説明

制御放出および味感遮蔽経口医薬組成物

【課題】胃腸管で局所的に活性な薬剤から成る、徐放放出性、制御放出性投与製剤を調製する場合において、投与後の第一相、即ち、不活性マトリックスが対数期中最大の放出速度、つまり線形放出よりも高い偏差を有する時に、確実に放出を制御すること。
【解決手段】3成分のマトリックス構造、即ち、連続する両親媒性、親油性または不活性マトリックス中に含有され、最終的に親水性マトリックス中に含有または分散される1またはそれ以上の活性成分を含む制御放出性および味感遮蔽組成物。活性成分の溶解のコントロールのための複数のシステムの使用により、水性および/または生物学的液体中での活性成分の溶解速度が変更され、それにより胃腸管中での放出動態が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3成分のマトリックス構造、すなわち、連続する両親媒性、親油性または不活性マトリックスにより形成され、最終的に親水性マトリックスに組み込まれるか、または分散されるマトリックス構造中に組み込まれた1またはそれ以上の活性成分を含む制御放出性および味感遮蔽組成物に関する。活性成分の溶解の制御のための複数のシステムを使用することにより、水性および/または生物学的液体中での活性成分の溶解速度が変更され、それにより、胃腸管での放出動態が制御され、そしてさらに、好ましくない味感特性を有し、あるいは投与部位の粘膜において、特に口中にて刺激作用を有する活性成分の経口投与も許容される。
本発明の組成物は、鎮痛薬、抗炎症薬、心作用薬、精神安定薬、抗高血圧剤、消毒薬および局所抗菌薬、抗パーキンソン病薬、抗ヒスタミン薬の治療クラスに属し、経口投与または胃腸管のいくらかの領域で局所的に作用させるのに適している。
【背景技術】
【0002】
(技術背景)
徐放放出性、制御放出性、遅延放出性またはとにかく変更された放出性製剤の調製は、様々な公知方法により行うことができる。
1.不活性マトリックス、ここで、該マトリックス構造の主成分は水性の液体への親和力が乏しいために溶媒の浸透に対して幾分抵抗性を示す(このような特性は親油性として知られる)、の使用。
2.親水性マトリックス、ここで該マトリックス構造の主成分は、主に分岐した鎖における強い親水基の存在により水和層内部の粘性が著しく増すために溶媒の浸透に高い抵抗性を示す、の使用
3.ある生物成分から成る酵素により分解されることができる生物侵食可能なマトリックスの使用。
前記の方法はいずれもしかしながら、不利益と欠点を持つ。
【0003】
不活性マトリックスは、例えば一般に、非線形性である、指数関数的な活性成分の放出を必然的に伴う。
親水性マトリックスは、活性成分の所定のフラクションが放出されるまでは線形性の性質を有するが、その後、線形性の放出から顕著に外れる。
生物侵食可能なマトリックスは、いわゆる「部位放出」を行うのに理想的であるが、侵食に適した酵素または反応を見出さなければならないという問題を含む。さらにそれらはしばしば、毒物学的に完全に不活性ではない代謝物をインサイチュで放出する。
不活性親油性マトリックスに基づく多くの製剤が開示されている。Drug Dev. Ind. Pharm. 13(6), 1001-1022,(1987)は、活性成分を組み込んでいる親油性不活性マトリックスのためのポリ化要素(porization element)として種々の量のコロイド状シリカを使用する方法を開示する。
【0004】
不活性マトリックスのキャナライゼーションに関する同じ概念がUS4608248に開示されており、ここでは、少量の親水性ポリマーが、異なるマトリックス物質の非連続性共浸透に関して不活性なマトリックスを形成している物質と混合される。
EP375063は、ポリマーまたは不活性マトリックスを形成するのに適した物質を活性成分と一緒に溶解することおよび、次いで該発明のコアとして作用する不活性キャリアに該溶液を沈着させることを含む、活性成分の制御放出のための複合粒子顆粒の調製のための方法を開示する。あるいは、不活性キャリアを不活性ポリマーと活性成分を含む溶液と捏和し、次いでその溶解のために用いられた有機溶媒を蒸発して固体残存物を得る。得られる構造は「リザーバー(reservoir)」であり、即ち、最終形態の全対称軸に沿って肉眼的に同質ではない。
【0005】
