説明

切開装置

【課題】組織切開部を縫合するための生体組織用クリップに用いられ、組織、例えば、胃壁または結腸の最小侵襲(固体壁)切除のための切開装置を提供する。
【解決手段】シャフト型挿入手段2の遠位端部に固定または形成され、ばねの力によってバイアスされている生体組織用クリップ4がキャップ1の遠位前方縁部の上で開放/引出装置によって取り外し可能に取り付けられている拡張スリーブ3を有し、シャフト型挿入手段に用いるカップ状キャップを含む切開装置が開示される。前記拡張スリーブの内部に、前記キャップの遠位前方縁部から予め決められた軸方向距離において前記拡張スリーブの内壁に保持される切開器具33が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織、例えば、胃壁または結腸の最小侵襲(固体壁)切除のための切開装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、組織切開部を縫合するための生体組織用クリップに用いられ、内視鏡の供給手段と内視鏡供給手段を介在して供給される切開器具とを用いる。
【0003】
従来(例えば、US 6,849,078 B2)では、このような生体組織用クリップを基本構造とするものが一般的に知られているが、以下、図1を参照して詳しく説明する。
【0004】
図1に示すように、クリップ100は、2つの側面ヒンジ130または柔軟性のあるモールディングを介在して開閉できる歯が形成された2つの顎部110、120を有する口腔型の固定手段から構成される。ヒンジ130または柔軟性のあるモールディングは、顎部110、120を開くとき、ばね力を蓄えるばね弾性ストラップから形成され、蓄えられたばね力は、顎部110、120が開放されるとき、即ちヒンジ130または柔軟性のあるモールディングの決められた型締め力で顎部110、120を強力に閉じる。
【0005】
具体的には、前記クリップ100は、ばね鋼板から一体にパンチングまたはレーザー処理によって、部分的に異なる幅を有するリングに形成される。幅広の直径方向に対向する2つのリングの部分は2つの顎部110、120を構成し、両顎部110、120の間に配置されて狭幅の2つのリング部分はヒンジ130または柔軟性のある(弾性)モールディングを形成する。顎部110、120は、幅広のリング部分の平面全体を曲線形状の弓形にすることで形成され、狭幅の2つのリング部分は、ヒンジを形成するために長手方向の軸を中心に略180°ねじられる。このようなばね鋼板の特殊形状は、幅広のリング部分をレーザー溶接することで形成され、対向して動く2列の歯を有するサメの口のような形状に生成される。
【0006】
以下、このような医療用生体組織用クリップ100の機能について説明する。
【0007】
一般的に、医療用機器の内視鏡の挿入は、患者が耐えることができるように全体的に構成される。この場合、医療用機器は管腔臓器の内部から管腔臓器に固定する必要がある。このために、多数(少なくとも1つ)の前述の組織クリート、クリップまたはアンカーが内視鏡または類似の供給手段によって管腔臓器内に挿入され、臓器内側の予め決められた部位に配置される。従って、それぞれのクリップまたはアンカーは臓器組織に近く接近して、クリップまたはアンカーに働くばね力が開放される。そして、クリップまたはアンカーは顎部、フックまたは針の間に挟まる組織を予め決められた型締め力または拡張力によって固定または保持する。このとき、それぞれの顎部の歯、フック、針または尖った突出端は組織内に入り込み、望ましくは突刺される。
【0008】
このような方式で、それぞれのクリップまたはアンカーは、臓器内部で予め決められた距離に相互離隔されて固定される。
【0009】
図1には詳しく図示されないが、内視鏡または類似の供給手段は、一般的に内視鏡ヘッドまたは内視鏡キャップを有する。このような内視鏡ヘッドまたは内視鏡キャップは、照明装置、光学システム及び洗浄手段などの内視鏡に一般的に要求される機能に加えて、必要に応じて生体組織用クリップに用いる保持及び引出手段をさらに含むことができる。なお、この明細書では、洗浄機能及び照明、光学システムを有しない簡単な挿入補助器具も内視鏡としてみなすことに留意されたい。
【0010】
