリンダ)が、前記カッターホルダ1、前記カッターガイド2の少なくともいずれか一方を、他方に対して平行移動させる。前記待機姿勢から前記切断姿勢への相対移動にあっては、前記駆動部4が、前記カッターホルダ1とカッターガイド2とを、前記カッターブレード12の夫々が前記スリット21に嵌入すると同時に、前記押出し部材22の夫々が前記切断片移動路13に嵌入するように移動させる。このようにすると、前記カッターブレード12が前記スリット21方向へ移動しつつ、前記押出し部22により支持された切断対象物3を、所定の長さに切断することができ、(図2参照)、更に、ここで、前記切断対象物3の切断片31は、前記押出し部材22によって、対象物配設空間5内に押し止められるために、前記スリット21内に侵入することができなくなって、目詰まりが起こり難くなる。又、同時に、前記カッターホルダ1又はカッターガイド2、或いは双方の移動によって、前記切断対象物3の切断片31は、前記押出し部材22の相対移動方向先端側に押されるかたちで、その塊のままで分解することなく、前記切断片移動路13を通じて前記カッターブレード12の後方に移動して、切断片回収空間14に運ばれる。そして、前記切断片31は、前記カッターホルダ1、カッターガイド2の下部に設けられた回収部としてのコンベヤ(図示省略)に整然と落下して、回収・運搬される。
【0011】ここで、前記カッターブレード12は、前記切断対象物3以外のものと接触することがないので、摩耗・破損等が生じ難くなっており、その寿命は、従来の切断装置に搭載した場合と比較して長くなる。
【0012】
【実施例】厚み0.45mm、奥行き18mmのカッターブレード12を、3mm間隔で前記厚み方向に80枚積層したカッターホルダ1と、このカッターブレード12の配置に対応して、幅1mm、奥行き30mmのスリット21を、3mm間隔に設けたカッターガイド2とを備え、更に、前記カッターガイド2を駆動するための駆動装置4として空気圧シリンダを備えた切断装置の切断試験を、前記切断対象物3として繊維束を用いて行なった。前記切断対象物3は、ワインダに巻回した状態で、巻き方向に対して直交する方向に切断して長繊維フィラメントの束とし、これを、図1及び4に示すように、アーム6で吊り下げて、前記対象物配設空間5に挿入するように構成した。又、前記切断片31は、前記カッターホルダ1、カッターガイド2の下方に設けた回収部としてのコンベヤ(図示省略)に回収した。
【0013】切断試験に供した繊維束は、繊維径12μmのピッチファイバーからなる未乾燥のストランドであって、溶融した石炭系ピッチを1200ホールノズルから引き出して長繊維フィラメントとし、集束剤を付与しながらワインダに巻き取って作成した。尚、ストランドのフィラメント数は、20000、40000本の2種類とした。
【0014】前記繊維束切断装置に、前記繊維束を供給して切断をおこなった結果、いずれのフィラメント数の繊維束であっても、カッターブレード12の目詰まりは全く起こらず、カットミスの無い長さの揃ったチョップドストランドを製造することが出来た。このとき、ワインダ1巻きの繊維束(230g)を、回収部に回収するのに、16秒を要した。
【0015】〔比較例〕比較例として、カッターブレードを3mm間隔で82枚取り付けたカッターローラーと、表面にウレタンシートを被覆した押さえローラー(直径300mm)とを対向配置し、これれらのローラーの間に、繊維束を挿入可能に構成した繊維束切断装置を用いて、切断実験を行なった。前記カッターローラーと前記押さえローラーとが圧接した状態で高速回転(周速度376m/分)させつつ、これらのローラーの間に、実施例で使用したものと同種のピッチファイバーストランドを連続的に供給して押圧して、前記ピッチファイバーストランドを掻き取るように切断し、チョップドストランドを得た。このとき、ワインダ1巻きの繊維束(230g)を、コンベヤ(回収部)に回収するのに、33秒を要した。このようにして得られたチョップドストランド全体に対するカットミス(長さ3mm〜6mmのチョップドストランド)の割合は、17.5%に達し、又、カッターブレード12の目詰まりも起こっていた。また、チョップドストランドの形状は毛羽立っていたものも多かった。
【0016】〔別実施形態〕以下に別実施形態を説明する。前記駆動部の駆動方式は、空気圧を利用する方式に限定するものではなく、例えば、油圧、電動等で駆動しても良い。フィラメント数の多いストランドを切断する場合、前記カッターブレード12と前記カッターガイド2は繊維束に対して適当な角度、例えば10°〜30°の角度をもって設置しても良い。このように構成することによって、前記カッターブレード12にかかる圧力を低減させて負荷を減らすことができる。上記実施形態において、前記駆動装置4を前記カッターホルダ1側に設けたが、前記カッターガイド2側に設けてあっても良く、前記カッターホルダ1及び前記カッターガイド2の両方に設けてあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る切断装置の姿勢変化を示す断面図
【図2】本願発明に係る切断装置の姿勢変化を示す断面図
【図3】本願発明に係る切断装置の姿勢変化を示す断面図
【図4】本願発明に係る切断装置を示す斜視図
【符号の説明】
1 カッターホルダ
2 カッターガイド
3 切断対象物
4 駆動装置
5 対象物配設空間
12 カッターブレード
13 切断片移動路
14 切断片回収空間
21 スリット
22 押出し部材
31 切断片

【特許請求の範囲】
【請求項1】 待機姿勢において、切断対象物が配設される対象物配設空間の一方の側に複数のカッターブレードを備えたカッターホルダを、他方の側に前記カッターブレードが嵌入可能な複数のスリットを備えたカッターガイドを備えて構成され、前記待機姿勢から、前記カッターホルダと前記カッターガイドの一方が他方に対して、前記カッターブレードが前記スリット内に位置する切断姿勢まで相対移動して、前記切断対象物を切断する切断装置であって、前記複数のカッターブレードが、夫々切断片移動路を介して平行に固定された前記カッターホルダと、前記スリットと前記切断片移動路に嵌入可能な押出し部材とが、交互に設けられている前記カッターガイドを備え、前記待機姿勢から前記切断姿勢への相対移動にあって、前記カッターブレードが前記スリットに、前記押出し部材が夫々前記切断片移動路に嵌入し、前記カッターブレードの後方で、前記押出し部材の相対移動方向先端側に、前記切断姿勢において、前記切断対象物の切断片が前記押出し部材によって押し出される切断片回収空間を備えた切断装置。
【請求項2】 前記カッターホルダ、前記カッターガイドの少なくともいずれか一方を、他方に対して平行移動させる駆動部を備えた請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】 前記切断対象物が複数の繊維が束ねられた繊維束である請求項1又は2に記載の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−179680(P2001−179680A)
【公開日】平成13年7月3日(2001.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−367263
【出願日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】