同じ「リザーバー」構造がChem. Pharm. Bull. 46(3), 531-533,(1998)にも開示されており、ここでは、ペレットの表面に沈積される不活性ポリマー層のアニーリング法により適用性が改善されている。
「リザーバー」構造には、
-有機溶媒中で活性成分を胃抵抗性親水性ポリマーと共に溶解させること、
-該懸濁液を乾燥させること、
-次いで、親水性または親油性マトリックス中、この2タイプの適用間で効果を区別することなくペレットを捏和および形成すること、
を含む、親水性マトリックス中でのペレットの調製法を開示するWO93/00889に開示される方法により得られる生成物も属する。
【0006】
EP0453001は、親水性マトリックスに挿入された、「リザーバー」構造を有する複合粒子を開示する。基本的な複合粒子には、活性成分の放出速度を減じるための2つのコーティング膜、胃保護のためのpH依存性膜および、水性の液体の浸透を遅延させるためのpH-非依存性メタクリル膜が用いられている。
WO95/16451は、胃抵抗性フィルムでコートされた親水性マトリックスによってのみ形成される、活性成分の溶解速度を制御するための組成物を開示する。
【0007】
胃腸管で局所的に活性な薬剤から成る、徐放放出性、制御放出性投与製剤を調製する場合、投与後の第一相、即ち、不活性マトリックスが対数期中最大の放出速度、つまり線形放出よりも高い偏差を有する時に、確実に放出を制御することが重要である。
【0008】
該目的は、表面の親水性マトリックス中に親油性ポリマーを用いて形成されている不活性マトリックス内部に両親媒性マトリックスを組み合わせることによる本発明により達成された。本発明の組成物は、マトリックスにおいて表面に存在する薬物が迅速に溶解する第一相がないことおよび、両親媒性層が内部の不活性マトリックスを形成している親油性化合物との水性溶媒の親和性の無さを補うという事実により特徴付けられる。
【発明の概要】
【0009】
(発明の開示)
本発明により、
a)活性成分が少なくとも部分的に組み込まれている、90℃未満の融点を有する親油性化合物および任意に両親媒性化合物から成るマトリックス、
b)任意に両親媒性マトリックス、
c)該親油性マトリックスおよび任意に該両親媒性マトリックスが分散されている外部親水性マトリックス、
d)任意に他の賦形剤
から成る、活性成分を含む制御放出性および味感遮蔽経口医薬組成物が提供される。
【0010】
本発明の特別な態様は、
a)活性成分が少なくとも部分的に組み込まれている、90℃未満の融点を有する両親媒性化合物および親油性化合物から成るマトリックス、
b)該親油性/該両親媒性マトリックスが分散されている外部親水性マトリックス、
c)任意に他の賦形剤、
を含む、1またはそれ以上の活性成分を含む制御放出性経口組成物から成る。
【0011】
本発明のさらなる態様により、
-C6-C20アルコールまたはC8-C20の脂肪酸または、脂肪酸のグリセロールまたはソルビトールまたは、6以下の炭素原子鎖を有する他のポリアルコールとのエステルから成る不活性または親油性マトリックス;
-タイプIまたはIIの極性脂質または、C1-C4アルキル鎖で部分的にエステル化されたグリコールから成る両親媒性マトリックス;
-サッカライド、デキストリン、ポリアルコールまたはセルロース化合物またはヒドロゲルにより主に形成される、前記マトリックスを含む外部親水性マトリックス;
-医薬製剤に安定性を与えるための任意賦形剤
を含む1またはそれ以上の活性成分を含む、味感遮蔽経口医薬組成物が提供される。
【0012】
(発明の詳細な開示)
本発明の組成物は、以下のステップから成る方法により調製することができる。
a)活性成分をまず、以下に詳細に記載される両親媒性特性を有する化合物から成るマトリックスまたはコーティング中へ、単に捏和または混合することにより含有させる。活性成分は両親媒性化合物と、溶媒を用いずにまたは少量の水-アルコール溶媒を用いて混合することができる。
b)a)で得られたマトリックスを低融点親油性賦形剤または賦形剤混合物に、賦形剤自体を軟質化しおよび/または溶解するよう加熱しながら組み込む。この方法により活性成分が単純な分散により組み込まれる。室温にて不活性マトリックス製剤を冷却した後、サイズを減じて活性成分粒子を含む不活性マトリックス粒子を得ることができる。
