切花輸送用容器及び切花輸送用容器の組立キット
【課題】 簡単な構造で組み立てが容易であり、コストが安価な切花輸送用容器を提供すること及び簡単な構造で組み立てが容易で、安価な、転倒の際水の漏出が防げる切花輸送用容器用のプラスチックシート製貯水容器を提供すること。
【解決手段】 切花輸送用容器は、段ボール製の箱型収容部1と該収容部内の下部2の周壁3に直接固定したプラスチックシート製貯水容器4とからなる。かかる切花輸送用容器は、箱型収容部1が、矩形状の上下の端面と、該端面をつないで固定された3側面と、該3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、該開閉可能な1側面の下部は該蓋から切り離されて該下の端面と該3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなる。また、その貯水容器4が開口部5周辺に折り返し部7を形成したものである。連接部9を設けると、切花を袋に差し込むのと同時に袋内に折り込むことができる。
【解決手段】 切花輸送用容器は、段ボール製の箱型収容部1と該収容部内の下部2の周壁3に直接固定したプラスチックシート製貯水容器4とからなる。かかる切花輸送用容器は、箱型収容部1が、矩形状の上下の端面と、該端面をつないで固定された3側面と、該3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、該開閉可能な1側面の下部は該蓋から切り離されて該下の端面と該3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなる。また、その貯水容器4が開口部5周辺に折り返し部7を形成したものである。連接部9を設けると、切花を袋に差し込むのと同時に袋内に折り込むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花の輸送に使用する切花輸送用容器に関し、例えば、切り取った生花を採取地から消費地まで輸送する際に使用する切花輸送用容器及び切花輸送用容器の組立キットに関するものであって、詳しくはダンボール箱とプラスチックシート製の貯水袋とを組み合わせ、簡便かつ長時間切花を保護し輸送できる切花輸送用容器及び切花輸送用容器の組立キットを提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、花卉類の需要が増えており、広く市場に流通しているが、生産地が遠方にあることも多く、生産地から消費地までは、航空機、船舶、列車、トラック等の輸送手段で適宜輸送されている。このような場合に、傷みやすい花卉類としては、花同士や他物との接触あるいは水分の不足を防ぎ、安全に保護しつつ輸送できる切花輸送用容器が望まれている。
【0003】
切花の輸送は当初、生産地で採取した生花を消費地まで運搬するために、普通の段ボール箱が使用され、採取された生花を薄紙又は薄手のプラスチックシート等でくるみ、押しつぶされないように、段ボール箱に収納して輸送していた。ところがこのような方法では、輸送中に花やつぼみが圧迫されて生花の痛みが激しく、長時間に及ぶ輸送の後、消費地にて輸送箱から取り出したときには生花の何割かが痛みにより商品価値を失っていて、廃棄処分にされることが常態となっていた。
【0004】
そこで最近では、箱の中に花瓶などにさした生花を立てて収容し、水分を補給しながら輸送することにより、花を傷めないで、かつ長期間にわたり新鮮な状態を維持しながら輸送することができる花卉用の輸送箱が考えられている。
【0005】
例えば、図11は、特許文献1に開示された、生花の鮮度を保持するために、花の茎を水又は栄養剤等の水溶液の中に漬けたまま運搬する段ボール容器101である。これは段ボール箱102の下部に花を垂直に固定するための花束支持部103を設け、内面側が水分保持能力を有し外面側が防水性フィルムからなる鮮度保持シート104でくるみ束ねられた花卉等105を花束支持部103の穴106に挿入するものである。鮮度保持シート104に包んだ上に鮮度保持シート104の上部を紐などでくくらねばならず作業工数を要した。また、特殊な防水性フィルムからなる鮮度保持シート104を使用するためにコスト高となっていた。
【0006】
また図12のように、段ボール箱112の下部に花を垂直に固定するための花束支持部113を設け、花束支持部113の段ボール製支持体114の裏に貯水用容器としてポリエチレンの袋115を貼り付けたものがあり、段ボール製支持体114に設けた注水口116の周りにポリエチレンの袋115の口を貼り付けている。このものは、注水口116の周りは放射状に複数の切れ目117と折れ線118が入れられていて袋内に折り返されて折り返し片119を形成しており、段ボール容器111が倒れた場合でもすぐに水が漏れることがないようになされている。120は花束支持部の間隔保持材である。かかる場合は、輸送中も給水されており、消費地到着後の水揚げが不要なので、すぐ店頭に並べることができる利点もある。この箱は使いきりのため、バクテリアが発生しにくく、花の寿命や商品価値の維持にも好ましく、かつ段ボールはリサイクルも容易であるという利点がある。しかしながら、このような切花輸送用容器は、製造に当たり段ボール製支持体114のコストや、その注水口116のまわり四周にポリエチレンの袋の口を貼り付け、折り返し片119を折り込むのに工数がかかる。内部に水を蓄えるために、段ボールに水が掛かると強度が落ちるので、段ボール容器111が倒れた時に水が掛かって強度が落ちるのを防ぐため段ボールの表面に撥水加工を施さなければならない、などの理由で高価になる欠点があった。
【0007】
さらに、輸送時に生じやすい転倒のときも、栄養液や保水用の水が挿入口から外部に漏れ出すことがなく、逆流を防止する構造を備えた、取り扱いやすい切花用逆流防止付保水袋や花用輸送用容器として特許文献2や特許文献3のものがある。
【0008】
図13に示す、特許文献2に開示された切花用逆流防止付保水袋121は、主部袋122の内面と挿入筒部123の外面が重なり合う部分は、挿入筒部内側が筒状になるように接合してシール124し一体化したものである。切花が横転した際には主部袋122も一緒に倒れるが、主部袋122のうちの水125などは主部袋122と挿入筒部123の空間に流れ込んで勢いが弱められ、外部に漏出するのを防止するようになっている。
【0009】
また、図14に示す特許文献3に開示された花用輸送用容器は、プラスチック成形品であり、生花の保水用の水を貯留する容器本体130と、生花の束を容器本体130の底面131に対して起立状態で保持するとともに転倒時には容器本体130から水が漏出するのを防止する蓋140とを備え、容器本体130は、上面に開口部132を設け、蓋140は容器本体130の開口部132に対し水密状態に装着可能とし、容器本体130内へ延びる生花保持筒141を設けて、転倒時に水の全量が容器本体130と生花保持筒141との間の空間に滞留するようにしたものである。
【0010】
【特許文献1】実開平5−19169号公報
【特許文献2】特開2003−116346号公報
