説明

初期乳癌の検出方法

【課題】初期乳癌を検出することが可能な、初期乳癌の検出方法を提供すること。
【解決手段】初期乳がんの検出方法は、生体から分離した被検試料について、例えばProtein BEX1遺伝子、Protein LETM2 mitochondrial precursor遺伝子、Major urinary protein 6 precursor遺伝子のような、特定の遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期乳癌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本人乳癌罹患者数は生活習慣の欧米化に伴い年々増加しており、今後更に増えると予想されている。死亡率も高く、世論の関心も極めて高い。そのため有効な早期診断法の確立と普及が求められている。
【0003】
本邦でもマンモグラフィーやエコー診断が導入され、一定の成果をあげている。しかし、検診による被爆、苦痛への不安や羞恥心などから、受診率は20%に留まっている。加えて2009年11月に乳癌検診先進国である米国政府の予防医学作業部会(USPSTF)がマンモグラフィー診断は脂肪密度の高い50歳未満(閉経前の女性)には効果がなく、勧められないと発表した。このように簡便かつ有効な新規早期診断法の確立が求められている。
【0004】
一方、既存の乳癌血清診断マーカーとしてCA 15-3やCEAなどが利用されているが(非特許文献1)、有効な早期診断マーカーは存在しない。
【0005】
有効な血清マーカーが得られれば、集団健康診断での簡便な一次スクリーニングが可能となり受診率向上に寄与する。更に既存の画像診断法と組み合わせれば、早期乳癌発見の精度向上も期待できる。血清マーカーの探索研究は、早期乳癌検体の入手が困難なため、ヒト進行性乳癌検体を用いた研究が中心であった。しかしながら、早期乳癌検体を用いても、ヒト検体の多様な遺伝的背景によるノイズが多く、有効なマーカーを見いだすのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-000054
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】臨床病理 第43巻第7号 696-702頁 1995年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、初期乳癌を検出することが可能な、初期乳癌の検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、細胞極性制御タンパク質であり幹・前駆細胞の維持に関わるaPKC-乳腺ノックアウトマウスを作製し、これが乳癌の早期病変を模擬する事、乳腺組織幹・前駆細胞の異常増殖が起きている事を見い出した(特許文献1)。そして、後述の実施例に具体的に記載するように、その分子機構の解析から、ヒト乳癌の15〜40%程度で過剰発現し、実際に臨床的に診断・治療標的となるErbB2(HER2)分子の遺伝子転写制御を通じて、aPKCが乳腺組織幹・前駆細胞の増殖を負に制御していることも見い出した。更に、ヒト乳癌検体104例の解析から、ヒト乳癌検体の15.2%で、乳癌幹細胞マーカー、aPKC、ErbB2 の異常など乳癌早期病変モデルマウス(以下、モデルマウスと称する)と酷似した異常を確認した。これらの一連の成果は、モデルマウスが、乳癌の診断マーカーや治療法の開発に利用できることを意味する。そして、このモデルマウスと、健常マウスの血中の各種ポリペプチドの量を測定し、両者の間で血中濃度に差があるポリペプチドを同定し、その遺伝子を特定することにより、初期乳癌のマーカーとなる遺伝子を特定し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、生体から分離した被検試料について、下記(1)〜(34)の遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定することを含む、初期乳がんの検出方法を提供する。
(1) Protein BEX1
(2) Protein LETM2 mitochondrial precursor
(3) Major urinary protein 6 precursor
(4) Vacuolar protein sorting-associated protein 18 homolog
(5) Apolipoprotein E precursor
(6) Uncharacterized protein C10orf132 homolog
(7) Apolipoprotein C-I precursor
(8) YEATS domain-containing protein 2
(9) Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator-related protein 1
(10) Beta-taxilin
(11) Regulator of G-protein signaling 11
(12) Centrosomal protein of 290 kDa
(13) Sterile alpha motif domain-containing protein 9-like
(14) ATP-dependent RNA helicase DDX18
(15) Cathepsin G precursor
(16) 182 kDa tankyrase 1-binding protein
(17) Beta,beta-carotene 9',10'-dioxygenase
(18) Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A isoform 3
(19) Centromere protein C 1
(20) Dynamin-binding protein
(21) Receptor tyrosine-protein kinase erbB-2 precursor
(22) Extended synaptotagmin-2
(23) Latent-transforming growth factor beta-binding protein 2 precursor
(24) Latexin
(25) Mastermind-like domain
(26) Serine/threonine-protein kinase PCTAIRE-3
(27) Transcription elongation regulator 1
(28) Zinc finger CCHC domain-containing protein 4
(29) Superkiller viralicidic activity 2-like 2
(30) Piwi-like protein 4
(31) Keratin type I cytoskeletal 10
(32) Keratin type I cytoskeletal 14
(33) Leukemia inhibitory factor receptor
(34) Transcription elongation factor SPT5
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来法では検出が困難な早期の乳癌を検出することができる。従って、本願発明は、乳癌の早期治療や予防に大いに貢献するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】下記実施例で行った、ヒト乳癌標本の免疫染色の結果を示す図である。
【図2】下記実施例で行った、ヒト乳癌標本の免疫蛍光分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の通り、本発明の方法では、上記した(1)〜(34)の遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定することを含む。(1)〜(34)の各遺伝子は公知であり、その塩基配列(ゲノミック)、cDNA配列及びそれによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、UniProtKB/Swiss-Prot及び/又は NCBI(GenBank)に登録されている。なお、異なるデータベースに登録されているものでも、NCBI(GenBank)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank/index.html)から串刺し検索可能である。マウス及びヒトにおけるこれらの遺伝子のAccession No.は下記表1の通りである。また、各遺伝子のcDNA配列及びそれがコードするポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号1〜162の奇数番号に示す。それらからアミノ酸配列のみを取り出したものを配列番号1〜162の偶数番号に示す。なお、下記表1に示されるように、同一の遺伝子であっても複数のcDNAアイソフォームが存在するものもある。
【0014】
【表1−1】

