制御性T細胞を用いた移植組織の拒絶反応の防止
移植組織の拒絶反応を防ぐ方法。エキソビボにおいて調製したレシピエントの同種異系活性化制御性T細胞を移植の前にレシピエントに導入する。移植後レシピエントにドナー抗原を導入し、レシピエントの制御性T細胞を追加免疫する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)に基づき、2005年4月1日出願の米国仮出願番号60/667,494の優先権および利益を主張するものであり、この仮出願の全体は引用により本明細書に包含する。
【0002】
移植組織の拒絶反応を防ぐ方法。エキソビボで調製したレシピエント同種異系活性化(alloactivated)制御性T細胞を移植前のレシピエントに導入する。移植後のレシピエントにドナー抗原を導入し、レシピエントの制御性T細胞を追加免疫する。
【背景技術】
【0003】
実験的自己免疫および移植モデルにおいて、クローン除去、アネルギーおよびエフェクター細胞の調節を含むいくつかの機構の働きにより、T細胞の同種異系反応性が改変でき、また免疫系を非反応性に導くことができることが示されている(Elster, E. A., et al., Transpl Immunol 13:87 (2004))。IL−2受容体のα鎖であるCD25を構造的に発現するCD4+細胞は、自己免疫の防止において重要な役割を持つだけでなく、移植片拒絶反応を防ぐこともできるという研究結果が増加している(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001); Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004); Cohen, J. L., et al., J Exp Med 196:401 (2004))。一般的な表現型と抑制作用を有するCD4+CD25+細胞は天然に生成されるか(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001); Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004))、または末梢に誘導され得る(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Chen, Z.M., et al., Blood 101:5076 (2003))。内在性CD4+CD25+細胞は増殖させることができるので(Godfrey, W. R., et al., Blood 104:453 (2004))臨床試験に用いることができる。これまでの研究により、非枯渇化CD4およびCD8モノクローナル抗体、同時刺激性インヒビター、または免疫抑制剤を用いて、移植片拒絶反応を防ぐ末梢CD4+CD25+細胞を間接的に誘導できることが示されている(van Maurik, A., et al., J Immunol 169:5401 (2002); Graca, L., Thompson, et al., J Immunol 168:5558 (2002); Taylor, P. A., et al., J Exp Med 193:1311 (2001); Gregori, S., et al., J Immunol 167:1945 (2001))。
【0004】
インターロイキン2(IL−2)とトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)の組み合わせにより、CD4+とCD8+細胞の両方を誘導し潜在的な免疫抑制活性を展開させることができる(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Gray, J. D., et al., J Exp Med 180:1937 (1994); Zheng, S. G., et al., J Immunol 169:4183 (2002); Horwitz, D. A., Semin Immunol 16:135 (2004); Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004); Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。未処理のヒトの末梢血CD4+細胞を同種異系抗原で刺激したものが、これらのサイトカインにより、天然のCD4+CD25+細胞と見分けの付かない表面表現型およびサイトカイン非依存性抑制作用を有するCD25+制御性細胞へと誘導された(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001))。さらに、これらのCD4+CD25+Treg細胞は、インビトロで他のCD4+細胞をサイトカイン依存性抑制活性を展開するよう誘導することができる(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213(2004))。
【0005】
H−2bの心臓移植の拒絶反応を防ぐために、他の免疫抑制物質は用いずに、エキソビボでIL−2およびTGF−βの存在下で調製したH−2d抗H−2bTreg細胞を用いた。これまでの実験では、DBA/2 (H−2d)マウスT細胞をIL−2およびTGF−βの存在下C57BL/6 (H−2b)同種異系抗原で刺激することにより、CD4+およびCD8+Treg細胞を調製した。これらのTregは抗原特異的であり、(DBA/2×C57BL/6)F1マウスにおいて全身性エリテマトーデスの特徴を有する慢性移植片対宿主病を防いだ。さらに、疾患を持つマウスにこれらの細胞を単回注射すると生存率が倍増した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。
【発明の開示】
【0006】
[発明の概要]
レシピエント由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、特定のメッセンジャータンパク質の存在下、1以上のドナー抗原、例えばドナーPBMC、または脾臓細胞などの他のドナー細胞により刺激する。その結果、ドナー抗原により同種異系活性化されたレシピエントの制御性T細胞が形成される。これらの細胞はドナー同種異系活性化レシピエント制御性T細胞またはレシピエントTreg細胞とも称する。処理に先駆けて、PBMCをさらに精製し、CD4+T細胞、CD8+T細胞および/またはNK−T細胞集団を調製することもできる。
【0007】
移植の前に、該レシピエントTreg細胞をレシピエントに導入する。レシピエントTreg細胞で移植前処理を行うと、CD25+制御性T細胞集団の増加により移植片拒絶反応が抑制される。移植後、少なくとも1つのドナー抗原をレシピエントに投与し、レシピエントTreg集団を追加免疫する。移植は外来組織適合性抗原の供給源となるが、Tregの増殖および機能の持続のためには適切な刺激抗原はあまりに遅くしか排除されないであろう。
【0008】
さらに別の側面において、レシピエントTreg細胞を移植の前にレシピエントに導入する。移植後に、レシピエントTregおよび少なくとも1つのドナー抗原をレシピエントに投与する。あるいは、移植の前に前処理として、レシピエントTreg細胞およびドナー抗原をレシピエントに導入し、さらに移植後にドナー抗原を単独またはレシピエントTregと組み合わせてレシピエントに導入する。
【0009】
臓器移植の拒絶反応を防ぐために、レシピエントTregをドナー抗原と組み合わせて用いることができる。例えば、心臓移植の場合、ドナー抗原を用いて制御性T細胞を調製し、単独またはドナー抗原と組み合わせてレシピエントに導入する。その後、ドナーの心臓をレシピエントに移植する。心臓移植後に、ドナー抗原を単独またはレシピエントTregと組み合わせてレシピエントに投与する。好ましいレシピエントはヒトである。
【0010】
[発明の詳細な説明]
ドナー同種異系活性化レシピエント制御性T細胞(「レシピエントTreg細胞」または「Treg細胞」)をドナー抗原と共に用いて移植組織の拒絶反応を防ぐ。以下のように、レシピエントTregは、エキソビボにてレシピエントPBMCをドナー抗原と共に培養して調製する。レシピエントTregはドナー抗原と共にまたは単独で、ドナー組織の移植前にレシピエントに導入する。その後、ドナー抗原を単独またはレシピエントTregと組合せてレシピエントに投与する。この処置により移植組織の拒絶反応を防ぐ。拒絶反応を防ぐということは、完全に防ぐこと、ならびに移植後にドナー抗原を使用しなかった場合と比較して遅れて拒絶反応が起こることも含むと理解されたい。
【0011】
レシピエントTreg細胞を調製する方法は当分野でよく知られている。(例えば、2001年10月18日発行の国際公開第2001/077299号パンフレットを参照のこと。本公報は引用により本明細書に含まれる。)簡潔に説明すると、レシピエントPBMCを調節性組成物の存在下、ドナー抗原とともに培養する。培養は約5−7日まで続けることができ、その後はレシピエントTreg細胞は免疫抑制機能を失い始める。
【0012】
別の方法においては、2005年4月5日出願の米国特許仮出願第60/668,676号明細書(引用により本明細書に含まれる)に開示されているように、レシピエントPBMCの2段階培養を用いる。簡潔に説明すると、この方法は以下を含む:(1)患者(patent)から細胞を取り出し、TGF−βおよび必要に応じてマイトジェンおよび/またはサイトカインを含む第一の調節性組成物により24−48時間処理する、(2)第一の調節性組成物を除去する、次いで(3)その細胞をサイトカインを含む第二の調節性組成物と共に培養する。これら2種の調節性組成物の処理により調製したTregは、TGF−βおよびサイトカインにより5−6日間処置したものと比較して、ヘルパー細胞に対してより高い割合のサプレッサー細胞を産生する。
【0013】
本明細書において「調節性組成物」なる用語は、レシピエントPBMCおよびドナー抗原と共に培養した際に、制御性T細胞の形成を引き起こすことができる組成物を意味する。一般に、これらの組成物は、TGFβを単独で、またはIL−2、IL−4、IL−10、IL−15および/またはTNIαのようなサイトカイン、と組み合わせて含む。IL−2は好ましいサイトカインである。
【0014】
適切な調節性組成物はまた、抗CD2抗体およびCD2リガンド、LFA−3などの抗CD2のようなT細胞アクチベーター、およびコンカナバリンA (Con A)またはブドウ球菌エンテロトキシン(staphylococcus enterotoxin)B(SEB)のようなT細胞アクチベーターの混合物または組み合わせをも含み得る。抗体抑制のための好ましい調節性組成物は、T細胞アクチベーター、IL−2およびTGF−βを含有する混合物である。好ましい態様において、抗CD3または抗CD28をTGFβおよびサイトカインと組み合わせて用いる。
【0015】
本明細書において「トランスフォーミング増殖因子β」または「TGF−β」は、3つのイソ型TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3を含むTGF−βファミリーのいずれかを意味する;Massague, J. (1980), J. Ann. Rev. Cell Biol 6:597を参照のこと。リンパ球および単球はこのサイトカインのβ1イソ型を産生する(Kehrl, J.H. et al. (1991), Int J Cell Cloning 9: 438−450)。TFG−βは取り扱う哺乳類細胞において活性なあらゆる形態のTFG−βであり得る。ヒトにおいては、目下組換えTFG−βが好ましい。好ましいヒトTGF−βはGenzyme Pharmaceuticals(Farmington, MA)から購入できる。一般に、使用するTGF−βの濃度は細胞懸濁1mlにつき約2ピコグラムから約5ナノグラムの範囲であり、約10pgから約4ngが好ましく、約100pgから約2ngが特に好ましく、1ng/mlが理想的である。
【0016】
IL−2は、取り扱う哺乳類細胞において活性なあらゆる形態のIL−2であり得る。ヒトにおいては、目下組換えIL−2が好ましい。組換えヒトIL−2はR&D Systems(Minneapolis, MN)から購入できる。一般に、使用するIL−2の濃度は細胞懸濁1mlにつき約1ユニットから約100U/mlの範囲であり、約5U/mlから約25U/mlが好ましく、10U/mlが特に好ましい。好ましい態様において、IL−2は単独では用いない。
【0017】
いくつかの態様において、マイトジェンを用いて細胞を活性化するのが望ましい;なぜなら、多くの休止期の細胞はサイトカインレセプターを大量に含まないためである。コンカナバリンAまたはブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)のようなマイトジェンを用いることにより、細胞が刺激されてサイトカインレセプターを生じ、こうして本発明の方法がより効果的となる。マイトジェンを用いる場合(当分野にて知られる通り、一般に用いる。)、1μg/mlから約10μg/mlの範囲の濃度で用いられる。さらに、当分野にて知られるように、マイトジェンを除去する成分、例えば、α−メチルマンノシドにより細胞を洗浄するのが望ましい場合がある。
【0018】
好ましい態様において、マイトジェン、例えば、抗CD2、抗CD3、抗CD28またはこれらのモノクローナル抗体の組み合わせ、特に抗CD3と抗CD28の組み合わせにより、T細胞を強く刺激する。二次培養においてTGF−β存在下または非存在下でT細胞を繰り返し刺激することが必要な場合がある。
【0019】
IL−2受容体のα鎖であるCD25を発現するCD4+T細胞のサブセットは、T細胞をドナー同種異系抗原に対して非反応性に誘導し維持することができ、それゆえ固体臓器移植における興味深い治療的可能性を持っている。エキソビボでIL−2およびTGF−βにより同種異系活性化された末梢CD4+細胞は、転写因子FoxP3を発現し、潜在的な抗原特異的サプレッサー細胞となる。組織不適合性の心臓移植と同時にTGF−βにより誘導された制御性T細胞を投与すると、同種異系移植片の生着が延長した。この結果を説明するために、移植を行っていないマウスに単回用量の制御性T細胞を注射し、移植の継続的な刺激を模倣するためにドナー細胞を2週間毎に投与した。脾臓CD4+CD25+細胞の増加が観察され、これらはレシピエント起源であった。これらの細胞は、抗原特異的およびサイトカイン依存的作用機序により、マウスをドナー同種異系抗原に対して非反応状態にした。CD4+CD25+細胞の増加およびそれらの免疫寛容誘発作用の両方が、継続的なドナー抗原の免疫追加に依拠していた。このように、エキソビボで調製された制御性T細胞は、MHCミスマッチ臓器移植片を拒絶反応から守る可能性のある宿主のサプレッサー細胞を産生するワクチンのように働くことが可能である。
【0020】
本明細書において用いられる「ドナー抗原」なる用語は、ドナーに由来する以下のようなあらゆる抗原であり得る:(1)レシピエントの制御性T細胞の形成を誘導する、または(2)レシピエントに投与した場合にレシピエントTreg集団を追加免疫する。ドナー抗原の例には、ドナー細胞、例えば脾臓細胞、末梢血単核細胞、骨髄細胞、リンパ節細胞、扁桃腺細胞、および組織適合性抗原を含有する組織抽出物などがある。ドナー抗原の他の例には、組換え技術により調製されたドナーの主要組織適合複合体(MHC)に由来するペプチドおよびタンパク質、ならびに関連MHCに由来するペプチドおよびタンパク質などがある。
【0021】