保持及び引出手段は実質的に、手動または遠隔操作により内視鏡の長手方向に移動可能なスライドおよび拡張スリーブから構成される。拡張スリーブは、クリップが管腔臓器内に挿入される際後方に滑るのを防止し、開いた状態の生体組織用クリップがスリーブ上に配置されるように設計されている。このために、スライドはクリップの軸方向後方に配置され、即ちクリップに対する軸方向のストッパーの役割をする。
【0011】
クリップが所定の位置に配置されるとき、スライドは軸方向前方に移動すると共に拡張スリーブ上のクリップを取り外す。クリップは、拡張スリーブから取り外される際に動かされ、即ち図1のクリップ内のバイアスメカニズムが開放されて、生体組織用クリップの2つの顎部は閉じられて、その間に供給された組織を固定する。
【0012】
この技術分野の他の文献、例えばDE 10/2004 037 830 A1には、切開装置を有する内視鏡キャップが開示されている。内視鏡キャップは、内視鏡シャフトの遠位端部に取り付けられるカップ状の本体を有する。カップの一番外側の遠位縁部は半径方向の内側に傾斜され、これによって電流が供給されるように構成される環状ケーブルであり、切開装置が隣接する内側接触表面を形成する。環状ケーブルは、カップ壁内部の鼻形状の柔軟性のある突出部を介在して接触表面に設けられる。環状ケーブルは内視鏡シャフトを通って移動可能に導かれ、電力供給ケーブルを介在して、さらに外部に連結される。
【0013】
組織を除去するために、カップは内視鏡の遠位端部の組織上に配され、組織はカップに吸入される。その後、ワイヤループが電力供給ケーブルを通じて引き締められることで、吸入された組織が収縮する。電流をループに供給することで、収縮した組織が切開される。
【0014】
このような装置によって結腸または胃壁の表面を切開することは可能であっでも、このような発明は、例えばさらに深く位置している患部組織を除去するには充分ではない。従って、この状況では、壁穿孔は、特に患者に有害な結果をもたらす危険性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US 6,849,078 B2号公報
【特許文献2】DE 10/2004 037 830 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のような従来技術の問題点に鑑みて、本発明は、患者に対する危険性を減らすことができる切開装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、請求項1に係る技術的特徴を含む切開装置によって達成される。
【0018】
本発明の切開装置は、シャフト型挿入手段の遠位端部に装着または形成され、前述のような生体組織用クリップが開放/分離装置によってキャップの遠位前方縁部の上から引き出されるように取り付けられる拡張スリーブを有し、シャフト型挿入手段に用いられるカップ状キャップを含む。拡張スリーブの内部には、拡張スリーブの内壁に配置または形成されたスペーサーを介在してキャップの遠位前方縁部から予め決められた軸方向距離に保持されるように切開器具が配置され、生体組織用クリップと切開器具の接触を防止する。
【0019】
このような方式で、キャップ内部に組織を吸入して、キャップまたは拡張スリーブの遠位前方縁部の直前組織を挟む生体組織用クリップを作動させることが可能である。そして、切開装置が作動されると吸入された組織が切開される。切開ラインは生体組織用クリップから予め決められた距離で規定される。この距離は、望ましくはスペーサーによって調整され、切開器具がクリップと接触しない距離、またはクリップが組織を十分に挟んで切開部を安全かつ丈夫に縫合して(破裂するリスクがないように)、縫合状態に保たれるような距離に調節される。他の例として切開器具を、脱着可能な支持部材または結合部材によって遠位前方縁部から予め決められた距離の拡張スリーブの内壁に固定することができる。
【0020】
より望ましくは、拡張スリーブの円周方向に両側面が開放された前方溝が、開放/引出手段として前方溝を通って半径方向に引っ張られる細線、ケーブルまたは織物により生体組織用クリップを収容するために、拡張スリーブの外側円周に形成される。細線は、シャフト型挿入手段またはキャップに片方端部が固定され、他方端部はシャフト型挿入手段に沿って移動可能に導かれ、溝へ生体組織用クリップを押し入れるとき、細線がクリップによって引き込まれるようにする。そして、細線が引っ張られると、細線が溝内部において収縮することで、生体組織用クリップは溝の外部に押し出される。
