説明

制御された構造及び粒子径を有するナノポーラスアルミナ系材料の製造方法及びその方法により得られたナノポーラスアルミナ

以下の工程:a)非水溶媒と酸との混合物中にアルミナ前駆体を溶解する工程;b)非水溶媒に気泡剤を溶解する工程;c)工程a)及びb)で得られた溶液を一つに混合する工程;d)工程c)の反応混合物に形態制御剤を添加する工程;e)工程d)の反応混合物を蒸発させる工程;及びf)工程e)の生成物から形態制御剤及び気泡剤を除去する工程を含むことを特徴とする無機ポーラス酸化材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の孔径ならびに、粒子径及び形状を有するナノポーラス材料の製造方法に関し、特にナノポーラスアルミナの製造方法及びその方法により得られた生成物に関する。
【0002】
本発明による方法は、様々な用途、特に触媒反応の分野での用途を見い出しうるナノポーラス材料を製造できる。本発明により用途を見い出しうる重要な触媒の例としては、フィッシャー−トロプシュ(Fischer-Tropsch)触媒反応、酸触媒反応、水素化触媒反応用の支持体として、脱硫触媒反応用の精密化学(fine chemical)触媒反応、及びアルミナが多孔性支持体として又は活性モリブデン、コバルト及び/又はニッケル触媒への添加剤として共通に利用されたレドックス触媒がある。本発明の範囲の下で製造された材料の更なる用途としては、ナノポーラスアルミナが不純物、炭素又は非炭素系物のろ過効果により活性触媒の失活防止を主役割として有する、触媒中又は他のタイプの化学反応中の捕集剤(scavenger)としての使用である。
【背景技術】
【0003】
粒子径及び形状が、ポーラスマトリックス及び触媒により、又は触媒の安定化により、反応剤及び生成物の制御された分散の結果として、触媒反応の活性及び選択性に大きな影響を与えること、及び焼成で分布することはよく知られている。触媒の安定性及び寿命の大きな改善が、ナノポーラス固体の形態(morphological)(形状及び大きさ)特性を入念に形成することによりなしうることも知られている。
ナノスケール寸法の高表面積材料は、反応剤と触媒との間の高接触面積が費用効率の良好な方法で高収率を得るために必要とされる触媒用途のような、活性部位介在化学反応が重要な役割を果たす用途に特に関心がもたれている。
【0004】
アルミナは、転移アルミナで見られる高水熱安定性のため、高度な不均一(heterogeneous)触媒反応で最も広く使用された触媒支持体である。加えて、アルミナ系材料は、塗料被膜及び機能性セラミックスにおける吸着材、複合材料のような他の用途でも広く使用されている。ナノスケール寸法のアルミナ粒子は、ナノ粒子の性質、表面及び結晶構造が大きさに依存していることから、工業的及び学術的な背景から大きな興味を持って研究されている。同様に、メソポーラス材料の発見が、異なるポーラス構造を有する孔径に調整しうる可能性、ならびに粒径及び形状に調製しうる可能性により、ポーラス固体の分野の研究の増加を生じさせている。メソポーラス研究は、いくつかの合成法が他の酸化物及び金属組成物へメソポーラスの系統の範囲を広げる方法として公表されているが、ポーラスシリカの製造での使用及びその用途で主に蓄積されている。メソポーラスアルミナの場合、いくつかのゾル−ゲル及び界面活性剤補助ルートが報告されている。Huo等は、熱的に安定でないが、ラメラメソフェーズを報告している。Pinnavaia等が、水性条件下での非イオン性界面活性剤の使用で、急峻な孔分布を有する所謂“ワームホール(wormhole)”メソポーラスアルミナの合成法を成している。他の合成法は、アニオン性及びカチオン性界面活性剤の使用を含んでいるが、これら方法は、焼成により界面活性剤の後除去で一般的に熱的に不安定なメソポーラス構造になる。構造的な話として、非イオン性界面活性剤を使用し、アルミナ前駆体の加水分解速度に強く影響される[H2O]:[Al3+]比、最終生成物の構造性質、孔径及び表面積で定義した最も規則的(ordered)な構造がSomorjai等により報告されている。
【0005】
特許出願PCT/JP02/05156の“球状アルミナ粒子及びその製造方法”には、平均粒子径5〜35μmを有する“丸みを有する(roundish)”アルミナ粒子の製造のための製造方法が記載されている。