ドナー細胞のMHC抗原をタイピングした後、ドナーのPBMCまたは組織適合性PBMC、または好ましくは、ドナーにより共有される組換えMHCペプチドのレシピエントT細胞を活性化するのに十分な量を、レシピエントの精製CD4+および/またはCD8+細胞と共に培養する。活性化とは、当業者に既知の標準的な方法により評価する、特定表面マーカーの発現またはこれらの細胞の増殖と定義する。ドナー細胞は直接、または標準法により抗原掲示樹状細胞に転換して用いることができる。ドナー細胞とレシピエント細胞の割合は、0.01:1(樹状細胞の場合)から1:1(放射線照射したドナー非T細胞の場合)の間で可変である。投与するTregの数は105から108細胞/kgの範囲であり得る。Treg活性を維持するために用いるドナー細胞の数は104から107細胞/kgの範囲であり得る。ドナーB細胞または関連ドナー由来の組織適合性B細胞は、EBV形質転換によりかなり増殖させることができ、ドナー抗原の供給源として用いることができる。
【0022】
本明細書において用いられる「ドナー組織」なる用語は、ある個体から別の個体へ移植可能なあらゆる組織であり、好ましくは同種内の組織である。ドナー組織には、腎臓、心臓、肺、肝臓、腸、膵臓および膵島細胞が含まれる。好ましいレシピエントはヒトである。
【実施例】
【0023】
エキソビボで誘導されたTregは、同種異系脾臓細胞免疫により、非リンパ球減少性マウスにおいて心臓同種異系移植の拒絶反応を実質的に遅らせることができる。これらのマウスにTGF−β誘導性Tregを投与すると、抗原特異的な免疫寛容誘発効果がある。これらの細胞は、レシピエントCD4+細胞を、T細胞非反応性に関与するCD4+CD25+細胞となるよう誘導した。これらのCD4+CD25+細胞およびその免疫寛容誘発作用を維持するために、同種異系ドナー細胞の連続的な追加免疫が必要であった。
【0024】
材料および方法
動物
雄のC57BL/6 (B6, H−2b)、DBA/2 (D2, H−2d)およびC3H (H−2k)マウスをJackson Laboratory (Bar Harbor, ME)から購入した。8から10週齢のマウスを移植片ドナー、レシピエントおよび対照として用いた。南カリフォルニア大学のIACUCに認可された動物取扱いプロトコルに則り、南カリフォルニア大学の従来の施設で、全てのマウスを飼育した。
【0025】
抗体および試薬
以下の抗体をeBioscience (San Diego, CA)から入手した:抗CD3−PE (145−2011)、抗CD4−FITC (RM4−5)、抗CD4−PE (GK1.5)、抗CD8−PE (53−6.7)、抗CD25−PE (PC61)、抗CTLA−4−PE (UC10−4B9)、抗CD122−PE (51−14)、抗CD103−FITC (2E7)、抗IFN−γ (XMG1.2)、抗FoxP3 (FJK−16S)、抗Thy1.1−PE (A20)および抗Thy1.2−FITC (104)。抗H−2d−FITC (SF1−1.1)および抗H−2b (AF6−88.5)はBD Pharmingen (San Diego, CA)から入手した。アイソタイプコントロール抗体もまたeBioscienceおよびBD Pharmingenから入手した。抗GITR−ビオチン(BAF524)、抗IL−10 (mAb417)、抗TGF−β(mAb240)およびマッチアイソタイプコントロール抗体をR&D Systems(Minneapolis, MN)から入手した。
【0026】
細胞の調製および養子移植
D2脾臓細胞からナイロンウールカラム非付着性細胞を回収してT細胞を用意した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。24ウェルプレート(2ml/ウェル)(Becton Dickinson Labware, Franklin Lakes, New Jersey)上、添加物を含むAIM V (InVitrogen, Carlsbad, California)無血清培地内にて、Tエンリッチ細胞(1.5×106/ml)を同等数の放射線処理(2000 rad)したB6ナイロン付着性の非T細胞で5−6日間刺激した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。いくつかのウェルにTGF−β1(2ng/ml)およびrhuIL−2 (15から20ユニット/ml) (R&D Systems)を、またはIL−2のみを含ませた。6匹のD2マウスのグループに対し、B6心臓同種異系移植片を移植する1日前および移植した5日後に、IL−2およびTGF−β(Treg)により、またはIL−2のみ(Tcon)により予備刺激した1000万の同種異系活性化生存T細胞を、または免疫磁気ビーズ(Miltenyi)でCD25+細胞を枯渇させたTregを静脈内注射した。これらの調製物は約10%の残留B6刺激細胞を含んでいた。
【0027】
異所性心臓移植
腹部への血管新生を伴う異所性心臓移植は、本質的に既刊文献の通りに行った(Cramer, D. V., et al. In Handbook of Animal Models in Transpalntation Research, 1st edn., p. 149−160. CRC Press, Boca Raton, LA (1993))。拒絶反応を、触知できる心臓収縮の完全な休止と定義し、開腹術後に視覚で確認した。移植片が100日より長く生着したレシピエントを耐久性とみなし、屠殺してインビトロ実験に供した。
【0028】
T細胞機能のアッセイ
T細胞の同種異系抗原に対する増殖活性を、既刊文献の通りに、RPMI 1640培養培地、10%ウシ胎仔血清および添加物を加えた96ウェル平底プレート上に、2×105のT細胞および同数の放射線処理した同種異系非T細胞の標準的one wayリンパ球混合培養物を用いて測定した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。3複製の培養物において、4−5日後に3H−チミジンの取得として増殖を測定した。IFN−γ産生細胞を分析するために、細胞内サイトカイン染色を既刊文献の通りに行った(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。CD4+CD25+細胞の抑制活性を評価するために用いた培養物において、予備刺激した細胞とCD4+CD25−キラー細胞(responder cell)の割合は1:6であった。既刊文献の通りに、標準的な4時間アッセイにより、標的細胞(クロム標識化Con A芽球細胞)に対して様々な割合のエフェクター細胞を用いて、T細胞の細胞毒性活性を評価した。値は3複製培養物の平均±SEMを表し、またいくつかの実験においては106細胞あたりの溶解ユニットとして表した(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001))。溶解ユニットは30%の標的細胞を殺すのに必要なエフェクター細胞の数を基にした。
【0029】
リアルタイムRT−PCRによるFoxP3発現
TRIzol LS regent(Invitrogen)によりトータルRNAを調製した。第一鎖cDNAをOmniscript TR kit (Qiagen, Valencia, CA)とrandom hexamer primers (Invitrogen)を用いて合成した。LightCycler (Roche, Mannheim, Germany)を用いてリアルタイムPCRを行い、LightCycler Fast Start DNA Master SYBR Green I Kit (Roche)により説明書に従ってメッセージレベルを定量した。45サイクルで増幅を行った。回収したPCR産物とアンプリコンをアガロースゲル電気泳動にかけ目的のサイズに単一バンドがあることを確かめた。サンプルを3複製流し、FoxP3の相対的発現を、各標的の発現をヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)に標準化することにより決定した。プライマー配列は以下の通りである:HPRT 5’−TGA AGA GCT ACT GTA ATG ATC AGT CAA C−3’および5’−AGC AAG CTT GCA ACC TTA ACC A−3’;FoxP3プライマー:5’−CCC AGG AAA GAC AGC AAC CTT−3’および5’−TTC TCA CAA CCA GGC CAC TTG−3’ (Hori, S., Nomura, T., and Sakaguchi, S. Science 299:1057 (2003))。
【0030】
インビボ細胞毒性T細胞活性
8匹のDBA/2マウスのグループに、上記のようにエキソビボで調製した107のTregまたはTcon細胞を静脈内注射した。別のグループには注射しなかった。3週間後、各グループの4匹のマウスに107のC57BL/6脾細胞を静脈内注射した(免疫化)、または対照として用いた。Suvasらにより示されたアッセイ(Suvas, S., et al., J Exp Med 198:889 (2003))に改変を加えたアッセイにより、4週目にインビボ細胞毒性T細胞活性を評価した。C57BL/6またはC3Hマウスの脾臓の標的細胞を、高濃度(2.5mM)または低濃度(0.25mM)のCFSEで標識化した。同数(107)のドナー特異的細胞とサードパーティ標的細胞を合わせて混合し、対照および免疫化DBA/2マウスに静脈内経路で養子移植をした。レシピエントマウスからの養子移植の1、2または4時間後に脾細胞を回収し、赤血球を溶血させ、細胞懸濁液をフローサイトメトリーで解析した。各集団はそれぞれの蛍光強度で区別できた。非免疫化マウスの脾臓に移動したC57BL/6標的細胞の数は、免疫化マウスに注射した脾臓のC57BL/6標的細胞の数に等しいと仮定して、免疫化したマウスの標的細胞の死滅の割合を以下のように決定した:死滅率(%)=[(対照マウスのCFSE+サブセットの百分率−免疫化マウスのCFSE+の百分率)÷対照マウスのCFSE+の百分率]×100。
【0031】
統計解析
マウスのグループ間の統計的に有意な差異についての解析は、GraphPad PRISM software (GraphPad, San Diego, CA)を用いて、t検定およびWilcoxon検定、生存曲線のLog rank検定により行った。
【0032】
結果
エキソビボで調製した制御性T細胞での処理により、心臓同種異系移植片の生着が著しく延長される。
我々はTGF−βがCD4+とCD8+の両細胞をサプレッサー細胞となるよう誘導することを示しており(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Gray, J. D., et al., J Exp Med 180:1937 (1994))、また他の研究者により、FoxP3を発現し、CD4+CD25+制御性T細胞と同様の機能的特性を有するCD8+制御性細胞が示されている(Xystrakis, E., et al., Blood 104:3294 (2004))ことから、未分離のT細胞からTregを調製した。我々の目的は、エキソビボでTGF−βにより誘導されたCD4+およびCD8+Tregの組み合わせを単独療法として用いると、完全にMHCミスマッチの心臓同種異系移植片の生着を延長することができるかどうかを知ることであった。DBA/2 (H−2d)T細胞と放射線処理したC57BL/6(H−2b)脾臓細胞をIL−2およびTGF−βとともに5から6日間培養した後、TGF−βを含む培養物においてはおよそ初期数のT細胞を、TGF−βを含まない培養物においては50%のT細胞を回収した。IL−2およびTGF−βを含む培養物において、60±4.1%のCD4+細胞がCD25を発現し、55±4.8%のCD8+細胞がこのマーカーを発現した。これらの細胞をTregと呼ぶ。TGF−βを含まない培養物において、これらの値はそれぞれ45±3.4%および49±4.1%であった。これらの細胞をTconと呼ぶ。レシピエントマウスへ注射した1000万の細胞のうち、Treg調製物は3.4±0.3×106のCD4+CD25+細胞および2.1±0.2×106のCD8+CD25+細胞を含んでいた。Tcon調製物はそれぞれ2.1±0.2×106のCD4+CD25+細胞および1.6±0.15×106のCD8+CD25+細胞を含んでいた。
【0033】
D/2レシピエントへ移植したB6マウスの全心臓が移植後11日以内に拒絶された。移植の1日前および移植後5日目に1000万のTregを投与した場合、B6異所性心臓移植片の生着が100日まで延長され、ここで実験を終了した。一方、同等数のTconを投与したD2マウスにおいては、拒絶反応が加速された(図1)。CD25+細胞が完全に枯渇するとすべての抑制効果が消失したので、生着の延長はこのサブセットに依存していた。
【0034】
Treg細胞の投与によりレシピエントに抗原特異的耐性が生じる。
次に我々は長期間の抑制効果の作用機序を調べるためのモデルを設計開発した。D2マウスに107のTregまたはTcon細胞の単回注射を行った。一ヶ月後、ドナー同種異系抗原に対するT細胞反応について試験した。図2は、Tconを注射したマウスにおいてH−2b抗原に対して活発に細胞増殖が起こったことを示している。一方、Treg細胞を注射したマウスは非反応性であった。同種異系抗原に攻撃されてもマウスT細胞は増殖できなかった(図2A)。CD8+細胞はIFN−γを産生できず(図2Bおよび2C)、また、インビトロにおけるさらなる刺激の後でさえもH−2b標的細胞を死滅させることができなかった(図2D)。このT細胞非反応性は抗原特異的であった。D2 T細胞はサードパーティのC3H H−2k刺激細胞に反応して激しく増殖した(図2A)。
【0035】
インビトロにおけるT細胞非反応性効果の実証に加え、我々はインビボにおいて同様の効果を観察した。H−2b同種異系抗原によりあらかじめ予備刺激したTreg細胞を投与した後にドナー細胞で追加免疫したマウスに、CFSE標識化ドナー細胞およびサードパーティの標的細胞を注射し、脾臓におけるこれらの細胞の存在について調べた。予備実験においては、免疫化した場合、各細胞の注射後2時間以内にドナーの標的細胞は著しく減少するが、サードパーティの標的細胞はそれ程は減少しないことが示されている(図3A)。しかしながら、Tregを投与したマウスの場合は、同等数のCFSE標識化ドナー標的細胞が対照マウスおよび免疫化マウスに観察された。一方、Tconを投与したマウスの場合、ドナーおよびサードパーティ標的細胞の両方の数は著しく減少した。サードパーティ標的細胞の減少は、おそらく、ドナー同種異系抗原に対する活発なCTL反応と関係する非特異的CTL活性を反映している。表Iは、観察された効果が各グループの4匹のマウスにおいて非常に類似していることを示している。インビボにおけるCTLアッセイにはインビトロへの拡張は必要ないので、このアプローチはインビボにおけるTregの機能の直接的な証拠と見なされる(Suvas, S., et al., J Exp Med 198:889 (2003))。
【0036】
【表1】
【0037】
T細胞非反応性は、CD4+CD25+細胞に依拠し、連続的な特異的抗原刺激を要する。
