説明

制御回路基板の保護カバー

【目的】 制御回路基板を被覆する保護カバーにあって、その使用を終了し、保護カバーに使用した合成樹脂材料を再使用する際に、これに表示した識別表示記録によって材料中に不純物を含むのを有効に回避すること。
【構成】 透明な合成樹脂材料で成形される保護カバー(1)には識別表示(12)の記録を施す識別表示領域(11)の表面、若しくは裏面にレーザーマーカー装置(14)によりレーザー光を照射して、前記合成樹脂材料を変質させて表示する文字等の表示記録を表現し、識別表示部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機等の遊技機に装備される各種の制御回路基板を被覆し、保護するための保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機、スロットマシン、パチスロット等の遊技機には機械本体の作動を制御し、或いは遊技の成立等を制御する本体制御のための、或いは遊技制御のための回路基板や、これら制御回路基板相互、制御回路基板と遊技機器とを連絡する中継基板等多くの電気機器の基板類(以下、単に制御回路基板という。)が設置されており、これらが不正に操作されたり、塵埃によって汚れたりするのを防止するため通常保護カバーで被覆し、保護している。
【0003】
上記保護カバーは、単に制御回路基板を保護するだけでなく、遊技機においては内部の状態が保護カバーを装着した状態で外部から直接視認できることが求められており、このため透明体、具体的には透明な合成樹脂を材料にして形成されている。
【0004】
また、この保護カバーは不正防止等の管理の上から制御回路基板を特定するため、その用途表示や機能表示、更には製造者名や製造番号等の識別表示が施される。従来、この識別表示を紙や合成樹脂フィルムからなるシールに表現し、接着剤により保護カバーの適所に貼り付け表示する方法が採られている。
【0005】
このシールによる表示方法は広く実施されるもので周知のものであり、例えば特許第2905773号公報に記載されるものなどがその一例として挙げられる。
【特許文献1】特許第2905773号公報、明細書の段落0021、0022、図面の図1、図2、図3。 上記特許文献に記載されるシールは、検査履歴を表示したものとなっているが、保護カバー(ケース蓋体19)に対しては、これに形成するシール貼付部(37)に直接貼付けることによって表示するものとしてある。
【0006】
この様な表示方法において、問題となるのは、前記文献の図2、図3にも表われているようにシールを貼り付けることによって保護カバー(ケース蓋体19)に開設する放熱孔(38)がカバーの隅に追いやられ、必ずしも適所に形成できなくなることである。そして更に問題となることはこの表示用のシールが接着剤を使って保護カバーであるケース蓋体(19)の表面に貼付けられることである。
【0007】
前者における問題はシールの貼付け場所に関わる問題であり、主として設計上の問題に止まるが、後者の問題は制御回路基板の使用終了後に併せて廃棄処分となる保護カバーの材料、即ち使用合成樹脂を再利用するため資源回収作業に入る際に使用合成樹脂と異なる材料のシール、例えば紙製のシール、そしてこれを貼り付ける接着剤が混入し、使用合成樹脂の品質、物性を低下させることである。
【0008】
このため、資源回収のリサイクル作業においては保護カバー表面に強固に貼り付けられたシールを剥離するため過大な労力を費やしているが、この中でも問題となることは接着剤の付着である。シールの素材である紙や合成樹脂フィルムが掻き取られた後においても接着剤が残ると云った問題があるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述従来の事情から、本発明は制御回路基板を保護するため使用される保護カバーのシールによる識別表示の問題点に鑑みこれを改善すべく開発されたものであり、その目的とするところは主として上記シールに替るものによって保護カバーの識別表示を行い、保護カバーの材料である合成樹脂のための回収作業に当ってその品質、物性の低下をもたらすシール及び接着剤の使用を不要とした制御回路基板用の保護カバーを提供することにある。
【0010】
また本発明は、識別表示のためのシールの貼り付けを不要とすることによって、このシールの貼り付けのため放熱孔の開設位置の制約を解放し、任意適切な場所に放熱孔の開設を可能にした保護カバーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的の達成のため透明な合成樹脂を材料に形成される保護カバーの識別表示をする識別表示領域に対し、直接レーザー光を照射して合成樹脂素材を加熱発泡させ、或いは素材中の添加剤の分子の凝縮を図り、或いは炭化させる等物理的変化をもたらして合成樹脂素材の変質を利用して直接保護カバーに文字を表現し、或いは記号、図形を表現して識別表示するようにしたことにある。
【0012】
本発明を更に詳述するならば、透明な合成樹脂を材料に製造される制御回路基板を被覆する保護カバーにあって、該保護カバーの識別表示領域の表面若しくは裏面にレーザーマーカー装置によりレーザー光を照射し、前記合成樹脂材料を物理的若しくは化学的に変質させ、該変質により所定の文字、記号、図形等の表示記録を表現し、識別表示部を形成することを特徴とした制御回路基板の保護カバーを提供することにある。
【0013】
