説明

別々の情報技術製品/ソリューション展開間でパフォーマンス・データを共有する方法およびシステム

【課題】複数のコンピューティング・ノード間でパフォーマンス情報を動的に共有する方法およびシステムを提供する。
【解決手段】一実装は、前記コンピューティング・ノードにおける情報技術(IT)製品/ソリューションの展開からパフォーマンス情報を動的に取得し、取得されたパフォーマンス情報を知識データベースに記憶するために、取得されたパフォーマンス情報を通信ネットワーク上でサーバへ送信することを含む。サーバは、データベース内の情報に基づき、新たな構成情報を動的に判断し、新たな構成をデータベース内に記憶し、新たな構成情報をネットワーク上で送信することによって、前記展開に新たな構成情報を提供するよう動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に、情報技術(IT:information technology)製品/ソリューションを構成することに関し、特に、IT製品/ソリューション展開間で構成情報を共有することに関する。
【背景技術】
【0002】
情報技術(IT)製品/ソリューションをプロダクション環境に展開するときに頻繁に起こる解決が難しい課題は、特定のサービス・レベルまたはパフォーマンス目標を達成する構成の最適集合を発見することである。今日、エンタープライズ・アプリケーションを展開し、最適パフォーマンスを実現する構成を判断することにおける問題は、アプリケーションが、そのアプリケーション(ミドルウェア)のランタイム・プラットフォームを提供する他のソフトウェア製品のセットに基づくようになってきているということである。別の問題は、アプリケーションが、多数のプラットフォーム(オペレーティング・システム)上で実行されるよう開発されているということである。さらに別の問題は、最適パフォーマンスの展開および提供に関するベスト・プラクティスが必ずしも従われるとは限らないことから、各アプリケーションが明確に調整されなければならないということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、同じIT製品/ソリューションが別々の顧客環境で展開されると、各顧客が時間を費やして最適構成を発見しなければならない。2つの顧客が類似したコンピューティング環境を有し、それが結果として同じ最適構成につながる場合でも、この顧客が最適構成についての情報を共有する動的メカニズムがないことから、各顧客が時間を費やして最適構成を発見しなければならない。ITサービス・プロバイダが製品/ソリューションを複数回構成しなければならない場合にも、同様の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態によれば、本発明は、別々の情報技術製品/ソリューション展開間でパフォーマンス・データを共有する方法およびシステムを提供する。一実装は、複数のコンピューティング・ノード間でパフォーマンス情報を動的に共有する方法およびシステムを含み、前記コンピューティング・ノードにおける情報技術(IT)製品/ソリューションの展開からパフォーマンス情報を動的に取得することと、取得されたパフォーマンス情報を知識データベース内に記憶するために、取得されたパフォーマンス情報を通信ネットワーク上でサーバに送信することとを含む。サーバは、データベース内の情報に基づき、新たな構成情報を動的に判断し、新たな構成をデータベース内に記憶し、新たな構成情報をネットワーク上で送信することによって前記展開に新たな構成情報を提供するよう動作する。
【0005】
各展開におけるパフォーマンス情報は、その展開における現在の構成情報を含むとよく、新たな構成情報を判断することは、データベース内の構成情報に基づいて新たな構成情報を判断することをさらに含むとよい。
【0006】
パフォーマンス情報は、展開の構成ポリシーに基づく展開それぞれにおけるハードウェアおよびソフトウェア構成に関する現在の構成パラメータ情報を含むとよく、新たな構成情報を判断することは、データベース内の情報に基づいて最適構成を判断することをさらに含むとよい。
【0007】
展開の最適構成情報を判断することは、その展開から取得された情報に基づき、展開から取得されたパラメータ情報に基づいて展開タイプを展開に割り当てることであって、展開タイプは、展開のコンピューティング環境の特徴に応じたものである、該割り当てることと、その展開タイプに関してデータベース内に最適構成が存在すれば、その結果、その展開タイプに関して存在する最適構成を提供することとをさらに含むとよい。その展開タイプに関してデータベース内に最適構成が存在しなければ、その結果、その展開タイプに関してデータベース内にある構成情報に基づき展開の最適構成を判断し、展開の最適構成をデータベース内に格納し、展開の最適構成を提供する。
