説明

制御性T細胞のINVIVOにおける増殖

TNF受容体スーパーファミリーメンバー25(TNFRSF25、DR3)に特異的な組成物は、制御性T細胞を制御することによって免疫応答を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府からの資金援助による研究についての記述
本発明は、国立癌研究所(National Cancer Institute)により授与された助成金番号5PO1CAl09094−03、および国立アレルギー・感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases)により授与された助成金番号5RO1AI061807−05の下で、米国政府の資金援助によって為された。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる、2009年8月3日に提出された米国仮出願第61/273,299号に基づく優先権を主張する。
【0003】
本発明の実施形態は、in vivoでT細胞を制御する組成物および方法に関する。特に、該組成物および方法によってヒトCD4FoxP3細胞が制御される。
【背景技術】
【0004】
腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)は、リンパ系および非リンパ系細胞の両方に差次的かつ時間的に発現する、少なくとも19のリガンドおよび30の受容体(TNFRSF)からなる。CD3T細胞において、TNFSFシグナルは、極性化、増殖、エフェクター機能、減少、メモリー、および細胞死を含む免疫応答の様々な段階を支持するために、抗原に特異的および非特異的な両方の方法で機能する。TNFSF15(TL1A)はTNFRSF25(DR3、以下TNFR25と称する)のリガンドであり、これはデスドメインを含むTNFR25の細胞質側末端を通してTRADDまたはFADDのシグナル伝達カスケードを開始することにより、TNFR25を発現するTおよびNKT細胞を正または負に調節することができる。TNFR25のシグナル伝達は、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、および関節リウマチ(RA)を含む様々な自己炎症性状態において観察される病態に重要な役割を果たす。抗体によるTL1Aの遮断によってマウスの急性喘息を阻止することができ、またTNFR25の遺伝子ノックアウトによってEAEまたはRAの実験モデルにおける病的現象は著しく減少する。TL1Aは、NKT、Th2、およびTh17細胞の極性化、分化、およびエフェクター機能を増大させることによって、これらの疾病を進行させる。
【発明の概要】
【0005】
本概要により、本発明の性質および内容を簡単に示す、本発明の概要を提示する。これは請求項の範囲または意味を限定するために用いられるものではないことの理解と共に提示される。
【0006】
CD4T細胞上に恒常的に発現するTNF受容体スーパーファミリーメンバー25(TNFRSF25、DR3)を通したシグナル伝達により、T2およびT17サイトカインの産生は増大し、喘息、炎症性腸疾患、多発性硬化症(MS)、実験的自己免疫性脳脊髄炎、および関節リウマチの疾患モデルに病的炎症を起こす。
【0007】
好ましい実施形態では、TNFRSF25のシグナル伝達を調節する薬剤によって免疫細胞応答が調節される。これらの薬剤により、疾病およびその状態に対する新規な治療法が提供される。例えば、TNFRSF25のアゴニストは投与後4日以内にCD4FoxP3細胞の迅速かつ広範なin vivoでの増殖を導き、これは全てのCD4細胞の30〜35%となった。CD4FoxP3細胞の増加は、高レベルのGITRおよびCD103を発現するCD4FoxP3CD25細胞の増殖によるものであった。TNFRSF25アゴニストによって増殖したCD4FoxP3細胞は、ex vivoでTGF−βに依存する抑制活性を保持していたが、これは持続するTNFRSF25のシグナル伝達によって無効になった。TNFRSF25のシグナル伝達は、エフェクター細胞の応答の調節に加えて、制御性T細胞の増殖および活性のコントロールを通し、炎症性応答の誘導および回復の両方に重要な役割を果たしている。
【0008】
本発明のその他の態様については以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1A〜1Cは、TNFR25がCD4FoxP3細胞のin vivoでの迅速な増殖を刺激することを示した図である。図1A:従来型および制御性T細胞におけるTNFR25、GITR、OX40、および4−1BBの差次的発現。未処理のFIRマウスの脾細胞から得た、高度に精製したCD4FoxP3(Tconv)およびCD4FoxP3TregにおけるTNFRSFの発現をフローサイトメトリーにより決定した。図1B:4C12注射後の、末梢血中のCD4FoxP3Treg細胞の動態および用量依存性の増殖。FoxP3−RFPレポーター(FIR)マウスに、表示する量の精製した4C12を腹腔内(i.p.)注射した。マウスからは毎日採血を行い、末梢血液細胞中のFoxP3−RFPの発現をフローサイトメトリーにより分析した。図1C:その他のTNFRアゴニスト抗体による処理後に、Tregの増殖を比較した。0日目に、表示する抗体(100μg)をマウスへi.p.注射した。図1Bのようにマウスからは6日間毎日採血を行い、4日目の末梢血中の全CD4T細胞のうちのTregのパーセンテージを示す。これらのデータは、独立した8回の実験において再現された。エラーバーは平均±SEMを示す。有意性はスチューデントt検定(図1B)、またはチューキー事後検定付きの一元配置ANOVA(図1C)により決定した。はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【図2】図2A〜2Fは、TNFR25により誘導されるTregの増殖にはTCRおよびIL−2のシグナル伝達が必要であることを示した図である。FIRマウスからのCD4細胞をFACSソーティングによって高度に精製し、MHCII−/−またはCD4−/−マウスへ養子移入した。養子移入後、レシピエントマウスを4C12またはアイソタイプのコントロール抗体によって処置し、抗体処置後4日目にFoxP3−RFP陽性細胞のパーセンテージ(図2A)および絶対数(図2B)を分析した。FIRマウスを、方法に記載するように、シクロスポリンA(図2C)もしくはFK506(図2D)またはビヒクルコントロールのi.p.注射によって1〜4日処置した。マウスを4C12抗体またはIgGコントロール抗体で処置し、4日目に末梢血中の全CD4細胞に対するFoxP3−RFP陽性細胞の割合を分析した。4C12またはアイソタイプコントロール抗体による処置後4日目に、IL−2受容体ベータ欠損マウス(図2E)またはCD80/86−/−マウス(図2F)の全CD4脾細胞のうちのCD4FoxP3細胞の割合を、C57BL/6コントロールマウスに比較して分析した。これらのデータは、1実験あたりの1群あたり≧3のマウスを用いた、少なくとも2回の独立した実験の平均±S.E.M.として表す。**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【図3】図3A〜3Eは、TNFR25により増殖したTregではIL−2に対する応答が亢進しており、Aktの活性化が必要とされることを示した図である。図3A:コントロールIgGまたは4C12抗体による処置後4日目にFIRマウスからCD4FoxP3細胞を精製し、表示する量のIL−2と共にin vitroでインキュベートした。培養3日目に、CD4FoxP3細胞の増殖をトリチウム標識チミジンの取り込みによって測定した。図3B:CD4FoxP3細胞を(図3A)のように精製し、IL−2Rγ(CD132)またはIL−2Rβ(CD122)の表面発現をフローサイトメトリーによって決定した。図3C:IgGまたは4C12抗体による処置後4日目のFIRマウスから精製したCD4FoxP3細胞を、in vitroで10ng/mlのIL−2によって処理し、15分後にpSTAT5の発現を分析した。FIRマウスを、方法に記載するように、1日1回のラパマイシン(図3D)もしくは1日2回のAkt阻害剤V(図3E)またはビヒクルコントロールのi.p.注射によって1〜4日処置した。マウスを0日目に4C12またはコントロールIgG抗体で処置し、4日目に末梢血中の全CD4細胞に対するFoxP3−RFP陽性細胞の割合を分析した。これらのデータは、1実験あたりの1群あたり≧2のマウスを用いた、少なくとも2回の独立した実験の平均±S.E.M.として表す。nsは有意差のないことを示し、***はp<0.001を示す。
【図4】図4A〜4Eは、TNFR25によるin vivoでのTregの増殖がアレルギー性喘息における炎症を阻害することを示した図である。アレルギー性喘息は、材料と方法に記載するように、ova/ミョウバンによる免疫誘導とそれに続くova/PBSによるエアロゾル曝露によって誘導した。図4A:4C12またはアイソタイプコントロール抗体による処置後に末梢血を採取し、ova/ミョウバンにより免疫誘導したマウスの全CD4T細胞のうちのCD4FoxP3細胞画分を、免疫誘導していないマウスとの比較において分析した。データは平均±SEMを示す。図4B:全肺細胞を採取し、フローサイトメトリーによって分析した。表示する各細胞集団の総数を示す。データは平均±SEMを示す。図4C:全CD4T細胞のうちのCD4FoxP3Tregのパーセンテージを示す。図4D:記載するように、ova/PBSによるエアロゾル曝露から3日後に気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。好酸球の総数を示す。データは平均±SEMを示す。図4E:全肺細胞から全RNAを抽出し、RT−PCRに使用した。4C12またはアイソタイプコントロールにより処置したマウスにおけるIL−4、IL−5、およびIL−13の発現レベルを、生理食塩水によってエアロゾル曝露したコントロール肺細胞に比較して示す。図4F:肺を採取して薄切し、組織切片を作製した。各処置群について、H&E(左パネル)およびPAS(右パネル)を得た。代表的な像を示す。これらのデータは、独立した4回の実験において少なくとも3マウス/群/実験により反復した。図4G:方法に記載するように、Image Jソフトウェアを用いてPAS染色した切片を定量化した。各≧5マウスである別々の2回の実験から、2つの代表的な像を定量化した。統計的有意性は、チューキー事後検定付きの一元配置ANOVAにより決定した。表示するように、IgG群または生理食塩水コントロール群に比較した4C12またはIACのいずれかについて、はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【図5】図5A〜5Fは、TNFR25の刺激が、現存のCD4FoxP3CD25int細胞の増殖を誘導することによって、in vivoでのTregの増殖を導くことを示した図である。図5A:FIRマウスを0日目にIgGまたは4C12で処置し、4日後に脾細胞を収集してフローサイトメトリーにより分析した。表示する処置後4日目にマウスから採取した末梢血液細胞の代表的なフローサイトメトリープロット。図5B:表示する処置後4日目の脾細胞におけるCD25hi対CD25intTregの平均的比率。図5C:CD4、FoxP3細胞に予めゲートをかけた代表的なドットプロットを示す。パーセンテージは、CD4FoxP3細胞の全画分に対する各表現型の割合を示す。図5D:図5Aに記載する処置後の、CD25hiおよびCD25intTregの間でのKi67またはKi67の平均的割合を示す。データは平均±SEMである。図5E:CD4FoxP3および図5F:CD45.2FlRマウスからCD4FoxP3細胞を>99%の純度によって選別し、各サブセットから2×10の細胞をCD45.1コンジェニックB6−SJLマウスへ養子移入した。24時間後、マウスに各20mgの4C12またはIgGをi.p.注射した。図5E、12G:CD4FoxP3および(図5F、5H)CD4FoxP3細胞のコンジェニックCD45.1 B6−SJLマウスへの移入。図5E、5F:養子移入後5日目の、CD4細胞のうちのCD45.2およびRFP(FoxP3)細胞のパーセンテージを示すヒストグラム。図5G、5H:4C12またはハムスターIgGによる処置後の、移入細胞の減少の動態。ホストCD45.1CD4FoxP3細胞のうちの移入細胞(CD45.2CD4)のパーセンテージ(図5E)、またはホストCD45.1CD4細胞のうちのCD45.2CD4FoxP3のパーセンテージ(図5F)を示す。エラーバーは、2回の独立した実験それぞれの、各1群あたり3マウスの平均パーセンテージ±SEMを示す。はp<0.05を示し、**はp<0.01を示す。
【図6】図6A〜6Fは、in vivoで増殖したTregの抑制活性を示した図である。4C12およびIgGアイソタイプコントロールを注射したマウスから4日後にCD4FoxP3Treg細胞を選別し、TconvとしてのCD4FoxP3CD25細胞および可溶性α−CD3(2μg/ml)を用いる標準的なin vitro抑制アッセイに72時間供した(96ウェル、丸底プレート)。アッセイは、様々な比率のTreg:Tconv(図6A、6B)を用いて、1:1の抗原提示細胞(APC)の非存在(図6A、6C)または存在(図6B、6D)下に行った。図6Cおよび6Dにおいて、抑制アッセイにIgG、4C12、またはDTA1(10g/ml)抗体を添加した。Treg:Teff比は、一定の1:2の比率を保持した。図6E:TNFR25ドミナントネガティブ(DN)マウス由来のTeff細胞およびwtマウス由来のTreg細胞を用いた。抑制アッセイにIgGまたは4C12抗体(10μg/ml)を添加した。Treg:Teff比は1:2である。図6F:IgGまたは4C12を注射したマウス由来のCD4CD25hiおよびCD4CD25intTreg細胞を用いた。アッセイをシンチレーションカウンターで分析する6時間前にHチミジンを添加した。パーセント増殖は、表示する条件について得られたカウントを用いて、Tregが存在せず、Teffを含むウェルから得られた総カウントのパーセンテージとして算出した。データは、1実験あたりの1群あたり>6マウスを用いた、独立した2実験それぞれの各条件について、≧4サンプルの平均±SEMとして表した。
【図7】図7A、7Bは、4C12または組み換えIL−2/抗IL−2抗体複合体(IAC)を用いた処置によって増殖したTregの比較を示した図である。図7A:FIRマウスを、0日目に4C12(10μg)によって処置するか、または0〜2日目にIACの一連の3回の注射によって処置した。末梢血中のCD4T細胞集団内のFoxP3細胞の割合をフローサイトメトリーによって毎日測定した。図7B:IAC、4C12、またはアイソタイプコントロールIgGによる処置後4日目に、FIRマウス4から脾細胞を分離した。CD25および増殖マーカーKi67を発現するCD4FoxP3細胞の割合を示す。
【図8】図8A〜8Dは、4C12による処置が、分析した全ての組織においてTregの増殖を誘導することを示した図である。図8A:CD4およびFoxP3(RFP)を染色した、典型的なフローサイトメトリードットプロットの例。図8B〜8Dに示すように、後のCD25hiおよびCD25int細胞の分析のため、象限Q2−1のCD4FoxP3細胞にゲートをかけた。図8B:GITRの比率、および図8C:表示する処置から4日後の脾細胞における、CD25hi対CD25intTregのCD103の発現。図8D:データは、1実験あたりの1群あたり少なくとも3マウスを用いる、8回の独立した実験の平均±SEMとして表す。対の分析はスチューデントT検定を用いて行った。**はp<0.01を示し、***はp<0.001を示す。
【図9】図9A〜9Bはソーティング計画と得られた結果の一例を示した図である。図9A:FIRマウスから脾細胞を収集し、CD4T細胞を濃縮して、CD4およびFoxP3(RFP)に基づいて選別した。左パネルに、脾細胞の典型的なCD4濃縮集団を示す。中央および右パネルに、CD4FoxP3(P3ゲート)およびCD4FoxP3(P4ゲート)集団に対する代表的な選別後の分析を示す。図9B:幾つかの実験のために、CD4FoxP3細胞(ゲートP3)をCD25の発現に基づいて選別した。CD25hiおよびCD25intの選別に対するゲーティング計画を表す代表的なプロットを示す。
【図10】図10A〜10Eは、TNFRSF25アゴニストが、クローン病のマウスモデルである、デキストラン−硫酸ナトリウム誘導性大腸炎から保護し得ることを示した図である。C57BL/6マウスまたはTL1Aノックアウトマウスに、3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を溶解した飲料水を7日間自由に摂取させた。幾つかの実験では、実験0日目にマウスをIgGアイソタイプコントロール抗体またはTNFRSF25アゴニスト抗体であるクローン4C12により処置した。DSSを供給する4日前(実験−4日目)に始まり、体重を毎日モニターした。−4日目にマウスの1群をTNFRSF25アゴニスト抗体であるクローン4C12の腹腔内注射(20μg/マウス)によって処置し、その他のマウスはハムスターIgGアイソタイプコントロール抗体によって処置した。動物が開始時の体重を≧20%減少させた時点で死亡率を測定した(図10A)。幾つかの実験では、実験5日目に動物を屠殺し、急速冷凍してPBSで洗浄した大腸組織からRNeasy miniprep kit(Qiagen)を用いて全RNAを調製した。続いてRNAの逆転写を行い(Quantitect RT、Qiagen)、表示する転写物に対するTaqman(Applied Biosystems)プローブを用いたリアルタイムPCRによってcDNAを増幅した(図10B)。データは、TL1Aノックアウトマウスにおける発現をC57BL/6コントロールマウスに比較した倍率変化によって示す。各実験ごとに、実験の全過程にわたって体重減少のパーセンテージをモニターし、プロットした(図10C)。実験5日目にRNA分離のために動物を屠殺した実験では、制御性T細胞プールの指標となる転写因子FoxP3を発現するCD4細胞の割合をフローサイトメトリーによって分析するために、腸間膜リンパ節を分離した(図10D)。最後に、図10Bに記載するように、表示する処置群から分離したRNAを用いて逆転写を行い、表示する転写物に対するRT−PCRに供した。エラーバーは1実験あたり≧3マウス、1パネルあたり最少で2実験の平均±S.E.M.を示す。
