説明

刈払いコード用モノフィラメントおよびその製造方法

【課題】耐熱性、耐久性、切草性が均等に優れ、刈払いコード用ローターに適用した場合に、ローター内でのコード同士の融着や、熱劣化などのトラブルを起こすことのない刈払いコード用モノフィラメントおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】融点が200〜270℃のポリアミドモノフィラメントからなり、前記モノフィラメントの直径が1.5〜3.5mm、曲げ硬さ指数が0.05〜0.25cN/dtexであることを特徴とする刈払い用コード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノフィラメントを高速回転させることにより草や芝など刈り取る刈払い機に使用する刈払いコード用モノフィラメントおよびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、耐熱性、耐久性、切草性が均等に優れ、刈払いコード用ローターに適用した場合に、ローター内でのコード同士の融着や、熱劣化などのトラブルを起こすことのない刈払いコード用モノフィラメントおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、刈払い機のカッター刃としては、回転時に構造物との接触により、相手を傷つけないようにするため、あるいは安全上の観点から、合成樹脂製モノフィラメントからなるコードカッターが多く使用されている。
【0003】
また、摩耗した刈払い用コードの交換の手間を省くために、刈払いコードをローター内に巻き込んでおき、コードの長さが短くなった場合簡単にコードを引き出して長さが調整できる刈払いコード用ローターの開発がされ、かなり実用的に使用されている。
【0004】
前記コードカッターに使用される刈払い用のコードとしては、耐摩耗性に優れたポリアミドモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)や、曲げ硬さを一定の範囲にすることにより切草性と耐久性を向上させたモノフィラメント(例えば、特許文献2参照)、比重を一定範囲にすることにより切草性を向上させたモノフィラメント(例えば、特許文献3参照)などがすでに提案されている。
【0005】
しかるに、前記従来の刈払いコード用モノフィラメントは、それぞれ耐久性の向上、切草性の向上などの効果は認められるものの、これらを刈払いコード用ローターに適用した場合には、ローターから引き出された刈払いコードが草や芝生に当たる衝撃がローター内に巻き込まれているコードに伝達され、ローター内でコード同士が擦れる摩擦熱によって融着してしまい、短くなったコードの長さ調整が不可能となることや、ローター内のコードが熱劣化により部分的に強度低下してしまいコードが切れやすくなることなどの問題があった。
【0006】
このように、従来の刈払いコード用モノフィラメントは、摩擦熱に弱いことからローター内でのコード同士の融着や、熱劣化などのトラブルを引き起こすという問題があったため、これら問題点の更なる改善が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3958985号公報
【特許文献2】特開2009−240239号公報
【特許文献3】特開2009―219361号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術における問題点を課題として検討した結果、達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、耐熱性、耐久性、切草性が均等に優れ、刈払いコード用ローターに適用した場合に、ローター内でのコード同士の融着や、熱劣化などのトラブルを起こすことのない刈払いコード用モノフィラメントおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明によれば、融点が200〜270℃のポリアミドモノフィラメントからなり、前記モノフィラメントの直径が1.5〜3.5mm、曲げ硬さ指数が0.05〜0.25cN/dtexであることを特徴とする刈払いコード用モノフィラメントが提供され、この刈払いコード用モノフィラメントにおいては、前記ポリアミドモノフィラメントが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66の相互共重合体から選ばれた少なくとも1種類以上のポリアミド樹脂からなることが好ましい。