【特許文献3】特開2004−59041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献に記載の従来技術においては、主部袋と挿入筒部の周囲を接着することが必要であったり、あるいは複数の部材で構成される複雑で精密な金型を要するプラスチック成形品であったりして、いずれも製造コストが掛かり、高価になるという問題がある。
【0012】
本願の発明者は前記の問題点を解決すべく種々検討を行った結果、段ボール製の花束保持部を設けずに、保水性を備えたプラスチックシートで構成し折り返し部を備えた袋を直接に箱型容器の周囲の壁に固定すれば、簡単な構造であるから切花輸送用容器は安価に製造でき、切花に給水しながら安全に運送することができることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0013】
そこで、本発明は簡単な構造で組み立てが容易であり、コストが安価な切花輸送用容器を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は簡単な構造で組み立てが容易で、安価な、転倒の際は水の漏出が防げる切花輸送用容器用のプラスチックシート製貯水容器を提供することを目的とする。
【0015】
更にまた、本発明は段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせた切花輸送用容器の組立キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、以下の手段により達成できる。すなわち、本発明の請求項1にかかる切花輸送用容器は、段ボール製の箱型収容部と該収容部内の下部の周壁に直接固定したプラスチックシート製貯水容器とからなることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の切花輸送用容器において、前記箱型収容部が、矩形状の上下の端面と、該端面をつないで固定された3側面と、該3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、該開閉可能な1側面の下部は該蓋から切り離されて該下の端面と該3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の切花輸送用容器において、前記箱型収容部は、プラスチックシート製貯水容器を固定した下部が切り離し可能になされていることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が開口部周辺に折り返し部を形成したことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が2枚の四角形のシートを張り合わせ、その所定の角を切除して開口部とした袋状のものであることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項6にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺を開口部とした袋状をなすものであることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項7にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部を設けた袋状となし、該開口部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項8にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、2箇所以上の開口部を設けた袋状となし、該開口部に挟まれた連接部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項9にかかる発明は、請求項8に記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器の該開口部に挟まれた連接部が、生花を該袋に差し込むことにより同時に袋内に折り込まれることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項10にかかる切花輸送用容器の組立キットは、請求項1乃至9のいずれかに記載の段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によると、段ボール製の箱型収容部のその収容部内の下部の周壁にプラスチックシート製貯水容器を直接固定したので、段ボール製支持体が不要であり、構造が簡単で、コストが安い、切花輸送用容器を提供できる。
【0027】
請求項2の発明によると、切花輸送用容器の収容部が、矩形状の上下の端面と、その端面をつないで固定された3側面と、その3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、開閉可能な1側面の下部は蓋から切り離されて下の端面と3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなる箱型であり、この箱型収容部の下部は4面が固定されていて丈夫であり、その内面周壁にプラスチックシート製貯水容器を直接固定しても堅固に支持できるので、構造が簡単で、コストが安い切花輸送用容器を提供できる。
【0028】
請求項3の発明によると、切花輸送用容器の箱型収容部のプラスチックシート製貯水容器を固定した下部が容易に切り離しできるようになされていることにより、その下部を切り離すことでそのまま展示できるので、花瓶などを準備する必要がなく簡便でかつ安価に切花の展示を行うことができる。
【0029】
請求項4の発明によると、貯水容器の開口部周辺にその容器の折り返し部を形成したことにより、切花輸送用容器の転倒の際などに水などの漏出を防ぐことができる、簡単な構造で組み立てが容易な、安価な、切花輸送用容器用のプラスチックシート製貯水容器を提供することができる。
【0030】
請求項5の発明によれば、貯水容器が2枚の四角形のシートを張り合わせ、その所定の角を切除して開口部とした袋状のものであることにより、貯水容器はきわめて簡単に製造でき、安価なものが提供できる。
【0031】
請求項6の発明によれば、貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺を開口部とした袋状をなすものであることにより、箱型収容部の下部周壁に貼り付ける際、下部空間に適応する形態にすることができるので、より強固に下部周壁に固定できる。
【0032】
請求項7の発明によれば、貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部を設けた袋状となし、その開口部を袋内に折り込んだものであることにより、箱型収容部の下部周壁に貼り付ける際、下部空間に適応する形態にすることができ、かつ簡単に折り返し部が形成できるので、より強固に下部周壁に固定できるとともに、水の漏出を防ぐことができる。