また本発明は、前記保護カバーの識別表示領域は保護カバー内部の蓄熱を放出する放熱孔を穿つ領域を含んで設けられることを特徴とした制御回路基板の保護カバーを提供することにある。
【0014】
また更に本発明は前記レーザー光の照射によって形成される文字、記号、図形等の表示記録を透明な保護カバー上に明瞭に表現するため、前記識別表示領域の裏面を粗雑面に加工し、該裏面部分を半透明若しくは不透明にして前記表示記録が背景、即ち制御回路基板の表面等と混同し、不鮮明になるのを回避するようにした保護カバーを提供するものである。
【0015】
即ち、本発明は制御回路基板を被覆する透明な合成樹脂製の保護カバーにあって、該保護カバーに設定する識別表示領域は裏面を粗雑面に形成して半透明乃至不透明とする一方、該識別表示領域の表面にレーザーマーカー装置によるレーザー光を照射して前記合成樹脂材料を物理的若しくは化学的に変質させ、該変質により所定の文字、記号、図形等の表示記録を表現し、識別表示部を形成することを特徴とした制御回路基板の保護カバーを提供せんとするものである。
【0016】
また本発明は、識別表示領域裏面の粗雑面はシボ加工によって形成されることを特徴とした制御回路基板の保護カバーを提供するものであり、また前記シボ加工はなし地加工であることを特徴とした制御回路基板の保護カバーを提供するものである。
【0017】
保護カバーに対するレーザーマーカー装置によるレーザー光の照射は焦点の選択によって深度の設定が可能であるが、カバー表面に対する照射は表層部にして浅い部分に表示するようにするとよい。勿論、この場合材料がガス化し蒸発する気泡が表面に浮き出すことになり、また炭化する場合は表面が荒れることになるが、文字、記号を表わす部分が線状に荒れるに止まるため識別表示において悪影響を及ぼすことはなく効率的に表示することができる。
【0018】
前記識別表示領域において裏面に形成する粗雑面は保護カバーを成形したのち、擦過し表面を白化させることによって形成することも可能であるが、カバーの成形加工時にシボ加工を施して所定の範囲を半透明状に形成するのが効率的であり、均一な加工が期待できる。そして、この場合なし地加工が半透明状態を作る上で適している。
【0019】
本発明は上述したところから明らかな様に、制御回路基板を被う透明な合成樹脂製保護カバーに対してその表面にレーザーマーカー装置からのレーザー光を直接照射し、レーザー光の熱エネルギーへの変換を通して上記合成樹脂材料に対し、これに表示する文字、記号、図形等の表示記録に沿って物理的に、或いは化学的に組織を変質させ、この変質によって表現することから、材料の再利用に当ってリサイクル処理する場合、シールの取り除きや、接着剤の除去作業を要することなく使用済み保護カバーをそのまゝ粉砕処理する等リサイクル処理に回すことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の様に、発明は使用済み保護カバーをリサイクル処理にそのまゝ回して処分することができるため、効率的に処理できると共に、カバーにはシールや接着剤の付着がないので純度を保つことができ再利用材料であっても大きな物性乃至品質の低下を来たすことがなく新規材料に近い状態で再利用に向けられる利点がある。
【0021】
また、本発明はシールによって識別表示するのではなく保護カバーの表面に直接レーザー光の照射によって表現することから多数の放熱孔を分散して穿つ領域にも識別表示は可能である。従って、従来シールの貼り付けによって放熱孔の開設が不可能であったところにも可能となったことから、保護カバーの最適位置に放熱孔を開設することができる。
次に、本発明を実施の形態に従って説明し、更にその特徴とするところを明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1乃至図5は本発明に係る保護カバーの実施の形態を示したものである。ここに示される保護カバー1はパチンコ遊技機の遊技を制御するためパチンコ遊技機の背面、具体的には着脱自由に取付けられる図示しない遊技盤の背面に設置される遊技制御回路用の基板2を被うものであり、図4に示したように下カバー3と組合って回路ボックス4を構成し、上記基板2を包み込むものとなる。
【0023】
この保護カバー1は、光透過性を有する合成樹脂材料、ここでは透明なポリカーボネートを使用して浅い箱形に形成してあり、下面の開口部の周縁から外に向けて鍔形の取付片を延設し、この取付片5の下面に制御回路基板2の周縁部の上面を添わせ、その下面から貫き通すビス6を前記取付片5に予め形成するネジ受部7に揉み込むことでこの両者を一体に組付けられるようにしてある。 尚、制御回路基板2には目的に応じたCPU,ROM等の制御素子や抵抗部品等の電気部品8,9,10が一体に組付けられる。
【0024】
図中、11は保護カバー1の上面に設けた前記制御回路基板2の内容を表示する識別表示領域を示し、12はこの識別表示領域の表面部分に表わした表示記録であり、13は背面側に形成したなし地加工によって形成した粗雑面である。
上記表示記録12は表示する内容によって文字であり、記号であり、図形となるが、ここでは図6に拡大して示したようにパチンコ遊技機の機種名と、使用電力表示、製造者名、接続端子表示等を表示することから文字及び記号を表示するものとしている。
【0025】
上記表示記録は図3、図4に示した如くレーザーマーカー装置14によるレーザー光を保護カバー1の識別表示領域11に照射することによって記録される。
