初動緩和高周波数神経ブロック
初動活動を低減させた状態で神経を介した信号伝達をブロックする方法は、軸索を介した信号の伝達をブロックするためにHFACを神経の軸索に印加するステップを含む。上記方法はまた、直流(DC)を軸索に印加するステップと、時間が経つにつれてDCの振幅を予め定められた振幅に増加させるステップと、HFACを印加するステップと、次いでDCを減少させるステップとを含み得る。上記方法はまた、軸索を介した信号の伝達を可能にするためにHFACの振幅を一時的に低減させるステップと、その後、初動反応を引起すことなく伝達をブロックするために振幅を増加させるステップとを含み得る。上記方法はまた、平衡がとれていない電荷を神経に一時的に印加するステップと、次いで、時間が経つにつれて電荷を平衡させるステップとを含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、「高周波数神経ブロックのシステムおよび方法(System and Method For High Frequency Nerve Block)」と題される、同一の発明者によって2007年10月29日に出願された米国仮出願第60/983,420号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府の資金提供の表示
本発明は、NIH(国立画像生物医学・生物工学研究所(National Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering))が認めた認可番号EB002091のもとで政府の支援を受けて行なわれた。連邦政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
著作権表示
この特許文献の開示の一部は、著作権保護を受ける材料を含んでいる。著作権所有者は、特許商標庁の包袋または記録に掲載されるように特許文献または特許情報開示をファックス再生することに異議はないが、他の点では何があってもすべての著作権の権利を保有する。
【背景技術】
【0004】
背景
神経インパルスの好ましくないおよび/または協調性のない発生は、病状によっては障害を引起す要因になり得る。たとえば、協調性のない運動信号は、卒中での痙縮、脳性麻痺、多発性硬化症、および他の症状を引起し得る。協調性のない信号の結果として、所望の機能運動ができなくなる可能性がある。チック症、舞踏病などを含む症状での不随意運動信号は、好ましくない動きを引起し得る。さらに、好ましくない感覚信号は痛みを引起す可能性がある。従来のアプローチは、神経インパルスを伝える神経に沿って好ましくないまたは協調性のない神経インパルスを遮って、障害を引起す症状を減らそうおよび/または無くそうと試みてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの症状の治療に関連する従来のアプローチは、満足のいかない結果を生み出してきた。たとえば、薬物治療は、好ましくない副作用を引起し、特定の神経に対して特異的に作用するのではなく身体に全体的に作用し、即効性がなく、迅速に元に戻せなかったかもしれない。化学治療(たとえば、ボトックス、フェノールブロック)は、より特異的に適用され得るが、神経に対して破壊的であり、再適用する必要があり、迅速に元に戻せなかったかもしれない。他の従来の痛みの治療(たとえば、経皮的電気神経刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation)(TENS)、植込型痛み刺激器)も、生み出す結果は最適以下であった。
【0006】
交流(AC)神経刺激も直流(DC)神経刺激も当該技術分野において公知である。神経に対する高周波交流(high-frequency alternating current)(HFAC)の抑制効果については、1900年代初頭から報告されている。さらに、DC電気神経刺激は、神経活動の完全に近いブロックを発生させることが実証されている。しかしながら、従来のDC刺激は、長期間にわたって送られると、身体組織および/または電極の両方に損傷を与えていた。したがって、従来のDC刺激は、特定の用途には適さなかった。DC神経ブロックが引起す損傷は、少なくとも部分的には、神経に印加される電荷の平衡がとれていないことに起因する。組織にゼロ正味電荷を送るHFACは、神経ブロックの方法としてはより安全であるように思われる。しかしながら、HFACが神経に送られると、HFACは、望ましくなくかつ痛みを伴うであろう神経の活動のバーストを引起す。HFACが発生させる活動のバーストは、初動活動と称される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本願は、システム外で神経の活動を発生させることなく神経を介した信号伝達をブロックするための装置、システムおよび方法に関する。一例は、HFACベースの神経伝導ブロックの初動に対する神経の望ましくない反応を無効にする、防ぐ、または最小限にする組合せで、DCおよび高周波交流(HFAC)を印加することに関する。
【0008】
神経信号伝達をブロックする1つの例示的な方法は、第1の振幅のDCを神経の軸索に印加するステップと、次いで、ある期間にわたってDCの振幅を予め定められた第2の振幅に増加させるステップとを備える。DCが第2の振幅に達した後、HFACが印加される。HFACが印加された後、DCの振幅は減少する。
【0009】
神経信号伝達をブロックする別の例示的な方法は、信号伝達をブロックする第1の振幅のHFACを印加するステップを備える。上記方法は、軸索を介した信号の伝達を可能にするためにHFAC振幅を一時的に低減させるステップを含む。上記方法はまた、再び伝達をブロックするために、その後選択的にHFAC振幅を増加させるステップを含む。この例では、その後のブロッキングは、初動反応を引起すことなく行なわれる。
【0010】
神経信号伝達をブロックする別の例示的な方法は、平衡がとれていない電荷を神経の軸索に一時的に印加するステップを備える。一例では、平衡がとれていない電荷を印加するステップは、平衡がとれていない電荷ACを軸索に印加するステップと、時間が経つにつれて当該電荷を平衡させるステップとを含み得る。別の例では、平衡がとれていない電荷を印加するステップは、平衡がとれていない電荷ACを軸索に印加するステップと、電荷を平衡させながら、時間が経つにつれて振幅を変化させるステップとを含み得る。別の例では、平衡がとれていない電荷を印加するステップは、振幅が増加するDC電荷を印加するステップと、予め定められた振幅に達した後、平衡がとれていないACを印加するステップと、時間が経つにつれてAC振幅およびAC電荷のバランスを徐々に増加させるステップとを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】神経ブロックに関連する開ループ装置を示す。
【図2】神経ブロックに関連する開ループ装置を示す。
【図3】神経ブロックに関連する閉ループ装置を示す。
【図4】神経ブロックに関連する閉ループ装置を示す。
【図5】初動緩和神経ブロックに関連するDCおよびHFACの組合せを示す。
【図6】初動緩和神経ブロックに関連する方法を示す。
【図7】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図8】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図9】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図10】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図11】初動反応が緩和された神経伝導ブロックの提供に関連する方法を示す。
【図12】初動反応が緩和された神経伝導ブロックの提供に関連する方法を示す。
【図13】初動反応が緩和された神経伝導ブロックの提供に関連する装置を示す。
【0012】
明細書に組入れられ、明細書の一部を構成する添付の図面は、さまざまな例示的なシステム、方法、およびこの発明のさまざまな局面の他の例示的な実施例を示している。図中の示される要素の境界(たとえば、ボックス、ボックスの群、または他の形状)は境界の一例を表わしていることを理解されたい。当業者は、いくつかの例では、1つの要素が複数の要素として示される場合もあれば、複数の要素が1つの要素として示される場合もあることを理解する。いくつかの例では、別の要素の内部構成要素として示されている要素が外部構成要素として実現されてもよく、逆の場合も同様である。さらに、要素は一定の比例に応じて描かれていない可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
例示的なシステム、方法および装置は、HFAC波形を用いて神経ブロックを発生させる。HFAC波形によって発生したブロックは、単に疲労ブロックではなく、神経における伝導ブロックである。ブロックは、「神経伝導ブロック」と称されてもよい。ブロックは、疲労しすぎて反応できず、次のパルスまでにもはや回復できなくなるまで神経が刺激された結果ではない。HFAC波形は、軸索を介した信号伝達をブロックすることによって、神経を介した伝導をブロックする。ある神経の端部から別の神経の端部への化学信号の伝達を遮断する化学ブロックとは異なって、HFAC神経伝導ブロックは、神経の軸索が、ブロックのエリアを通り過ぎるいかなる信号も伝達することを防ぐ。ブロックは、神経膜における電位依存性イオンチャネルに対する影響で、電流がいかに活性化を発生させるか、または電流がいかに神経伝導をブロックするかに基づく。
【0014】
HFAC波形は、不活性化ゲートを閉鎖させる神経膜を脱分極させる。初動反応を発生させる生物物理学的機構は、神経膜に対する脱分極電流の効果に基づく。一般に、神経膜の脱分極は、高速ナトリウムイオンチャネルの開放を引起し、活動電位を起動する。しかしながら、神経を交流脱分極場に配置することは、実際には伝導の失敗を招くことになる。なぜなら、神経を交流脱分極場に配置することは、強制的に、不活性化ナトリウムイオンゲートを閉じたままにするためである。したがって、脱分極は、神経伝導の活性化およびブロッキングの両方に関与する。初動反応を発生させるのは、この動作の二分裂である。
【0015】
初動反応の2つの局面が存在する。第1の局面は、ブロック閾値に近いまたはブロック閾値を上回るACが印加されているそれらの神経線維で生じる単収縮反応の合計である。「ブロック閾値」は、その電圧を下回ると完全なブロックが得られない電圧として定義される。ブロック閾値は、周波数とともに増加する。ブロック閾値は、一般に、軸索の直径に反比例して変化する。さらに、ブロック閾値は、およそ電極からの軸索に対する垂直距離の二乗として変化する。電極が軸索に1ミリメートルよりも近づくと、軸索の長さに沿った電極位置は、ブロック閾値の振幅にも影響を及ぼす。
【0016】
一般に約20ミリ秒で生じる初期発火が終わると、これらの軸索はブロックされる。第2の局面は、何秒も続く可能性がある、ある期間の反復発火である。この第2の局面は、必ずしも存在するとは限らず、HFACの振幅が高くなるにつれて大幅に低減される傾向がある。この第2の局面は、電極から広がる電流の外縁上にある軸索の反復発火に起因し得る。最終的に、これらの線維における発火は停止する。電気信号の振幅は、電極からの距離とともに減少する。振幅が高くなった状態での第2の局面の減少は、振幅が高くなることにより、神経線維のうちのより多くの神経線維が、十分な振幅を与えてブロックを発生させる領域内に完全に配置されることに関連し得る。電流勾配がより急であるので、反復発火を発生させる振幅領域内にはほとんど線維がない。
【0017】
不所望の初動を無くすことは、もっぱら、初動反応の両方の局面を無くすことを含む。反復局面は、振幅および周波数を調整することによって低減することができる。たとえば、30キロヘルツで10ボルトのピーク・トゥ・ピーク正弦波形は、反復局面を無くし得る。一般に、周波数および振幅を単独で変化させることによって初動反応全体を無くすことは不可能である。
【0018】
DC神経ブロックが引起す損傷は、神経に印加される電荷の不平衡に起因することを想起されたい。したがって、例示的なシステム、方法および装置は、ACを用いて電荷を平衡させる。電荷を平衡させることは、平衡がとれていない電荷が引起す損傷を防ぐおよび/または最小限にする。純粋なAC神経ブロックは、通常、起動時に神経から初動反応を発生させる。したがって、本明細書に記載されクレームされるいくつかの例は、最初にDCを神経に印加し、その後、HFACを神経ブロックに印加する。DCおよびHFACの組合せは、ブロックされるべき神経における初動反応の発生を防ぐように作られる。神経伝導ブロックとしてHFAC波形を利用する従来のアプローチは、HFAC波形を人間の患者に適用する際には通常許容できない初動反応を発生させる。