【0011】
また、本発明の刈払いコード用モノフィラメントの製造方法は、ポリアミド樹脂をエクストルーダー型紡糸機に供給し、溶融混練後、ギヤポンプにより計量押出された紡出糸を、10〜80℃の冷却槽で冷却した後、延伸浴温度50〜98℃、延伸倍率1.2〜4.0倍の条件で延伸し、次いでこの延伸モノフィラメントに、処理温度100〜200℃の乾熱雰囲気下0.8〜1.0倍の一次熱処理を施し、さらに、この一次熱処理後のモノフィラメントを綛条に巻き上げた後、60〜100℃の湿熱雰囲気下30〜90分の二次熱処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に説明するとおり、耐熱性、耐久性、切草性が均等に優れ、刈払いコード用ローターに適用した場合に、ローター内でのコード同士の融着や、熱劣化などのトラブルを起こすことのない刈払いコード用モノフィラメントを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。
【0014】
本発明の刈払いコード用モノフィラメントは、融点が200〜270℃、好ましくは210〜260℃のポリアミドモノフィラメントからなり、前記モノフィラメントの直径が1.5〜3.5mm、好ましくは2.0〜3.0mm、曲げ硬さ指数が0.05〜0.25cN/dtex、好ましくは0.1〜0.2cN/dtexの範囲にあることが重要である。
【0015】
ここで、ポリアミドの融点が200℃より低い場合は、仕上がった刈払いコードの融点が低くなり、ローター内でコード同士が融着したり、熱劣化を起こしたりし易くなるため好ましくない。逆に、ポリアミドの融点が270℃以上の場合には、原料価格が高価となり経済的に好ましくないばかりか、仕上がったコードが硬くなってしまい、刈払いコードとして実用する際にすぐに折れてしまうため好ましくない。
【0016】
また、モノフィラメントの直径を1.5mmより細くすると、コードの絶対重量、曲げ剛性が低くなりすぎて切草性が低下し、逆に直径を3.5mmより太くすると、刈払い用コードを回転させ草や芝生に当てて切草するときの接触面が大きくなることにより衝撃力が分散してしまい、切草性の悪化を招くため好ましくない。
【0017】
さらに、モノフィラメントの曲げ硬さ指数が0.05cN/dtexより低くなると、ローターにセットした刈払い用コードを回転させ草に当てた時の衝撃を吸収してしまうために切草性が低下し、逆に0.25cN/dtexを超えると、ローターにセットした刈払い用コードを回転させ草に当てた時の衝撃を吸収しきれずにコードが折れてしまい、耐久性と切草性の低下を招き易くなるため好ましくない。
【0018】
本発明の刈払いコード用モノフィラメントは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66の相互共重合体から選ばれた少なくとも1種類以上のポリアミド樹脂からなることが好ましく、中でも比較的融点が高く、高強度が得られやすいうえに安価に入手できるポリアミド6が好ましく採用される。
【0019】
次に、上記の特性を有する本発明の刈払いコード用モノフィラメントの製造方法について説明する。
【0020】
まず、ポリアミド樹脂をエクストルーダー型紡糸機に供給し、溶融混練後、ギヤポンプにより計量押出された紡出糸を、10〜80℃の冷却浴で冷却した後、延伸浴温度50〜98℃、延伸倍率1.2〜4.0倍の条件で延伸することにより延伸モノフィラメントを得る。
【0021】
次いで、得られた延伸モノフィラメントを、処理温度100〜200℃の乾熱雰囲気下で0.8〜1.0倍に一次熱処理を施したモノフィラメントを作成する。
その後、作成したモノフィラメントを綛条に巻き上げた後、これに60〜100℃の湿熱
【0022】
雰囲気下30〜90分の二次熱処理を付与することにより目的とする刈払いコード用モノフィラメントを得ることができる。
【0023】
ここでは、中でも2段階の弛緩熱処理条件、具体的には一次熱処理を、温度100〜200℃、特に120〜180℃の乾熱雰囲気下で0.8〜1.0倍、特に0.85〜0.95倍の条件で行った後、これを綛条巻き上げ、さらに60〜100℃、特に65〜95℃の湿熱雰囲気下で、30〜90分、特に50〜70分の二次熱処理を施すことが重要である。
【0024】
