説明

制御された特性を有する金属酸化物ナノ粒子の製造方法および該製造方法により製造されるナノ粒子および調製物

本発明は、小さなサイズの金属酸化物粒子の形成方法を提供し、当該方法は、a)金属イオンおよびそれらの複合体の少なくとも1つを、該金属成分の濃度が少なくとも0.1%w/wで含有する開始水溶液を調製する工程を含み、b)該溶液を、加水分解が起こる保持時間の間、50℃より低い温度にて維持し、保持溶液を含む系を形成する工程を含み、該加水分解の程度は、溶液中に存在する金属のmmolあたり0.1mmolのプロトンを生成するのに十分であり、ここで該時間は14日を超えず、c)i)該保持溶液を加熱してその温度を少なくとも1℃上げる工程;ii)該保持溶液のpHを少なくとも0.1単位変化させる工程;および、iii)該保持溶液を少なくとも20%希釈する工程、の少なくとも1つによって該系の状態を調整する工程を含み、それによって粒子が形成され、該形成された粒子の大多数が約2nm〜約500nmの間のサイズである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物ナノ粒子の製造方法に関し、より詳細には、産業的および経済的に有用な様式での、所望の粒子サイズ、粒子サイズ分布および癖の金属酸化物粒子の製造方法に関する。本発明において、用語金属酸化物は、式 Metal(例、Al、ZrO、ZnO、SnO、SnO、MnO、MnO、CuO、CuO)の金属酸化物、式 Metal(OH)(例、Sn(OH)、Sn(OH)、Al(OH)、Si(OH)、Zn(OH)、CuOH、Cu(OH)、Mn(OH)、Mn(OH)、Zr(OH))の金属ヒドロキシ酸化物、金属酸、これらの種々の水和形態およびこれらが主成分である組成物を意味し、包含し、ここでx、y、p、q、rはそれぞれ整数である。金属酸化物は、研磨剤、触媒、化粧品、電子装置、磁気、顔料および被覆剤、および構造用セラミックなどのような幅広い用途で使用されている。
【0002】
研磨剤
ナノ粒子は、適度に分散された場合、重要な研磨用途において優れた有効性を示す。適度に分散された製品の超微粒子サイズおよび分布は、実際、いかなる他の市販の研磨剤にも例をみない。結果は、表面欠陥のサイズが、従来の研磨材料と比較して、著しく減少することである。金属酸化物ナノ粒子は、主に一般的な研磨剤、リジッドメモリーディスクの研磨、半導体の化学機械平坦化(CMP)、シリコンウエハーの研磨、光学研磨、光ファイバーの研磨および宝石の研磨に用いられる。主に使用される製品は、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化スズおよび酸化クロムである。
【0003】
触媒
金属酸化物ナノ粒子は、非常に反応性のある高度に応力を受けた表面原子に起因して、増強された触媒能力を有する。従って、それらは、一般的な触媒(例、二酸化チタン、酸化亜鉛およびパラジウム)、酸化還元触媒(例、酸化鉄)、水素合成触媒(例、酸化鉄、二酸化チタン)、有価金属用の基材などの触媒担体(例、酸化アルミニウムおよび二酸化チタン)、排ガス規制用触媒、石油精製用触媒および廃棄物管理触媒として主に使用される。
【0004】
化粧品
金属酸化物ナノ粒子は、優れた化粧品製品の創作を容易にする。それらは、化学薬品を使用せずに高いUV減衰を提供し、必要であれば可視光に対する透明性を提供し、広範囲の化粧品基剤に均一に分散されて非固形化の化粧品製品を提供し得る。金属酸化物ナノ粒子は、日焼け止め、SPF(日焼け防止ファンデーション)を備えた保湿剤、SPFを備えたカラーファンデーション、SPFを備えた口紅、SPFを備えたリップバーム、フットケア製品および軟膏として主に使用される。化粧品用途のための主な製品は、酸化亜鉛粉末、ZnO分散物、FE45B(茶色の酸化鉄)、TiO分散物、黒色の金属酸化物顔料、赤色の金属酸化物顔料、黄色の金属酸化物顔料および青色の金属酸化物顔料である。
【0005】
電子装置
金属酸化物ナノ粒子は、既存の技術および将来の技術で使用するための新規でユニークな電気伝導性を提供することができる。金属酸化物ナノ粒子は、バリスタ(例、酸化亜鉛)、透明な導体(酸化インジウムスズ)、高誘電性セラミックス、導体ペースト、コンデンサ(二酸化チタン)、CRTディスプレイ用の蛍光体(例、酸化亜鉛)、エレクトロルミネセントパネルディスプレイ(例、酸化亜鉛)、電子回路用のセラミック基材(例、酸化アルミニウム)、自動車エアバッグ推進薬(例、酸化鉄)、蛍光灯の内部の蛍光体(例、酸化亜鉛)および白熱灯用の反射物(例、二酸化チタン)として主に使用される。
【0006】
磁気
金属酸化物ナノ粒子は、既存の技術および将来の技術で使用するための新規でユニークな磁気特性を提供することができる。金属酸化物ナノ粒子は、磁性流体および磁気粘性(MR)流体として主に使用される。
【0007】
顔料および被覆剤
金属酸化物ナノ粒子は、優れた顔料および被覆剤の創作を容易にする。それらは、高いUV減衰を提供し、必要であれば可視光に対して透明性を提供し、広範囲の材料に均一に分散され得る。ナノ粒子はまた、時間の経過による劣化や退色に抵抗する、より鮮明な色を提供することができる。金属酸化物ナノ粒子は、一般的な顔料および被覆剤、マイクロ波を吸収する被覆剤、電波を吸収する被覆剤、UV保護透明被覆剤、塗料用の殺菌剤、粉末被覆剤および自動車の顔料(金属外観のためにマイカにデミスト(demisted on)される)として主に使用される。
【0008】
構造用セラミック
金属酸化物ナノ粒子は、セラミック部品の製造に使用され得る。超微細サイズの粒子は、超塑性変形を通してセラミック部品のニアネットシェイプを可能にし、高価な成形後の機械加工の必要性を減らすことにより製造コストを低減することができる。金属酸化物は、発光管エンベロープ用の透光性セラミックス、金属マトリクス複合材料用の補強剤、ガス濾過用の多孔性膜およびネットシェイプの耐磨耗性部品として主に使用される。
【0009】
多くの重要なナノ金属酸化物粉末はいまだ商品化されていない。ナノ金属酸化物を得るために使用される報告されたプロセスは、非常に費用がかかり、歩留まりが低く、最も重要なことは製造のスケールアップが困難であり得ることである。
【0010】
下記は、金属酸化物ナノ粒子を合成するための、先行技術に記載されたいくつかの方法である。
【0011】
気相合成
気相におけるナノ粒子の合成のための、多くの方法が存在する。これらは、気体凝縮処理、化学気相凝縮、マイクロ波プラズマ処理および燃焼炎合成を含んでいる。これらの方法では、原料を、ジュール加熱した耐熱性るつぼ、電子線蒸着装置、スパッタリング源、高温壁リアクターなどのようなエネルギー源を使用して気化させる。次いでナノサイズの塊を、均一な核形成により、源の近傍の気相から凝縮させる。続いて塊をメカニカルフィルターまたはコールドフィンガーを使用して集める。これらの方法は少量の非凝集材料を製造し、数十グラム/時間が製造率の有意な達成であると引用された。
【0012】
機械的磨耗またはボールミル粉砕