【0019】
交流に関連して本明細書において用いられる「高周波数」(たとえば、HFAC)は、約1キロヘルツを上回る周波数を指す。いくつかの例では、高周波数は、より具体的に5〜50キロヘルツを指す。本明細書に記載される例示的なシステム、方法および装置は、パルスあたり約4〜10ボルトの振幅を有する波形を利用する。本明細書に記載される例示的なシステム、方法および装置は、約1ミリアンペア〜約12ミリアンペアの電流を有する波形を利用する。これらの電圧およびアンペア数の範囲内で、より高い周波数を有する波形は、一般に、効果的なブロックを提供するためにより高い振幅を必要とする。
【0020】
本明細書に記載される例は、運動神経ブロック、感覚神経ブロックおよび自律神経ブロックを含む分野での適用例を有していてもよい。さらに、本明細書に記載される例は、ブロックがスイッチによって制御される開ループ構成、および/または、ブロックがセンサによって自動的に制御される閉ループ構成で適用されてもよい。
【0021】
図1は、神経における伝達のブロッキングに関連する例示的な装置20を示す。装置20は、HFACならびに/またはDC信号およびHFAC信号の両信号を神経26に送るのに好適な、コントローラ24に接続された電極22を含む。装置20は、コントローラ24がブロックの適用を制御するためにスイッチを含む開ループ構成を有する。この装置20の構成は、たとえば筋痙縮の制御を容易にし得る。装置20は、神経26の運動枝上のHFAC電極22の組によってHFACを印加してもよい。これは、神経26に関連する特定の筋肉を標的にすることを容易にし、その筋肉を弛緩させることを容易にする。一例では、装置20は、斜頸の治療に有用な胸鎖乳突ブロックを提供してもよい。
【0022】
図2は、たとえば、神経腫の痛み、失った外肢に関連する痛み、損傷を受けた外肢に関連する痛みなどをブロックするために用いられる装置30を示す。したがって、装置30は、正中神経ブロックを発生させてもよい。装置30は、HFACブロッキング電極32と、植込型コントローラ34とを備える。ブロッキング電極32は、神経腫に近位の神経に隣接して位置決めされてもよい。本願では、神経ブロックは、連続的に送られることができ、外部の信号装置36などを用いて引起すことができる。
【0023】
図3は、運動ブロックを提供する装置40を示す。運動ブロックは、記録された信号によって引起されてもよい。装置40は、閉ループシステムであり、難治性のしゃっくりをブロックするための用途で示されている。切迫性しゃっくりに関連する徴候(たとえば、生体信号)は、センサ42によって記録されてもよい。一例では、この徴候は、大信号として横隔神経上に現れ得る。この信号は、HFACブロックを横隔神経に適用するようにコントローラ44の作動を制御してもよい。ブロックは、横隔神経に隣接した電極46を用いて投与されてもよい。HFACブロックは、短い期間にわたって横隔膜の収縮を防ぎ、横隔膜にしゃっくりさせる信号を遮断および/または阻止する。
【0024】
筋肉を動かすことに関連する信号は、ユーザがその筋肉を動かそうとすると、記録されてもよい。信号は、神経に沿って伝播され得る。これらの信号は、卒中の患者、多発性硬化症を患う患者、脳性麻痺を患う患者などの痙縮筋肉の制御を容易にし得る。一例では、信号は、痙縮筋肉および非痙縮筋肉の両方から記録されてもよい。したがって、図4は、コントローラ52を含む装置50を示す。コントローラ52は、筋肉56および/または筋肉56を制御する神経におけるセンサ54からの信号を記録して処理するための記録装置を備える。コントローラ52は、筋肉56を制御する神経に隣接した電極60にHFAC波形を加えるように信号発生器58を制御する。
【0025】
痙縮は、筋肉の機能を低下させる。しかしながら、不所望の運動活動の部分的なブロックを発生させることによって、機能の改善が達成され得る。したがって、例示的な装置、方法などは、HFACブロックを迅速に反転させるように構成されてもよい。一例では、機能の改善は、たとえば神経活動、筋肉活動などを含む検知された活動に基づいて神経ブロックを変化させるインテリジェント制御システムとHFACブロックを組合せることによって達成されてもよい。
【0026】
例示的なシステム、方法および装置は、非初動および/または初動緩和HFACブロック解決策の少なくとも3つのカテゴリをもたらし得る。第1の例では、別個の「初動ブロッキング」電極がHFAC電極の両側にDCブロックを適用する。第2の例では、HFAC波形の、電荷の平衡がとれた状態での一過性の変動が、非初動および/または初動緩和HFACブロックを発生させる。第3の例では、HFAC波形の、電荷の平衡がとれていない状態での一過性の変動が、非初動および/または初動緩和HFACブロックを発生させる。
【0027】
図5は、HFACブロックを発生させるためのDC波形510とHFAC波形520との組合せを示す。一例では、DC波形510およびHFAC波形520は、別個の電極を用いて与えられる。一例では、DC波形およびHFAC波形は、1組の電極によって与えられる。DC波形510における電荷は、HFAC波形520がオンになる前に、領域512において増加する。領域514におけるDC波形510は、DCブロックを提供するのに十分な振幅を有しており、HFAC波形520からの初動反応をブロックすることになる。DC波形510は、一旦初動活動が完了すると、領域514において減少する。以下に記載する電荷不平衡波形とは異なって、この傾斜のついたDC波形510は、HFAC波形520が引起す初動活動を発生させることができるが、その初動活動が伝播することを防ぐ。このレベルのDCの連続的な送達は、DCを送る電極および付近の組織に損傷を与える可能性があるが、DCブロックをたまに短い期間適用することによって、このような損傷は生じないかもしれない。一例では、DCブロックは、HFACブロックがオンになるたびに、約100〜200ミリ秒間、送られる。単極電極によってDCブロックを発生させることができるので、一例では、DC電極およびHFAC電極は組合せられて単一の5極神経カフ電極にされてもよい。この5極神経カフ電極は、直流用の2つの外側電極と、HFAC用の3つの内側電極とを含んでいてもよい。電極のさらなる形態は、DCとHFACとが外側電極上で重ね合わせられる3極神経カフ電極を利用してもよい。
【0028】
図6は、初動緩和HFACに関連する方法を示す。方法600は、610において、神経の初動活動を変更するために第1の波形をその神経に加えるステップを含む。方法600はまた、620において、第2の一過性の波を神経に加えるステップを含む。方法600はまた、630において、神経においてHFACブロックを継続させるために第3の定常状態波を神経に加えるステップを含む。
【0029】
図7は、ブロック閾値を上回る急速な初動ブロックを適用して、初期初動反応を受入れるステップを含む電荷平衡アプローチを示す。このアプローチでは、振幅は次いでブロック閾値以下に下げられるが、反復発火のゾーンを回避するのに十分に高く維持される。以前にブロックされた神経は、通常、この振幅でHFAC送達領域を介して伝導できる。次いで、ブロックが要求されると、振幅はブロック閾値に増加する。この例では、ブロックは、さらなる発火なしに、したがって追加の初動反応がない状態で、達成することができる。この方法は、ゼロ正味電荷を維持するが、ブロックが必要でないときでさえ波形が送られることを必要とする。この例では、まずシステムがオンになると、依然として初動が生じる。この方法は、たとえば卒中の適用例で利用されてもよい。この環境では、機能タスク中に、ブロックの急速な変調の期間が存在し得る。この振幅変調方法は、ブロック状態と非ブロック状態との迅速な遷移を発生させることができるので、この環境では好適であり得る。不活動の期間中は、ブロックをオフにすることができる。しかしながら、ブロックは、初動ブロッキングの選択肢のうちの1つを用いて、活動の前に再起動させることができる。
【0030】
図8は、初期オフセット電荷を有するHFAC波形810を加えることを示す。HFAC波形810は、次いで、電荷平衡平均値に増加する。このタイプの、電荷の平衡がとれていない状態での一過性の変動は、初動反応を無くし得る。HFAC波形810は、最初は電荷の平衡がとれておらず、次いで、数10ミリ秒以上にわたって電荷平衡波形に遷移する。これは、短い期間の有効直流を達成する。図8では、HFAC波形810の振幅もオフセット量も、電荷平衡波形に向かって傾斜がついている。
【0031】
図9は、神経ブロックを発生させるための別のHFAC波形910を示す。これは、電荷不平衡波形を用いて初動反応を無くすおよび/または緩和し、単相活性化中に生じる仮想電極ゾーンに頼る第2の例である。十分に大きな脱分極単相パルスの場合、初動反応に関連する初期活動電位は、隣接する仮想陽極においてブロックされる。これは、陽極包囲ブロックと称されてもよい。この特徴を用いて、HFACブロックは単相波形から始まり、この単相波形は、送られた第1のパルスから始まる陽極包囲ブロックを発生させる。その後、電荷不平衡は減少して、平衡を達成する。定常状態の状態は、ブロックを維持する電荷平衡HFAC波形である。この波形の一過性の部分は、約100ミリ秒以上続き、軸索の直径および電極の距離にわたってロバスト性がある。
【0032】
図10は、神経ブロックを発生させるための別の波形1010を示す。波形1010は、傾斜のついた陰極または陽極直流から始まる。本明細書では「傾斜のついた」という用語が用いられるが、当業者は、より一般的に、波形がDCおよび/またはHFAC振幅の線形および/または非線形の増加を含んでいてもよいことを理解する。したがって、「傾斜のついた」または「傾斜している」は、あるレベルまでの線形の増加が必要であると解釈すべきではない。HFAC波形は、傾斜のついた直流が印加される期間後に開始される。HFAC波形は、ブロック閾値に達するまで、その振幅を増加させる。この時点で、波形全体が電荷平衡状態になるまで、DCオフセットは減少し、したがって、初動活動電位なしにHFACブロックを確立することができる。一例では、DCオフセットピークは、HFAC振幅の約10%の範囲内である。一例では、DCが印加される合計時間は、約80ミリ秒である。合計時間は、DC増加と、DC安定状態と、DC減少とを含む。
【0033】
以下の詳細な説明のいくつかの部分は、アルゴリズムの点で表わされている。これらのアルゴリズム的な説明および図は、作業の実体を他者に伝えるために当業者によって用いられる。アルゴリズムは、ここでおよび一般に、結果を生み出す一連の動作であると考えられる。この動作は、物理量の物理的操作を含んでいてもよい。物理的操作は、具体的な、実体のある、有用な、実世界の結果を作成する。
【0034】
例示的な方法は、フロー図を参照してよりよく理解することができる。説明を簡略化する目的で、示される方法論は一連のブロックとして示され、記載されている。しかしながら、それらの方法論はブロックの順序によって限定されるものではないことを理解されたい。なぜなら、いくつかのブロックは、示され記載されるものとは異なる順序で、および/または、他のブロックと同時に、生じる可能性があるためである。さらに、すべてとは言えない図示されるブロックが、例示的な方法論を実現するために必要とされてもよい。ブロックは、複数の構成要素に組合せられる場合もあれば、分けられる場合もある。さらに、追加のおよび/または代替的な方法論が、追加の、図示されないブロックを利用できる。
【0035】
図11は、HFAC神経伝導ブロックに関連する方法1100を示す。方法1100は、1110において、第1のHFACを神経の軸索に印加するステップを含む。第1のHFACは、第1の振幅、第1の周波数および第1の電流を有する。振幅、周波数および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成される。神経伝導ブロックは、実際には、軸索を介した信号の伝達をブロックすることを想起されたい。
【0036】