特許出願PCT/US2004/010266の“ナノポーラス超微粒アルファアルミナ粉末及びそれを製造するゾル−ゲル方法”には、少なくとも80%のa−アルミナ粒子が100nm以下の平均サイズを有するアルミナ粉末の生産方法が記載されている。この方法では、アルミナアルコキシドで構成されてもよいアルミナ前駆体の代表的に90℃での水熱処理を介してアルミナ粒子を生産している。また、この方法は、加水分解後、次いで、a−アルミナ相を付与するために、800〜900℃での処理であるゲルの形成を含んでいる。生産されたa−アルミナ粒子の特定の表面積は24〜39m2/gの間である。
【0006】
US−5,728,184の“ベーマイト(boehmite)からのセラミック材料の作製方法”には、ベーマイトとシリカ源との分散物を形成し、分散物を水熱処理し、分散物をアルファアルミナ系セラミック前駆体材料に変換し、前駆体を焼成することにより、多結晶アルファアルミナ系セラミック材料を作製する方法が記載されている。アルファアルミナ結晶のサイズを減少させ、かつ結果物であるセラミック材料の密度及び硬度を向上させるために、任意に核材料(場合により、種材料と称する)を使用できる。この特許は、ベーマイトから出発し、アルファアルミナにベーマイトを変換している。
【0007】
US−4,073,718の“荷重供給での水性転換(hydroconversion)及び水性脱硫(hydrodesulphurization)、及び残留物”には、コバルト又はニッケル触媒が堆積されたシリカで安定化されたアルミナの触媒基体が記載されている。
US−5,032,379の“触媒用途に適したアルミナ”には、30〜200オングストロームの範囲の孔径で、0.4cc/gより大きな孔体積を有するアルミナが記載されている。この特許には、本質的にイータアルミナではないガンマアルミナを含む触媒、及び異なる粒子空孔率の再水和結合性アルミナ粒子の混合物を結合させることを含む孔径分布を作製する方法も記載されている。
【0008】
J. Am. Ceram. Soc. 1998、 81 (6) 1411の“a−アルミナ及びa−ヘマタイトのシード添加による1,4−ブタンジオール溶液中で合成されたa−アルミナ粒子のサイズ調製”には、a−アルミナの合成中、アルミナ及び酸化鉄シードの使用を介した最終粒径及び形状の制御が記載されている。最終生成物は、無多孔であり、生産された材料の表面積には徴候がない。
Advanced Materials、1999、11−(5) 379の“連続して適切な孔径を示すメソポーラスアルミナの界面活性剤補助合成”には、メソポーラスアルミナの合成、及びその孔径の制御が報告されている。形態特性の報告は含まれていない。
【0009】
Chemical communications、1998、1185の“NoIo経路を介して集合させたメソポーラスアルミナモレキュラーシーブの希土類安定化”には、MSU−xメソポーラスアルミナ試料の製造及び、セリウム及びランタンイオンの添加で熱的安定であることが記載されている。それらが極めて高い表面積を示しているが、これらの試料で多孔性の制御がされず、かつ形態制御について記述がない。
【0010】
Microporous AND Mesoporous Materials 2000、35−36 597の“水性媒体中、制御されたメソポラシティ(mesoporosity)を備えた界面活性剤補助アルミナを導く合成戦略”には、無機の界面活性剤種の協力自己集合(cooperative self-assembly)に基づく、熱的に安定なメソポーラスアルミニウム酸化物相を導く種々の合成経路が報告されている。全てのメソ構造相が、水性媒体中、水和及び凝集により得られる。大部分のメソフェーズは熱安定性を示し、規則的な孔構造を示していた。合成及び焼成条件に強く依存して、平均孔直径が8及び60Åの間で変化し、比表面積が300及び820m2/gの間の範囲である。
【発明の概要】
【0011】
Nature、1998、396 (12) 152の“半結晶骨格を備えた大孔メソポーラス金属酸化物の一般的合成”には、熱安定性、規則配列、大孔(アルミナ中で140Åまで)のメソポーラス金属酸化物の合成手順が記載されている。合成は、非水ゾル−ゲルルートであり、孔形成剤が高分子界面活性剤である。しかし、粒子形状の大きさの制御は報告されていない。
