説明

切梁中継具

【課題】切梁側当部の強度が増し、切梁中継具の耐力を向上させることができる切梁中継具を提供する。
【解決手段】本発明の切梁中継具は、裏面が既設構造物の表面に取付けられる一方、表面側にネジ留めナット11a等が設けられた構造物側当板1と、構造物側当板1に対し所定間隔だけ離間して設けられ、切梁取付け端が取付けられる切梁側当板部21と、切梁側当板部21における切梁取付け端とは反対側の裏面から延びる板状補強部22とを有する切梁側当部2と、切梁側当部2を構造物側当板1に対し所定間隔だけ離間させて支持するネジボン3a等と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設構造物と、その既設構造物周囲の壁面に配置された腹起材との間に、切梁を配置するための切梁中継具に関する。
【背景技術】
【0002】
既設構造物の補強のために、例えば、図10に示すように、切梁Dと切梁中継具A等を用いて、コンクリートの既設構造物Bの周囲に、補強用の鉄筋コンクリートである補強コンクリートGを新たに打設する補強方法が採用されている。なお、C1は山留め壁、C2は腹起材、Eは鉄筋である。
このような補強方法の中で、例えば、図11に示すように、構造物側当板100と、切梁側当部200と、複数本の支持脚300と、支持脚固定ネジ310等を有する梁中継具Aを使用して、切梁側当部200と、複数本の支持脚300と、支持脚固定ネジ310等を解体自在に取り付けて、再利用できるようにする補強方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−91780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記背景技術の切梁中継具Aでは、切梁Dに連結される切梁側当部200は、単なる平板状の板を使用しているため、強度が弱く、切梁中継具全体の耐力が小さい、という課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、切梁側当部の強度が増し、切梁中継具全体の耐力を向上させることができる切梁中継具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の切梁中継具は、既設構造物と、その既設構造物周囲の壁面に配置された腹起材との間に、切梁を配置するための切梁中継具であって、前記既設構造物の表面に取付けられる構造物側当板と、前記構造物側当板に対し所定間隔だけ離間して設けられ、前記切梁の取付け端が表面に取付けられる切梁側当板部と、前記切梁側当板部の裏面から立接して設けられた所定高さを有する板状補強部とを有する切梁側当部と、前記構造物側当板と前記切梁側当部とを所定間隔だけ離間して支持する支持棒と、を備えることを特徴とする切梁中継具である。
ここで、前記切梁側当部の板状補強部は、前記切梁側当板部の裏面に、前記切梁側当板部の両側端部に対しほぼ面一になる所定高さを有する両フランジ部と、当該両フランジ部間を結ぶ前記所定高さのウエブ部とが溶接されたH型鋼と、前記H型鋼の両フランジ部間において前記切梁側当板部の裏面に対し垂直方向に延びる板状補強材と、を有するようにすると良い。
また、前記板状補強材は、前記H型鋼のウエブ部に直交し、前記切梁側当板部の裏面に対し垂直方向に延びるように前記切梁側当板部の裏面に溶接された縦方向板状補強材と、前記縦方向板状補強材における前記H型鋼の溶接端とは反対側の他端に溶接され、前記H型鋼のウエブ部と平行に延び、前記支持棒の外径より大きい間隔で、かつ、前記支持棒を前記切梁側当部に固定するためのナットの外形より小さい間隔で配設された横方向板状補強材と、を有するようにすると良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、切梁中継具の切梁側当部は、単なる平板状の当板ではなく、構造物側当板に対し所定間隔だけ離間して設けられ、切梁の取付け端が表面に取付けられる切梁側当板部と、切梁側当板部の裏面から立接して設けられた所定高さを有する板状補強部とを有するので、切梁側当部の強度が増し、切梁中継具全体の耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態の切梁中継具の使用状態の一例を示す全体図である。
【図2】図1に示す本発明の実施の形態の切梁中継具の使用状態を示す端面図である。