この方法は、激しい塑性変形の結果として粗い粒状の材料の構造的な分解によりナノ結晶性材料を製造するために使用され得る方法である。最終製品の品質は、ミル粉砕のエネルギー、時間および温度の関数である。直径数ナノメーターの粒径を達成するために、比較的長い処理時間または小量について数時間を必要とする。この方法の他の主な欠点は、粉砕された材料が粉砕媒体から深刻な汚染を被る傾向にあることである。
【0013】
ゾル−ゲル沈殿に基づく合成
粒子またはゲルは、加水分解−縮合反応により形成され、これは、前駆体の最初の加水分解、続いてこれらの加水分解された前駆体の粒子への重合を含む。加水分解−縮合反応を制御することにより、非常に均一なサイズ分布の粒子が沈殿し得る。ゾル−ゲル法の欠点は、前駆体が高価であり得、加水分解−縮合反応の慎重な制御を必要とし、反応が遅いことである。
【0014】
マイクロエマルジョンに基づく方法
マイクロエマルジョン法は、無機反応を、油内に存在するナノメーターサイズの水性ドメインに制限することにより、ナノメーターサイズの粒子を作製する。これらのドメインは、油中水または逆マイクロエマルジョンと呼ばれ、特定の界面活性剤/水/油の組み合わせを使用して作製され得る。ナノメーターサイズの粒子は、2つの異なる逆マイクロエマルジョン(これらは一緒に混合される)を調製し、それらを互いに反応させ、それによって粒子を形成させることにより、作製され得る。この方法の欠点は、少ない反応量を生じ、それにより低い製造量、低い収率および高価なプロセスとなることである。
【0015】
界面活性剤/発泡体骨格
このプロセス(米国特許第5,338,834号および米国特許第5,093,289号に示される)において、界面活性剤分子の決められた配列は、無機材料の形成のための「鋳型」を提供するために使用される。界面活性剤分子は、骨格を形成し、無機材料を、界面活性剤構造上に、またはそのまわりに堆積させる。次いで、界面活性剤は(通常、使い果たされるか、または溶解により)除去され、オリジナルの界面活性剤構造を模倣する多孔性の網目を残す。界面活性剤ミセルの直径が極めて小さくあり得るので、この方法を使用して作り出すことができる孔サイズもまた極めて小さく、このことは最終製品の非常に大きな表面積につながることとなる。
【0016】
沈殿
いくつかの特別な場合に、反応条件および処理後条件を慎重に制御すれば、沈殿または共沈殿によってナノ結晶性材料を製造することが可能である。沈殿反応は、無機材料を工業スケールで製造するために使用される最も一般的で効率的なタイプの化学反応の1つである。沈殿反応では、典型的に、2つの均質な溶液が混合され、そして続いて不溶の物質(固体)が形成される。通常、1つの溶液は、沈殿を引き起こすために改質溶液のタンクに注入される。しかしながら、この方法の制御は複雑であり、それゆえ、粒子サイズの均一分布およびナノスケールの特定の粒子サイズのような特性は、達成するのが難しい。
【0017】
本発明の主目的は、所望の特性(例えば、粒子サイズの均一分布、顧客の要求によって変化し得る特定の粒子サイズ)のナノスケールの金属酸化物粒子、および必要とされる晶癖および構造のナノ粒子を製造するための工業的および経済的プロセスを提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、ナノスケールの金属酸化物粒子の製造のために沈殿を使用することであり、なぜなら、この方法は、工業的な観点から、シンプルで安価なプロセスであるという最も望ましい特性によって特徴づけられるからである。しかしながら、本発明のさらなる目的は、ナノスケールの金属酸化物粒子を製造する従来のプロセスに変更を加えることであり、これは、系の制御を可能とし、それによって、市場の厳格な要求を達成する。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、低い水和レベルによって特徴づけられるナノスケール金属酸化物粒子の製造のための工業的および経済的プロセスを提供することである。
【0020】
この技術状況を考慮して、本発明によれば、ここで、水溶液中で金属酸化物粒子を製造する方法が提供され、当該方法は、開始水溶液と定義される水性金属塩溶液を、加水分解により溶液の酸性度を減少させるのに十分な時間、70℃より低い温度にて維持することを含む。結果として生じる溶液は、保持溶液と定義され、次いで温度および/または希釈および/または試薬の添加の変更に供され、このようにして溶液のpHを変更して、変更された系を形成する。前記パラメーターの好ましい変更モードは、高率である。
【0021】
本発明の第2の局面において、従来の方法(例えば、得られた粒子の熱変換、焼成または熟成)により他の金属酸化物粒子を製造するための原料を提供することである。
【0022】
より具体的には、本発明によると、ここで、小さなサイズの金属酸化物粒子の形成方法が提供され、当該方法は、
a)金属イオンおよびそれらの複合体の少なくとも1つを、該金属成分の濃度が少なくとも0.1%w/wで含有する開始水溶液を調製する工程を含み、
b)該溶液を、加水分解が起こる保持時間の間、70℃より低い温度にて維持し、保持溶液を含む系を形成する工程を含み、該加水分解の程度は、溶液中に存在する金属のmmolあたり0.1mmolのプロトンを生成するのに十分であり、ここで該時間は14日を超えず、
c)i)該保持溶液を加熱してその温度を少なくとも1℃上げる工程;
ii)該保持溶液のpHを少なくとも0.1単位変化させる工程;および、
iii)該保持溶液を少なくとも20%希釈する工程、
の少なくとも1つによって該系の状態を調整する工程を含み、
それによって粒子が形成され、該形成された粒子の大多数が約2nm〜約500nmの間のサイズである。
【0023】
本明細書中で使用される用語金属は、スズ、アルミニウム、亜鉛、銅、マンガン、ジルコニウムおよびそれの組み合わせからなる群から選ばれる金属をいう。
【0024】
本明細書中で使用される用語金属酸化物は、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物、金属酸、およびこれらの組み合わせをいう。本発明の好ましい実施態様において、本明細書中で使用される該金属酸化物は、式 Metal(例、Al、ZrO、ZnO、SnO、SnO、MnO、MnO、CuO、CuO)の金属酸化物、式 Metal(OH)(例、Sn(OH)、Sn(OH)、Al(OH)、Si(OH)、Zn(OH)、CuOH、Cu(OH)、Mn(OH)、Mn(OH)、Zr(OH))の金属ヒドロキシ酸化物、金属酸、これらの種々の水和形態およびこれらが主成分である組成物(ここで、x、y、p、q、rはそれぞれ整数である)からなる群から選ばれる物質をいう。
【0025】
本発明の好ましい実施態様において、前記溶液は、前記変更状態にて少なくとも0.5分間保持される。
【0026】
好ましくは、前記状態の変更は、2時間までの期間にわたって実施される。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、前記プロセスは、時間あたり少なくとも50キログラムの粒子を製造する。
【0028】