無機ポーラス酸化物材料、特にナノポーラスアルミナを、得られた生成物の粒子径及び形状、ならびに孔径及び孔径分布を制御しうる方法により製造できることをここに見い出した。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
それゆえ、本発明は、より一般的な定義として、ドーパントを備えるか備えず、酸と非水の条件で非イオン性界面活性剤の使用に基づく急峻な孔径分布を有する無機ポーラス酸化材料、特に規則配列したメソポーラスアルミナを製造する方法に関する。この発明は、生産されるナノポーラス粒子の形状及びサイズ制御のための補助界面活性剤(co-surfactants)又は粒径制御剤(particle shape controllers)の添加を含む。ポーラス特性と形態学的形状の組み合わせが、この方法を使用して生産された材料にユニークさを与える。
【0014】
特に、第一の観点で、本発明は、
以下の工程:
a)非水溶媒と酸との混合物中にアルミナ前駆体を溶解する工程;
b)非水溶媒に気泡剤(pore agent)を溶解する工程;
c)工程a)及びb)で得られた溶液を一つに混合する工程;
d)工程c)の反応混合物に形態制御剤(morphology controller)を添加する工程;
e)工程d)の反応混合物を蒸発させる工程;及び
f)工程e)の生成物から形態制御剤及び気泡剤を除去する工程
を含むことを特徴とする無機多孔性酸化材料の製造方法に関する。
【0015】
本発明によるNPF−Al(ナノポーラスアルミナ)を形成するための製造ルートは、非水溶媒と水性酸溶液とを含む混合物中への適切なアルミナ源の溶解により得られた酸性アルミナゾルの形成を含む。反応のpHは、0.5及び2の間で、好ましくは0.8及び1.2の間で、典型的な値であるおよそ0.9で変化してもよい。いくつかのアルミナアルコキシドが試験され、初期結果、取り扱いの容易性及びコストに基づき、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドが、このプロジェクトの目的に最も適しているが、以下に記載する窒化アルミニウムと他のアルミナアルコキシド及びアルミナの塩も使用できる。最もよい結果は、酸としてHClを使用する場合に得られるが、使用される酸がHNO3であれば、構造制御も成される。
【0016】
次いで、透明なアルミナゾルを、1時間の期間、室温で、徐々に水和に付す。この期間は80時間に延長してもよい。
【0017】
続いて、エタノール−水溶液中(比10:1)の適切な界面活性剤テンプレートを、低温条件(20〜40℃)及び攪拌下で、アルミナゾルに添加する。界面活性剤溶液を、アルミナ溶液を添加する前に、生産される材料の最終孔径を調製するために有機膨潤剤と混合してもよい。適切な膨潤剤には、メシチレン及びデカンが含まれる。透明な溶液を、6〜80時間100℃で反応に付す。この工程は、オートクレーブ中で行ってもよく、還流凝縮器中で行ってもよい、この間、アルミナは、更に水和し、界面活性剤の頭部基(headgroup)の分子との相互作用が水素結合を介して生じる。適切な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤の使用を含むが、これら界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤又は規則配列したメソポーラス前駆体と置き換えてもよく、これらとの組み合わせを使用してもよい。また、前駆体は適切なオルガノシランにより囲まれた規則配列した自己集合界面活性剤構造で構成されている。
【0018】