c)不活性マトリックス顆粒を次いで、1またはそれ以上の親水性の水で膨張され得る賦形剤と混合する。混合物を次いで圧縮または錠剤化に供する。この方法では、錠剤が生物体液と接触すると、溶媒分子と結合し、そして新規構造内部に、水性の液体そのものの浸透に対するバリアとして作用する高粘度の膨張層が形成される。該バリアは、親水性マトリックスの内側にある不活性マトリックス内部に含有されている薬剤の溶解により引き起こされるスターティング「バースト効果」を拮抗する。
【0013】
本発明により用いることができる両親媒性化合物は、タイプIまたはIIの極性脂質(レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン)、セラミド、グリコールアルキルエーテル、例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル(トランスクトール(R))を含む。
【0014】
親油性マトリックスは、40〜90℃、好ましくは60から70℃の範囲内に融点を有する不飽和または水素化アルコールまたは脂肪酸、それらの塩、エステルまたはアミド、脂肪酸モノ-、ジ-またはトリグリセリド、そのポリエトキシル化誘導体、ワックス、セラミド、コレステロール誘導体またはそれらの混合物から選択される物質から成る。
所望により、脂肪酸カルシウム塩を、アルギン酸を用いて調製される親水性マトリックスに次いで分散される親油性マトリックス中に組み込んで、これによって、内部に分散された親油性マトリックス顆粒と接触する手前まで溶媒が貫通した後親水性マトリックス粘度を顕著に増す。
【0015】
本発明の態様に従い、活性成分または活性成分の混合物を両親媒性化合物、例えばレシチン、他のタイプII極性脂質、界面活性剤などの混合物中に、またはジエチレングリコールモノエチルエーテル中に分散させて、活性成分を高い含有量、典型的には5〜95%w/wの含有量で含む両親媒性マトリックスがまず調製される。得られた両親媒性マトリックスを次いで通常熱いうちに、不活性マトリックスを形成するのに適した親油性化合物、例えば飽和または不飽和脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラウリル酸またはオレイン酸またはそれらの混合物などと、もっと短い鎖を有する他の脂肪酸または塩またはアルコールまたは前記脂肪酸の誘導体、例えばモノ-、ジ-またはトリグリセリドなどと、またはポリエチレングリコールとのエステルと、単独で、またはワックス、セラミド、コレステロール誘導体または他の極性脂質と、親油性化合物混合物の融点または軟化点が40℃〜90℃、好ましくは60℃〜70℃の範囲になるような比率で組み合わせて混合または捏和する。
または、不活性マトリックスおよび両親媒性マトリックスの形成の順序を逆転させ、不活性マトリックスを両親媒性化合物内部に組み込むことができる。
【0016】
得られた不活性親油性マトリックスは、押し出し形成および/または顆粒化法または、均質な分散および、出発混合物のマトリックス構造を保持するあらゆる他の公知方法により顆粒化される。
親水性マトリックスは、ヒドロゲルとして知られる賦形剤、即ち、乾燥状態から水和状態になり、いわゆる「分子緩和」、すなわち賦形剤そのものの重合鎖に存在する極性基による多数の水分子の配位による容積および重量の顕著な増加、を被る物質から成る。
【0017】
本発明で用いることができるヒドロゲルの例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーまたはコポリマー、アルキルビニルポリマー、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリサッカライド、デキストリン、ペクチン、スターチおよび誘導体、天然または合成ゴム、アルギン酸から選択される化合物である。
味感遮蔽製剤の場合、キシリトール、マルチトールおよびマンニトールのようなポリアルコールの親水性化合物としての使用も有利である可能性がある。
【0018】
活性成分を含む親油性マトリックス顆粒は、前記の親水性化合物と、典型的に100:0.5〜100:50(親油性マトリックス:親水性マトリックス)の範囲の重量で混合される。任意に活性成分の一部を親水性物質と混合して、活性成分が親油性および親水性マトリックスの両方に分散された組成物を提供することができ、該組成物は好ましくは錠剤、カプセルおよび/または小型錠剤の形態である。
