説明

制御トリガを有する切断装置

【課題】制御トリガを有する切断装置を提供する。
【解決手段】コンクリート部材の一部を切断する装置は容器(10)を備える。この容器(10)では、所定の遅延後に、化合物と水溶液との化学反応により生成されるガスによって内部に過度の圧力が生成される。容器(10)は、水溶液を含み、化合物を収納する第1の収納部(24)を有するケース(12)に取り付けられる。バーストディスク(23)は、第1の容器(24)と容器(10)との間に設けられ、化合物と水溶液との完全な密閉を確保する。ケース(12)は、電子トリガ(11)を入れる第2の収納部(25)と、トリガ(11)により制御され、所定の遅延後にバーストディスク(23)を破裂させて容器(10)内で化学反応を引き起こすアクチュエータ(32)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の遅延後に、化合物と水溶液との化学反応により生成されるガスによって内部に過度の圧力が生成される容器とバーストディスク(burst disk)とを備えたコンクリート部材から成る部品を切断するための装置に関するものであり、容器は、水溶液を含み、化合物を収納する第1の収納部(first recess)を有するケースに取り付けられ、バーストディスクは、第1の収納部と容器との間に設けられ、化合物と水溶液との完全な密閉を確保する。
【背景技術】
【0002】
膨張することによりコンクリート部品を割る化学的または機械的な反応物質を入れる容器を備える切断装置が存在する。特許文献1には、平坦で閉じた底部壁と、底部壁に対して鋭角を形成する側壁とを有するフラスコを備える切断部(severing element)が開示されている。側壁の上に配置されたチューブ状の接続器具に取り付けられた堅固なチューブは、フラスコ内に破裂薬剤を導入するためのチャネルを形成する。この種の切断部は扱いが困難である。なぜなら、いくつかの工程、すなわち、切断部を1つ1つ配置する工程と、続いて堅固な中空のチューブから破裂薬剤を各フラスコに導入する工程とを要するためである。これら2つの工程は建設現場において時間を消費するものであり、特に破裂薬剤を導入する際に特別な注意を要する。
【0003】
切断手法の主な課題の1つは、コンクリートに亀裂を生じさせる反応薬剤の膨張の制御である。確かに、コンクリートが固まる前や、コンクリートの抵抗、特に伸長に対する抵抗が高すぎる時には、反応薬剤は膨張すべきでない。多くの公知の膨張薬剤は、水、生石灰および一般的な添加物の混合物であり、添加物はコンクリートおよび建設部材(work)の種類の有効な温度条件に適合させている。
【0004】
水と生石灰との化学的反応による膨張は、遅延剤を使用したとしても、制御するのが容易ではない。このため、特許文献2は、コンクリートの山を破壊するために、中空の保護チューブ内の限られた空間に置かれた、重量30%の粉末と重量70%の水を含む破壊促進物質を開示している。破壊促進物質を構成する粉末は、カルシウムアルミニウムフェライト((CaO)AlFe)、結合していない酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、および、ホウ素等の遅延剤を含む。破壊促進物質が膨張すると、所定のレベルでコンクリートの山に亀裂が生じる。この製品の主な欠点の1つは、膨張させるために遅延剤を使用することであり、これにより、亀裂の生成をコンクリートの山の抵抗の増大と一致させることができる。しかしながら、特に温度の関数として遅延剤の割合を変化させることにより、破壊促進物質の組成比を各建設現場のコンクリートの温度条件に適合させる必要がある。建設現場において、膨張薬剤を温度条件に適合させるのは困難である。
【0005】
特許文献3は、バーストディスクにより互いに分離された2つの収納部に入った化合物と水溶液との化学反応に続いて、ガスの生成により過度の圧力(overpressure)が内部に生成される容器に関連する。この反応は容器が破裂対象物に対して突き出されたときに起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2000/36228公報
【特許文献2】米国特許4571124公報
【特許文献3】特開平8−285500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、環境の制約に関わらず、任意のコンクリート部材に使用可能かつ簡易に実現可能な、制御性および信頼性のある化学反応のトリガを保証する切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この装置は、前記ケースが、電子トリガを入れる第2の収納部と、アクチュエータと、を含み、前記アクチュエータは前記トリガにより制御され、所定の遅延後に前記バーストディスクを破裂させて前記容器内で前記化学反応を引き起こすことを特徴とする。