【0008】
新たな構成情報は、展開における構成ポリシーに基づき展開において適用されるとよい。展開は、新たな構成情報をリクエストしてもよく、その結果、新たな構成情報を提供することは、リクエストしている展開に新たな構成情報を提供することを含むとよい。
【0009】
本発明の他の側面および利点が、以下の詳細な説明から明らかになる。詳細な説明は、図面と併せて理解されると、本発明の原理の例示となる。
【0010】
本発明の本質および利点、ならびに好適な使用形態をよりよく理解するためには、添付の図面と併せて読まれる、以下の詳細な説明を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による、別々の情報技術製品/ソリューション展開間でパフォーマンス・データを共有する知識共有システムの機能ブロック図を示す。
【図2】本発明の実施形態による、知識共有システム内のクライアント・モジュールの機能ブロック図を示す。
【図3】本発明の実施形態による、知識共有システム内のサーバ・モジュールの機能ブロック図を示す。
【図4】本発明の実施形態による、別々の情報技術製品/ソリューション展開間でパフォーマンス・データを共有するアーキテクチャの機能ブロック図を示す。
【図5】本発明の実施形態による、別々の情報技術製品/ソリューション展開間でパフォーマンス・データを共有するプロセスのフローチャートを示す。
【図6】本発明の実施形態による、別々の情報技術製品/ソリューション展開間で最適構成情報を判断および共有するプロセスのフローチャートを示す。
【図7】本発明の実施形態による、別々の情報技術製品/ソリューション展開間での最適構成情報の共有および適用の図形による例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、本発明の全般的な原理を示すためのものであり、本願明細書において請求される発明概念を限定することは意図されていない。さらに、本願明細書に記載される特定の特徴は、様々な可能な組み合わせおよび置換のそれぞれにおいて、記載されている他の特徴と組み合わせて使用可能である。本願明細書で明確に他の記載がない限り、すべての表現には、明細書が暗示する意味、ならびに当業者により理解される意味または辞書、論文などで定義されている意味あるいはその両方を含め、その最大限広範な解釈が与えられるものとする。
【0013】
本発明は、構成情報などのパフォーマンス・データを、別々の情報技術(IT)製品/ソリューション展開間で動的に共有する方法およびシステムを提供する。一実施形態は、様々なコンピューティング環境における(IT)製品/ソリューション(例えばソフトウェア製品)の展開に関する新たな構成についての情報を含む情報を動的に取得してデータベース内に記憶し、そのような、或る環境向けの新たな構成情報を、データベースからその環境のクライアントに提供することによって構成情報を共有することを可能にする知識共有メカニズムを含む。
【0014】
一実施形態では、新たな構成情報は、実質的に最適な構成情報を含む。知識共有メカニズムは、IT製品/ソリューションの複数の展開に適用され、そのような複数の展開における最適構成を発見する期間を短縮し、その結果、複数の展開で同じタスクへの取り組みが重複することを避ける。本発明はさらに、IT製品/ソリューションのパフォーマンス・モデルの動的な改善を提供し、その結果、静的なローカルの構成アドバイザを使用することの制限を克服する。
【0015】
一実装は、エンタープライズ・レベルおよびエンタープライズ間で価値を提供する、Web2.0のようなシステム(Enterprise2.0)を可能にする知識共有メカニズムを含む。これは、所定のIT製品/ソリューションの複数展開間の知識共有システムを提供し、そのIT製品/ソリューションの最適パフォーマンス構成を発見する。当該のシステムは、概して、各IT製品/ソリューション展開のクライアントと、サーバとを含む。クライアントは、対応するIT製品/ソリューション展開を、その展開から必要なハードウェアおよびソフトウェア・データを収集し、そのデータをサーバへ送り、その展開に最適な構成を受信することにより最適化するよう構成されている。サーバは、IT製品/ソリューションのすべての展開からデータを収集し、各展開の最良(最適)構成を発見し、最適構成情報を各展開へ返送するよう構成されている。
【0016】