次いで、ゾルは蒸発工程に供される。この工程での速度及び温度は、形成される固体の構造上の性質を制御するために使用でき、より速い蒸発速度はより小さく規定された形態を生じ、よりゆっくりした蒸発速度は、より大きく規定された孔構造と形態を生じる。窒素又はアルゴンの気流は、アルミナゾルから溶媒の蒸発速度を制御するために使用されてもよい。生じるアルミナ濃度のゆっくりした増加は、界面活性剤種の周りでアルミナ前駆体の沈殿と濃縮を生じさせる。更に蒸発と沈殿が生じるにつれて、押し出しやスプレードライ可能なゲル状材料を導く、粘度の増加が観察される。12〜240時間の間で変動させうる蒸発工程の温度に依存する期間の経過後、アルミナのアモルファスオキシ−ヒドロキシド種、自己集合界面活性剤、水、未蒸発の有機溶媒、及び補助界面活性剤を含む白色の一体構造(monolithic)材料が生じる。次いで、材料を、全ての有機材料を除去するために、チューブ状炉中、300℃と1200℃の間で、窒素及び酸素の気流下で焼成してもよい。焼成温度は、最終材料の構造特性を選択することを可能にする。即ち、500℃での焼成はアモルファスアルミナを生じ、600〜800℃の間での焼成はガンマ−アルミナ相を生じ、800〜1000℃の間での焼成はデルタ−アルミナ相を生じ、そして約1000℃での焼成はアルファ−アルミナ相を生じる。
【0019】
蒸発工程前に、“形態指向剤(directing agent)”を反応混合物に添加し、1時間〜5時間溶液を攪拌する。形態指向剤(director)は、多孔材料形成用に使用されるものと同じでない界面活性剤種を含んでいてもよい。代表的な指向剤は、アニオン性両親媒性界面活性剤のような界面活性剤の系統から選択でき、またラウリル酸、パルミチン酸又はN−ラウロイルリジンのようなアミノ酸誘導界面活性剤としての種を含んでいてもよい。形態指向剤は、蒸発するアルミナ−孔形成材の周りに液晶相を形成する。アルミナの濃度が増加するにつれて、形態指向剤は、成長する粒子にその液晶構造を付与し、アルミナや孔形成剤ではなく、形態指向剤に結晶学的同価(crystallographically)に関係したファセット(faceted)粒子を形成する。
【0020】
得られる相は、以下で例証されるように、規則配列したメソポーラス構造多孔率、制御されたファセット粒子形状とサイズを備えた高表面積のアモルファスアルミナモノリス(monolith)である。
【0021】
いくつかの温度で行われた一般的な合成手順の概略的な説明を図1に示す。全工程は、以下の個別の工程に細分化されていてもよい。
工程a)
アルミナ前駆体の製造は、非水溶媒と酸との適切な混合物中へ、アルミナ源の溶解を含む。適切なアルミナ前駆体は、窒化アルミニウム、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、及びアルミニウムsec−ブトキシドが例示されるアルミニウムアルコキシドの系統を含む。適切な溶媒は、低沸点を有することが好ましい。エタノールはそのような溶媒であるが、アセトン、プロパノール、ブタノール等のような他の溶媒を使用してもよい。塩酸、リン酸、硫酸及び硝酸のようないくつかの酸が使用できる。最終溶液は、1にできるだけ近いpHを有していてもよく、それゆえ酸の量を調整してもよい。[H2O]:[Al3+]は、ゆっくりな水和及びアルミナ水和物の濃縮をなすために、6にできるだけ近くなるように維持してもよく、ここでの、酸の濃縮も適している。この段階の間に製造された溶液は、均一にするために、室温で激しく攪拌される。
【0022】
工程b)
多孔剤、代表的にはジ及びトリ−ブロックコポリマーが一般的に使用される非イオン性高分子界面活性剤、の製造は、適切な非水溶媒中、室温で界面活性剤を溶解することにより行われる。この溶液に、製造されるナノポーラス固形物の最終孔径を大きくするために、膨潤剤を添加してもよい。この段階で、ドーパントプレカーサーを金属石鹸の形態で添加してもよく、製造のより後段で添加してもよい。この発明で使用される金属酸化物ドーパントは、以下に例示される金属石鹸として知られている液晶の系統を含む:
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸マグネシウム
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸カルシウム
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸クロム
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸マンガン
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸鉄
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸コバルト
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸ニッケル
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸モリブデン
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸亜鉛
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸ルテニウム
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸ロジウム
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸銀
ミリスチン酸/ラウリル酸/ステアリン酸/パルミチン酸/カプリル酸シリコン
この種のドーパントの添加は、最終生成物のアルミナ壁内にミクロポロシティーの形成を介して、生成物の最終孔径を大きくすると共に、表面積を大きくする。同様に、金属酸化物ドーパントの存在又は非存在は、転移アルミナの相変位の安定性及び開始にも影響し、そのためアモルファスとガンマ−アルミナ間の転移の開始温度をより高くすることで、この発明に記載された方法を介して生成される酸化ニッケル−アルミナポーラス材料が観測される。
【0023】
工程c)
工程a)及びb)で形成された溶液を、適切な容器で混合し、次いで、室温で、激しく攪拌する。
工程d)
工程c)の間、アニオン性界面活性剤の形態で、形態指向剤を添加できる。この目的で使用されるいくつかの代表的な形態指向剤は、アニオン性界面活性剤であり、より詳しくは、N−ラウリロイル−アミノ酸誘導界面活性剤の添加が、この発明において利用される。
【0024】
更に、混合物は、反応混合物を均一にし、次の段階で蒸発させる混合物を製造するために、80〜150℃の間の温度で、10〜36時間の期間攪拌される。時間及び温度の程度は、製造される粒子の形状及びサイズに直接影響すると共に、形態指向剤として使用されるアニオン性形態指向剤の種類に直接影響する。これは、結果として、アルミナ粒子をより後段で生じさせるであろう範囲内で補助界面活性剤を形成させ、同時に、より高温で小さなアルミナオキシヒドロキシド種の形成により液晶相を生じる。
【0025】
工程e)
工程d)が完了した後、反応混合物は、溶媒を蒸発させるために、大きな平面を有する容器に注がれる前に、冷却に付される。蒸発速度は、30〜70℃で加熱すること及び/又は空気、又は空気−窒素の混合物、又はアルゴン−窒素混合物の気流を通過させることを含む異なる方法で制御できる。蒸発の最終段階で、蒸発速度を速めかつ溶媒をより多く除去するために、マイクロ波乾燥を真空蒸発と共に利用してもよい。全蒸発は、室温で、何らかのガスの補助無しで行ってもよい。
【0026】
蒸発工程は、良好に規則配列された孔の形成と規定された粒子径状の形成のために特に重要である。使用された溶媒の沸点上又はその周辺の温度での非常に速い蒸発速度では、回転楕円体粒子の形成が観測される。
また、生じた物質は、使用された蒸発温度に依存する30〜100Å間の孔径を有し、ほぼ200m2/gの表面積を有する。孔径を大きくするために、例えばミリスチンのような有機溶媒の形態で、300Åと大きな孔径で孔配置を与えうる膨潤剤を使用してもよい。膨潤剤は例えば工程a)で添加してもよい。
【0027】
工程f)
形態制御剤及び孔形成剤ならびに、無機酸化物固体支持体を活性化し又はドーパント酸化物を形成するために添加される補助界面活性剤の除去は、例えば、適切なガス混合物(好適なガスは、代表的には、異なる比率の窒素と酸素を含む)の存在中、300〜1200℃間の温度で、焼成することで行うことができる。焼成の加熱速度及び温度は、生産されるナノポーラス材料の構造上の性質に直接影響し、100〜500m2/g間の範囲の表面積、0.30〜0.98(及び以上)cm3/gの範囲の孔体積、と同時に孔径及び孔径分布を制御することができる。よって、工程f)を介した有機物の除去は、この方法で重要な工程であるが、溶媒抽出及びUV照射のような他の方法を施し、類似の性質の孔材料に導いてもよい。