【図11】図11は、TNFRSF25アゴニストが、マウスの異所性心臓移植モデルにおける同種異系心臓の急性拒絶反応を遅延させることを示した図である。4C12によって増殖した天然型Tregによる寛容性の誘導について試験するため、寛容性試験について十分に記載されている異所性心臓移植モデルを用いた。0日目に、CBA/Jマウス(H2)の心臓をC57BL/6マウス(H2)の腹部へ移植した。−4日目にマウスの1群をTNFRSF25アゴニスト抗体であるクローン4C12の腹腔内注射(20μg/マウス)によって処置し、その他のマウスはハムスターIgGアイソタイプコントロール抗体によって処置した。移植時に、4C12処置群の血中におけるTregの増殖を確認した。心臓を用手で触診することによって同種移植片の生存をモニターし、脈拍を0〜4(0=脈拍なし;1=非常に弱い;2=弱い;3=中程度;4=強い)のスケールで類別した。拒絶は、心臓拍動の触知不可能として定義した。拒絶時(=心臓拍動の停止時)に移植片を除き、ホルマリン固定後に病理検査へ供した。移植から48時間以内に移植片の機能が失われた時には技術的な失敗とみなし(<5%)、その後の分析を行わなかった。
【図12】図12は、TNFRSF25アゴニストは制御性T細胞のうち天然のものを選択的に増殖させるが、誘導されたものは増殖させないことを示した図である。FoxP3−RFPレポーター遺伝子を発現するマウスからCD4FoxP3T細胞を分離し、IL−2、TGFベータ、抗CD3抗体、およびレチノイン酸の存在下にin vitroで5日間、標準的なプロトコルに従って培養した。培養の終わりに、生存細胞には70−85%のCD4FoxP3RFP誘導性の制御性T細胞(iTreg)を含むCD4集団が含まれた。これらの細胞を高速細胞ソーティングによって精製した。同時に、FoxP3−GFPレポーター遺伝子を発現するマウスから全CD4細胞を分離した(従って、これらの細胞はiTregおよびいわゆる胸腺由来の天然型制御性T細胞(nTreg)を含む)。iTreg(6×10のiTreg細胞を、8×10のTregを含むFoxP3−GFPマウスから分離した全CD4細胞と混合した)を、CD4−/−レシピエントマウスに養子移入(静脈内注射により)した。2日後に、RFP陽性iTregおよびGFP陽性nTregを含むCD4−/−レシピエントマウスを、4C12またはIgGアイソタイプコントロール抗体によって処置した(20μg/マウス、腹腔内注射による)。5日後に、RFP陽性iTregおよびGFP陽性の全Treg(nTregを唯一の源として含む)の割合を、分離した脾細胞のフローサイトメトリーにより決定した(図12)。
【0010】
詳細な説明
本発明は、類似または同等の要素を指定するために図面を通して参照数字が用いられるように、添付の図面への参照によって記載される。図面は一定の基準のために描かれたものではなく、単にその場での発明を例証するために提供される。以下に記載する本発明の幾つかの態様は、例証のために実施例応用への参照により記載される。多くの特定の詳細、関連性、および方法は、本発明の完全な理解のために示されることが理解されなければならない。しかしながら関連する技術分野における当業者は、1以上の特定の詳細なしで、または他の方法によって、本発明を実行できることを容易に認識するであろう。幾つかの行為は、異なる要求において、かつ/またはその他の行為もしくは現象と同時に起こり得ることから、本発明は例証される行為または現象の要求によって限定されるものではない。さらに、本発明に従う方法論を実行するために、例証される行為または現象の全てが必要とされるものではない。
【0011】
本明細書に開示される全ての遺伝子、遺伝子名、および遺伝子産物は、本明細書に開示される組成物および方法が応用できるいずれの種に由来するホモログにも相当することが意図される。従って、これらの語には、ヒトならびにマウス由来の遺伝子または遺伝子産物が含まれるが、限定されるものではない。特定の種に由来する遺伝子または遺伝子産物について開示される場合、この開示は例証のみを意図していること、および文脈中で明らかに指示されるとみられる場合を除き、限定的に解釈されてはならないことを理解されたい。従って例えば、その他の哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、および鳥類を含むがこれらに限定されないその他の動物に由来する、相同的な、および/またはオルソロガスな遺伝子もしくは遺伝子産物を包含することが意図された哺乳類の核酸およびアミノ酸配列に関する幾つかの実施形態では、本明細書に開示される分子、例えば4C2はマウスに限定されず、ヒト抗体が好ましい。好ましい実施形態では、遺伝子または核酸配列はヒトのものである。
【0012】
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に用いられる辞書で定義されるような語は、関連技術の文脈内でのそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、かつ、本明細書中で明確にそのように定義されない限り、理想的な、または過度に型にはまった意味で解釈されてはならないことがさらに理解されるであろう。
【0013】
定義
本明細書の専門用語は特定の実施形態のみを記述する目的のために用いられ、本発明を限定しようと意図するものではない。文脈に明らかに他の指示がない限り、本明細書で用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は複数形も同様に含むことが意図される。さらに、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has))」、「と共に(with)」、またはその変異形の語が詳細な説明および/または請求項のいずれかで用いられる範囲で、これらの語は「含んでなる(comprising)」の語と同様に包括的であることが意図される。
【0014】
「約」または「おおよそ」の語は、当業者により決定された特定の値についての許容される誤差範囲を意味し、これは値がどのように測定または決定されたかということ、すなわち測定系の限界に部分的に依存し得る。例えば「約」は、当該技術分野における実践あたりの、1以内または1を超える標準偏差を意味する。あるいは「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%まで、なおさらに好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたは過程に関する際、この語は規模の桁の範囲内を意味することができ、好ましくは値の5倍以内、さらに好ましくは2倍以内である。本出願および請求項に特定の値が記される際、他に記載のない限り、「約」は特定の値の許容される誤差範囲内を意味すると想定されるべきである。
【0015】
「制御性T細胞」、すなわち「Treg細胞」または「Tr細胞」は、T細胞応答を調節することのできる細胞を指す。Treg細胞は転写因子Foxp3を発現するが、これはT細胞の活性化によって発現増加せず、活性化エフェクター細胞からTregを区別する。Tregは、細胞表面マーカーのCD25、CTLA4、およびGITRによって同定される。自己免疫および慢性炎症性応答の阻害能を有し、腫瘍を有するホストにおいて免疫寛容を維持する、幾つかのTregサブセットが同定された。これらのサブセットには、インターロイキン10(IL−10)を分泌するT制御性タイプ1(Tr1)細胞、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)を分泌するTヘルパータイプ3(Th3)細胞、および「天然型」CD4/CD25Treg(Trn)が含まれる(Fehervari and Sakaguchi.J.Clin.Invest.2004,114:1209−1217;Chen et al.Science.1994,265:1237−1240;Groux et al.Nature.1997,389:737−742)。
【0016】
本明細書において「TNFR25アゴニスト」、「TNFR25薬剤」、「TNFR25組成物」は互換的に用いられ、これはTNFR25受容体に結合して、TNFR25受容体を発現する細胞に、天然のTNFR25リガンド、例えばTL1Aへの該細胞の曝露によって観察され得る応答と同様の応答を引き起こす物質を指す。アンタゴニストもまた受容体に結合し得るが、受容体を活性化できず、実際には内在性または外来性のアゴニストによる活性化を完全または部分的に遮断するという意味において、アゴニストはアンタゴニストの反対である。部分的アゴニストは受容体を活性化するが、完全なアゴニストにより引き起こされるほどの生理的変化は起こさない。あるいは、TNFR25アゴニストのもう一つの例は、TNFR25に結合し、活性化することのできる抗体である。抗TNFR抗体の一例は4C12(アゴニスト)である。(マイアミ大学に代わり、ブダペスト条約の下に寄託される;ATCC(登録商標)による種子/株の受領日:2009年5月5日;ATCC(登録商標)特許寄託指定:PTA−10000。寄託者による識別の参照:ハイブリドーマ細胞株;4C12;寄託物は2009年6月4日に試験され、この日に種子/株は生存していた。国際寄託当局:アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC(登録商標))、マナッサス、バージニア州、米国)。
【0017】
本明細書において「TNFR25アンタゴニスト」はTNFR25受容体の正常な生理的機能を阻害する物質を指す。このような薬剤は、TL1Aのような内在性の受容体アゴニスト/リガンドのTNFR25受容体への結合に干渉することによって作用する。
【0018】
TNFR25アンタゴニストまたはアゴニストは、アプタマーの形であってよい。「アプタマー」は、その他の分子に結合するそれらの能力に基づいて無作為のプールから選択されたDNAまたはRNA分子である。アプタマーは標的分子に特異的に結合し、ここで核酸分子は、その天然の設定において標的分子により認識される配列を含んでなる配列を有する。あるいはアプタマーは、標的分子が天然では核酸に結合しない、該標的分子に結合する核酸分子であってもよい。標的分子は、関心のあるいずれの分子であってもよい。例えば、アプタマーをタンパク質のリガンド結合ドメインに結合させ、それによって天然のリガンドとタンパク質との相互作用を妨げるために用いることもできる。これは限定されない例であり、当業者は、当該技術分野において一般に公知である技術を用いて他の実施形態を容易に生み出せることを認識するであろう(例えば、Gold et al.,Annu.Rev.Biochem.64:763,1995;Brody and Gold,J.Biotechnol.74:5,2000;Sun,Curr.Opin.Mol.Ther.2:100,2000;Kusser,J.Biotechnol.74:27,2000;Hermann and Patel,Science 287:820,2000;およびJayasena,Clinical Chem.45:1628,1999を参照)。
【0019】
本明細書で用いられる「抗体」の語は、ヒトを含む全ての種に対して包括的であり、ヒト化抗体および抗原性の標的、例えばTNFR25はいずれの種由来であってもよい。従って抗体、例えば抗TNFR25は、マウス抗ヒトTNFR25、ヤギ抗ヒトTNFR25;ヤギ抗マウスTNFR25;ラット抗ヒトTNFR25;マウス抗ラットTNFR25などであってよい。特定の種において、別の種由来の、またはある場合には同じ種由来の(例えば、自己免疫性または炎症性応答における)抗原標的、例えばTNFR25に対して産生された抗体の組み合わせに制限はなく、本発明では全ての種が具体化される。抗体の語は最も広範な意味で用いられ、これには完全に構築された抗体、モノクローナル抗体(ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および抗原に結合できる抗体断片(例えばFab’、F’(ab)、Fv、単鎖抗体、二重特異性抗体)が含まれ、これらが望まれる生物学的活性を示すものであれば、前述のものの相補性決定領域(CDR)を含んでなる。
【0020】
「標的分子」は、タンパク質、炭水化物、酵素、多糖、糖タンパク質、受容体、抗原、抗体、増殖因子を含むいずれかの高分子を含むか;またはホルモン、基質、代謝産物、補助因子、阻害物質、薬物、色素、栄養素、殺虫剤、ペプチドを含むいずれかの低有機分子であってよいか;または金属、金属イオン、金属酸化物、および金属複合体を含む無機分子であってよいか;細菌、ウイルス、および原生動物のような単細胞真核生物を含む生命体の全体であってもよい。
【0021】
状況、疾患、もしくは状態を「処置する」またはそれらの「処置」には:(1)状況、疾患、もしくは状態にかかっている可能性があるかまたはかかりやすいが、その状況、疾患、もしくは状態の、臨床または無症候性の症状をまだ経験していないか示していない、哺乳類において発生する状況、疾患、もしくは状態の臨床または無症候性の症状の出現を阻止または遅延させること;または(2)状況、疾患、または状態を阻害すること、すなわち疾病もしくはその再発(維持処置の場合)またはその少なくとも1の臨床もしくは無症候性の症状の発生を抑止、減少、または遅延させること;または(3)疾病を軽減すること、すなわち状況、疾患、もしくは状態またはその少なくとも1の臨床もしくは無症候性の症状を後退させることが含まれる。処置される被験体にとっての利点は、統計的に有意であるか、または少なくとも患者または医師に知覚される。
【0022】
「患者」または「被験体」は哺乳類を指し、ヒトおよび獣医学の被験体を含む。
【0023】
「予防的に有効な量」は、望ましい予防的結果を達成するための、投薬量における、および必要な期間の間に有効な量を指す。典型的には、予防的な用量は、疾病の前かまたは早い段階で被験体に用いられることから、予防的に有効な量は治療上有効な量よりも少ない可能性がある。
【0024】
免疫応答の調節
CD4T細胞サブセットの特性:CD4T細胞の活性化および増殖によって、異なるサイトカインプロファイルおよび特徴的なエフェクター機能を有する、異なるTヘルパー(T)細胞が発生する。侵入する病原体に対するホストの防御に最も適したT細胞のエフェクター細胞への適切な分化は、免疫系にとって決定的に重要である。CD4T細胞は、少なくとも4の既知のサブセット、3のエフェクターサブセット(T1、T2、およびT17)、および1のT制御性サブセット(Treg)に分化する。T細胞は、それらが産生するサイトカインに基づいて歴史的にT1およびT2細胞に分類されたが、これによって、自然免疫系の細胞により生み出された特異的なサイトカイン環境がどのように適応免疫の発生を導くかについて理解するためのフレーム構造が提供された。IL−12を分泌する樹状細胞(DC)により強力に誘導されるT1細胞は、系列特異的な転写因子T−bet(T box 21)の発現およびIFN−γの産生により特徴付けられる。分化の間IL−4に依存し、IL−12を欠如するT2細胞は、IL−4、IL−5、IL−9、およびIL−13を産生し、転写因子GATA−3の発現により特徴付けられる。重要なことには、過去5年の間に、T17細胞と呼ばれるIL−17を産生するエフェクターTヘルパー細胞による第3のサブセットが発見され、特徴付けられ、転写因子RORγtの発現によって特定化された。
【0025】
17細胞は、IL−17、IL−17F、およびIL−22を産生する。これらのエフェクターサイトカインを産生することにより、T17細胞は、IL−17およびIL−22受容体の広範な分布に起因する大規模な組織反応を誘導する。T17細胞はまた、IL−21も分泌して免疫系の細胞と連絡する。マウスおよびヒトにおいては、サイトカインであるトランスフォーミング増殖因子ベータアイソフォーム1(TGF−β)とインターロイキン(IL)−6との相乗作用によってT17細胞の発生が誘導されるが、IL−23はこれらの細胞の増殖を支持する。T17細胞の発生に関わる分化因子(TGF−βに加えて、IL−6またはIL−21)、増殖および安定化因子(IL−23)、ならびに転写因子(STAT3、ROR−γt(ROR−c)、およびROR−a)は、ごく最近同定された。TGF−βは、末梢の免疫区画においてナイーブT細胞のFoxP3Tregへの分化も誘導することから、T17細胞の分化におけるTGF−βの関与は、CD4CD25FoxP3制御性T細胞(Treg)に密接に関連するT17系列に与えられる。Treg細胞は免疫系の活性化を抑制するために作用するT細胞の特殊な亜集団であり、これによって自己抗原に対する免疫系の恒常性および寛容性を維持する。自己免疫疾患を抑制できるTreg細胞の発生は、自己免疫応答を含む免疫応答を駆動できるT17細胞と相反的に関連する。Treg細胞は、その独特な、転写因子であるフォークヘッドボックスP3(Foxp3)の発現により同定できる。重要なことには、これまでに知られている限り、CD4CD25Tregには表現型として同等な2つの集団−天然型および適応型が存在する。天然型CD4CD25Treg細胞は、胸腺内で、自己免疫からの保護のために恒常的な状態で発生する。適応型CD4CD25Treg細胞は、感染および癌のような炎症性過程において発生し、直接の接触またはIL−10およびTGF−βのような可溶性因子の産生を含む不均一な機構を通して免疫を抑制する。
【0026】
本明細書では互換的にデスレセプター3(DR3)と称される腫瘍壊死因子受容体25(TNFR25)は、T細胞機能の制御因子である。デスレセプター3(DR3)(Chinnaiyan et al.,Science 274:990,1996)はTNF受容体ファミリーのメンバーである。これはTRAMP(Bodmer et al.,Immunity 6:79,1997)、wsl−1(Kitson et al.,Nature 384:372,1996)、Apo−3(Marsters et al.,Curr Biol 6:1669,1996)、およびLARD(Screaton et al.,Proc Natl Acad Sci USA 94:4615,1997)としても知られ、典型的なデスドメインを含む。293細胞へのヒトDR3(hDR3)のトランスフェクションにより、アポトーシスおよびNF−κBの活性化が誘導された。ヒトDR3のmRNAには複数のスプライシング型が観察されることから、転写後レベルでの制御が示唆される(Screaton et al.,Proc Natl Acad Sci USA 94:4615,1997)。
【0027】
CD4FoxP3制御性T細胞(Treg)は、胸腺における負の選択を免れる自己反応性エフェクターT細胞の活性を抑制することができる。Tregは、IBD、喘息、およびEAEの実験モデルにおいて、自己免疫性の病態を阻止または遅延するために十分である。TNFR25のシグナル伝達は、in vitroでTregによるCD4CD25の阻害を遮断するが、抗原特異的なCD8細胞の阻害は遮断しない。興味深いことに、CD2プロモーターの下で完全長のTNFR25を発現するトランスジェニックマウスは、高レベルのT2およびT17サイトカインを発現し、二次リンパ組織での細胞充実性が減少する。TNFR25トランスジェニックマウスにおける、制御性T細胞の活性低下、細胞充実性の減少、およびサイトカイン産生の増大の同時発生により、TNFR25のシグナル伝達は、TNFR25のシグナルが受け取られた状況によって炎症促進性および抗炎症性の両方となり得ることが示唆される。