【図3】(a),(b)それぞれ、本発明の実施の形態の切梁中継具の組み付け状態の一例を示す平面図、正面図である。
【図4】(a)〜(c)それぞれ、本発明の実施の形態の切梁中継具の組み付け状態の一例を示す左側面図、右側面図、A−A線断面図である。
【図5】(a)〜(e)それぞれ、実施の形態の切梁中継具の切梁側当部の構成例を示す平面図、左側面図、正面図、右側面図、B−B線断面図である。
【図6】(a)〜(c)それぞれ、実施の形態の切梁中継具の切梁側当部の底板部の一例を示す平面図、底板部で使用される中間ナットの平面図、C−C線断面図である。
【図7】(a)〜(d)それぞれ、実施の形態の切梁中継具の構造物側当板の一例を示す正面図、D−D線断面図、構造物側当板に固定されるネジ留めナットの平面図、E−E線断面図である。
【図8】(a),(b)それぞれ、実施の形態の切梁中継具の切梁側当部の板状補強部で使用される締付けナットの平面図、F−F線断面図である。
【図9】実施の形態の切梁中継具の切梁側当部のネジボンの一例を示す正面図である。
【図10】従来の切梁中継具の使用例を示す説明図である。
【図11】従来の切梁中継具の部分を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の切梁中継具Aの一例である、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態の切梁中継具の使用状態の一例を示す全体図、図2は、図1に示す本発明の実施の形態の切梁中継具の使用状態を示す端面図である。
【0011】
図1、図2に示すように、本発明の切梁中継具Aは、例えば、既設構造物Bの周囲にと補強コンクリートGを打設するために、既設構造物Bと、その周囲に配置した山留め壁C1および腹起材C2との間にH型鋼等の切梁Dを配置する場合に、既設構造物Bと切梁Dとの間を中継する部材である。なお、図1、図2に示す状態は、既設構造物Bの周囲に、補強コンクリートGを打設した後の状態を示している。
【0012】
なお、本実施の形態では、図10、図11に示す従来例の切梁中継具とは異なり、図1、図2に示すように、切梁中継具Aが補強コンクリートGに埋もれないように、構造物側当板1と切梁側当部2とを所定間隔だけ離間して支持する支持棒であるネジボン(PC鋼棒)3a〜3dの途中までしか補強コンクリートGを打設していないが、従来例と同様に、切梁中継具A全体が補強コンクリートGに埋もれるようにしても良い。
【0013】
また、本実施の形態では、図1、図2に示すように、本発明の支持棒であるネジボン3a〜3dに補強コンクリートGが直接かからないように、また、配線等を補強コンクリートG内に通したまま埋めて使用するため、それぞれパイプ4a〜4dの中にネジボン3a〜3dや、ネジ留めナット11a〜11d、中間ナット24a〜24dを通して使用している。
【0014】
また、本実施の形態では、図1、図2に示すように、切梁中継具Aの構造物側当板1を既設構造物B内のH型鋼Fに取付けているが、これはあくまで一例であり、従来例と同様に、H型鋼Fのない既設構造物Bのコンクリート部分に取付けるようにしても勿論よい。
【0015】
図3(a),(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態の切梁中継具の組み付け状態の一例を示す平面図、正面図、図4(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の実施の形態の切梁中継具の組み付け状態の一例を示す左側面図、右側面図、A−A線断面図である。なお、図3以降では、適宜、パイプ4a〜4dを省略して示している。
【0016】
本実施の形態の切梁中継具Aは、図3(a),(b)および図4(a)〜(c)に示すように、裏面が既設構造物Bの表面に取付けられる一方、表面側にネジ留めナット11が設けられた構造物側当板1と、補強コンクリートGを流し込み打設するため構造物側当板1に対し所定間隔だけ離間して設けられる切梁側当部2と、構造物側当板1と切梁側当部2とを所定間隔だけ離間して支持する支持棒として4本のネジボン3a〜3dとを有する。
【0017】
本実施の形態の切梁側当部2は、単なる板状の当板ではなく、構造物側当板1に対し所定間隔だけ離間して設けられ、切梁Dの取付け端が表面側に取付けられる切梁側当板部21と、切梁側当板部21の裏面側から立接して設けられた所定高さを有する板状補強部22と、板状補強部22を介し切梁側当板部21の反対側に底板部23と、を有する。