方法1100はまた、1120において、第2のHFACを軸索に印加するステップを含む。第2のHFACは、第2の振幅、第2の周波数および第2の電流を有する。この振幅、周波数および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させない。しかしながら、この振幅、周波数および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させるのに十分な第3のHFACを印加したときに軸索において初動状態が発生することを防ぐ。当業者は、第3のHFACが第1のHFACと類似していてもよいまたは同一であってもよいことを理解する。
【0037】
したがって、方法1100はまた、1130において、第3のHFACを軸索に印加するステップを含む。第3のHFACは、第3の振幅、第3の周波数および第3の電流を有する。この第3の振幅、第3の周波数および第3の電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させる。しかしながら、この第3の振幅、第3の周波数および第3の電流の組合せは、そうでなければこうむるであろう初動活動よりも少ない初動活動で、軸索において神経伝導ブロックを発生させる。
【0038】
一例では、3つの周波数はすべて、1キロヘルツ〜100キロヘルツの範囲内である。一例では、第1および第3の周波数は同じであり、第2の周波数は異なっている。一例では、第1の振幅および第3の振幅は、4ボルトのピーク・トゥ・ピーク〜10ボルトのピーク・トゥ・ピークの範囲内である。一例では、第1の電流および第3の電流は、1ミリアンペア〜12ミリアンペアの範囲内である。当業者は、周波数、振幅および電流のさまざまな組合せが神経伝導ブロックを発生させることができることを理解する。神経伝導ブロックは、たとえば、運動神経ブロック、感覚神経ブロック、自律神経ブロックなどであってもよい。神経伝導ブロックは、斜頸、神経腫の痛み、しゃっくり、脳性麻痺、筋ジストロフィ、卒中などの症候を治療するために適用されてもよい。神経伝導ブロックは、たとえば、胸鎖乳突ブロック、正中神経ブロック、横隔神経ブロック、被変調痙縮ブロックなどであってもよい。
【0039】
方法1100は、開ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、第1のHFAC、第2のHFACおよび/または第3のHFACを選択的に印加するように制御されてもよい。制御信号は、たとえばスイッチから受信されてもよい。同様に、方法1100は、閉ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、第1のHFAC、第2のHFACおよび/または第3のHFACを選択的に印加するように制御されてもよい。閉ループ制御装置は、たとえばセンサであってもよい。方法1100はまた、開ループ装置および/または閉ループ装置からの入力に基づいて、HFACの周波数、電圧および電流を選択的に変更するように制御されてもよい。
【0040】
異なる例では、第1のHFAC、第2のHFACおよび/または第3のHFACは、最初は電荷に対して平衡がとれていなくてもよい。したがって、方法1100は、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるステップを含んでいてもよい。一例では、方法1100は、電荷が平衡されている間、時間が経つにつれて、平衡がとれていないHFACの振幅を変化させるステップを含んでいてもよい。
【0041】
図12は、HFAC神経伝導ブロックに関連する方法1200を示す。方法1200は、1210において、最初に直流(DC)を神経の軸索に印加するステップを含む。このDCは、軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない第1のDC振幅を有する。方法1200は、次いで、1220において、ある期間にわたって第1のDC振幅を増加させるステップに進む。第1のDC振幅は、軸索において神経ブロックを発生させるのに十分な第2のDC振幅に増加する。
【0042】
方法1200は、次いで、1230において、HFACを軸索に印加するステップに進む。HFACは、HFAC振幅、HFAC周波数およびHFAC電流を有する。周波数、振幅および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させるように設計される。なお、HFACは、DCが所望のレベルに増加した後に印加される。方法1200は、次いで、1240において、ある期間にわたって第2のDC振幅を第3のDC振幅に減少させるステップに進む。第3のDC振幅を有するDCは、軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない。したがって、方法1200は、ブロッキング電極に近位または遠位で神経中に見られる初動活動を低減させる順序でDCおよびHFACの組合せを提供する。
【0043】
一例では、DCオフセットピークは、HFAC振幅の5%〜15%の間である。一例では、DCが増加して次いで減少する第1の期間および第2の期間は、まとめて80ミリ秒未満となる。別の例では、第1の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間であり、第2の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間である。
【0044】
図13は、HFAC神経伝導ブロックに関連する装置1300を示す。装置1300は、電極1310と、電極に接続された波形発生器1320とを含む。装置1300はまた、コントローラ1330を含む。コントローラ1330は、波形発生器1320を制御して、方法1100(図11)および/または方法1200(図12)に関連して記載したようにDCおよび/またはHFACを印加するためのものである。一例では、装置1300は、コントローラ1330および/または波形発生器1320を選択的に制御するためにスイッチ1340を含んでいてもよい。別の例では、装置1300は、コントローラ1330および/または波形発生器1320を選択的に制御するためにセンサ1350を含んでいてもよい。一例では、電極1310は5つのノードを有していてもよい。5つのノードは、HFACを印加するための2つの内側ノードの組と、DCを印加するための3つの外側ノードの組とを含んでいてもよい。
【0045】
「一実施例」、「実施例」、「一例」、「例」などへの言及は、そのように記載された実施例または例が特定の特徴、構造、特質、特性、要素、または限定を含んでいてもよいことを示すが、すべての実施例または例が必ずしもその特定の特徴、構造、特質、特性、要素、または限定を含んでいるわけではないことを示している。さらに、「一実施例では」という語句を繰返し用いることは、そうであるかもしれないが、必ずしも同じ実施例を指しているわけではない。
【0046】
例示的なシステム、方法などは例を説明することによって示され、例は相当詳細に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲をこのような詳細に制限するまたは何らかの形で限定することは出願人の意図するところではない。もちろん、本明細書に記載されるシステム、方法などを説明する目的で、構成要素または方法論のあらゆる考えられる組合せを説明することは不可能である。したがって、この発明は、示され記載される具体的な詳細、代表的な装置および例示的な例に限定されるものではない。よって、本願は、添付の特許請求の範囲内に含まれる変更、修正および変形を包含するよう意図されている。
【0047】
詳細な説明または特許請求の範囲において「または」という用語が利用される限り(たとえば、AまたはB)、「AまたはBまたはその両方」を意味するよう意図されている。出願人が「AまたはBのみであるが両方ではない」ことを示そうとするときには、「AまたはBのみであるが両方ではない」という用語が利用される。よって、本明細書における「または」という用語の使用は包括的な使用であり、排他的な使用ではない。ブライアン・A・ガーナー(Bryan A. Garner)による「現代法律用法辞典(A Dictionary of Modern Legal Usage)」の624(第2版、1995年)を参照されたい。
【0048】
「A、BおよびCのうちの1つまたはそれ以上」という語句が本明細書において利用される限り(たとえば、A、BおよびCのうちの1つまたはそれ以上を格納するように構成されたデータ記憶装置)、A、B、C、AB、AC、BC、ABC、AAA、AAB、AABB、AABBC、AABBCCなどの可能性の組を伝えるよう意図されている(たとえば、データ記憶装置は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、AおよびBおよびC、AおよびAおよびA、AおよびAおよびB、AおよびAおよびBおよびB、AおよびAおよびBおよびBおよびC、AおよびAおよびBおよびBおよびCおよびCなど)。Aのうちの1つ、Bのうちの1つ、およびCのうちの1つを必要とすることは意図されない。出願人が「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、およびCのうちの少なくとも1つ」を示そうとするときには、「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、およびCのうちの少なくとも1つ」という表現が利用される。
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、「高周波数神経ブロックのシステムおよび方法(System and Method For High Frequency Nerve Block)」と題される、同一の発明者によって2007年10月29日に出願された米国仮出願第60/983,420号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府の資金提供の表示
本発明は、NIH(国立画像生物医学・生物工学研究所(National Institute of Biomedical Imaging and Bioengineering))が認めた認可番号EB002091のもとで政府の支援を受けて行なわれた。連邦政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
著作権表示
この特許文献の開示の一部は、著作権保護を受ける材料を含んでいる。著作権所有者は、特許商標庁の包袋または記録に掲載されるように特許文献または特許情報開示をファックス再生することに異議はないが、他の点では何があってもすべての著作権の権利を保有する。
【背景技術】
【0004】
背景
神経インパルスの好ましくないおよび/または協調性のない発生は、病状によっては障害を引起す要因になり得る。たとえば、協調性のない運動信号は、卒中での痙縮、脳性麻痺、多発性硬化症、および他の症状を引起し得る。協調性のない信号の結果として、所望の機能運動ができなくなる可能性がある。チック症、舞踏病などを含む症状での不随意運動信号は、好ましくない動きを引起し得る。さらに、好ましくない感覚信号は痛みを引起す可能性がある。従来のアプローチは、神経インパルスを伝える神経に沿って好ましくないまたは協調性のない神経インパルスを遮って、障害を引起す症状を減らそうおよび/または無くそうと試みてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの症状の治療に関連する従来のアプローチは、満足のいかない結果を生み出してきた。たとえば、薬物治療は、好ましくない副作用を引起し、特定の神経に対して特異的に作用するのではなく身体に全体的に作用し、即効性がなく、迅速に元に戻せなかったかもしれない。化学治療(たとえば、ボトックス、フェノールブロック)は、より特異的に適用され得るが、神経に対して破壊的であり、再適用する必要があり、迅速に元に戻せなかったかもしれない。他の従来の痛みの治療(たとえば、経皮的電気神経刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation)(TENS)、植込型痛み刺激器)も、生み出す結果は最適以下であった。
【0006】
