説明

制御棒駆動機構

【課題】制御棒案内管を取外すことなく原子炉圧力容器上部から制御棒駆動機構を据え付けおよび取り外し可能であり、かつ制御棒駆動機構の適切な支持を行なうことによりメンテナンス性、信頼性の高い制御棒駆動機構を提供する。
【解決手段】制御棒駆動機構本体90における制御棒案内管61の内面底部より下方に位置する部位の外径d1が制御棒案内管61の底部の開口部内径d2より小さく、かつ、制御棒駆動機構本体90における制御棒駆動機構ハウジング9の頂部より下方に位置する部位の外径d1が制御棒駆動機構ハウジング9の頂部の開口部内径d3より小さいことにより、制御棒案内管61の据付状態において制御棒駆動機構本体90を原子炉圧力容器の上部から着脱が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御棒駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図13に、従来の沸騰水型原子炉(以下、BWRと称する)の縦断面構造を示す。
【0003】
原子炉圧力容器(RPV)101内には、減速材を兼ねる冷却水102が収容され、中央下部には炉心103が配置され、炉心シュラウド104により囲まれている。炉心103には、図示されていない多数の燃料集合体が装荷され、4体1組の燃料集合体間に制御棒105が出し入れ自在に収容されている。
【0004】
このBWRにおいて、冷却水102が炉心103内を上方に向かって流れ、その間に炉心103から核分裂連鎖反応により発生する熱が冷却水102に伝達され、冷却水102が加熱される。加熱された冷却水102は、水と蒸気の気液二相流となって炉心103の上方へ移動し、炉心103から図示されていない気水分離器に案内される。
【0005】
気液二相の冷却水102は、気水分離器で水と蒸気に分離された後、蒸気は図示されていない蒸気乾燥器を経て主蒸気配管から蒸気タービン系に送られて蒸気タービンを駆動させる。蒸気タービンを駆動した蒸気は復水器で凝縮され復水となった後、原子炉復水系および給水系を経て原子炉圧力容器101に給水として再び戻される。
【0006】
一方、気水分離器で分離された水は、ダウンカマ部107を流下し、原子炉復水系および給水系を通って送られてくる給水と混合した状態で炉心下部に案内され、再び炉心103に導かれる。
【0007】
また原子炉圧力容器101の炉心103には、原子炉の起動・停止や炉出力調整のため、制御棒105が制御棒駆動機構(CRD)108により出し入れされる。制御棒駆動機構108は、原子炉圧力容器101の底部101aを貫通して延びる制御棒駆動機構ハウジング109内に収容される所謂アセンブリとしての構造物であり、制御棒駆動機構ハウジング109の下部フランジ109aにボルト接合により固定される。
【0008】
図14に、電動駆動式による制御棒駆動機構108の縦断面構造を示す。
【0009】
制御棒駆動機構108の下部に、モータブラケット123、スプールピース160を介してモータユニット111が設けられている。モータユニット111は、電動機110、電磁ブレーキ121、シンクロ位置検出器122を有し、制御棒駆動機構108の回転軸111に電動機110が取り付けられている。回転軸111は、ギアカップリング機構112を介して制御棒駆動機構108の駆動軸113に連結される。駆動軸113が、ボールねじ軸114に回転一体に連結され、このボールねじ軸114にはボールナット115が螺合している。
【0010】
ボールナット115には、対をなすローラ116がガイドチューブ117の内周面に形成された軸方向の取付板118を挟持するように設置される。ボールナット115の上方にはピストン119が設置され、このピストン119は中空状のピストンチューブ119a上端に設置されたカップリング120を介して制御棒105に連結される。そして、電動機110の駆動により回転軸111および駆動軸113を介してボールねじ軸114が回転し、このボールねじ軸114の回転によりボールナット115が上下動するようになっている。
【0011】
その際、ボールナット115は、取付板118により回転が規制されて上下動し、このボールナット115の上下動によりピストン119を介して制御棒105が上下動する。
【0012】
この制御棒105の上下動により、炉心103への挿入・引抜量が調整され、炉出力が制御される。
【0013】
BWRに緊急事態が発生して原子炉を緊急停止させるスクラムモードに入った場合、制御棒駆動機構ハウジング109の下部フランジ109aに接続されたスクラム挿入配管125からスクラム水入口サポート(注水口)126を介してピストン119の下面側に高圧駆動水が供給される。
【0014】
この高圧駆動水の供給により、ボールナット115上に設置されているピストン119が上方に押上げられ、制御棒105を炉心103内に高速で挿入させることでスクラムが達成される。
