説明

切断装置

【課題】線状材の端面に擦り疵が生ずるのを防止して、線状材の端面品質を向上し得る切断装置を提供する。
【解決手段】切断装置30は、材料供給部32により供給される線状材Wの下流側の端面56に当接して、該線状材Wを所定位置で停止させるストッパー34と、線状材Wに対し長手方向に交差する方向へ移動して、該線状材Wを切断する切断部36とを備える。また、切断装置30は、ストッパー34を線状材Wの端面56に対し近接離間するよう直線移動させるスライド部38を備える。そして、スライド部38によりストッパー34を線状材Wの端面56から離間させた状態で、切断部36が線状材Wを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切断装置に関し、更に詳細には、供給手段により供給されてストッパー手段により停止された線状材を、切断手段が所定長さに切断する切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、金属材料を金型組により段階的に順次鍛造成形するホーマは、棒材や線材等の線状材を所定長さ毎に切断する切断装置を備えている(特許文献1参照)。図5は、このような従来の切断装置を示す概略図であって、この切断装置10は、図示しない供給部により長手方向(搬送ラインL)に沿って供給される線状材Wに当接するストッパー14と、線状材Wに対し長手方向に交差する方向へ移動可能な切断部16とを備えている。供給部により供給される線状材Wは、下流側の端面18がストッパー14の当接面14aに当接して停止し、前記切断部16が移動することで線状材Wを所定長さに切断するよう構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−33818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記線状材Wは、前記線状材Wの端面をストッパー14で位置決めしたもとで、前記切断部16により線状材Wが切断されることから、切断時におけるストッパー14にとの摺接により線状材Wの端面18に擦り疵が生ずることがある。このように線状材Wの端面18に擦り疵が発生すると、該線状材Wの製品品質が低下する要因となる。
【0005】
そこで、この発明は、従来の技術に係る切断装置に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、線状材の端面に擦り疵が発生するのを防止して、線状材の端面品質の向上を図り得る切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本発明に係る切断装置は、
供給手段により長手方向に沿って供給される線状材の下流側の端面に当接して、該線状材を所定位置で停止させるストッパー手段と、前記線状材に対し長手方向に交差する方向へ移動して、該線状材を切断する切断手段とを備えた切断装置において、
前記線状材の端面に対し近接離間するよう前記ストッパー手段を線状材の長手方向に沿って直線移動させるスライド手段を備え、
前記スライド手段がストッパー手段を線状材の端面から離間させて、前記切断手段が該線状材を切断するよう構成したことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、線状材を切断する前に、ストッパー手段が線状材の端面から直線移動して離間するよう構成したので、切断時や切断後に線状材の端面がストッパー手段に接触するのを防止して、該端面に擦り疵が発生するのを防止し得る。また、ストッパー手段は、線状材の端面から直線移動して迅速に離間するので、ストッパー手段が切断時に変位する線状材の端面と接触するのを確実に回避し得る。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る切断装置によれば、線状材の端面に擦り疵が発生するのを防止して、線状材の端面品質を向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例に係る切断装置が採用されたホーマの全体構成を示す概略図である。
【図2】実施例に係る切断装置を上方から見た状態で示す説明図であって、(a)はカッターロッドが第1位置にある場合を示し、(b)はカッターロッドが第2位置にある場合を示す。
【図3】実施例に係る切断装置の全体構成を示す概略斜視図である。
【図4】実施例に係る切断装置を前方から見た状態で示す説明図である。