次の一連の実験では、抑制効果にはCD4+CD25+細胞が必要であることを確認し、T細胞非反応性を維持するためには特異的抗原の連続的な刺激が必要であることを明らかにした。マウスのグループにTregまたはTconを単回注射した、または注射しなかった。いくつかのマウスにドナー同種異系抗原の追加免疫注射を2週間毎に行い、他のマウスには注射をせず対照とした。追加免疫注射を行ったマウスにおいては、Tregを投与したマウスの脾臓のCD4+CD25+細胞は続く3ヵ月間漸進的に増加したが、Tcon細胞を投与したマウスでは増加しなかった(図4A)。これらのマウスはリンパ球減少性ではなかったので、この増加は、他の研究者により示されているCD4+CD25+細胞の恒常的増殖に起因するものではあり得なかった(Annacker, O., et al., J Immunol 166:3008 (2001))。この増殖はドナー同種異系抗原による連続的追加免疫に依拠するものであった。二ヶ月の時点にマウスにH−2b B6細胞のかわりにH−2k C3Hマウスの脾臓細胞を投与した場合、一ヶ月以内にCD4+CD25+細胞数はベースライン値まで減少した(図4B)。Tregを投与したマウスにはCD8+細胞が1%未満しか含まれないことから、脾臓CD8+CD25+細胞は、おそらく重要な働きをしていない。
【0038】
TregがCTL活性を遮断し続けるには特異的抗原による連続刺激が必要であった。図4Cは、Tregを投与し、次いで3から5回のドナー同種異系抗原の追加免疫を2から3ヶ月間行ったマウスは、抗H−2b CTL活性を展開させることができなかったことを示している。しかしながら、ドナー細胞の代わりにサードパーティのH−2k細胞を注射した場合、マウスは一ヶ月以内に強い抗H−2b CTL活性を示した(図4D)。
【0039】
次に我々は、Tregの投与に次いでドナー同種異系抗原の追加免疫を行ったマウスにおいて数が増加したCD4+CD25+細胞は、FoxP3を発現し、T細胞非反応性のために必要であるという証拠を得た。TregまたはTconを投与し、または投与せず、二週間毎に追加免疫化を行ったマウスを2ヵ月目に屠殺した。脾臓CD4+細胞の全数は各グループにおいて類似していたが、CD4+CD25+サブセットはTregを投与したマウスにおいて著しく増加していた(表II)。CD4+CD25+およびCD4+CD25−細胞のリアルタイムPCRによる実験において、CD25+サブセットはかなり高いレベルのFoxP3 mRNAを発現していることが示された(図5B)。さらに、CD4+CD25+FoxP3+細胞の数をフローサイトメトリーにより定量すると、Tconを投与したマウスと比較してTregを投与したマウスの方が顕著に増加していた(図5Cおよび5D)。
【0040】
CD4+CD25+細胞が、B6同種異系抗原に対する抗原特異的非反応性に関与していることはほぼ確実である。図6Aに示されるように、CD25+細胞の枯渇により免疫寛容誘発効果が消失し、このサブセットを再度加えると抑制が回復した。CTL活性においても同様に、このCD25+細胞が枯渇すると同種異系CTL活性はTconを投与したマウスと同等のレベルまで増加した。再度CD25+Tregを1:10の割合で加え直すと、抑制活性が回復した(図6B)。CD8+CD25+細胞は全CD25+細胞の1%を構成するのみであるので、この抑制効果はおそらくCD4+CD25+細胞に依拠すると推定される。しかしながら、これらの実験はCD8+サプレッサー細胞の作用を除外していない。
【0041】
【表2】
【0042】
ドナー制御性T細胞はインビボにおいてレシピエントT細胞を免疫寛容誘発性CD4+CD25+細胞となるよう誘導する。
増加したCD4+CD25+サプレッサー細胞がドナーTregの子孫であるかまたはレシピエントに由来するものであるかを調べるために、Thy1.1 B6マウスをTregの供給源とし、類遺伝子のThy1.2 マウスをレシピエントとして、上記のプロトコルの実験を繰り返した。ここで、B6マウスのCD4+CD25+細胞は、800万の抗H−2d Tregを単回注射した後、三ヶ月間漸進的に増加したこと、また、ほとんど全ての細胞がレシピエントThy 1.2起源であったことを再度確認しておく(図7A)。一ヶ月目に、脾臓T細胞のうち1%のみが抗Thy1.1によって染色された(結果は図示せず)。Thy 1.2ネガティブのT細胞は2%未満でありこれらの細胞はCD25を発現しなかった(図7B)。Tconと比較して、TregはCD25、CD122(IL−2R鎖)、CD103(アルファEインテグリン)およびGITRを発現する細胞に豊富であり(図7Cおよび7D)、またほとんどのCD122およびCD103細胞がCD25を発現した(図7C)。表IIIも参照のこと。他の研究者はTGF−βがCD103発現を上方調節することを示している(Cerwenka, A., et al., J Immunol 153:4367 (1994))。
【0043】
【表3】
【0044】
誘導されたマウスの脾臓CD4+CD25+細胞の機能特性は、先に報告されている誘導されたヒト末梢血CD4+細胞と類似していた(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。TGF−βにより誘導された天然CD4+CD25+細胞およびヒト天然様CD4+CD25+細胞はサイトカイン非依存的抑制活性を有するが(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001);Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004);Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001))、我々の誘導されたCD4+CD25+細胞の抑制活性は抗TGF−βまたは抗IL−10のいずれかにより消失した(図8A)。大変興味深いことに、Tregを投与したマウスのCD4+CD25+細胞の抗H−2d抑制活性は、Tconを投与したマウスのCD4+CD25+細胞よりもかなり大きかった。抗H−2d CD4+CD25+細胞のH−2k刺激細胞に対する抑制活性は最小限であったので、この作用は抗原特異的である(図8B)。これらの実験は、単一起源のCD25−キラー細胞を用い、CD4Treg細胞とCD4キラー細胞の割合を1:6として行った。この割合において、同種異系刺激細胞へのCD4+細胞の反応に対して、内在性CD4+CD25+調節細胞の抗原非特異的抑制活性は薄められている(図8C)。
【0045】
考察
今回の研究で、エキソビボでIL−2およびTGF−βにより誘導されたTregを用いると、更に何らかの免疫抑制を行わなくとも、完全にMHCミスマッチのマウスにおける心臓の同種異系移植片の生着を延長できることが確認された。また、この作用機序を調べるために、非移植マウスの同種異系細胞注入を繰り返し行った。同種異系細胞およびTGF−β(Treg)により予備刺激したT細胞を単回投与し、次いで連続的に同種異系抗原で追加免疫することにより、レシピエントにおいて長期間の抗原特異的非反応性を誘導できることを確認した。この免疫寛容誘発作用は、ドナーCD4+細胞をCD25+細胞へと誘導する投与Tregの二次的な能力のようであった。
【0046】
TGF−βは、CD4+およびCD8+細胞の両方をサプレッサー細胞となるよう誘導できることが確認されている。我々は1994年に、IL−2およびTGF−βにより活性化されたヒトCD8+細胞はT細胞依存的抗体産生のサイトカイン依存的サプレッサーとなることを報告した(Gray, J. D., et al., J Exp Med 180:1937 (1994))。我々は次に、TGF−βは未処理のCD4+細胞を、他の研究者らにより示された天然のCD4+CD25+細胞と見分けが付かない表現型および抑制活性を有するCD4+CD25+細胞となるよう誘導することを確認した(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001);Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004))。これらの細胞は接触依存性、サイトカイン非依存性の作用機序を有し、CD8+T細胞活性化の潜在的なインヒビターであった(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., J Immunol 167:1137 (2001))。我々は、TGF−βは内在性CD4+CD25+細胞を増殖させることはないが、CD4+CD25−細胞がこの機能を展開するよう誘導したことを確認した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。次に、Chenらは、TGF−βはマウスのCD4+CD25−細胞をFoxP3を発現するCD25+サプレッサー細胞となるよう誘導することを報告し(Chen, W., et al., J Exp Med 198:1875 (2003))、我々の研究室と他の研究室はこの知見を確認した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004); Fu, S., et al. Am J Transplant 4:1614 (2004);Schramm, C., et al., Int Immunol 16:1241 (2004); Park, H. B., et al., Int Immunol 16:1203 (2004);Fantini, M. C., et al., J Immunol 172:5149 (2004))。Blazarらは先の研究において、IL−2およびTGF−βにより寛容化されたCD4+CD25−細胞は、同種異系抗原誘導性の移植片対宿主病のモデルにおいて生存率を増加させられることを見出した(Chen, Z. M., et al., Blood 101:5076 (2003))。
【0047】
我々がTGF−βによってCD8+細胞をサプレッサー細胞となるよう誘導することに成功し、また他の研究者らがCD8+調節細胞は心臓同種異系移植片の拒絶反応を抑制できることを示したので(Liu, J., et al., Transpl Immunol 13:239 (2004))、我々は初期研究においてCD4+およびCD8+細胞の両方を含有する全T細胞調製物を利用した。先に使用したマウスの移植片対宿主病モデルを用いた予備研究において(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))、我々はCD4+TregとCD8+Tregの組み合わせは精製CD4+Tregよりもより強力な治療効果を有することを見出した(未発表記録)。本発明の実験では、我々がレシピエントにおいて確認したCD8+CD25+細胞は少数のみであり、移植後一ヶ月のレシピエントにおいて残存していたThy1.1類遺伝子T細胞は1%より少なかった。それでもなお、TGF−βにより誘導されたCD8+Tregが観察された治療効果に貢献しているという可能性を排除することはできない。
【0048】
本研究において、レシピエント起源のCD4+CD25+細胞数は、二週間毎に行った同種異系細胞による追加免疫に反応して漸進的に増加した。CD25は活性化T細胞のマーカーであるが、我々が観察した細胞は同種異系エフェクター細胞ではないようである。これらの細胞はドナー同種異系抗原に対して非反応性であった。それらは、レシピエントT細胞の、ドナー同種異系抗原に反応して増殖しサイトカインを産生する能力をブロックし、CD8+細胞がCTL活性を展開するのを妨げた。さらに、インビボCTLアッセイにおいてドナー標的細胞が残留していたことは、上記インビボにおけるTreg活性のさらなる証拠となっている。最後に、これらのCD4+CD25+細胞がFoxP3 mRNAおよびタンパク質の両方を発現するという証拠は、インビボ追加免疫によりCD4+CD25+調節細胞が増殖したことを強く示唆している。
【0049】
我々の研究結果は、CD4+CD25+制御性細胞は移植片の拒絶反応に対して保護作用を有するという他の報告と一致している。Van Maurikらは、CD4+CD25+を間接的方法により誘導したが、これらの細胞は心臓の同種異系移植片の生着を著しく延長させることができることを示している(van Maurik, A., et al., J Immunol 169:5401 (2002))。Benghiatらは、最近、天然CD25+Treg細胞はTh1およびTh2型の同種異系ヘルパーT細胞の反応を制御することを報告した (Benghiat, F.S., et al., Trnasplantation 79:648 (2005))。これら両グループは保護的CD4+CD25+細胞は連続的な抗原刺激を要求することを報告している(Cobbold, S. P., et al., Transpl Int 16:66 (2003);Thorstenson, K. M. and Khoruts, A., J Immunol 167:188 (2001))。SchenkらはCD4+CD25+細胞が枯渇すると心臓同種異系移植の急性拒絶反応が著しく促進されることを報告している(Schenk, S., et al., J Immunol 174:3741 (2005))。同種異系反応性細胞にエピトープが伝播すると慢性の拒絶反応の原因となりうるので(Ciubotariu, R., et al., J Clin Invest 101:398 (1998))、Salamaらは、CD4+CD25+細胞はこの反応を制限している可能性があり、よって保護的役割を持つということを提案している(Salama, A. D., et al., J Am Soc Nephrol 14:1643 (2003))。
【0050】
いくつかの研究では、インビトロにてポリクローナルCD4+CD25+細胞が他のCD4+細胞をサプレッサー細胞となるよう誘導し得ることが示されているが(Jonuleit, H., et al., J Exp Med 196:255 (2002); Dieckmann, D., et al., J Exp Med 196:247−53 (2002))、他の研究では、間接的方法を用いてインビボにおける感染耐性を実現している(Qin, S., et al., Science 259:974 (1993))。これは、エキソビボで誘導されたTregがレシピエントCD4+細胞を同様の抑制活性を持つCD25+細胞となるよう誘導し得ることの初めの実証である。このように、このTGF−βは制御性T細胞が従来の治療法よりもワクチン様に働くよう誘導した。これらはレシピエントにおいて活発な保護的免疫反応を引き出すことにより臓器移植の拒絶反応を防ぐようである。
【0051】
寛容化レシピエントから採取したCD4+CD25+細胞の機能特性試験から、それらの作用機序は抗TGF−βまたは抗IL−10のいずれかによりブロックされ得ることが明らかになった。この結果はTGF−βにより誘導されたヒトCD4+CD25+調節細胞の研究と一致している。我々は、エキソビボで同種異系抗原特異的サプレッサー細胞となるよう誘導された未処理のCD4+細胞の抑制作用を、抗TGF−βはブロックできなかったことを報告した。それにもかかわらず、これらの細胞は再刺激後にTGF−βおよびIL−10の両方を産生し、この両サイトカインはこれらのCD4+CD25+Tregが他のCD4+CD25−をサプレッサー細胞となるよう誘導するのに必要であった。さらに、二次的CD4+CD25+Tregの抑制作用は、抗TGF−βまたは抗IL−10のいずれかによりブロックされた。このように、インビトロにてサイトカイン非依存性抑制効果を有するCD4+CD25+Tregの投与は、インビボにおけるサイトカイン依存性抑制効果をもたらし得る。マウスの免疫媒介性疾患の実験モデルにおいて、CD4+CD25+細胞の抑制作用を支持するTGF−βおよびIL−10の役割が証明されている(Coombes, J. L., et al., Immunol Rev 204:184 (2005); Peng, Y., et al., Proc Natl Acad Sci U S A 101:4572 (2004))。