【0015】
【表1−2】

【0016】
【表1−3】

【0017】
【表1−4】

【0018】
これらの遺伝子は、下記実施例に具体的に記載するように、初期乳癌モデルマウス/コントロール(健常)マウス比が1.2以上と0.75以下になったポリペプチドをコードする遺伝子をピックアップしたものである。これらの遺伝子のうち、(1)〜(13)は、統計学的有意差(P<0.05)が認められたものである。(14)〜(34)は、同定できたポリペプチド数が少なく統計学的処理ができなかったものである。
【0019】
被検試料としては、血液試料(血清試料、血漿試料を包含)等の体液試料、癌組織からの生検試料等を挙げることができるが、患者の負担が少ない体液試料、特に血液試料が好ましい。下記実施例でも血中の濃度を測定している。
【0020】
遺伝子の発現量は、周知の種々の方法により測定することができる。例えば、下記実施例に具体的に記載する方法により、各遺伝子の遺伝子産物のタンパク質又はその断片(下記実施例で測定した各ポリペプチドのアミノ酸配列は実施例に記載)の濃度を測定することにより行うことができる。また、各遺伝子の遺伝子産物のタンパク質又はその断片のアミノ酸配列がわかっているので、これらのタンパク質又はその断片に対する特異抗体を常法により作製することができ、それらの特異抗体を用いた周知の免疫測定により上記各遺伝子の遺伝子産物のタンパク質又はその断片を定量することもできる。また、被検試料中の各遺伝子のmRNA量を測定することによっても行うことができる(mRNA量を測定する場合には、被検試料は、乳房の生検試料が好ましい)。mRNA量の測定は、常法によりmRNAからcDNAを調製し、その量を、各遺伝子に特徴的なプライマーセット(サイズは18塩基〜50塩基程度が好ましい)を用いたリアルタイム検出PCR等の定量的遺伝子増幅法により測定することもできるし、各cDNAを標識し、上記遺伝子(1)〜(34)を固定化したDNAチップと反応させてその結合量を測定する方法等により行うことができる。これらの方法は、遺伝子検査の分野において周知の方法であり、必要なキットも市販されているので、塩基配列がわかっている遺伝子については、当業者であれば容易に実施可能である。
【0021】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
1.モデルマウスとコントロールマウスの血液中の各種ポリペプチドの定量
(1) 糖鎖親和性カラム(WGA)による血清糖鎖タンパク質分画をかました解析法
糖鎖親和性カラム(より詳細にはWheat Germ Agglutinin (WGA)カラム、商品名Glycoprotein Isolation Kit, WGA)を用い、以下の操作により特許文献1記載の初期乳癌モデルマウスの血液中の各ポリペプチドの濃度を測定した。なお、以下の記述で「KOマウス」は特許文献1に記載されたモデルマウスである。
【0023】
各5μLずつプールしたサンプル(control, KO)
2) Control KOの各14.6w, 21w, 40wのペア
↓各サンプル20mlずつ使用
抗体カラムで高濃度血清タンパク質を除去(Agilent社マルチプルアフィニティ除去スピンカートリッジ マウス用)