【図5】従来の切断装置を示す説明図であって、切断装置が線状材を切断する様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る切断装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明では、切断装置を図3に示す如く見た場合を基準に、「上」、「下」、「前」、「後」と指称することとする。また、線状材の搬送ラインは、線状材の長手方向に沿って設定される。実施例では、線状材として、中実の線状鋼材を切断する場合について説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、実施例に係る切断装置30を備えたホーマ28の全体構成を示す概略図である。図1において、ホーマ28のフレーム29に切断装置30が配置され、該切断装置30における搬送ラインLの上流側に線状材Wの供給源31が設けられている。この供給源31は、線状材Wをコイル状に巻回した状態で貯えている。また、切断装置30と供給源31との間には、供給源31内の線状材Wを切断装置30へ送る材料供給部(供給手段)32が設けられている。すなわち、材料供給部32に貯えられた線状材Wは、材料供給部32の複数の送りローラ32aにより搬送ラインLに沿って強制的に供給されるようになっている。そして、前記切断装置30へ供給された線状材Wは、該切断装置30の切断部36(後述)により所定長さに切断される。なお、図1において、符号35は、供給源31から引出された線状材Wを矯正する矯正機を示す。
【0011】
前記材料供給部32は、図2に示すように、切断装置30に臨む吐出部33を備え、該吐出部33の内部に線状材Wを案内する案内部40が形成されている。この案内部40の下流端には、ドーナツ状の固定カッター44が設けられている。この固定カッター44には、線状材Wの径寸法より僅かに大径の材料供給口42が開口しており、該材料供給口42に挿通された線状材Wが切断部36側へ供給される。そして、固定カッター44の材料供給口42に線状材Wが挿通された状態で、後述する可動カッター52を移動させることにより、該固定カッター44と可動カッター52との剪断作用により線状材Wが切断されるようになっている。
【0012】
図3に示すように、切断装置30は、線状材Wの下流側の端面56に当接して、線状材Wを停止させるストッパー(ストッパー手段)34と、線状材Wに対し搬送ラインLに交差する方向(前後方向)へ移動して、該線状材Wを切断する切断部(切断手段)36と、ストッパー34を搬送ラインLに沿って直線移動させるスライド部(スライド手段)38とを備える。
【0013】
前記切断部36は、線状材Wに対し前後方向に移動するカッターロッド46と、該カッターロッド46の前端面から前方へ延出する薄板状のケース体48とを備える。前記カッターロッド46は、図示しないモータにより、後方の第1位置から前方の第2位置まで往復移動するよう構成されている(図2(a),(b)参照)。前記ケース体48には、図3に示すように、搬送ラインL方向に貫通する円形の開口部50が形成され、該開口部50の内側に線状材Wを切断可能な可動カッター52が設けられている。この可動カッター52は、上流側の端面が前記ケース体48における上流側の端面と同一面を形成している。そして、カッターロッド46の移動時に、前記ケース体48および可動カッター52の上流側の端面が、前記吐出部33の下流側の端面(材料供給口42)の近傍を前後に移動するようになっている。
【0014】
前記可動カッター52には、線状材Wを挿通可能な挿通孔54が搬送ラインL方向に貫通して設けられ、該挿通孔54の上流側の縁部に切削刃(図示せず)が設けられている。カッターロッド46が第1位置にある状態で搬送ラインLが可動カッター52の挿通孔54を通過するよう構成されて、材料供給部32により供給されて前記固定カッター44の材料供給口42を挿通した線状材Wが挿通孔54を介して可動カッター52を貫通し得るようになっている。そして、線状材Wを挿通孔54に貫通させた状態で前記カッターロッド46を第2位置に移動させることで、可動カッター52および固定カッター44の剪断作用により線状材Wが切断されるよう構成される。なお、ケース体48の内部には、線状材Wを把持する把持部(図示せず)が設けられている。この把持部は、切断後の線状材Wを把持して、該線状材Wをカッターロッド46と共に前方へ平行移動させるようになっている(図2(b)参照)。
【0015】