【0052】
本研究において、全てではないがいくつかの同種異系間異所性心臓移植において長期間の生着を確認した。移植片の生着の延長を確認はしたが、100日まで生着したのはこれら6移植片のうち2移植片のみであったことは、インビボにおける耐性が達成されたとは考えにくい。一方、ドナー同種異系抗原の追加免疫を行ったマウスはドナー細胞に対する反応を開始し得なかった。これらの実験の結果から、耐性状態を確立しようとする試みにおいて、心臓移植のみを行った後にはおそらくドナー抗原が排除されて不足しているのでおそらく十分には存在しない可能性のあるTregの活性を維持するために、持続的な抗原刺激を行う必要があり得るということが推察される。移植後100日で屠殺されたマウスの心臓組織からは、急性または慢性の拒絶反応の古典的病理学的証拠は示されなかった。しかしながら、機能に問題はないものの、心筋には中程度の単球の浸潤があった。残念なことに、実験を行った時点で凍結組織を保存していなかったので、これらの単核細胞により示されたFoxP3 mRNAが存在したかを調べることはできず、よってこの単核細胞の浸潤が慢性拒絶反応の非定型の症状である可能性を排除することはできない。関連のあるドナーMHC同種異系抗原をマウスに追加注射するというさらなる実験を行うと、観察される移植片生着結果が改善し、また観察される単核細胞浸潤が減少する可能性がある。レシピエントの免疫系を、同種異系活性化反応よりもドミナントな制御性反応を展開するよう改変するために、エキソビボで調製したTGF−β処理T細胞を使用することは、臨床の臓器移植のための新規な治療戦略を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、エキソビボにてTGF−βにより誘導されたドナー抗H−2b特異的Tregにより、ミスマッチ同種異系間心臓移植片が長期間生着することを示す。制御性T細胞(Treg)は、DBA/2 (D2, H−2d)T細胞を、TGF−β(2ng/ml)の存在下、放射線処理したC57BL/6 (B6, H−2b)非T細胞およびIL−2により、5−6日間刺激して調製した。IL−2のみで刺激したT細胞は対照として用いた(Tcon)。B6の心臓を移植したD2マウスには、移植の1日前および5日後に10×106のTreg、TconまたはCD25+細胞枯渇化Treg細胞を静脈内注射した。各グループにつき6匹のマウスを用いた。
【0054】
【図2A】図2は、投与された抗H−2bTregは、同種異系抗原特異的なT細胞非反応性を誘導することを示す。4匹の未処理DBA/2マウスのグループに、図1に記載のように調製した10×106のD2 TconまたはTreg細胞を静脈内注射した。別の注射をしなかったグループをさらに対照として用いた。一ヶ月後、マウスを屠殺し、インビトロにてB6またはサードパーティC3H (H−2k)刺激細胞により脾臓T細胞の同種異系活性化処理を4日間行った。A. 増殖活性(1分当たりの平均カウント数±SEM)。P値は、Treg細胞を投与したマウスと、Tcon細胞を投与したマウスまたは細胞を投与しなかったマウス(Nil)の間の有意な差異を示す。
【0055】
【図2B】B. フローサイトメトリーにより測定した、H−2b抗原に反応してIFN−γを産生するCD8+細胞の割合の例。
【0056】
【図2C】C. H−2bおよびH−2k抗原に対してIFN−γを産生する脾臓CD8+細胞の数。P値は上記のように決定した。実験は繰り返し行い同様の結果を得た。
【0057】
【図2D】D. 10×106 B6脾細胞を、10×106のD2 Treg細胞とともに、または単独で静脈内注射してDBA/2マウスを免疫化した。非免疫化マウスを対照として用いた。一ヶ月後、生の脾臓T細胞を抗H−2bCTL活性について試験した、またはB6刺激細胞により同種異系活性化させた。MLR培養物からの細胞を再度カウントし、示したエフェクター細胞対標的細胞の比率におけるCTL活性についてアッセイした。値は6匹のマウスの平均±SEMを示す。実験を繰り返し、同様の結果を得た。
【0058】
【図3】図3は、抗H−2bTregの投与によりインビボにおける細胞毒性活性が減少することを示す。実験設計は図1に記載したものと同様である。未処理のDBA/2マウスに10×106のD2 TconまたはTreg細胞を静脈内注射した、または注射しなかった(N=8/グループ)。3週目に、各グループの4匹(2分の1)のマウスに10×106のB6脾細胞を注射した。B6細胞に対する免疫反応を評価するために、一週間後に全てのマウスに、明強度で(brightly)CFSE標識化した10×106のB6脾細胞、および同等数の暗強度で(dimly)CFSE標識化したC3H脾細胞を投与した。2時間後にマウスを屠殺し、フローサイトメトリーによりCFSE染色強度について脾臓細胞を調べた。結果は、免疫化マウスにおいて死滅したB6またはサードパーティC3HのCFSE染色細胞の、非免疫化マウスと比較した割合として示す。
【0059】
【図4】図4は、連続した抗原刺激により、CD4+CD25+細胞が漸進的に増加し、免疫寛容誘発効果が維持されることを示す。A. 10×106のD2 Treg(丸)、Tcon(四角)を単回注射した、または細胞を注射しなかった(三角) 6匹のマウスのグループ。塗りつぶした丸、四角、三角は、2週間毎に放射線処理した10×106のH−2b B6脾細胞を注射したもの。白丸、白い四角、白い三角は同種異系抗原で追加免疫しなかったもの。月毎に細胞計数およびフローサイトメトリーを行いマウスの脾臓のCD4+CD25+細胞数を測定した。同種異系抗原を投与したマウスにおけるCD4+CD25+細胞の抗原依存的増加に注目されたい。B. TconまたはTregの単回投与の2ヵ月後に、いくつかのグループに特異的抗原を連続的に投与し、他のグループにはサードパーティのH−2k (C3H)抗原を注射し、更に二週間後にも注射した。Tregを投与しH−2b細胞で追加免疫したマウスにおいて増加したCD4+CD25+細胞数は、代わりにH−2K細胞を投与するとベースライン値まで減少した点に注意されたい。C. 10×106の同系のTconまたはTregを単回静脈内注射し、抗原を連続的に供給するために放射線処理した10×106のB6脾細胞を二週間毎に投与したD2マウス。注射後1、2および3ヵ月後に、同種異系MLRにおけるCTL活性について脾臓のT細胞を試験し、結果を溶解ユニット(平均±SEM)として表した。1溶解ユニットは30%の溶解に必要なリンパ球の数である。各グループにつき6匹のマウスを各時点に試験した。D. 免疫寛容誘発反応は抗原依存的であった。図4Bにおいて記載したプロトコルを用いて、2ヵ月目にH−2b細胞をH−2k細胞に置き換えて投与し、一ヶ月後にマウスの抗B6 CTL活性について試験した。この時H−2b抗原刺激の中断に附随してCTL活性が失われたことに注意されたい。
【0060】
【図5】図5は、CD4+CD25+細胞が増加したレベルのFoxP3 mRNAおよびタンパク質を発現することを示す。実験設計は図4に示したものと同様である。10×106の同系のTreg、Tconを単回注射した4匹のD2マウスのグループ。別の2匹のマウスにはT細胞を注射しなかった。示した全てのマウスに放射線処理した10×106のH−2b B6脾細胞を二週間毎に注射した。二ヶ月目に各マウスの脾臓CD4+CD25+細胞数を細胞計数およびFACS染色により測定した。A. 個々のマウスから脾臓のCD4+CD25+細胞を免疫磁気ビーズにより陽性選択しFoxP3 mRNAをリアルタイムPCRにより定量した。示した数は各グループの平均±SEMである。B. これらのCD4+CD25+細胞における代表的なFoxP3タンパク質発現を抗FoxP3抗体染色により測定した。C. 示した数は、各グループの全CD4+CD25+FoxP3+細胞の平均±SEMを示す。
【0061】
【図6】図6は、CD4+CD25+細胞がドナー同種異系抗原に対する耐性に関係することを示す。A. 三ヶ月前にTcon、Tregを単回注射した、または注射しなかった(投与せず)マウスから、脾臓T細胞、培養前にCD25細胞を枯渇させたT細胞、および、CD25細胞枯渇化T細胞に10%のこれらのCD25+細胞を加え直したものを準備した。これらのD2 T細胞をB6刺激細胞により同種異系活性化し、増殖能について試験した。CD4+CD25+細胞は抑制効果に関与していたことに注目されたい。B. 各T細胞調製物を抗B6 CTL活性についても試験したところ、これらの抑制効果もCD25+細胞に依拠していた。示した値は各グループの6匹のマウスの代表である。
【0062】
【図7】図7は、Tregを投与すると、CD103、CD122およびGITRを発現するレシピエントCD4+CD25+細胞が増加することを示す。レシピエントT細胞と投与したT細胞を区別するために、B6 Thy1.1 マウス細胞から抗H−2d TregおよびTconを調製し、8×106細胞を類遺伝子Thy 1.2マウスに投与した。上記の繰り返し刺激のプロトコルを用いて、CD4+CD25+細胞の数および表現型を3ヶ月間経時的に評価した。A. 各月の全レシピエントThy 1.2 CD4+CD25+細胞数。B. CD4、Thy1.2およびCD25染色した脾臓細胞の1ヵ月および3ヵ月目のフローサイトメトリープロファイル。示した細胞はCD4+細胞にゲートをかけたものである。C. Thy 1.2ゲートにおけるCD25、CD122およびCD103を発現するCD4細胞の割合。
【0063】
【図8】図8は投与したTregによりレシピエントCD4+細胞が抗原特異的サプレッサー細胞となるよう誘導されることを示す。A. TconまたはTregの投与から3ヵ月後に、脾臓CD4+CD25+およびCD4+CD25−細胞を細胞選別により採取したところ、生の同系CD4+CD25−細胞の、H−2dへの同種異系反応に対する、それらの抑制効果はベースライン値を示した。CD4+CD25+細胞の非特異的抑制活性を薄めて失わせるために、選別したCD4+細胞とキラーCD4+CD25−細胞の割合を1:6とした(下記参照)。抗IL−10(10μg/ml)抗体または抗TGF−β(10μg/ml)抗体の中和がCD4+CD25+細胞の抑制活性に及ぼす効果も示している。B. サードパーティ(H−2k)細胞による刺激に附随する抑制の消失。結果を3複製ウェルの平均cpm±SEMとして示す(n=6マウス/グループ)。C. 未処理のCD4+CD25+細胞の抑制活性。未処理のマウスのCD4+CD25+およびCD25−細胞を細胞選別により準備し、CD4+CD25−細胞のH−2b刺激細胞への反応に対するそれらの抑制効果についてアッセイした。
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)に基づき、2005年4月1日出願の米国仮出願番号60/667,494の優先権および利益を主張するものであり、この仮出願の全体は引用により本明細書に包含する。
【0002】
移植組織の拒絶反応を防ぐ方法。エキソビボで調製したレシピエント同種異系活性化(alloactivated)制御性T細胞を移植前のレシピエントに導入する。移植後のレシピエントにドナー抗原を導入し、レシピエントの制御性T細胞を追加免疫する。
【背景技術】
【0003】
実験的自己免疫および移植モデルにおいて、クローン除去、アネルギーおよびエフェクター細胞の調節を含むいくつかの機構の働きにより、T細胞の同種異系反応性が改変でき、また免疫系を非反応性に導くことができることが示されている(Elster, E. A., et al., Transpl Immunol 13:87 (2004))。IL−2受容体のα鎖であるCD25を構造的に発現するCD4+細胞は、自己免疫の防止において重要な役割を持つだけでなく、移植片拒絶反応を防ぐこともできるという研究結果が増加している(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001); Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004); Cohen, J. L., et al., J Exp Med 196:401 (2004))。一般的な表現型と抑制作用を有するCD4+CD25+細胞は天然に生成されるか(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001); Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004))、または末梢に誘導され得る(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Chen, Z.M., et al., Blood 101:5076 (2003))。内在性CD4+CD25+細胞は増殖させることができるので(Godfrey, W. R., et al., Blood 104:453 (2004))臨床試験に用いることができる。これまでの研究により、非枯渇化CD4およびCD8モノクローナル抗体、同時刺激性インヒビター、または免疫抑制剤を用いて、移植片拒絶反応を防ぐ末梢CD4+CD25+細胞を間接的に誘導できることが示されている(van Maurik, A., et al., J Immunol 169:5401 (2002); Graca, L., Thompson, et al., J Immunol 168:5558 (2002); Taylor, P. A., et al., J Exp Med 193:1311 (2001); Gregori, S., et al., J Immunol 167:1945 (2001))。
【0004】
インターロイキン2(IL−2)とトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)の組み合わせにより、CD4+とCD8+細胞の両方を誘導し潜在的な免疫抑制活性を展開させることができる(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Gray, J. D., et al., J Exp Med 180:1937 (1994); Zheng, S. G., et al., J Immunol 169:4183 (2002); Horwitz, D. A., Semin Immunol 16:135 (2004); Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004); Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。未処理のヒトの末梢血CD4+細胞を同種異系抗原で刺激したものが、これらのサイトカインにより、天然のCD4+CD25+細胞と見分けの付かない表面表現型およびサイトカイン非依存性抑制作用を有するCD25+制御性細胞へと誘導された(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001))。さらに、これらのCD4+CD25+Treg細胞は、インビトロで他のCD4+細胞をサイトカイン依存性抑制活性を展開するよう誘導することができる(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213(2004))。
【0005】