1つの運用シナリオでは、クライアントは、特定のIT製品/ソリューションに組み込まれたソフトウェア・モジュールを含み、コンピューティング環境におけるそのIT製品/ソリューション展開の構成状況を、その展開に適用される最適化ポリシーとともに定期的にサーバへ送る。サーバは、当該情報を分析して、所望の顧客最適化ポリシーに従い、その環境にその構成が最適であるかどうかを判断する。サーバは、他の展開(顧客)からの、類似したコンピューティング環境(単数または複数)および類似した最適化ポリシーに関して既に公知である構成、または分析的構成最適化技術(analytical configuration optimization techniques)、あるいはその両方を活用することで、構成が最適であるかどうかを判断する。
【0017】
サーバが、コンピューティング環境におけるIT製品/ソリューション展開の最適構成を判断すると、サーバは、その展開のクライアントへ最適構成情報を送る。次に、その展開の顧客は、最適構成状態に移行するよう構成変更を現在の構成に対し自動的にシステムに実装させること、または変更を処理する前に変更を検証するよう手動確認を要求することを決定することができる。
【0018】
IT製品/ソリューションの展開の数が増えるにつれて、類似したコンピューティング環境の構成の最適性も増す。これはさらに、IT製品/ソリューションのパフォーマンス・モデルの動的強化を可能にする。別々の時間に別々の構成が必要な場合(例えば、コンピューティング負荷の季節ごとの変化)、このシステムは、サーバから各展開へのダウンロードを迅速にリクエストできる種々の構成を提供する。このシステムは、様々な構成についての情報(肯定的および否定的)収集に基づき各展開の最適構成を作り出すことによる、知識生成メカニズムを提供する。したがって、「否定的」知識(すなわち、IT製品/ソリューションに何か不具合が生じたときに作り出される知識)のみでなく、「肯定的」知識(すなわち、IT製品/ソリューションの優れた動作の知識)も活用される。
【0019】
図1は、本発明の実施形態による、別々のIT製品/ソリューション(例えば、顧客Aおよび顧客Bコンピューティング環境での展開)間でパフォーマンス・データを共有するシステム10の機能ブロック図を示す。クライアント・モジュール11が、最適化されるコンピューティング環境にある各IT製品/ソリューション展開に提供され、サーバ12は、最適構成を作り出すために、種々の展開の知識共有を活用する。クライアント・モジュール11およびサーバ12は、インターネットなどの通信ネットワークを介して接続されている(他の通信ネットワークが利用されてもよい)。各コンピューティング環境は、1つ以上のコンピューティング・ノードを含むとよく、各コンピューティング・ノードは、1つ以上のプロセッサ、ストレージ・デバイス、データベース・モジュール、通信モジュール、ネットワークなどを含むとよい。
【0020】
図2は、データ・コレクタ15、データ送信機16、ソリューション受信機17、構成アクチュエータ(configuration actuator)18、定期チェッカ(periodical checker)19、および最適化ポリシー・コンフィギュレータ(optimization policy configurator)20を含むクライアント・モジュール11の実施形態の機能ブロック図を示す。データ・コレクタ15は、プローブ(probe)21を使用してパフォーマンス・モデルに必要なデータを集める。一例では、プローブ21は、OSプローブ、HWプローブ、およびSWプローブを含み、それぞれ展開コンピューティング環境のOS、ハードウェア、ミドルウェアとインターフェースで接続するソフトウェア・モジュールを含み、最適構成およびパフォーマンス・モデルに必要なデータを抽出する。
【0021】
データ送信機16は、パフォーマンス・モデル・データをサーバ12(図1)へ送る。ソリューション受信機17は、サーバから構成の最適セット(すなわち「ソリューション」)を受信し、それをストレージ22に記憶する。構成アクチュエータ18は、IT製品/ソリューション展開にて必要な構成変更を実行する。定期チェッカ19は、パフォーマンス・モデルに関して展開においてパラメータのセットを監視し、前記パラメータの1つ以上の値が特定の閾値より上/下に変化すると、データ・フローを開始する(すなわち、パフォーマンス・モデル・データをサーバへ送り構成の最適セットを受信する)。最適化ポリシー・コンフィギュレータ20は、適用される最適化ポリシーを顧客が指定できるようにする。
【0022】
図3は、サーバ12の実施形態の機能ブロック図を示す。サーバ12は、各IT製品/ソリューションのプラグイン25を提供する製品独立インフラストラクチャを利用する。プラグイン25は、IT製品/ソリューションの構成を記述するのに必要なパフォーマンス・データのセットを含むパフォーマンス・モデル・データを、IT製品/ソリューション展開の各クライアント11から受信すること、および対応する展開を最適化するために必要なデータのセットを各クライアントへ送ることを可能にする。サーバ12は、知識データベース14に存在するデータに基づき各IT製品/ソリューション展開に関して実質的に最良の構成を提供するパフォーマンス・モデルを操作するよう構成された最適化エンジン(ソリューション・ファインダ(solution finder))13を含む。最適化エンジン13は、線形補間アルゴリズムまたは遺伝的アルゴリズム(またはその他任意の最適化手法)を利用して、各展開の最適構成を提供するとよい。