親油性および/または両親媒性マトリックス、ヒドロゲル形成化合物および、任意に親油性マトリックス中に含有されていない活性成分の混合物の圧縮により、その全容積において肉眼上均質な構造、すなわち、親水性マトリックス中に分散された親油性顆粒を含む構造が得られる。同様の結果は、親油性マトリックス顆粒を親水性ポリマーコーティングでコーティングすることにより得ることもできる。
本発明により得られる錠剤は、例えばメタクリル酸のポリマー(Eudfagit(R))またはセルロース誘導体、例えばセルロースアセトフタレートから成る胃抵抗性フィルムを用いて公知のコーティング法に任意に供することができる。
【0019】
本発明により簡便に処方されることができる活性成分には、
-鎮痛剤、例えばアセトアミノフェン、フェナセチン、ナトリウムサリチレート、
-鎮咳剤、例えばデキストロメトロファン、コデインホスフェート、
-気管支拡張薬、例えばアルブテロール、プロカテロール、
-抗精神病薬、例えばハロペリドール、クロロプロマジン、
-抗高血圧剤および冠動脈拡張剤、例えばイソソルビドモノ-およびジニトレート、カプトプリル、
-選択的β2アンタゴニスト、例えばサルブタモール、テルブタリン、エフェドリン、オルシプレナリンスルフェート、
-カルシウムアンタゴニスト、例えばニフェジピン、ニカルジピン、ジルチアゼム、ベラパミル、
【0020】
-抗パーキンソン薬、例えばペルゴリド、カルピドーパ、レボドーパ、
-非ステロイド抗炎症薬、例えば、ケトプロフェン、イブプロフェン、ジクロフェナック、ジフルニサール、ピロキシカム、ナプロキセン、ケトロラック、ニメスリド、チアプロフェニックアシッド、メサラジン(5-アミノサリチル酸)、
-抗ヒスタミン、例えばテルフェネジン、ロラタジン、
-下痢止めおよび腸抗炎症剤、例えばロペラミド、5-アミノサリチル酸、オルサラジン、スルファサラジン、ブデノシド、
-鎮痙剤、例えばオクチロニウムブロマイド、
-不安緩解剤、例えばクロルジアゼポキシド、オキサゼパム、メダゼパム、アルプラゾラム、ドナゼパム、ロラゼパン、
【0021】
-経口抗糖尿病薬、例えばグリピジド、メトホルミン、フェンホルミン、ジルクラジド、グリベンクラミド、
-下剤、例えばビサコジル、ナトリウムピコスルフェート、
-抗癇癪剤、例えばバルプロエート、カルバマゼピン、フェニトイン、ガバペンチン、
-抗腫瘍薬、例えばフルタミド、エトポシド、
-口腔消毒薬または抗菌薬、例えばベンザルコニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライドまたはチベゾニウムヨーダイドおよびいくらかのアミノ誘導体、例えばベンジダミンおよびクロロヘキシジン並びにそれらの塩および誘導体、
-ナトリウムフルオライド。
【0022】
本発明の組成物は、常套の賦形剤、例えばキトサン、ポリアクリルアミド、天然または合成ゴム、アクリル酸ポリマーのような生物粘着賦形剤をさらに含むことができる。
本発明の組成物は、2以上の活性成分を含むことができ、それらのそれぞれは親水性マトリックスまたは不活性両親媒性マトリックス中に含まれてもよく、好ましくは錠剤、カプセルまたは小型錠剤の形態である。
【0023】
溶解特性に関して、水または水性の液体との接触により、マトリックスの表層、これは水性媒質の存在により、ヒドロゲルの重合鎖の拡大により膨張する、に水が迅速に浸透して高粘度水和表面が得られ、さらなる水の浸透により親水層の崩壊およびそれがゆえの内容物の放出が生じるまで約半分の濃度であり得る十分に決定されたポイントまで溶解が直線状に遅延され、また、放出された内容物は不活性マトリックス顆粒から成り、これらの構造に典型的な拡散メカニズムを誘発し、それゆえ活性成分の溶解特性はさらに遅延される。
【0024】
不活性な親油性マトリックス内部の両親媒性マトリックスの存在により、活性成分の放出特性のあらゆる不均一性が防止される。両親媒性部分に存在する界面活性剤により多孔性の小管、これは不活性マトリックスを横切って不活性マトリックス内部への溶媒の浸透に対する抵抗を妨げ、または減じる、のぬれ性が高まる。
【0025】
味感遮蔽錠剤を得るために、親水性マトリックスの成分は、親水性化合物により引き起こされるキャナライゼーションにより加速される浸透による活性物質の放出時間を最小にするべく注意深く選択される。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
実施例1