一次熱処理温度が100℃以下では、十分な熱処理効果が得られないためモノフィラメントが硬くなり刈払い用コードとしての使用中に折れてしまうことから好ましくなく、200℃より高いと、モノフィラメントの表面が荒れてしまい刈払い用コードの品位が低下するため好ましくない。また、一次熱処理の弛緩熱処理倍率が0.8倍より低くなると、糸がたるんで安定した引き取りができなくなり、1.0倍より高くなると、十分な熱処理効果が得られないためモノフィラメントが硬くなり刈払い用コードとして使用中に折れてしまうことから好ましくない。
【0025】
さらに、二次熱処理温度が60℃以下では、十分な熱処理効果が得られないことから好ましくなく、100℃以上では特殊な装置が必要になることから好ましくない。また、二次熱処理時間が30分以下では、十分な熱処理効果が得られため好ましくなく、90分以上で、は作業効率が悪くなるため好ましくない。
【0026】
なお、本発明の刈払い用コードを構成するモノフィラメントには、その目的に応じて染料、顔料、耐候剤、老化防止剤、抗酸化剤、柔軟化剤、耐摩耗剤、耐熱剤、高比重添加剤などを含有することができ、また本発明の刈払い用コードの断面形状は略円形のほか、三角形、四角形、五角形などの多角形、クローバー形、花びら形、星型など異型断面、トラック形、長方形、前記多角形や異型断面をつなぎ合わせた扁平形状など本発明の目的を阻害しない範囲で選択できる。
【0027】
かくして得られたポリアミドモノフィラメントは、所望の長さに切断して刈払いコードとなされるが、本発明の刈払いコード用モノフィラメントは、モノフィラメントの曲げ硬さを一定の範囲に調整することにより、刈払い用コードを回転させて草を切るときの回転力を効率よく伝えることができることから、高い切草力を長期間維持することができると共に、一定範囲の融点を持つポリアミド樹脂を使用していることにより、ローター内で起こる摩擦熱による融着や、熱劣化などを軽減して使用時のトラブルを未然に防ぐという優れた性能を具備するものである。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の刈払いコード用モノフィラメントを実施例に基づいてさらに詳しく説明する。なお、実施例における刈払い用コード評価は以下の方法で行った。
【0029】
[直径測定]
ミツトヨ社製デジタルマイクロメーターを使用し、刈払い用コードの直径を長径、短径それぞれ5回測定の平均直径を算出した。
【0030】
[破断強伸度]
JIS L1013の規定に準じて、刈払い用コードを20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置後、(株)島津製作所社製オートグラフ(AG−1000G型)引張試験機を使用して、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で引張破断強度および破断伸度を求めた。
【0031】
[モノフィラメントの融点ピーク]」
JIS K7121の規定に準じてセイコー電子工業社製「DSC22」を使用して、5.00mgのサンプルを昇温速度10℃/分で常温から300℃まで昇温させ、一回目(1stラン)の融点ピークを測定した。
【0032】
なお、素材本来の融点を測定する場合は、常温から300℃まで一定の速度で昇温させて、300℃で5分間ホールドした後に常温まで冷却し、再度一定の速度で300℃まで昇温させた時の融点ピークを測定するが、本発明のモノフィラメントは、刈払い用コードとして使用する際の摩擦熱に対する効果を確認するための測定であることから、素材本来の平均的な融点ではなく、一回目の昇温で溶け出す、いわゆる1stランの融点ピークを見ることとした。
【0033】
[曲げ硬さ指数]
50mm長に切りそろえた資料を、20℃、65%HRの温湿度調整室で24時間放置した後、間隔10mmを隔てて水平方向に設置された直径2mmのステンレス棒にセットし、その中央部に直径2mmのステンレス製フックを掛け、(株)ミネベア製『TCM−200型万能引張・圧縮試験機』を用いて、引取速度50mm/分で引き抜いたときの最大曲げ応力(CN)を測定し、この測定値を繊度で割り返して求めた。
【0034】
[切草性評価]
コード式草刈り機(電動式)にエルタ製半自動トップローターを取り付けて刈払いコードを5m巻き込み、ローターから草刈り用コードが20cm出るようにセットし、2m四方に区切った区画一面に生えた発芽後3ヶ月経過した牧草オーチャードグラスのナツミミドリ種を実際に刈り取り、刈り取りに掛かる時間を計測した。刈り取りに掛かる時間が少ないほど切草性が良好であることを示す。