【0018】
ここで、本実施の形態では、切梁側当板部21と板状補強部22とは、後述の図4に示すように予め溶接等により一体化されているが、底板部23は、後述の図6に示すように、切梁側当板部21と板状補強部22と分離して構成されている。ただし、本発明では、底板部23も、切梁側当板部21と板状補強部22に予め溶接等して構成されていても良いし、ネジボン3a〜3dへの切梁側当部2の取り付けに支障がなければ、底板部23を省略しても良い。
【0019】
そして、ネジボン3a〜3dと、構造物側当板1との連結は、後述の図7に示すネジ留めナット11a〜11dにより行われ、ネジボン3a〜3dと切梁側当部2を構成する底板部23との連結は、それぞれ、後述の図6に示す中間ナット24a〜24dと、図8に示す締付けナット25a〜25dとにより行われる。
【0020】
図5(a)〜(e)は、それぞれ、実施の形態の切梁側当部2を構成する切梁側当板部21と板状補強部22との構成例を示す平面図、左側面図、正面図、右側面図、B−B線断面図である。
【0021】
図5(a)〜(e)に示すように、本実施の形態の切梁側当部2を構成する切梁側当板部21と板状補強部22とは、溶接などにより一体化して構成されている。
【0022】
本実施の形態では、切梁側当板部21には、図5(b)に示すように、切梁Dの取り付け孔に対応した3種類の取り付け孔21a1〜21a3,21b1〜21b3、21c1〜21c3、21d1〜21d3が4箇所形成されている。
【0023】
また、板状補強部22は、切梁側当板部21の裏面に、切梁側当板部21の両側端部と両フランジ部22a1,22a2がほぼ面一になるように溶接された所定高さを有するH型鋼22aと、そのH型鋼22aの両フランジ部22a1,22a2間で井桁状に配設された複数の板状補強材22b〜22gとから構成されている。
【0024】
つまり、H型鋼22aは、切梁側当板部21および底板部23の平面とほぼ同じフランジ幅を有するフランジ部22a1,22a2と、フランジ部22a1,22a2をその中間で繋ぐウエブ部22a3とから構成されている。なお、上述したように、切梁DはH型鋼から構成されており、図2に示すように、切梁Dの取付け端と、構造物側当板1、切梁側当板部21、底板部23、既設構造物BのH型鋼Fとが、出っ張りもなく連結されるものとすると、本実施の形態の板状補強部22を構成するH型鋼22aは、切梁DのH型鋼や、既設構造物BのH型鋼Fと同じサイズのH型鋼を使用すると良い。
【0025】
また、複数の板状補強材22b〜22gは、H型鋼22aのウエブ部22a3に直交し、両フランジ部22a1,22a2と平行に延びるように切梁側当板部21の裏面に溶接された縦方向板状補強材22b,22cと、縦方向板状補強材22b,22cにおけるH型鋼22aの溶接端とは反対側の他端に溶接され、H型鋼22aのウエブ部22a3と平行に延び、ネジボン3a〜3dの外径より大きい間隔で、かつ、ネジボン3a〜3dを切梁側当部2に固定するための中間ナット24a〜24dおよび締付けナット25a〜25dの外形より小さい間隔で配設された横方向板状補強材22d〜22gとが井桁状に配設されている。
【0026】
図6(a)〜(c)は、それぞれ、実施の形態の切梁中継具の切梁側当部2の底板部23の一例を示す平面図、底板部23で使用される中間ナットの平面図、C−C線断面図である。なお、中間ナット24a〜24dは、同じものなので、図5(b),(c)では、代表して中間ナット24aのみを図示する。
【0027】
図6(a)に示すように、切梁側当部2の底板部23は、切梁側当板部21と同様の形状であり、ネジボン3a〜3dが挿通されるように、挿通孔22a〜23dが形成されている。なお、切梁側当部2の底板部23は、実施の形態の切梁中継具Aの組み立て時には、図5(a)に示す切梁側当部2の板状補強部22の右側面に配設されることになる。
【0028】
中間ナット24a〜24dは、底板部23を板状補強部22に固定するためのもので、図6(b),(c)に示すように、外側面が先細形状に形成されており、中心には、図6(c)に示すように、それぞれ、ネジボン3a〜3dのネジ山3aと噛み合い、ネジ結合するネジ溝24a1〜24d1が形成されている。そして、中間ナット24a〜24dの最大外形部には、ラチェットハンドルやドライバーの柄等の棒材を挿入して中間ナット24a〜24dを回転させるための係合孔24a2〜24d2が例えば6箇所ずつ設けられている。