交流(AC)神経刺激も直流(DC)神経刺激も当該技術分野において公知である。神経に対する高周波交流(high-frequency alternating current)(HFAC)の抑制効果については、1900年代初頭から報告されている。さらに、DC電気神経刺激は、神経活動の完全に近いブロックを発生させることが実証されている。しかしながら、従来のDC刺激は、長期間にわたって送られると、身体組織および/または電極の両方に損傷を与えていた。したがって、従来のDC刺激は、特定の用途には適さなかった。DC神経ブロックが引起す損傷は、少なくとも部分的には、神経に印加される電荷の平衡がとれていないことに起因する。組織にゼロ正味電荷を送るHFACは、神経ブロックの方法としてはより安全であるように思われる。しかしながら、HFACが神経に送られると、HFACは、望ましくなくかつ痛みを伴うであろう神経の活動のバーストを引起す。HFACが発生させる活動のバーストは、初動活動と称される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本願は、システム外で神経の活動を発生させることなく神経を介した信号伝達をブロックするための装置、システムおよび方法に関する。一例は、HFACベースの神経伝導ブロックの初動に対する神経の望ましくない反応を無効にする、防ぐ、または最小限にする組合せで、DCおよび高周波交流(HFAC)を印加することに関する。
【0008】
神経信号伝達をブロックする1つの例示的な方法は、第1の振幅のDCを神経の軸索に印加するステップと、次いで、ある期間にわたってDCの振幅を予め定められた第2の振幅に増加させるステップとを備える。DCが第2の振幅に達した後、HFACが印加される。HFACが印加された後、DCの振幅は減少する。
【0009】
神経信号伝達をブロックする別の例示的な方法は、信号伝達をブロックする第1の振幅のHFACを印加するステップを備える。上記方法は、軸索を介した信号の伝達を可能にするためにHFAC振幅を一時的に低減させるステップを含む。上記方法はまた、再び伝達をブロックするために、その後選択的にHFAC振幅を増加させるステップを含む。この例では、その後のブロッキングは、初動反応を引起すことなく行なわれる。
【0010】
神経信号伝達をブロックする別の例示的な方法は、平衡がとれていない電荷を神経の軸索に一時的に印加するステップを備える。一例では、平衡がとれていない電荷を印加するステップは、平衡がとれていない電荷ACを軸索に印加するステップと、時間が経つにつれて当該電荷を平衡させるステップとを含み得る。別の例では、平衡がとれていない電荷を印加するステップは、平衡がとれていない電荷ACを軸索に印加するステップと、電荷を平衡させながら、時間が経つにつれて振幅を変化させるステップとを含み得る。別の例では、平衡がとれていない電荷を印加するステップは、振幅が増加するDC電荷を印加するステップと、予め定められた振幅に達した後、平衡がとれていないACを印加するステップと、時間が経つにつれてAC振幅およびAC電荷のバランスを徐々に増加させるステップとを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】神経ブロックに関連する開ループ装置を示す。
【図2】神経ブロックに関連する開ループ装置を示す。
【図3】神経ブロックに関連する閉ループ装置を示す。
【図4】神経ブロックに関連する閉ループ装置を示す。
【図5】初動緩和神経ブロックに関連するDCおよびHFACの組合せを示す。
【図6】初動緩和神経ブロックに関連する方法を示す。
【図7】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図8】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図9】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図10】初動緩和神経ブロックに関連するHFACを示す。
【図11】初動反応が緩和された神経伝導ブロックの提供に関連する方法を示す。
【図12】初動反応が緩和された神経伝導ブロックの提供に関連する方法を示す。
【図13】初動反応が緩和された神経伝導ブロックの提供に関連する装置を示す。
【0012】
明細書に組入れられ、明細書の一部を構成する添付の図面は、さまざまな例示的なシステム、方法、およびこの発明のさまざまな局面の他の例示的な実施例を示している。図中の示される要素の境界(たとえば、ボックス、ボックスの群、または他の形状)は境界の一例を表わしていることを理解されたい。当業者は、いくつかの例では、1つの要素が複数の要素として示される場合もあれば、複数の要素が1つの要素として示される場合もあることを理解する。いくつかの例では、別の要素の内部構成要素として示されている要素が外部構成要素として実現されてもよく、逆の場合も同様である。さらに、要素は一定の比例に応じて描かれていない可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
例示的なシステム、方法および装置は、HFAC波形を用いて神経ブロックを発生させる。HFAC波形によって発生したブロックは、単に疲労ブロックではなく、神経における伝導ブロックである。ブロックは、「神経伝導ブロック」と称されてもよい。ブロックは、疲労しすぎて反応できず、次のパルスまでにもはや回復できなくなるまで神経が刺激された結果ではない。HFAC波形は、軸索を介した信号伝達をブロックすることによって、神経を介した伝導をブロックする。ある神経の端部から別の神経の端部への化学信号の伝達を遮断する化学ブロックとは異なって、HFAC神経伝導ブロックは、神経の軸索が、ブロックのエリアを通り過ぎるいかなる信号も伝達することを防ぐ。ブロックは、神経膜における電位依存性イオンチャネルに対する影響で、電流がいかに活性化を発生させるか、または電流がいかに神経伝導をブロックするかに基づく。
【0014】
HFAC波形は、不活性化ゲートを閉鎖させる神経膜を脱分極させる。初動反応を発生させる生物物理学的機構は、神経膜に対する脱分極電流の効果に基づく。一般に、神経膜の脱分極は、高速ナトリウムイオンチャネルの開放を引起し、活動電位を起動する。しかしながら、神経を交流脱分極場に配置することは、実際には伝導の失敗を招くことになる。なぜなら、神経を交流脱分極場に配置することは、強制的に、不活性化ナトリウムイオンゲートを閉じたままにするためである。したがって、脱分極は、神経伝導の活性化およびブロッキングの両方に関与する。初動反応を発生させるのは、この動作の二分裂である。
【0015】
初動反応の2つの局面が存在する。第1の局面は、ブロック閾値に近いまたはブロック閾値を上回るACが印加されているそれらの神経線維で生じる単収縮反応の合計である。「ブロック閾値」は、その電圧を下回ると完全なブロックが得られない電圧として定義される。ブロック閾値は、周波数とともに増加する。ブロック閾値は、一般に、軸索の直径に反比例して変化する。さらに、ブロック閾値は、およそ電極からの軸索に対する垂直距離の二乗として変化する。電極が軸索に1ミリメートルよりも近づくと、軸索の長さに沿った電極位置は、ブロック閾値の振幅にも影響を及ぼす。
【0016】
一般に約20ミリ秒で生じる初期発火が終わると、これらの軸索はブロックされる。第2の局面は、何秒も続く可能性がある、ある期間の反復発火である。この第2の局面は、必ずしも存在するとは限らず、HFACの振幅が高くなるにつれて大幅に低減される傾向がある。この第2の局面は、電極から広がる電流の外縁上にある軸索の反復発火に起因し得る。最終的に、これらの線維における発火は停止する。電気信号の振幅は、電極からの距離とともに減少する。振幅が高くなった状態での第2の局面の減少は、振幅が高くなることにより、神経線維のうちのより多くの神経線維が、十分な振幅を与えてブロックを発生させる領域内に完全に配置されることに関連し得る。電流勾配がより急であるので、反復発火を発生させる振幅領域内にはほとんど線維がない。
【0017】
不所望の初動を無くすことは、もっぱら、初動反応の両方の局面を無くすことを含む。反復局面は、振幅および周波数を調整することによって低減することができる。たとえば、30キロヘルツで10ボルトのピーク・トゥ・ピーク正弦波形は、反復局面を無くし得る。一般に、周波数および振幅を単独で変化させることによって初動反応全体を無くすことは不可能である。
【0018】
DC神経ブロックが引起す損傷は、神経に印加される電荷の不平衡に起因することを想起されたい。したがって、例示的なシステム、方法および装置は、ACを用いて電荷を平衡させる。電荷を平衡させることは、平衡がとれていない電荷が引起す損傷を防ぐおよび/または最小限にする。純粋なAC神経ブロックは、通常、起動時に神経から初動反応を発生させる。したがって、本明細書に記載されクレームされるいくつかの例は、最初にDCを神経に印加し、その後、HFACを神経ブロックに印加する。DCおよびHFACの組合せは、ブロックされるべき神経における初動反応の発生を防ぐように作られる。神経伝導ブロックとしてHFAC波形を利用する従来のアプローチは、HFAC波形を人間の患者に適用する際には通常許容できない初動反応を発生させる。
【0019】
交流に関連して本明細書において用いられる「高周波数」(たとえば、HFAC)は、約1キロヘルツを上回る周波数を指す。いくつかの例では、高周波数は、より具体的に5〜50キロヘルツを指す。本明細書に記載される例示的なシステム、方法および装置は、パルスあたり約4〜10ボルトの振幅を有する波形を利用する。本明細書に記載される例示的なシステム、方法および装置は、約1ミリアンペア〜約12ミリアンペアの電流を有する波形を利用する。これらの電圧およびアンペア数の範囲内で、より高い周波数を有する波形は、一般に、効果的なブロックを提供するためにより高い振幅を必要とする。
【0020】
本明細書に記載される例は、運動神経ブロック、感覚神経ブロックおよび自律神経ブロックを含む分野での適用例を有していてもよい。さらに、本明細書に記載される例は、ブロックがスイッチによって制御される開ループ構成、および/または、ブロックがセンサによって自動的に制御される閉ループ構成で適用されてもよい。
【0021】
図1は、神経における伝達のブロッキングに関連する例示的な装置20を示す。装置20は、HFACならびに/またはDC信号およびHFAC信号の両信号を神経26に送るのに好適な、コントローラ24に接続された電極22を含む。装置20は、コントローラ24がブロックの適用を制御するためにスイッチを含む開ループ構成を有する。この装置20の構成は、たとえば筋痙縮の制御を容易にし得る。装置20は、神経26の運動枝上のHFAC電極22の組によってHFACを印加してもよい。これは、神経26に関連する特定の筋肉を標的にすることを容易にし、その筋肉を弛緩させることを容易にする。一例では、装置20は、斜頸の治療に有用な胸鎖乳突ブロックを提供してもよい。
【0022】
図2は、たとえば、神経腫の痛み、失った外肢に関連する痛み、損傷を受けた外肢に関連する痛みなどをブロックするために用いられる装置30を示す。したがって、装置30は、正中神経ブロックを発生させてもよい。装置30は、HFACブロッキング電極32と、植込型コントローラ34とを備える。ブロッキング電極32は、神経腫に近位の神経に隣接して位置決めされてもよい。本願では、神経ブロックは、連続的に送られることができ、外部の信号装置36などを用いて引起すことができる。
【0023】
図3は、運動ブロックを提供する装置40を示す。運動ブロックは、記録された信号によって引起されてもよい。装置40は、閉ループシステムであり、難治性のしゃっくりをブロックするための用途で示されている。切迫性しゃっくりに関連する徴候(たとえば、生体信号)は、センサ42によって記録されてもよい。一例では、この徴候は、大信号として横隔神経上に現れ得る。この信号は、HFACブロックを横隔神経に適用するようにコントローラ44の作動を制御してもよい。ブロックは、横隔神経に隣接した電極46を用いて投与されてもよい。HFACブロックは、短い期間にわたって横隔膜の収縮を防ぎ、横隔膜にしゃっくりさせる信号を遮断および/または阻止する。
【0024】
筋肉を動かすことに関連する信号は、ユーザがその筋肉を動かそうとすると、記録されてもよい。信号は、神経に沿って伝播され得る。これらの信号は、卒中の患者、多発性硬化症を患う患者、脳性麻痺を患う患者などの痙縮筋肉の制御を容易にし得る。一例では、信号は、痙縮筋肉および非痙縮筋肉の両方から記録されてもよい。したがって、図4は、コントローラ52を含む装置50を示す。コントローラ52は、筋肉56および/または筋肉56を制御する神経におけるセンサ54からの信号を記録して処理するための記録装置を備える。コントローラ52は、筋肉56を制御する神経に隣接した電極60にHFAC波形を加えるように信号発生器58を制御する。
【0025】