【0035】
[実施例1]
東レ製ポリアミド6樹脂(M1041T:融点223℃)を、エクストルーダー型紡糸へ供給し、紡糸温度270℃で溶融混練した後、ギヤポンプを経て、紡糸パック内の濾過層を通過して円形断面糸用紡糸ノズルから紡出し、ただちに10℃の冷却浴中で冷却固化させたポリアミド未延伸糸を得た。引き続き得られた未延伸糸を90℃の湿熱雰囲気下で2.4倍に延伸し、次いで160℃の乾熱雰囲気下で0.90倍の一次弛緩熱処理することにより、直径2.29mmのポリアミドモノフィラメントを作製した。
【0036】
作成したモノフィラメントを円周長約1.0mの綛に綛上げし、これを90℃の温水浴中で50分の二次弛緩熱処理を施すことにより、モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0037】
[実施例2]
実施例1で使用したポリアミド樹脂を、東レ製共重合ポリアミド樹脂(M6021H4:融点217℃)に変更した以外は、実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0038】
[実施例3]
実施例1で使用したポリアミド樹脂を、東レ製共重合ポリアミド樹脂(M6021H4:融点217℃)80重量%と東レ製ポリアミド66樹脂(M3001C:融点265℃)20重量%の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例4]
実施例1で使用したポリアミド樹脂を、東レ製ポリアミド6樹脂(M1041T:融点223℃)80重量%と東レ製ポリアミド66樹脂(M3001C:融点265℃)20重量%の混合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
東レ製ポリエステル樹脂(T301T:融点255℃)を、エクストルーダー型紡糸機へ供給し、紡糸温度290℃で溶融混練した後、ギヤポンプを経て、紡糸パック内の濾過層を通過して円形断面糸用紡糸ノズルから紡出し、ただちに75℃の冷却浴中で冷却固化させたポリエステル未延伸糸を得た。引き続き、得られた未延伸糸を90℃の湿熱雰囲気下で2.8倍に一次延伸し、次いで180℃の乾熱雰囲気下で0.90倍の弛緩処理することにより、直径2.39mmのポリエステルモノフィラメントを作製した。作成したモノフィラメントを円周長約1.0mの綛に綛上げし、これを90℃の温水浴中で50分の弛緩熱処理を施すことにより、モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0041】
[比較例2]
ソルベイソレクシス製ポリフッ化ビニリデン樹脂(11010:融点160℃)を、エクストルーダー型紡糸機へ供給し、紡糸温度230℃で溶融混練した後、ギヤポンプを経て、紡糸パック内の濾過層を通過して円形断面糸用紡糸ノズルから紡出し、ただちに75℃の冷却浴中で冷却固化させたポリフッ化ビニリデン未延伸糸を得た。引き続き、得られた未延伸糸を140℃の湿熱雰囲気下で3.0倍に一次延伸し、次いで155℃の乾熱雰囲気下で0.90倍の弛緩処理することにより、直径2.36mmのポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを作製した。作成したモノフィラメントを円周長約1.0mの綛に綛上げし、90℃の温水浴中で50分の弛緩熱処理を施すことにより、モノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例3]
モノフィラメントの直径を1.04mmに変更した以外は、実施例1と同様の方法でモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0043】
[比較例4]
実施例1で使用したポリアミド樹脂を、東レ製共重合ポリアミド樹脂(M6241M:融点190℃)、直径を3.63mmに変更した以外は、実施例1と同様にしてモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの評価結果を表1に示す。
【0044】
[比較例5]