【0009】
前記アクチュエータのトリガは、前記電子トリガの遅延により定まる正確な時間に発生する。前記装置のトリガから前記化学反応が始まるまで3〜4日が経過するはずである。
【0010】
好ましい実施形態によると、前記ディスクは、前記ケースに嵌め込まれ、前記ケースを密閉するキャップの一部である。前記キャップは、前記容器に広がるハブ上の外側のねじ切りと対となる内側のねじ切りを有する穴を備える。前記電子トリガの前記アクチュエータは、前記ディスクを破裂させるために容量の放電により動作可能な火工起爆剤(pyrotechnical detonator)を備える。前記起爆剤は、前記トリガのプリント回路基板上に配置されてもよいし、前記バーストディスクに直接設置されてもよい。
【0011】
前記トリガは水晶振動子の時間基準を有するクロックと、マイクロコントローラと、を含むタイマ回路をさらに備えている。前記トリガの遅延および前記容量の充電の開始はアーミング回路により引き起こされ、前記アーミング回路は、互いに逆の磁極を有する永久磁石とともに動作する磁石スイッチを備え、一方の磁石は固定されており、他方の磁石はピンを通して取り外し可能である。
【0012】
前記キャップにより閉じられた前記容器は、鋭角を形成し、共通の外部輪郭を有する2つのテーパ状の壁により限定される収納部を備える。反動力により生じる半径方向の力の成分は、外部輪郭の近辺において最大であり、そのために、外部輪郭と交差する面に沿ってコンクリートに水平な亀裂が生じ、このようにして切断区域を決定する。垂直方向の成分F2の動きにより、コンクリートの山は、切断動作中にわずかに浮き上がる動きをする。
【0013】
本発明の他の利点および特徴は、本発明特有の実施形態を示す後述の記載から明らかにされる。これらは非限定的な例示であり、添付図面を用いて示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電子トリガを入れるケースに容器が取り付けられる、本発明に係る切断装置の垂直断面図。
【図2】容器の斜視図。
【図3】底の容器を取り外して分離した後の図1のケースを示す図。
【図4】図3の垂直断面図。
【図5】トリガの概略構成図。
【図6】図2とは別の容器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
コンクリート部材、特に柱、棒、またはキャストウォール(cast wall)形状のコンクリート部材の一部を切断する装置は容器10を備える。この容器10の内部で大量のガスが生成されて、容器10の内部に過度の圧力を発生させる。この過度の圧力は容器の破裂を引き起こし、コンクリートを割ることが可能な反動力を生成する。切断部は、コンクリートを成型する前に、好ましくは位置決めフレームとともに設置されるか、もしくは、成型後の生コンクリートの中に、好ましくは再利用可能または適切に置かれる棒とともに挿入される。
【0016】
過度の圧力を引き起こすガスは、化合物と水溶液との化学反応により発生される。この化合物は、好ましくは、カルシウム、アルカリ金属(リチウム、カリウムおよびナトリウム)、アルカリ金属炭酸塩、カルシウムカーバイド、および、カルシウム炭酸塩の中から選択される。
【0017】
例えばカルシウムを用いる場合、以下の反応式に示すように、生成されるガスは水素である。
Ca+HO→1/2H+Ca(OH)
数グラムの化合物、例えば4グラムの純粋なカルシウムは、コンクリート部品を切断する十分なガスを生成する。本発明から逸脱しない限り、他の化合物を用いてもよいのは言うまでもない。
【0018】
コンクリートが固まり始めるときに生じる膨張効果のために、コンクリートが成型されてすぐに、または、コンクリートが硬くなりすぎてしまった後に膨張が起こらないよう、容器10内部のガスの生成を制御する必要がある。化合物と水溶液との反応を適切なタイミングで実現するために、水溶液が化合物に接触する時間は、電子トリガ11の動作を通して制御される。このトリガはキャップ12Aを備えるケース12に収納されており、キャップ12Aは容器12にねじ止めされ、容器12を密閉する。
【0019】
好ましい実施形態では、図1および図2に示す型の容器10が用いられるのがよい。例えばポリエチレン等のプラスティックから成る容器10は、2つのテーパ状の壁である底部壁(bottom wall)14および上部壁(top wall)15により制限される内側の収納部13を備えており、これら底部壁14および上部壁15は、共通の外部輪郭16を有し、例えば5〜60度の間の鋭角αをなす。底部壁14は突き出した嵌め込み部材17を備えており、嵌め込み部材17は、容器10を生コンクリート中に置かれた金属構造物に嵌め込み、その場に保持する。上部壁15は外側のねじ切り19を有するハブ18によって延在しており、外側のねじ切り19は、キャップ12Aの穴20の対となるねじ切り19にねじ止めされ、キャップ12Aは容器10を電子トリガ11のケース12に嵌め込んで密閉する。