【0023】
IT製品/ソリューション(例えばソフトウェア製品X、ソフトウェア製品Y)のプラグイン25は、そのIT製品/ソリューションの展開にあるクライアント11と通信するとよい。一実施形態では、IT製品/ソリューションのプラグイン25は、データ受信機26、製品パフォーマンス・モデル27、およびソリューション送信機28を含むソフトウェア・モジュールを含む。データ受信機26は、対応するIT製品/ソリューションの展開に関してクライアント11により送られたデータを受信する。製品パフォーマンス・モデル27は、IT製品/ソリューションのパフォーマンス・モデルを表す。一例では、分析されるパフォーマンス・パラメータのセットは、ベクトル={HWデータ,SWデータ,展開ディメンション}であり、最適化されるパラメータのセットはベクトルであり、ベクトルPの各要素Pに適用される最適化ポリシーのセットは要素Pの現在の値の所望の変化として顧客により指定されることができ、状態iでの構成はdとしての和集合であり、パフォーマンス・モデルは、φ(d)により構成状態の関数として表される。
【0024】
最適化エンジン13は、IT製品/ソリューションの所定のパフォーマンス・モデルの最適構成を、IT製品/ソリューションの別々の展開(別々の顧客)間で共有されるデータにアクセスすることによって判断する。最適化エンジン13は、各IT製品/ソリューション(ソフトウェア製品X、ソリューション製品Y)のクライアント11に、対応する最適構成を提供する。したがって、図4において例示アーキテクチャ30により示されているように、サーバ12は、各IT製品/ソリューションの複数展開にある関連クライアント11の、対応するプラグイン25を介して、複数IT製品/ソリューションの最適構成分析を実行するとよい。
【0025】
図5は、本発明の実施形態による、異なるIT製品/ソリューション展開間でパフォーマンス・データを共有するクライアント・プロセス40のフローチャートを示す。プロセス・ブロック41は、ハードウェア・データ、ソフトウェア・データ(例えばOS、ミドルウェア、製品特有)、展開ディメンション(例えばこの展開によりサポートされるクライアントの数)などの分析されるパラメータのセット、最適化されるパラメータのセット(例えば、以前のデータ・グループのサブセット)を、各パラメータに関する所望の最適化ポリシーとともに含む、IT製品/ソリューション展開に関するクライアント側の現在の構成データをスキャンする。プロセス・ブロック42は、そのようなデータがサーバにアップロードされているかどうかを判断する。されていれば、プロセスは、ブロック41へと戻り、そうでなければブロック43へ進む。
【0026】
プロセス・ブロック43において、クライアントは、スキャンされたデータをサーバへ送る。例えば、スキャンされたデータは、定期的に、またはパラメータ値の一部が所定の閾値より上/下に変化したときに、サーバにアップロードされることが可能である。図6に関係して以下にさらに記載するように、サーバ側でのプロセス・ブロック44において、IT製品/ソリューションの別々のクライアントすべてからデータが収集され、各展開の最適構成が判断される。プロセス・ブロック45において、最適構成情報が、リクエストしているクライアントそれぞれにダウンロードされる。クライアント側でのプロセス・ブロック46において、新たに受信された構成情報が、IT製品/ソリューション展開に自動/手動で適用される。具体的には、クライアントが、自動(すなわち、サーバからプッシュされる構成変更を常に適用)、閾値未満/超のとき(すなわち、所定の閾値未満/超の構成パラメータに構成変更を適用)、手動介入が必要(すなわち、オペレータが変更の承認またはその逆を行わなければならない)などのポリシー設定に基づき、最適構成を適用するとよい。
【0027】
図6は、本発明の実施形態による、IT製品/ソリューションの各展開の最適構成を判断するサーバ・プロセス50のフローチャートを示す。処理ブロックについて以下に記載する。
【0028】
ブロック51:展開カテゴリを定義。このプロセスは、展開タイプに従って、クライアントから受信されたパフォーマンス・モデル・パラメータ・データをフィルタリングすることを含む。各製品パフォーマンス・モデルは、各展開のカテゴリを定義するよう、分析されるパラメータのサブセットの範囲を定義する。
【0029】