【0033】
請求項8の発明によれば、貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくとも2箇所の開口部を設けた袋状となし、開口部に挟まれた連接部を袋内に折り込んだものであるので、折り返し部が丈夫でかつ連接部が生花の茎に押さえられて安定し、開口部の大きさも調節しやすく、給水状態が加減できる。
【0034】
請求項9の発明によれば、貯水容器の開口部に挟まれた連接部が、生花を差し込むことにより同時に折返し部として貯水容器の袋内に折込まれるので、わざわざ折り返し作業を行う必要がなく、作業工数が低減できる。
【0035】
請求項10の発明によれば、段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせた切花輸送用容器の組立キットとしたので、流通過程において小規模生産者や、町の花屋が簡単に組み立てることができるので、切花輸送容器として広い用途が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための切花輸送用容器及び切花輸送用容器の組立キットを例示するものであって、本発明をこの態様に限定することを意図するものではなく、種々の変更が可能であり、特許請求の範囲に包含されるその他の実施態様のものにも及ぶことは言うまでもない。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明にかかる切花輸送用容器の構造の概要を説明する斜視図、図2は図1に示す切花輸送用容器の一部を破断してプラスチックシート製貯水容器の取り付け状態を説明する斜視図、図3はプラスチックシート製貯水容器の一実施例を示す平面図であり、図4は図3のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。図5はプラスチックシート製貯水容器の第二の実施例を示す平面図である。図6はプラスチックシート製貯水容器の第三の実施例を示す平面図であり、図7は図6のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。また、図8はプラスチックシート製貯水容器の第四の実施例を示す平面図であり、図9は図8のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。図10は箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器のキットである第五の実施例を示す斜視図である。
【0038】
本発明の切花輸送用容器は、図1に示すように、段ボール製の箱型収容部1と収容部内の下部2の周壁3に直接固定したプラスチックシート製貯水容器4とからなる。
【0039】
切花輸送用容器の箱型収容部1は、矩形状の上下の端面11a、11bと、両端面11a、11bをつないで固定された3側面11c、11d、11eと、それら3側面の端に位置する11eの1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面11fとを有している。開閉可能な1側面11fの下部11gは、蓋11fから切り離されて下の端面11bと3側面11c、11d、11eのうちの2側面11c、11eに固定され、プラスチックシート製貯水容器4の収容部を形成する。
【0040】
さらに、箱型収容部1には、プラスチックシート製貯水容器4を固定した下部2が容易に切り離しできるように、箱型収容部1を一巡するミシン目11hなどを開閉可能な1側面11fの下部11gと蓋11fの境目付近から延長して設けるようにしても良い。例えば図1においては、二筋のミシン目11hの間を引っ張って取り除き、分離できるようにしてある。このように、プラスチックシート製貯水容器4を固定した箱型収容部1の下部が容易に切り離しできるようになされていることにより、輸送の目的地に到達後は、切花輸送用容器の箱型収容部1がその下部を切り離して生花の展示にそのまま使用できるので、花瓶などを準備する必要がなく、簡便でかつ経済的に生花の展示を行うことができる。
【0041】
プラスチックシート製貯水容器4は、従来のように注水口やその周りの折り返し部を形成したダンボール製の花束支持部を用いないで、あるいはプラスチック製の堅固な成形品ではなく、開口部5を有する簡単な構造のプラスチックシート製の袋であり、図2に示すように、箱型収容部1の下部2の内側周壁3に本体の袋を直接接着剤や両面接着テープなどの固定手段6によって固定される。貯水容器4は開口部5周辺に折り返し部7が形成してある。
【0042】
貯水容器4は、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニールなどの柔軟性と防水性のあるプラスチックシートを張り合わせて製造したものであり、例えば図3に示したように、2枚の四角形のシートをシール部4aで張り合わせ、その所定の角を切除し開口部5とした五角形の袋状のものである。この貯水容器4は、図4に使用状態を示したように、開口部5を中心に袋の一部を、点線で示した折り返し点4cから袋の中に折り返すことにより、漏斗状の折り返し部7を形成する。袋の角の部分4bは接着剤などで箱型収容部1の内壁に固定され、水や栄養液8などが注入された後、複数本の切花や花束が挿入され、切り口が水や栄養液8などに浸漬され必要な水分が供給される。何らかの理由で切花輸送用容器1が転倒すると、水や栄養液8は貯水容器4の袋部分と折り返し部7との間にとどまり、外に漏れることが防止される。なお、水などの注入量は、花の種類、量、輸送期間、季節等を考慮して設定されるが、貯水容器4が倒れて横向きになっても開口部5からあふれない程度にしておく。
【0043】
図5は、プラスチックシート製貯水容器の第二の実施例を示す平面図である。貯水容器4が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、その1辺を開口部5とした袋状をなすものである。図5では六角形に裁断し、その5つの辺をシールした袋としたもので、底面に水平方向のシール部分4aがある。この袋は、点線部分4cで開口部5側が袋内に折り返しが行われ、漏斗状の折り返し部7が形成される。多角形の形状は任意であるが、貯水容器4が、2枚の多角形の防水性プラスチックのシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部5を設けた袋状となし、開口部5を袋内に折り込む場合に、作業のし易い形体が望ましい。
【0044】
図6乃至図9は、プラスチックシート製貯水容器4の第三、第四の実施例とその使用状態を示す説明図である。これらの実施例は、貯水容器4を2枚の多角形のシートを張り合わせて、そのうちの少なくとも2辺の一部に開口部5a、5bを設けた袋状となし、開口部5a、5bに挟まれた連接部9を袋内に折り込んだものである。図6では六角形で頂辺の部分がシールされ連接部9となり、これを挟んだ二辺の一部に開口部5a、5bが設けられている。図8の貯水容器4は、本体の六角形の一辺に小さな四角形を延長して設けたもので、小さな方の四角形のシールされた連接辺9を挟んで対向する2辺が開口部5c、5dとなっている。また、この開口部5a、5b(5c、5d)に挟まれた連接部9に近接する位置には貫通穴5fがそれぞれ設けられている。
