説明

列車無線システム及び列車無線用地上基地局

【課題】列車の速度情報も利用して、地上基地局のアンテナのON/OFFを行うことにより、通信が断絶する可能性を改善できる列車無線システム及び列車無線用地上基地局を得る。
【解決手段】地上基地局10方向から地上基地局30方向へ走行し、自動列車制御装置21を含む列車20を備え、列車20は、地上子213上を通過すると、自動列車制御装置21から地上子213へ、地上子213から地上基地局30までの距離を含む位置情報及び列車20の速度情報を送り、地上基地局30は、地上子213から入力した位置情報及び速度情報に基づいて、スイッチ切替までの時間Tを求め、このスイッチ切替までの時間Tが経過したら、列車20との間で通信を開始し、地上基地局10は、地上基地局30から送られてきた、スイッチ切替までの時間Tが経過したことを示す制御信号に基づき、列車20との間で通信を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、列車の通過情報だけでなく、列車の速度情報も利用して、地上基地局のアンテナのON/OFFを行う列車無線システム及び列車無線用地上基地局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられている、列車無線における通信品質を向上させる方法として、軌道回路により列車が通過したことを感知し、感知した情報をもとに地上基地局への通信開始、終了を指示するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−236463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような課題がある。軌道回路により列車が通過したことを感知し、感知した情報をもとに、地上基地局への通信開始、終了を指示するものであるが、列車の通過感知にのみ基づいて通信開始、終了を指示するため、例えば異常発生により想定より低速状態で走行している列車の場合、通信開始、終了のタイミングが平常時と異なるため、一時的に通信が断絶する可能性がある。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、列車の通過情報だけでなく、列車の速度情報も利用して、地上基地局のアンテナのON/OFFを行うことにより、通信が断絶する可能性を改善できる列車無線システム及び列車無線用地上基地局を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る列車無線システムは、第1の地上基地局と、前記第1の地上基地局に隣接する第2の地上基地局と、前記第1の地上基地局方向から前記第2の地上基地局方向へ走行し、自動列車制御装置を含む列車とを備え、前記列車は、地上子上を通過すると、前記自動列車制御装置から前記地上子へ、前記地上子から前記第2の地上基地局までの距離を含む位置情報及び列車の速度情報を送り、前記第2の地上基地局は、前記地上子から入力した位置情報及び速度情報に基づいて、スイッチ切替までの時間を求め、このスイッチ切替までの時間が経過したら、前記列車との間で通信を開始し、前記第1の地上基地局は、前記第2の地上基地局から送られてきた、前記スイッチ切替までの時間が経過したことを示す制御信号に基づき、前記列車との間で通信を終了するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る列車無線システムによれば、列車の通過情報だけでなく、列車の速度情報も利用して、地上基地局のアンテナのON/OFFを行うことにより、通信が断絶する可能性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る列車無線システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る列車無線システムの地上基地局のスイッチ切替タイミング計算部の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係る列車無線システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の列車無線システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0010】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る列車無線システムについて図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る列車無線システムの構成を示す図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0011】
図1において、この発明の実施の形態1に係る列車無線システムは、地上基地局10と、地上基地局30と、地上基地局10方向から地上基地局30方向へ走行する列車20と、地上基地局間を接続する通信ケーブル40とが設けられている。なお、SAは、列車20から地上子213へ受け渡される速度/位置情報を表わす。
【0012】
地上基地局10は、スイッチ切替タイミング計算部11と、切替スイッチ12と、基地局アンテナ13とが設けられている。
【0013】
列車20は、自動列車制御装置21と、車上側アンテナ22と、送受信器23とが設けられている。また、自動列車制御装置21は、位置情報照査部211と、速度パターン作成部212と、通信ケーブル40に接続され線路に設置された地上子213とが設けられている。
【0014】