痙縮は、筋肉の機能を低下させる。しかしながら、不所望の運動活動の部分的なブロックを発生させることによって、機能の改善が達成され得る。したがって、例示的な装置、方法などは、HFACブロックを迅速に反転させるように構成されてもよい。一例では、機能の改善は、たとえば神経活動、筋肉活動などを含む検知された活動に基づいて神経ブロックを変化させるインテリジェント制御システムとHFACブロックを組合せることによって達成されてもよい。
【0026】
例示的なシステム、方法および装置は、非初動および/または初動緩和HFACブロック解決策の少なくとも3つのカテゴリをもたらし得る。第1の例では、別個の「初動ブロッキング」電極がHFAC電極の両側にDCブロックを適用する。第2の例では、HFAC波形の、電荷の平衡がとれた状態での一過性の変動が、非初動および/または初動緩和HFACブロックを発生させる。第3の例では、HFAC波形の、電荷の平衡がとれていない状態での一過性の変動が、非初動および/または初動緩和HFACブロックを発生させる。
【0027】
図5は、HFACブロックを発生させるためのDC波形510とHFAC波形520との組合せを示す。一例では、DC波形510およびHFAC波形520は、別個の電極を用いて与えられる。一例では、DC波形およびHFAC波形は、1組の電極によって与えられる。DC波形510における電荷は、HFAC波形520がオンになる前に、領域512において増加する。領域514におけるDC波形510は、DCブロックを提供するのに十分な振幅を有しており、HFAC波形520からの初動反応をブロックすることになる。DC波形510は、一旦初動活動が完了すると、領域514において減少する。以下に記載する電荷不平衡波形とは異なって、この傾斜のついたDC波形510は、HFAC波形520が引起す初動活動を発生させることができるが、その初動活動が伝播することを防ぐ。このレベルのDCの連続的な送達は、DCを送る電極および付近の組織に損傷を与える可能性があるが、DCブロックをたまに短い期間適用することによって、このような損傷は生じないかもしれない。一例では、DCブロックは、HFACブロックがオンになるたびに、約100〜200ミリ秒間、送られる。単極電極によってDCブロックを発生させることができるので、一例では、DC電極およびHFAC電極は組合せられて単一の5極神経カフ電極にされてもよい。この5極神経カフ電極は、直流用の2つの外側電極と、HFAC用の3つの内側電極とを含んでいてもよい。電極のさらなる形態は、DCとHFACとが外側電極上で重ね合わせられる3極神経カフ電極を利用してもよい。
【0028】
図6は、初動緩和HFACに関連する方法を示す。方法600は、610において、神経の初動活動を変更するために第1の波形をその神経に加えるステップを含む。方法600はまた、620において、第2の一過性の波を神経に加えるステップを含む。方法600はまた、630において、神経においてHFACブロックを継続させるために第3の定常状態波を神経に加えるステップを含む。
【0029】
図7は、ブロック閾値を上回る急速な初動ブロックを適用して、初期初動反応を受入れるステップを含む電荷平衡アプローチを示す。このアプローチでは、振幅は次いでブロック閾値以下に下げられるが、反復発火のゾーンを回避するのに十分に高く維持される。以前にブロックされた神経は、通常、この振幅でHFAC送達領域を介して伝導できる。次いで、ブロックが要求されると、振幅はブロック閾値に増加する。この例では、ブロックは、さらなる発火なしに、したがって追加の初動反応がない状態で、達成することができる。この方法は、ゼロ正味電荷を維持するが、ブロックが必要でないときでさえ波形が送られることを必要とする。この例では、まずシステムがオンになると、依然として初動が生じる。この方法は、たとえば卒中の適用例で利用されてもよい。この環境では、機能タスク中に、ブロックの急速な変調の期間が存在し得る。この振幅変調方法は、ブロック状態と非ブロック状態との迅速な遷移を発生させることができるので、この環境では好適であり得る。不活動の期間中は、ブロックをオフにすることができる。しかしながら、ブロックは、初動ブロッキングの選択肢のうちの1つを用いて、活動の前に再起動させることができる。
【0030】
図8は、初期オフセット電荷を有するHFAC波形810を加えることを示す。HFAC波形810は、次いで、電荷平衡平均値に増加する。このタイプの、電荷の平衡がとれていない状態での一過性の変動は、初動反応を無くし得る。HFAC波形810は、最初は電荷の平衡がとれておらず、次いで、数10ミリ秒以上にわたって電荷平衡波形に遷移する。これは、短い期間の有効直流を達成する。図8では、HFAC波形810の振幅もオフセット量も、電荷平衡波形に向かって傾斜がついている。
【0031】
図9は、神経ブロックを発生させるための別のHFAC波形910を示す。これは、電荷不平衡波形を用いて初動反応を無くすおよび/または緩和し、単相活性化中に生じる仮想電極ゾーンに頼る第2の例である。十分に大きな脱分極単相パルスの場合、初動反応に関連する初期活動電位は、隣接する仮想陽極においてブロックされる。これは、陽極包囲ブロックと称されてもよい。この特徴を用いて、HFACブロックは単相波形から始まり、この単相波形は、送られた第1のパルスから始まる陽極包囲ブロックを発生させる。その後、電荷不平衡は減少して、平衡を達成する。定常状態の状態は、ブロックを維持する電荷平衡HFAC波形である。この波形の一過性の部分は、約100ミリ秒以上続き、軸索の直径および電極の距離にわたってロバスト性がある。
【0032】
図10は、神経ブロックを発生させるための別の波形1010を示す。波形1010は、傾斜のついた陰極または陽極直流から始まる。本明細書では「傾斜のついた」という用語が用いられるが、当業者は、より一般的に、波形がDCおよび/またはHFAC振幅の線形および/または非線形の増加を含んでいてもよいことを理解する。したがって、「傾斜のついた」または「傾斜している」は、あるレベルまでの線形の増加が必要であると解釈すべきではない。HFAC波形は、傾斜のついた直流が印加される期間後に開始される。HFAC波形は、ブロック閾値に達するまで、その振幅を増加させる。この時点で、波形全体が電荷平衡状態になるまで、DCオフセットは減少し、したがって、初動活動電位なしにHFACブロックを確立することができる。一例では、DCオフセットピークは、HFAC振幅の約10%の範囲内である。一例では、DCが印加される合計時間は、約80ミリ秒である。合計時間は、DC増加と、DC安定状態と、DC減少とを含む。
【0033】
以下の詳細な説明のいくつかの部分は、アルゴリズムの点で表わされている。これらのアルゴリズム的な説明および図は、作業の実体を他者に伝えるために当業者によって用いられる。アルゴリズムは、ここでおよび一般に、結果を生み出す一連の動作であると考えられる。この動作は、物理量の物理的操作を含んでいてもよい。物理的操作は、具体的な、実体のある、有用な、実世界の結果を作成する。
【0034】
例示的な方法は、フロー図を参照してよりよく理解することができる。説明を簡略化する目的で、示される方法論は一連のブロックとして示され、記載されている。しかしながら、それらの方法論はブロックの順序によって限定されるものではないことを理解されたい。なぜなら、いくつかのブロックは、示され記載されるものとは異なる順序で、および/または、他のブロックと同時に、生じる可能性があるためである。さらに、すべてとは言えない図示されるブロックが、例示的な方法論を実現するために必要とされてもよい。ブロックは、複数の構成要素に組合せられる場合もあれば、分けられる場合もある。さらに、追加のおよび/または代替的な方法論が、追加の、図示されないブロックを利用できる。
【0035】
図11は、HFAC神経伝導ブロックに関連する方法1100を示す。方法1100は、1110において、第1のHFACを神経の軸索に印加するステップを含む。第1のHFACは、第1の振幅、第1の周波数および第1の電流を有する。振幅、周波数および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成される。神経伝導ブロックは、実際には、軸索を介した信号の伝達をブロックすることを想起されたい。
【0036】
方法1100はまた、1120において、第2のHFACを軸索に印加するステップを含む。第2のHFACは、第2の振幅、第2の周波数および第2の電流を有する。この振幅、周波数および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させない。しかしながら、この振幅、周波数および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させるのに十分な第3のHFACを印加したときに軸索において初動状態が発生することを防ぐ。当業者は、第3のHFACが第1のHFACと類似していてもよいまたは同一であってもよいことを理解する。
【0037】
したがって、方法1100はまた、1130において、第3のHFACを軸索に印加するステップを含む。第3のHFACは、第3の振幅、第3の周波数および第3の電流を有する。この第3の振幅、第3の周波数および第3の電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させる。しかしながら、この第3の振幅、第3の周波数および第3の電流の組合せは、そうでなければこうむるであろう初動活動よりも少ない初動活動で、軸索において神経伝導ブロックを発生させる。
【0038】
一例では、3つの周波数はすべて、1キロヘルツ〜100キロヘルツの範囲内である。一例では、第1および第3の周波数は同じであり、第2の周波数は異なっている。一例では、第1の振幅および第3の振幅は、4ボルトのピーク・トゥ・ピーク〜10ボルトのピーク・トゥ・ピークの範囲内である。一例では、第1の電流および第3の電流は、1ミリアンペア〜12ミリアンペアの範囲内である。当業者は、周波数、振幅および電流のさまざまな組合せが神経伝導ブロックを発生させることができることを理解する。神経伝導ブロックは、たとえば、運動神経ブロック、感覚神経ブロック、自律神経ブロックなどであってもよい。神経伝導ブロックは、斜頸、神経腫の痛み、しゃっくり、脳性麻痺、筋ジストロフィ、卒中などの症候を治療するために適用されてもよい。神経伝導ブロックは、たとえば、胸鎖乳突ブロック、正中神経ブロック、横隔神経ブロック、被変調痙縮ブロックなどであってもよい。
【0039】
方法1100は、開ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、第1のHFAC、第2のHFACおよび/または第3のHFACを選択的に印加するように制御されてもよい。制御信号は、たとえばスイッチから受信されてもよい。同様に、方法1100は、閉ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、第1のHFAC、第2のHFACおよび/または第3のHFACを選択的に印加するように制御されてもよい。閉ループ制御装置は、たとえばセンサであってもよい。方法1100はまた、開ループ装置および/または閉ループ装置からの入力に基づいて、HFACの周波数、電圧および電流を選択的に変更するように制御されてもよい。
【0040】
異なる例では、第1のHFAC、第2のHFACおよび/または第3のHFACは、最初は電荷に対して平衡がとれていなくてもよい。したがって、方法1100は、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるステップを含んでいてもよい。一例では、方法1100は、電荷が平衡されている間、時間が経つにつれて、平衡がとれていないHFACの振幅を変化させるステップを含んでいてもよい。
【0041】
図12は、HFAC神経伝導ブロックに関連する方法1200を示す。方法1200は、1210において、最初に直流(DC)を神経の軸索に印加するステップを含む。このDCは、軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない第1のDC振幅を有する。方法1200は、次いで、1220において、ある期間にわたって第1のDC振幅を増加させるステップに進む。第1のDC振幅は、軸索において神経ブロックを発生させるのに十分な第2のDC振幅に増加する。
【0042】