【0045】
これらの貯水容器4においては、その開口部に挟まれた連接部9を、切花を袋に差し込むのと同時に袋内に折り込むことができるので、予め折り返し作業をやっておく必要がなく、折り返し作業の工数が不要であり、節減できる。殊に、図8の貯水容器4では本体部の開口5eが小さくなっていて、切花を挿入した場合に花束の支持に便利である。また開口部5c、5dが二つであり、その大きさを加減して、切花輸送用容器が転倒した際の水や水溶液8の移動を制御することができる。また、貫通穴5fが設けられていることにより、切花輸送用容器が開口部5a、5b(5c、5d)方向に直交する方向に転倒した場合であっても貯水容器4内の水がこぼれにくくなる。
【0046】
上記の実施例にかかわらず、箱型収容部は、そのサイズや形体は輸送する切花の種類や量に応じて適宜設定することができる。又、貯水容器の形体も、2枚のプラスチックシートを、箱型収容部の下部に納まり易い様々な形体に裁断して張り合わせ製造することができる。また、貯水容器4の内面の一部分又は全面に、銀、銅、酸化チタンなどの抗菌作用のある物質の皮膜を設けたり、あるいは前記物質を直接貯水容器4内部に貼付しておけば、その殺菌作用により内部の水は長期間きれいな状態に保たれるので、輸送中あるいはその後の展示中の生花を長持ちさせることが可能になる。
【0047】
段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とは、組み合わせて切花輸送用容器のキットにして、生産農家や花屋などが保有しておけば、必要時に組み立てて使用することができる。その場合には、分離して保有することもできるが、図10に示したように、箱型収容部1の周囲壁の固定手段6(図2参照)うち、2箇所(図10では6a)においてのみプラスチックシート製貯水容器4を貼り付けたものを折り畳んで保有しておき、組み立ての際に残りの周囲壁(図10では6b)に貼り付けるようにしてもよい。従来のものは花束を支持する段ボール製の支持体が必要であったので、一体での折り畳みはできなかったが、本実施例の切花輸送用容器においては箱型収容部1の箱体とプラスチックシート製貯水容器4のみで構成されているので、プラスチックシート製貯水容器4を組み込んだ状態でかさばることなく一体に折り畳むことができる。よって、かかる切花輸送用容器の組立キットによれば、構造が簡単であるので取り扱いが容易で組み立て作業を迅速、的確かつ効率的に行うことができる。また、このような構造によれば、花屋の店頭などでも簡単に組み立てることができると共に組立キット自体を保有する際にもその保管が容易になる。
【0048】
このように、本発明に係る切花輸送用容器によると、防水塗層を施した段ボールの花束支持部を要せず、簡単な構造であり、安いコストで製造することができ、切花に給水しながら安全に運送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は本発明にかかる切花輸送用容器の構造の概要を説明する斜視図である。
【図2】図2は図1に示す切花輸送用容器の一部を破断してプラスチックシート製貯水容器の取り付け状態を説明する斜視図である。
【図3】図3はプラスチックシート製貯水容器の一実施例を示す平面図である。
【図4】図4は図3のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。
【図5】図5はプラスチックシート製貯水容器の第二の実施例を示す平面図である。
【図6】図6はプラスチックシート製貯水容器の第三の実施例を示す平面図である。
【図7】図7は図6のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。
【図8】図8はプラスチックシート製貯水容器の第四の実施例を示す平面図である。
【図9】図9は図8のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。
【図10】図10は箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器のキットである第五の実施例を示す斜視図である。
【図11】図11は従来の花卉用の輸送箱の一例を示すものである。
【図12】図12は従来の他の花卉用の輸送箱の構造説明図である。
【図13】図13は従来の逆流を防止する構造を備えた切花用逆流防止付保水袋の斜視図である。
【図14】図14は従来の生花用輸送用容器が転倒した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 箱型収容部
2 収容部内の下部
3 周壁
4 貯水容器
5、5a〜5d 開口部
5f 貫通孔
6、6a、6b 固定手段
7 折り返し部
8 水、栄養液
9 連接部
11a、11b 上下の端面
11c、11d、11e 側面
11f 蓋
【技術分野】
【0001】
本発明は、花の輸送に使用する切花輸送用容器に関し、例えば、切り取った生花を採取地から消費地まで輸送する際に使用する切花輸送用容器及び切花輸送用容器の組立キットに関するものであって、詳しくはダンボール箱とプラスチックシート製の貯水袋とを組み合わせ、簡便かつ長時間切花を保護し輸送できる切花輸送用容器及び切花輸送用容器の組立キットを提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、花卉類の需要が増えており、広く市場に流通しているが、生産地が遠方にあることも多く、生産地から消費地までは、航空機、船舶、列車、トラック等の輸送手段で適宜輸送されている。このような場合に、傷みやすい花卉類としては、花同士や他物との接触あるいは水分の不足を防ぎ、安全に保護しつつ輸送できる切花輸送用容器が望まれている。
【0003】
切花の輸送は当初、生産地で採取した生花を消費地まで運搬するために、普通の段ボール箱が使用され、採取された生花を薄紙又は薄手のプラスチックシート等でくるみ、押しつぶされないように、段ボール箱に収納して輸送していた。ところがこのような方法では、輸送中に花やつぼみが圧迫されて生花の痛みが激しく、長時間に及ぶ輸送の後、消費地にて輸送箱から取り出したときには生花の何割かが痛みにより商品価値を失っていて、廃棄処分にされることが常態となっていた。
【0004】
そこで最近では、箱の中に花瓶などにさした生花を立てて収容し、水分を補給しながら輸送することにより、花を傷めないで、かつ長期間にわたり新鮮な状態を維持しながら輸送することができる花卉用の輸送箱が考えられている。
【0005】