実施例1の製法において、一次乾熱処理倍率を1.5倍に変更した以外は、実施例1と同様の方法で直径2.29mmポリアミドモノフィラメントを作成した。得られたモノフィラメントの弛緩熱処理を省略して、刈払い用コードとして使用した時の評価結果を表1示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1の結果から明らかなように、本発明の条件を満たすポリアミドモノフィラメント(実施例1〜4)は、いずれも刈払い用コードとして使用したときに、刈払い用コードを回転させて草を切るときの回転力を効率よく伝えることができることから、高い切草力を長期間維持することができると共に、ローター内で起こる摩擦熱による融着や、熱劣化などを軽減し、使用時のトラブルを未然に防ぐという優れた性能を具備するものであることがわかる。
【0047】
一方、本発明の条件を満たさないモノフィラメント(比較例1〜5)は刈払い用コードとしての効果を十分に発揮することができないものばかりであった。
【0048】
例えば、モノフィラメントの素材にポリエステルを使用した(比較例1)は、モノフィラメントが硬くなりすぎて草刈機のローターに巻き込むことができず、使用不可能であった。また、刈払い用モノフィラメントの素材にポリフッ化ビニリデンを使用した(比較例2)は、草刈機のローターにモノフィラメントを巻き込むことはできたが、実際に草刈をすると融点の低さ、曲げ硬さ指数が高くなりすぎることから、刈払い用コードがローター内で融着してしまうばかりか、草刈の途中で刈払い用コードが切れてしまい使用に耐えないものになってしまった。
【0049】
刈払い用コードの直径が細すぎる(比較例3)の場合は、モノフィラメントの絶対重量、曲げ剛性が低くなりすぎて切草性が悪くなった。
【0050】
刈払い用モノフィラメントを構成するポリアミドの融点が本発明の請求の範囲より低く、刈払い用モノフィラメントの直径が太すぎる(比較例4)の場合は、融点の低さから、刈払い用コードがローター内で融着してしまうばかりか、ローターにセットした刈払い用コードを回転させ草に当てて草を切るときの接触面が大きくなることにより衝撃力が分散してしまい、草が切れずに倒れてしまうために切草性が悪くなった。
【0051】
刈払い用コードの製法において、一次乾熱処理倍率が高過ぎる場合(比較例5)は、モノフィラメントの破断伸度が低くなるばかりか、曲げ硬さ指数が高くなりすぎることにより、刈払い用コードとして使用したとき途中で糸が切れてしまい使用に耐えないものになった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上、説明したとおり、本発明の刈払いコード用モノフィラメントは、刈払い用コードを回転させて草を切るときの回転力を効率よく伝えることができることから、高い切草力を長期間維持することができると共に、ローター内で起こる摩擦熱による融着や、熱劣化などを軽減し、使用時のトラブルを未然に防ぐという優れた性能を具備するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が200〜270℃のポリアミドモノフィラメントからなり、前記モノフィラメントの直径が1.5〜3.5mm、曲げ硬さ指数が0.05〜0.25cN/dtexであることを特徴とする刈払いコード用モノフィラメント。
【請求項2】
前記ポリアミドモノフィラメントが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66の相互共重合体から選ばれた少なくとも1種類以上のポリアミド樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の刈払いコード用モノフィラメント。
【請求項3】
ポリアミド樹脂をエクストルーダー型紡糸機に供給し、溶融混練後、ギヤポンプにより計量押出された紡出糸を、10〜80℃の冷却槽で冷却した後、延伸浴温度50〜98℃、延伸倍率1.2〜4.0倍の条件で延伸し、次いでこの延伸モノフィラメントに、処理温度100〜200℃の乾熱雰囲気下0.8〜1.0倍の一次熱処理を施し、さらに、この一次熱処理後のモノフィラメントを綛条に巻き上げた後、60〜100℃の湿熱雰囲気下30〜90分の二次熱処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の刈払いコード用モノフィラメントの製造方法。

【公開番号】特開2011−205931(P2011−205931A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75314(P2010−75314)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】