【0028】
更に重要なこととして、形態性質の制御は、ここに記載するボトムダウンアプローチを通して、種々のアスペクト比、サイズ及び形状を備えたポーラス材料を導くようになしうる。0.5と1.0μmの間の範囲のサイズの球状粒子が製造される。得られた材料の孔径は、膨潤剤の添加により、4〜30nmに制御しうる。
【実施例】
【0029】
実施例1
立方体形態を備えたナノポーラスアルミナの製造
代表的な製法において、トリブロックコポリマーP123(EO20PO70EO20、MW=5800)20.0グラムを、ポリプロピレンボトル中で、エタノール150.0mlに溶解した。更に、この溶液に、メシチレン(トリメチルベンゼン、TMB)23.0mlを添加し、均一な界面活性剤溶液を確保するために、残った界面活性剤溶液を、40℃で24時間、攪拌下で加熱した。分離ポリプロピレンボトル中に、HCl(37%)30.0mlをエタノール92.0mlに混合し、アルミニウム−sec−ブトキシド51.0mlを、早い攪拌下で、ゆっくり添加し、アルミナ源の完全な溶解を確保するために、40℃で24時間、維持した。次に、残った透明溶液を、攪拌下、40℃で、界面活性剤溶液を徐々に添加し、約2時間後、所望の量のN−ラウロイル−リジン(C12リジン)を添加した。更に、補助界面活性剤を完全に溶解させた後、最終的に合成されたゲルを、ステンレススチールのテフロン(登録商標)内張りオートクレーブへゲルを移す前に、攪拌下、24時間40℃で維持し、ゲルを100℃で48時間処理した。ゲルの最終モル比は、P123:EtOH:TMB:HCl:H2O:C12273Al:C12リジン;0.017:22.73:0.82:1.79:6:1:x(xは0.5〜1.5の間で変化する)であった。100℃での熱処理前に測定されたpHは0.8であり、補助界面活性剤の添加により上がることはなかった。
【0030】
反応を終わらせた後、オートクレーブを開け、試料を20℃でゆっくりした蒸発に付した。最後に、残存するメソ構造固形物を、窒素気流下で6時間、続く酸素気流下で更に6時間、550℃で焼成した。試料はNPF−Al(x)と示される(xは合成ゲルに添加されたC12リジンのモル比を示す)。焼成されたNPF−Al(0.5)及びNPF−Al(0.8)の代表的なSEM像を図2及び3にそれぞれ示し、アモルファス形態の形成が、形態指向剤を少量含む試料中に観察され、明確な粒子の形成がNPF−Al(0.8)で現れ始めている。
【0031】
NPF−Al(1)の代表的なSEM像とTEM像をそれぞれ図4及び5に示し、それらは1〜5μmの間の平均粒子径の立方体形態を明確に示している。NPF−Al(x)の孔径分布(BJH)及び窒素吸収等温プロットをそれぞれ図6及び7に示し、それらは形態指向剤の量を0.6〜1.8に変化させている。メソポーラス材料の典型的なタイプIV吸収曲線は、脱離分岐上に例示されたヒステリシスループにより観察される。
【0032】
実施例2
変化した孔径を備えたナノポーラスアルミナの製造
代表的な製法において、トリブロックコポリマーP123(EO20PO70EO20、MW=5800)20.0グラムを、ポリプロピレンボトル中で、エタノール150.0mlに溶解した。更に、この溶液に、メシチレン(トリメチルベンゼン、TMB)を添加し、均一な界面活性剤溶液を確保するために、残った界面活性剤溶液を、40℃で24時間、攪拌下で加熱した。分離ポリプロピレンボトル中で、HCl(37%)30.0mlをエタノール92.0mlに混合し、アルミニウム−sec−ブトキシド51.0mlを、早い攪拌下で、ゆっくり添加し、アルミナ源の完全な溶解を確保するために、40℃で24時間、維持に付した。次に、残った透明溶液に、攪拌下、40℃で、界面活性剤溶液を徐々に添加し、約2時間後、所望の量のN−ラウロイル−リジン(C12リジン)を添加した。更に、補助界面活性剤を完全に溶解させた後、最終で合成されたゲルを、還流濃縮器へゲルを移す前に、ゆっくりした攪拌下、24時間40℃での維持に付し、ゲルを100℃で48時間処理した。ゲルの最終モル比は、P123:EtOH:TMB:HCl:H2O:C12273Al:C12リジン;0.017:22.73:x:1.79:6:1:1(xは0.2〜2の間で変化する)であった。100℃での熱処理前に測定されたpHは0.3であり、補助界面活性剤の添加により上がることはなかった。最後に、残存するメソ構造固形物を、窒素気流下で6時間、続く酸素気流下で更に6時間、550℃で焼成した。NPF−Alの代表的な孔径分布(PSD)を図8に示し、それは膨潤剤の量を増やすことで孔径がより大きくなることを示す。62ÅにPSD中心を有するNPF−Al試料の代表的なTEM像は、図9に示されており、円筒状孔を明確に見分けることができる。