好ましくは、前記状態の変更は、100気圧までの圧力で実施される。
【0029】
本発明の好ましい実施態様において、当該方法は、形成された粒子の大多数が50%よりも大きい結晶化度を有することをさらに特徴とする。
【0030】
好ましくは、当該方法は、形成された粒子の平均50(重量)%の最小粒子と最大粒子との間のサイズ比が、約10未満であり、特に好ましい実施態様では約5未満であることをさらに特徴とする。
【0031】
本明細書中で使用される用語平均50(重量)%は、粒子の平均サイズより大きいサイズを有する粒子の25(重量)%、および粒子の平均サイズより小さいサイズを有する粒子の25%を含む、粒子の50(重量)%をいい、一方、粒子の大きい25%と小さい25%は、それらのサイズが、形成された粒子のサイズ分布を示す標準計算図表における平均サイズに最も近い。
【0032】
好ましくは、当該方法は、形成された粒子の大多数が細長い以外の形状であることをさらに特徴とする。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、当該方法は、形成された粒子の大多数が、1つの寸法と任意の他の寸法との間の比が約3未満である形状を有することをさらに特徴とする。
【0034】
本発明の他の好ましい実施態様において、形成された粒子の大多数は細長い形状である。
【0035】
好ましくは、形成された粒子の大多数は少なくとも30m/grの表面積を有する。
【0036】
好ましくは、形成された粒子の大多数は少なくとも100m/grの表面積を有する。
【0037】
本発明の特に好ましい実施態様において、当該方法は、焼成工程、すなわち、前記形成された粒子を約90℃〜約900℃の間の範囲の温度に加熱し、脱水された粒子を形成する工程をさらに含む。
【0038】
他の好ましい実施態様において、焼成工程は製造した粒子の脱水を含む。
【0039】
前記好ましい実施態様において、当該方法は、好ましくは、前記状態の変更工程後でかつ前記脱水前、前記脱水と同時または前記脱水後に、前記粒子懸濁液中の水分の一部を除去する工程をさらに含む。
【0040】
前記好ましい実施態様において、前記脱水は好ましくは大気圧を超える圧力下で行われる。
【0041】
前記好ましい実施態様において、前記粒子懸濁液の温度は、好ましくは、4時間までの期間にわたって前記脱水温度に上げられる。
【0042】
前記特に好ましい実施態様において、脱水された粒子の大多数は、好ましくは細長い以外の形状である。
【0043】
前記特に好ましい実施態様において、脱水された粒子の大多数は、好ましくは少なくとも30m/grの表面積を有する。
【0044】
本発明の好ましい実施態様において、前記開始水溶液の調製は、金属化合物の溶解、金属塩溶液への塩基の添加および金属塩溶液の酸性化を含む。
【0045】
本発明の好ましい実施態様において、前記水溶液の調製は、金属化合物の溶解、塩基の添加および金属塩溶液の酸性化を含む。
【0046】
前記好ましい実施態様において、前記金属化合物は、好ましくは、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、金属鉱物およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。本発明において、用語金属複合体は、金属塩、金属複合体および金属水酸化物を含む。
【0047】
好ましくは、前記金属化合物は、金属酸化物、金属水酸化物、これらを含む鉱物およびそれらの混合物からなる群から選ばれ、かつ前記化合物は、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、これらの酸性塩およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる酸を含有する酸性溶液に溶解される。
【0048】
本発明の好ましい実施態様において、前記調製された水溶液は、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、有機酸およびこれらの混合物からなる群から選ばれる陰イオンを含有する。
【0049】
本発明の好ましい実施態様において、前記変更は少なくとも2つの加熱工程を含む。
【0050】
前記好ましい変更工程において、少なくとも1つの加熱工程は、好ましくは、熱水溶液、熱気体および蒸気からなる群から選ばれる暖かいストリーム(流れ)と接触させることによって実施される。
【0051】
好ましい実施態様において、当該方法は、好ましくは形成された粒子を研磨することをさらに含む。
【0052】
好ましい実施態様において、当該方法は、好ましくは形成された粒子を選別することをさらに含む。
【0053】
本発明はまた、上記で定義した方法によって形成される金属酸化物粒子およびそれらの変換の生成物に関する。
【0054】
本発明はさらに、前記粒子を含有する調製物に関する。
【0055】
前記調製物の好ましい実施態様において、前記粒子は、好ましくは、液体中に分散しているか、固体化合物上に担持されているか、またはより大きい粒子へと凝集している。
【0056】
本発明の他の局面において、上記で定義した調製物の製造のためのプロセスが提供され、当該プロセスは、前記粒子を分散させること、担体の添加、熱処理、混合、水分の蒸発、噴霧乾燥、溶射およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる工程を含む。
【0057】
本発明の特に好ましい実施態様において、前記粒子および調製物は、塗料の製造において使用される。
【0058】
本発明の他の好ましい実施態様において、前記粒子および調製物は、触媒の製造において使用される。
【0059】
本発明の他の好ましい実施態様において、
前記調整段階は、
a)保持溶液を、混合室中、連続モードで変更溶液と接触させ、変更された系を形成する工程;
b)該変更された系を、プラグフローモードで該混合室から除去する工程
を含む。
【0060】
本発明の特に好ましい実施態様において、変更された系は、混合室中に5秒未満滞留し、より好ましい実施態様では、変更された系は、混合室中に0.5秒未満滞留する。
【0061】
本発明の好ましい実施態様において、混合室中での混合は、機械的な混合モードまたは他の混合モードを使用することにより、進入する溶液の流量を使用して実施される。
【0062】
本発明の好ましい実施態様において、変更された系は、プラグフローモードで混合室を出て行く。より好ましい実施態様では、プラグフローは0.1秒より長く続き、最も好ましい実施態様では、プラグフローは5秒より長く続く。
【0063】
本発明の好ましい実施態様において、プラグフローを出る溶液は容器の中へ入る。本発明のより好ましい実施態様では、容器中の溶液は混合される。
【発明の詳細な説明】
【0064】
本発明の詳細を以下に記載する。
【0065】
本発明で用いる開始水性金属塩溶液は、好ましくは、金属イオンまたはそれらの複合体を、少なくとも0.1%w/w金属の濃度で含有する水性金属塩溶液である。
【0066】