前記ストッパー34は、搬送ラインLの前記切断位置より下流側に臨んで線状材Wの下流側の端面56に当接し、該線状材Wの切断長さを規定するよう構成される。前記ストッパー34における搬送ラインLの上流側に臨む面は、線状材Wの下流側の端面56に当接する当接面58を構成している。ストッパー34は、後述するように、スライド部38により搬送ラインL方向に沿って往復移動可能に構成され、該ストッパー34の当接面58の位置を変位させることで、線状材Wの切断長さを変更し得るようになっている。また、ストッパー34は、線状材Wを切断する前に搬送ラインLの下流側へ僅かに直線移動して、該ストッパー34の当接面58を線状材Wの端面56から離間させるようになっている。すなわち、切断部36は、ストッパー34が線状材Wの端面56から離間した状態で、線状材Wを切断するよう構成される。なお、切断時にストッパー34が線状材Wから離間する量は、例えば、約0.5mmに設定される(図2参照)。
【0016】
前記スライド部38は、図4に示すように、前記ストッパー34が固定されると共に搬送ラインL方向に沿ってスライド可能なスライダー60と、該スライダー60を収容保持するスライドケース62と、スライダー60の駆動原をなすサーボモータ(駆動手段)64とを備えている。前記スライダー60は、上流側に臨む面に連結部60aを介して前記ストッパー34が連結されると共に、下流側の本体部66が前記スライドケース62に設けたスライド口68を介してスライドケース62内に臨んでいる。スライダー60の本体部66には、該本体部66の下流側の端面から上流側へ所要長さ穿設したネジ孔70が設けられている。前記ネジ孔70は、搬送ラインL方向に延在するようスライドケース62内に回転自在に設けられたスクリューネジ72と螺合しており、該スクリューネジ72が回転することで、スライドケース62が直線的にスライドするよう構成される。前記スクリューネジ72は、第1かさ歯車74を備え、該第1かさ歯車74は、後述する伝達軸76の第2かさ歯車78と噛合している。
【0017】
前記スライドケース62の上部には、上下方向に開口する上部開口80が設けられ、該上部開口80を介して伝達軸76の下端がスライドケース62内に臨んでいる。前記伝達軸76は、サーボモータ64の駆動力をスクリューネジ72に伝達するべく機能するものであって、伝達軸76の下端に第2かさ歯車78が、伝達軸76の上端に第3かさ歯車82が夫々設けられている。前記サーボモータ64は、スライドケース62の上方に設けられ、該サーボモータ64の回転軸84が搬送ラインLの上流へ向けて突出している。前記回転軸84の端部に第4かさ歯車86が設けられ、該第4かさ歯車86は前記伝達軸76の第3かさ歯車82に噛合している。
【0018】
すなわち、サーボモータ64により回転軸84が正逆回転されると、第4かさ歯車86および第3かさ歯車82を介して伝達軸76が回転され、更に、第2かさ歯車78および第1かさ歯車74を介してスクリューネジ72が回転する。これにより、スライダー60がスライドして、ストッパー34が搬送ラインL方向に沿って直線移動するよう構成される。なお、以下の説明では、便宜上、ストッパー34が線状材Wの端面56から離間する場合(下流側へ移動する場合)における回転軸84、伝達軸76およびスクリューネジ72の夫々の回転方向を「一方向」とし、ストッパー34が線状材Wの端面56に近接する場合(上流側へ移動する場合)における回転軸84、伝達軸76およびスクリューネジ72の夫々の回転方向を「他方向」とする。
【0019】
(実施例の作用)
次に実施例に係る切断装置30の作用について、以下説明する。なお、初期段階において、カッターロッド46は第1位置に位置しており、可動カッター52の挿通孔54は、搬送ラインLに臨んでいる。また、設定された線状材Wの切断長さに応じて、ストッパー34の当接面58の位置が調整される。前記供給源31内に貯えられた線状材Wは、材料供給部32により搬送ラインLに沿って供給され、固定カッター44の材料供給口42を通過する。更に線状材Wは、可動カッター52の挿通孔54を通過し、線状材Wの端面56がストッパー34の当接面58に当接したところで、前記材料供給部32が線状材Wの供給を停止させる。
【0020】
線状材Wがストッパー34に当接すると、スライド部38が作動して、ストッパー34を線状材Wの端面56から離間させる。すなわち、前記回転軸84が一方向に回転し、該回転軸84の第4かさ歯車86に噛合する第3かさ歯車82が回転することで、伝達軸76が一方向へ回転される。これより、前記第2かさ歯車78に噛合する第1かさ歯車74が回転されて、前記スクリューネジ72が一方向に回転する。そして、スライダー60が搬送ラインLの下流へスライドし、図2(b)に示すように、前記ストッパー34の当接面58が線状材Wの端面56から僅かに離間する。このとき、ストッパー34は、線状材Wの端面56から直線移動して離間するので、ストッパー34の移動時に線状材Wの端面56と摺動することはなく、該端面56に擦り疵が生ずることはない。