ブロック52:最適化ポリシー・カテゴリを定義。展開は、カテゴリ(例えばSMB展開、エンタープライズ展開など)に割り当てられると、展開の顧客により指定された最適化ポリシーに従いさらにフィルタリングされる(例えば、ウェブ・アプリケーションの2つの異なるポリシーは、「スループットを最大化」または「応答時間を最小化」であることもある)。
【0030】
ブロック53:展開が既知の展開タイプ()であるかどうかを判断。そうであれば、ブロック54aへ進み、そうでなければブロック54bへ進む。
【0031】
ブロック54a:展開の未知の構成(d)が既に最適であるかどうかを判断。最適でなければ、ブロック55へ進み、他の場合は停止する。
【0032】
ブロック54b:展開の構成(d)が既に最適であるかどうかを判断。最適でなければ、ブロック55へ進み、他の場合は停止する。
【0033】
ブロック55:展開の新たなよりよい/最適な構成を発見。
【0034】
ブロック56:新たな構成をその展開のクライアントへ送る。
【0035】
よって、ブロック54aおよび54bにおいて、その展開環境の最適構成が既に存在すれば(例えば、同じ顧客または他の顧客に関して以前に特定されているため)、さらなる処理は生じない。ブロック55では、その環境の最適ソリューションが存在しないため、ソリューション・エンジン13(図3)が、別々の展開からのデータを活用することで最適構成を判断する。
【0036】
図7の例示プロセス60を参照する。分析されるパフォーマンス・モデル・パラメータのセット(P,i=1,...,8)により表されるIT製品/ソリューションの展開(顧客A)であって、その最適化ポリシーを、パラメータPの値の所望の増分として表すことができる展開について考える。展開タイプおよび最適化ポリシーが顧客Aと同じである別の顧客(顧客B)が、その展開の最適構成に既に達していると仮定すると、ソリューション・エンジン13は、パフォーマンス・モデル・パラメータの2つのセット(すなわち顧客Aおよび顧客Bのパフォーマンス・モデル・パラメータ)を比較して、そのうち2つ(例えばPおよびP)を変えると、顧客Aは、顧客Bでの展開に類似した、その展開の所望の最適構成に達することができると発見できる。
【0037】
以下の例は、新たな次善IT製品/ソリューション構成(IT製品/ソリューションの新たなインストールに相当)を処理するための知識共有のプロセスを説明するシナリオを提供し、その展開の既知の「優れた」構成を提案する。知識共有システムは、XMLファイルを使用して製品/ソリューションに関係するすべての構成情報を管理すると仮定する。このシナリオを示すために考案されたサンプル製品は、次のXMLスキーマにより定義されたパフォーマンス・モデルを有する:
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
製品開発およびテスト段階の間に定義される製品パフォーマンス・モデルは、そのパフォーマンスに影響し得るすべてのパラメータ(例えばハードウェア、オペレーティング・システム、および製品構成のパラメータ)を、主要/重要メトリクスの現在の値(当該システム上で製品が現在どのように機能しているかを表す)、およびそうした値の顧客により指定された所望の変化(そのパフォーマンス目標または最適化ポリシー)と共に含む。説明を簡潔にするために、パラメータおよびメトリクスの数およびタイプは、少数にとどめた。例えば、サンプル製品は、単一サーバ・トポロジを有し、サーバ・モジュールが、その構成が製品全体のパフォーマンスに影響を及ぼす唯一のモジュールである。他の製品およびパフォーマンス・モデルは、さらなる情報を含み得る。サンプル製品の各インストール/展開は、そのXMLスキーマのインスタンス(XMLファイル)により表現される。
【0043】
サンプル製品は、4つの異なる顧客サイト(顧客A、B、C、D)にて展開され、顧客のうち3つ(顧客A、CおよびD)は、しばらくの間製品を実行しており、その構成は既に知識共有システム10のサーバ12上のデータベース内に記憶されている(例えば、図6のプロセス50により)。製品の前記3つの顧客展開の構成は、以下のXMLコードにより表される。
【0044】
顧客Aは、知識共有システム10が「大型」と分類した(XMLファイルでは「Enterprise」)環境でサンプル製品を展開したクライアント11を表す。その構成は、顧客がまだパフォーマンス・メトリクスの一部の「up」または「down」の変更を行うことをリクエストしているため、まだ「最適」ではない。顧客Aの構成:
【0045】
【表5】

【0046】
【表6】

【0047】
顧客Cは、知識共有システム10が「小規模」と分類した(XMLファイルでは「SMB」)環境でサンプル製品を展開したクライアントを表す。顧客Aのように、そのパフォーマンス目標はまだ達成されていない。顧客Cの構成:
【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
顧客Dは、知識共有システム10が、顧客Cのものなど、「SMB」として分類した環境にサンプル製品を展開したクライアントを表す。顧客Dは、製品パフォーマンス主要メトリクスのいかなる変化も指定していないため、その構成は「最適」と見なされる。顧客Dの構成:
【0051】
【表9】

【0052】
【表10】

【0053】
4番目の顧客(顧客B)は、サンプル製品のそのインスタンスを展開したばかりであり、その構成が初めて知識共有システム10に送られる。顧客Bの構成:
【0054】
【表11】

【0055】
【表12】

【0056】
顧客Bの展開タイプは、システム10によって「SMB」として分類されている。したがって、サーバ12が他の顧客の構成を照合すると、顧客Cおよび顧客Dのみがさらなる比較対象として考慮され、その一方で、展開が「Enterprise」として分類された顧客Aは、この最適化分析から除外される。
【0057】
知識共有システム10が、次の分類ステップ(すなわち、顧客最適化ポリシーの比較を含む)へ進むと、その結果、顧客Cが、顧客Bに対し異なる最適化ポリシーを有することが発見される。したがって、顧客Bのデータは、この場合最適化に使用されない。
【0058】
代わりに、顧客Dは、その最適化ポリシーを達成しており、顧客Bにより指定されたパフォーマンス目標の「方向」にあるそのメトリクスの現在の値のセットを提供する。例えば、顧客DのCPU利用および応答時間は、顧客BのCPU利用および応答時間よりも低く、顧客Bはまさに、顧客BのCPU利用および応答時間の値を低くすることができる新たな構成をリクエストしている。さらに、顧客Dは、顧客Bのスループットの値よりも高いスループットの値を有し、顧客Bは、そのスループットを上げようとしている。
【0059】
したがって、知識共有システム10は(サーバ12の動作を介して)顧客Bのパフォーマンス目標を顧客Bが達成できるよう、顧客Dの構成を顧客Bにも提案できると判断するとよい。2つの構成間の比較を実行することで、製品パフォーマンスに違いをもたらしそうなパラメータ値は、スレッド・プール・サイズおよびDB接続プール・サイズであることが分かる。新たな構成の提案が、サーバによって顧客Bへ送られ、スレッド・プール・サイズおよびDB接続プール・サイズ構成パラメータの変化を提供する。
【0060】
よって、本発明の知識共有システムの実施形態によれば、クライアント間で共有される知識が動的に作り出されて、複数のクライアントからサーバに与えられ、貢献者(クライアント)の数が増えるにつれて、作り出される知識の有効性が向上する。知識共有システムは、クライアントと共有される構成の動的なセットを含む知識ベースを利用する。知識共有システムは、知識ベースが、それを使用するクライアント(例えば、異なるインストール/展開間で一般的アプリケーションの構成情報を共有する)の数とともに動的に更新および改善されることを可能にする。共有メカニズムは、クライアントが、任意の他のクライアントにより使用されている構成にアクセスできるようにする。具体的には、或るクライアントのニーズに適した新たな構成について、当該構成を使用してその利用から何らかの恩恵(例えば、応答時間のよりよいパフォーマンス)を受けた別のクライアントによって当該構成が利用可能にされると、クライアントはすぐに「通知」される。
【0061】
当業者には周知のように、本発明による、上記に記載した上述の例示実施形態は、例えばプロセッサにより実行されるプログラム命令、ソフトウェア・モジュール、コンピュータ可読媒体上のコンピュータ・プログラム製品、論理回路、シリコン・ウエハー、集積回路、特定用途向け集積回路、ファームウェアなど、多数の方法で実装することができる。本発明は、その特定のバージョンを参照して記載されたが、そのほか複数のバージョンが考えられる。したがって、添付の特許請求の範囲に記載の意図および範囲は、本願明細書に含まれている好適なバージョンの記載に制限されるべきではない。
【0062】