好ましい実施態様によると、開始溶液中の金属w/w濃度は、少なくとも1%であって、より好ましくは少なくとも5%であって、最も好ましくは少なくとも10%である。開始溶液の濃度に上限はない。しかし、好ましい実施態様によると、濃度は飽和水準未満である。他の好ましい実施態様によると、高い粘度は望まれない。さらに他の好ましい実施態様によると、溶液中のOH/金属の比は2より小さい。好ましい実施態様によると、調製された開始溶液の温度は70℃未満である。
【0067】
金属を含有する鉱石、そのような鉱石の一部、それらの処理の生成物、金属塩類または金属含有溶液(例えば、金属を含有する鉱石から出る水溶液)を含め、あらゆる金属源が本発明の開始溶液を調製するのに適している。
【0068】
好ましい実施態様によると、所望の濃度およびpHの両方が達成された直後に、工程(b)が実施される。他の好ましい実施態様によると、工程(b)で用いる溶液は、短時間内で調製され、金属イオンまたはそれらの複合体を含まず、これらは、異なる時間で調製され、次いで一緒に混合された。同様の理由により、調製時間の延長は望ましくない。好ましい実施態様によると、調製時間は20時間より短く、好ましくは10時間より短く、最も好ましくは2時間より短い。より古い溶液が存在し(例えば、再利用された溶液)、新鮮な溶液と混合して開始溶液を形成すべきである場合は、以下に示すように、より古い溶液は最初に酸処理される。
【0069】
新たに調製された金属塩溶液は、塩化物、硫酸塩、硝酸塩リン酸塩、カルボン酸塩、有機酸陰イオンおよびこれらの種々の混合物を含む任意の陰イオンを含有し得る。好ましい実施態様によると、新たに調製された溶液は金属硫酸塩を含有する。他の好ましい実施態様によると、塩は有機酸の塩である。
【0070】
本発明のプロセスに使用するための新たに調製された塩溶液は、自然状態で製造された溶液(例えば、金属を含有する鉱石を有する鉱山から出る溶液)、または化学的もしくは生物学的な酸化を含む人工的な方法により調製された溶液であり得る。そのような溶液は、金属を含む塩の溶解、金属塩の溶解、複塩の溶解、金属酸化物含有鉱石の酸性溶液中への溶解、酸化溶液(例えば、金属塩の溶液、硝酸など)中へのスクラップ金属の溶解、および金属含有鉱物の浸出を含む、種々の方法またはこれらの組み合わせにより調製され得る。
【0071】
好ましい実施態様によれば、水溶液の調製は単一の工程で実施される。別の実施態様によると、調製は2またはそれ以上の工程を含む。他の実施態様によると、金属塩の濃縮溶液は、例えば、水中または水溶液中への塩の溶解によって調製される。瞬間的および/または局所的に、溶解の間に、開始溶液の必要なpHおよび濃度に達するが、少なくとも部分的な均一化の後に形成された濃縮溶液のpHは通常、開始溶液の所望のものより低い。好ましい実施態様によると、所望の状態のそのような瞬間的な到達は、開始溶液の調製とは見なされない。次いで濃縮溶液のpHは、酸の除去、塩基性化合物の添加および/または塩基性化合物の濃度の増加、またはそれらの組み合わせのような任意の適切な手法により、所望のレベルにされる。この場合の開始溶液の形成は、好ましい実施態様によると、pHを選択された範囲に調整することと考えられ、そして他の好ましい実施態様によると、開始溶液のpHは、少なくとも部分的な均一化の後に得られるpHである。さらに別の好ましい実施態様によると、濃縮溶液が調製され、pHは、所望のものより多少低いレベルに調整される。次いで、開始溶液が溶液の希釈により調製され、これによりpHが所望のレベルにまで増加する。再度言及するが、好ましい実施態様によると、開始溶液のpHは、少なくとも部分的な均一化の後に得られるpHである。例えば、金属塩の溶液を形成する場合のように、開始溶液の多段階調製の他の方法について同じことが言える。
【0072】
好ましい実施態様によると、開始溶液は新たに調製される。他の好ましい実施態様によると、再利用された溶液を新たに調製した溶液と混合する場合のように、溶液は異なる時間に調製されたイオンおよび/または複合体を含まない。好ましい実施態様によると、金属のpKa値よりも1pH単位低いpH、(pKa−1)で、および低温(例えば、40℃より低い)で、溶液はより長い時間その鮮度を維持し、ストック溶液として役立つことができる。他の好ましい実施態様によると、他の条件では、溶液は数時間後または数日後には新鮮とは見なされない。好ましい実施態様によると、溶液の鮮度は酸処理によって回復する。そのような鮮度の低い溶液は、(pKa−1.5)より低いpHまで、好ましくは(pKa−2)より低いpHまで酸性にされ、そして、pHを増加させて初期値に戻して新鮮な溶液を再形成する前に、好ましくは少なくとも5分間は混合され、激しく攪拌され、または振とうされる。好ましい実施態様によると、このような再形成された新鮮な溶液は、他の新鮮な溶液と混合される。
【0073】
本発明において用いられる用語金属のpKaは、下記の反応:
+HO←→(MOH)X−1+H
に関する金属の加水分解定数Kaの対数値を表し、
Ka=[(MOH)X−1]*[H]/[M]*[HO];
ここで、Mは金属を表し、XまたはX−1は価数(valiancy)を表す。
【0074】
プロセスの次の工程において、金属溶液は、好ましくは、14日を超えない保持時間の間、70℃より低い温度で保持される。保持時間の間、加水分解が起こる。好ましい実施態様によると、保持時間は、金属1ミリモルあたり、溶液中で少なくとも0.1ミリモルのH(プロトン)を生成するのに必要な時間である。さらに他の好ましい実施態様によると、塩基または塩基性化合物が保持時間の間に溶液に添加される場合、保持時間は、塩基の添加なしにこれらの量のプロトンを形成するために必要であろう時間である。
【0075】
好ましい実施態様によると、保持時間は、調製した溶液のpHの増加とともに減少する。それゆえ、例えば金属のpKaより低いpHでは、保持時間は好ましくは20分から2、3日である。金属の(pKa+1)〜金属の(pKa+4)の間のpHでは、保持時間は好ましくは1日未満である。保持時間の間にpHが変化する場合、後者は達した最大のpHによって影響される。通常は、保持時間は溶液の温度が増加するとともに減少する。
【0076】
第3の工程は、上記の沈殿様式を達成するために必要であり、溶液の状態を変更して溶液のpHおよび/または温度および/または希釈の増加の少なくとも1つを達成することである。
【0077】
状態の変更は、好ましくは短時間でなされ、変更された状態は短時間維持される。例示的な態様によると、変更された状態での持続は24時間未満であり、好ましくは4時間未満であり、より好ましくは2時間未満であり、最も好ましくは10分未満である。本発明の他の好ましい実施態様では、状態の変更は、2時間以内、好ましくは10分以内、より好ましくは1分以内で実施される。
【0078】