【0021】
他の例として細線、ケーブルまたは織物は、取り付けられたクリップの後方の拡張スリーブ上で軸方向に移動可能に装着され、細線が引っ張られるとき、キャップの遠位端部の表面方向へと前方に移動するワイパーリングによって片方端部が固定される。クリップは遠位前方縁部の上方に引き出される。ワイパーリングの場合、軸方向溝の配列を省略することができる。
このような方式により、機能に関連して本発明の把持/引出手段を構造的に分割することができる。即ち軸方向ストッパーを形成する前方溝/スリットの配列と、細線によって駆動されるスライドリング自体、またはスライドの役割を担う細線からなる分離された配列に構成される。このような把持/引出手段の構造的分割は、特に引出手段が、非常に小さい使用可能空間のみを要求し、滑車の原理を利用する際クリップに十分大きい変位力を与えることができる柔軟な細線またはケーブルからなるようにする。
【0022】
本発明の望ましい構成は、供給手段を通して導かれるか、供給手段に沿って導かれる電気リードを介在して電流が供給されて動作する環状ケーブルから構成される切開器具である。
【0023】
スリーブの遠位端部の表面から軸方向に離隔され、環状ケーブルに対する固定表面を形成する内側ショルダーまたは、円周形溝を含むように拡張スリーブを遠位端部に形成すると更によい。
【0024】
従来では、スペーサーはスリーブに押し込まれ、それ自体とショルダーの間にループを挟む拡張スリーブと別個の構成素子としてリング状に製造される。本発明の場合、スペーサーは拡張スリーブと一体に形成され、ループは円周形溝に挿入又は押圧される。
【0025】
スペーサーは2mm〜6mm、特に望ましくは2mm〜3.5mmの軸方向の長さを有し、拡張スリーブの遠位前方縁部と実質的に同一である。実施例の他の有利な構成は従属項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にも用いることが可能な従来技術による生体組織用クリップ構成の例示図である。
【図2】図1の生体組織用クリップが取り付けられた本発明の第1の実施例に係る切開装置用内視鏡キャップの長手方向の概略断面図である。
【図3】生体組織用クリップが取り付けられた本発明の第2の実施例に係る切開装置用内視鏡キャップの長手方向の断面図である。
【図4】生体組織用クリップが取り付けられた本発明の第3の実施例に係る切開装置用内視鏡キャップの長手方向の断面図である。
【図5】生体組織用クリップが取り付けられた本発明の第4の実施例に係る切開装置用内視鏡キャップの長手方向の断面図である。
【図6】休止状態の生体組織用クリップ用リング状放出手段を含む本発明の第5の実施例に係る切開装置用内視鏡キャップの斜視図である。
【図7】動作状態の生体組織用クリップ用リング状排出手段を含む図6の内視鏡キャップの斜視図である。
【図8】休止状態および動作状態にある図5の内視鏡キャップの長手方向の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を望ましい実施例によって、添付された図面を参照しながら詳しく説明する。
【0028】
図2に示すように、本発明の第1の実施例による(内視鏡)キャップ1は、人間または動物の体内の管腔臓器、例えば、結腸または胃腸の内部に挿入できるように構成された内視鏡、套管針、または類似のシャフト型挿入手段の遠位端部に配置される。
【0029】
本発明の内視鏡キャップ1は、遠位内視鏡ヘッドまたは挿入手段2の端部を囲む摺動部分1a(望ましくは、シリコンノズル)を有し、挿入手段2は、搭載された状態で内視鏡に特定の機能、例えば内視鏡の近位端部に提供されるハンドルによって個別的に操作可能な照明、光学システム、洗浄手段、作業チャネルの入口などを選択的に有する。他の例として、挿入補助器具は、複雑な機能は省略され、硬質または柔軟な材質からなる単純な中空型シャフトから構成することもできる。
【0030】
