説明

列車内監視システム

【課題】連結した1編成の車両において、複数の監視システムが動作するようなシステムの場合には、障害発生時においては他方システムからもう一方のシステム状況が判断できないため、最悪の場合その障害に気付かないといった状況になってしまうおそれがあった。本発明は、2つ以上の異なる系統のシステムを連結して、運用者が1つのシステムとして利用することができるシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】異なる系の監視システムを備えた複数の車両系を連結したときに、管理サーバ同士が通信を行い、主とする管理サーバを定め、主とする管理サーバに他のサーバから障害情報を伝送することによって、異なるシステムの列車同士若しくは車両同士が連結された場合でも、2つ以上のシステムを1つのシステムとして運用させるようにした列車内監視システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネットワークを用いた列車内監視システムに関わり、特に、異なる車両若しくは編成の列車同士が連結された場合の列車内監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の列車内監視では通常、車両毎にクローズ(または決められた編成毎にクローズ)されているシステムであり、例えば異なる2つの列車が連結した場合でも監視システムはお互い通信することなく、別々に動作(機能)していた。
【0003】
【特許文献1】特開2004−064493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、連結した1編成の車両において、例えば2つの監視システムが動作していると運用側はこの2つのシステムに対して対応する必要があった。そして、そのようなシステムの場合には、障害発生時においては他方システムからもう一方のシステム状況が判断できないため、最悪の場合その障害に気付かないといった状況になってしまうおそれがあった。従来技術としては、例えば特許文献1のように、同一構成を有する車両間での通信を、車両間通信装置を用いて無線で行っている列車内の販売商品の提供システムの開示がある。しかし、2つ以上の異なる系統のシステムの連結利用というような技術については記載がない。
本発明は、2つ以上の異なる系統のシステムを連結して、運用者が1つのシステムとして利用することができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、ネットワークを用いたシステムであて、列車毎にこのネットワーク状況を常に判断している管理サーバを備える管理システムにおいて、管理サーバ同士が通信を行い、主とする管理サーバを定め、主とする管理サーバに他のサーバから障害情報を伝送することによって、異なるシステムの列車同士若しくは車両同士が連結された場合でも、2つ以上のシステムを1つのシステムとして運用させるようにした列車内監視システムである。
また望ましくは、上記発明の列車内監視システムは複数の管理サーバすべてに、他の管理サーバからの情報が伝達され、それぞれの管理サーバの表示部に障害情報が出力されるようにしたものである。
即ち本発明は、1車両で構成された列車、若しくは複数の車両が連結された列車の車両内を監視する監視端末と、上記列車の車両に搭載し車両内の映像を撮影するネットワークカメラと、上記列車の車両間の通信に用いるネットワーク回線と、上記ネットワークカメラが撮像する映像をネットワーク回線を介して上記監視端末に送信するネットワークスイッチとを備えた列車内監視システムであって、複数の異なる列車同士が連結された場合に、該複数の異なる列車同士の監視端末同士を通信手段によって接続するためのメディアコンバータを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、障害発生時なども迅速な対応をとることができる。
それぞれ少なくとも構成若しくはシステムの異なる2以上の編成された列車同士若しくは車両同士を連結して使用する際に、監視情報の相互乗り入れ、並びに、連結した全体を1つのシステムとして運用できるようにすることにより、運用者の監視等のシステムの作業効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
列車内の監視システムとしてネットワークを用いたシステムの場合、基本は車両毎にクローズされたシステムになることが多い。しかし実際には、車両の連結等で異なる車両系の車両同士が接続されることもある。この異なる系の車両同士が連結された場合の効率的な障害監視について、以下に述べる。
【0008】
本発明の一実施形態を以下図面を参照して説明する。図1は、本発明の列車内監視システムの一実施例の構成を説明するための図である。101aはA車両系、101bはB車両系、11は車両内を撮影するネットワークカメラ、12はネットワークスイッチ( SW )、13aはA車両系101aの列車の監視システム全体を管理する監視端末(管理サーバ)、13bはB車両系101bの列車の監視システム全体を管理する監視端末(管理サーバ)、14は車両の状態情報を車両内の各種センサからの情報を集積して車両を制御するための車両情報制御装置、15aと15bは他の列車(車両系)が連結される場合に他の列車の監視システムと通信を行うための伝送装置であるメディアコンバータ( MC )、16、17a、及び17bはネットワーク回線、1a−0は車両( a0 )、1a−1は車両( a1 )、‥‥‥、1a−kは車両( ak )、1b−0は車両( b0 )、1b−1は車両( b1 )、‥‥‥、1b−nは車両( bn )である。ネットワークスイッチ12は例えばスイッチングハブである。なお、kとnは、自然数である。
【0009】