工程(c)におけるpHの増加は、酸の除去、または塩基性化合物の添加あるいは塩基性化合物の濃度の増加などの任意の公知の方法によって達成することができる。酸の除去は、抽出または蒸留などの公知の方法によって実施することができる。任意の塩基性化合物が添加され得る。好ましい実施態様によると、塩基性化合物は、それらの等モル溶液のpHの比較により決定されるように、金属塩よりもさらに塩基性である化合物である。従って、そのような塩基性化合物は、好ましくは、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、アンモニア、尿素などの、無機または有機塩基または塩基の前駆体の少なくとも1つである。そのようなpHを増加させる方法はまた、開始溶液を調製する工程(a)における使用に適している。好ましい実施態様によると、塩基性のpHは、プロセスの大部分を通して回避され、その結果、工程(c)におけるpH増加の持続期間の大部分の間、pHは酸性または弱酸性である。
【0079】
他の好ましい実施態様によると、工程(a)におけるpHは、酸の添加により減少する。好ましい実施態様によると、酸の陰イオンは、金属塩中に存在するのと同じ陰イオンであるが、他の陰イオンも使用され得る。
【0080】
他の好ましい実施態様によると、溶液は工程(c)において希釈される。好ましい実施態様によると、溶液は、その初期値の80%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは初期値の少なくとも33%に希釈される。
【0081】
他の好ましい実施態様によると、溶液の温度は増加する。好ましい実施態様によると、温度は少なくとも10℃、より好ましくは少なくとも30℃、さらにより好ましくは少なくとも50℃、最も好ましくは少なくとも80℃増加する。温度増加は、熱い表面、熱い液体、熱い蒸気との接触、赤外線照射、マイクロ波またはそれらの任意の組み合わせなどの任意の公知の方法によって影響され得る。
【0082】
他の好ましい実施態様によると、2つの変更またはすべての3つの変更は、連続してあるいは同時に実施される。従って、好ましい実施態様によると、前述の変更水溶液(これはまた金属塩を希釈する)中の塩基性化合物は、保持時間の後、金属塩の溶液に添加される。他の好ましい実施態様によると、金属塩の溶液は、水および/または水溶液を含有する希釈溶液と接触させ、この温度は、金属塩溶液の溶液よりも、第1の好ましい実施態様によると少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃高い。別の実施態様によると、前記の希釈溶液の温度は、約100℃〜250℃の間であり、他の好ましい実施態様によると150℃〜250℃の間である。さらに他の好ましい実施態様によると、希釈溶液は、金属イオン、それらの複合体および/またはそれらの粒子と相互作用する試薬を含有する。
【0083】
さらに他の好ましい実施態様によると、保持時間後の金属塩溶液は、工程(c)において、金属塩よりもより塩基性である溶質を含有する変更水溶液と組み合わされ、この変更水溶液は、金属塩の溶液よりも高い温度である。好ましい実施態様によると、金属塩溶液および前記変更水溶液は、例えば、強力な混合を提供する適切な装置中で機械的に混合され、均一系を急速に達成する。これらの溶液の少なくとも1つの温度が沸点を超える場合には、混合装置は、好ましくは、大気圧を超える圧力に耐えるように選択される。好ましい実施態様によると、混合は、例えば、プラグフローモードにて、流動する金属塩溶液を流動する変更水溶液と接触させることにより実施される。好ましくは、混合されたストリーム(流れ)は、形成された温度でまたは短期間の冷却または加熱により得られる別の温度で、例示的な態様によると1日未満、好ましくは1〜60分の間、さらにより好ましくは0.5〜15分の間、保持される。
【0084】
加熱の程度、pH上昇および希釈は、単一の変更手段としてまたは組み合わせて実施される場合、形成される粒子の化学的性質に影響する。例えば、通常、温度が高くなると、粒子成分の水和の程度は低くなる。結晶の形態や形状もまた影響される。
【0085】
好ましい実施態様によると、最終生成物の酸化物はプロセスの工程(c)において形成される。他の好ましい実施態様によると、工程(c)の生成物は、さらに処理され、所望の最終生成物に変換される。
【0086】
好ましい実施態様によると、そのような更なる処理は加熱を含む。好ましくは、加熱は、約90℃〜900℃の間の範囲の温度までである。好ましい実施態様によると、加熱は、工程(c)においてまたはいくつかの処理(例えば、水の部分的または完全な除去)後に得られるような、形成された粒子を含有する溶液の加熱である。他の好ましい実施態様によると、形成された粒子は、最初に溶液から分離される。分離された粒子は、そのまま、またはさらなる処理(例えば、洗浄および/または乾燥)後に処理され得る。溶液中の加熱は、好ましくは、大気圧を超える圧力にて、そのような圧力に適切な装置中で行われる。好ましい実施態様によると、外部圧力が加えられる。加熱の種類はまた制御因子であり、従って、段階的な加熱の結果は、ある場合には急速な加熱とは異なる。好ましい実施態様によると、工程(c)およびさらなる加熱は、好ましくは同じ容器の中で連続して実施される。
【0087】
好ましい実施態様によると、変換された粒子の晶癖は、元の粒子(この粒子から変換された粒子が製造された)の一般的な晶癖である。例えば、棒状の粒子は細長い粒子に変換され得る。
【0088】
本発明の別の実施態様では、低い粒子寸法比を有するアモルファスの金属酸粒子は、高い寸法比を有する粒子に変換することができる。
【0089】
本発明の他の実施態様では、棒状の癖を有する凝集体または球状の癖の凝集体は、それぞれ、棒状の癖を有する粒子または球状の癖を有する凝集体に変換され得る。
【0090】
実現されるであろうように、本発明は、容易に変換される沈殿物の製造のための条件を提供し、また同様に優れた特性を有する変換生成物を提供する。
【0091】
好ましい実施態様によると、少なくとも1つの分散剤が、当該方法の工程の少なくとも1つにおいて存在する。ここで使用される用語分散剤は、分散剤、界面活性剤、ポリマーおよびレオロジー剤を意味し、含む。従って、好ましい実施態様によると、分散剤は、金属塩が溶解している溶液または溶解されるべき溶液へ導入されるか、または溶液の前駆体(例えば、鉱石)に添加される。他の好ましい実施態様によると、分散剤は保持時間の間またはその後に溶液に添加される。別の実施態様によると、分散剤は、調整工程の前またはそのような工程の後に溶液に添加される。さらに他の好ましい実施態様によると、分散剤は、変換工程の前、そのような工程の間、またはその後に添加される。他の好ましい実施態様によると、プロセスは、プロセスの間の分散剤の濃度および/または性質を変更する工程、および/または別の分散剤を添加する工程をさらに含む。好ましい実施態様によると、適切な分散剤は、ナノ粒子および/または核の表面上に吸着される能力を有する化合物である。適切な分散剤は、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、非イオン性ポリマー、界面活性剤、ポリ−イオンおよびそれらの混合物を含む。本明細書において、用語「分散剤」は、形成された粒子の分散物を安定させることができる分子、および/またはナノ粒子の形成のメカニズムを変更することができる分子、および/またはナノ粒子の形成プロセスの間に形成された任意の種の構造、特性およびサイズを変更することができる分子に関連する。