H−2bの心臓移植の拒絶反応を防ぐために、他の免疫抑制物質は用いずに、エキソビボでIL−2およびTGF−βの存在下で調製したH−2d抗H−2bTreg細胞を用いた。これまでの実験では、DBA/2 (H−2d)マウスT細胞をIL−2およびTGF−βの存在下C57BL/6 (H−2b)同種異系抗原で刺激することにより、CD4+およびCD8+Treg細胞を調製した。これらのTregは抗原特異的であり、(DBA/2×C57BL/6)F1マウスにおいて全身性エリテマトーデスの特徴を有する慢性移植片対宿主病を防いだ。さらに、疾患を持つマウスにこれらの細胞を単回注射すると生存率が倍増した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。
【発明の開示】
【0006】
[発明の概要]
レシピエント由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、特定のメッセンジャータンパク質の存在下、1以上のドナー抗原、例えばドナーPBMC、または脾臓細胞などの他のドナー細胞により刺激する。その結果、ドナー抗原により同種異系活性化されたレシピエントの制御性T細胞が形成される。これらの細胞はドナー同種異系活性化レシピエント制御性T細胞またはレシピエントTreg細胞とも称する。処理に先駆けて、PBMCをさらに精製し、CD4+T細胞、CD8+T細胞および/またはNK−T細胞集団を調製することもできる。
【0007】
移植の前に、該レシピエントTreg細胞をレシピエントに導入する。レシピエントTreg細胞で移植前処理を行うと、CD25+制御性T細胞集団の増加により移植片拒絶反応が抑制される。移植後、少なくとも1つのドナー抗原をレシピエントに投与し、レシピエントTreg集団を追加免疫する。移植は外来組織適合性抗原の供給源となるが、Tregの増殖および機能の持続のためには適切な刺激抗原はあまりに遅くしか排除されないであろう。
【0008】
さらに別の側面において、レシピエントTreg細胞を移植の前にレシピエントに導入する。移植後に、レシピエントTregおよび少なくとも1つのドナー抗原をレシピエントに投与する。あるいは、移植の前に前処理として、レシピエントTreg細胞およびドナー抗原をレシピエントに導入し、さらに移植後にドナー抗原を単独またはレシピエントTregと組み合わせてレシピエントに導入する。
【0009】
臓器移植の拒絶反応を防ぐために、レシピエントTregをドナー抗原と組み合わせて用いることができる。例えば、心臓移植の場合、ドナー抗原を用いて制御性T細胞を調製し、単独またはドナー抗原と組み合わせてレシピエントに導入する。その後、ドナーの心臓をレシピエントに移植する。心臓移植後に、ドナー抗原を単独またはレシピエントTregと組み合わせてレシピエントに投与する。好ましいレシピエントはヒトである。
【0010】
[発明の詳細な説明]
ドナー同種異系活性化レシピエント制御性T細胞(「レシピエントTreg細胞」または「Treg細胞」)をドナー抗原と共に用いて移植組織の拒絶反応を防ぐ。以下のように、レシピエントTregは、エキソビボにてレシピエントPBMCをドナー抗原と共に培養して調製する。レシピエントTregはドナー抗原と共にまたは単独で、ドナー組織の移植前にレシピエントに導入する。その後、ドナー抗原を単独またはレシピエントTregと組合せてレシピエントに投与する。この処置により移植組織の拒絶反応を防ぐ。拒絶反応を防ぐということは、完全に防ぐこと、ならびに移植後にドナー抗原を使用しなかった場合と比較して遅れて拒絶反応が起こることも含むと理解されたい。
【0011】
レシピエントTreg細胞を調製する方法は当分野でよく知られている。(例えば、2001年10月18日発行の国際公開第2001/077299号パンフレットを参照のこと。本公報は引用により本明細書に含まれる。)簡潔に説明すると、レシピエントPBMCを調節性組成物の存在下、ドナー抗原とともに培養する。培養は約5−7日まで続けることができ、その後はレシピエントTreg細胞は免疫抑制機能を失い始める。
【0012】
別の方法においては、2005年4月5日出願の米国特許仮出願第60/668,676号明細書(引用により本明細書に含まれる)に開示されているように、レシピエントPBMCの2段階培養を用いる。簡潔に説明すると、この方法は以下を含む:(1)患者(patent)から細胞を取り出し、TGF−βおよび必要に応じてマイトジェンおよび/またはサイトカインを含む第一の調節性組成物により24−48時間処理する、(2)第一の調節性組成物を除去する、次いで(3)その細胞をサイトカインを含む第二の調節性組成物と共に培養する。これら2種の調節性組成物の処理により調製したTregは、TGF−βおよびサイトカインにより5−6日間処置したものと比較して、ヘルパー細胞に対してより高い割合のサプレッサー細胞を産生する。
【0013】
本明細書において「調節性組成物」なる用語は、レシピエントPBMCおよびドナー抗原と共に培養した際に、制御性T細胞の形成を引き起こすことができる組成物を意味する。一般に、これらの組成物は、TGFβを単独で、またはIL−2、IL−4、IL−10、IL−15および/またはTNIαのようなサイトカイン、と組み合わせて含む。IL−2は好ましいサイトカインである。
【0014】
適切な調節性組成物はまた、抗CD2抗体およびCD2リガンド、LFA−3などの抗CD2のようなT細胞アクチベーター、およびコンカナバリンA (Con A)またはブドウ球菌エンテロトキシン(staphylococcus enterotoxin)B(SEB)のようなT細胞アクチベーターの混合物または組み合わせをも含み得る。抗体抑制のための好ましい調節性組成物は、T細胞アクチベーター、IL−2およびTGF−βを含有する混合物である。好ましい態様において、抗CD3または抗CD28をTGFβおよびサイトカインと組み合わせて用いる。
【0015】
本明細書において「トランスフォーミング増殖因子β」または「TGF−β」は、3つのイソ型TGF−β1、TGF−β2およびTGF−β3を含むTGF−βファミリーのいずれかを意味する;Massague, J. (1980), J. Ann. Rev. Cell Biol 6:597を参照のこと。リンパ球および単球はこのサイトカインのβ1イソ型を産生する(Kehrl, J.H. et al. (1991), Int J Cell Cloning 9: 438−450)。TFG−βは取り扱う哺乳類細胞において活性なあらゆる形態のTFG−βであり得る。ヒトにおいては、目下組換えTFG−βが好ましい。好ましいヒトTGF−βはGenzyme Pharmaceuticals(Farmington, MA)から購入できる。一般に、使用するTGF−βの濃度は細胞懸濁1mlにつき約2ピコグラムから約5ナノグラムの範囲であり、約10pgから約4ngが好ましく、約100pgから約2ngが特に好ましく、1ng/mlが理想的である。
【0016】
IL−2は、取り扱う哺乳類細胞において活性なあらゆる形態のIL−2であり得る。ヒトにおいては、目下組換えIL−2が好ましい。組換えヒトIL−2はR&D Systems(Minneapolis, MN)から購入できる。一般に、使用するIL−2の濃度は細胞懸濁1mlにつき約1ユニットから約100U/mlの範囲であり、約5U/mlから約25U/mlが好ましく、10U/mlが特に好ましい。好ましい態様において、IL−2は単独では用いない。
【0017】
いくつかの態様において、マイトジェンを用いて細胞を活性化するのが望ましい;なぜなら、多くの休止期の細胞はサイトカインレセプターを大量に含まないためである。コンカナバリンAまたはブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)のようなマイトジェンを用いることにより、細胞が刺激されてサイトカインレセプターを生じ、こうして本発明の方法がより効果的となる。マイトジェンを用いる場合(当分野にて知られる通り、一般に用いる。)、1μg/mlから約10μg/mlの範囲の濃度で用いられる。さらに、当分野にて知られるように、マイトジェンを除去する成分、例えば、α−メチルマンノシドにより細胞を洗浄するのが望ましい場合がある。
【0018】
好ましい態様において、マイトジェン、例えば、抗CD2、抗CD3、抗CD28またはこれらのモノクローナル抗体の組み合わせ、特に抗CD3と抗CD28の組み合わせにより、T細胞を強く刺激する。二次培養においてTGF−β存在下または非存在下でT細胞を繰り返し刺激することが必要な場合がある。
【0019】
IL−2受容体のα鎖であるCD25を発現するCD4+T細胞のサブセットは、T細胞をドナー同種異系抗原に対して非反応性に誘導し維持することができ、それゆえ固体臓器移植における興味深い治療的可能性を持っている。エキソビボでIL−2およびTGF−βにより同種異系活性化された末梢CD4+細胞は、転写因子FoxP3を発現し、潜在的な抗原特異的サプレッサー細胞となる。組織不適合性の心臓移植と同時にTGF−βにより誘導された制御性T細胞を投与すると、同種異系移植片の生着が延長した。この結果を説明するために、移植を行っていないマウスに単回用量の制御性T細胞を注射し、移植の継続的な刺激を模倣するためにドナー細胞を2週間毎に投与した。脾臓CD4+CD25+細胞の増加が観察され、これらはレシピエント起源であった。これらの細胞は、抗原特異的およびサイトカイン依存的作用機序により、マウスをドナー同種異系抗原に対して非反応状態にした。CD4+CD25+細胞の増加およびそれらの免疫寛容誘発作用の両方が、継続的なドナー抗原の免疫追加に依拠していた。このように、エキソビボで調製された制御性T細胞は、MHCミスマッチ臓器移植片を拒絶反応から守る可能性のある宿主のサプレッサー細胞を産生するワクチンのように働くことが可能である。
【0020】
本明細書において用いられる「ドナー抗原」なる用語は、ドナーに由来する以下のようなあらゆる抗原であり得る:(1)レシピエントの制御性T細胞の形成を誘導する、または(2)レシピエントに投与した場合にレシピエントTreg集団を追加免疫する。ドナー抗原の例には、ドナー細胞、例えば脾臓細胞、末梢血単核細胞、骨髄細胞、リンパ節細胞、扁桃腺細胞、および組織適合性抗原を含有する組織抽出物などがある。ドナー抗原の他の例には、組換え技術により調製されたドナーの主要組織適合複合体(MHC)に由来するペプチドおよびタンパク質、ならびに関連MHCに由来するペプチドおよびタンパク質などがある。
【0021】
ドナー細胞のMHC抗原をタイピングした後、ドナーのPBMCまたは組織適合性PBMC、または好ましくは、ドナーにより共有される組換えMHCペプチドのレシピエントT細胞を活性化するのに十分な量を、レシピエントの精製CD4+および/またはCD8+細胞と共に培養する。活性化とは、当業者に既知の標準的な方法により評価する、特定表面マーカーの発現またはこれらの細胞の増殖と定義する。ドナー細胞は直接、または標準法により抗原掲示樹状細胞に転換して用いることができる。ドナー細胞とレシピエント細胞の割合は、0.01:1(樹状細胞の場合)から1:1(放射線照射したドナー非T細胞の場合)の間で可変である。投与するTregの数は105から108細胞/kgの範囲であり得る。Treg活性を維持するために用いるドナー細胞の数は104から107細胞/kgの範囲であり得る。ドナーB細胞または関連ドナー由来の組織適合性B細胞は、EBV形質転換によりかなり増殖させることができ、ドナー抗原の供給源として用いることができる。
【0022】
本明細書において用いられる「ドナー組織」なる用語は、ある個体から別の個体へ移植可能なあらゆる組織であり、好ましくは同種内の組織である。ドナー組織には、腎臓、心臓、肺、肝臓、腸、膵臓および膵島細胞が含まれる。好ましいレシピエントはヒトである。
【実施例】
【0023】
エキソビボで誘導されたTregは、同種異系脾臓細胞免疫により、非リンパ球減少性マウスにおいて心臓同種異系移植の拒絶反応を実質的に遅らせることができる。これらのマウスにTGF−β誘導性Tregを投与すると、抗原特異的な免疫寛容誘発効果がある。これらの細胞は、レシピエントCD4+細胞を、T細胞非反応性に関与するCD4+CD25+細胞となるよう誘導した。これらのCD4+CD25+細胞およびその免疫寛容誘発作用を維持するために、同種異系ドナー細胞の連続的な追加免疫が必要であった。
【0024】
材料および方法
動物
雄のC57BL/6 (B6, H−2b)、DBA/2 (D2, H−2d)およびC3H (H−2k)マウスをJackson Laboratory (Bar Harbor, ME)から購入した。8から10週齢のマウスを移植片ドナー、レシピエントおよび対照として用いた。南カリフォルニア大学のIACUCに認可された動物取扱いプロトコルに則り、南カリフォルニア大学の従来の施設で、全てのマウスを飼育した。
【0025】
抗体および試薬
以下の抗体をeBioscience (San Diego, CA)から入手した:抗CD3−PE (145−2011)、抗CD4−FITC (RM4−5)、抗CD4−PE (GK1.5)、抗CD8−PE (53−6.7)、抗CD25−PE (PC61)、抗CTLA−4−PE (UC10−4B9)、抗CD122−PE (51−14)、抗CD103−FITC (2E7)、抗IFN−γ (XMG1.2)、抗FoxP3 (FJK−16S)、抗Thy1.1−PE (A20)および抗Thy1.2−FITC (104)。抗H−2d−FITC (SF1−1.1)および抗H−2b (AF6−88.5)はBD Pharmingen (San Diego, CA)から入手した。アイソタイプコントロール抗体もまたeBioscienceおよびBD Pharmingenから入手した。抗GITR−ビオチン(BAF524)、抗IL−10 (mAb417)、抗TGF−β(mAb240)およびマッチアイソタイプコントロール抗体をR&D Systems(Minneapolis, MN)から入手した。
【0026】
細胞の調製および養子移植
D2脾臓細胞からナイロンウールカラム非付着性細胞を回収してT細胞を用意した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。24ウェルプレート(2ml/ウェル)(Becton Dickinson Labware, Franklin Lakes, New Jersey)上、添加物を含むAIM V (InVitrogen, Carlsbad, California)無血清培地内にて、Tエンリッチ細胞(1.5×106/ml)を同等数の放射線処理(2000 rad)したB6ナイロン付着性の非T細胞で5−6日間刺激した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。いくつかのウェルにTGF−β1(2ng/ml)およびrhuIL−2 (15から20ユニット/ml) (R&D Systems)を、またはIL−2のみを含ませた。6匹のD2マウスのグループに対し、B6心臓同種異系移植片を移植する1日前および移植した5日後に、IL−2およびTGF−β(Treg)により、またはIL−2のみ(Tcon)により予備刺激した1000万の同種異系活性化生存T細胞を、または免疫磁気ビーズ(Miltenyi)でCD25+細胞を枯渇させたTregを静脈内注射した。これらの調製物は約10%の残留B6刺激細胞を含んでいた。
【0027】
異所性心臓移植
腹部への血管新生を伴う異所性心臓移植は、本質的に既刊文献の通りに行った(Cramer, D. V., et al. In Handbook of Animal Models in Transpalntation Research, 1st edn., p. 149−160. CRC Press, Boca Raton, LA (1993))。拒絶反応を、触知できる心臓収縮の完全な休止と定義し、開腹術後に視覚で確認した。移植片が100日より長く生着したレシピエントを耐久性とみなし、屠殺してインビトロ実験に供した。