【0028】
簡単に述べると、本明細書で行われた実験により、in vivoでのTNFR25の刺激が、CD4FoxP3制御性T細胞プールの迅速かつ全身性の増殖を誘導するという、予想外の知見が示された。抗体(4C12)により誘導されたTregの増殖は、外来性抗原には依存せずに起こり、投与後4日以内に、全CD4細胞のうちのTregのパーセンテージに3〜4倍の増加をもたらした。このTregの増殖は主にCD4FoxP3CD25int細胞の増殖からもたらされ、持続的であり、2週間、無刺激のレベルまで減少しなかった。4C12により増殖したTregは、TGFβにより仲介されるエフェクターT細胞のサプレッサー機能をex vivoで保持したが;TNFR25のシグナル伝達の継続により、4C12により増殖したTregの抑制活性は無効となった。理論に制約されるものではないが、これらの知見により、TregにおけるTNFR25のシグナル伝達は、Tregの増殖の増大およびTregの抑制活性の阻害の二重の機能を有することが示唆される。TNFR25のシグナル伝達による、Tregによる抑制の阻害は高度に可塑性であり、TregにおけるTNFR25のシグナル伝達の除去または継続それぞれに従って、元に戻るかまたは維持され得る。T2およびT17による応答の共刺激因子としてのTNFR25の役割にこの情報を加えることで、免疫のシグナル伝達におけるTNFR25の役割は、炎症性応答を誘導する間にエフェクター細胞の機能を同時に増大し、炎症性刺激の除去に従って抑制活性を回復するTregのプールの局所的増殖を通して、炎症の消散を促進することであると示唆される。まとめると、これらの知見により、TNFR25を標的とした治療法は、それらが投与される炎症性の状況に応じて免疫の活性化を増大するかまたは阻害するために役立ち得ることが証明され、これは自己免疫疾患、慢性感染、移植、および癌の領域に対して広く影響する。
【0029】
好ましい一実施形態によれば、in vivoで免疫応答を制御する方法は、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)の機能を調節する少なくとも1の薬剤を、患者の必要に応じて患者に投与することを含んでなる。好ましい機能は、制御性T細胞(Treg)の増殖の誘導をもたらす、TNFRSF25により仲介されるシグナル伝達である。TNFRSF25分子の刺激により、免疫応答を抑制するTreg細胞が誘導される。しかしながらTNFRSF25分子の連続する刺激はTreg細胞の抑制活性を無効にするため、それによって免疫応答が制御される。
【0030】
CD4T細胞上にはTNF受容体スーパーファミリーメンバー25(TNFRSF25、DR3)が恒常的に発現しており、これを通したシグナル伝達によるT2およびT17のサイトカイン産生の増大が、喘息、炎症性腸疾患、多発性硬化症(MS)、および関節リウマチの疾病モデルにおける病的炎症に寄与する。
【0031】
好ましい実施形態によれば、in vivoでの免疫応答の制御によって、免疫応答に付随する疾病または疾患が処置される。このような疾病または疾患は、例えば:心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、肺、膵臓、小腸、肢、筋肉、神経、椎間板、気管、筋芽細胞、軟骨などのような臓器または組織の移植による拒絶反応;骨髄移植に続く移植片対宿主反応;関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、1型糖尿病などのような自己免疫疾患;病原微生物(例えばアスペルギルス・フミガーツス、フザリウム・オキシスポラム、トリコフィトン・アステロイデスなど)により引き起こされる感染;炎症性もしくは過剰増殖性の皮膚疾患または免疫による疾病の皮膚症状(例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、蕁麻疹、血管浮腫、血管炎、紅班、皮膚好酸球増加症、紅斑性狼瘡、ざ瘡、および円形脱毛症);眼の自己免疫疾患(例えば角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病に付随するぶどう膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜炎、角膜上皮変性症、角膜白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト・小柳・原田症候群、乾性角結膜炎(ドライアイ)、フリクテン、虹彩毛様体炎、サルコイドーシス、内分泌性眼障害など);可逆性気道閉塞疾患[喘息(例えば気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、および塵埃喘息)、特に慢性または難治性喘息(例えば遅発型喘息および気道過敏症)気管支炎など;粘膜または血管の炎症(例えば胃潰瘍、虚血性または血栓性の血管傷害、虚血性腸疾患、腸炎、壊死性腸炎、熱傷に付随する腸の損傷、ロイコトリエンB4による疾病);小腸炎/アレルギー(例えばセリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病、および潰瘍性大腸炎);消化管から離れた症候性の症状を伴う食物関連のアレルギー疾患(例えば片頭痛、鼻炎、および湿疹);腎臓病(例えば間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群、および糖尿病性腎症);神経疾患(例えば多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、単発性神経炎、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)、および神経根症);脳の虚血性疾患(例えば頭部外傷、脳の出血(例えばくも膜下出血、脳内出血)、脳血栓症、脳塞栓症、心停止、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、高血圧性脳症、脳梗塞);内分泌疾患(例えば甲状腺機能亢進症、およびバセドウ病);血液疾患(例えば赤芽球癆、再生不良性貧血、低形成性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、および赤血球形成不全);骨疾患(例えば骨粗鬆症);呼吸器疾患(例えばサルコイドーシス、肺線維症、および特発性/間質性肺炎);皮膚疾患(例えば皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光線過敏症、および皮膚T細胞リンパ腫);循環器疾患(例えば動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発動脈炎、および心筋症);膠原病(例えば強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、およびシェーグレン症候群);脂肪症;好酸球性筋膜炎;歯周病(例えば歯肉、歯周組織、歯槽骨、または歯のセメント質への損傷);ネフローゼ症候群(例えば糸球体腎炎);男性型脱毛症、老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症およびセザリー症候群;染色体異常が付随する疾病(例えばダウン症候群);アジソン病;活性酸素による疾病[例えば保存、移植、または虚血性疾患(例えば血栓症、心筋梗塞など)に付随する臓器(例えば心臓、肝臓、腎臓、消化管など)の臓器傷害(例えば虚血性循環器疾患);腸疾患(例えば内毒素ショック、偽膜性大腸炎、および薬物または照射により誘導される大腸炎);腎臓病(例えば虚血性急性腎不全、慢性腎不全);肺疾患(例えば肺の酸素または薬物(例えばパラコート、ブレオマイシンなど)により引き起こされる中毒、肺癌、および肺気腫);眼疾患(例えば白内障、鉄蓄積症(眼球鉄症)、網膜炎、網膜色素変性症、老人斑、硝子体瘢痕、角膜のアルカリ火傷);皮膚炎(例えば多形性紅班、リニア免疫グロブリンA水疱性皮膚炎、セメント皮膚炎);およびその他の疾病(例えば歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、および環境汚染(例えば大気汚染)により引き起こされる疾病、加齢、発癌物質、癌の転移、および高山病)];ヒスタミン放出またはロイコトリエンC4放出により引き起こされる疾病;血管形成術および術後癒着防止後の冠動脈の再狭窄;自己免疫疾患および炎症状態(例えば原発性粘膜浮腫、自己免疫性萎縮性胃炎、早発閉経、男性不妊症、若年性糖尿病、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体原性ぶどう膜炎、特発性白血球減少症、活動性慢性肝炎、特発性肝硬変、円板状紅斑性狼瘡、自己免疫性精巣炎、関節炎(例えば変形関節炎)、または多発性軟骨炎);ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、AIDS;アレルギー性結膜炎;ならびに外傷、火傷、または外科手術による肥厚性瘢痕およびケロイドを含んでなる。
【0032】
好ましい一実施形態によれば、薬剤はTreg細胞による抑制効果を維持するため、単一用量または一期間にわたり拡散して投与される。例えば、自己免疫疾患の治療である。
【0033】
別の好ましい実施形態によれば、薬剤は、Treg細胞による抑制効果が無効になるように、複数または多数の用量により投与される。例えば、異常細胞の免疫による除去を必要とする癌、ウイルス性疾患、またはその他の疾病の処置においてである。
【0034】
別の好ましい実施形態によれば、薬剤は、Treg細胞による免疫系の抑制を無効にするための、TNFRSF25の一定の刺激が供給されるように、持続放出処方により投与される。
【0035】
別の好ましい実施形態によれば、患者において少なくとも1の薬剤がTNFRSF25のシグナル伝達を刺激し、CD4FoxP3CD25int細胞の増殖を誘導する。Treg細胞による抑制効果はモニターすることができ、免疫応答の低下が望ましい疾病または状態、例えば自己免疫、移植の拒絶などにおいて抑制効果を維持するために、薬剤の用量を調節することができる。
【0036】
別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1の薬剤がTNFRSF25のシグナル伝達を刺激し、胸腺で誘導されたTreg細胞の増殖を誘導するが、末梢で誘導されたTreg細胞の増殖は誘導しない。Treg細胞による抑制効果はモニターすることができ、免疫応答の低下が望ましい疾病または状態、例えば自己免疫、移植の拒絶などにおいて抑制効果を維持するために、薬剤の用量を調節することができる。
【0037】
別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1の薬剤がTNFRSF25のシグナル伝達を刺激し、末梢で誘導されたTreg細胞により認識される同種抗原の存在が既知である場合に、胸腺および末梢で誘導された両方のTreg細胞の増殖を誘導する。Treg細胞による抑制効果はモニターすることができ、免疫応答の低下が望ましい疾病または状態、例えば自己免疫、移植の拒絶などにおいて抑制効果を維持するために、薬剤の用量を調節することができる。
【0038】
別の好ましい実施形態によれば、1の、または組み合わせた薬剤が、患者の免疫応答を調節するために患者に投与され得る。例えば、患者におけるCD4FoxP3細胞の増殖によるか、または望ましい応答を測定するその他のいずれかのアッセイによって決定された、治療上有効な用量の1以上の薬剤が患者に投与され得る。例えば免疫測定法、バイオマーカーの検出、FACS、免疫ブロット、ハイブリダイゼーション、PCRなどである。Treg細胞は、例えばCD4FoxP3細胞として同定され得る。幾つかの態様では、CD103が共発現する。TregによるCD103の発現により、組織は組織内に保持される。TNFRSF25により仲介されるTregの増殖に干渉しないことが知られている薬剤にはラパマイシンが含まれる。
【0039】
別の好ましい実施形態によれば、TNFRSF25のシグナル伝達を調節する薬剤は、抗体、アプタマー、リガンド、小分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、有機または無機分子のうち少なくとも1を含んでなる。
【0040】
好ましい一実施形態によれば、薬剤はTNFRSF25のアゴニストである。
【0041】
別の好ましい実施形態によれば、in vivoで免疫応答を抑制する方法は、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)により仲介されるシグナル伝達の機能を調節し、抑制的な制御性T細胞(Treg)の増殖を誘導する少なくとも1の薬剤を、患者の必要に応じて患者に投与することを含んでなる。
【0042】
別の好ましい実施形態によれば、薬剤は、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25のシグナル伝達を調節し、CD4FoxP3制御性T細胞の抑制活性を阻害する。
【0043】
別の好ましい実施形態によれば、免疫応答を調節する組成物はTNFRSF25のシグナル伝達を調節する薬剤を含んでなる。一実施形態によれば、薬剤は、サプレッサーTregが免疫応答を抑制するように患者に投与される。別の好ましい実施形態によれば、薬剤は、サプレッサーTreg細胞の阻害を導いて免疫応答を高めるシグナルを無効にする用量または条件下で患者に投与される。
【0044】
別の好ましい実施形態によれば、in vivoで癌を処置する方法は、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)の機能的シグナル伝達を調節する少なくとも1の薬剤を、Treg細胞の抑制効果を無効にして癌に対する免疫応答を誘導できる、TNFRSF25の連続的な刺激を供給する用量および条件において、患者の必要に応じて患者に投与することを含んでなる。
【0045】
別の好ましい実施形態によれば、免疫細胞の調節およびそれに続く応答は、例えば癌、ウイルス性疾患、またはいずれかの感染性の生命体により引き起こされる疾病のような疾病にかかった患者を処置する方法を含んでなり、該方法では、抗TNFR25組成物が患者に投与されて、免疫細胞の機能、例えば以前に抑制されたかもしくは減弱されたリンパ球の増殖を調節するか、または免疫応答は正常である場合に、免疫応答の増大によってさらに有効で迅速な患者の処置がもたらされる。腫瘍の固有の免疫原性(すなわち、操作されていない腫瘍が防御的免疫を刺激する能力)が失われていない場合の負の制御経路は、腫瘍の進行の免疫によるコントロールの阻止に重要な役割を果たす。治療上の意味としては、免疫の減弱/抑制性の制御回路に対抗することによって免疫による癌のコントロールは成功し、これは少なくとも強力なワクチン接種プロトコルの開発よりも重要なことである。
【0046】
腫瘍ワクチン:このようにTNFR25アゴニストは、T細胞の活性化および腫瘍特異的な抗原に対する細胞性免疫応答を亢進することから、例えば腫瘍ワクチンに対する有効な生物学的応答の修飾因子であるが、一方でTNFR25アンタゴニストはT細胞の活性化を遮断または阻害する。従って本発明の別の態様は、腫瘍ワクチンの有効性を増大させる方法および治療薬に関する。
【0047】
腫瘍ワクチンは、癌と戦うために身体の自然免疫系の要素を用いる試みである。腫瘍ワクチンは1以上の腫瘍特異的な抗原を含み、かつアジュバントおよび生物学的応答の修飾因子を含み得る。腫瘍特異的な抗原は、腫瘍細胞内または腫瘍細胞上に実質的に限定して発現し、かつこれらの腫瘍細胞を標的とすることが意図された免疫応答を刺激するために用いることのできるポリペプチドである。異なる型のワクチンが、異なる型の癌を処置するために用いられる。抗原性組成物がワクチンとして有用であるためには、抗原性組成物は、細胞または組織内で抗原に対する免疫応答を誘導しなければならない。本明細書で用いられる「抗原性組成物」は、抗原(例えばペプチドまたはポリペプチド)、抗原をコードする核酸(例えば抗原の発現ベクター)、または抗原を発現もしくは提示する細胞を含んでなってよい。
【0048】
ワクチンまたはその他の抗原性の刺激物質に対する免疫応答の増大は、例えば増殖アッセイ、サイトカインの分泌、分泌されるサイトカインの型、細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、ELISA、RIAなどのような従来法のいずれかを用いて測定することができる。増大した免疫応答は、処置をモニターすることによってもまた検出できる。例えば癌を処置する場合、増大した免疫応答は、以下の効果のうち1以上を観察することによってもモニターできる:(1)(i)速度の減少(ii)血管新生の抑制、および(ii)増殖の完全な停止を含む、ある程度までの腫瘍増殖の抑制;(2)腫瘍細胞の数の減少;(3)腫瘍サイズの維持;(4)腫瘍サイズの縮小;(5)(i)縮小(ii)速度の減少、または(iii)腫瘍細胞の末梢臓器への浸潤の完全な防止を含む抑制;(6)(i)縮小(ii)速度の減少、または(iii)転移の完全な防止を含む抑制;(7)(i)腫瘍サイズの維持(ii)腫瘍サイズの縮小(iii)腫瘍の増殖速度の減少(iv)浸潤の縮小、速度の減少、または防止をもたらし得る抗腫瘍免疫応答の増大、および/または(8)疾患に付随する1以上の症状の重症度または数のある程度までの軽減。
【0049】
別の好ましい実施形態によれば、抗TNFR25は、抗TNFR25抗体を発現するベクターコンストラクトとして投与することができる。加えてベクターコンストラクトは、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−12(IL−12)のようなサイトカイン、およびB7−1、B7−2、CD40のような共刺激分子をコードするヌクレオチド配列を含んでよい。サイトカインは、抗体および細胞傷害性Tリンパ球応答の両方を含む被験体の免疫系の応答を微調整して、感染または疾病状態をコントロールまたは排除するために必要とされる応答の特定のレベルを引き出すため、様々に組み合わせて用いることができる。ポリヌクレオチドはまた、抗原性ポリペプチド、例えば抗腫瘍抗原、抗ウイルス性抗原など、およびCTLA−4のような共刺激分子を含む融合産物をコードしてもよい。適切なベクターの例は、ポリオウイルス、ワクシニア、カナリアポックス、および鶏痘のようなポックスウイルス類、ナマズ疱疹ウイルス(catfish herpes virus)を含む疱疹ウイルス類、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルス類を含むウイルス性ベクターを含んでなる。代表的な細菌性ベクターには、サルモネラ、シゲラ、エドワージエラ・イクタルリ、エルシニア・ラッケリ、およびリステリア・モノサイトゲネスの弱毒化型が含まれる。L.モノサイトゲネスは、動物におけるTregの増殖刺激に用いて、後に動物あたりのTregを高い収率で回収するための研究ツールとしても役立つ。