例えば、図11は、特許文献1に開示された、生花の鮮度を保持するために、花の茎を水又は栄養剤等の水溶液の中に漬けたまま運搬する段ボール容器101である。これは段ボール箱102の下部に花を垂直に固定するための花束支持部103を設け、内面側が水分保持能力を有し外面側が防水性フィルムからなる鮮度保持シート104でくるみ束ねられた花卉等105を花束支持部103の穴106に挿入するものである。鮮度保持シート104に包んだ上に鮮度保持シート104の上部を紐などでくくらねばならず作業工数を要した。また、特殊な防水性フィルムからなる鮮度保持シート104を使用するためにコスト高となっていた。
【0006】
また図12のように、段ボール箱112の下部に花を垂直に固定するための花束支持部113を設け、花束支持部113の段ボール製支持体114の裏に貯水用容器としてポリエチレンの袋115を貼り付けたものがあり、段ボール製支持体114に設けた注水口116の周りにポリエチレンの袋115の口を貼り付けている。このものは、注水口116の周りは放射状に複数の切れ目117と折れ線118が入れられていて袋内に折り返されて折り返し片119を形成しており、段ボール容器111が倒れた場合でもすぐに水が漏れることがないようになされている。120は花束支持部の間隔保持材である。かかる場合は、輸送中も給水されており、消費地到着後の水揚げが不要なので、すぐ店頭に並べることができる利点もある。この箱は使いきりのため、バクテリアが発生しにくく、花の寿命や商品価値の維持にも好ましく、かつ段ボールはリサイクルも容易であるという利点がある。しかしながら、このような切花輸送用容器は、製造に当たり段ボール製支持体114のコストや、その注水口116のまわり四周にポリエチレンの袋の口を貼り付け、折り返し片119を折り込むのに工数がかかる。内部に水を蓄えるために、段ボールに水が掛かると強度が落ちるので、段ボール容器111が倒れた時に水が掛かって強度が落ちるのを防ぐため段ボールの表面に撥水加工を施さなければならない、などの理由で高価になる欠点があった。
【0007】
さらに、輸送時に生じやすい転倒のときも、栄養液や保水用の水が挿入口から外部に漏れ出すことがなく、逆流を防止する構造を備えた、取り扱いやすい切花用逆流防止付保水袋や花用輸送用容器として特許文献2や特許文献3のものがある。
【0008】
図13に示す、特許文献2に開示された切花用逆流防止付保水袋121は、主部袋122の内面と挿入筒部123の外面が重なり合う部分は、挿入筒部内側が筒状になるように接合してシール124し一体化したものである。切花が横転した際には主部袋122も一緒に倒れるが、主部袋122のうちの水125などは主部袋122と挿入筒部123の空間に流れ込んで勢いが弱められ、外部に漏出するのを防止するようになっている。
【0009】
また、図14に示す特許文献3に開示された花用輸送用容器は、プラスチック成形品であり、生花の保水用の水を貯留する容器本体130と、生花の束を容器本体130の底面131に対して起立状態で保持するとともに転倒時には容器本体130から水が漏出するのを防止する蓋140とを備え、容器本体130は、上面に開口部132を設け、蓋140は容器本体130の開口部132に対し水密状態に装着可能とし、容器本体130内へ延びる生花保持筒141を設けて、転倒時に水の全量が容器本体130と生花保持筒141との間の空間に滞留するようにしたものである。
【0010】
【特許文献1】実開平5−19169号公報
【特許文献2】特開2003−116346号公報
【特許文献3】特開2004−59041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献に記載の従来技術においては、主部袋と挿入筒部の周囲を接着することが必要であったり、あるいは複数の部材で構成される複雑で精密な金型を要するプラスチック成形品であったりして、いずれも製造コストが掛かり、高価になるという問題がある。
【0012】
本願の発明者は前記の問題点を解決すべく種々検討を行った結果、段ボール製の花束保持部を設けずに、保水性を備えたプラスチックシートで構成し折り返し部を備えた袋を直接に箱型容器の周囲の壁に固定すれば、簡単な構造であるから切花輸送用容器は安価に製造でき、切花に給水しながら安全に運送することができることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0013】
そこで、本発明は簡単な構造で組み立てが容易であり、コストが安価な切花輸送用容器を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は簡単な構造で組み立てが容易で、安価な、転倒の際は水の漏出が防げる切花輸送用容器用のプラスチックシート製貯水容器を提供することを目的とする。
【0015】
更にまた、本発明は段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせた切花輸送用容器の組立キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、以下の手段により達成できる。すなわち、本発明の請求項1にかかる切花輸送用容器は、段ボール製の箱型収容部と該収容部内の下部の周壁に直接固定したプラスチックシート製貯水容器とからなることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の切花輸送用容器において、前記箱型収容部が、矩形状の上下の端面と、該端面をつないで固定された3側面と、該3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、該開閉可能な1側面の下部は該蓋から切り離されて該下の端面と該3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の切花輸送用容器において、前記箱型収容部は、プラスチックシート製貯水容器を固定した下部が切り離し可能になされていることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が開口部周辺に折り返し部を形成したことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が2枚の四角形のシートを張り合わせ、その所定の角を切除して開口部とした袋状のものであることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項6にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺を開口部とした袋状をなすものであることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項7にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部を設けた袋状となし、該開口部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項8にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、2箇所以上の開口部を設けた袋状となし、該開口部に挟まれた連接部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項9にかかる発明は、請求項8に記載の切花輸送用容器において、前記貯水容器の該開口部に挟まれた連接部が、生花を該袋に差し込むことにより同時に袋内に折り込まれることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項10にかかる切花輸送用容器の組立キットは、請求項1乃至9のいずれかに記載の段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によると、段ボール製の箱型収容部のその収容部内の下部の周壁にプラスチックシート製貯水容器を直接固定したので、段ボール製支持体が不要であり、構造が簡単で、コストが安い、切花輸送用容器を提供できる。