【0028】
T細胞機能のアッセイ
T細胞の同種異系抗原に対する増殖活性を、既刊文献の通りに、RPMI 1640培養培地、10%ウシ胎仔血清および添加物を加えた96ウェル平底プレート上に、2×105のT細胞および同数の放射線処理した同種異系非T細胞の標準的one wayリンパ球混合培養物を用いて測定した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))。3複製の培養物において、4−5日後に3H−チミジンの取得として増殖を測定した。IFN−γ産生細胞を分析するために、細胞内サイトカイン染色を既刊文献の通りに行った(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。CD4+CD25+細胞の抑制活性を評価するために用いた培養物において、予備刺激した細胞とCD4+CD25−キラー細胞(responder cell)の割合は1:6であった。既刊文献の通りに、標準的な4時間アッセイにより、標的細胞(クロム標識化Con A芽球細胞)に対して様々な割合のエフェクター細胞を用いて、T細胞の細胞毒性活性を評価した。値は3複製培養物の平均±SEMを表し、またいくつかの実験においては106細胞あたりの溶解ユニットとして表した(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001))。溶解ユニットは30%の標的細胞を殺すのに必要なエフェクター細胞の数を基にした。
【0029】
リアルタイムRT−PCRによるFoxP3発現
TRIzol LS regent(Invitrogen)によりトータルRNAを調製した。第一鎖cDNAをOmniscript TR kit (Qiagen, Valencia, CA)とrandom hexamer primers (Invitrogen)を用いて合成した。LightCycler (Roche, Mannheim, Germany)を用いてリアルタイムPCRを行い、LightCycler Fast Start DNA Master SYBR Green I Kit (Roche)により説明書に従ってメッセージレベルを定量した。45サイクルで増幅を行った。回収したPCR産物とアンプリコンをアガロースゲル電気泳動にかけ目的のサイズに単一バンドがあることを確かめた。サンプルを3複製流し、FoxP3の相対的発現を、各標的の発現をヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)に標準化することにより決定した。プライマー配列は以下の通りである:HPRT 5’−TGA AGA GCT ACT GTA ATG ATC AGT CAA C−3’および5’−AGC AAG CTT GCA ACC TTA ACC A−3’;FoxP3プライマー:5’−CCC AGG AAA GAC AGC AAC CTT−3’および5’−TTC TCA CAA CCA GGC CAC TTG−3’ (Hori, S., Nomura, T., and Sakaguchi, S. Science 299:1057 (2003))。
【0030】
インビボ細胞毒性T細胞活性
8匹のDBA/2マウスのグループに、上記のようにエキソビボで調製した107のTregまたはTcon細胞を静脈内注射した。別のグループには注射しなかった。3週間後、各グループの4匹のマウスに107のC57BL/6脾細胞を静脈内注射した(免疫化)、または対照として用いた。Suvasらにより示されたアッセイ(Suvas, S., et al., J Exp Med 198:889 (2003))に改変を加えたアッセイにより、4週目にインビボ細胞毒性T細胞活性を評価した。C57BL/6またはC3Hマウスの脾臓の標的細胞を、高濃度(2.5mM)または低濃度(0.25mM)のCFSEで標識化した。同数(107)のドナー特異的細胞とサードパーティ標的細胞を合わせて混合し、対照および免疫化DBA/2マウスに静脈内経路で養子移植をした。レシピエントマウスからの養子移植の1、2または4時間後に脾細胞を回収し、赤血球を溶血させ、細胞懸濁液をフローサイトメトリーで解析した。各集団はそれぞれの蛍光強度で区別できた。非免疫化マウスの脾臓に移動したC57BL/6標的細胞の数は、免疫化マウスに注射した脾臓のC57BL/6標的細胞の数に等しいと仮定して、免疫化したマウスの標的細胞の死滅の割合を以下のように決定した:死滅率(%)=[(対照マウスのCFSE+サブセットの百分率−免疫化マウスのCFSE+の百分率)÷対照マウスのCFSE+の百分率]×100。
【0031】
統計解析
マウスのグループ間の統計的に有意な差異についての解析は、GraphPad PRISM software (GraphPad, San Diego, CA)を用いて、t検定およびWilcoxon検定、生存曲線のLog rank検定により行った。
【0032】
結果
エキソビボで調製した制御性T細胞での処理により、心臓同種異系移植片の生着が著しく延長される。
我々はTGF−βがCD4+とCD8+の両細胞をサプレッサー細胞となるよう誘導することを示しており(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Gray, J. D., et al., J Exp Med 180:1937 (1994))、また他の研究者により、FoxP3を発現し、CD4+CD25+制御性T細胞と同様の機能的特性を有するCD8+制御性細胞が示されている(Xystrakis, E., et al., Blood 104:3294 (2004))ことから、未分離のT細胞からTregを調製した。我々の目的は、エキソビボでTGF−βにより誘導されたCD4+およびCD8+Tregの組み合わせを単独療法として用いると、完全にMHCミスマッチの心臓同種異系移植片の生着を延長することができるかどうかを知ることであった。DBA/2 (H−2d)T細胞と放射線処理したC57BL/6(H−2b)脾臓細胞をIL−2およびTGF−βとともに5から6日間培養した後、TGF−βを含む培養物においてはおよそ初期数のT細胞を、TGF−βを含まない培養物においては50%のT細胞を回収した。IL−2およびTGF−βを含む培養物において、60±4.1%のCD4+細胞がCD25を発現し、55±4.8%のCD8+細胞がこのマーカーを発現した。これらの細胞をTregと呼ぶ。TGF−βを含まない培養物において、これらの値はそれぞれ45±3.4%および49±4.1%であった。これらの細胞をTconと呼ぶ。レシピエントマウスへ注射した1000万の細胞のうち、Treg調製物は3.4±0.3×106のCD4+CD25+細胞および2.1±0.2×106のCD8+CD25+細胞を含んでいた。Tcon調製物はそれぞれ2.1±0.2×106のCD4+CD25+細胞および1.6±0.15×106のCD8+CD25+細胞を含んでいた。
【0033】
D/2レシピエントへ移植したB6マウスの全心臓が移植後11日以内に拒絶された。移植の1日前および移植後5日目に1000万のTregを投与した場合、B6異所性心臓移植片の生着が100日まで延長され、ここで実験を終了した。一方、同等数のTconを投与したD2マウスにおいては、拒絶反応が加速された(図1)。CD25+細胞が完全に枯渇するとすべての抑制効果が消失したので、生着の延長はこのサブセットに依存していた。
【0034】
Treg細胞の投与によりレシピエントに抗原特異的耐性が生じる。
次に我々は長期間の抑制効果の作用機序を調べるためのモデルを設計開発した。D2マウスに107のTregまたはTcon細胞の単回注射を行った。一ヶ月後、ドナー同種異系抗原に対するT細胞反応について試験した。図2は、Tconを注射したマウスにおいてH−2b抗原に対して活発に細胞増殖が起こったことを示している。一方、Treg細胞を注射したマウスは非反応性であった。同種異系抗原に攻撃されてもマウスT細胞は増殖できなかった(図2A)。CD8+細胞はIFN−γを産生できず(図2Bおよび2C)、また、インビトロにおけるさらなる刺激の後でさえもH−2b標的細胞を死滅させることができなかった(図2D)。このT細胞非反応性は抗原特異的であった。D2 T細胞はサードパーティのC3H H−2k刺激細胞に反応して激しく増殖した(図2A)。
【0035】
インビトロにおけるT細胞非反応性効果の実証に加え、我々はインビボにおいて同様の効果を観察した。H−2b同種異系抗原によりあらかじめ予備刺激したTreg細胞を投与した後にドナー細胞で追加免疫したマウスに、CFSE標識化ドナー細胞およびサードパーティの標的細胞を注射し、脾臓におけるこれらの細胞の存在について調べた。予備実験においては、免疫化した場合、各細胞の注射後2時間以内にドナーの標的細胞は著しく減少するが、サードパーティの標的細胞はそれ程は減少しないことが示されている(図3A)。しかしながら、Tregを投与したマウスの場合は、同等数のCFSE標識化ドナー標的細胞が対照マウスおよび免疫化マウスに観察された。一方、Tconを投与したマウスの場合、ドナーおよびサードパーティ標的細胞の両方の数は著しく減少した。サードパーティ標的細胞の減少は、おそらく、ドナー同種異系抗原に対する活発なCTL反応と関係する非特異的CTL活性を反映している。表Iは、観察された効果が各グループの4匹のマウスにおいて非常に類似していることを示している。インビボにおけるCTLアッセイにはインビトロへの拡張は必要ないので、このアプローチはインビボにおけるTregの機能の直接的な証拠と見なされる(Suvas, S., et al., J Exp Med 198:889 (2003))。
【0036】
【表1】
【0037】
T細胞非反応性は、CD4+CD25+細胞に依拠し、連続的な特異的抗原刺激を要する。
次の一連の実験では、抑制効果にはCD4+CD25+細胞が必要であることを確認し、T細胞非反応性を維持するためには特異的抗原の連続的な刺激が必要であることを明らかにした。マウスのグループにTregまたはTconを単回注射した、または注射しなかった。いくつかのマウスにドナー同種異系抗原の追加免疫注射を2週間毎に行い、他のマウスには注射をせず対照とした。追加免疫注射を行ったマウスにおいては、Tregを投与したマウスの脾臓のCD4+CD25+細胞は続く3ヵ月間漸進的に増加したが、Tcon細胞を投与したマウスでは増加しなかった(図4A)。これらのマウスはリンパ球減少性ではなかったので、この増加は、他の研究者により示されているCD4+CD25+細胞の恒常的増殖に起因するものではあり得なかった(Annacker, O., et al., J Immunol 166:3008 (2001))。この増殖はドナー同種異系抗原による連続的追加免疫に依拠するものであった。二ヶ月の時点にマウスにH−2b B6細胞のかわりにH−2k C3Hマウスの脾臓細胞を投与した場合、一ヶ月以内にCD4+CD25+細胞数はベースライン値まで減少した(図4B)。Tregを投与したマウスにはCD8+細胞が1%未満しか含まれないことから、脾臓CD8+CD25+細胞は、おそらく重要な働きをしていない。
【0038】
TregがCTL活性を遮断し続けるには特異的抗原による連続刺激が必要であった。図4Cは、Tregを投与し、次いで3から5回のドナー同種異系抗原の追加免疫を2から3ヶ月間行ったマウスは、抗H−2b CTL活性を展開させることができなかったことを示している。しかしながら、ドナー細胞の代わりにサードパーティのH−2k細胞を注射した場合、マウスは一ヶ月以内に強い抗H−2b CTL活性を示した(図4D)。
【0039】
次に我々は、Tregの投与に次いでドナー同種異系抗原の追加免疫を行ったマウスにおいて数が増加したCD4+CD25+細胞は、FoxP3を発現し、T細胞非反応性のために必要であるという証拠を得た。TregまたはTconを投与し、または投与せず、二週間毎に追加免疫化を行ったマウスを2ヵ月目に屠殺した。脾臓CD4+細胞の全数は各グループにおいて類似していたが、CD4+CD25+サブセットはTregを投与したマウスにおいて著しく増加していた(表II)。CD4+CD25+およびCD4+CD25−細胞のリアルタイムPCRによる実験において、CD25+サブセットはかなり高いレベルのFoxP3 mRNAを発現していることが示された(図5B)。さらに、CD4+CD25+FoxP3+細胞の数をフローサイトメトリーにより定量すると、Tconを投与したマウスと比較してTregを投与したマウスの方が顕著に増加していた(図5Cおよび5D)。
【0040】
CD4+CD25+細胞が、B6同種異系抗原に対する抗原特異的非反応性に関与していることはほぼ確実である。図6Aに示されるように、CD25+細胞の枯渇により免疫寛容誘発効果が消失し、このサブセットを再度加えると抑制が回復した。CTL活性においても同様に、このCD25+細胞が枯渇すると同種異系CTL活性はTconを投与したマウスと同等のレベルまで増加した。再度CD25+Tregを1:10の割合で加え直すと、抑制活性が回復した(図6B)。CD8+CD25+細胞は全CD25+細胞の1%を構成するのみであるので、この抑制効果はおそらくCD4+CD25+細胞に依拠すると推定される。しかしながら、これらの実験はCD8+サプレッサー細胞の作用を除外していない。
【0041】
【表2】
【0042】
ドナー制御性T細胞はインビボにおいてレシピエントT細胞を免疫寛容誘発性CD4+CD25+細胞となるよう誘導する。
増加したCD4+CD25+サプレッサー細胞がドナーTregの子孫であるかまたはレシピエントに由来するものであるかを調べるために、Thy1.1 B6マウスをTregの供給源とし、類遺伝子のThy1.2 マウスをレシピエントとして、上記のプロトコルの実験を繰り返した。ここで、B6マウスのCD4+CD25+細胞は、800万の抗H−2d Tregを単回注射した後、三ヶ月間漸進的に増加したこと、また、ほとんど全ての細胞がレシピエントThy 1.2起源であったことを再度確認しておく(図7A)。一ヶ月目に、脾臓T細胞のうち1%のみが抗Thy1.1によって染色された(結果は図示せず)。Thy 1.2ネガティブのT細胞は2%未満でありこれらの細胞はCD25を発現しなかった(図7B)。Tconと比較して、TregはCD25、CD122(IL−2R鎖)、CD103(アルファEインテグリン)およびGITRを発現する細胞に豊富であり(図7Cおよび7D)、またほとんどのCD122およびCD103細胞がCD25を発現した(図7C)。表IIIも参照のこと。他の研究者はTGF−βがCD103発現を上方調節することを示している(Cerwenka, A., et al., J Immunol 153:4367 (1994))。
【0043】
【表3】
【0044】
誘導されたマウスの脾臓CD4+CD25+細胞の機能特性は、先に報告されている誘導されたヒト末梢血CD4+細胞と類似していた(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。TGF−βにより誘導された天然CD4+CD25+細胞およびヒト天然様CD4+CD25+細胞はサイトカイン非依存的抑制活性を有するが(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001);Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004);Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001))、我々の誘導されたCD4+CD25+細胞の抑制活性は抗TGF−βまたは抗IL−10のいずれかにより消失した(図8A)。大変興味深いことに、Tregを投与したマウスのCD4+CD25+細胞の抗H−2d抑制活性は、Tconを投与したマウスのCD4+CD25+細胞よりもかなり大きかった。抗H−2d CD4+CD25+細胞のH−2k刺激細胞に対する抑制活性は最小限であったので、この作用は抗原特異的である(図8B)。これらの実験は、単一起源のCD25−キラー細胞を用い、CD4Treg細胞とCD4キラー細胞の割合を1:6として行った。この割合において、同種異系刺激細胞へのCD4+細胞の反応に対して、内在性CD4+CD25+調節細胞の抗原非特異的抑制活性は薄められている(図8C)。