【0020】
キャップ12Aは所定の厚さのバーストディスク23によりケース12から分離されており、電子トリガ11によりトリガコマンドが発行されない限り、カルシウムと水との間の完全な密閉を確保する。バーストディスクの上部において、ケース12は、例えばカルシウムベースの化合物カートリッジ25を入れた第1の収納部24と、電子トリガ11を入れた第2の収納部26とに分離されている。
【0021】
図3〜5において、電子トリガの部材(element)は、第2の収納部26の内部に垂直に収納されるプリント回路基板に接続される。トリガは、アーミング回路27と、例えば3VバッテリのDC電源28と、タイマ29と、スイッチング回路30と、エネルギ保存回路31と、アクチュエータ32とを備えている。
【0022】
アーミング回路27は、例えば、柔軟な接点刃を有するReedリレー等の磁石スイッチ33を備えており、磁石スイッチ33はケース12の上部に互いに隣接して置かれる2つの永久磁石33,34とともに動作する。一方の磁石34は固定されており、他方の磁石35はピン36の動作により可動になる。2つの磁石34,35は同一であるが、逆の磁極を有する。2つの磁石34,35が存在する場合は、これらの磁界は打ち消しあい、スイッチ33は開放される。アーミングは、ピン36を引くことにより第2の磁石35を取り除いて、スイッチ33を閉じる。磁石スイッチ33に換えて、例えば電気機械的あるいは電気的な他のいかなる種類のスイッチを用いることもできる。
【0023】
電源28の3Vバッテリはスイッチ33および抵抗R1とともに直列に接続されている。エネルギ保存回路31は抵抗R1と電源28の接地端子を形成する接地電位との間に並列に接続される電解容量C1を備えている。
【0024】
タイマ29はクロック37とマイクロコントローラ38とを備えている。クロック37は、マイクロコントローラ38に接続されるとともに、2つのデカップリング容量C3,C4を通して接地端子に接続される水晶時間基準(quartz time base)39を備えている。
【0025】
スイッチング回路30はパワートランジスタQ2を備えている。パワートランジスタQ2は例えばNPNバイポーラであり、コレクタはアクチュエータ32と直列に接続され、エミッタは接地端子に接続される。トランジスタQ2のベースは抵抗R2を通してマイクロコントローラ38の出力S1に接続される。当然、他の任意のタイプのスイッチング素子を用いてもよい。
【0026】
アクチュエータ32は、火工(pyrotechnical)起爆剤40と、容量C1の放電において破壊されるプラスティックバーストディスク23を備えている。起爆剤40にはDavey BickfordのN28BR型を用いることができ、回路基板上に配置してもよいし、バーストディスク23上に直接置いてもよい。後者の場合、不図示の電気的な連結装置(link)が回路基板を起爆剤に接続する。
【0027】
電子トリガ11は以下のように動作する。
【0028】
ピン36を除去すると、スイッチ33は作動して閉じて、トリガタイミングサイクルを開始する。スイッチ39の出力は、タイマ回路29に適合する電圧を供給するため、電気的な連結装置L1を通してマイクロコントローラ38の電源端子B1に接続される。電源28のバッテリは時間調整を開始し、同時に、エネルギ保存回路31の容量C1を充電する。追加的な容量C4は電源供給端子と接地端子との間に接続され、トランジスタQ2がスイッチした後、マイクロコントローラ38に供給を続ける。タイマ遅延に到達すると、マイクロコントローラ38の出力S1は、トランジスタQ2にスイッチ命令を発し、トランジスタQ2はオフからオンへスイッチする。容量C1は起爆剤40に向かって放電し、起爆剤40は破裂してケース12内に過度の圧力を発生させる。バーストディスク23は、所定の閾値、例えば5バールを超えるとすぐに破裂(yield)する。
【0029】
このようにディスク23が破裂すると、第1の収納部24に収納されたカルシウム25が容器10内に落下して水と混ざり、閉じた容器内で水素ガスを生成する化学反応が起こる。逆の手法、つまり、水が上部にあってカルシウムの方へ落下する手法を想定することもできる。
【0030】
図1において、容器10の形状は、化合物が電子トリガ11により解放されて、容器10に入れられた水と混合する時に、膨張効果によって生じる反動力Fを集中させる。圧力は、この面積の逆の関数であり(Pressure being and inverse function of the area)、反動力により生成される半径方向の成分F1は、外側輪郭16の近傍において、より大きくなり、外側輪郭16はテーパ状の壁14,15で共通である。これにより、切断区域22を決定する外部輪郭16と交差する面に沿って、コンクリートに水平な亀裂が生じる。垂直方向の力の成分F2の動きにより、コンクリートの山は、切断装置の上でわずかに浮き上がる動きをし得る。