地上基地局30は、スイッチ切替タイミング計算部31と、切替スイッチ32と、基地局アンテナ33とが設けられている。
【0015】
つぎに、この実施の形態1に係る列車無線システムの動作について図面を参照しながら説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る列車無線システムの地上基地局のスイッチ切替タイミング計算部の動作を示すフローチャートである。
【0016】
最初に、列車20の車上側アンテナ22と、図1上右側の地上基地局10の基地局アンテナ13が通信を行っている状態であり、地上基地局10の切替スイッチ12がON、図1上左側の地上基地局30の切替スイッチ32がOFFの状態であると仮定する。
【0017】
列車20が地上子213上を通過することにより、自動列車制御装置21に含まれている位置情報照査部211及び速度パターン作成部212より、位置情報及び速度情報が地上子213にそれぞれ送られる。位置情報照査部211は、GPS等から得た現在位置から該当する地上子213と地上基地局30の間の距離を位置情報として出力する。また、速度パターン作成部212は、速度センサや、加速度センサから得た列車20の速度や、加速度を速度情報として出力する。
【0018】
スイッチ切替タイミング計算部31は、地上子213に送られた自局宛の位置情報及び速度情報を、通信ケーブル40を経由して入力する(ステップ101)。スイッチ切替タイミング計算部31では、位置情報及び速度情報から、スイッチ切替までの時間Tを計算する(ステップ102)。
【0019】
例えば、速度情報として、地上子213の通過時点での速度がV、加速度がAであり、位置情報として、地上子213から地上基地局30までの距離がDであり、地上基地局30から地上子213方向の距離がRの位置でスイッチを切り替えるとすると、スイッチ切替までの時間Tは、次の式(1)により求められる。
【0020】
【数1】

【0021】
一方、加速度が0の一定速度で列車20が走行している場合、スイッチ切替までの時間Tは、次の式(2)により求められる。
【0022】
【数2】

【0023】
そして、スイッチ切替タイミング計算部31は、計算した時間Tだけ経過したら、切り替え制御信号を切替スイッチ32へ出力する(ステップ103)。この切り替え制御信号により、切替スイッチ32がOFFからONに切り替えられ、地上基地局30の基地局アンテナ33と列車20の車上側アンテナ22との間で通信が開始される。
【0024】
このとき、同時に、これまで車上側アンテナ22と通信を行っていた地上基地局10の基地局アンテナ13に接続されている切替スイッチ12がONからOFFに切り替わり、基地局アンテナ13と車上側アンテナ22との通信が切断される。
【0025】
すなわち、スイッチ切替タイミング計算部31は、計算された時間Tだけ経過したら、切り替え制御信号を、通信ケーブル40、地上基地局10のスイッチ切替タイミング計算部11を経由して、地上基地局10の切替スイッチ12へ出力する。このとき、地上基地局10宛であることを示すアドレスを付加する。この切り替え制御信号により、切替スイッチ12がONからOFFに切り替えられる。
【0026】
あるいは、送受信器23は、基地局アンテナ33と車上側アンテナ22との間で通信を開始するとき、基地局アンテナ13と車上側アンテナ22との間の通信を切断する前に、車上側アンテナ22から基地局アンテナ13へこれから通信を切断し、スイッチを切り替えることを要求する切り替え制御信号を送る。このとき、地上基地局10宛であることを示すアドレスを付加する。この切り替え制御信号により、切替スイッチ12がONからOFFに切り替えられる。
【0027】
あるいは、地上基地局10のスイッチ切替タイミング計算部11は、地上基地局30のスイッチ切替タイミング計算部31と同時に、地上子213に送られた自局宛の位置情報及び速度情報を、通信ケーブル40を経由して入力する。スイッチ切替タイミング計算部11では、位置情報及び速度情報から、スイッチ切替までの時間Tを計算し、計算した時間Tだけ経過したら、切り替え制御信号を切替スイッチ12へ出力する。この切り替え制御信号により、切替スイッチ12がONからOFFに切り替えられる。
【0028】
以上により、複数の地上基地局の基地局アンテナ13、33からの電波が互いに干渉することが無く、また最適なタイミングで車上側アンテナ22と通信を行う基地局アンテナを切り替えることができるため、信頼性の高い列車無線システムを実現することができる。
【0029】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る列車無線システムについて図3を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態2に係る列車無線システムの構成を示す図である。
【0030】
図3において、この発明の実施の形態2に係る列車無線システムは、地上基地局10と、列車20と、地上基地局30と、地上基地局間を接続する通信ケーブル40とが設けられている。なお、SBは、列車20から地上子213へ受け渡される切替タイミング情報を表わす。
【0031】
地上基地局10は、切替スイッチ制御部14と、切替スイッチ12と、基地局アンテナ13とが設けられている。
【0032】
列車20は、自動列車制御装置21と、車上側アンテナ22と、送受信器23と、地上基地局の位置情報を保持しているデータ保持部24と、スイッチ切替タイミング計算部25とが設けられている。また、自動列車制御装置21は、位置情報照査部211と、速度パターン作成部212と、通信ケーブル40に接続され線路に設置された地上子213とが設けられている。
【0033】