図1において、ネットワークカメラ11は、1車両内に1台以上設置され、撮影した映像をリアルタイムでネットワークスイッチ12を介してネットワーク経由で監視端末13a若しくは13bに伝送する。このように、ネットワークスイッチ12は、各設備間を接続する。
ネットワークスイッチ12は、列車の各車両に設置されており車両間の接続やネットワークカメラ11及び監視端末13aや13bが接続される。
監視端末13a、13bは、ネットワークスイッチ12に接続され、1つの編成(A車両系若しくはB車両系)に1台は必ず設置される。これは車両内に設置されているカメラの情報やスイッチの情報等を管理しており、他の車両系が連結された場合はその他方の監視端末と通信を行い互いのシステムを1つのシステムとして利用させることが可能となる。
また、列車側からの情報を受信することにより、例えば操作端末の画面上に自動でカメラの表示割付を行ったりすることも可能となっている。なお、車両の連結情報は、車両側の車両情報制御装置14から受信する。
なお、ネットワークスイッチ12は、例えば、デイジーチェーン方式で、それぞれの車両間で接続されても良い。
【0010】
ネットワークカメラ11は、例えば、カラーカメラであり、映像をネットワーク回線上に送出するためIP( Internet Protocol )対応である。ネットワークカメラ11は、それぞれの属する車両系の監視端末(管理サーバ)13a若しくは13bのIPアドレスが登録され、そのIPアドレスに撮影した映像を伝送する。この時、例えば、車両( a1 )1a−1に搭載されたネットワークスイッチ12は、同じ車両( a1 )1a−1に搭載されたネットワークカメラ11から映像データを受信し、A車両系101の車両( a0 )に搭載された監視端末13aに伝送する。またネットワークスイッチ12は、同じ車両内のネットワークカメラ11のIPアドレスが付けられたデータを受信した時には該当するデータをネットワークカメラ11に送信する。
尚、図示しない別の機器のIPアドレスであってもそのネットワークスイッチ12に属するIPアドレスであればそのデータを該当するIPアドレスを持つ機器に送信する。従って、車両( a0 )1a−0では、自身の車両( a0 )1a−0内に搭載されたネットワークカメラ11からの映像データは、ネットワーク回線16ではなく、ネットワーク回線17aを介して監視端末13aに送信する。
なお、ネットワークカメラ11は、例えば、別にWEBエンコーダが具備するなら撮影機能を備えたカメラでも良い。
【0011】
監視端末(管理サーバ)13a若しくは13bは、自身の車両系に属する各ネットワークカメラ11が撮像した映像を監視すると共に、列車内監視システム内のネットワーク機器を監視する。
例えば、障害が発生した場合には、瞬時に画面上にその対象機器を表示し、システム内で発生した障害を迅速に判断する。また、異なる他の車両系との接続を考慮し、異なる車両系との連結があった場合には、それぞれの車両系のことなる2つのシステムを1つのシステムとして運用する。即ち、一方の車両系の監視端末が主監視端末となり、他方の監視端末が従属するようにする。
これによって、障害情報は、両方の監視端末に、同時に表示される。このため、他方の車両系で発生した障害の確認ができる。
【0012】
メディアコンバータ15a若しくは15bは、他の車両系との連結を行う伝送装置であり、例えば、光伝送装置である。A車両系101aとB車両系101bとの連結により、他方のメディアコンバータと対になり2つの車両系間で通信を行う。なお、車両系は1台の車両で構成されていも良い。
【0013】
具体的な動作としては、例えば、
(1)A車両系101aとB車両系101bの連結が行い、かつ、メディアコンバータ15aと15b間で光ケーブルの接続が為される。この状態で、メディアコンバータ15aと15b間のデータ通信が可能な状態となる。
(2)次に、監視端末13aと13bは、車両情報により連結されたことを確認する。その後、相手の監視端末との通信を行い、自分の車両内にある監視システム情報を転送する。
(3)互いの監視端末で情報の共有を行った後、1つのシステムとして動作する。
(4)障害が発生した場合には、互いの端末上に情報を表示する。一方の監視端末に障害が発生した場合にはもう一方の監視端末から直接カメラを接続して映像確認することが可能となる。
【0014】
上記連結時の運用動作を図2によって説明する。図2は、本発明の列車内監視システムの一実施例を説明するための模式的なフローチャートである。これらの処理動作は、それぞれの監視端末13a若しくは13bが制御する。また、監視端末13aが処理するステップにはサフィックスaを付し、監視端末13bが処理するステップにはサフィックスbを付している。
【0015】
先ず、ステップS201aでは、A車両系101aは所定の時間間隔(所定の周期)で他の車両系(例えば、B車両系101b、以下、他の車両系をB車両系101bとして説明する)の監視端末13bが接続されているか否かを判定する。もし接続されていなければステップS201aの処理を所定の周期で繰り返す。また接続されていればステップS202aに処理を移行する。同様にB車両系101bでは、ステップS201bで、A車両系101aの監視端末13aが接続されているか否かを判定する。もし接続されていなければステップS201bの処理を所定の周期で繰り返す。また接続されていればステップS202bに処理を移行する。
ステップS202bでは、監視端末13bは、自車両系の各ネットワークカメラ11の接続情報をA車両系101aの監視端末13aに送信し、ステップS204bに処理を移行する。ステップS203aでは、監視端末13aは、B車両系101bのネットワークカメラ11の設定情報を図示しない記憶ユニットに登録し、ステップS205aに処理を移行する。
【0016】