【0021】
ストッパー34が線状材Wから離間すると、切断部36による線状材Wの切断が行なわれる。すなわち、前記可動カッター52が、カッターロッド46と共に前方へ移動することで、可動カッター52と固定カッター44との剪断作用により線状材Wが切断される。そして、線状材Wが完全に切断されると、可動カッター52の移動に伴って切断された線状材Wが平行移動される(図2(b)参照)。このとき、ストッパー34は線状材Wの端面56から離間しているので、該ストッパー34の当接面58と切断された線状材Wの端面56とが摺動することはなく、該端面56に擦り疵が生ずることはない。そして、カッターロッド46が第2位置に到来すると、前記把持部は線状材Wを解放し、該線状材Wは次の圧造工程へ移行される。一方、第2位置へ到来したカッターロッド46は、線状材Wを解放した後、後方へ移動して第1位置に復帰する。また、前記サーボモータ64は、前記回転軸84を逆回転させて、前記ストッパー34を初期位置に復帰させる。
【0022】
すなわち、前記回転軸84が他方向へ回転して、前記伝達軸76が回転される。これより、前記スクリューネジ72が他方向へ回転して、前記スライダー60が搬送ラインLの上流側へ移動する。これにより、ストッパー34の当接面58が初期の位置に復帰し、次の線状材Wの端面56が到来するのを待機する。そして、上記と同様にして、線状材Wの切断が繰り返し行なわれる。
【0023】
以上に説明したように、実施例に係る切断装置30によれば、線状材Wを切断する前に、ストッパー34が線状材Wの端面56から直線移動して離間するようにしたので、切断時や切断後に線状材Wの端面56がストッパー34に接触するのを防止し得る。従って、線状材Wの端面56に擦り疵が生ずることがなく、線状材Wの端面品質の向上を図り得る。また、ストッパー34は、直線移動することで、線状材Wの端面56から素早く離間することができるので、切断時に線状材Wの端面56が変位しても、ストッパー34が線状材Wの端面56に接触するのを確実に回避し得る。
【0024】
なお、実施例では、ストッパー34を直線移動させるスライド手段として、スクリューネジ72およびスライダー60からなる構成を採用したが、ストッパー34を直線移動させ得る構成であれば、他の構成を適宜採用可能である。例えば、前記スライダー60を公知のリニアクチュエータによりスライドさせる構成としてもよい。更に、実施例では、線状材Wとして中実の線状材を例示したが、線状材Wとしては、パイプ等の中空材でもよく、また、断面が円形以外の楕円形や多角形であってもよい。更に、実施例では、可動カッター52に把持部を設けて、該可動カッター52の挿通孔54に挿通された線状材Wを把持するよう構成したが、該把持部を省略して可動カッター52の挿通孔54に対して線状材Wを単に挿通する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
32 材料供給部(供給手段),34 ストッパー(ストッパー手段)
36 切断部(切断手段),38 スライド部(スライド手段),56 端面
W 線状材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給手段(32)により長手方向に沿って供給される線状材(W)の下流側の端面(56)に当接して、該線状材(W)を所定位置で停止させるストッパー手段(34)と、前記線状材(W)に対し長手方向に交差する方向へ移動して、該線状材(W)を切断する切断手段(36)とを備えた切断装置において、
前記線状材(W)の端面(56)に対し近接離間するよう前記ストッパー手段(34)を線状材(W)の長手方向に沿って直線移動させるスライド手段(38)を備え、
前記スライド手段(38)がストッパー手段(34)を線状材(W)の端面(56)から離間させて、前記切断手段(36)が該線状材(W)を切断するよう構成した
ことを特徴とする切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−167533(P2010−167533A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12355(P2009−12355)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000149505)大同マシナリー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】