【0029】
図7(a)〜(d)は、それぞれ、実施の形態の切梁中継具の構造物側当板の一例を示す正面図、D−D線断面図、構造物側当板に固定されるネジ留めナットの平面図、E−E線断面図である。なお、ネジ留めナット11a〜11dは、同じものなので、図7(b),(c)では、代表してネジ留めナット11aのみを図示する。
【0030】
図7(a)〜(d)に示すように、構造物側当板1には、それぞれ、ネジボン3a〜3dのネジ山3aと噛み合い、ネジ結合するネジ溝11a〜11dを有する4つのネジ留めナット11a〜11dが溶接されて固定されている。
【0031】
そのため、ネジ留めナット11a〜11dは回転させる必要がないので、ネジ留めナット11a〜11dには、中間ナット24a〜24d等と異なり、係合孔が設けられていない。
【0032】
図8(a),(b)は、それぞれ、実施の形態の切梁中継具の切梁側当部の板状補強部で使用される締付けナットの平面図、F−F線断面図である。なお、締付けナット25a〜25dは、同じものなので、図8(a),(b)では、代表して締付けナット25aのみを図示する。
【0033】
締付けナット25a〜25dは、中間ナット24a〜24dとにより、底板部23を板状補強部22に固定するためのもので、図8(b)に示すように、その内周面には、ネジボン3a〜3dのネジ山3aと噛み合い、ネジ結合するネジ溝25a1〜25d1が形成されている。
【0034】
締付けナット25a〜25dの外周面には、ローレット加工等のすべり止め加工がされ、横方向板状補強材23d,23e間および横方向板状補強材23f,23g間の外側で留められる大径部25a2〜25d2と、横方向板状補強材23d,23e間および横方向板状補強材23f,23g間に挿入される小径部25a3〜25d3とが形成されている。そして、大径部25a2〜25d2には、中間ナット24a〜24dと同様に、ラチェットハンドルやドライバーの柄等の棒材を挿入して締付けナット25a〜25dを回転させるための係合孔25a4〜25d4が例えば6箇所ずつ設けられている。
【0035】
図9は、実施の形態の切梁中継具の切梁側当部のネジボンの一例を示す正面図である。なお、ネジボン3a〜3dは、同じものなので、図9では、代表してネジボン3aのみを図示する。
【0036】
図9に示すように、ネジボン3a〜3dの側面には、所定ピッチのネジ山3a1〜3d1が形成されており、ネジ留めナット11a〜11dのネジ溝11a1〜11d1や、中間ナット24a〜24dのネジ溝24a1〜24d1、および締付けナット25a〜25dのネジ溝25a1〜25d1と噛み合い、ネジ結合するように構成されている。
【0037】
<使用方法の一例>
次に、本発明の切梁中継具Aの使用方法の一例について説明する。
【0038】
本発明の切梁中継具Aの使用方法としては、上述のように構成された構造物側当板1、ネジボン3a〜3d、パイプ4a〜4d及び切梁側当部2を事前に工場等で、図3等に示すように組み立てておき(なお、図3では、パイプ4a〜4dは省略しており、図2に示すようにパイプ4a〜4dを使用する。)、組み立てた状態で現場に運んで、既設構造物Bや切梁Dに取り付けるようにしても良いし、または上述のように構成された構造物側当板1、ネジボン3a〜3d、パイプ4a〜4d及び切梁側当部2を現場に運び、現場で組み立てて使用するようにしても良い。ここでは、後者の使用例について説明する。
【0039】
<構造物側当板1の取り付け>
まず、橋脚などの既設構造物Bの表面に構造物側当板1を取り付ける。構造物側当板1は回収するものではないため、どのような取り付け方法によってもよい。例えば、構造物側当板1に貫通孔を開口しておき、既設構造物B内のH型鋼Fまたは既設構造物B表面に形成したナット孔に貫通孔を通してボルトをねじ込んで、構造物側当板1を取り付けたり、接着剤等を使用して取付ける。その後、既設構造物Bの周囲に多数本の鉄筋Eを配置する。
【0040】
<ネジボン3a〜3dの取り付け>
配筋後、構造物側当板1に直交する方向で、4本のネジボン3a〜3dをそれぞれ構造物側当板1に溶接された軸受けナット11a〜11dのネジ溝11a1〜11d1に挿入し回転させてネジ結合により取り付ける。これにより、解体時、構造物側当板1からネジボン3a〜3dの取り外しが簡単となり、ネジボン3a〜3dの再利用が可能となる。なお、必要あれば、図1、図2に示すように、ネジボン3a〜3d等に補強コンクリートGがかからないように、ネジボン3a〜3d等をパイプ4a〜4dの中に通すようにする。