本実施例で、内視鏡キャップ1は、摺動部分1aに全体的に接続(クリップ)される拡張スリーブ(拡張スリーブ部分)3の内部またはこれを含むシース側において、摺動部分1aからの軸方向の距離に形成される。若しくは、摺動部分1aに一体に接続または接着されるか、溶接することができる。生体組織用クリップ4は拡張スリーブ3上で加圧されるように構成される。拡張スリーブ3は内視鏡ヘッド2の遠位端部の表面から軸方向に突出することで、前方縁部から半径方向の外側に丸く作られるカップ状のスリーブ部分を形成する。
【0031】
内視鏡キャップ1の正確な軸方向の位置設定のために、摺動部分1aは、内視鏡ヘッド2の端部の表面を押すことで、内視鏡キャップ1が近位端部の方向に内視鏡に沿って移動できないようにする、半径方向の内側円周縁部5(固定部またはストッパー)を有する。
【0032】
本発明の第1実施例において、内視鏡キャップ1は、それぞれの機能を選択的に含む内視鏡ヘッド2(シャフトの端部)の予め設けられているハウジングに取り付けることができる。従って、基本的に市販されている内視鏡または類似のシャフト型挿入手段の補強キットにも適合する内視鏡ヘッド2とは別個の構成素子から内視鏡キャップ1は製造される。他の例として、内視鏡キャップ1は、内視鏡ヘッド2自体に対するハウジングを構成することができ、その結果、単に図2の内視鏡シャフト6に、内視鏡の構成素子として固定的にしっかり連結される。
【0033】
本発明の拡張スリーブ3はシース側のキャップまたはスリーブ壁で、拡張スリーブの遠位端部の表面から軸方向に形成される前方溝7を含む。前方溝は、拡張スリーブ3の遠位端部の表面からピッチ円または鎌形状(円周状)のスリットのように開放され、溝の底は軸方向の後方地点、望ましくは略拡張スリーブ3の軸方向中心の部分にストッパー部8を形成する。前方溝7の半径は拡張スリーブ3の外側の半径より大きく形成されることで、スリーブ壁は円周方向に所定の距離離隔された2つのスリットを得ることができる。このような前方溝のスリットを形成することで、キャップのシース壁は、この領域で長手方向に分割され、これによって半径方向の外側の溝壁を規定する一種のタブまたは舌状部9がキャップ壁の外部に形成される。
【0034】
上記のような前方溝を提供する他の変形例は、軸方向に湾曲するタブまたは舌状部の付属構造物として、その根元はキャップと一体に形成され、キャップのシース壁からの半径距離に溝を形成しながら軸方向に対して拡張スリーブの方向に延長される。したがって、この場合、シース壁は(上述のように)分割されないが、タブ形態の構成がキャップのシース壁上に導かれる。このタブは、断面寸法が非常に狭いので、断面が直線状(半径方向ではなく)にすることができる。タブは、必ずしもキャップの外周に沿って形成する必要はない。また、タブの平面形状は任意に大きく設計することができる。即ち、より大きい強度を得るようにタブの根元(タブとキャップの間の遷移領域)の方向に厚くまたは広くなるようにすることができる。また、タブの根元自体が最大強度を得るように、実施例の範囲内で自由に寸法を設計することができる。
【0035】
最終的にタブ9が如何なる製造方法により形成されるかに関わらず、本発明によれば、タブはストッパー部8を構成する溝の底からキャップ1または拡張スリーブ3の遠位端部の表面方向に延長されるが、この時タブの丸い開放縁部は拡張スリーブ3の遠位前方縁部と対向するように軸方向に再配置される。
【0036】
図2に示すように、前方溝7はキャップの中心軸に正確に平行するようには延長されないが、挿入されたクリップ4がより容易に前方に摺動できるように、中心軸に向かって遠位端部の表面方向に傾斜する。また、溝7は直線型ではないが、溝壁、少なくとも外側溝壁は軸方向に若干湾曲され、溝7、少なくともタブ9はその中心軸部分で半径方向に対し外側にアーチ形態を構成する。このような図1による機構によって、生体組織用クリップ4が摺動して保持される動作が幾何学的に許容され、容易になる。
【0037】
タブ9の軸方向前方端部には、細線11、ケーブルまたは織物が溝の内部からキャップ1の外部に向かって導かれて固定される半径方向の外側貫通孔10が設けられる。望ましくは、細線の一方の端部はタブの外側で結んで結び目を作ることで、細線11が半径方向の貫通孔10から引出されないようにする。また、前記貫通孔10に実質的に半径方向に対向する位置で、即ち軸方向に突出された拡張スリーブ3の遠位端部領域で、内視鏡のキャップ1には、細線11が溝の内部から拡張スリーブ3の内部へと導かれる半径方向の内側貫通孔12が設けられる。