【0092】
好ましい実施態様によると、前記分散剤は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリエチレングリコールおよび市販の分散剤(例えば、Solsperse(登録商標)等級、Efka(登録商標)等級、Disperbyk(登録商標)またはByk(登録商標)等級、Daxad(登録商標)等級およびTamol(登録商標)等級)からなる群から選ばれる。
【0093】
好ましい実施態様によると、プロセスは、プロセスの工程の少なくとも1つの間または後に、溶液を超音波処理する工程をさらに含む。
【0094】
好ましい実施態様によると、プロセスは、プロセスの工程の少なくとも1つの間または後に、溶液をマイクロ波処理する工程をさらに含む。
【0095】
好ましい実施態様によると、さらなる処理は、粒子を部分的に融合させてより大きなサイズの粒子にすることを含む。他の好ましい実施態様によると、粒子の凝集体は、粉砕のために機械的に処理される。
【0096】
工程(c)においてまたはさらなる変換後に形成される本発明の生成物は、好ましくは金属酸化物の小さいサイズの粒子である。好ましい実施態様によると、粒子のサイズは2nm〜500nmの間の範囲である。他の好ましい実施態様によると、生成物の粒子のサイズ分布は狭く、従って、形成された粒子の平均50(重量)%の最小粒子と最大粒子との間のサイズ比は、約10未満であり、より好ましくは5未満であり、最も好ましくは3未満である。
【0097】
好ましい実施態様によると、分離した粒子が形成される。他の実施態様によると、形成された粒子は少なくとも部分的に凝集している。
【0098】
好ましい実施態様によると、形成された粒子の大多数は、X線解析によって決定されるように、50%より大きい結晶化度を有する。
【0099】
好ましい実施態様によると、工程(c)においてまたはさらなる変換後に形成される粒子の形状は、針(ニードル)、棒(ロッド)または筏(ラフト)のように細長い。
【0100】
他の好ましい実施態様によると、粒子は球状またはほぼ球状であり、従って、形成された粒子の大多数は、1つの寸法と任意の他の寸法との間の比が約3未満である形状を有する。
【0101】
好ましい実施態様によると、形成された粒子の大多数は、少なくとも30m/gr、より好ましくは少なくとも100m/grの表面積を有する。本発明の高い表面積の粒子は、触媒の調製における使用に適している。
【0102】
本発明のプロセスは、高純度の金属酸化物を比較的低純度の前駆体(例えば、金属鉱石)から形成することができる。好ましい実施態様によると、金属酸化物の生成物の純度は、それに混ざっている他の金属に関して、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%である。
【0103】
他の好ましい実施態様によると、金属酸化物粒子には、他の遷移金属のイオンまたは原子がドープされる。
【0104】
好ましい実施態様によると、粒子は、液体中に分散した粒子、固体化合物上に担持された粒子、より大きい粒子へと凝集した粒子、部分的に融合した粒子、被覆された粒子またはそれらの組み合わせからなる群から選ばれる形態で得られる。
【0105】
粒子、それらの調製物および/またはそれらの変換の生成物は、顔料、触媒、被覆剤、熱被覆剤等の製造のような多くの工業用途における使用に適している。粒子は、第1の実施態様におけるように、これらの用途および他の用途で使用される。他の好ましい実施態様によると、前記粒子はさらに処理され、さらに他の好ましい実施態様によると、前記粒子は、そのような用途のための調製材料の一部として形成される。
【0106】
文献に記載されたプロセスの多くは、実験室での使用に適しており、商業用途には極めて実用的ではない。それらは、高純度の前駆体から始まり、高希釈の溶液と共に働き、および/または少量および低率である。本発明の方法は、経済的に魅力のある工業規模の製造に非常に適している。好ましい実施態様によると、本方法は、少なくとも50Kg/時間、より好ましくは少なくとも500Kg/時間の生産速度で操作される。
【0107】
好ましい実施態様によると、溶液のpHは、金属塩の加水分解およびそれによる酸(例えば、硫酸)の形成が達成されるせいで、プロセスの間に低下する。そのような酸は、好ましい実施態様によると、例えば金属塩溶液の形成のために、例えば金属を含有する鉱物の溶解において再使用される。他の好ましい実施態様によると、形成された酸は、プロセスの間に部分的にまたは完全に中和され、その結果、酸の塩を形成する。好ましい実施態様によると、例えばアンモニアを用いて中和が行われてアンモニウム塩(それらは肥料としての使用に適している)を形成する場合のように、塩は工業的に使用される。
【0108】
本発明の他の好ましい実施態様によると、前記調整段階は、
a)保持した溶液を、混合室中、連続モードで変更溶液と接触させ、変更された系を形成する工程;および
b)該変更された系を、プラグフローモードで該混合室から除去する工程
を含む。
【0109】
変更された系の温度は、開始溶液の温度および熱い変更溶液の温度により、それらの熱容量およびそれらの相対量により、決定される。好ましい実施態様によると、変更された系の温度は、例えば、±20℃より大きい変化なしで、最小の変化で維持される。好ましい実施態様によると、変更された系は、1〜30分の間、より好ましくは3〜15分の間の期間、その温度で保持される。
【0110】
80℃より高い温度の変更水溶液および開始溶液は、混合室中、連続モードで接触させ、変更された系を形成する。混合室は、溶液の迅速で効率的な混合を確保するように構築される。変更された系は、混合室からプラグフローモードで除去される。プラグフローの間に沈殿が完了する。他の好ましい実施態様では、溶液はプラグフロー時間の間に使い果たされず、沈殿は別の容器で継続する。
【0111】
混合室中の混合は、好ましくは、機械的な混合手段を用いることにより、または他の混合モードにより、進入する溶液の流量を用いて実施される。
【0112】
1つの好ましい実施態様では、混合室中の温度およびプラグフローの間の温度は類似している。他の好ましい実施態様では、プラグフローの間の溶液の温度は、混合室中の温度よりも高く、さらに他の好ましい実施態様では、プラグフローの間の溶液の温度は、混合室中の温度よりも低い。
【0113】
本発明の好ましい実施態様では、酸および塩基からなる群から選ばれる化合物を含む溶液は、前記開始溶液、変更溶液および変更された系からなる群から選ばれる溶液の少なくとも1つに添加される。
【0114】
本発明の好ましい実施態様では、混合室中の滞留時間は約5分未満であり、より好ましくは、滞留時間は1分未満である。なおより好ましい実施態様では、混合室中の滞留時間は約5秒未満であり、特に好ましい実施態様では、滞留時間は0.5秒未満である。
【0115】