【0041】
<切梁側当部2の取り付け>
次に、ネジボン3a〜3dの他端に、切梁側当部2を取り付ける。本実施の形態では、図4に示すように切梁側当部2の切梁側当板部21と板状補強部22とは予め溶接等により一体化されているが、底板部23は切梁側当板部21と板状補強部22と分離して構成されているため、まずは、ネジボン3a〜3dに中間ナット24a〜24dを通した後、底板部23を通し、その後、一体化された切梁側当板部21と板状補強部22とを通し、最後に、図4(c)に示すように、締付けナット25a〜25da〜245によりネジボン3a〜3dの他端に通り、中間ナット24a〜24dと、締付けナット25a〜25dとを回転させて、一体化された切梁側当板部21と板状補強部22に底板部23を固定させる。
【0042】
その際、中間ナット24a〜24dと締付けナット25a〜25dには、係合孔24a2〜24d2、25a2〜25d2が形成されているので、その係合孔24a2〜24d2、25a4〜25d4にラチェットハンドルの柄等の棒材を挿入して回転して締め付けると、強固に固定することができる。なお、上述したように、構造物側当板1や、ネジボン3a〜3d、パイプ4a〜4d及び切梁側当部2等のここまでの組み立てを事前に工場等で行うようにしても勿論よい。
【0043】
<切梁Dなどの取り付け>
次に、切梁側当部2の反対側に、切梁Dの一端をボルト等により取り付ける。その際、本実施の形態では、図5(b)等に示すように、切梁側当部2の切梁側当部21に、3種類のボルト連結孔21a1〜21d1,21a2〜21d2,21a3〜21d3が形成されているので、切梁Dのボルト連結孔に合うボルト連結孔21a1〜21d1,21a2〜21d2,21a3〜21d3を選択して使用する。
【0044】
<補強コンクリートGの打設>
そして、切梁Dなどの取り付け後、既設構造物Bの表面と、図示しない型枠で形成された面との間に補強コンクリートGを打設する。このため、本実施の形態では、図2に示すように、切梁側当部2は、補強コンクリートGの打設により埋めない。
【0045】
<切梁中継具Aの解体、回収>
補強コンクリートGが硬化すると、図示しない型枠を解体し、補強コンクリートGの表面を養生した後、中間ナット24a〜24dと締付けナット25a〜25dの係合孔24a2〜24d2、25a4〜25d4にラチェットハンドルの柄等の棒材を挿入して、中間ナット24a〜24dと締付けナット25a〜25dを回転して緩め、一体化された切梁側当板部21と板状補強部22や、底板部23、パイプ4a〜4d、中間ナット24a〜24d、締付けナット25a〜25dを取り外し、最後にネジボン3a〜3dを回転して取り外す。
【0046】
その結果、既設構造物Bの表面には、補強コンクリートGにより埋まった、ネジ留めナット11a〜11dが溶接された構造物側当板1が残り、取り外した中間ナット24a〜24dや、締付けナット25a〜25d、一体化された切梁側当板部21と板状補強部22、底板部23、ネジボン3a〜3d等は、回収して、再利用することが可能となる。
【0047】
なお、パイプ4a〜4dや、ネジボン3a〜3dを取り外した箇所は、空洞が形成されているので、その空洞を埋める。
【0048】
従って、本実施の形態の切梁中継具Aによれば、切梁側当部2は、単なる平板状の当板ではなく、構造物側当板1に対し所定間隔だけ離間して設けられ、切梁Dの取付け端が表面に取付けられる切梁側当板部21と、切梁側当板部21の裏面から立接して設けられた所定高さを有する板状補強部22とを有する切梁側当部2とを有するので、切梁側当部2の強度が増し、切梁中継具A全体の耐力を向上させることができる。
【0049】