500gの5-アミノサリチル酸と20gのオクチロニウムブロマイドを、50gの水:エチルアルコール1:3の混合液に溶解した10gの大豆レシチンと約50℃で混合する。均質化させ、乾燥させた後、生じたマトリックスの顆粒をニーダー中で、20gのカルナウバワックスおよび50gのステアリン酸と、均質に分散するまで加熱しながら処理し、次いで小さな顆粒に冷却押し出し成形する。不活性マトリックス顆粒を、30gのカルボポール971Pおよび65gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを連続添加したミキサーに入れる。粉末を均質に分散させるための第一混合ステップ後、60gのミクロクリスタリンセルロースおよび5gのステアリン酸マグネシウムを添加する。混合後、最終混合物を760mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。生じた錠剤をセルロースアセトフタレートまたはポリメタクリレートおよび可塑剤にてフィルムコートし、胃抵抗性を得、胃での製剤の早期の放出を防ぐ。
得られた錠剤を擬似腸液中での溶解試験に供したところ、以下の特性を有する活性成分の放出を示した:60分後30%未満、180分後60%未満、5時間後80%未満。
【0027】
実施例2
50gのジエチレングリコールモノエチルエーテルを500gのミクロクリスタリンセルロースに均等に分散し、次いで100gのブデソニドを添加し、混合して完全に均質化した。この混合物をさらに400gのブデソニドと共に添加し、次いで100gのカルナウバワックスおよび100gのステアリン酸を含む、予め60℃の温度に加熱した配合機中で分散させる。5分間捏和させた後、混合物を室温まで冷却し、1mm未満のサイズの顆粒に押し出し成形する。
適当なミキサーへ前記のように調製したマトリックス顆粒および以下の量の親水性賦形剤:1500gのヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび500gのポリカルボフィルと共に投入する。
成分をマトリックスが均質に分散するまで混合し、次いで2450gのミクロクリスタリンセルロース、400gのラクトース、100gのコロイド状シリカおよび50gのステアリン酸マグネシウムと共に添加する。さらに5分間混合した後、混合物を250mg/錠剤の単位重量へ錠剤化する。
【0028】
実施例3
850gのメトホルミンを造粒機/ニーダー中で、100gのステアリン酸および55gのカルナウバワックスと共に予め溶解させた35gのジエチレングリコールモノエチルエーテルと共に分散させる。系を加熱し、不活性マトリックス中の活性成分の顆粒化を行う。生じた1040gの製剤を110gのヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび20gのステアリン酸マグネシウムと共に添加する。
最終混合物を、850mgの活性成分に対応する1170mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。
生じた錠剤は、擬似腸液中での溶解試験に供したところ、以下の特性を有する活性成分の放出を示した:60分後35%未満、180分後60%未満、5時間後80%未満。
【0029】
実施例4
120gのオクチロニウムブロマイドを、10gのジエチレングリコールモノエチレンを予め溶解した造粒機/ニーダー中で、30gのステアリン酸および15gのミツロウと共に分散させる。
不活性マトリックス中の活性成分の顆粒化を行うために系を加熱する。生じた10gの製剤を5gのヒドロキシメチルセルロースおよび5gのポリカルボフィル、2gのステアリン酸マグネシウムおよび3gのミクロクリスタリンセルロースと共に添加する。
最終混合物を、120mgの活性成分に対応する200mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。
生じた錠剤は、擬似腸液中に溶解試験に供したところ、以下の特性を有する活性成分の放出を示した:60分後25%未満、180分後50%未満、180分後50%未満、5時間後70%未満。
【0030】
実施例5