方法1200は、次いで、1230において、HFACを軸索に印加するステップに進む。HFACは、HFAC振幅、HFAC周波数およびHFAC電流を有する。周波数、振幅および電流の組合せは、軸索において神経伝導ブロックを発生させるように設計される。なお、HFACは、DCが所望のレベルに増加した後に印加される。方法1200は、次いで、1240において、ある期間にわたって第2のDC振幅を第3のDC振幅に減少させるステップに進む。第3のDC振幅を有するDCは、軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない。したがって、方法1200は、ブロッキング電極に近位または遠位で神経中に見られる初動活動を低減させる順序でDCおよびHFACの組合せを提供する。
【0043】
一例では、DCオフセットピークは、HFAC振幅の5%〜15%の間である。一例では、DCが増加して次いで減少する第1の期間および第2の期間は、まとめて80ミリ秒未満となる。別の例では、第1の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間であり、第2の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間である。
【0044】
図13は、HFAC神経伝導ブロックに関連する装置1300を示す。装置1300は、電極1310と、電極に接続された波形発生器1320とを含む。装置1300はまた、コントローラ1330を含む。コントローラ1330は、波形発生器1320を制御して、方法1100(図11)および/または方法1200(図12)に関連して記載したようにDCおよび/またはHFACを印加するためのものである。一例では、装置1300は、コントローラ1330および/または波形発生器1320を選択的に制御するためにスイッチ1340を含んでいてもよい。別の例では、装置1300は、コントローラ1330および/または波形発生器1320を選択的に制御するためにセンサ1350を含んでいてもよい。一例では、電極1310は5つのノードを有していてもよい。5つのノードは、HFACを印加するための2つの内側ノードの組と、DCを印加するための3つの外側ノードの組とを含んでいてもよい。
【0045】
「一実施例」、「実施例」、「一例」、「例」などへの言及は、そのように記載された実施例または例が特定の特徴、構造、特質、特性、要素、または限定を含んでいてもよいことを示すが、すべての実施例または例が必ずしもその特定の特徴、構造、特質、特性、要素、または限定を含んでいるわけではないことを示している。さらに、「一実施例では」という語句を繰返し用いることは、そうであるかもしれないが、必ずしも同じ実施例を指しているわけではない。
【0046】
例示的なシステム、方法などは例を説明することによって示され、例は相当詳細に記載されてきたが、添付の特許請求の範囲をこのような詳細に制限するまたは何らかの形で限定することは出願人の意図するところではない。もちろん、本明細書に記載されるシステム、方法などを説明する目的で、構成要素または方法論のあらゆる考えられる組合せを説明することは不可能である。したがって、この発明は、示され記載される具体的な詳細、代表的な装置および例示的な例に限定されるものではない。よって、本願は、添付の特許請求の範囲内に含まれる変更、修正および変形を包含するよう意図されている。
【0047】
詳細な説明または特許請求の範囲において「または」という用語が利用される限り(たとえば、AまたはB)、「AまたはBまたはその両方」を意味するよう意図されている。出願人が「AまたはBのみであるが両方ではない」ことを示そうとするときには、「AまたはBのみであるが両方ではない」という用語が利用される。よって、本明細書における「または」という用語の使用は包括的な使用であり、排他的な使用ではない。ブライアン・A・ガーナー(Bryan A. Garner)による「現代法律用法辞典(A Dictionary of Modern Legal Usage)」の624(第2版、1995年)を参照されたい。
【0048】
「A、BおよびCのうちの1つまたはそれ以上」という語句が本明細書において利用される限り(たとえば、A、BおよびCのうちの1つまたはそれ以上を格納するように構成されたデータ記憶装置)、A、B、C、AB、AC、BC、ABC、AAA、AAB、AABB、AABBC、AABBCCなどの可能性の組を伝えるよう意図されている(たとえば、データ記憶装置は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、AおよびBおよびC、AおよびAおよびA、AおよびAおよびB、AおよびAおよびBおよびB、AおよびAおよびBおよびBおよびC、AおよびAおよびBおよびBおよびCおよびCなど)。Aのうちの1つ、Bのうちの1つ、およびCのうちの1つを必要とすることは意図されない。出願人が「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、およびCのうちの少なくとも1つ」を示そうとするときには、「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、およびCのうちの少なくとも1つ」という表現が利用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
第1の高周波交流(HFAC)を神経の軸索に印加するステップを備え、前記第1のHFACは、第1の振幅、第1の周波数および第1の電流を有し、前記第1の振幅、前記第1の周波数および前記第1の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記神経伝導ブロックは、前記軸索を介した信号の伝達をブロックし、前記方法はさらに、
第2の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するステップを備え、前記第2のHFACは、第2の振幅、第2の周波数および第2の電流を有し、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させないように構成され、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の前記組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるのに十分な第3のHFACを印加したときに前記軸索において初動状態が発生することを防ぐように構成され、前記方法はさらに、
第3の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するステップを備え、前記第3のHFACは、第3の振幅、第3の周波数および第3の電流を有し、前記第3の振幅、前記第3の周波数および前記第3の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成される、方法。
【請求項2】
前記第1の周波数および前記第3の周波数は、1キロヘルツ〜100キロヘルツの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の振幅および前記第3の振幅は、4ボルトのピーク・トゥ・ピーク〜10ボルトのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電流および前記第3の電流は、1ミリアンペアのピーク・トゥ・ピーク〜12ミリアンペアのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記神経伝導ブロックは、運動神経ブロック、感覚神経ブロックおよび自律神経ブロックのうちの1つであり、前記神経伝導ブロックは、斜頸、神経腫の痛み、しゃっくり、筋ジストロフィ、癌の痛み、術後の痛み、および卒中のうちの1つ以上の症候を治療するために適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記神経伝導ブロックは、胸鎖乳突ブロック、正中神経ブロック、横隔神経ブロック、腹腔神経叢神経ブロック、および被変調痙縮ブロックのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
開ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
閉ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上は、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記方法は、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電荷が平衡されている間、時間が経つにつれて、前記平衡がとれていないHFACの振幅を変化させるステップを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
方法であって、
最初に直流(DC)を神経の軸索に印加するステップを備え、前記DCは、第1のDC振幅を有し、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない第1の振幅を有し、前記方法はさらに、
次いで、第1の期間にわたって前記第1のDC振幅を第2のDC振幅に増加させるステップを備え、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分な前記第2のDC振幅を有し、前記方法はさらに、
次いで、高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するステップを備え、前記HFACは、HFAC振幅、HFAC周波数およびHFAC電流を有し、前記HFACは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記方法はさらに、
次いで、第2の期間にわたって前記第2のDC振幅を第3のDC振幅に減少させるステップを備え、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない前記第3のDC振幅を有し、
前記DCおよび前記HFACの組合せ、ならびに、前記DCおよび前記HFACが印加される順序は、前記HFACのみが印加された場合の伝導神経ブロックを発生させることに関連する前記軸索における初動活動と比較して、前記軸索における前記初動活動を少なくとも10%だけ低減させる、方法。
【請求項12】
前記HFAC周波数は、1キロヘルツ〜100キロヘルツの範囲内である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HFAC振幅は、4ボルトのピーク・トゥ・ピーク〜10ボルトのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記HFAC電流は、1ミリアンペアのピーク・トゥ・ピーク〜12ミリアンペアのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記神経伝導ブロックは、運動神経ブロック、感覚神経ブロックおよび自律神経ブロックのうちの1つであり、前記神経伝導ブロックは、斜頸、神経腫の痛み、しゃっくり、癌の痛み、術後の痛み、筋ジストロフィ、および卒中のうちの1つ以上の症候を治療するために適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記神経伝導ブロックは、胸鎖乳突ブロック、正中神経ブロック、横隔神経ブロック、腹腔神経叢神経ブロック、および被変調痙縮ブロックのうちの1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
開ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記DCおよび前記HFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
閉ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記DCおよび前記HFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記HFACは、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記方法は、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記電荷が平衡されている間、時間が経つにつれて、前記平衡がとれていないHFACの振幅を変化させるステップを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