【0050】
併用療法
好ましい実施形態によれば、免疫応答の増大または上方制御のために1以上の治療法が併用され得る。抗TNFR25抗体は、例えば、1以上の薬剤または処置方法による処置前に、処置と同時に、または処置後に投与することができる。
【0051】
別の実施形態によれば、TNFR25組成物は自己細胞に投与することができ、これによって増殖した細胞の患者への再注入が可能となる。
【0052】
TNFR25刺激剤は、ベクター内のポリヌクレオチド、リポソーム、核酸、ペプチドなどとして、医薬組成物中に加えることができる。
【0053】
別の好ましい実施形態によれば、TNFR25刺激薬は、追加の1以上の薬理学的に有効な薬剤と共に投与してよい。本明細書で用いられる「薬理学的に有効な薬剤」の語は、原核生物または真核生物の細胞において、in vivoもしくはin vitroで生理的な効果(例えば治療上の、または予防的な効果)を有することのできる薬物のようないずれの薬剤も指し、限定はされないが、これらには化学療法剤、毒素、放射線療法、放射線感作薬剤、遺伝子治療ベクター、アンチセンス核酸コンストラクトまたは低分子干渉RNA、造影剤、診断薬、細胞内タンパク質、ポリペプチド、およびポリヌクレオチドと相互作用することが知られている薬剤が含まれる。
【0054】
さらなる薬理学的に有効な薬剤は、例えば、鎮痛剤、麻酔薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗不整脈薬剤、抗ぜんそく薬、抗生物質(ペニシリンを含む)、抗癌剤(タキソールを含む)、抗凝固剤、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、降圧薬、抗ムスカリン薬、抗ミコバクテリア薬、抗悪性腫瘍薬、抗酸化剤、解熱剤、免疫抑制剤、免疫賦活薬、抗甲状腺薬、抗ウイルス薬、抗不安、鎮静剤(催眠剤および神経遮断薬)、収斂剤、静菌剤、ベータアドレナリン受容体遮断薬、血液製剤および代替薬、気管支拡張薬、緩衝剤、心変力薬、化学療法剤、造影剤、副腎皮質ステロイド、鎮咳薬(去痰薬および粘液溶解薬)、診断薬、診断用造影剤、利尿薬、ドーパミン作動薬(抗パーキンソン病薬)、フリーラジカル消去剤、増殖因子、止血剤、免疫薬、脂質調節剤、筋弛緩剤、タンパク質、ペプチド、およびポリペプチド、副交感神経刺激薬、副甲状腺のカルシトニンおよび二ホスホン酸塩、プロスタグランジン、放射性医薬品、ホルモン、性ホルモン(ステロイドを含む)、徐放性結合剤、抗アレルギー薬、刺激薬および食欲抑制薬、ステロイド、交感神経作動薬、甲状腺薬、ワクチン、血管拡張薬、およびキサンチンを含む、様々な既知の薬物の分類から選択することができる。
【0055】
さらなる薬理学的に有効な薬剤は、治療薬である必要はない。例えば薬剤は、それが送達される局所的な細胞に対して細胞傷害性であってよいが、被験体に対しては概して有益な効果を有する。さらに薬剤は、バイオイメージングのための造影剤のように、それ自体は直接に治療上の活性をもたない診断薬であってもよい。
【0056】
化学療法:TNFR25組成物は、化学療法を伴って投与されてよい。例えば抗TNFR25の投与により、化学療法の必要が減じ得るか、または化学療法がなお必要とされるかもしくは推奨される場合でも用量は減少する可能性があり、これによってこれらの化学療法剤の幾つかの有害な副作用が軽減される。癌の治療法には、化学薬剤および照射の両方による処置を用いた、様々な併用療法もまた含まれる。併用の化学療法には、例えばシスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質転移酵素阻害剤、超プラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、または前述のいずれかの類似体もしくは誘導変異体が含まれる。
【0057】
放射線療法:組成物は、放射線療法と併用してよい。DNA損傷を引き起こし、広く用いられているその他の因子には、一般にガンマ線、X線として知られるもの、および/または腫瘍細胞へ向けた放射性同位元素の送達が含まれる。DNA損傷因子のその他の型は、マイクロ波、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号および米国特許第4,870,287号)、およびUV照射などとしてもまた意図される。おそらくこれらの因子は全て、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持において、DNAに広範な損傷を与える効果があると考えられる。X線の用量範囲は、長期間(3〜4週間)に対する一日用量の50〜200レントゲンから、単一用量の2000〜6000レントゲンである。放射性同位元素の用量範囲は非常に広範であり、同位元素の半減期、放出される放射線の強度および型、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0058】
免疫療法:抗TNFR25薬剤は、免疫療法のその他の型と併用してよい。例えば癌の処置に関して免疫療法は一般に、癌細胞を標的とし、これを破壊するために、免疫エフェクター細胞および分子(例えばモノクローナル抗体)の使用に依存している。このような例は、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))またはベバシズマブ(AVASTIN(商標))である。免疫エフェクターは、例えば腫瘍細胞表面のあるマーカーに特異的な抗体であってよい。抗体単独で治療法のエフェクターとして役立つか、または実際に細胞を死滅させる効果のために、その他の細胞が動員され得る。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に結合させて、単に標的指向化剤としてもよい。あるいはエフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球であってよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。治療様式の併用、すなわち直接の細胞傷害活性、および例えば抗TNFR25抗体によるその免疫エフェクター応答の増大により、癌の処置における治療上の利点が提供され得る。
【0059】
抗原特異的な免疫応答は1以上の腫瘍抗原を標的とする可能性があり、TNFR25組成物の投与によってこれらの腫瘍抗原に向けられた免疫応答は増大し得る。多くの腫瘍マーカーが存在し、それらのいずれも本発明に関連する標的指向化に適し得る。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbB、およびp155が含まれる。免疫療法の別の態様は、抗癌効果の免疫刺激効果との併用である。存在する免疫刺激分子には、IL−2、IL−4、IL−12、GM−CSF、ガンマIFNのようなサイトカイン、MIP−1、MCP−1、IL−8のようなケモカイン、およびFLT3リガンドのような増殖因子が含まれる。免疫刺激分子を、タンパク質として、または遺伝子送達を用いて、MDA−7のような腫瘍抑制因子と併用することで抗腫瘍効果は増大する。
【0060】
癌の受動免疫療法に対する幾つかの異なったアプローチが存在する。これらは大まかには以下のように分類され得る:抗体単独の注射;抗体と毒素または化学療法剤を組み合わせた注射;抗体と放射性同位元素を組み合わせた注射;抗イディオタイプ抗体の注射;および最後に、骨髄内の腫瘍細胞の一掃。患者における副作用が少ないかまたは無であることから、好ましくはモノクローナル抗体が受動免疫療法に用いられる。
【0061】
能動免疫療法では、抗原性のペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質、または自己もしくは同種の腫瘍細胞組成物、すなわち「ワクチン」が、一般には特徴的な細菌性アジュバントと共に投与される。メラノーマの免疫療法では、高いIgM応答を誘発する患者は、IgM抗体の誘発が無であるかまたは低い患者よりもしばしば長く生存する。IgM抗体は普通は一過性の抗体であるが、抗ガングリオシドまたは抗炭水化物抗体については例外であると思われる。
【0062】
養子免疫療法では、患者の循環リンパ球、または腫瘍浸潤性のリンパ球をin vitroで分離し、IL−2のようなリンホカインで活性化するか、または腫瘍壊死のための遺伝子を導入する。TNFR25組成物、例えば抗TNFR25抗体は、次に再注入する細胞と共に投与するかまたは培養する。これを達成するため、免疫学的に有効な量の活性化リンパ球が、抗TNFR25、および任意に、アジュバントが取り込まれた抗原性のペプチド組成物と組み合わせて、動物またはヒト患者へ投与され得る。活性化リンパ球は、血液または腫瘍サンプルから予め分離され、in vitroで活性化した(または「増殖した」)患者自身の細胞が最も好ましいであろう。この形の免疫療法は、幾つかの事例においてメラノーマおよび腎癌の退縮を導いたが、応答した者のパーセンテージは応答しなかった者よりも低かった。抗TNFR25は、処置を行う医師または看護師によって決定され得る投与計画に従って、細胞の再注入後に患者へ投与され得る。
【0063】
免疫抑制剤:1以上のTNFRSF25薬剤は、抑制された免疫応答を維持することが望ましい場合に(例えば自己免疫疾患)、1以上の免疫抑制剤と共に投与されてよい。免疫抑制剤の例には、ミコフェノール酸、アザチオプリン、シクロスポリンA、FK506、FK520、エリデル;タクロリムスおよびシロリムス;ミノサイクリン;レフルノミド;またはメトトレキサートが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
外科手術:癌患者のおおよそ60%が、予防的な、診断用またはステージ分類用の、根治的な、および対症療法的な外科手術を含む、何らかの型の外科手術を経験し得る。根治的外科手術は、本発明による処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法のようなその他の治療法と併用して用いられ得る、癌の処置である。
【0065】
根治的外科手術には、癌性組織の全部または一部を物理的に除去、摘出、および/または破壊する、切除が含まれる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的な除去を指す。腫瘍切除に加えて、外科手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡的に制御された外科手術(モース術)が含まれる。本発明は、表在癌、前癌病変、または正常組織の偶発的な量の除去と併用して用いられ得ることがさらに意図される。
【0066】
癌性細胞、組織、または腫瘍の一部もしくは全部の摘出により、身体には空洞が形成され得る。処置は、追加の抗癌療法による、領域の灌流、直接注射、または局所的適用によって達成され得る。このような処置は、例えば1、2、3、4、5、6、もしくは7日おきに、または1、2、3、4、および5週間おきに、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月おきに反復され得る。これらの処置では、投薬量も同様に変動し得る。
【0067】
その他の薬剤:処置の治療上の有効性を改善するため、その他の薬剤を本発明と併用し得ることが意図される。これらの追加薬剤には、細胞表面受容体およびギャップ結合の増加に影響を与える免疫調節剤、細胞接着を阻害し、アポトーシス誘導剤に対する過剰増殖性細胞の感度を増大させる細胞増殖阻害剤および分化誘導剤、またはその他の薬剤が含まれる。免疫調節剤には、腫瘍壊死因子;インターフェロンアルファ、ベータ、およびガンマ;IL−2およびその他のサイトカイン;F42Kおよびその他のサイトカイン類似体;またはMIP−1、MIP−1ベータ、MCP−1、RANTES、およびその他のケモカインが含まれる。細胞表面受容体またはそのリガンド、例えばFas/Fasリガンド、DR4、もしくはDR5/TRAIL(Apo−2リガンド)の増加により、本発明の能力を増強し得ることがさらに意図される。ギャップ結合の数の増加による細胞内シグナル伝達の増大は、望ましい細胞集団における増殖効果を増大し得る。
【0068】
Apo2リガンド(Apo2L、TRAILとも呼ばれる)は、腫瘍壊死因子(TNF)サイトカインファミリーのメンバーである。TRAILは多くの型の癌細胞において迅速にアポトーシスを起こすが、正常細胞に対してはなお無毒である。TRAILのmRNAは広く様々な組織で発生する。ほとんどの正常細胞はTRAILの細胞傷害作用に対して抵抗性であると思われることから、TRAILによるアポトーシスの誘導に対して保護可能な機構の存在が示唆される。デスレセプター4(DR4)とも呼ばれる、TRAILについて記載された第1の受容体は細胞質「デスドメイン」を含み;DR4はTRAILにより運ばれるアポトーシスシグナルを伝達する。TRAILに結合するさらなる受容体が同定されている。DR5と呼ばれる一受容体は細胞質デスドメインを含み、DR4に非常によく似たアポトーシスシグナルを伝達する。DR4およびDR5のmRNAは、多くの正常組織および腫瘍細胞株に発現する。TRAILによるDR4およびDR5を通したアポトーシスの誘導を阻止する、DcR1およびDcR2のようなデコイ受容体が同定された。従ってこれらのデコイ受容体は、アポトーシス促進性サイトカインに対する感度を細胞表面で直接制御するための新規な機構を表す。正常組織におけるこれらの抑制性受容体の優先的な発現により、TRAILは、癌細胞にアポトーシスを誘導するが正常細胞には寛容である抗癌剤として有用であり得ることが示唆される。
【0069】
細胞傷害性の化学療法薬を導入した癌の治療法には多くの利点がある。しかしながら、化学療法の結果の一つは薬物抵抗性をもつ表現型の発生/取得および多剤耐性の発生である。薬物抵抗性の発生は、いまだにこのような腫瘍の処置における主要な障害であることから、免疫応答の増大によって代替アプローチが提供される。
【0070】
治療法の別の形には、患者の組織を高温(106°Fまで)に曝露する手順である、温熱療法が含まれる。外部または内部の加温装置が、局所、領域、または全身への温熱療法の適用に関与し得る。局所的温熱療法は、腫瘍のような小さな領域への熱の適用に関与する。熱は、身体外の装置からの腫瘍を標的とした高周波によって外部から発生し得る。内部の熱は、細い、熱した針金もしくは温水を満たした中空のチューブを含む無菌プローブ、埋め込まれたマイクロ波アンテナ、または高周波電極に関与し得る。
【0071】
患者の臓器または肢を、磁石のような高エネルギーを発生する装置を用いて達成される領域的治療法のために加温する。あるいは、患者の血液の幾らかを、内部で加温され得る領域内へ還流する前に採取し、加温してよい。癌が身体に拡散した場合には、全身の加温も行われ得る。この目的のために、温水毛布、ホットワックス、誘導コイル、および熱チャンバーが用いられてよい。
【0072】
ホルモン療法もまた、本発明と併用して、またはこれまでに記載したその他の癌治療法のいずれかと組み合わせて用いられてよい。ホルモンの使用は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、または子宮頸癌のような特定の癌の処置において、テストステロンまたはエストロゲンのような特定のホルモンの効果のレベルを低下させるかまたは遮断するために利用され得る。この処置は、処置の選択肢として、または転移の危険性を減少させるために、しばしば少なくとも1のその他の癌治療法と併用される。
【0073】
組成物の投与
医薬製剤およびワクチンは、経口(固体または液体)、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)、または皮下注射)、経皮(受動的に、またはイオン泳動もしくはエレクトロポレーションの使用)、経粘膜(経鼻、経膣、経直腸、または舌下)、もしくは吸入の投与経路によって、または生分解性の挿入剤を用いて投与されてよく、かつ各投与経路に適した剤形に処方することができる。
【0074】
in situで腫瘍細胞を標的とするため、上記の組成物は、適切ないずれかの製剤によってヒトを含む動物に投与されてよい。例えば腫瘍細胞を標的とするための組成物は、生理食塩水もしくは緩衝食塩水のような、薬剤的に許容される担体または希釈剤中に処方されてよい。適切な担体および希釈剤は、投与の方法および経路ならびに標準的な薬務に基づいて選択できる。代表的な薬剤的に許容される担体および希釈剤、ならびに医薬製剤についての記述は、この分野の標準的な教科書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences、およびUSP/NFに見出される。組成物の安定および/または保存のため、その他の物質が組成物に添加されてよい。
【0075】
本発明の組成物は、いずれかの従来法によって動物に投与されてよい。組成物は、例えば内部または外部の標的部位への外科的送達によって、または血管が到達できる部位へのカテーテルによって、標的部位へ直接投与されてよい。送達のその他の方法、例えばリポソームによる送達、または組成物を浸透させた装置からの拡散は、当該技術分野において公知である。組成物は、単回のボーラス、複数回の注射、または持続的な点滴(例えば静脈内への)によって投与されてよい。非経口投与のために、組成物は、好ましくは無菌で発熱物質を含まない形に処方される。
【0076】
幾つかの実施形態によれば、組成物またはワクチンは、肺への送達によって投与される。組成物またはワクチンは、吸入する間に哺乳類の肺へ送達され、肺上皮の内面から血流へと横断する[例えば、Adjei,et al.Pharmaceutical Research 1990;7:565 569;Adjei,et al.Int.J.Pharmaceutics 1990;63:135 144(酢酸ロイプロリド);Braquet,et al.J.Cardiovascular Pharmacology 1989;13(sup5):143 146(エンドセリン−1);Hubbard,et al.(1989)Annals of Internal Medicine,Vol.III,pp.206 212(αlアンチトリプシン);Smith,et al.J.Clin.Invest.1989;84:1145−1146(α1−プロテイナーゼ);Oswein,et al.“Aerosolization of Proteins”,1990;Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II Keystone,Colorado(組み換えヒト成長ホルモン);Debs,et al.J.Immunol.1988;140:3482 3488(インターフェロンγおよび腫瘍壊死因子α);およびPlatz,et al.に付与された米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)を参照されたい。全身性の効果のための、薬物の肺への送達についての方法および組成物については、Wong,et al.に付与された米国特許第5,451,569号に記載される。Licalsi et al.に付与された米国特許第6,651,655号も参照されたい。