【0015】
図15に、従来の制御棒駆動機構と炉内構造物との接続構成を示す。
【0016】
制御棒駆動機構本体190は制御棒駆動機構ハウジング109内に設置されており、制御棒案内管161とバイオネットカップリングとにより結合されている。制御棒案内管161の上部は炉心支持板162上にあり、回転防止用のピン168が設置されている。
【0017】
制御棒案内管161を炉内に設置する場合は、ピン168の位相合わせを要するため作業が煩雑であり、工期を増大させていた。制御棒駆動機構の据え付けおよび取り外しは、制御棒駆動機構本体190、図示されていないスプールピース、図示されていないモータブラケットおよび図示されていないモータユニットの4段階に分けて行なわれる。
【0018】
先ず、制御棒駆動機構の据付の手順について説明する。制御棒案内管161の据付状態において、制御棒駆動機構本体190を制御棒駆動機構ハウジング109の下部開口部より挿入した後、軸中心に45°回転させることで制御棒案内管下部161aと制御棒駆動機構本体190の上部に取付けてある上部ガイド153をバイオネット結合させる。この時、制御棒案内管161にも回転力が一部伝達されるが、ピン168により回転が防止される。制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ109aおよび制御棒駆動機構本体フランジ190aをボルトを用いて締結する。
【0019】
次に、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ109a、制御棒駆動機構本体フランジ190aおよびスプールピースを下方よりボルトを用いて締結する。その後、モータブラケットおよびモータユニットを順にボルトで締結することで、据え付けを完了する。制御棒駆動機構の取り外しは、上述した据え付け手順の逆の操作により行なわれる。
【0020】
ところで近年、耐震裕度のより一層の向上等の観点から、原子炉圧力容器101を従来より原子炉建屋下部に設置する沸騰水型原子炉が検討されている。このような原子炉では、原子炉圧力容器101の下部スペースに制約があるため、原子炉圧力容器101下方からの制御棒駆動機構の据え付けおよび取り外しができない。従って、原子炉圧力容器101の上部から据え付けおよび取り外し可能である制御棒駆動機構の適用が求められている。
【0021】
以下に、従来の制御駆動機構を開示した文献名を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2000−214288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来の制御棒駆動機構においては、制御棒駆動機構ハウジング上部の開口部における内径と比較し、制御棒駆動機構本体の外径が大きいため、原子炉圧力容器上部からの制御棒駆動機構の据え付けおよび取り外しが不可能であった。このため、耐震裕度を高めるため原子炉圧力容器を原子炉建屋の下部に設置することができなかった。
【0024】
また、制御棒駆動機構ハウジングの上部開口部から据付および取り外し可能な制御棒駆動機構であったとしても、従来は制御棒駆動機構本体の取外時には制御棒案内管の取り外しを要し、プラント停止時の作業物量および工期が増大する等の問題があった。さらに、制御棒駆動機構の適切な支持方法について立案されていなかった。
【0025】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、制御棒案内管を取り外すことなく原子炉圧力容器上部から制御棒駆動機構を据え付けおよび取り外し可能であり、かつ制御棒駆動機構本体の適切な支持を行なうことができる制御棒駆動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明による制御棒駆動機構は、制御棒案内管内に設置された制御棒と連結し、制御棒駆動機構ハウジング内に設置される沸騰水型原子力発電所の制御棒駆動機構において、前記制御棒案内管の据付状態において制御棒駆動機構本体を原子炉圧力容器の上部から着脱が可能なように、前記制御棒駆動機構本体における、前記制御棒案内管の内面底部より下方に位置する部位の外径が前記制御棒案内管の底部の開口部内径より小さく、かつ、前記制御棒駆動機構本体における、前記制御棒駆動機構ハウジングの頂部より下方に位置する部位の外径が前記制御棒駆動機構ハウジング頂部の開口部内径より小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の制御棒駆動機構によれば、制御棒案内管を取り外すことなく原子炉圧力容器上部から制御棒駆動機構を着脱が可能であり、制御棒駆動機構本体の適切な支持を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1による制御棒駆動機構の構成を示した縦断面図。