12gのジエチレングリコールモノエチルエーテルを6gのミクロクリスタリンセルロースおよび6gのカルボン酸カルシウムに添加し、次いで100gのガバペンチンを添加し、混合物を均質化する。その後、800gのガバペンチンを添加し、これを4.5gの白蝋および5gのステアリン酸と造粒機/ニーダー中で分散させる。不活性マトリックス中の活性成分の顆粒化を行うために系を加熱する。生じた916.5gの製剤を、39.5gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、10gのアルギン酸、11gのステアリン酸マグネシウムおよび6gのシロイドと共に添加する。最終混合物を900mgの活性成分に対応する1000mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。
【0031】
実施例6
50g(25g)のカルビドーパおよび200g(100g)のレボドーパを、10gのジエチレングリコールモノエチルエーテルを予め溶解した造粒機/ニーダー中に、60g(30g)のステアリン酸および30g(15g)の黄蝋と共に分散させる。
不活性マトリックス中の活性成分の顆粒化を行うために系を加熱する。生じた340g(170g)の製剤を20g(10g)のヒドロキシプロピルメチルセルロース、10g(5g)のキサンタンガム、16g(8g)のミクロクリスタリンセルロース、4g(2g)のステアリン酸マグネシウムと共に添加する。
最終混合物を、50(25)mgのカルビドーパおよび200(100)mgのジレボドーパに対応する400(200)mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。
【0032】
実施例7
4gのニメシリドを50gのジエチレングリコールモノエチルエーテルに溶解し、次いで100gのミクロクリスタリンセルロースを添加して、均質混合物を得る。
生じた混合物を、196gのニメスリド、50gのステアリン酸および25gのカルナウバワックスと共に造粒機/ニーダー中に添加する。不活性両親媒性マトリックス系中の活性成分の顆粒化を行うために系を加熱する。
425gの生じた顆粒を60gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、5gのポリカルボフィルおよび10gのステアリン酸マグネシウムと共に添加する。
最終混合物を、200mgの活性成分に対応する500mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。
生じた錠剤は、擬似腸液中での溶解試験に供したところ、以下の特性を有する活性成分の放出を示した:1時間後25%未満、2時間後40%未満、4時間後60%未満、8時間後90%未満。
【0033】
実施例8
500gのプロピオニルカルニチンを90gのステアリン酸および40gのカルナウバワックスと共に、20gのジエチレングリコールモノエチルエーテルを予め溶解した造粒機/ニーダー中へ分散する。不活性/両親媒性マトリックス中の活性成分の顆粒化を行うために系を加熱する。生じた650gの製剤を、60gのヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび10gのステアリン酸マグネシウムと共に添加する。
最終混合物を500mgの活性成分に対応する720mg/錠剤の単位重量に錠剤化する。
生じた錠剤は、擬似腸液中での溶解試験に供したところ、以下の特性を有する活性成分の放出を示した:60分後40%未満、180分後60%未満、4時間後80%未満、8時間後90%未満。
【0034】
実施例9
1kgのニメスリドを、予め約70℃に加熱した高速造粒機に200gのセチルアルコールおよび25gのグリセロールパルミトステアレートと共に投入し、混合物を約15分間捏和し、約30℃まで温度を下げながら攪拌する。生じた不活性マトリックスを攪拌、捏和し続け、そして冷却しながら50gの大豆レシチンおよび50gのエチレングリコールモノエチルエーテルを添加する。顆粒を適当なサイズの金属スクリーンを通して押し出し成形し、50gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、1320kgのマルトデキストリン、2kgのラクトース-セルロース混合物、50gのコロイド状シリカ、40gのアスパルテーム、150gのクエン酸、75gの風味剤および65gのステアリン酸マグネシウムと混合する。最終混合物を口中で溶けるのに適した堅さと好ましい味感を持つ、約500mgの単位重量に錠剤化する。
【0035】
実施例10