【0038】
特に図2から分かるように、内側貫通孔12は軸方向に内視鏡ヘッド2の遠位端部側より前方に提供され、内側貫通孔12から抜け出る細線11が長い距離を通過するが必要なく、シャフト端部の表面から開放される機能チャネルまたは内視鏡シャフト6の作業チャネル30に入り込むようにする。さらに、拡張スリーブ3の内部には、スリーブ3にそって延長され、内部貫通孔12と内視鏡シャフト6の遠位端部の間の細線11をカバーする一種のライニングまたはダクト31が設けられる。
【0039】
拡張スリーブ3の内側円周(内壁)は、約2mm〜6mm望ましくは2mm〜3.5mmの予め決められた軸方向の距離にわたり遠位端部に孔が開けられ、内部ショルダー32(供給方向から見える)が内側貫通孔12の直前に形成される。前記内部ショルダー32に隣接されるものは、ダクト31および内視鏡シャフト6を通って導かれる電気リード34を介在して電流が供給されて動作する環状ケーブル33である。さらに、内側ボア35には、内部ショルダー32に対抗する力を環状ケーブル33に加える望ましくはリング状のスペーサー36が挿入され、細線11と干渉せずに内側貫通孔12から引っ張られる。
【0040】
本明細書において、本発明の第1の実施例によれば、細線11と電気リード34の両方は、内視鏡シャフト6に提供される機能チャネル30内で導かれる。これらは、一般的に医療用器具が挿入される作業チャネル35内に位置される。
【0041】
他の例として、内視鏡シャフト6内部に図3の細線11を位置させ、外側リードチャネル40を通って電気リード34を導くことも可能である。この場合、本発明の第2実施例によれば、内視鏡キャップ1には、リードチャネル40が挿入され、電気リード34が導かれる軸方向孔41が摺動部分1aに設けられる。
【0042】
また、図4のように、本発明の第3実施例によれば、内視鏡シャフト6内部の同一の機能チャネル30において、細線11のみならず電気リード34を自在に導くことも可能である。図5のように、他の例として、内視鏡シャフト6の機能チャネル30内部に位置し、電気リード34から細線11を分離させる別途のチューブ45a、45bを用いて、電気リード34および細線11を導くことができる。
【0043】
図2によれば、スペーサー36は拡張スリーブ3に挿入される別途の素子として製造される。また、他の例として、拡張スリーブ3は、その内部で、環状ケーブル33が押圧される円周形溝を、内部ショルダー32の領域に備えるように形成することができる。また、環状ケーブル33は拡張スリーブ3の内壁に脱着可能に接着または取り付けられる。最後に、内側の円周形溝の隅を面取りして、環状ケーブル33に収納空間を提供することもできる。スペーサーは、望ましくは環状ケーブル33の取り外しを容易にするシリコンなどの柔軟な物質または弾性物質から形成することができる。
【0044】
前述の変形例において、環状ケーブル33は、電気リード34を通じて張力によって開放されるまで、即ち拡張スリーブ3の内壁から引き出されるまで、キャップ1の遠位端部の表面から望ましくは2mm〜6mmの予め決められた軸方向の距離において保持されることが重要である。
【0045】
以下、本発明の切開装置以外に、生体組織用クリップ4の把持/引出機能を含む内視鏡キャップ1の動作について詳しく説明する。
【0046】
例えば、図1の生体組織用クリップ4を予め決められた位置に移動させるためには、先ず、生体組織用クリップはシャフトのキャップ1の拡張スリーブ3上で引っ張られる必要がある。このために、生体組織用クリップ4の下顎部及び上顎部は手動で開けられた後、クリップ4が拡張スリーブ3の丸い前方縁部に圧入されて取付けられる。生体組織用クリップ4の後方縁部がシャフトのキャップ1の前方溝7に挿入されることで、内視鏡シャフト6の機能または作業チャネル30の外部へと細線11を引っ張る。
【0047】
最終的に、クリップ4を移動させる動きは、クリップが溝の底8と接触するときに停止状態となり、このときクリップ4及び引出された細線11は、図2に示す位置をとる。即ち、この位置で、クリップ4は内視鏡のキャップ1上に完全に密着され、内視鏡2を介在して管腔臓器内に導入することができる。細線11はクリップ4の後方縁部をU字状に包むことになる。