【0077】
本発明の実行における使用が意図されるものは、治療上の産物を肺へ送達するために設計された広範な機械装置であり、全てが当業者に公知である噴霧器、定量吸入器、および散剤吸入器が含まれるが、これらに限定されない。本発明の実行に適した市販装置の幾つかの特定の例は、Ultravent噴霧器(Mallinckrodt Inc.,セントルイス、ミズーリ州);Acorn II噴霧器(Marquest Medical Products,イングルウッド、コロラド州);Ventolin定量吸入器(Glaxo Inc.,リサーチ・トライアングル・パーク、ノースカロライナ州);およびSpinhaler散剤吸入器(Fisons Corp.,ベッドフォード、マサチューセッツ州)である。これらの装置は全て、治療薬の分配に適した製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は用いる装置の型に特異的であり、治療法に有用な通常の希釈剤、補助剤、界面活性剤、および/または担体に加えて、適切な噴霧剤物質の使用が含まれ得る。また、リポソーム、マイクロカプセルもしくはミクロスフェア、包接体、またはその他の型の担体の使用も意図される。
【0078】
一般に、定量吸入装置による使用のための製剤は、界面活性剤の補助によって噴霧剤中に懸濁された治療薬を含む、微粉化した散剤を含んでなり得る。噴霧剤は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、もしくはトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、および1,1,1,2テトラフルオロエタンを含む炭化水素、またはそれらの組み合わせのような、この目的のために用いられる従来の物質のいずれであってもよい。適切な界面活性剤には、ソルビタントリオレアートおよび大豆レシチンが含まれる。オレイン酸もまた界面活性剤として有用である。
【0079】
散剤吸入装置から分配するための製剤は、治療薬を含み、かつ乳糖、ソルビトール、ショ糖、またはマンニトールのような増量剤を、装置からの散剤の分散を促進する量、例えば製剤の50〜90重量%において含み得る、微粉化した乾燥散剤を含んでなってよい。治療薬は、最も有利には、肺の遠位へ最も効果的に送達するため、平均粒径が10mm(またはミクロン)未満、最も好ましくは0.5〜5mmである、粒状の形に調製されなけらばならない。
【0080】
治療薬の経鼻またはその他の粘膜送達もまた意図される。経鼻送達により、組成物の鼻への投与後、産物の肺における沈着を必要とせずに血流への直接の通過が可能となる。経鼻送達のための製剤には、補助剤としてデキストランまたはシクロデキストランおよびサポニンを含むものが含まれる。
【0081】
本発明の組成物またはワクチンは、1以上の追加の有効成分、医薬組成物、またはワクチンと併用して投与され得る。本発明の治療薬は、動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトへ投与され得る。
【0082】
持続放出系:第1の持続放出系には、薬剤が、薬剤の水性環境(すなわち消化管液)への放出を遅延させる別の物質のマトリックス内に包埋または分散される、マトリックス系が含まれる。薬剤がこの種のマトリックス内に分散されると、主にマトリックス表面から薬物の放出が起こる。従って、薬物はマトリックスを組み入れた装置の表面から、薬物がマトリックスを通して拡散した後か、または該装置の表面が浸食されて薬物が曝露されたときに放出される。幾つかの実施形態によれば、両機構は同時に作動させることができる。マトリックス系は大きな、すなわち錠剤のサイズ(約1cm)であるか、または小さい(<0.3cm)サイズであってよい。この系は単一(例えばボーラス)であってよいか、実質的に同時に投与される幾つかのサブユニット(例えば単一用量を構成する幾つかのカプセル)からの構成によって分割されてよいか、または多粒子とも表される複数の粒子を含んでなってよい。多粒子は多くの製剤へ応用できる。例えば多粒子は、カプセル殻に満たされた散剤として用いてよいか、または摂取を容易にするため、それ自体を食物に混合して用いてもよい。
【0083】
特定の実施形態によれば、マトリックス多粒子は薬剤を含む複数の粒子を含んでなり、各粒子は、薬剤および/またはその類似体を、例えば薬剤の水性溶媒中への溶解率を制御できるマトリックスを形成するために選択される1以上の賦形剤と共に固溶体/分散剤の形で含んでなってよい。この実施形態に有用なマトリックス物質は、一般にワックス、幾つかのセルロース誘導体、またはその他の疎水性ポリマーのような疎水性物質である。必要に応じ、マトリックス物質は任意に、結合剤または賦活薬として使用できる疎水性物質と共に処方されてもよい。これらの剤形の製造に有用なマトリックス材料は、エチルセルロース、パラフィン、加工植物油、カルナウバろう、水素化ヒマシ油、蜜ろうなどのようなワックス、およびポリ(塩化ビニル)、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸ビニルとエチレンの共重合体、ポリスチレンなどのような合成ポリマーである。マトリックス内へ任意に処方できる水溶性もしくは親水性の結合剤または放出改変剤には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ポリ(N−ビニル−2−ピロリジノン)(PVP)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、キサンタンガム、カラギーナンのような親水性ポリマー、ならびにその他のこのような天然および合成の材料が含まれる。加えて、放出改変剤として作用する物質には、糖類または塩類のような水溶性物質が含まれる。好ましい水溶性物質には、乳糖、ショ糖、グルコース、およびマンニトール、ならびに例えばHPC、HPMC、およびPVPのような親水性ポリマーが含まれる。
【0084】
特定の実施形態によれば、多粒子産物は制御された凝集によって処理されたものとして定義される。この場合薬剤は、適切で溶解可能な担体に溶解されるかまたは部分的に溶解され、マトリックス物質を含んでなる担体粒子上にスプレーされる。
【0085】
用量:ここに開示される主題の組成物の有効用量が、被験体の必要に応じて被験体に投与される。「処置の有効量」または「治療的な量」は、測定可能な応答(例えば、処置される被験体における生物学的または臨床的な関連応答)を生み出すために十分な治療用組成物の量である。ここに開示される主題の組成物における有効成分の実際の投薬量レベルは、特定の被験体に対して望ましい治療上の応答を達成するために有効な単数または複数の有効化合物量を投与するために変動し得る。選択される投薬量レベルは、治療用組成物の活性、投与経路、その他の薬物または処置との併用、処置される状態の重症度、ならびに処置される被験体の状態および事前の病歴に依存し得る。しかしながら、化合物の用量を、望ましい治療上の効果の達成に必要とされるよりも低いレベルから開始し、望ましい効果が達成されるまで投薬量を次第に増大させることは、当該技術分野における技術の範囲内である。組成物の効力は様々であり得ることから、「処置効果の量」も様々であり得る。しかしながら本明細書に記載されるアッセイ法を用いることにより、当業者はここに開示される主題の候補となる化合物の効力および有効性を容易に評価し、それに従って最適投薬方式を調整することができる。
【0086】
本明細書に提示される、ここに開示される主題の開示を再検討した後、当業者は、特定の製剤、組成物に用いられる投与方法、および処置される特定の疾病を考慮して、個別の被験体に対する投薬量を調整することができる。用量のさらなる算出には、被験体の身長および体重、症状の重症度および段階、ならびにさらなる有害な健康状態の存在が考慮され得る。このような調整または変動、およびこのような調整または変動をいつどのように行うかについての評価は、医学分野における当業者に公知である。
【0087】
上に本発明の様々な実施形態を記載したが、これらは例としてのみ提示したものであって、限定ではないことが理解されなければならない。開示される実施形態には、本明細書における開示に従って、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、多くの変更が為され得る。従って本発明の広さおよび範囲は、上記実施形態のいずれによっても限定されてはならない。
【0088】
本明細書において言及する全ての文書は、参照により本明細書に取り込まれる。本出願に引用する全ての出版物および特許文書は、あらゆる目的のために、あたかも個々の出版物および特許文書それぞれが個別に表示されたかのように、同程度まで参照により取り込まれる。本文書内の様々な参考文献におけるそれらの引用によって、出願者は特定の参考文献のいずれも、それらの発明に対する「先行技術」であるとは認めない。発明組成物の実施形態および方法を、以下の実施例において例証する。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下の限定されない実施例は、選択された本発明の実施形態の例証に役立つものである。表示される、割合における変動および成分要素の代替物は当業者に明らかであり、本発明の実施形態の範囲内であることが認識されるであろう。
【実施例1】
【0090】
TNFRSF25によるIn Vivoでの治療用Tregの増殖は、アレルギー性の肺炎症を阻止する。
腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)は、リンパ系および非リンパ系細胞の両方に差次的に発現する少なくとも19のリガンドおよび30の受容体(TNFRSF)からなる。CD3T細胞において、TNFSFシグナルは、極性化、増殖、エフェクター機能、減少、メモリー、および細胞死を含む免疫応答の様々な段階を支持するために、通常はTCR依存性の方法で機能する。TNFRSF25(DR3、以下TNFR25と称する)は、ごく最近発見されたTNFSFメンバーの一つであり、主にCD4およびCD8TならびにナチュラルキラーT(NKT)細胞に発現する(Fang,L.,Adkins,B.,Deyev,V.,and Podack,E.R.2008.J Exp Med 205:1037−1048)。TNFR25のリガンドであるTNFSF1(TL1A)は一部の内皮細胞に発現し、TLR4またはFcγRのシグナル伝達に従って樹状細胞およびマクロファージ/単球上に迅速に誘導される(Meylan,F.,et al.2008.Immunity 29:79−89;Prehn,J.L.,et al.2007.J Immunol 178:4033−4038)。In vitroの実験により、CD4、CD8、またはナチュラルキラーT細胞におけるTNFR25のシグナル伝達が、TCRの活性化またはIL−12およびIL−18による共刺激に続いて、IL−2、IL−4、およびIFNγの産生を増大することが示された(Papadakis,K.A.,et al.2005.J Immunol 174:4985−4990)。TNFR25のシグナル伝達はまた、IL−2依存性の機構による、CD28の共刺激なしのTCRによる増殖に対するCD4T細胞の閾値も低くする(Meylan et al.2008;Migone,T.S.,et al.2002.Immunity 16:479−492)。
【0091】
TL1AによるTNFR25の活性化は、実験的喘息、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における病態を悪化させる(Pappu,B.P.,et al.2008.J Exp Med 205:1049−1062)。これらの各研究で、TNFR25は抗原依存性にTh1、Th2、またはTh17の極性化を刺激し、かつTCRにより活性化されたエフェクターT細胞は、各Tヘルパーサブセットからの関連するエフェクターサイトカインの産生を増大させる。TNFR25のシグナルは、ナイーブCD4T細胞のTh1、Th2、またはTh17系統への分化には必用とされない。これらの報告のいくつかにおいて、TNFR25またはTL1A遺伝子を除去されたマウスモデル(Pappu,B.P.et al.,2008;Takedatsu,H.,et al.Gastroenterology 135:552−567.Bull,M.J.,et al.2008.J Exp Med 205:2457−2464)、ドミナントネガティブTNFR25を発現するトランスジェニックマウスモデル、または抗体によるTL1Aの全身性の遮断が研究された。TL1AもしくはTNFR25を欠損したマウスモデルまたはTL1AからTNFR25への正常なシグナル伝達が阻害される自己攻撃性疾患(autoaggressive disease)モデルにおいて、免疫異常または疾病感受性は観察されなかった。さらにこれらの各報告において、TNFR25またはTL1Aの発現は、動物にとってTNFR25またはTL1Aが存在しないことよりもさらに有害であると思われる、炎症誘発性の表現型を生み出す。CD4FoxP3制御性T細胞(Treg)がTNFR25を発現し得るにもかかわらず(Pappu,B.P.,et al.2008.J Exp Med 205:1049−1062)、今日までTregにおけるTNFR25の役割について試験したという報告はない。致死的な自己免疫の防止におけるTregの重要性、TregによるTNFR25の発現、および複数の自己攻撃性疾患(autoaggressive disease)モデルの病因におけるTNFR25の機能を考え、本発明者らは、Tregの機能におけるTNFR25の役割について研究することを決定した。この研究により、TNFR25は、従来のFoxP3CD4T細胞(Tconv)によってではなく、Tregによって高度に発現することが明らかになった。外来性抗原の非存在下で、アゴニスト抗体であるクローン4C12を用いてin vivoでTNFR25を刺激すると、4C12による処置後4日以内に、Tconvではなく天然型Tregが、全CD4T細胞の30〜35%まで迅速かつ選択的に増殖し、これはTCRのMHCIIとの会合およびIL−2シグナル伝達に依存する。TNFR25によるTregの増殖は、気道からの抗原曝露による肺炎症から感作マウスを保護する。これらのデータにより、Tregの制御因子としての、TNFR25の新規な役割が示される。この役割により、アレルギー性喘息の病因から保護され得る。さらに、ヒトにおけるTregを用いた治療法の臨床における使用を促進するために、TNFR25アゴニストによるin vivoでの天然型Tregの増殖によって、IL−2またはex vivoに基づくアプローチの代替法としての、臨床応用可能な方法が提供され得る。
【0092】
材料および方法:
マウス:野生型C57BL/6マウスは、Charles River Laboratories(ウィルミントン、マサチューセッツ州)から購入した。B6バックグラウンドのFoxp3−RFPレポーターマウス(Wan,Y.Y.,and Flavell,R.A.2005.Proc Natl Acad Sci USA 102:5126−5131))、FoxP3−GFP(Fontenot,J.D.,et al.2005.Immunity 22:329−341;Fontenot,J.D.,Gavin,M.A.,and Rudensky,A.Y.2003.Nat Immunol 4:330−336)、ならびにCD45.1 SJL、MHC II−/−、IL−2受容体ベータ変異体、CD80/86−/−、およびCD4−/−マウスは、発明者らの動物施設で繁殖させた。TL1A−/−マウスはLexicon Genetics Inc.(ウッドランド、テキサス州)から購入し、Speed CongenicsによってC57BL/6バックグラウンドへ戻し交配した。マウスは6〜12週齢で使用し、UM動物施設において、病原体のない状態で維持した。全ての動物の使用手順は、マイアミ大学動物実験委員会によって承認された。
【0093】
抗体および試薬。フローサイトメトリーに使用するための市販の抗体は、BD PharmingenまたはeBioscienceから購入した。アルメニアンハムスターIgGアイソタイプコントロールは、eBioscienceから購入した。DTA−1(α−GITR)はBioXCellから、LG.3A10(α−lL−27)はBioLegendから、および158321(α−4−1BB)はR&D Systemsから得た。組み換えマウスIL−2、および抗IL−2モノクローナル抗体であるクローンJES6−1A12は、eBioscienceから購入した。組み換えマウスIL−2/抗IL−2複合体(IAC)は、10,000単位のrmIL−2を、5μgのJES6−1A12と共に15分間25℃にてインキュベートすることにより産生した。マウスTNFR25に対する抗体(4C12、アゴニスト)を産生するアルメニアンハムスターハイブリドーマは、以前に記載されるように産生した(Fang,L.,Adkins,B.,Deyev,V.,and Podack,E.R.2008.J Exp Med 205:1037−1048)。4C12(α−TNFR25)およびOX−86(α−OX40)は、ホローファイバーバイオリアクター(Fibercell Systems、フレデリック、メリーランド州)内で産生し、無血清の上清からプロテインGカラム(GE Healthcare、英国)によって精製した。ラパマイシン(ラパミューン、Wyeth)は、以前に記載されるように(Araki,K.,et al.2009.Nature 460:108−112.)、75μg/kg/日において使用した。シクロスポリンA(25mg/kg/日)、FK506(3mg/kg/日)、およびAkt阻害剤V(Tricirbine、指示されるように、1.5mg/kg/日、または1日2回)はCalbiochem/EMDから購入し、腹腔内注射により投与した。
【0094】