【0027】
請求項2の発明によると、切花輸送用容器の収容部が、矩形状の上下の端面と、その端面をつないで固定された3側面と、その3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、開閉可能な1側面の下部は蓋から切り離されて下の端面と3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなる箱型であり、この箱型収容部の下部は4面が固定されていて丈夫であり、その内面周壁にプラスチックシート製貯水容器を直接固定しても堅固に支持できるので、構造が簡単で、コストが安い切花輸送用容器を提供できる。
【0028】
請求項3の発明によると、切花輸送用容器の箱型収容部のプラスチックシート製貯水容器を固定した下部が容易に切り離しできるようになされていることにより、その下部を切り離すことでそのまま展示できるので、花瓶などを準備する必要がなく簡便でかつ安価に切花の展示を行うことができる。
【0029】
請求項4の発明によると、貯水容器の開口部周辺にその容器の折り返し部を形成したことにより、切花輸送用容器の転倒の際などに水などの漏出を防ぐことができる、簡単な構造で組み立てが容易な、安価な、切花輸送用容器用のプラスチックシート製貯水容器を提供することができる。
【0030】
請求項5の発明によれば、貯水容器が2枚の四角形のシートを張り合わせ、その所定の角を切除して開口部とした袋状のものであることにより、貯水容器はきわめて簡単に製造でき、安価なものが提供できる。
【0031】
請求項6の発明によれば、貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺を開口部とした袋状をなすものであることにより、箱型収容部の下部周壁に貼り付ける際、下部空間に適応する形態にすることができるので、より強固に下部周壁に固定できる。
【0032】
請求項7の発明によれば、貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部を設けた袋状となし、その開口部を袋内に折り込んだものであることにより、箱型収容部の下部周壁に貼り付ける際、下部空間に適応する形態にすることができ、かつ簡単に折り返し部が形成できるので、より強固に下部周壁に固定できるとともに、水の漏出を防ぐことができる。
【0033】
請求項8の発明によれば、貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくとも2箇所の開口部を設けた袋状となし、開口部に挟まれた連接部を袋内に折り込んだものであるので、折り返し部が丈夫でかつ連接部が生花の茎に押さえられて安定し、開口部の大きさも調節しやすく、給水状態が加減できる。
【0034】
請求項9の発明によれば、貯水容器の開口部に挟まれた連接部が、生花を差し込むことにより同時に折返し部として貯水容器の袋内に折込まれるので、わざわざ折り返し作業を行う必要がなく、作業工数が低減できる。
【0035】
請求項10の発明によれば、段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせた切花輸送用容器の組立キットとしたので、流通過程において小規模生産者や、町の花屋が簡単に組み立てることができるので、切花輸送容器として広い用途が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための切花輸送用容器及び切花輸送用容器の組立キットを例示するものであって、本発明をこの態様に限定することを意図するものではなく、種々の変更が可能であり、特許請求の範囲に包含されるその他の実施態様のものにも及ぶことは言うまでもない。
【実施例1】
【0037】
図1は、本発明にかかる切花輸送用容器の構造の概要を説明する斜視図、図2は図1に示す切花輸送用容器の一部を破断してプラスチックシート製貯水容器の取り付け状態を説明する斜視図、図3はプラスチックシート製貯水容器の一実施例を示す平面図であり、図4は図3のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。図5はプラスチックシート製貯水容器の第二の実施例を示す平面図である。図6はプラスチックシート製貯水容器の第三の実施例を示す平面図であり、図7は図6のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。また、図8はプラスチックシート製貯水容器の第四の実施例を示す平面図であり、図9は図8のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。図10は箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器のキットである第五の実施例を示す斜視図である。
【0038】
本発明の切花輸送用容器は、図1に示すように、段ボール製の箱型収容部1と収容部内の下部2の周壁3に直接固定したプラスチックシート製貯水容器4とからなる。
【0039】
切花輸送用容器の箱型収容部1は、矩形状の上下の端面11a、11bと、両端面11a、11bをつないで固定された3側面11c、11d、11eと、それら3側面の端に位置する11eの1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面11fとを有している。開閉可能な1側面11fの下部11gは、蓋11fから切り離されて下の端面11bと3側面11c、11d、11eのうちの2側面11c、11eに固定され、プラスチックシート製貯水容器4の収容部を形成する。
【0040】
さらに、箱型収容部1には、プラスチックシート製貯水容器4を固定した下部2が容易に切り離しできるように、箱型収容部1を一巡するミシン目11hなどを開閉可能な1側面11fの下部11gと蓋11fの境目付近から延長して設けるようにしても良い。例えば図1においては、二筋のミシン目11hの間を引っ張って取り除き、分離できるようにしてある。このように、プラスチックシート製貯水容器4を固定した箱型収容部1の下部が容易に切り離しできるようになされていることにより、輸送の目的地に到達後は、切花輸送用容器の箱型収容部1がその下部を切り離して生花の展示にそのまま使用できるので、花瓶などを準備する必要がなく、簡便でかつ経済的に生花の展示を行うことができる。