【0048】
本発明の切開装置が管腔臓器内の患部に到達すると、拡張スリーブ3は臓器壁によって加圧され、壁は拡張スリーブ3内の負圧および/または内視鏡シャフト6(作業チャネル35)を通って挿入された鉗子または類似の把持器具によって拡張スリーブ3へと引っ張られる。クリップ4を除去する場合は、シャフトチャネル42を介在して内視鏡2の近位端部に導かれる細線11が引かれることで、前方溝7を半径方向に横切る細線の部分が収縮する。細線11が外側貫通孔10に固定されるので、滑車の原理により適切な比率でクリップ4に軸方向の力を加える。これによってクリップ4は内視鏡キャップ1の遠位端部方向に配置される。前方拡張スリーブ縁部の外側の丸い部分と前方溝7(特に、タブ9)のなめらかな弓形の成型物は、拡張スリーブ3の前方縁部の上でクリップ4の摺動を容易にし、細線11を介在して作用される最大変位力をさらに減少させる。クリップ4の後方縁部が前方溝7を離れ、これ以上タブ9により固定されなくなると、クリップ4に蓄えられたバイアスされた力はクリップ4を拡張スリーブ3から取り外し、臓器壁は拡張スリーブ3の直前領域に挟まれるようになる。
【0049】
以上のようにすることで、切開装置が動作される。このために、電気リード34が引っ張られることで、環状ケーブル33が拡張スリーブ3の内壁から分離され、生体組織用クリップ4の前方で引っ張られた臓器壁を約2mm〜6mm圧縮する。高周波電流をループ33に供給することで、引っ張られた壁が切開される。臓器壁の切開が完了し、内視鏡2は切開された壁の組織と共に管腔臓器から除去され、クリップ4は患部を縫合する。
【0050】
本明細書では、環状ケーブル33と定義される切開装置を例として説明しているが、これに限定されず、例えばバラ形状の刃またはハサミを適用することができる。
【0051】
図6〜図8は、本発明の他の実施例を示すもので、以下では前記実施例と異なる特徴について説明する。図6から分かるように、本発明の第5実施例の除去装置は、拡張スリーブ3上で引っ張られて内視鏡キャップ1の中心領域から外側ショルダー51に隣接するストリップリング50から構成される。
【0052】
他の例として、ストリップリング50は、前述の実施例のいずれか1つの前方溝の溝底に軸方向に隣接することができる。
【0053】
第5実施例では、何らタブまたは前方溝を有しない。その代わりに、内側貫通孔12を通って導かれる細線は、ストリップリング50により細線11が導かれて固定される貫通孔52に導入されることで、ストリップリング50によって直接締められる。また、拡張スリーブ3の外側円周において、軸方向のバー53または軸方向の溝が形成され、ストリップリング50または軸方向の内部バーの溝に噛合うストリップリング50の軸方向ガイドを形成する。他の形状に関しては、ストリップリング50は生体組織用クリップ(図6には図示されない)がリング50に実質的に密着して取り付けられるように生体組織用クリップに適合される。
【0054】
図6〜図8に基づいて、本発明の第5実施例の切開装置の機能を説明する。
【0055】
治療が必要な臓器壁が負圧および/または鉗子(把持器具)によって拡張スリーブ3へと引っ張られると、生体組織用クリップが引き出される。このために、細線11は内視鏡シャフトにそって引かれる必要があり、それによってストリップリング50は拡張スリーブ3の遠位前方縁部の方向に前面へと移動する。その結果、クリップが拡張スリーブ3の遠位前方縁部を通ってばねバイアスによって開放され、顎部の間に臓器組織を挟むまでクリップも前面に移動する。その後、引っ張られた組織は拡張スリーブ3内部の切開装置によって切開される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト型挿入手段(2)の遠位端部に固定または形成され、ばねの力によってバイアスされている生体組織用クリップ(4)がキャップ(1)の遠位前方縁部の上で開放/引出装置(11、50)によって取り外し可能に取り付けられている拡張スリーブ(3)を有し、前記シャフト型挿入手段(2)に用いるカップ状キャップ(1)を含む切開装置において、