本発明の好ましい実施態様では、プラグフローを出る溶液は容器に入る。本発明のより好ましい実施態様では、容器中の溶液は混合される。
【0116】
本発明の好ましい実施態様では、プラグフローを出る溶液またはプラグフローを出る溶液中に存在する製造された粒子は、晶析装置へ導入される。
【0117】
本発明の他の好ましい実施態様では、晶析装置内部の温度は約100〜300℃の範囲に保持される。
【0118】
本発明の好ましい実施態様では、金属塩溶液もまた晶析装置へ導入される。
【0119】
本発明の他の好ましい実施態様では、金属酸もまた晶析装置へ導入される。
【0120】
本発明が前述に記載の詳細に限定されないこと、および本発明がその本質的な特性から逸脱せずに他の特定の形態で具体化され得ることは、当業者にとって明白であり、それゆえ、前述の記載よりもむしろ添付の特許請求の範囲を参照して、本実施態様および実施例があらゆる点で例示的であり限定的でないとして考慮されること、およびそれ故特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入るすべての変更が包含されると意図されることが望まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小さなサイズの金属酸化物粒子の形成方法であって、
a)金属イオンおよびそれらの複合体の少なくとも1つを、該金属成分の濃度が少なくとも0.1%w/wで含有する開始水溶液を調製する工程を含み、
b)該溶液を、加水分解が起こる保持時間の間、50℃より低い温度にて維持し、保持溶液を含む系を形成する工程を含み、該加水分解の程度は、溶液中に存在する金属のmmolあたり0.1mmolのプロトンを生成するのに十分であり、ここで該時間は14日を超えず、
c)i)該保持溶液を加熱してその温度を少なくとも1℃上げる工程;
ii)該保持溶液のpHを少なくとも0.1単位変化させる工程;および、
iii)該保持溶液を少なくとも20%希釈する工程、
の少なくとも1つによって該系の状態を調整する工程を含み、
それによって粒子が形成され、該形成された粒子の大多数が約2nm〜約500nmの間のサイズである、
前記方法。
【請求項2】
溶液が前記調整された状態で少なくとも0.5分間維持される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記状態の調整が2時間未満の間に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
形成された粒子の大多数が50%よりも大きい結晶化度を有することをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
形成された粒子の平均50重量%の最小粒子と最大粒子との間のサイズ比が約10未満であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
形成された粒子の平均50重量%の最小粒子と最大粒子との間のサイズ比が約5未満であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
形成された粒子の大多数が細長い以外の形状であることをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
形成された粒子の大多数が少なくとも30m/grの表面積を有することをさらに特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記形成された粒子を、約90℃〜約900℃の間の範囲の焼成温度にて脱水し、脱水した粒子を形成する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記脱水が大気圧を超える圧力下で行われる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記脱水工程および前記調整工程が同時に行われる、請求項9記載の方法。
【請求項12】
調整が焼成温度までの加熱を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
脱水した粒子の大多数が細長い以外の形状であることをさらに特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項14】
脱水した粒子の大多数が少なくとも30m/grの表面積を有することをさらに特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記金属が、アルミニウム、ジルコニウム、亜鉛、スズ、マンガン、銅およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記金属酸化物が、式 Metalの金属酸化物、式 Metal(OH)の金属ヒドロキシ酸化物、金属酸、これらの種々の水和形態およびこれらが主成分である組成物からなる群から選ばれ、ここでx、y、p、q、rがそれぞれ整数である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記式 Metalの金属酸化物が、SnO、SnO、Al、ZnO、CuO、CuO、MnO、MnO、ZrOからなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記式 Metal(OH)の金属ヒドロキシ酸化物が、Sn(OH)、Sn(OH)、Al(OH)、Si(OH)、Zn(OH)、CuOH、Cu(OH)、Mn(OH)、Mn(OH)、Zr(OH)である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記水溶液の調製が、以下の作用:金属化合物の溶解、塩基の添加および金属塩溶液の酸性化の少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法:
【請求項20】
前記金属化合物が、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、該金属化合物を含む無機物およびこれらの混合物からなる群から選ばれ、ここで該化合物が、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、有機酸、これらの酸性塩およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる酸を含有する酸性溶液に溶解される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記調製された水溶液が、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、リン酸塩、有機酸およびこれらの混合物からなる群から選ばれる陰イオンを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記調製した開始水溶液中の陰イオンの大多数が硫酸陰イオンである、請求項1記載の方法。