本実施における上記レーザーマーカー装置14は、YVO(イットリュウム・バナジウム酸塩)の結晶を用いた固体レーザーマーカー装置を使用しており、識別表示領域11の表面にレーザー光を直接照射して熱エネルギーに変換し、局部的に発生する熱を利用して文字、記号の線を表わし記録するようにしている。
レーザー光を照射された保護カバーの表面は熱によって材料自身の組織変化を起して黒色に発色して透明な素材の表面に文字、記号を表わすことになる。
【0026】
前記保護カバー1の裏面側に形成される粗雑面13は素材(合成樹脂)の透明性を消して半透明乃至不透明とするもので、例えば金属表面に微細な模様を付けるシボ加工を施す如くして、ここではなし地加工によって保護カバー1の成形時に、これの形成金型を利用して同時に形成するものとしている。
この粗雑面13は、前記表面側にレーザー光によって形成される文字、記号が制御回路基板2の表面の着色乃至はこの表面に植設される前記電気部品8,9,10に紛れて不鮮明になるのを回避するための処置であり、実質的に白色に近い状態が作られることによって上記制御回路基板2の表面、及びこれに植設される電気部品が見えなくなること、つまり不透明部分となるのを背景にして文字、記号を鮮明にし、視認し易くしているのである。
【0027】
この識別表示領域11の粗雑面13は領域11の裏面全面に形成しても、また表示される文字、記号に当る部分に限って形成してもよいが、保護カバーを透して外部から制御回路基板2を確認する必要から、この確認を全面的に阻害する範囲に亘って形成することは避ける必要がある。
【0028】
ところで、図面の符号15は保護カバーの適所に開口させた放熱孔であり、16は取付片5に開設した接続端子の複数個の取出口である。
上記放熱孔15は多数の小孔からなっており、ここでは保護カバー1の表面部1aの隅部に形成してあるが、本発明においてはこの放熱孔15が前記識別表示領域11に掛って形成されてもよいものとなっている。
この場合、表示する文字、記号と放熱孔15とが大きさにおいて一致し、或いは放熱孔の口径が大であると文字、記号の表示が部分的に欠落し判読できない状態になったり、表示不能になったりするので、文字、記号を放熱孔を外した孔と孔の間、或いは孔径より大きく表示することになる。
【0029】
本発明に係る保護カバーは上述のように構成されることから、保護カバー1の表面に紙或いは合成樹脂フィルム等からなるシールが貼り付けられたり、接着剤が付着することがなく、強いて言うならば極めて微量のレーザー光による変質部が残る程度であるので再利用のため再生処理した場合、使用合成樹脂をそのまゝ回収することができることになる。
【0030】
また上述の様に識別表示を保護カバーの材料によって直接表示することから、シールの剥離作業や接着剤の除去作業を要しないためリサイクル作業が極めて容易になり、作業効率を挙げることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る保護カバーの平面図。
【図2】保護カバーの識別表示領域に粗雑面を形成することを説明する平面図。
【図3】保護カバーに対しレーザーマーカー装置によって識別表示を施す状態を説明する斜視図。
【図4】図3のA−A線に沿って断面とした拡大縦断面図。
【図5】保護カバーの識別表示領域内の識別表示と粗雑面との関係を説明する平面図。
【図6】識別表示領域内に表示される識別表示の拡大平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 保護カバー
2 制御回路基板
11 識別表示領域
12 識別表示
13 粗雑面
14 レーザーマーカー装置
15 放熱孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する合成樹脂を材料に製造される制御回路基板を被覆する保護カバーにあって、該保護カバーの識別表示領域の表面若しくは裏面にレーザーマーカー装置によりレーザー光を照射し、前記合成樹脂材料を物理的若しくは化学的に変質させ、該変質により所定の文字、記号、図形等の表示記録を表現し、識別表示部を形成することを特徴とした制御回路基板の保護カバー。
【請求項2】
請求項1の記載において、保護カバーの識別表示領域は保護カバー内部の蓄熱を放出する放熱孔を穿つ領域を含んで設けられることを特徴とした制御回路基板の保護カバー。
【請求項3】
光透過性を有する合成樹脂を材料に製造される制御回路基板を被覆する保護カバーにあって、該保護カバーに設定する識別表示領域は裏面を粗雑面に形成して半透明乃至不透明とする一方、該識別表示領域の表面にレーザーマーカー装置によるレーザー光を照射して前記合成樹脂材料を物理的若しくは化学的に変質させ、該変質により所定の文字、記号、図形等の表示記録を表現し、識別表示部を形成することを特徴とした制御回路基板の保護カバー。
【請求項4】
請求項3の記載において、識別表示領域裏面の粗雑面はシボ加工によって形成されることを特徴とした制御回路基板の保護カバー。
【請求項5】
請求項4の記載において、シボ加工はなし地加工であることを特徴とした制御回路基板の保護カバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−6848(P2006−6848A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192207(P2004−192207)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】