脱塩、濃縮後タンパク質濃度75mg/60mlに調整

各サンプルを異なる質量のiTRAQ(商品名)試薬でラベルして混合

糖鎖抗体カラム(PIERCE社製、WGA)を用いて、糖たんぱく質と糖の結合していないタンパク質とで分画(吸着分画と非吸着分画に分ける)

トリプシンで消化後2D-LC(SCXとC18)で8フラクションに分ける。

質量分析解析
MALDI TOF-TOF: 4800(ABI)用いた。Protein Pilot Software 2.0解析を行った。
【0024】
その結果、モデルマウス/コントロールマウス比が1.2以上と0.75以下であったポリペプチドをコードする遺伝子として、上記遺伝子(1)〜(30)が同定された。各遺伝子についてのモデルマウス/コントロールマウス比及び定量されたポリペプチド断片のアミノ酸配列の配列番号を下記表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
(2) SDS-PAGEによる解析法
4μLずつ採りプールしたもの(計44μL)をサンプルとした。

抗体カラムで高濃度血清タンパク質を除去(ProteoPrep(商品名) 20 Plasma Immunodepletion Kit(SIGMA)またはProteomeLab(商品名)IgY-R7 SC(BECKMAN COULTER)

脱塩、濃縮後約200-250mgタンパク質を回収

control, KOサンプルを異なる質量のiTRAQ(商品名)試薬でラベルして混合
↓(i)HPLCもしくは(ii)SDS-PAGEによる分離分画
(ii)HPLCによる分離分画
iTRAQ(商品名)試薬でラベルをしたサンプル20μgをSMART(商品名)System(GE Healthcare)を用いて分離分画を行った。カラムはゲルろ過カラム(Superose 6)を用いた。
(iii) SDS-PAGEによる分離分画
iTRAQ(商品名)試薬でラベルをしたサンプル20μgを10%SDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動を行い、レーンのゲルを分子量毎に20個に切り分けた。

質量分析解析
ESI LIT-TOF:NanoFrontier LD(日立ハイテク)及びESI Q-TOF:Q-Tof micro(Waters)、ESI Q-TOF:SYNAPT MS(Waters)を用いて分析した。MascotのMS/MS ion searchによる解析でタンパク質を同定した。
【0027】
その結果、モデルマウス/コントロールマウス比が1.2以上と0.75以下であったペプチドをコードする遺伝子として、上記遺伝子(31)〜(34)が同定された。各遺伝子についてのモデルマウス/コントロールマウス比及び定量されたペプチド断片のアミノ酸配列の配列番号を下記表3に示す。なお、遺伝子番号(31)と(32)は、定量されたアミノ酸配列は同じであるが、異なるポリペプチドに由来するものである。その根拠は、実験手法的な問題で定量はできなかったが、(31)と(32)にそれぞれ特異的な(マウス)ペプチドが多数同定されていることによる (データ示さず)。
【0028】
【表3】