【図2】図1における部分Cを拡大して示した縦断面図。
【図3】図1におけるA−A線に沿う断面構造を示した横断面図。
【図4】同実施の形態1による制御棒駆動機構において制御棒駆動機構本体の荷重を支える経路を示した説明図。
【図5】同実施の形態1による制御棒駆動機構においてスクラムモードにおいてピストンが高速に上昇したときの荷重を支える経路を示した説明図。
【図6】同実施の形態1による制御棒駆動機構において制御棒駆動機構ハウジングが破断したときの制御棒駆動機構本体の荷重を支える経路を示した説明図。
【図7】同実施の形態1による制御棒駆動機構において地震時に制御棒駆動機構本体の荷重を支える経路を示した説明図。
【図8】本発明の実施の形態2による制御棒駆動機構の構成を示した縦断面図。
【図9】図8における部分Dを拡大して示した縦断面図。
【図10】図8におけるB−B線に沿う断面構造を示した横断面図。
【図11】本発明の実施の形態3による制御棒駆動機構の構成を示した縦断面図。
【図12】本発明の実施の形態4による制御棒駆動機構における結合部分の断面構造を示した横断面図。
【図13】従来の沸騰水型原子炉の概略構造を示した縦断面図。
【図14】同沸騰水型原子炉の制御棒駆動機構の構造を示した縦断面図。
【図15】同制御棒駆動機構と炉内構造物との接続構成を示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
(1)実施の形態1
本発明の実施の形態1による制御棒駆動機構について、図1〜図7を用いて説明する。
【0031】
図1に、本発明の実施の形態1による制御棒駆動機構の縦断面構造として、特に炉心支持板62、制御棒案内管61、制御棒駆動機構ハウジング9および制御棒駆動機構本体90の据付状態を示す。
【0032】
制御棒駆動機構本体90を据え付けた状態において、制御棒案内管61における制御棒案内管底部61bの開口部より下方に位置する部位の制御棒駆動機構本体90の外径(d1)は、制御棒案内管底部61bの開口部内径(d2)より小さく、かつ制御棒駆動機構本体90の外径(d1)は、制御棒駆動機構ハウジング9における制御棒駆動機構ハウジング頂部9bの内径(d3)より小さい径となっている。
【0033】
このような寸法関係により、制御棒案内管61を取り外すことなく、制御棒駆動機構本体90を上方から据え付けおよび上方へ取り外すことができる。
【0034】
また、制御棒駆動機構本体90における制御棒駆動機構本体上部90bの外径(d4)は、制御棒案内管61における制御棒案内管底部61bの開口部内径(d2)より大きい径となっている。
【0035】
これにより、制御棒駆動機構本体90を制御棒案内管61の上方より据え付けた時、制御棒駆動機構本体上部90bは制御棒案内管底部61bより上に位置する。制御棒案内管底部61bが、制御棒駆動機構本体上部90bおよび制御棒駆動機構ハウジング9により軸方向に挟まれており、制御棒案内管61を軸方向に拘束することが可能である。
【0036】
図1におけるCで囲まれた部分を拡大して図2に示す。制御棒駆動機構ハウジング9における制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aと、スプールピース60とがマウンティングボルト70で締結されている。さらに、制御棒駆動機構本体90とスプールピース60におけるスプールピースフランジ部60aとに切り欠き部が形成されており、この切り欠き部内に結合部材63が嵌合するように収納されている。この結合部材63と制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aとがボルト64で締結され、スプールピース60に対する制御棒駆動機構本体90の回転が阻止されている。
【0037】
図3に示されたように、制御棒駆動機構本体90の下部外周側において、制御棒駆動機構本体90とスプールピースフランジ部60aとに円弧状の切り欠き部が左右対称に2個形成されている。この切り欠き部に、2個の着脱可能な円弧状の結合部材63であって、例えばSUS304等のステンレス材で製造されたものが嵌合されている。
【0038】
尚、本実施の形態1では円を2分割した2個の円弧状の結合部材63が用いられている。しかし、円を中心から放射状に分割する数は任意であり3個以上の数であってもよい。この結合部材63は、図2を用いて説明したように、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aとボルト64により締結されている。これにより、制御棒駆動機構ハウジング9と制御棒駆動機構本体90との間で軸方向の荷重が伝達可能となり、かつ両者間における回転を拘束することが可能となる。
【0039】
図1、図2に示されたように、制御棒駆動機構本体90の下部には、けがき線によるマーキング65、66が形成され、同様に制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aの側面にはマーキング67が形成されている。