ステップS204bでは、監視端末13bは、自車両系(B車両系101b)内に障害が発生したか否かを所定の時間間隔(所定の周期)で監視し、障害が発生したと判定した時にはステップS205bに処理を移行する。また、否である時にはステップS204bに戻り所定の周期でステップS204bの処理を繰り返す。
ステップS205bでは、B車両系101bで発生した障害情報を、自監視端末13bのIDと、映像データと共に、監視端末13aに送信し、ステップS208bに処理を移行する。なお映像データは、障害発生のあった車内を監視するネットワークカメラが取得した映像データである。
ステップS205aでは、B車両系101bから障害情報の通知が有か否かを判定する。障害情報の通知がある時はステップS206aに処理を移行し、否である時はステップS205aに戻り、所定の周期でステップS205aの処理を繰り返す。
ステップS206aでは、通知された障害情報が監視端末13bからの情報か否かを障害情報に付加されたIDによって判定する。通知された障害情報が監視端末13bからの情報である時は、ステップS207aに処理を移行し、否である時には、情報を無視し、ステップS205aに戻り、所定の周期でステップS205aの処理を繰り返す。
ステップS207aでは、障害情報を監視端末13aの図示しない出力部に出力し、ステップS208aに処理を移行する。出力する項目は、通知された障害情報であるが、例えば、障害が発生した時の車両内の映像、時刻、障害が発生した車両を特定する情報(例えば、何号車であるかの情報)、障害の内容、等である。
【0017】
ステップS208aでは、他車両(例えば、B車両系101b)との接続が有か否かを判定する。接続がある時はステップS205aに戻り、所定の周期で、ステップS205aを繰り返す。また、否である時には、ステップS209aに処理を移行する。
ステップS209aでは、ステップS208aで、連続して接続がなかった回数をカウントし、所定の回数m(mは自然数)を超えた時には、接続が切断された(即ち、列車の連結が解かれた)と判定して、ステップS210aに処理を移行し、否である時には、ステップS208aに戻り、ステップS208aの処理を繰り返す。
ステップS210aでは、B車両系101aの設定情報を削除し、ステップS201aに処理を戻す。
同様に、ステップS208bでは、他車両(例えば、A車両系101a)との接続が有か否かを判定する。接続がある時はステップS204bに戻り、所定の周期で、ステップS204bの処理を繰り返す。また、否である時には、ステップS209bに処理を移行する。
ステップS209bでは、ステップS208bで、連続して接続がなかった回数をカウントし、所定の回数q(qは自然数)を超えた時には、接続が切断された(即ち、列車の連結が解かれた)と判定して、ステップS201bに処理を戻し、否である時には、ステップS208bに戻り、ステップS208bの処理を繰り返す。
【0018】
上述の実施例によれば、従来は、各編成に1台は必ず監視端末(管理サーバ)が設置されていたがあくまで自車両内のシステムを管理するものであり連結時のシステム連動は考えられていなかった。よって、車両連結時は互いの車両がそれぞれの管理サーバのもとでシステムが運用されているので運用者としてはシステム確認をそれぞれの監視端末で行う必要があった。この車両連結システムを利用することにより運用者側の運用の手間が大幅に改善される。また、互いのシステムが連動することによりシステム障害を迅速に判断することができ、万が一の場合は他方のシステムからもう一方のシステムを動作させることが可能となる。また、一部システム機能の冗長化が可能となる。
【0019】
即ち、上記実施例によれば、車両の1編成において2つの監視システムを管理及び運用しなければならない運用者側の作業効率を大幅に改善することができる。また、システム内に障害が発生した場合は他方のシステムからもう一方を運用可能とすることで障害発生時の迅速な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の列車監視システムの一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の列車監視システムの運用動作の一実施例を説明するための模式的なフローチャート。
【符号の説明】
【0021】
1a−0:車両、 1a−1〜1a−k:車両、 1b−0:車両、 1b−1〜1b−n:車両、 11:ネットワークカメラ、 12:ネットワークスイッチ、 13a、13b:監視端末、 14:車両情報制御装置、 15a、15b:メディアコンバータ、 16、17a、17b:ネットワーク回線、 101a:A車両系、 101b:B車両系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1車両で構成された列車、若しくは複数の車両が連結された列車の車両内を監視する監視端末と、上記列車の車両に搭載し車両内の映像を撮影するネットワークカメラと、上記列車の車両間の通信に用いるネットワーク回線と、上記ネットワークカメラが撮像する映像をネットワーク回線を介して上記監視端末に送信するネットワークスイッチとを備えた列車内監視システムであって、複数の異なる列車同士が連結された場合に、該複数の異なる列車同士の監視端末同士を通信手段によって接続するためのメディアコンバータを備えたことを特徴とする列車内監視システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−273009(P2009−273009A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123349(P2008−123349)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】