前記拡張スリーブ(3)の内部に、前記キャップ(1)の遠位前方縁部から予め決められた軸方向距離において前記拡張スリーブ(3)の内壁に保持される切開器具(33)が配置されていることを特徴とする切開装置。
【請求項2】
前記拡張スリーブ(3)の内壁に、スペーサー(36)が略リング状に配置されているか、または前記キャップ(1)と一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切開装置。
【請求項3】
前記拡張スリーブ(3)の内壁には、前記遠位前方縁部から始まり前記スペーサー(36)が挿入される半径方向のボア(35)を有し、前記ボア(35)によって、円周形溝が前記スペーサー(36)と内部ショルダー(32)との間に形成されることを特徴とする請求項2に記載の切開装置。
【請求項4】
前記拡張スリーブ(3)の内壁において、円周形溝が前記キャップ(1)の遠位前方縁部から予め決められた軸方向の距離に設けられることで、前記スペーサー(36)が前記キャップ(1)と一体に形成されることを特徴とする請求項2に記載の切開装置。
【請求項5】
前記切開器具(33)は、前記円周形溝に押圧または挿入され、電気リード(34)を介在して電流が供給されることで動作する環状ケーブルであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の切開装置。
【請求項6】
前記予め決められた軸方向距離は2mm〜6mm、望ましくは2mm〜3.5mmであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の切開装置。
【請求項7】
前記開放/引出装置(11)は、前記キャップ(1)の内部を通って導かれ、前記遠位前方縁部を包む形態で、あるいは前記拡張スリーブ(3)から前記遠位前方縁部直前の半径方向の貫通孔(12)を通って外部に導かれて、前記遠位前方縁部の方向に前記生体組織用クリップ(4)を引っ張る細線、ケーブルまたは織物であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の切開装置。
【請求項8】
前記拡張スリーブ(3)の円周方向に両側面が開放された前方溝(7)は、前方溝を通る前記細線(11)、ケーブルまたは織物が半径方向に引っ張られて前記キャップ(1)の自由端に固定される前記生体組織用クリップ(4)を、軸方向に収容するように前記拡張スリーブ(3)の外側円周に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の切開装置。
【請求項9】
前記細線(11)、ケーブルまたは織物は、開放された片方端部が、摺動するクリップ(4)の後方の前記拡張スリーブ(3)の上で軸方向に移動可能に取り付けられているストリップリング(50)に固定され、前記細線(1)を引っ張るときに、前記クリップ(4)を前方に押しながら前記キャップ(1)の遠位端部の表面方向に移動可能であることを特徴とする請求項7に記載の切開装置。
【請求項10】
前記挿入手段(2)は、医療用器具(例えば、鉗子)を供給するための作業チャネル(35)が形成されている内視鏡シャフト(6)を有する内視鏡であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の切開装置。
【請求項11】
電気リード(34)および細線(11)、ケーブルまたは織物は、前記内視鏡シャフトの内部において、前記作業チャネル(35)またはそれに平行する機能チャネル(30)で導かれることを特徴とする請求項10に記載の切開装置。
【請求項12】
細線(11)、ケーブルまたは織物は前記内視鏡シャフト(6)の内部で導かれ、電気リード(34)は前記内視鏡シャフトの外部において外部チューブ(40)により導かれることを特徴とする請求項10に記載の切開装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−120884(P2011−120884A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−240213(P2010−240213)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(510285610)オヴェスコ エンドスコピー アーゲー (6)
【Fターム(参考)】