【0029】
2. ヒト乳癌標本の免疫組織化学分析
(1) 抗体
この実験に用いた抗体は次の通りであった。抗aPKC(λ)マウスモノクローナル抗体(BD Biosciences社製)、抗ALDHマウスモノクローナル抗体(BD Biosciences社製)、抗ALDHウサギモノクローナル抗体(Abcam社製)及び抗HER2(ErbB2)ラットモノクローナル抗体(Abcam社製)。
【0030】
(2) 免疫染色
ヒト乳癌標本は、神奈川がん臨床研究・情報機構(KCRIA)から提供された。この実験に用いた研究プロトコールは、横浜市立大学及び神奈川がん臨床研究・情報機構の倫理委員会により承認された。全ての患者から、組織サンプルを研究目的に使用することについて事前にインフォームドコンセントを得た。ヒト乳癌組織の凍結切片(4μm)を10%フォルマリンで固定した。一次抗体として、上記抗体を用いた。標識抗原は、DAB plus(商品名、DAKO社製)で可視化し、切片をヘマトキシリンで対比染色した。
【0031】
上記操作は、具体的には次のように行った。
一次抗体(A) anti-aPKCiota/lambda(TDL) (mouse monoclo)1/500dil.
(B) anti-ALDH(TDL)(mouse monoclo) 1/50 dil.
(i)凍結切片を10%ホルマリン, on ice, 5min固定
(ii) H2O, 5min
(iii) PBS, 5min.
(iv) 0.3% hydrogen peroxide/PBS, RT, 30min.
(v) PBS, 5min
(vi) 10%正常ウサギ血清/PBSでblocking, 37℃, 15min
(vii) 一次抗体 4℃, O/N
(viii) PBS 5min×3回
(ix) ビオチン化抗マウス二次抗体 10min(以降,ヒストファインキット,ニチレイCode:426032)
(x) PBS 5min×3回
(xi) ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン 5min(ニチレイCode:426062)
(xii) PBS 5min×3回
(xiii) DAB plus(DAKO Code:K3468)
(xiv) 核染 脱水 透徹 封入
【0032】
結果を図1に示す。図1中、a、bはヒト乳癌標本中のaPKCλの代表的な免疫染色像である。aPKCλ陽性(a)、同陰性(b)。cはaPKCλ陰性癌のALDHの免疫染色像を示す。矢印はALDH陽性癌細胞を示す。スケールバーは100μmである。
【0033】
(3) 免疫蛍光法
Cy3-結合抗ウサギ抗体(Amersham社製)、Cy5-結合抗ラット抗体(Amersham社製)及びAlexa 488抗マウス抗体(Invitrogen社製)を用いた。核染色には、DAPI(商品名、Roche社製)を用いた。染色切片は、Prolong gold antifade reagent(商品名、Invitrogen社製)に包埋した。
【0034】
上記操作は具体的には次のように行った。
一次抗体 (A) anti-aPKCiota/lambda(TDL) (mouse monoclo)1/500dil.
(B) anti-ALDH(Abcam)(rabbit monoclo) 1/200 dil.
(C) anti-HER2(Abcam)(rat monoclo) 1/50dil.
(i) 凍結切片を10%ホルマリン, on ice, 5min固定
(ii) H2O, 5min
(iii) PBS, 5min.
(iv) 10%正常ウサギ血清/TBSTでblocking, RT, 30min
(v) 一次抗体 4℃, O/N
(vi) TBST 5min×3回
(vii) 蛍光標識2次抗体 (1/500ずつ;anti-mouse Alexa488, anti-rabbit cy3, anti-rat cy5 )+DAPI
(viii) TBST 5min×3回
(ix) Prolong gold antifade (Invitrogen)で包埋。
【0035】
結果を図2に示す。図2中、a〜cはaPKCλ陽性の乳癌症例、d〜iはaPKCλ陰性の乳癌症例-1、j〜oは、さらなるaPKCλ陰性の乳癌症例-2。aPKCλ(a, d, j)の染色及びDAPI(b, e, k)染色並びにaPKCλとDAPIの統合画像(c,f,i)。(i,o)は、aPKCλ、ALDH、HER2の三重染色の統合画像。スケールバーは10μm。これらの2例の乳癌症例では、ほとんどの細胞はaPKCλを発現しておらず、ALDHとHER2の両方を発現していた。
【0036】
(4) 統計処理
全ての統計解析は、PASW statistics 18 (商品名、SPSS Inc.製)を用いて行った。P値が<0.05の場合、有意であると考えた。この実験で用いた臨床病理学的パラメーターを下記表4に示す。臨床病理学的特徴とaPKCλ発現の相関を解析するために、χ2検定を用いた。症例数が5例未満の場合には、Fisherの正確確率検定を適用した。χ2検定及びFisherの正確確率検定の両方においてP値が0.05未満の場合、残差分析を行った。調製済残差の絶対値が1.96よりも大きい場合には、P値が0.05未満であることを反映していると考えた。
【0037】
下記表4に、この実験で調べた104例の乳癌症例の臨床病理学的パラメーター及びいくつかの組織化学パラメーターを列挙した。ER、PgR、HER2、ALDH及びaPKCλの発現を評価するために凍結組織切片を用いた。ERとPgRは、免疫組織化学反応性が10%を超える場合に陽性であると定義した。HER2については、Hercep検定で+2及び+3を陽性と定義した。ALDHについては、腫瘍細胞の5%が免疫組織化学反応性を示す場合に陽性とした。aPKCλについては、腫瘍細胞の20%未満が免疫組織化学反応性を示す場合に陰性であると定義した。
【0038】
【表4】