【0033】
実施例3
金属石鹸補助界面活性剤でのナノポーラスアルミナの製造
代表的な製法において、トリブロックコポリマーP123(EO20PO70EO20、MW=5800)20.0グラムを、ポリプロピレンボトル中で、エタノール150.0mlに溶解した。更に、この溶液に、メシチレン(トリメチルベンゼン、TMB)23.0mlを、ニッケル石鹸(ラウリル酸ニッケル)を所望量添加し、均一な界面活性剤溶液を確保するために、残った溶液を、40℃で24時間、攪拌下で加熱した。分離ポリプロピレンボトル中に、HCl(37%)30.0mlをエタノール92.0mlに混合し、アルミニウム−sec−ブトキシド51.0mlを、早い攪拌下で、ゆっくり添加し、アルミナ源の完全な溶解を確保するために、40℃で24時間、維持に付した。次に、残った透明溶液を、攪拌下、40℃で、界面活性剤溶液を徐々に添加し、約2時間後、所望の量のN−ラウロイル−リジン(C12リジン)を添加した。更に、補助界面活性剤を完全に溶解させた後、最終で合成されたゲルを、還流濃縮器へゲルを移す前に、ゆっくりした攪拌下、24時間40℃での維持に付し、ゲルを100℃で48時間処理した。残存するゲルを、上記実施例のように焼成する前に、完全に蒸発に付した。
【0034】
ナノポーラスアルミナ−酸化ニッケル粒子の化学分析を示す代表的なEDAXスペクトルを図10に示す。図11で報告されている暗視野像は、アルミナ支持体の孔の内側への酸化ニッケル粒子の均一な含有を示している。
窒素吸着−脱離等温図から導かれ、Al/Ni比26を有するこの試料の孔径分布は、図12で報告されており、自己集合金属石鹸補助界面活性剤と関連する(associate)外部孔の形成を示している。
【0035】
実施例4
混合金属石鹸補助界面活性剤でのナノポーラスアルミナの製造
代表的な製法において、トリブロックコポリマーP123(EO20PO70EO20、MW=5800)20.0グラムを、ポリプロピレンボトル中で、エタノール150.0mlに溶解した。更に、この溶液に、メシチレン(トリメチルベンゼン、TMB)23.0mlを、ニッケル石鹸(ラウリル酸ニッケル)を所望量添加し、残った溶液を、40℃で24時間、攪拌下で加熱した。アルミナ前駆体を添加し、次いで、残った透明溶液を、攪拌下、40℃で、界面活性剤を徐々に添加し、約2時間後、所望の量のN−ラウロイル−リジン(C12リジン)を添加した。更に、補助界面活性剤を完全に溶解させた後、最終で合成されたゲルを、還流濃縮器へゲルを移す前に、ゆっくりした攪拌下、24時間40℃での維持に付し、ゲルを100℃で48時間処理した。残存するゲルを、上記実施例のように焼成する前に、完全に蒸発に付した。
【0036】
ナノポーラスアルミナ−ニッケル酸化物−モリブデン酸化物粒子の化学分析を示す代表的なEDAXスペクトルを図13に示す。この特別な試料のEDAX分析により規定される原子比は、1Ni:3Mo:29.6Alであった。
図14で報告されている暗視野像は、アルミナ支持体の孔の内側へのニッケルとモリブデンの酸化物ナノ粒子の均一な含有を示している。
【0037】
孔径分布曲線をタイプIV等温図の脱離分岐へのBJH法を使用し、107Åを中心としたBroekhoff−De Boer補正を適用することにより算出した。表面積(SBET=160.4m2/g)は、BET法を使用して計算され、全孔体積(Tvol)はp/po=0.98の相対圧力で測定され、0.45cm3/gの値を有していた。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)非水溶媒と酸との混合物中にアルミナ前駆体を溶解する工程;
b)非水溶媒に気泡剤を溶解する工程;
c)工程a)及びb)で得られた溶液を一つに混合する工程;
d)工程c)の反応混合物に形態制御剤を添加する工程;