【0031】
温度の変化は膨張効果にほとんど影響せず、温度の関数として、化合物および/または水溶液の量や構成を変える必要はない。
【0032】
切断装置に用いる容器10は、ここで説明したものとは別の形状であってもよい。例えば、国際公開第2000/36228号に記載される型の容器を本発明に用いてもよい。
【0033】
また、図6に示すように、図2より狭い外形(profile)を有する容器10を用いることもできる。下側および上側の壁は平行であり、圧縮方向の圧力(矢印F4)と膨張方向の圧力(矢印F3)の影響を受ける。膨張後の亀裂の方向は水平方向(矢印F5)に広がり、図1のように輪郭16を横切る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の遅延後に、化合物と水溶液との化学反応により生成されるガスによって内部に過度の圧力が生成される容器(10)と、バーストディスク(23)と、を備え、
前記容器(10)は、前記水溶液を含み、前記化合物を収納する第1の収納部(24)を有するケース(12)に取り付けられ、
前記バーストディスク(23)は、前記第1の容器(24)と前記容器(10)との間に設けられて、前記化合物と前記水溶液との完全な密閉を確保し、
前記ケース(12)は、電子トリガ(11)を入れる第2の収納部(25)と、前記トリガ(11)により制御されるアクチュエータ(32)と、を備え、所定の遅延後に前記バーストディスク(23)を破裂させて前記容器(10)内で前記化学反応を引き起こすことを特徴とするコンクリート部材から成る部品を切断する装置。
【請求項2】
前記ディスク(23)は、前記ケース(12)に嵌め込まれ、前記ケース(12)を密閉するキャップ(12A)の一部であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記キャップ(12A)は、前記容器(10)から延在するハブ(18)の外側のねじ切り(19)と対となる内側のねじ切り(21)を有する穴(20)を備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電子トリガ(11)の前記アクチュエータ(32)は、容量(C1)の放電により前記ディスク(23)を破裂させる火工起爆剤(40)を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記トリガ(11)は、前記アクチュエータ(32)と直列に接続されるスイッチング回路(30)を制御するタイマ回路(29)をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記タイマ回路(29)は、水晶振動子時間基準(39)を有するクロック(37)と、マイクロコントローラ(38)と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記トリガ(11)の遅延の開始および前記容量(C1)の充電の開始はアーミング回路(27)により引き起こされ、
前記アーミング回路(27)は、互いに逆の磁極を有する永久磁石(34,35)とともに動作する磁石スイッチ(38)を備え、一方の磁石(34)は固定されており、他方の磁石(35)はピン(36)を通して取り外し可能であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記スイッチング回路(30)は、抵抗R2を通して、ベースが前記マイクロコントローラ(38)の出力(S1)に接続されるバイポーラトランジスタ(Q2)を備えることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記起爆剤(40)は、前記トリガ(11)のプリント回路基板に配置されるか、または、前記バーストディスク(23)に直接設置されることを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記キャップ(12A)により密封された前記容器(10)は、2つのテーパ状の壁(14,15)により制限される収納部(13)を有し、この収納部(13)は鋭角(α)を形成し、共通の外部輪郭(16)を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−519496(P2010−519496A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550740(P2009−550740)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000100
【国際公開番号】WO2008/110682
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509238487)
【氏名又は名称原語表記】RECEPIEUX
【Fターム(参考)】