【0045】
考察
今回の研究で、エキソビボでIL−2およびTGF−βにより誘導されたTregを用いると、更に何らかの免疫抑制を行わなくとも、完全にMHCミスマッチのマウスにおける心臓の同種異系移植片の生着を延長できることが確認された。また、この作用機序を調べるために、非移植マウスの同種異系細胞注入を繰り返し行った。同種異系細胞およびTGF−β(Treg)により予備刺激したT細胞を単回投与し、次いで連続的に同種異系抗原で追加免疫することにより、レシピエントにおいて長期間の抗原特異的非反応性を誘導できることを確認した。この免疫寛容誘発作用は、ドナーCD4+細胞をCD25+細胞へと誘導する投与Tregの二次的な能力のようであった。
【0046】
TGF−βは、CD4+およびCD8+細胞の両方をサプレッサー細胞となるよう誘導できることが確認されている。我々は1994年に、IL−2およびTGF−βにより活性化されたヒトCD8+細胞はT細胞依存的抗体産生のサイトカイン依存的サプレッサーとなることを報告した(Gray, J. D., et al., J Exp Med 180:1937 (1994))。我々は次に、TGF−βは未処理のCD4+細胞を、他の研究者らにより示された天然のCD4+CD25+細胞と見分けが付かない表現型および抑制活性を有するCD4+CD25+細胞となるよう誘導することを確認した(Sakaguchi, S., et al., Immunol Rev 182:18 (2001);Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., Semin Immunol 16:81 (2004))。これらの細胞は接触依存性、サイトカイン非依存性の作用機序を有し、CD8+T細胞活性化の潜在的なインヒビターであった(Yamagiwa, S., et al., J Immunol 166:7282 (2001); Piccirillo, C. A. and Shevach, E. M., J Immunol 167:1137 (2001))。我々は、TGF−βは内在性CD4+CD25+細胞を増殖させることはないが、CD4+CD25−細胞がこの機能を展開するよう誘導したことを確認した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004))。次に、Chenらは、TGF−βはマウスのCD4+CD25−細胞をFoxP3を発現するCD25+サプレッサー細胞となるよう誘導することを報告し(Chen, W., et al., J Exp Med 198:1875 (2003))、我々の研究室と他の研究室はこの知見を確認した(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:5213 (2004); Fu, S., et al. Am J Transplant 4:1614 (2004);Schramm, C., et al., Int Immunol 16:1241 (2004); Park, H. B., et al., Int Immunol 16:1203 (2004);Fantini, M. C., et al., J Immunol 172:5149 (2004))。Blazarらは先の研究において、IL−2およびTGF−βにより寛容化されたCD4+CD25−細胞は、同種異系抗原誘導性の移植片対宿主病のモデルにおいて生存率を増加させられることを見出した(Chen, Z. M., et al., Blood 101:5076 (2003))。
【0047】
我々がTGF−βによってCD8+細胞をサプレッサー細胞となるよう誘導することに成功し、また他の研究者らがCD8+調節細胞は心臓同種異系移植片の拒絶反応を抑制できることを示したので(Liu, J., et al., Transpl Immunol 13:239 (2004))、我々は初期研究においてCD4+およびCD8+細胞の両方を含有する全T細胞調製物を利用した。先に使用したマウスの移植片対宿主病モデルを用いた予備研究において(Zheng, S. G., et al., J Immunol 172:1531 (2004))、我々はCD4+TregとCD8+Tregの組み合わせは精製CD4+Tregよりもより強力な治療効果を有することを見出した(未発表記録)。本発明の実験では、我々がレシピエントにおいて確認したCD8+CD25+細胞は少数のみであり、移植後一ヶ月のレシピエントにおいて残存していたThy1.1類遺伝子T細胞は1%より少なかった。それでもなお、TGF−βにより誘導されたCD8+Tregが観察された治療効果に貢献しているという可能性を排除することはできない。
【0048】
本研究において、レシピエント起源のCD4+CD25+細胞数は、二週間毎に行った同種異系細胞による追加免疫に反応して漸進的に増加した。CD25は活性化T細胞のマーカーであるが、我々が観察した細胞は同種異系エフェクター細胞ではないようである。これらの細胞はドナー同種異系抗原に対して非反応性であった。それらは、レシピエントT細胞の、ドナー同種異系抗原に反応して増殖しサイトカインを産生する能力をブロックし、CD8+細胞がCTL活性を展開するのを妨げた。さらに、インビボCTLアッセイにおいてドナー標的細胞が残留していたことは、上記インビボにおけるTreg活性のさらなる証拠となっている。最後に、これらのCD4+CD25+細胞がFoxP3 mRNAおよびタンパク質の両方を発現するという証拠は、インビボ追加免疫によりCD4+CD25+調節細胞が増殖したことを強く示唆している。
【0049】
我々の研究結果は、CD4+CD25+制御性細胞は移植片の拒絶反応に対して保護作用を有するという他の報告と一致している。Van Maurikらは、CD4+CD25+を間接的方法により誘導したが、これらの細胞は心臓の同種異系移植片の生着を著しく延長させることができることを示している(van Maurik, A., et al., J Immunol 169:5401 (2002))。Benghiatらは、最近、天然CD25+Treg細胞はTh1およびTh2型の同種異系ヘルパーT細胞の反応を制御することを報告した (Benghiat, F.S., et al., Trnasplantation 79:648 (2005))。これら両グループは保護的CD4+CD25+細胞は連続的な抗原刺激を要求することを報告している(Cobbold, S. P., et al., Transpl Int 16:66 (2003);Thorstenson, K. M. and Khoruts, A., J Immunol 167:188 (2001))。SchenkらはCD4+CD25+細胞が枯渇すると心臓同種異系移植の急性拒絶反応が著しく促進されることを報告している(Schenk, S., et al., J Immunol 174:3741 (2005))。同種異系反応性細胞にエピトープが伝播すると慢性の拒絶反応の原因となりうるので(Ciubotariu, R., et al., J Clin Invest 101:398 (1998))、Salamaらは、CD4+CD25+細胞はこの反応を制限している可能性があり、よって保護的役割を持つということを提案している(Salama, A. D., et al., J Am Soc Nephrol 14:1643 (2003))。
【0050】
いくつかの研究では、インビトロにてポリクローナルCD4+CD25+細胞が他のCD4+細胞をサプレッサー細胞となるよう誘導し得ることが示されているが(Jonuleit, H., et al., J Exp Med 196:255 (2002); Dieckmann, D., et al., J Exp Med 196:247−53 (2002))、他の研究では、間接的方法を用いてインビボにおける感染耐性を実現している(Qin, S., et al., Science 259:974 (1993))。これは、エキソビボで誘導されたTregがレシピエントCD4+細胞を同様の抑制活性を持つCD25+細胞となるよう誘導し得ることの初めの実証である。このように、このTGF−βは制御性T細胞が従来の治療法よりもワクチン様に働くよう誘導した。これらはレシピエントにおいて活発な保護的免疫反応を引き出すことにより臓器移植の拒絶反応を防ぐようである。
【0051】
寛容化レシピエントから採取したCD4+CD25+細胞の機能特性試験から、それらの作用機序は抗TGF−βまたは抗IL−10のいずれかによりブロックされ得ることが明らかになった。この結果はTGF−βにより誘導されたヒトCD4+CD25+調節細胞の研究と一致している。我々は、エキソビボで同種異系抗原特異的サプレッサー細胞となるよう誘導された未処理のCD4+細胞の抑制作用を、抗TGF−βはブロックできなかったことを報告した。それにもかかわらず、これらの細胞は再刺激後にTGF−βおよびIL−10の両方を産生し、この両サイトカインはこれらのCD4+CD25+Tregが他のCD4+CD25−をサプレッサー細胞となるよう誘導するのに必要であった。さらに、二次的CD4+CD25+Tregの抑制作用は、抗TGF−βまたは抗IL−10のいずれかによりブロックされた。このように、インビトロにてサイトカイン非依存性抑制効果を有するCD4+CD25+Tregの投与は、インビボにおけるサイトカイン依存性抑制効果をもたらし得る。マウスの免疫媒介性疾患の実験モデルにおいて、CD4+CD25+細胞の抑制作用を支持するTGF−βおよびIL−10の役割が証明されている(Coombes, J. L., et al., Immunol Rev 204:184 (2005); Peng, Y., et al., Proc Natl Acad Sci U S A 101:4572 (2004))。
【0052】
本研究において、全てではないがいくつかの同種異系間異所性心臓移植において長期間の生着を確認した。移植片の生着の延長を確認はしたが、100日まで生着したのはこれら6移植片のうち2移植片のみであったことは、インビボにおける耐性が達成されたとは考えにくい。一方、ドナー同種異系抗原の追加免疫を行ったマウスはドナー細胞に対する反応を開始し得なかった。これらの実験の結果から、耐性状態を確立しようとする試みにおいて、心臓移植のみを行った後にはおそらくドナー抗原が排除されて不足しているのでおそらく十分には存在しない可能性のあるTregの活性を維持するために、持続的な抗原刺激を行う必要があり得るということが推察される。移植後100日で屠殺されたマウスの心臓組織からは、急性または慢性の拒絶反応の古典的病理学的証拠は示されなかった。しかしながら、機能に問題はないものの、心筋には中程度の単球の浸潤があった。残念なことに、実験を行った時点で凍結組織を保存していなかったので、これらの単核細胞により示されたFoxP3 mRNAが存在したかを調べることはできず、よってこの単核細胞の浸潤が慢性拒絶反応の非定型の症状である可能性を排除することはできない。関連のあるドナーMHC同種異系抗原をマウスに追加注射するというさらなる実験を行うと、観察される移植片生着結果が改善し、また観察される単核細胞浸潤が減少する可能性がある。レシピエントの免疫系を、同種異系活性化反応よりもドミナントな制御性反応を展開するよう改変するために、エキソビボで調製したTGF−β処理T細胞を使用することは、臨床の臓器移植のための新規な治療戦略を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、エキソビボにてTGF−βにより誘導されたドナー抗H−2b特異的Tregにより、ミスマッチ同種異系間心臓移植片が長期間生着することを示す。制御性T細胞(Treg)は、DBA/2 (D2, H−2d)T細胞を、TGF−β(2ng/ml)の存在下、放射線処理したC57BL/6 (B6, H−2b)非T細胞およびIL−2により、5−6日間刺激して調製した。IL−2のみで刺激したT細胞は対照として用いた(Tcon)。B6の心臓を移植したD2マウスには、移植の1日前および5日後に10×106のTreg、TconまたはCD25+細胞枯渇化Treg細胞を静脈内注射した。各グループにつき6匹のマウスを用いた。
【0054】
【図2A】図2は、投与された抗H−2bTregは、同種異系抗原特異的なT細胞非反応性を誘導することを示す。4匹の未処理DBA/2マウスのグループに、図1に記載のように調製した10×106のD2 TconまたはTreg細胞を静脈内注射した。別の注射をしなかったグループをさらに対照として用いた。一ヶ月後、マウスを屠殺し、インビトロにてB6またはサードパーティC3H (H−2k)刺激細胞により脾臓T細胞の同種異系活性化処理を4日間行った。A. 増殖活性(1分当たりの平均カウント数±SEM)。P値は、Treg細胞を投与したマウスと、Tcon細胞を投与したマウスまたは細胞を投与しなかったマウス(Nil)の間の有意な差異を示す。
【0055】
【図2B】B. フローサイトメトリーにより測定した、H−2b抗原に反応してIFN−γを産生するCD8+細胞の割合の例。
【0056】
【図2C】C. H−2bおよびH−2k抗原に対してIFN−γを産生する脾臓CD8+細胞の数。P値は上記のように決定した。実験は繰り返し行い同様の結果を得た。
【0057】
【図2D】D. 10×106 B6脾細胞を、10×106のD2 Treg細胞とともに、または単独で静脈内注射してDBA/2マウスを免疫化した。非免疫化マウスを対照として用いた。一ヶ月後、生の脾臓T細胞を抗H−2bCTL活性について試験した、またはB6刺激細胞により同種異系活性化させた。MLR培養物からの細胞を再度カウントし、示したエフェクター細胞対標的細胞の比率におけるCTL活性についてアッセイした。値は6匹のマウスの平均±SEMを示す。実験を繰り返し、同様の結果を得た。
【0058】
【図3】図3は、抗H−2bTregの投与によりインビボにおける細胞毒性活性が減少することを示す。実験設計は図1に記載したものと同様である。未処理のDBA/2マウスに10×106のD2 TconまたはTreg細胞を静脈内注射した、または注射しなかった(N=8/グループ)。3週目に、各グループの4匹(2分の1)のマウスに10×106のB6脾細胞を注射した。B6細胞に対する免疫反応を評価するために、一週間後に全てのマウスに、明強度で(brightly)CFSE標識化した10×106のB6脾細胞、および同等数の暗強度で(dimly)CFSE標識化したC3H脾細胞を投与した。2時間後にマウスを屠殺し、フローサイトメトリーによりCFSE染色強度について脾臓細胞を調べた。結果は、免疫化マウスにおいて死滅したB6またはサードパーティC3HのCFSE染色細胞の、非免疫化マウスと比較した割合として示す。
【0059】