【0041】
プラスチックシート製貯水容器4は、従来のように注水口やその周りの折り返し部を形成したダンボール製の花束支持部を用いないで、あるいはプラスチック製の堅固な成形品ではなく、開口部5を有する簡単な構造のプラスチックシート製の袋であり、図2に示すように、箱型収容部1の下部2の内側周壁3に本体の袋を直接接着剤や両面接着テープなどの固定手段6によって固定される。貯水容器4は開口部5周辺に折り返し部7が形成してある。
【0042】
貯水容器4は、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニールなどの柔軟性と防水性のあるプラスチックシートを張り合わせて製造したものであり、例えば図3に示したように、2枚の四角形のシートをシール部4aで張り合わせ、その所定の角を切除し開口部5とした五角形の袋状のものである。この貯水容器4は、図4に使用状態を示したように、開口部5を中心に袋の一部を、点線で示した折り返し点4cから袋の中に折り返すことにより、漏斗状の折り返し部7を形成する。袋の角の部分4bは接着剤などで箱型収容部1の内壁に固定され、水や栄養液8などが注入された後、複数本の切花や花束が挿入され、切り口が水や栄養液8などに浸漬され必要な水分が供給される。何らかの理由で切花輸送用容器1が転倒すると、水や栄養液8は貯水容器4の袋部分と折り返し部7との間にとどまり、外に漏れることが防止される。なお、水などの注入量は、花の種類、量、輸送期間、季節等を考慮して設定されるが、貯水容器4が倒れて横向きになっても開口部5からあふれない程度にしておく。
【0043】
図5は、プラスチックシート製貯水容器の第二の実施例を示す平面図である。貯水容器4が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、その1辺を開口部5とした袋状をなすものである。図5では六角形に裁断し、その5つの辺をシールした袋としたもので、底面に水平方向のシール部分4aがある。この袋は、点線部分4cで開口部5側が袋内に折り返しが行われ、漏斗状の折り返し部7が形成される。多角形の形状は任意であるが、貯水容器4が、2枚の多角形の防水性プラスチックのシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部5を設けた袋状となし、開口部5を袋内に折り込む場合に、作業のし易い形体が望ましい。
【0044】
図6乃至図9は、プラスチックシート製貯水容器4の第三、第四の実施例とその使用状態を示す説明図である。これらの実施例は、貯水容器4を2枚の多角形のシートを張り合わせて、そのうちの少なくとも2辺の一部に開口部5a、5bを設けた袋状となし、開口部5a、5bに挟まれた連接部9を袋内に折り込んだものである。図6では六角形で頂辺の部分がシールされ連接部9となり、これを挟んだ二辺の一部に開口部5a、5bが設けられている。図8の貯水容器4は、本体の六角形の一辺に小さな四角形を延長して設けたもので、小さな方の四角形のシールされた連接辺9を挟んで対向する2辺が開口部5c、5dとなっている。また、この開口部5a、5b(5c、5d)に挟まれた連接部9に近接する位置には貫通穴5fがそれぞれ設けられている。
【0045】
これらの貯水容器4においては、その開口部に挟まれた連接部9を、切花を袋に差し込むのと同時に袋内に折り込むことができるので、予め折り返し作業をやっておく必要がなく、折り返し作業の工数が不要であり、節減できる。殊に、図8の貯水容器4では本体部の開口5eが小さくなっていて、切花を挿入した場合に花束の支持に便利である。また開口部5c、5dが二つであり、その大きさを加減して、切花輸送用容器が転倒した際の水や水溶液8の移動を制御することができる。また、貫通穴5fが設けられていることにより、切花輸送用容器が開口部5a、5b(5c、5d)方向に直交する方向に転倒した場合であっても貯水容器4内の水がこぼれにくくなる。
【0046】
上記の実施例にかかわらず、箱型収容部は、そのサイズや形体は輸送する切花の種類や量に応じて適宜設定することができる。又、貯水容器の形体も、2枚のプラスチックシートを、箱型収容部の下部に納まり易い様々な形体に裁断して張り合わせ製造することができる。また、貯水容器4の内面の一部分又は全面に、銀、銅、酸化チタンなどの抗菌作用のある物質の皮膜を設けたり、あるいは前記物質を直接貯水容器4内部に貼付しておけば、その殺菌作用により内部の水は長期間きれいな状態に保たれるので、輸送中あるいはその後の展示中の生花を長持ちさせることが可能になる。
【0047】
段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とは、組み合わせて切花輸送用容器のキットにして、生産農家や花屋などが保有しておけば、必要時に組み立てて使用することができる。その場合には、分離して保有することもできるが、図10に示したように、箱型収容部1の周囲壁の固定手段6(図2参照)うち、2箇所(図10では6a)においてのみプラスチックシート製貯水容器4を貼り付けたものを折り畳んで保有しておき、組み立ての際に残りの周囲壁(図10では6b)に貼り付けるようにしてもよい。従来のものは花束を支持する段ボール製の支持体が必要であったので、一体での折り畳みはできなかったが、本実施例の切花輸送用容器においては箱型収容部1の箱体とプラスチックシート製貯水容器4のみで構成されているので、プラスチックシート製貯水容器4を組み込んだ状態でかさばることなく一体に折り畳むことができる。よって、かかる切花輸送用容器の組立キットによれば、構造が簡単であるので取り扱いが容易で組み立て作業を迅速、的確かつ効率的に行うことができる。また、このような構造によれば、花屋の店頭などでも簡単に組み立てることができると共に組立キット自体を保有する際にもその保管が容易になる。
【0048】
このように、本発明に係る切花輸送用容器によると、防水塗層を施した段ボールの花束支持部を要せず、簡単な構造であり、安いコストで製造することができ、切花に給水しながら安全に運送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は本発明にかかる切花輸送用容器の構造の概要を説明する斜視図である。
【図2】図2は図1に示す切花輸送用容器の一部を破断してプラスチックシート製貯水容器の取り付け状態を説明する斜視図である。
【図3】図3はプラスチックシート製貯水容器の一実施例を示す平面図である。
【図4】図4は図3のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。
【図5】図5はプラスチックシート製貯水容器の第二の実施例を示す平面図である。
【図6】図6はプラスチックシート製貯水容器の第三の実施例を示す平面図である。
【図7】図7は図6のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。
【図8】図8はプラスチックシート製貯水容器の第四の実施例を示す平面図である。