フローサイトメトリーおよび細胞ソーティング:脾臓およびリンパ球から単一細胞懸濁液を調製した。10個の細胞を抗マウスCD16/CD32によってプレブロックし、異なる抗体の組み合わせによって染色した。標準的な手順に従い、細胞内染色を行った。フローサイトメトリー分析は、Becton Dickinson FACS LSR II装置およびDIVAまたはFlow Joソフトウェアにより行った。細胞ソーティングは、Stem Cell Technologiesから市販されるEasySep Mouse CD4 T cell Pre−Enrichment Kitを用いて脾細胞からCD4T細胞を濃縮した後、FACSAria cell sorter(BD)により行った。
【0095】
リアルタイムRT−PCR:急速冷凍した大腸または肺組織切片から全RNAを抽出し、QIAGENから市販されるRNeasy Mini KitおよびQuantiTect Reverse Transcription Kitをそれぞれ用いて逆転写した。Applied Biosystemsから市販されるTaqManプローブを用いて、ABI 7300 Light Cyclerにより、リアルタイムPCRを二重に行った。サンプルはβアクチンに対して標準化した。
【0096】
養子移入。図2Aおよび2Bの研究のため、FIRマウスから全CD4T細胞をFACSソーティングし、ソーティング後にFoxP3RFP細胞のパーセンテージを決定した。−2日目に、10個のFoxP3細胞を含む全CD4細胞を、MHCII−/−またはCD4−/−マウスへ養子移入(i.v.)した。0日目に、マウスを4C12抗体またはアイソタイプコントロールによって処置した。図11A〜11Eの研究のため、CD45.2FIRマウスからFACSソーティングした2×10個のCD4FoxP3またはCD4FoxP3細胞を、静脈内注射を通してCD45.1コンジェニックSJLマウスに養子移入した。1日後、10μgの4C12を腹腔内注射によって投与した。末梢血液細胞中の移入細胞の増殖を、FACSにより毎日(3日後に開始)追跡した。
【0097】
In vitro抑制アッセイ:1×10個のCD4CD25細胞を96ウェル丸底プレートにまき、APC(比率1:1)および異なる比率のCD4FIR制御性T細胞の存在または非存在下に、2μgの可溶性抗CD3(2C11)抗体によって活性化した。表示するように、10μg/mlのコントロールIgG、4C12、DTA1抗体を添加した。72時間培養し、最後の6時間をHチミジン(1μCi/ウェル;Perkin Elmer、ウォルサム、マサチューセッツ州)によってパルスした。取り込まれた同位元素を、液体シンチレーション計数(Micro Beta TriLux counter、Perkin Elmer)によって測定した。
【0098】
アレルギー性喘息の誘導:0日目に、200μlのPBS中の、6.6mgのミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム塩;Sigma−Aldrich)に吸収させた66μgの卵白アルブミン(結晶化鶏卵アルブミン、グレードV;Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)のi.p.注射によってマウスを感作し、5日目にブーストした。12日目に、200μlのPBS中の、20μgの抗TNFRSF25アゴニスト抗体(4C12)または20μgのヤギ抗ハムスターIgGアイソタイプコントロール(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.,ウェストグローブ、ペンシルベニア州)を、マウスにi.p.注射した。16日目に、BANG噴霧器(CH Technologies、ウェストウッド、ニュージャージー州)をJaeger−NYU Nose−Only Directed−Flow Inhalation Exposure System(CH Technologies)内で用いることにより、マウスをPBS中の0.5%卵白アルブミン(Sigma−Aldrich)に1時間エアロゾル曝露した。19日目にマウスを屠殺し、PBSで灌流した肺、および気管支肺胞洗浄液を得た。RNA、またはフローサイトメトリー分析のために肺ホモジネートから調製される単一細胞懸濁液、または肺組織検査のために肺葉を処理した。続くRNA分析およびフローサイトメトリー分析のために、気管支の流入領域リンパ節もまた調達した。MacBiophotonics Image Jソフトウェアを用いた色調解析(H PASベクターを用いる)およびそれに続く画像の閾値設定(カラー[2]、100に設定)により、ならびに核計数器(限界を100〜1000に設定)を用いた計数により、過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色した肺切片の定量化を行った。
【0099】
統計解析:全てのグラフ化および統計解析はABl Prismプログラムを用いて行った。対の分析はスチューデントT検定を用いて行った。複数の変数分析は、一元配置ANOVAおよびチューキー事後検定を用いて行った。有意性は、(p<0.05)、**(p<0.01)、および***(p<0.001)として示す。
【0100】
結果
TNFR25は制御性T細胞によって高度に発現する:この研究よりも前に、CD4FoxP3制御性T細胞(Treg)におけるTNFR25の機能について示した報告はない。TregによるTNFR25の発現の有無を確認するため、FoxP3レポーターマウスからFoxP3CD4(Tconv)およびTregを、99%を超える純度で単一細胞ソーティングし、続いてTNFR25、ならびにGITR(TNFRSF18)、OX40(TNFRSF4、CD134)、および4−1BB(TNFRSF9、CD137)の発現をフローサイトメトリーにより分析した。FoxP3プロモーターに基づくバイシストロニックコンストラクトからの赤色蛍光タンパク質ノックイン導入遺伝子を発現するFoxP3レポーターマウス(FIRマウス)の使用により、Treg生細胞のソーティングが可能となった。この分析により、TNFR25、OX40、GITR、および4−1BBは全てTregおよびTconvによって発現するが、Tconvによる低い発現に比較して、TregではTNFR25の非常に高い発現が観察されたことにより、発現レベルにおける最も大きな相対的相違が観察されたことが明らかになった(図1A)。理論に制約されるものではないが、TregとTconvの間の差次的なTNFR25の発現により、TNFR25がTregの機能において重要な役割を果たし得ることが示された。
【0101】
TNFR25の刺激はTregをIn Vivoで迅速に増殖させる:TNFR25アゴニスト抗体であるクローン4C12の産生については以前に記載している(Fang,L.,Adkins,B.,Deyev,V.,and Podack,E.R.2008.J Exp Med 205:1037−1048)。FIRマウスを使用して、TNFR25アゴニスト抗体である4C12で処置した後、末梢血におけるTreg集団の頻度および表現型を連続的にモニターした。4C12の腹腔内(i.p)注射により、CD4FoxP3Tregのin vivoにおける迅速で高い再現性のある増殖が誘導された(図1B)。この増殖は4C12注射後4日目および5日目に最大となり、応答のピーク時の末梢血では、FoxP3Tregが全CD4T細胞の30〜35%を含んでなっていた。4C12により増殖したTregは、末梢血中、および試験した全ての組織部位で2週間持続したが、ゆっくりと無刺激のレベルまで減少した。4C12を腹腔内、皮下、または静脈内注射した後のTregの増殖は同等であることが示されたことから、注射部位はこの増殖に影響しなかった。4C12注射後のTregの増殖は用量依存性であり、おおよそ0.4mg/kg体重に相当する、わずかに10μgの用量によって最大の応答が観察された(図1B)。FIRマウスを精製マウスTL1A−Ig融合タンパク質(100μg)で処置することにより、4C12抗体による処置と同様の規模および動態で、Tregの増殖が誘導されることが見出された。FIRマウスにおけるRFP発現の検出は、FoxP3の転写が存在することを正確に表しているが、FoxP3とRFPはFoxP3−RFP転写物から独立して翻訳されるため、これによってFoxP3タンパク質の発現は保証されない可能性がある。従って、4C12投与後のCD4FoxP3細胞の増殖は、野生型マウスにおけるFoxP3抗体を用いた染色によって、およびFoxP3−GFP融合タンパク質を発現するFoxP3−GFPノックインレポーターマウスにおいて確認された。
【0102】
Tregが発現するTNFRメンバーのうち、TNFR25はTregの増殖を引き起こすことにおいて独特である:TNFRSFメンバーであるGITRおよびOX40はTregによって発現し(図1A)、Tregの活性および増殖に効果を及ぼす。4−1BBによるTregの刺激により、これらの細胞の活性および増殖の両方を調節できると考えられる。さらに、TNFRSFメンバーのCD27を介したCD4FoxP3細胞の刺激により、FoxP3の発現が誘導されると考えられる。TNFR25とこれらその他のTNFSFメンバーとの間での、機能的抑制またはTregの誘導いずれかの重複を考え、TNFR25、OX40、4−1BB、GITR、またはCD27で刺激した後に、Tregの増殖をin vivoで比較した。全ての例で、特異的なシグナル伝達を引き起こすために、各受容体に対する十分に特徴付けられたアゴニストモノクローナル抗体を用いた。これらの研究により、試験したTNFRSFの中でもTNFR25は、Tregの増殖を選択的に誘導するその能力によって独特であることが示された(図1C)。最近、OX40により誘導されるTregの増殖には、IL−4、IL−6、およびIFNγの枯渇が必要であったことが報告された(Ruby,CE.,et al.2009.J Immunol 183:4853−4857)。対照的に、TNFR25により誘導されるin vivoでのTregの増殖には、さらなる操作は必要とされなかった。
【0103】
TNFR25により誘導されるTregの増殖にはMHCIIおよびIL−2のシグナルが必要とされる:In vitro、Tregの増殖は、TCR刺激性の抗体、抗原提示細胞、およびIL−2シグナルの様々な組み合わせによって誘導できる。これらの研究では、TNFR25アゴニスト抗体の存在下または非存在下で、抗CD3および抗CD28抗体、組み換えIL−2、TGF−β、およびレチノイン酸の多くの異なる組み合わせを用いてTreg増殖のin vitroでの誘導を試みたが、全ての例においてTNFR25の刺激はin vitroでのTreg増殖を増大させなかったことから、さらなるシグナルが必要であることが示唆された(表1)。
【0104】
表1:TNFR25により誘導されるTregの増殖に対する要件を検討するために、様々な精製したリンパ球集団(表示される)を用いてin vitroで試験した条件。

【0105】
TNFR25はCD4T細胞のTCRシグナルに対する応答性に影響を与え得ることから、次の実験は、TNFR25により誘導されるTregの増殖がin vivoでのTCRシグナル伝達に依存するか否かを決定するために行った。MHCII−/−またはCD4−/−マウスに、FIRマウスから精製した10個のCD4FoxP3細胞を含む全CD4細胞を養子移入した。MHCII−/−マウスはCD4T細胞を欠損していることから、CD4T細胞が欠損した環境への養子移入に続いて起こり得るいずれかの恒常性の増殖を制御するため、コントロール集団としてCD4−/−マウスを用いることを決定した。養子移入後2日目に、マウスを4C12またはアイソタイプコントロール抗体によって処置し、抗体注射後4日目および6日目にTregのパーセンテージおよび絶対数を決定した(図2A、2B)。これらのデータにより、Tregは野生型およびCD4−/−マウスにおいて同程度まで増殖するが、in vivoでのTNFR25により誘導されるTregの増殖にはMHCII分子が必要であることが示された。MHCII−/−マウスはCD4−/−マウスのベースラインよりも多数のCD4細胞を有することから、MHCII−/−マウスに養子移入されたTregのパーセンテージは、CD4−/−マウスよりも低いことが観察された(図2A)。しかしながら、養子移入されたTregの絶対数の比較により(図2B)、2つの群で同等なTregの絶対数が回復したことが示唆される。これらの研究により、TNFR25により誘導されるTregの増殖にはMHCIIシグナルが必要であることが示され、このことはTconv細胞におけるTNFR25のシグナル伝達と同様、TregがTNFR25のシグナル伝達に対して許容状態になるためにはTCRシグナル伝達が必要であることが間接的に暗示される。TNFR25により誘導されるTregの増殖にTCRシグナルが必要であることのさらなる証拠を提供するため、マウスをシクロスポリンAまたはFK506で前処置し、4C12またはアイソタイプコントロール抗体による処置に続いてTregの数を分析した(図2C、2D)。これらの研究により、MHCIIシグナルが存在しない場合に観察されたものと同様に;シクロスポリンAまたはFK506の存在下で、TNFR25はTregの増殖を誘導できないことが示される。MHCIIにおける同種自己抗原の必要性についてはさらなる研究を行っているが、このような必要性は、外来性抗原の非存在下でのTNFR25のTreg選択性についてのさらなる説明(TregにおけるTNFR25の選択的発現に加えて、図8A〜8C)を提供し得る。
【0106】
TNFR25のシグナル伝達により、CD28の共刺激の非存在下でTCRシグナルに続いて起こるIL−2シグナルに対する、Tconvの応答性は増大すると考えられる。TNFR25により誘導されるTregの増殖にはMHCIIとNFAT両方の活性化が必要であることを考え(図2A〜2D)、IL−2またはCD80/86のシグナルがさらに必要であるか否かについて決定した。非機能的なIL−2受容体ベータ鎖を発現するマウス(図2E)およびCD80/86−/−マウス(図2F)におけるTregの増殖を、4C12の注射後4日目に決定した。これらのデータにより、TNFR25により誘導されるin vivoでのTregの増殖にTCRおよびIL−2受容体のシグナル伝達は必要であるが、CD80またはCD86の共刺激は必要でないことが示される。理論に制約されるものではないが、TregにおけるCD28およびCTLA−4のシグナル伝達は、TNFR25により誘導される増殖には必要でない可能性がある。さらに、TNFR25、TCRの刺激、およびIL−2シグナル伝達の組み合わせがin vitroでのTregの増殖を誘導できなかったことから、研究中のさらなるシグナルが必要とされる。
【0107】
TNFR25により刺激されたTregは、Ex VivoでIL−2により誘導される増殖に対して高応答性である:in vitroでTNFR25により誘導されるTregの増殖に必要なものについてはさらなる研究が必要であるが、TNFR25アゴニスト抗体によって処置したマウスから精製したTregは、ex vivoでのIL−2により誘導される増殖に対して高応答性であることが観察された(図3A)。これらのデータは、TNFR25により誘導されるTregの増殖におけるIL−2シグナルの重要性を実証し(図2E)、TNFR25は、IL−2に対するTregの感受性に影響することによってTregの増殖を誘導することを示唆するものである。この観察を説明し得る、幾つかの可能性のある機構が想像される:1)TNFR25は、TregにおいてIL−2受容体サブユニットの発現を増大し得る、2)TNFR25は、TregにおいてSTAT5の活性化を増大し得る、3)TNFR25は、TregにおいてmTORの活性化を増大し得る、および4)TNFR25は、TregにおいてPI3キナーゼ/Aktの活性化を増大し得る。IL−2受容体アルファ、ベータ、およびガンマ鎖の発現を判定するため、4C12抗体による処置後にin vivoで増殖するTregについてフローサイトメトリーを行い、IgGコントロール抗体によって処置したマウスから分離したTregと比較した(図3B)。これらのデータにより、IL−2受容体アルファ鎖(CD25)は、4C12への曝露後に実際に減少したが(図7A)、ベータおよびガンマ鎖(それぞれCD122およびCD132)については、4C12およびアイソタイプコントロール抗体により処置したマウスから分離したTregにおいて変化は見られなかったことが示され(図3B)、選択肢(1)の可能性は事実上除外された。STAT5のリン酸化が、4C12により処置したマウスにおいて増大するか否かを判定するため、予め4C12またはアイソタイプコントロール抗体によって4日間処置したマウスからTregを分離し、ex vivoでIL−2に曝露した(10ng/ml、15分)。続いてこれらのTregをリン酸特異的な抗体で染色することにより、4C12で処置したマウスから分離したTregでは、コントロールマウスに比較して、STAT5またはS6どちらのリン酸化も増大しなかったことが示され、第2の可能性は事実上除外された(図3C)。続いて、in vivoでTNFR25により誘導されたTregの増殖は、mTORの阻害剤であるラパマイシンの存在下で変化しなかったことが見出され、第3の可能性は除外された(図3D)。最後に、TNFR25により誘導されるTregの増殖にAktのシグナル伝達が必要であるか否かを判定するため、Akt1/2/3の選択的阻害剤であるトリシリビン(Akt阻害剤V、AktiV)の存在下または非存在下で、マウスをTNFR25アゴニスト抗体またはコントロール抗体によって処置した。これらの研究により、Akt活性化の選択的阻害はTNFR25により誘導されるTregの増殖の阻害に十分であることが示され、これはビヒクル処置コントロールの33.69±1.253%から、、AktiVによる1日1回の処置では22.43±1.352%(N=6)(データ未提示、p<0.001)、AktiVによる1日2回の処置では18.20±2.117%(N=3)(図3E、p=0.0003)となった。
【0108】
抗原未処置マウスにおける、TNFR25またはIL−2抗体複合体により誘導されたTregの増殖の比較:in vivoで選択的にTregを増殖させる唯一のその他の薬剤が、組み換えIL−2および特異的な抗IL−2抗体であるクローンJES6−1A12との複合体(IAC)の使用を通し、Boymanらにより報告された(Science 311:1924−1927,2006)。従って、in vivoでのTregの増殖を、4C12またはIACのいずれかによる処置後に直接比較した(図7A)。この分析により、in vivoでの4C12またはIACによる処置後の、Treg増殖の規模および動態は同様であったことが示された。しかしながら、4C12による処置後に増殖したTregの減少は、IACに比較して長引くことが観察された。TNFR25により増殖したTregが中程度のCD25を発現するのとは対照的に、IACにより増殖したTregは高レベルのCD25を発現することが観察された(図7B)。4C12により増殖したTregとIACにより増殖したTregの比較により、CD11a、CD28、CD45RA、CD62L、CD127、細胞内もしくは細胞外CTLA−4、OX40、PD−1、IL−17A、またはIFNγの発現にその他の相違は見出されなかった。