【図4】図4は、連続した抗原刺激により、CD4+CD25+細胞が漸進的に増加し、免疫寛容誘発効果が維持されることを示す。A. 10×106のD2 Treg(丸)、Tcon(四角)を単回注射した、または細胞を注射しなかった(三角) 6匹のマウスのグループ。塗りつぶした丸、四角、三角は、2週間毎に放射線処理した10×106のH−2b B6脾細胞を注射したもの。白丸、白い四角、白い三角は同種異系抗原で追加免疫しなかったもの。月毎に細胞計数およびフローサイトメトリーを行いマウスの脾臓のCD4+CD25+細胞数を測定した。同種異系抗原を投与したマウスにおけるCD4+CD25+細胞の抗原依存的増加に注目されたい。B. TconまたはTregの単回投与の2ヵ月後に、いくつかのグループに特異的抗原を連続的に投与し、他のグループにはサードパーティのH−2k (C3H)抗原を注射し、更に二週間後にも注射した。Tregを投与しH−2b細胞で追加免疫したマウスにおいて増加したCD4+CD25+細胞数は、代わりにH−2K細胞を投与するとベースライン値まで減少した点に注意されたい。C. 10×106の同系のTconまたはTregを単回静脈内注射し、抗原を連続的に供給するために放射線処理した10×106のB6脾細胞を二週間毎に投与したD2マウス。注射後1、2および3ヵ月後に、同種異系MLRにおけるCTL活性について脾臓のT細胞を試験し、結果を溶解ユニット(平均±SEM)として表した。1溶解ユニットは30%の溶解に必要なリンパ球の数である。各グループにつき6匹のマウスを各時点に試験した。D. 免疫寛容誘発反応は抗原依存的であった。図4Bにおいて記載したプロトコルを用いて、2ヵ月目にH−2b細胞をH−2k細胞に置き換えて投与し、一ヶ月後にマウスの抗B6 CTL活性について試験した。この時H−2b抗原刺激の中断に附随してCTL活性が失われたことに注意されたい。
【0060】
【図5】図5は、CD4+CD25+細胞が増加したレベルのFoxP3 mRNAおよびタンパク質を発現することを示す。実験設計は図4に示したものと同様である。10×106の同系のTreg、Tconを単回注射した4匹のD2マウスのグループ。別の2匹のマウスにはT細胞を注射しなかった。示した全てのマウスに放射線処理した10×106のH−2b B6脾細胞を二週間毎に注射した。二ヶ月目に各マウスの脾臓CD4+CD25+細胞数を細胞計数およびFACS染色により測定した。A. 個々のマウスから脾臓のCD4+CD25+細胞を免疫磁気ビーズにより陽性選択しFoxP3 mRNAをリアルタイムPCRにより定量した。示した数は各グループの平均±SEMである。B. これらのCD4+CD25+細胞における代表的なFoxP3タンパク質発現を抗FoxP3抗体染色により測定した。C. 示した数は、各グループの全CD4+CD25+FoxP3+細胞の平均±SEMを示す。
【0061】
【図6】図6は、CD4+CD25+細胞がドナー同種異系抗原に対する耐性に関係することを示す。A. 三ヶ月前にTcon、Tregを単回注射した、または注射しなかった(投与せず)マウスから、脾臓T細胞、培養前にCD25細胞を枯渇させたT細胞、および、CD25細胞枯渇化T細胞に10%のこれらのCD25+細胞を加え直したものを準備した。これらのD2 T細胞をB6刺激細胞により同種異系活性化し、増殖能について試験した。CD4+CD25+細胞は抑制効果に関与していたことに注目されたい。B. 各T細胞調製物を抗B6 CTL活性についても試験したところ、これらの抑制効果もCD25+細胞に依拠していた。示した値は各グループの6匹のマウスの代表である。
【0062】
【図7】図7は、Tregを投与すると、CD103、CD122およびGITRを発現するレシピエントCD4+CD25+細胞が増加することを示す。レシピエントT細胞と投与したT細胞を区別するために、B6 Thy1.1 マウス細胞から抗H−2d TregおよびTconを調製し、8×106細胞を類遺伝子Thy 1.2マウスに投与した。上記の繰り返し刺激のプロトコルを用いて、CD4+CD25+細胞の数および表現型を3ヶ月間経時的に評価した。A. 各月の全レシピエントThy 1.2 CD4+CD25+細胞数。B. CD4、Thy1.2およびCD25染色した脾臓細胞の1ヵ月および3ヵ月目のフローサイトメトリープロファイル。示した細胞はCD4+細胞にゲートをかけたものである。C. Thy 1.2ゲートにおけるCD25、CD122およびCD103を発現するCD4細胞の割合。
【0063】
【図8】図8は投与したTregによりレシピエントCD4+細胞が抗原特異的サプレッサー細胞となるよう誘導されることを示す。A. TconまたはTregの投与から3ヵ月後に、脾臓CD4+CD25+およびCD4+CD25−細胞を細胞選別により採取したところ、生の同系CD4+CD25−細胞の、H−2dへの同種異系反応に対する、それらの抑制効果はベースライン値を示した。CD4+CD25+細胞の非特異的抑制活性を薄めて失わせるために、選別したCD4+細胞とキラーCD4+CD25−細胞の割合を1:6とした(下記参照)。抗IL−10(10μg/ml)抗体または抗TGF−β(10μg/ml)抗体の中和がCD4+CD25+細胞の抑制活性に及ぼす効果も示している。B. サードパーティ(H−2k)細胞による刺激に附随する抑制の消失。結果を3複製ウェルの平均cpm±SEMとして示す(n=6マウス/グループ)。C. 未処理のCD4+CD25+細胞の抑制活性。未処理のマウスのCD4+CD25+およびCD25−細胞を細胞選別により準備し、CD4+CD25−細胞のH−2b刺激細胞への反応に対するそれらの抑制効果についてアッセイした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシピエントにおいてドナー組織の拒絶反応を防ぐ方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) エキソビボにてドナーにより同種異系活性化されたレシピエントの制御性T細胞(Treg)の集団を調製する工程;
(b) 該レシピエントTregの初回用量を該レシピエントに導入する工程;
(c) ドナー組織を該レシピエントに移植する工程;および
(d) 移植後にドナー抗原を該レシピエントに導入する工程。
【請求項2】
レシピエントTregの初回用量を移植の少なくとも1日前に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドナー抗原を周期的にレシピエントに導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ドナー抗原を周期的に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ドナー抗原が組織適合性抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
移植後にレシピエントTregの二次用量を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
移植後1から5日にレシピエントTregの二次用量を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Tregの調製に以下の工程が含まれる、請求項1に記載の方法:
レシピエントの末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程;および
エキソビボにてレシピエントのPBMCとドナー抗原およびTGFβを含む調節性組成物を接触させ、レシピエントTregを形成する工程。
【請求項9】
調節性組成物がIL−2、IL−4、IL−10および/またはIL−15をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ドナー細胞をドナー抗原として用いる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ドナー細胞がT細胞ではない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ドナーのPBMCをドナー抗原として用いる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
ドナー細胞が、脾臓細胞または放射線処理したPBMCを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ドナー組織が心臓、肺、肝臓、腎臓、腸、膵臓および膵島細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ドナー組織が心臓である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
導入工程(d)が、レシピエントTregの二次用量を該レシピエントに導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
心臓移植の拒絶反応を防ぐ方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) ドナーにより同種異系活性化されたレシピエント制御性T細胞(Treg)集団を調製する工程;
(b) 該レシピエントTregを該レシピエントに導入する工程;
(c) ドナーの心臓を該レシピエントに移植する工程;および
(d) 移植後にドナー抗原を該レシピエントに導入する工程。
【請求項18】
調製工程(a)が以下の工程を含む、請求項17に記載の方法:
レシピエントの末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程:および
エキソビボにて該レシピエントPBMCとドナー抗原およびTGFβを含む調節性組成物を接触させ、レシピエントTregを形成する工程。
【請求項19】
調節性組成物がさらにIL−2を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
レシピエントがヒトである、請求項1または17に記載の方法。
【請求項1】
レシピエントにおいてドナー組織の拒絶反応を防ぐ方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) エキソビボにてドナーにより同種異系活性化されたレシピエントの制御性T細胞(Treg)の集団を調製する工程;
(b) 該レシピエントTregの初回用量を該レシピエントに導入する工程;
(c) ドナー組織を該レシピエントに移植する工程;および
(d) 移植後にドナー抗原を該レシピエントに導入する工程。
【請求項2】
レシピエントTregの初回用量を移植の少なくとも1日前に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドナー抗原を周期的にレシピエントに導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ドナー抗原を周期的に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ドナー抗原が組織適合性抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
移植後にレシピエントTregの二次用量を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
移植後1から5日にレシピエントTregの二次用量を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Tregの調製に以下の工程が含まれる、請求項1に記載の方法:
レシピエントの末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程;および
エキソビボにてレシピエントのPBMCとドナー抗原およびTGFβを含む調節性組成物を接触させ、レシピエントTregを形成する工程。
【請求項9】
調節性組成物がIL−2、IL−4、IL−10および/またはIL−15をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ドナー細胞をドナー抗原として用いる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ドナー細胞がT細胞ではない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ドナーのPBMCをドナー抗原として用いる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
ドナー細胞が、脾臓細胞または放射線処理したPBMCを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ドナー組織が心臓、肺、肝臓、腎臓、腸、膵臓および膵島細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ドナー組織が心臓である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
導入工程(d)が、レシピエントTregの二次用量を該レシピエントに導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
心臓移植の拒絶反応を防ぐ方法であって、以下の工程を含む方法:
(a) ドナーにより同種異系活性化されたレシピエント制御性T細胞(Treg)集団を調製する工程;
(b) 該レシピエントTregを該レシピエントに導入する工程;
(c) ドナーの心臓を該レシピエントに移植する工程;および
(d) 移植後にドナー抗原を該レシピエントに導入する工程。
【請求項18】
調製工程(a)が以下の工程を含む、請求項17に記載の方法:
レシピエントの末梢血単核細胞(PBMC)を単離する工程:および
エキソビボにて該レシピエントPBMCとドナー抗原およびTGFβを含む調節性組成物を接触させ、レシピエントTregを形成する工程。
【請求項19】
調節性組成物がさらにIL−2を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
レシピエントがヒトである、請求項1または17に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2008−534620(P2008−534620A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504493(P2008−504493)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/012261
【国際公開番号】WO2006/107850
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507325736)ユニバーシティ・オブ・サザン・カリフォルニア (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHERN CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/012261
【国際公開番号】WO2006/107850
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507325736)ユニバーシティ・オブ・サザン・カリフォルニア (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHERN CALIFORNIA
【Fターム(参考)】
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