DCオフセットピークは、前記HFAC振幅の5%〜15%の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の期間および前記第2の期間は、まとめて80ミリ秒未満となる、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間であり、前記第2の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
装置であって、
電極と、
前記電極に接続された波形発生器と、
コントローラとを備え、前記コントローラは、
前記電極によって第1の高周波交流(HFAC)を神経の軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記第1のHFACは、第1の振幅、第1の周波数および第1の電流を有し、前記第1の振幅、前記第1の周波数および前記第1の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記神経伝導ブロックは、前記軸索を介した信号の伝達をブロックし、前記コントローラはさらに、
第2の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記第2のHFACは、第2の振幅、第2の周波数および第2の電流を有し、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させないように構成され、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の前記組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるのに十分な第3のHFACを印加したときに前記軸索において初動状態が発生することを防ぐように構成され、前記コントローラはさらに、
第3の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記第3のHFACは、第3の振幅、第3の周波数および第3の電流を有し、前記第3の振幅、前記第3の周波数および前記第3の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成される、装置。
【請求項25】
前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上は、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記コントローラは、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるように前記波形発生器を制御するように構成される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記軸索および前記軸索によって刺激された筋肉のうちの1つ以上における信号を検出し、前記信号に少なくとも部分的に基づいて前記波形発生器を選択的に制御するためにセンサを備える、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
スイッチを備え、前記コントローラは、スイッチの設定に少なくとも部分的に基づいて選択的に制御される、請求項24に記載の装置。
【請求項28】
装置であって、
電極と、
前記電極に接続された波形発生器と、
コントローラとを備え、前記コントローラは、
最初に直流(DC)を神経の軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記DCは、第1のDC振幅を有し、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない第1の振幅を有し、前記コントローラはさらに、
次いで、第1の期間にわたって前記第1のDC振幅を第2のDC振幅に増加させるように前記波形発生器を制御するように構成され、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分な前記第2のDC振幅を有し、前記コントローラはさらに、
次いで、高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記HFACは、HFAC振幅、HFAC周波数およびHFAC電流を有し、前記HFACは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記コントローラはさらに、
次いで、第2の期間にわたって前記第2のDC振幅を第3のDC振幅に減少させるように前記波形発生器を制御するように構成され、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない前記第3のDC振幅を有し、
前記DCおよび前記HFACの組合せ、ならびに、前記DCおよび前記HFACが印加される順序は、前記HFACのみが印加された場合の伝導神経ブロックを発生させることに関連する前記軸索における初動活動と比較して、前記軸索における前記初動活動を少なくとも10%だけ低減させる、装置。
【請求項29】
前記電極は、5つのノードの電極を備え、前記5つのノードの電極は、HFACを印加するための2つの内側ノードの組と、DCを印加するための3つの外側ノードの組とを備える、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記電極は、3つのノードの電極を備え、前記3つのノードは、前記HFACおよびDCの両方をともに印加するための2つの外側ノードの組と、前記HFACのみを印加するための中心ノードとを備える、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記DCおよび前記HFACのうちの1つ以上は、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記コントローラは、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるように前記波形発生器を制御するように構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項32】
方法であって、
初動活動を防ぐために初期遷移波形を神経に与えるステップと、
神経信号伝達をブロックするために定常状態波形を与えるステップとを備える、方法。
【請求項33】
前記初期遷移波形および前記定常状態波形のうちの1つ以上は平衡がとれておらず、前記方法は、平衡がとれていない電荷の少なくとも一部をある期間にわたって回復させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記初期遷移波形は、オフセット、振幅および周波数のうちの1つ以上の点で最初は変化し、前記初期遷移波形は電荷平衡波形に遷移する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
方法であって、
第1の波形を神経に加えるステップを備え、前記第1の波形は、前記神経における信号伝達をブロックするためのものであり、前記第1の波形は、前記神経の初動活動を変更するためのものであり、前記方法はさらに、
第2の一過性の波形を前記神経に加えるステップと、
神経信号をブロックし続けるためのものである第3の定常状態波形を前記神経に加えるステップとを備える、方法。
【請求項36】
前記第1の波形は、前記神経の初動活動を低減させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の波形は、前記神経の初動活動を無くす、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の波形はDC波形であり、前記第2の一過性の波形は、オフセット、振幅および周波数のうちの1つ以上の点で変化し、前記第1の波形、前記第2の一過性の波形および前記第3の定常状態波形は、1組の電極によって与えられる、請求項35に記載の方法。
【請求項1】
方法であって、
第1の高周波交流(HFAC)を神経の軸索に印加するステップを備え、前記第1のHFACは、第1の振幅、第1の周波数および第1の電流を有し、前記第1の振幅、前記第1の周波数および前記第1の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記神経伝導ブロックは、前記軸索を介した信号の伝達をブロックし、前記方法はさらに、
第2の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するステップを備え、前記第2のHFACは、第2の振幅、第2の周波数および第2の電流を有し、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させないように構成され、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の前記組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるのに十分な第3のHFACを印加したときに前記軸索において初動状態が発生することを防ぐように構成され、前記方法はさらに、
第3の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するステップを備え、前記第3のHFACは、第3の振幅、第3の周波数および第3の電流を有し、前記第3の振幅、前記第3の周波数および前記第3の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成される、方法。
【請求項2】
前記第1の周波数および前記第3の周波数は、1キロヘルツ〜100キロヘルツの範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の振幅および前記第3の振幅は、4ボルトのピーク・トゥ・ピーク〜10ボルトのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の電流および前記第3の電流は、1ミリアンペアのピーク・トゥ・ピーク〜12ミリアンペアのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記神経伝導ブロックは、運動神経ブロック、感覚神経ブロックおよび自律神経ブロックのうちの1つであり、前記神経伝導ブロックは、斜頸、神経腫の痛み、しゃっくり、筋ジストロフィ、癌の痛み、術後の痛み、および卒中のうちの1つ以上の症候を治療するために適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記神経伝導ブロックは、胸鎖乳突ブロック、正中神経ブロック、横隔神経ブロック、腹腔神経叢神経ブロック、および被変調痙縮ブロックのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
開ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
閉ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上は、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記方法は、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電荷が平衡されている間、時間が経つにつれて、前記平衡がとれていないHFACの振幅を変化させるステップを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
方法であって、
最初に直流(DC)を神経の軸索に印加するステップを備え、前記DCは、第1のDC振幅を有し、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない第1の振幅を有し、前記方法はさらに、
次いで、第1の期間にわたって前記第1のDC振幅を第2のDC振幅に増加させるステップを備え、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分な前記第2のDC振幅を有し、前記方法はさらに、