e)工程d)の反応混合物を蒸発させる工程;及び
f)工程e)の生成物から形態制御剤及び気泡剤を除去する工程
を含むことを特徴とする無機ポーラス酸化材料の製造方法。
【請求項2】
前記工程a)のpHが、0.5と2.0の間であり、好ましくは0.8と1.2の間であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記アルミナ前駆体が、窒化アルミニウム、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、及びアルミニウムアルコキシド又はそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記アルミナ前駆体が、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドであることを特徴とする請求項3の方法。
【請求項5】
前記気泡剤が、非イオン性高分子界面活性剤であることを特徴とする先の請求項の1つ以上による方法。
【請求項6】
前記非イオン性高分子界面活性剤が、ジ及びトリ−ブロックコポリマーであることを特徴とする請求項5の方法。
【請求項7】
金属酸化物ドーパント前駆体が、前記工程a)〜d)のいずれかの間に金属石鹸の形態で添加されることを特徴とする先の請求項の1つ以上による方法。
【請求項8】
前記金属が、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、銀、シリコン又はそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
前記形態制御剤が、アニオン性界面活性剤であることを特徴とする先の請求項の1つ以上による方法。
【請求項10】
前記アニオン性界面活性剤が、N−ラウロイル−アミノ酸由来界面活性剤であることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項11】
混合工程c)の前に、混合工程b)で得られた溶液が、有機膨潤剤と混合されることを特徴とする先の請求項の1つ以上による方法。
【請求項12】
前記有機膨潤剤が、メシチレン及びデカンから選択されることを特徴とする請求項7の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかによる方法から得られる無機ポーラス酸化材料。
【請求項14】
無機ポーラス酸化材料が、1〜30nmの範囲の急峻な気泡径の中気泡を有することを特徴とする請求項13の無機ポーラス酸化材料。
【請求項15】
無機ポーラス酸化材料が、100nm〜200μmの範囲の粒子径を有することを特徴とする請求項13又は14の無機ポーラス酸化材料。
【請求項16】
無機ポーラス酸化材料が、球形、平坦粒子、又は刻み粒子の形態を有することを特徴とする請求項13〜15の1つ以上による無機ポーラス酸化材料。
【請求項17】
無機ポーラス酸化材料が、1μm以上の厚さを有する平坦外形粒子形態を有することを特徴とする請求項13〜15の1つ以上による無機ポーラス酸化材料。
【請求項18】
無機ポーラス酸化材料が、400m2/gより大きな表面積を有することを特徴とする請求項13〜17の1つ以上による無機ポーラス酸化材料。

【公表番号】特表2011−504867(P2011−504867A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535249(P2010−535249)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063107
【国際公開番号】WO2009/068117
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510148164)ナノロジカ エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】NANOLOGICA AB
【住所又は居所原語表記】Uppsala Innovation Centre, Dag Hammarskjolds vag 60, S−751 83 Uppsala, SWEDEN
【Fターム(参考)】