【図9】図9は図8のプラスチックシート製貯水容器の使用状態を示す断面図である。
【図10】図10は箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器のキットである第五の実施例を示す斜視図である。
【図11】図11は従来の花卉用の輸送箱の一例を示すものである。
【図12】図12は従来の他の花卉用の輸送箱の構造説明図である。
【図13】図13は従来の逆流を防止する構造を備えた切花用逆流防止付保水袋の斜視図である。
【図14】図14は従来の生花用輸送用容器が転倒した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 箱型収容部
2 収容部内の下部
3 周壁
4 貯水容器
5、5a〜5d 開口部
5f 貫通孔
6、6a、6b 固定手段
7 折り返し部
8 水、栄養液
9 連接部
11a、11b 上下の端面
11c、11d、11e 側面
11f 蓋
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボール製の箱型収容部と該収容部内の下部の周壁に直接固定したプラスチックシート製貯水容器とからなることを特徴とする切花輸送用容器。
【請求項2】
前記箱型収容部が、矩形状の上下の端面と、該端面をつないで固定された3側面と、該3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、該開閉可能な1側面の下部は該蓋から切り離されて該下の端面と該3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の切花輸送用容器。
【請求項3】
前記箱型収容部は、プラスチックシート製貯水容器を固定した下部が切り離し可能になされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切花輸送用容器。
【請求項4】
前記貯水容器が、開口部周辺に折り返し部を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項5】
前記貯水容器が、2枚の四角形のシートを張り合わせ、その所定の角を切除して開口部とした袋状のものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項6】
前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺を開口部とした袋状をなすものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項7】
前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部を設けた袋状となし、該開口部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項8】
前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、2箇所以上の開口部を設けた袋状となし、該開口部に挟まれた連接部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項9】
前記貯水容器の該開口部に挟まれた連接部が、生花を該袋に差し込むことにより同時に袋内に折り込まれることを特徴とする請求項8に記載の切花輸送用容器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせたことを特徴とする切花輸送用容器の組立キット。
【請求項1】
段ボール製の箱型収容部と該収容部内の下部の周壁に直接固定したプラスチックシート製貯水容器とからなることを特徴とする切花輸送用容器。
【請求項2】
前記箱型収容部が、矩形状の上下の端面と、該端面をつないで固定された3側面と、該3側面の1側端に連接する蓋として開閉可能な1側面とを有し、該開閉可能な1側面の下部は該蓋から切り離されて該下の端面と該3側面のうちの2側面に固定されて形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の切花輸送用容器。
【請求項3】
前記箱型収容部は、プラスチックシート製貯水容器を固定した下部が切り離し可能になされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切花輸送用容器。
【請求項4】
前記貯水容器が、開口部周辺に折り返し部を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項5】
前記貯水容器が、2枚の四角形のシートを張り合わせ、その所定の角を切除して開口部とした袋状のものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項6】
前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺を開口部とした袋状をなすものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項7】
前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、少なくともその1辺に開口部を設けた袋状となし、該開口部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項8】
前記貯水容器が、2枚の多角形のシートを張り合わせ、2箇所以上の開口部を設けた袋状となし、該開口部に挟まれた連接部を袋内に折り込んだものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の切花輸送用容器。
【請求項9】
前記貯水容器の該開口部に挟まれた連接部が、生花を該袋に差し込むことにより同時に袋内に折り込まれることを特徴とする請求項8に記載の切花輸送用容器。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の段ボール製の箱型収容部とプラスチックシート製貯水容器とを組み合わせたことを特徴とする切花輸送用容器の組立キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−199305(P2006−199305A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10103(P2005−10103)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(591038026)福岡丸本株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(591038026)福岡丸本株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
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