次いで、高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するステップを備え、前記HFACは、HFAC振幅、HFAC周波数およびHFAC電流を有し、前記HFACは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記方法はさらに、
次いで、第2の期間にわたって前記第2のDC振幅を第3のDC振幅に減少させるステップを備え、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない前記第3のDC振幅を有し、
前記DCおよび前記HFACの組合せ、ならびに、前記DCおよび前記HFACが印加される順序は、前記HFACのみが印加された場合の伝導神経ブロックを発生させることに関連する前記軸索における初動活動と比較して、前記軸索における前記初動活動を少なくとも10%だけ低減させる、方法。
【請求項12】
前記HFAC周波数は、1キロヘルツ〜100キロヘルツの範囲内である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記HFAC振幅は、4ボルトのピーク・トゥ・ピーク〜10ボルトのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記HFAC電流は、1ミリアンペアのピーク・トゥ・ピーク〜12ミリアンペアのピーク・トゥ・ピークの範囲内である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記神経伝導ブロックは、運動神経ブロック、感覚神経ブロックおよび自律神経ブロックのうちの1つであり、前記神経伝導ブロックは、斜頸、神経腫の痛み、しゃっくり、癌の痛み、術後の痛み、筋ジストロフィ、および卒中のうちの1つ以上の症候を治療するために適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記神経伝導ブロックは、胸鎖乳突ブロック、正中神経ブロック、横隔神経ブロック、腹腔神経叢神経ブロック、および被変調痙縮ブロックのうちの1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
開ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記DCおよび前記HFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
閉ループ制御装置から受信した制御信号に少なくとも部分的に基づいて、前記DCおよび前記HFACのうちの1つ以上の印加を選択的に制御するステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記HFACは、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記方法は、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるステップを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記電荷が平衡されている間、時間が経つにつれて、前記平衡がとれていないHFACの振幅を変化させるステップを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
DCオフセットピークは、前記HFAC振幅の5%〜15%の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の期間および前記第2の期間は、まとめて80ミリ秒未満となる、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間であり、前記第2の期間は100ミリ秒〜200ミリ秒の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
装置であって、
電極と、
前記電極に接続された波形発生器と、
コントローラとを備え、前記コントローラは、
前記電極によって第1の高周波交流(HFAC)を神経の軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記第1のHFACは、第1の振幅、第1の周波数および第1の電流を有し、前記第1の振幅、前記第1の周波数および前記第1の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記神経伝導ブロックは、前記軸索を介した信号の伝達をブロックし、前記コントローラはさらに、
第2の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記第2のHFACは、第2の振幅、第2の周波数および第2の電流を有し、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させないように構成され、前記第2の振幅、前記第2の周波数および前記第2の電流の前記組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるのに十分な第3のHFACを印加したときに前記軸索において初動状態が発生することを防ぐように構成され、前記コントローラはさらに、
第3の高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記第3のHFACは、第3の振幅、第3の周波数および第3の電流を有し、前記第3の振幅、前記第3の周波数および前記第3の電流の組合せは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成される、装置。
【請求項25】
前記第1のHFAC、前記第2のHFACおよび前記第3のHFACのうちの1つ以上は、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記コントローラは、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるように前記波形発生器を制御するように構成される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記軸索および前記軸索によって刺激された筋肉のうちの1つ以上における信号を検出し、前記信号に少なくとも部分的に基づいて前記波形発生器を選択的に制御するためにセンサを備える、請求項24に記載の装置。
【請求項27】
スイッチを備え、前記コントローラは、スイッチの設定に少なくとも部分的に基づいて選択的に制御される、請求項24に記載の装置。
【請求項28】
装置であって、
電極と、
前記電極に接続された波形発生器と、
コントローラとを備え、前記コントローラは、
最初に直流(DC)を神経の軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記DCは、第1のDC振幅を有し、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない第1の振幅を有し、前記コントローラはさらに、
次いで、第1の期間にわたって前記第1のDC振幅を第2のDC振幅に増加させるように前記波形発生器を制御するように構成され、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分な前記第2のDC振幅を有し、前記コントローラはさらに、
次いで、高周波交流(HFAC)を前記軸索に印加するように前記波形発生器を制御するように構成され、前記HFACは、HFAC振幅、HFAC周波数およびHFAC電流を有し、前記HFACは、前記軸索において神経伝導ブロックを発生させるように構成され、前記コントローラはさらに、
次いで、第2の期間にわたって前記第2のDC振幅を第3のDC振幅に減少させるように前記波形発生器を制御するように構成され、前記DCは、前記軸索において神経ブロックを発生させるのに十分でない前記第3のDC振幅を有し、
前記DCおよび前記HFACの組合せ、ならびに、前記DCおよび前記HFACが印加される順序は、前記HFACのみが印加された場合の伝導神経ブロックを発生させることに関連する前記軸索における初動活動と比較して、前記軸索における前記初動活動を少なくとも10%だけ低減させる、装置。
【請求項29】
前記電極は、5つのノードの電極を備え、前記5つのノードの電極は、HFACを印加するための2つの内側ノードの組と、DCを印加するための3つの外側ノードの組とを備える、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記電極は、3つのノードの電極を備え、前記3つのノードは、前記HFACおよびDCの両方をともに印加するための2つの外側ノードの組と、前記HFACのみを印加するための中心ノードとを備える、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記DCおよび前記HFACのうちの1つ以上は、最初は電荷に対して平衡がとれておらず、前記コントローラは、最初は平衡がとれていないHFACの電荷をある期間にわたって平衡させるように前記波形発生器を制御するように構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項32】
方法であって、
初動活動を防ぐために初期遷移波形を神経に与えるステップと、
神経信号伝達をブロックするために定常状態波形を与えるステップとを備える、方法。
【請求項33】
前記初期遷移波形および前記定常状態波形のうちの1つ以上は平衡がとれておらず、前記方法は、平衡がとれていない電荷の少なくとも一部をある期間にわたって回復させるステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記初期遷移波形は、オフセット、振幅および周波数のうちの1つ以上の点で最初は変化し、前記初期遷移波形は電荷平衡波形に遷移する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
方法であって、
第1の波形を神経に加えるステップを備え、前記第1の波形は、前記神経における信号伝達をブロックするためのものであり、前記第1の波形は、前記神経の初動活動を変更するためのものであり、前記方法はさらに、
第2の一過性の波形を前記神経に加えるステップと、
神経信号をブロックし続けるためのものである第3の定常状態波形を前記神経に加えるステップとを備える、方法。
【請求項36】
前記第1の波形は、前記神経の初動活動を低減させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の波形は、前記神経の初動活動を無くす、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の波形はDC波形であり、前記第2の一過性の波形は、オフセット、振幅および周波数のうちの1つ以上の点で変化し、前記第1の波形、前記第2の一過性の波形および前記第3の定常状態波形は、1組の電極によって与えられる、請求項35に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2011−502022(P2011−502022A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532035(P2010−532035)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/012209
【国際公開番号】WO2009/058258
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(500429332)ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】CASE WESTERN RESERVE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/012209
【国際公開番号】WO2009/058258
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(500429332)ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】CASE WESTERN RESERVE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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