【0109】
TNFR25によるIn vivoでのTregの増殖は、アレルギー性の肺炎症を軽減する:4C12によって増殖したTregが疾病モデルにおける炎症を阻止するか否かを判定するため、マウスを卵白アルブミン/ミョウバンでプライムし、次に気道を卵白アルブミンへ曝露することで誘導された、アレルギー性肺炎症の十分に特徴付けられたモデルにおける炎症を、この処置が軽減し得るか否かについて試験した。0日目および5日目にマウスを卵白アルブミン/ミョウバンでプライムし、次いで12日目に4C12またはハムスターIgGによって処置した。4日後、Treg増殖の最大時に、気道をPBS中でエアロゾル化した卵白アルブミンまたはPBS生理食塩水コントロールに曝露した。この期間に、末梢血中のTregをモニターすることによってTregの最大増殖を確認した(図4A)。卵白アルブミン/ミョウバン感作後に4C12により誘導されたTregの増殖は、最初の2日間は非感作マウスに比較してわずかに遅延したが、4日目までにTregは全CD4T細胞の高い割合(50〜55%)まで迅速に増殖した(図4B、4C)。エアロゾル曝露から3日後、マウスを屠殺し、気管支肺胞洗浄液(BALF)、気管支リンパ節(bLN)、および肺組織を分析した。
【0110】
コントロールまたは4C12で処置した動物の間で、肺から分離した細胞の総数に変化はなかった。この観察に一致して、肺内のCD4およびCD8T細胞の数は、コントロールと4C12で処置したマウスの間で同様であったが、4C12により処置したマウスではTregの数が著しく増加していた(図4B)。肺組織内におけるTregの構成の分析により、4C12投与から7日後の(およびエアロゾル曝露から3日後の)肺におけるTregの頻度はなお全CD4T細胞の55%であったが、これに比較してハムスターIgGで処置したマウスでは22%であることが明らかになった(図4C)。Tconv対Tregのバランスは、単なるTregの総数よりも良好に疾病の病因を予測することが報告されている(Tang,Q.,et al.2008.Immunity 28:687−697;Monteiro,J.P.,et al.2008.J Immunol 181:5895−5903);肺組織におけるCD4FoxP3(Tconv)対Tregの比を決定した(表2)。肺浸潤Tregの表現型が、疾病のないマウスにおいてTNFR25により増殖したTregの表現型と一致することを確認するために、肺浸潤Tregを分析し、GITR、OX40、PD−1、CD44、CD62L、およびCD69の発現について、IgGで処置したマウスから分離した肺浸潤Tregと区別できないことが見出された。
【0111】
表2:図10A〜10Eに記載するように収集した全肺細胞からの、CD4FoxP3(Tconv)、CD4FoxP3(Treg)の総数、およびTconv対Treg細胞の比を示す。細胞数は、左肺の単一細胞懸濁液中で得られた細胞数に、xフローサイトメトリーによって分析した全細胞のうちのリンパ系ゲートをかけた細胞のパーセンテージxリンパ系ゲートをかけた細胞集団内のTconvまたはTreg細胞のパーセンテージを掛けることによって算出した。

【0112】
肺組織細胞の分析に一致して、BALFから分離した細胞の総数は、卵白アルブミンを含むエアロゾルへの曝露後に有意に増加したが、生理食塩水のエアロゾルコントロールでは全ての条件で増加せず、4C12処置によっては顕著に減少した。BALF中の好酸球の総数は、BALF細胞の総数をおおざっぱに反映しており、4C12による前処置によって気道好酸球増多症の重症度は有意に低下することが観察された(図4D)。
【0113】
炎症誘発性サイトカインであるIL−4、IL−5、およびIL−13は、アレルギー性肺炎症の病因に大きく関与している。これらのサイトカインの発現が4C12による前処置によって減少するか否かを決定するため、エアロゾル曝露から3日後に急速冷凍した肺から全RNAを抽出し、RT−PCRによって分析した。この分析により、生理食塩水のエアロゾル化コントロールに比較して、肺浸潤CD4細胞の中でのIL−4、IL−5、およびIL−13の発現は、4C12による処置後に有意に減少するが、アイソタイプコントロール抗体による処置後では上昇したままであることが示された(図4E)。追加のコントロールとしてFoxP3RNAの発現レベルを分析すると、フローサイトメトリーで観察されたFoxP3を発現するCD4細胞と同様の相対的割合を反映していた(図4Cと4Eを比較されたい)。肺組織検査によると、生理食塩水のエアロゾル化コントロールに比較して、4C12による処置後にはリンパ球浸潤の減少および気道からの粘液産生が示され、これらの知見が確認された(図4F、および図4Gで定量化した)。
【0114】
TNFR25は、Tconvを活性化または増殖させることなくTregを増殖させる:4C12によって増殖したTregの表現型を決定するため、本発明者らは、4C12またはIgGアイソタイプコントロールを注射したマウスの末梢リンパ節、腸間膜リンパ節、および脾臓から分離したCD4FoxP3細胞を分析した。4C12によって増殖したTregは、主にCD4FoxP3CD25 intermediate(int)細胞であり、これは分析した全ての二次リンパ器官で増殖したことが見出された(図5A、5B、および図8A、8D)。4C12による処置は、CD11a、CD28、CD45RA、CD62L、CD127、細胞内もしくは細胞外CTLA−4、OX40、PD−1、IL−17A、またはIFNγのTregによる発現を変化させなかった。4C12による処置後に全てのCD4FoxP3細胞はGITR陽性のままであったが、GITRを発現するCD4FoxP3細胞の割合は、4C12による処置後にCD25 intサブセットに移行する傾向があった(図8B)。αEβ7インテグリンは、CD25陽性または陰性のいずれであってもよいCD4FoxP3の高度に抑制性であるサブセットに発現する。CD103の発現の分析により、4C12によって増殖したTregではCD103の発現が増大したが、コントロールTregでは増大しなかったことが明らかになった(図8C)。重要なことに、4C12による処置後のCD4FoxP3細胞およびCD8細胞の分析により、TNFR25のシグナル伝達は、これらのいずれの細胞集団の絶対数または割合も増大させないことが明らかになった。4C12による処置が、非Treg細胞、CD4Tconv、およびCD8T細胞の増殖を刺激したか否かを判定するため、これらの細胞を増殖マーカーであるKi67で染色した。この分析により、外来性抗原の非存在下での4C12による処置は、TconvまたはCD8T細胞の増殖を増大させないことが例証された。さらに、CD8細胞ならびにFoxP3CD4細胞におけるCD44、CD62L、およびCD69の染色では、4C12とIgGにより処置されたマウスの間に相違はないことが明らかになった。従ってTNFR25のシグナル伝達は、外来性抗原の非存在下で、CD4またはCD8エフェクター細胞の増殖もしくは活性化を誘導することなく、選択的にTregを増殖させる。
【0115】
TNFR25の刺激は、in vivoで天然型Tregの増殖を誘導する:4C12による処置後のTregの増加は、FoxP3のde novoの発現またはCD4FoxP3細胞の増殖のいずれかよりもたらされ得る。これらの2つの可能性を区別するため、増殖マーカーであるKi67の、CD4FoxP3細胞における発現を判定した(図5C、5D)。データがCD4FoxP3CD25hi細胞に対するCD4FoxP3CD25int細胞の比率の増加を示すように、4C12によって処置したマウスにおけるKi67細胞の大多数はCD4FoxP3CD25intであった。少ない割合(〜27%)で、CD4FoxP3細胞はKi67について染色されず(図5C、5D)、これらの細胞の大多数はCD25hiであった。4C12による処置後に観察されたCD25int細胞の増殖が、CD25int細胞の選択的な刺激からもたらされたものであるか、またはTregが、増殖の間にCD25の発現が低下したにもかかわらず増殖刺激を受けたのかについては不明なままである。
【0116】
CD4FoxP3CD25int細胞による増殖の増大は、TNFR25のシグナル伝達がCD4FoxP3細胞によるFoxP3のde novoの発現を刺激し得る可能性を決定的に除外するものではない。この可能性について試験するため、CD45.2FIRマウス由来の高度に精製した(>99%純度)CD4FoxP3またはCD4FoxP3細胞を、CD45.1コンジェニックB6/SJLマウスへ注入する養子移入実験を行った。これらの研究では、CD45.1ホストにおける4C12による処置後の、養子移入したCD45.2細胞の追跡、および養子移入したCD45.2CD4細胞によるFoxP3−RFPの持続、誘導、またはサイレンシングのモニターが可能になった(図5E〜5H)。遺伝的または実験的に免疫不全の系統へ養子移入を行った後に、恒常的なTregの増殖によって発生し得るいずれの合併症も避けるため、これらの実験は、完全に免疫応答性のマウスにおいて行うことを計画的に選択した。免疫応答性のCD45.1レシピエントへの、選別した2×10個の細胞(図9A)の移入は、養子移入後少なくとも2週間の末梢血において、まれではあるが容易に区別可能なCD45.2CD4細胞の集団を検出するために十分であった(図5G、5H)。養子移入後の、4C12によるレシピエントマウスのTNFR25の刺激は、CD4FoxP3細胞によるFoxP3のde novoの発現を刺激せず(図5E)、これは4C12によるか、またはコントロール抗体による処置かにかかわらず、0.5%の頻度で、FoxP3−RFP−のままであった。2×10個の細胞を養子移入した後のFoxP3RFP細胞の頻度は、コントロール抗体で処置したマウス末梢血中ではCD4細胞の0.04%であり、4C12で処置したマウスでは0.11%に増加し(図5F)、FoxP3RFPCD45.2細胞は3倍の増加率であった。この結果は、移入していないマウスにおける、TNFR25アゴニスト抗体によるFoxP3Tregの増殖の程度に一致する(図1B)。このデータにより、4C12による処置が、増殖後にFoxP3の発現を維持するCD4FoxP3細胞の増殖を選択的に刺激することが示された(図5F)。このデータにより、TNFR25のシグナル伝達は最初にCD4FoxP3CD25int細胞の増殖を増大させ、これによりTregの全身性の増加がもたらされることが示された。これらの研究はまた、養子移入したCD4FoxP3細胞は4C12による処置後のいかなる時点でも増殖しないが(図5G)、養子移入したCD4FoxP3細胞の増殖は、FIRマウスにおける内在性Tregの増殖および減少と同様の動態に従うことも示した(図5Hと図1Bを比較されたい)。重要なことに、養子移入したCD4FoxP3細胞は、増殖中および増殖後の両方でFoxP3の発現を維持したことから、増殖したTregプールにみられる減少はFoxP3の発現低下よりもむしろ細胞死によるものであることが示唆される(図5F、5H)。実験を通したどの時点でも、養子移入したCD45.2CD4FoxP3細胞の増殖プールがFoxP3の発現を失う場合には、CD45.2CD4細胞のうちのCD4FoxP3細胞の画分が増加し得るが、これは起こらなかった。実験を通して、養子移入したCD4FoxP3細胞の少ない割合(<5%)がFoxP3の発現を示し(図5E)、移入したCD4FoxP3細胞の少ない割合(<5%)がFoxP3の発現を失う(図5F)ことが観察された。FoxP3の発現におけるこのようにわずかな不安定性によって、これらの観察が説明されると思われる。
【0117】
TNFR25により増殖したTregは、Ex Vivoで高度に抑制性である:4C12により増殖したTregが抑制活性を保持しているか否かを判定するため、4C12またはIgGアイソタイプコントロール抗体による処置後4日目にFIRマウスからTreg細胞を精製した(図8A)。次にこれらのTregサブセットを従来の増殖アッセイに用いた。4C12により処置したマウスから精製したTregは、アイソタイプコントロール抗体により処置したマウスからのものに比較して、CD4CD25細胞の増殖をより大きく抑制した(図6A〜6D)。in vitro抑制アッセイにおいて、4C12により増殖したTregによるTconvの増殖の抑制は、抗原提示細胞(APC)の存在下および非存在下の両方で観察された(図6A対6B)。抑制アッセイ中の4C12の添加がTregの抑制活性を調節するか否かを決定するため、記載するように(図6A、6B)、4C12、またはTconvをTregにより仲介される抑制から解放することが知られているGITRアゴニスト抗体(クローンDTA−1)、またはアイソタイプコントロール抗体の存在下で(図6C、6D)、同等のアッセイを行った。アゴニストTNFR25またはGITR抗体の存在により、Tregが4C12またはIgGアイソタイプコントロールによって処置したマウスのどちらから得られたかにかかわらず、両方の抗体がAPCの非存在下で同様の効果を生んだことにより、Tconvの増殖は部分的に回復した(図6C)。興味深いことに、APC、DTA−1の存在下で誘導されたTconvの増殖の程度は、4C12で処置したマウスからのTregの存在下よりも、IgGアイソタイプコントロールで処置したマウスからのTregの存在下で大きかった(図6D)。APCの存在は、4C12の存在下でのTconv増殖の部分的な回復を有意に変更しなかった。コントロールもまた、Tconv単独における4C12の刺激効果は最小であり、TconvにおけるGITRの刺激効果よりも著しく低いことを示した(図6C、6D)。4C12によるTregの抑制活性の阻害は、Tconvではなく、Tregによって発現するTNFR25の効果に特異的であることをさらに示すため、ドミナントネガティブTNFR25を発現するトランスジェニックTconvを用いて抑制アッセイを行った(図6E)。これらのデータにより、TNFR25のシグナル伝達によるTregの抑制活性の阻害はTregのみが機能的TNFR25を発現している条件下で起こることから、この効果は、Tconvではなく、TregにおけるTNFR25のシグナル伝達によるものであることが示される。特に、4C12によってin vivoで増殖し、次にin vitroでの抑制アッセイに供されたTreg(図6A〜6B)は、4C12抗体がそれ以上存在しない条件下で高度に抑制性であった。抑制アッセイの間に4C12抗体が維持されている場合のみに、Treg抑制活性の部分的阻害が観察された。4C12はCD25intTregの増殖を誘導し、かつ幾つかの研究ではCD25の発現レベルによってTregの抑制活性が予測されることから、4C12またはアイソタイプコントロール抗体による処置後のマウスから選別したCD25hiおよびCD25intTregの抑制活性を比較した(図9Bおよび図6F)。CD25hiおよびCD25intTregは両方とも増殖アッセイにおいて高度に抑制性であったことから、抑制活性はCD25の発現レベルに依存しなかった(図6F)。興味深いことに、4C12により増殖したCD25intTregは、IgGで処置したマウス由来のCD25intTregよりもわずかに抑制活性が大きかった(図6F、バー3〜4)。この知見により、4C12により増殖したCD25intTregの、IgGで処置したTregに比較した抑制活性の増大は(図6A〜6D)、少なくとも部分的にCD25int細胞の活性に起因することが示される。
【0118】
考察
TNF受容体ファミリーのメンバーは、免疫エフェクター細胞応答の重要な共刺激因子として、かつアポトーシス誘導因子として認識されている。ここに、制御性T細胞の制御因子としての、TNFR25の新規な非重複性の機能が同定された。TNFR25は、免疫応答性マウスにおいて、in vivoでTregの強固な増殖を仲介する一方、同時にそれらの抑制活性を部分的に制限する。その他のTNFRファミリーメンバーを含むその他の生理的なシグナルが、Tregに同様の活性を与えることは報告されていない。さらに、TNFR25シグナルは、Tregを選択的に増殖することが報告される唯一のその他の薬剤(IL−2/抗IL−2抗体複合体(Boyman,O.,et al.2006.Science 311:1924−1927)と同様の規模および動態によってTregの増殖を誘導するという観察から、TNFR25アゴニストは、ヒトにおける治療用のための、IL−2に基づく治療法の臨床応用可能な代替法を提供し得ることが示唆される。
【0119】
理論に制約されるものではないが、様々な疾病モデルにおける病的炎症の発生には、TNFR25およびTL1A受容体:リガンドの組み合わせが関係している。これまでに、健康の維持または疾病の防止におけるTNFR25もしくはTL1Aの役割を同定した単一の報告はないことから、このような役割は発見されていないことが示唆される。TNFR25アゴニスト抗体である4C12が有効であることにより、TNFR25シグナル、炎症性シグナル、および外来性抗原の時間的な有効性が独立して制御され得る設定での、様々なT細胞サブセットにおけるTNFR25についての研究が初めて可能となった。アレルギー性肺炎症における、TNFR25により増殖したTregの防御的役割の同定は、アレルギー性肺炎症の悪化にTL1Aを関係付ける以前の研究と矛盾するものではなく、その理由は、本研究ではTNFR25のシグナル伝達が抗原への曝露に先立つが、以前の研究ではTNFR25シグナルが抗原への曝露の後に続くことである。むしろ、Tconv(低発現)に比較した、TregによるTNFR25の差次的な発現(高発現)から、T細胞の抗原への曝露の順序によって、共刺激またはTL1Aが、特定の炎症性応答がTregにより抑制されるか、またはTconvにより誘導されるかを支配し得ることが示唆される。本研究では、気道の抗原への曝露に先立つTNFR25アゴニストによる処置が、気道内に、Tconvではなく、Tregの優先的な蓄積を誘導し、かつIL−4、IL−5、およびIL−13の産生減少、ならびに気管支肺胞腔内の好酸球増多症および粘液産生の低下を伴った。
【0120】