前記実施例のように行い、デキストリンをマンニトールと、ラクトース-セルロース混合物をキシロールと置き換えて咀嚼可能錠剤を調製する。生じた錠剤は好ましい味感を有し、咀嚼すると、風味を高める新鮮な感じを与える。
【0036】
実施例11
以下の成分を用いる以外は実施例9に記載のように行う。
-活性成分:イブプロフェン 100mg
-親油性/不活性マトリックス成分:
セチルアルコール 15mg
-両親媒性マトリックス成分:
大豆レシチン 8mg
-親水性マトリックス成分:マンニトール 167mg
-マルトデキストリン 150mg
-メチルヒドロキシプロピルセルロース 30mg
-アジュバント:アスパルテーム 15mg
-風味剤 5mg
-コロイド状シリカ 5mg
-ステアリン酸マグネシウム 5mg
口腔投与すると漸進的な侵食を受け、活性成分の苦い、刺激性の味感を有効に遮蔽する500mgの単位重量の錠剤が得られる。
【0037】
実施例12
以下の成分を用いる以外は実施例9に記載のように行う。
-活性成分:ジクロフェナックナトリウム 25mg
-親油性/不活性マトリックス成分:
セチルアルコール 5mg
-グリセロールパルミトステアレート 5mg
-両親媒性マトリックス成分:
大豆レシチン 7mg
-親水性マトリックス成分:キシリトール 168mg
-マルトデキストリン 150mg
-ヒドロキシプロピルメチルセルロース 20mg
-アジュバント:アスパルテーム 5mg
-風味剤 5mg
-コロイド状シリカ 5mg
-ステアリン酸マグネシウム 5mg
口腔投与すると漸進的な侵食を受け、活性成分の苦い、刺激性の味感を有効に遮蔽する400mgの単位重量の錠剤が得られる。
【0038】
実施例13
以下の成分を用いる以外は実施例9に記載のように行う。
-活性成分:クロロヘキシジン 2.5mg
-親油性/不活性マトリックス成分:
セチルアルコール 0.5mg
-グリセロールパルミトステアレート 0.5mg
-両親媒性マトリックス成分:
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 0.3mg
-親水性マトリックス成分:キシリトール 38mg
-マルトデキストリン 96mg
-ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10mg
-アジュバント:アスパルテーム 3mg
-風味剤 5mg
-コロイド状シリカ 2mg
-ステアリン酸マグネシウム 2mg
口腔投与すると漸進性の侵食を受ける、活性成分の苦い、刺激性の味感を有効に遮蔽する150mgの単位重量の錠剤が得られる。
【0039】
実施例14
1kgのニメスリドを、予め約70℃に加熱した高速造粒機に125gのセチルアルコールと共に入れ、混合物を約15分間捏和し、約30℃まで温度を下げて攪拌し、次いで30gのレシチンを添加する。生じた不活性マトリックスを適当なサイズの金属スクリーンを通して押し出し成形し、2.415kgのラクトース、1.0kgのマルトデキストリン、50gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、50gのコロイド状シリカ、40gのアスパルテーム、150gのクエン酸、75gの風味剤および65gのステアリン酸マグネシウムと混合する。最終混合物を口で溶けるのに適した堅さと好ましい味感を持つ、約500mgの単位重量に錠剤化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)活性成分が少なくとも部分的に含有されている、90℃未満の融点を有する親油性化合物から成るマトリックス;
b)任意に両親媒性のマトリックス;
c)該親油性マトリックスおよび任意に該両親媒性マトリックスが分散されている外部親水性マトリックス;
d)任意に他の賦形剤;
を含む、活性成分を含む制御放出性および味感遮蔽経口医薬組成物。
【請求項2】
活性成分が少なくとも部分的に含有されている、90℃未満の融点を有する親油性化合物から成る親油性または不活性マトリックス、および親水性マトリックスを含む請求項1記載の制御放出性組成物。
【請求項3】
親油性マトリックスが、C6-C20のアルコールまたはC8-C20の脂肪酸または、脂肪酸とグリセロールまたはソルビトールまたは6個以下の炭素原子鎖を有する他のポリアルコールとのエステルから成る、親油性マトリックス、両親媒性マトリックスおよび親水性マトリックスを含む請求項1記載の味感遮蔽製剤。
【請求項4】