「コンピュータ・プログラム媒体」、「コンピュータ使用可能媒体」、および「コンピュータ可読媒体」、「コンピュータ・プログラム製品」という用語は、全般的に、メイン・メモリ、二次メモリ、リムーバブル・ストレージ・ドライブ、ハード・ディスク・ドライブに取り付けられたハード・ディスク、および信号などの媒体を指すために使用されている。こうしたコンピュータ・プログラム製品は、ソフトウェアをコンピュータ・システムに提供する手段である。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ・システムが、データ、命令、メッセージまたはメッセージ・パケット、およびその他のコンピュータ可読情報を、コンピュータ可読媒体から読み取ることができるようにする。コンピュータ可読媒体は、例えば、フレキシブル・ディスク、ROM、フラッシュ・メモリ、ディスク・ドライブ・メモリ、CD−ROM、およびその他の永久ストレージなどの不揮発性メモリを含むとよい。例えば、データおよびコンピュータ命令などの情報をコンピュータ・システム間で輸送するのに有用である。さらに、コンピュータ可読媒体は、コンピュータがそのようなコンピュータ可読情報を読み取ることができるようにする、有線ネットワークまたは無線ネットワークを含むネットワーク・リンクまたはネットワーク・インターフェースあるいはその両方などの一時的状態媒体(transitory state medium)にあるコンピュータ可読情報を含み得る。コンピュータ・プログラム(コンピュータ制御論理とも呼ばれる)は、メイン・メモリまたは二次メモリあるいはその両方に記憶される。さらにコンピュータ・プログラムは、通信インターフェースを介して受信されてもよい。そのようなコンピュータ・プログラムは、実行されると、コンピュータ・システムが本願明細書に記載された本発明の機能を実行できるようにする。特に、コンピュータ・プログラムは、実行されると、マルチコア・プロセッサがコンピュータ・システムの機能を実行できるようにする。したがって、そのようなコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・システムのコントローラに相当する。
【0063】
当業者であれば当然のことであるが、記載したばかりの好適な実施形態の様々な適応および変更を、本発明の範囲および意図から逸脱することなく構成することができる。したがって、当然のことながら、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内で、本願明細書に具体的に記載された以外の本発明の実践が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンピューティング・ノード間でパフォーマンス情報を動的に共有する方法であって、
前記コンピューティング・ノードにおける情報技術(IT)製品/ソリューションの展開からパフォーマンス情報を動的に取得するステップと、
前記取得されたパフォーマンス情報を、知識データベース内に記憶するために、前記取得されたパフォーマンス情報を、通信ネットワーク上でサーバへ送信するステップと、
前記サーバにおいて、前記データベース内の前記情報に基づき、新たな構成情報を動的に判断し、前記新たな構成を前記データベース内に記憶し、前記新たな構成情報を前記ネットワーク上で送信することによって前記展開に前記新たな構成情報を動的に提供するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
各展開における前記パフォーマンス情報は、その展開における現在の構成情報を含み、新たな構成情報の判断は、前記データベース内の前記構成情報に基づいて新たな構成情報を判断するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パフォーマンス情報は、展開の構成ポリシーに基づく前記展開それぞれにおけるハードウェアおよびソフトウェア構成の現在の構成パラメータ情報を含み、新たな構成情報の判断は、前記データベース内の前記情報に基づいて最適構成を判断するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
展開の最適構成情報の判断は、
その展開から取得された前記情報に基づき、
前記展開から前記取得されたパラメータ情報に基づいて展開タイプを前記展開に割り当てるステップであって、前記展開タイプは、前記展開のコンピューティング環境の特徴に応じたものである、前記ステップと、
その展開タイプに関して前記データベース内に最適構成が存在すれば、その結果、その展開タイプに関して前記存在する最適構成を提供するステップと、
をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
その展開タイプに関して前記データベース内に最適構成が存在しなければ、その結果、その展開タイプに関して前記データベース内にある前記構成情報に基づき前記展開の最適構成を判断し、前記展開の前記最適構成を前記データベース内に格納し、前記展開の前記最適構成を提供するステップ
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
展開における構成ポリシーに基づき前記展開において前記新たな構成情報を適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