【0039】
下記表5に臨床病理学的パラメーターとaPKCλ発現の相関を示す。臨床病理学的特徴(上記表4に記載)とaPKCλ発現の相関を解析するために、χ2検定を用いた。症例数が5例未満の場合には、Fisherの正確確率検定を適用した。
【0040】
【表5】

【0041】
aPKCλ陰性乳癌におけるHER2とALDHの相関も、Fisherの正確確率検定で解析した。χ2検定及びFisherの正確確率検定の両方においてP値が0.05未満の場合、残差分析を行った。調製済残差の絶対値が1.96よりも大きい場合には、P値が0.05未満であることを反映していると考えた。結果を下記表6に示す。
【0042】
【表6】

【0043】
表6に示されるように、aPKCλ陰性乳癌症例(n=40)において、ALDHはHER2と正に相関していた(P=0.015、Fisherの正確確率検定)。ALDH+/HER2+の調製済残差の値は+2.5であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から分離した被検試料について、下記(1)〜(34)の遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定することを含む、初期乳がんの検出方法。
(1) Protein BEX1
(2) Protein LETM2 mitochondrial precursor
(3) Major urinary protein 6 precursor
(4) Vacuolar protein sorting-associated protein 18 homolog
(5) Apolipoprotein E precursor
(6) Uncharacterized protein C10orf132 homolog
(7) Apolipoprotein C-I precursor
(8) YEATS domain-containing protein 2
(9) Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator-related protein 1
(10) Beta-taxilin
(11) Regulator of G-protein signaling 11
(12) Centrosomal protein of 290 kDa
(13) Sterile alpha motif domain-containing protein 9-like
(14) ATP-dependent RNA helicase DDX18
(15) Cathepsin G precursor
(16) 182 kDa tankyrase 1-binding protein
(17) Beta,beta-carotene 9',10'-dioxygenase
(18) Cyclin-dependent kinase inhibitor 2A isoform 3
(19) Centromere protein C 1
(20) Dynamin-binding protein
(21) Receptor tyrosine-protein kinase erbB-2 precursor
(22) Extended synaptotagmin-2
(23) Latent-transforming growth factor beta-binding protein 2 precursor
(24) Latexin
(25) Mastermind-like domain
(26) Serine/threonine-protein kinase PCTAIRE-3
(27) Transcription elongation regulator 1
(28) Zinc finger CCHC domain-containing protein 4
(29) Superkiller viralicidic activity 2-like 2
(30) Piwi-like protein 4
(31) Keratin type I cytoskeletal 10
(32) Keratin type I cytoskeletal 14
(33) Leukemia inhibitory factor receptor
(34) Transcription elongation factor SPT5
【請求項2】
前記(1)、(2)、(4)〜(34)の遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記(1)〜(13)の遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定することを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記(1)、(2)、(4)〜(13)の遺伝子群から選ばれる少なくとも1つの遺伝子の発現量を測定することを含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記被検試料が血液試料である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
遺伝子の発現量は、前記被検試料中に含まれる遺伝子産物の濃度に基づき測定される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−181094(P2012−181094A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44047(P2011−44047)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【Fターム(参考)】