地上基地局30は、切替スイッチ制御部34と、切替スイッチ32と、基地局アンテナ33とが設けられている。
【0034】
つぎに、この実施の形態2に係る列車無線システムの動作について図面を参照しながら説明する。
【0035】
自動列車制御装置21内の位置情報照査部211及び速度パターン作成部212より、位置情報及び速度情報が、スイッチ切替タイミング計算部25へ出力される。
【0036】
列車20が地上子213上を通過することにより、スイッチ切替タイミング計算部25では、位置情報及び速度情報から、スイッチ切替までの時間Tを、前述の式(1)もしくは(2)によって計算する。計算によって求められた、スイッチ切替までの時間Tの情報は、地上子213に送られ、切替スイッチ制御部34、14へそれぞれ出力される。
【0037】
切替スイッチ制御部34は、スイッチ切替までの時間Tだけ経過したら、切り替え制御信号を切替スイッチ32へ出力し、切替スイッチ32をOFFからONに切り替え、基地局アンテナ33と車上側アンテナ22との間で通信が開始される。このとき、同時に、これまで車上側アンテナ22と通信を行っていた基地局アンテナ13に接続されている切替スイッチ12が、スイッチ切替までの時間Tだけ経過後に、切替スイッチ制御部14からの切り替え制御信号により、ONからOFFに切り替えられ、基地局アンテナ13と車上側アンテナ22との通信が切断される。
【0038】
以上により、複数の基地局アンテナ13、33からの電波が互いに干渉することが無く、また最適なタイミングで車上側アンテナ22と通信を行う基地局アンテナを切り替えることができるため、信頼性の高い列車無線システムを実現することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 地上基地局、11 スイッチ切替タイミング計算部、12 切替スイッチ、13 基地局アンテナ、14 切替スイッチ制御部、20 列車、21 自動列車制御装置、22 車上側アンテナ、23 送受信器、24 データ保持部、25 スイッチ切替タイミング計算部、30 地上基地局、31 スイッチ切替タイミング計算部、32 切替スイッチ、33 基地局アンテナ、34 切替スイッチ制御部、40 通信ケーブル、211 位置情報照査部、212 速度パターン作成部、213 地上子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の地上基地局と、
前記第1の地上基地局に隣接する第2の地上基地局と、
前記第1の地上基地局方向から前記第2の地上基地局方向へ走行し、自動列車制御装置を含む列車とを備え、
前記列車は、地上子上を通過すると、前記自動列車制御装置から前記地上子へ、前記地上子から前記第2の地上基地局までの距離を含む位置情報及び列車の速度情報を送り、
前記第2の地上基地局は、前記地上子から入力した位置情報及び速度情報に基づいて、スイッチ切替までの時間を求め、このスイッチ切替までの時間が経過したら、前記列車との間で通信を開始し、
前記第1の地上基地局は、前記第2の地上基地局から送られてきた、前記スイッチ切替までの時間が経過したことを示す制御信号に基づき、前記列車との間で通信を終了する
ことを特徴とする列車無線システム。
【請求項2】
列車との間で通信を行う基地局アンテナと、
前記基地局アンテナによる通信のON/OFFを切り替える切替スイッチと、
前記列車が地上子上を通過してこの地上子から入力した、前記地上子から自局までの距離を含む位置情報及び列車の速度情報に基づいて、スイッチ切替までの時間を求め、このスイッチ切替までの時間が経過したら、切り替え制御信号を出力するスイッチ切替タイミング計算部とを備え、
前記切替スイッチは、前記切り替え制御信号に基づき、OFFからONへ切り替わり、
前記基地局アンテナは、前記切替スイッチがOFFからONへ切り替わることにより前記列車との間で通信を開始する
ことを特徴とする列車無線用地上基地局。
【請求項3】
第1の地上基地局と、
前記第1の地上基地局に隣接する第2の地上基地局と、
前記第1の地上基地局方向から前記第2の地上基地局方向へ走行し、自動列車制御装置を含む列車とを備え、
前記列車は、地上子上を通過すると、前記自動列車制御装置により、保持している前記地上子から前記第2の地上基地局までの距離を含む位置情報及び列車の速度情報に基づいて、スイッチ切替までの時間を求め、前記自動列車制御装置から前記地上子へ、スイッチ切替までの時間情報を送り、
前記第2の地上基地局は、前記地上子から入力したスイッチ切替までの時間情報に基づいて、スイッチ切替までの時間が経過したら、前記列車との間で通信を開始し、
前記第1の地上基地局は、前記地上子から入力したスイッチ切替までの時間情報に基づいて、スイッチ切替までの時間が経過したら、前記列車との間で通信を終了する
ことを特徴とする列車無線システム。
【請求項4】
列車との間で通信を行う基地局アンテナと、
前記基地局アンテナによる通信のON/OFFを切り替える切替スイッチと、
前記列車が地上子上を通過してこの地上子から入力した、スイッチ切替までの時間情報に基づいて、スイッチ切替までの時間が経過したら、切り替え制御信号を出力する切替スイッチ制御部とを備え、
前記切替スイッチは、前記切り替え制御信号に基づき、OFFからONへ切り替わり、
前記基地局アンテナは、前記切替スイッチがOFFからONへ切り替わることにより前記列車との間で通信を開始する
ことを特徴とする列車無線用地上基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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