【請求項23】
調製した溶液中の金属濃度が約5wt%よりも大きい、請求項1記載の方法。
【請求項24】
少なくとも2つの加熱工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記形成された粒子を研磨する工程および前記形成された粒子を選別する工程の少なくとも1つをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
調製、維持、調整、脱水および研磨からなる群の少なくとも1つの工程において少なくとも1つの分散剤が存在する、請求項1、9および25記載の方法。
【請求項27】
前記分散剤が、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、非イオン性ポリマー、界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記分散剤の量を変更する工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記開始溶液が、超音波およびマイクロ波の作用の少なくとも1つによって処理される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
請求項1記載の方法により形成される金属酸化物粒子およびそれらの変換の生成物。
【請求項31】
前記金属酸化物粒子の純度が、それに混ざっている他の金属に関して、少なくとも95%であることを特徴とする、請求項30記載の金属酸化物粒子。
【請求項32】
球状の形状、棒の形状、針の形状および筏の形状からなる群から選ばれる形状を有することを特徴とする、請求項30記載の金属酸化物粒子。
【請求項33】
前記粒子に他の化合物の原子がドープされていることを特徴とする、請求項30記載の金属酸化物粒子。
【請求項34】
請求項1記載の方法により調製される金属酸化物粒子を含有する調製物。
【請求項35】
前記粒子が、液体中への分散、固体化合物上への担持、より大きい粒子への凝集、部分的な融合、被覆およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる変更プロセスによって変更される、請求項34記載の調製物。
【請求項36】
前記粒子の分散、担体の添加、熱処理、混合、水分の蒸発、噴霧乾燥、溶射およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる工程を含む、請求項34記載の調製物の製造方法。
【請求項37】
請求項30記載の粒子および請求項34記載の調製物の少なくとも1つを顔料として使用することを含む方法。
【請求項38】
請求項30記載の粒子および請求項34記載の調製物の少なくとも1つを触媒に使用することを含む方法。
【請求項39】
請求項30記載の粒子および請求項34記載の調製物の少なくとも1つを被覆剤に使用することを含む方法。
【請求項40】
粒子が少なくとも50Kg/時間の速度で形成される、前記請求項のいずれかに記載の粒子の工業的製造。
【請求項41】
請求項1記載の工程を含む、顔料の形成のための方法。
【請求項42】
請求項1記載の工程を含む、触媒の形成のための方法。
【請求項43】
調整段階が、
a)変更溶液を、混合室中、連続モードで第2の溶液と接触させ、変更された系を形成する工程;
b)該変更された系を、プラグフローモードで該混合室から除去する工程;
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項44】
混合室中の滞留時間が約5分未満である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記変更された系の溶液中のOH/金属のモル比が4未満である、請求項1記載の方法。
【請求項46】
変更溶液の温度が100℃〜300℃の間の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項47】
前記変更された系が100気圧未満の圧力で保持される、請求項43記載の方法。
【請求項48】
変更された系が、1〜60分の間の期間、保持される、請求項1記載の方法。
【請求項49】
前記保持の間、温度が、変更された系の温度から±20℃未満の変化内で維持される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
混合室中の滞留時間が約5秒未満である、請求項43記載の方法。
【請求項51】
混合室中の滞留時間が約0.5秒未満である、請求項43記載の方法。
【請求項52】
除去された変更された系が少なくとも0.5分間維持される、請求項43記載の方法。
【請求項53】
除去された変更された系またはその中の粒子が晶析装置に導入される、請求項41記載の方法。
【請求項54】
晶析装置内部の温度が約100〜300℃の範囲に保持される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
金属塩溶液もまた晶析装置に導入される、請求項53記載の方法。
【請求項56】
金属酸もまた晶析装置に導入される、請求項53記載の方法。
【請求項57】
前記金属塩溶液の酸性化が、該金属塩中または他の酸中に存在する陰イオンの酸およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる酸の添加によって行われる、請求項19記載の方法。
【請求項58】
酸および塩基からなる群から選ばれる化合物を含む溶液が、前記開始溶液、前記変更溶液および前記変更された系からなる群から選ばれる溶液の少なくとも1つに添加される、請求項43記載の方法。
【請求項59】
分散剤および塩基性化合物からなる群から選ばれる試薬が、調製、維持、調整、前記晶析装置中での結晶化、およびプラグフローモードでの流動からなる群の少なくとも1つの工程において存在する、請求項1および53記載の方法。
【請求項60】
前記開始溶液および前記変更溶液の少なくとも1つが、分散剤および塩基性化合物の群から選ばれる試薬を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項61】
前記塩基性化合物が、アンモニア、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウムおよび尿素からなる群から選ばれる、請求項60記載の方法。

【公表番号】特表2009−521394(P2009−521394A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548067(P2008−548067)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001470
【国際公開番号】WO2007/074438
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507132813)ヨマ インターナショナル アーエス (6)
【Fターム(参考)】