展開が新たな構成情報をリクエストするステップをさらに含み、その結果、新たな構成情報の提供は、前記リクエストしている展開に前記新たな構成情報を提供するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数のコンピューティング・ノード間でパフォーマンス情報を動的に共有するシステムであって、
1つ以上のクライアント・モジュールと、サーバ・モジュールと
を含み、
各クライアント・モジュールは、コンピューティング・ノードにおける情報技術(IT)製品/ソリューションの展開において動作するよう構成されており、各クライアント・モジュールは、対応する前記展開からパフォーマンス情報を動的に取得して、前記取得されたパフォーマンス情報を通信ネットワーク上でサーバへ送信するようさらに構成されており、
前記サーバ・モジュールは、前記取得されたパフォーマンス情報を知識データベース内に記憶し、前記データベース内の前記情報に基づき新たな構成情報を動的に判断し、前記新たな構成を前記データベース内に記憶し、前記新たな構成情報を前記ネットワーク上で送信することによって各展開のクライアント・モジュールに前記新たな構成情報を提供するよう構成されている、システム。
【請求項9】
各展開における前記パフォーマンス情報は、その展開における現在の構成情報を含み、前記サーバ・モジュールは、前記データベース内の前記構成情報に基づいて新たな構成情報を判断するようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記パフォーマンス情報は、展開の構成ポリシーに基づく前記展開それぞれにおけるハードウェアおよびソフトウェア構成の現在の構成パラメータ情報を含み、前記サーバ・モジュールは、前記データベース内の前記情報に基づいて最適構成を判断するようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記サーバ・モジュールは、展開の最適構成情報を、その展開から取得された前記情報に基づき判断するようさらに構成されており、前記判断は、
前記展開から前記取得されたパラメータ情報に基づいて展開タイプを前記展開に割り当てることであって、前記展開タイプは、前記展開のコンピューティング環境の特徴に応じたものである、前記割り当てることと、
その展開タイプに関して前記データベース内に最適構成が存在すれば、その結果、その展開タイプに関して前記存在する最適構成を提供することと、
を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記サーバ・モジュールは、展開の最適構成情報を、その展開から取得された前記情報に基づき判断するようさらに構成されており、前記判断は、
その展開タイプに関して、前記データベース内に最適構成が存在しなければ、その結果、その展開タイプに関して前記データベース内にある前記構成情報に基づき前記展開の最適構成を判断し、前記展開の前記最適構成を前記データベース内に記憶し、前記展開の前記最適構成を提供すること
を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
各クライアントは、展開における構成ポリシーに基づき前記展開において前記新たな構成情報を適用するようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
各クライアントは、新たな構成情報をリクエストするようさらに構成されており、前記サーバ・モジュールは、前記リクエストしている展開クライアントに前記新たな構成情報を提供するようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
コンピュータ・プログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータ上で実行されると請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の方法の前記ステップを実行するプログラミング・コード命令を含む、コンピュータ・プログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526304(P2012−526304A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526426(P2011−526426)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055659
【国際公開番号】WO2010/028868
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】