CD80/86共刺激ではなく、MHCIIおよびIL−2シグナルが、TNFR25により誘導されるTregの増殖に必要とされた。MHCIIおよびIL−2のシグナルはTNFR25により誘導されるTregの増殖に必要であるが、TCRおよびIL−2のシグナルの供給はin vitroでTregの増殖を誘導するためには十分でないことから、研究中の追加のシグナルが必要であり得ることが示唆される。MHCIIの必要性は、TNFR25により誘導されるTregの増殖において、TCRを発現するTregに強く関係するが、これらのデータは間接的である。この過程におけるTCRの役割についてのさらなる証拠として、TNFR25は、NFAT阻害剤であるシクロスポリンAまたはFK506の存在下でTregの増殖を誘導できないことが観察され;TCRの下流で起こるシグナル伝達がTregの増殖に影響を与えることの証拠を提供した。これらのデータにより、TregおよびTconvの両方が、TCRのライゲーションに続くTNFR25のシグナル伝達に対して許容状態になり、TNFR25アゴニスト抗体のTreg選択性は、少なくとも部分的には、非炎症性状態での自己抗原の有効性によるものである可能性が示唆される。自己抗原による持続性のTCR刺激も、Tconvに比較したTregにおけるTNFR25の発現増加に寄与するか否か、またはこの相違が無関係のシグナル伝達経路によって維持されるか否かについても未知である。
【0121】
少なくとも2のさらなる受容体経路(IL−2受容体およびTCR)がTNFR25により誘発されるTregの増殖に必要とされることを考えると、これらの受容体の下流にあるTregの増殖を導くシグナル伝達経路の集合は複雑である可能性がある。これらの経路がどのように相互作用し得るかについての手がかりは、ex vivoでTNFR25により誘発されるTregが、IL−2シグナルに対して高応答性であったという観察により提供された。続いて、PI3キナーゼ/Akt経路が、TNFR25により誘導されるTregの増殖に重要であるIL−2受容体の下流へのつながりを提供することが特定された。これらのデータにより、PTENを介したPI3キナーゼ/Akt経路の阻害が、IL−2シグナル伝達の下流でTregの増殖を制限することが示唆された。MHCII、IL−2R、NFAT、およびAktの同定により、結果的にTregの増殖を導く、TNFR25の下流で起こるシグナル伝達を解明するための明確な開始点が提供されたが、これらの様々な経路のクロストークの分子機構を解明するために、さらなる研究を行う必要がある。
【0122】
TNFR25により誘導されたTregの増殖は、IACにより誘導されたTregの増殖と同様の動態および規模で起こるが、CD25int細胞の割合がCD25hi細胞よりも多くなる。この観察の重要性については未知である;しかしながら、IACへの曝露後のTregによるCD25の発現から、IL−2の利用可能性の増大による正のフィードバックループが示唆される。TNFR25により誘導されたTregの増殖の場合には、IL−2の濃度は操作されていないことから、増殖したTregによるCD25の発現低下は、増殖したTreg集団由来の内在性IL−2との競合の増加に起因し得る。Tregが発現するその他の表面マーカーを調べることにより、TNFR25により増殖したTregとIACにより増殖したTregの間で少数の相違が明らかになったが、GITRを含む幾つかはCD25intとCD25hi集団の間で変動した。分析したマーカーのうち、4C12による処置後に一貫して増加したものは、組織内でのTregの保持に寄与するCD103であった。
【0123】
このデータは、Tregの抑制活性の阻害による炎症性応答の誘導におけるTNFR25の刺激の役割について報告している最近のデータを補完し、組織の炎症の誘導および回復の両方におけるTL1A:TNFR25の相互作用の役割についての理論へと統一するものである。TNFR25の刺激が、Tregの増殖およびそれらの抑制活性の阻害の両方を誘導することの正確な機構については不明なままであるが、その部分的な理由は、TNFR25シグナルによって活性化されるシグナル伝達がよく理解されておらず、さらなる研究が進められていることである。加えて、TNFR25によりin vivoで誘導されるTregの増殖が自己抗原の認識に依存するか否かは不明であり、かつIACと同様に、TNFR25によりin vitroで誘導されるTregの増殖に必要な条件は不明なままで、さらなる研究が進められている。理論に制約されるものではないが、MHCIIがTNFR25により誘導されるTregの増殖を許容するためのin vivoでの要件の同定によって、TCRの会合はTNFR25により誘導されるT細胞の共刺激に対する一般的な要件であること、および外来性抗原の非存在下でのTNFR25のTregに対する選択性は、TregによるTNFR25の優先的な発現、およびMHCIIによる自己抗原提示の利用可能性の両方によって維持されることが示されると仮定される。免疫されていないマウスに対して、免疫されたマウスではTNFR25の刺激に対するTregの応答性が増大していることもまた興味深く、一次免疫応答と二次免疫応答ではTNFR25の機能が異なる可能性が示唆される。
【0124】
その機構にかかわらず、増加する炎症性疾患(喘息、IBD、EAE、RA)の病因に対するTNFR25のシグナル伝達の重要性のために、TNFR25のシグナル伝達が様々なCD4T細胞サブセットに及ぼす時空間的な役割を理解することが重要である。OX40と同様に、TNFR25のシグナル伝達の時間的な背景は、炎症性または制御性免疫を差次的に導き得る可能性が高い。CD4FoxP3天然制御性T細胞を迅速に増殖させ、一過性に阻害する、TNFR25シグナルの独特な能力は、自己免疫疾患、慢性感染、移植、および癌の処置に対して重要な結果をもたらし得るであろう。
【実施例2】
【0125】
TNFRSF25による、治療用TregのIn Vivoでの増殖は、異所性心臓移植モデルにおける同種異系心臓の急性拒絶反応を遅延させる。
4C12によって増殖した天然型Tregによる寛容性の誘導について試験するため、寛容性試験について十分に記載されている異所性心臓移植モデルを選択した。0日目に、CBA/Jマウス(H2)の心臓をC57BL/6マウス(H2)の腹部へ移植した。−4日目にマウスの1群をTNFRSF25アゴニスト抗体であるクローン4C12の腹腔内注射(20μg/マウス)によって処置し、その他のマウスはハムスターIgGアイソタイプコントロール抗体によって処置した。移植時に、4C12処置群の血中におけるTregの増殖を確認した。心臓を用手で触診することによって同種移植片の生存をモニターし、脈拍を0〜4(0=脈拍なし;1=非常に弱い;2=弱い;3=中程度;4=強い)のスケールで類別した。拒絶は、心臓拍動の触知不可能として定義した。拒絶時(=心臓拍動の停止時)に移植片を除き、ホルマリン固定後に病理検査へ供した。移植から48時間以内に移植片の機能が失われた時には技術的な失敗とみなし(<5%)、その後の分析を行わなかった。
【実施例3】
【0126】
TNFRSF25アゴニストによる、治療用TregのIn Vivoでの増殖は、クローン病のマウスモデルであるデキストラン−硫酸ナトリウム誘導性大腸炎から保護する。
C57BL/6マウスまたはTL1Aノックアウトマウスに、3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を溶解した飲料水を7日間自由に摂取させた。DSSを供給する4日前(実験−4日目)に始まり、体重を毎日モニターした。−4日目にマウスの1群をTNFRSF25アゴニスト抗体であるクローン4C12の腹腔内注射(20μg/マウス)によって処置し、その他のマウスはハムスターIgGアイソタイプコントロール抗体によって処置した。動物が開始時の体重を≧20%減少させた時点で死亡率を測定した(図10A)。幾つかの実験では、実験5日目に動物を屠殺し、急速冷凍してPBSで洗浄した大腸組織からRNeasy miniprep kit(Qiagen)を用いて全RNAを調製した。続いてRNAの逆転写を行い(Quantitect RT、Qiagen)、表示する転写物に対するTaqman(Applied Biosystems)プローブを用いたリアルタイムPCRによってcDNAを増幅した(図10B)。データは、TL1Aノックアウトマウスにおける発現をC57BL/6コントロールマウスに比較した倍率変化によって示す。各実験ごとに、実験の全過程にわたって体重減少のパーセンテージをモニターし、プロットした(図10C)。実験5日目にRNA分離のために動物を屠殺した実験では、制御性T細胞プールの指標となる転写因子FoxP3を発現するCD4細胞の割合をフローサイトメトリーによって分析するために、腸間膜リンパ節を分離した(図10D)。最後に、図10Bに記載するように、表示する処置群から分離したRNAを用いて逆転写を行い、表示する転写物に対するRT−PCRに供した。エラーバーは1実験あたり≧3マウス、1パネルあたり最少で2実験の平均±S.E.M.を示す。
【0127】
これらのデータにより、TNFRSF25アゴニスト抗体による前処置は、腸内でのFoxP3制御性細胞の増殖、体重減少および大腸の致死的な炎症の阻止、ならびにIL−1ベータおよびIL−6を含む炎症性サイトカインの大腸組織内での発現の阻止を導くことが示される。まとめると、これらのデータにより、TNFRSF25の刺激は、ヒトのクローン病の炎症特性を模倣するために一般に用いられるマウスモデルにおいて、致命的な腸の炎症を阻止できることの証拠が提供される。
【0128】
本発明は1以上の実行に関して図示および記載されているが、本明細書および添付の図面を読み、理解した上で、当業者による等価な変更および改変がなされてよい。加えて、本発明の特定の特徴は、幾つかの実行のうちの1のみに関して開示され得るが、このような特徴は、所定のまたは特定の応用のいずれかに対して望ましく、かつ有利である場合に、その他の実行の1以上のその他の特徴と組み合わせてよい。
【0129】
開示の要約により、読者は技術的開示の性質をすぐに確認することが可能となり得る。これは、以下の請求項の範囲もしくは意味を解釈または限定するために用いられ得ないという理解の下に提出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
in vivoで免疫応答を制御する方法であって:
腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)の刺激を調節する少なくとも1の薬剤を、患者の必要に応じて患者に投与すること;および
制御性T細胞(Treg)の増殖を調節すること;および
免疫応答を制御することを含んでなる方法。
【請求項2】
正常な健常コントロールに比較して、患者において少なくとも1の薬剤が、TNFRSF25のシグナル伝達を刺激してCD4FoxP3細胞の増殖を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Treg細胞が、TNFR25、OX40、GITR、または4−1BBを含んでなるマーカーの発現によって同定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Treg細胞が、従来のT細胞(Tconv;CD4FoxP3)に比較して高レベルのTNFR25を差次的に発現する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1の薬剤が、患者におけるTreg CD4FoxP3細胞の増殖によって決定された治療上有効な用量において患者に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
TNFRSF25のシグナル伝達を調節する少なくとも1の薬剤が、治療上有効な複数の用量において患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1の薬剤の治療上有効な複数の用量が患者に投与され、Tregによる抑制因子の産生、細胞増殖アッセイ、フローサイトメトリー、または免疫アッセイにより測定されるTreg細胞の抑制活性を無効にする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
TNFRSF25のシグナル伝達を調節する薬剤が、抗体、アプタマー、リガンド、小分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、有機または無機分子のうち少なくとも1を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
薬剤がTNFRSF25のアゴニストである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
薬剤がTNFRSF25に特異的なアプタマーまたは抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
アプタマーまたは抗体が、TNFRSF25に対して単一特異性、二重特異性、もしくは多重特異性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アプタマーまたは抗体が、TNFRSF25の1以上の区域に対して単一、二重、もしくは多重特異性である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
Treg細胞がCD103である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
in vivoで免疫応答を抑制する方法であって:
腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)の機能を調節する少なくとも1の薬剤を、患者の必要に応じて患者に投与すること;および
制御性T細胞(Treg)の増殖を誘導すること;および
免疫応答を抑制することを含んでなる方法。
【請求項15】
薬剤が腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25のシグナル伝達を調節し、CD4FoxP3制御性T細胞を阻害する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
薬剤が、TNFRSF25エピトープおよび/または別の標的分子のいずれか1以上に対して選択的に特異的な、単一特異性、二重特異性、または多重特異性抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
薬剤が、TNFRSF25および/または別の標的分子に対して選択的に特異的な、単一特異性、二重特異性、または多重特異性アプタマーである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
TNFRSF25により仲介されるシグナル伝達を調節する薬剤を含んでなる、免疫応答を調節するための組成物。
【請求項19】
免疫応答が抑制される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
Tregにより仲介されるT細胞の抑制を誘導する条件下で薬剤が投与される、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
免疫応答が刺激される、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
Tregのサプレッサー活性を阻害する条件下で薬剤が投与される、請求項18に記載の組成物。
【請求項23】
薬剤が、TNFRSF25エピトープおよび/または別の標的分子のいずれか1以上に対して選択的に特異的な、単一特異性、二重特異性、または多重特異性抗体である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
薬剤が、TNFRSF25エピトープおよび/または別の標的分子のいずれか1以上に対して選択的に特異的な、単一特異性、二重特異性、または多重特異性アプタマーである、請求項18に記載の組成物。
【請求項25】
in vivoで癌を処置する方法であって:
腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)の機能を調節する少なくとも1の薬剤を、患者の必要に応じて患者に投与すること;および
制御性T細胞(Treg)の増殖を誘導すること;および
癌を処置することを含んでなる方法。
【請求項26】
免疫応答に付随する疾病または状態を処置する方法であって:
腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)の機能を調節する少なくとも1の薬剤を、患者の必要に応じて患者に投与すること;および
制御性T細胞(Treg)の増殖または阻害を誘導すること;および
免疫応答に付随する疾病または状態を処置することを含んでなる方法。
【請求項27】
Treg細胞が免疫により仲介される応答を抑制する、請求項27に記載の方法。
【請求項28】
免疫応答に付随する疾病または状態が、自己免疫性の疾病もしくは疾患、移植、炎症、喘息、アレルギー、または慢性感染を含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
免疫応答に付随する疾病または状態を処置する方法であって:
腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体25(TNFRSF25;TNFR25;DR3)の少なくとも1のアゴニストを、患者の必要に応じて患者に投与すること;および
免疫応答に付随する疾病または状態を処置することを含んでなる方法。
【請求項30】
TNFR25の少なくとも1のアゴニストが、自己免疫性の疾病もしくは疾患、急性の心臓もしくは臓器移植の拒絶、炎症、喘息、アレルギー、または慢性感染を含んでなる、免疫応答に付随する疾病または状態を阻止または処置する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
自己免疫性の疾病もしくは疾患が、喘息、炎症性腸疾患、および関節リウマチを含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
TNFRSF25のシグナル伝達を刺激し、胸腺で誘導されたTreg細胞の増殖を誘導するが、末梢で誘導されたTreg細胞の増殖は誘導しない、少なくとも1の薬剤を含んでなる医薬組成物。
【請求項33】
TNFRSF25のシグナル伝達を刺激し、胸腺および末梢で誘導された両方のTreg細胞の増殖を誘導する、少なくとも1の薬剤を含んでなる医薬組成物。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2013−501057(P2013−501057A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523692(P2012−523692)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/044218
【国際公開番号】WO2011/017303
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(591279353)ユニバーシティー・オブ・マイアミ (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF MIAMI
【Fターム(参考)】