特に、本実施の形態では、切梁側当部2の板状補強部22は、切梁側当板部21の裏面に、切梁側当板部21の両側端部に対しほぼ面一になる所定高さを有する両フランジ部22a1,22a2と、当該両フランジ部22a1,22a2間を結ぶ所定高さのウエブ部22a3とが溶接されたH型鋼22aと、H型鋼22aの両フランジ部22a1,22a2間において当該両フランジ部22a1,22a2と平行に延びる板状補強材22b〜22gとを有するので、さらに切梁側当部2の強度が増しており、切梁中継具Aの耐力を向上させることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、板状補強材22b〜22gは、H型鋼22aのウエブ部22a3に直交し、両フランジ部22a1,22a2と平行に延びるように切梁側当板部21の裏面に溶接された縦方向板状補強材22b,22cと、縦方向板状補強材22b,22cにおけるH型鋼22aの溶接端とは反対側の他端に溶接され、H型鋼22aのウエブ部22a3と平行に延び、ネジボン3a〜3dの外径より大きい間隔で、かつ、ネジボン3a〜3dを切梁側当部2に固定するための中間ナット24a〜24dおよび締付けナット25a〜25dの外形より小さい間隔で配設された横方向板状補強材22d〜22gとを井桁状に配設しているので、少ない板状補強材22b〜22gで効率的に切梁側当部2の強度が増しており、切梁中継具Aの耐力を向上させている。
【0051】
なお、上実施の形態の切梁中継具Aでは、4本のネジボン3a〜3dにより、切梁側当部2と構造物側当板1とを連結するように説明したが、本発明では、これに限らず、6本や8本等の4本より多くても、少なくても勿論よい。
【0052】
また、上実施の形態の切梁中継具Aでは、板状補強部22を、切梁側当板部21の裏面に立接して溶接されたH型鋼22aと、そのH型鋼22aの両フランジ部22a1,22a2間で井桁状に配設された複数の板状補強材22b〜22gにより説明したが、本発明ではこれに限らず、切梁側当板部21の裏面から立接して設けられた所定高さを有する板状補強部であれば、H型鋼22aだけでも、あるいは複数の直線状あるいは曲線形状、円形状の板状補強材だけでも良く、要は、梁側当板部21の裏面に立接して設けられた所定高さを有する板状補強部であれば良い。
【符号の説明】
【0053】
1 構造物側当板
2 切梁側当部
21 切梁側当板部
22 板状補強部
22a H型鋼
22a1,22a2 フランジ部
22a3 ウエブ部
22b,22c 縦方向板状補強材
22d〜22g 横方向板状補強材
23 底板部
3a〜3d ネジボン
4a〜4d パイプ
A 切梁中継具
B 既設構造物
C1 山留め壁
C2 腹起材
D 切梁
E 鉄筋
F H型鋼
G 補強コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物と、その既設構造物周囲の壁面に配置された腹起材との間に、切梁を配置するための切梁中継具であって、
前記既設構造物の表面に取付けられる構造物側当板と、
前記構造物側当板に対し所定間隔だけ離間して設けられ、前記切梁の取付け端が表面に取付けられる切梁側当板部と、前記切梁側当板部の裏面から立接して設けられた所定高さを有する板状補強部とを有する切梁側当部と、
前記構造物側当板と前記切梁側当部とを所定間隔だけ離間して支持する支持棒と、
を備えることを特徴とする切梁中継具。
【請求項2】
請求項1記載の切梁中継具において、
前記切梁側当部の板状補強部は、
前記切梁側当板部の裏面に、前記切梁側当板部の両側端部に対しほぼ面一になる所定高さを有する両フランジ部と、当該両フランジ部間を結ぶ前記所定高さのウエブ部とが溶接されたH型鋼と、
前記H型鋼の両フランジ部間において前記切梁側当板部の裏面に対し垂直方向に延びる板状補強材と、
を有することを特徴とする切梁中継具。
【請求項3】
請求項2記載の切梁中継具において、
前記板状補強材は、
前記H型鋼のウエブ部に直交し、前記切梁側当板部の裏面に対し垂直方向に延びるように前記切梁側当板部の裏面に溶接された縦方向板状補強材と、
前記縦方向板状補強材における前記H型鋼の溶接端とは反対側の他端に溶接され、前記H型鋼のウエブ部と平行に延び、前記支持棒の外径より大きい間隔で、かつ、前記支持棒を前記切梁側当部に固定するためのナットの外形より小さい間隔で配設された横方向板状補強材と、
を有することを特徴とする切梁中継具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−1953(P2012−1953A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136973(P2010−136973)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(390003470)大和建工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】