両親媒性化合物がタイプIまたはIIの極性脂質(レシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン)、セラミド、グリコールアルキルエーテル、脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステルまたはジエチレングリコールである請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
親油性マトリックスが、不飽和または水素化アルコールまたは脂肪酸、それらの塩、エステルまたはアミド、脂肪酸のモノ-、ジ-またはトリグリセリド、そのポリエトキシル化誘導体、ワックス、コレステロール誘導体から選択される化合物から成る請求項1、2または3記載の組成物。
【請求項6】
親水性マトリックスが、ヒドロゲル形成化合物から成る前記請求項いずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
親水性マトリックスが、アクリル酸またはメタクリル酸ポリマーまたはコポリマー、アルキルビニルポリマー、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ポリサッカライド、デキストリン、ペクチン、スターチおよび誘導体、アルギン酸、天然または合成ゴム、ポリアルコールから選択される化合物から成る請求項6記載の組成物。
【請求項8】
胃抵抗性コーティングを含む前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
胃抵抗性コーティングがメタクリル酸ポリマーまたはセルロース誘導体から成る請求項8記載の組成物。
【請求項10】
活性成分が、不活性/両親媒性マトリックス中に完全に含まれている、錠剤、カプセルまたは小型錠剤の形態の前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
活性成分が、親水性マトリックスおよび親油性/両親媒性マトリックスの両方に分散されている、錠剤、カプセルまたは小型錠剤の形態の請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
活性成分が、鎮痛薬、咳止め、気管支拡張薬、抗精神病薬、選択的β2アンタゴニスト、カルシウムアンタゴニスト、抗パーキンソン病薬、非ステロイド抗炎症薬、抗ヒスタミン、下痢止めおよび腸の抗炎症薬、鎮痙薬、不安緩解剤、経口抗糖尿病薬、下剤、抗癇癪薬、局所抗菌薬の治療クラスに属する前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
活性成分が、メサラジン(5-アミノサリチル酸)、ブデソニド、メトホルミン、オクチロニウムブロマイド、ガバペンチン、カルビドーパ、ニメスリド、プロピオニリルカルニチン、イソソルビドモノ-およびジニトレート、ナプロキセン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ジクロフェナック、チアプロフェニックアシッド、ニメスリド、クロロヘキシジン、ベンジダミン、チベゾニウムヨーダイド、セチルピリジニウムクロライド、ベンズアルコニウムクロライド、ナトリウムフルオライドから選択される請求項11記載の組成物。
【請求項14】
生物粘着物質を含む前記請求項いずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
咀嚼可能な、または、口腔で、若しくは胃腸管の最初の部分で侵食され得る錠剤形態の前記請求項記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2011−102310(P2011−102310A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−91(P2011−91)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【分割の表示】特願2001−502812(P2001−502812)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(306007299)コスモ・テクノロジーズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】