【0040】
上述のような構成を備えた本実施の形態1において、制御棒駆動機構本体90および制御棒駆動機構90の下部部材の据え付け手順について説明する。
【0041】
原子炉圧力容器上部より、据付状態にある制御棒案内管61の内部を通過するように、制御棒駆動機構本体90を制御棒駆動機構ハウジング9内に据え付ける。この時、制御棒駆動機構本体90は、制御棒案内管61との間でバイオネット結合を行わない。このため、制御棒駆動機構本体90の据え付け時に制御棒駆動機構本体90を回転させる必要がない。
【0042】
この結果、制御棒案内管61に回転力が伝達されることがなく、炉心支持板62の上部において、図15に示されたような従来必要であった回転防止用のピン68は不要である。従って、制御棒案内管61の据え付け時において回転方向における位相合わせ作業が不要となり、制御棒案内管61の据え付けに要する工期が短縮される。
【0043】
制御棒駆動機構本体90の下部における切り欠き部の内部底面に形成されたマーキング65を、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aの下面と軸方向において合致するように、また制御棒駆動機構本体90の切り欠き部下方の側面に形成されたマーキング66を、制御棒駆動機構本体ハウジング下部フランジ9aの側面に形成されたマーキング67と回転方向の方位が合致するように、図示されていない制御棒駆動機構取扱装置あるいは治工具等を用いて、原子炉圧力容器下方における制御棒駆動機構本体90の軸方向および回転方向の位置調整を行なう。
【0044】
制御棒駆動機構取扱装置あるいは治工具を用いて、原子炉圧力容器下方において制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aにスプールピース60をマウンティングボルト70により締結する。その後、スプールピース60の下部に図示されていないモータブラケットを介してモータユニットを設置する。機器の取り外しは、上述した据え付けの際の手順とは逆の手順により行なわれる。
【0045】
これにより、本実施の形態1の制御棒駆動機構によれば、制御棒案内管61を取り外すことなく原子炉圧力容器上部から制御棒駆動機構の据え付けおよび取り外しが可能である。これにより、耐震裕度を高めるべく原子炉圧力容器を原子炉建屋の下部に設置することが可能となる。
【0046】
尚、制御棒案内管61の据え付けおよび取り外しには、通常は1本当たり約30分を要すると考えられ、30分に本数を乗じた分だけ工期を短縮することができる。
【0047】
上述のように制御棒駆動機構本体90の下部の切り欠き部においてマーキング65、66が形成されており、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ部9aの側面にマーキング67が形成されている。
【0048】
結合部材63が制御棒駆動機構本体90の下部の切り欠き部に嵌合され、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aに対して結合部材63がボルト64で締結されている。これにより、制御棒駆動機構本体90の軸方向の位置決め、および回転方向の拘束が可能である。この結果、機器の据付時において、制御棒駆動機構本体90駆動時等に作用する制御棒駆動機構本体90への回転力に対し、制御棒駆動機構の回転位相を適切に管理することが可能である。
【0049】
さらに本実施の形態1によれば、以下に示すようにそれぞれの状態において制御棒駆動機構本体並びに制御棒駆動機構ハウジングを適切に支持することができる。
【0050】
a)通常状態における支持
結合部材63が制御棒駆動機構本体90の下部の切り欠き部に嵌合され、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aに対してボルト64で締結されていることにより、通常状態において、制御棒駆動機構本体90の荷重が図4において矢印で示されたような荷重伝達経路により支持される。
【0051】
即ち、制御棒駆動機構本体90の荷重が、結合部材63、スプールピース60、ボルト70、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9a、制御棒駆動機構ハウジング9に順次伝達されていく。さらに、制御棒駆動機構ハウジング9の側面に設けられたスタブチューブ71に荷重が伝達され、スタブチューブ71が支点91において原子炉圧力容器下部底部1aにより支持されていることで、荷重が原子炉圧力容器1に伝達される。
【0052】
b)スクラム時における支持
制御棒駆動機構本体上部90bの外径(d4)が、制御棒案内管底部61bの開口部内径(d2)より大きい径であり、制御棒案内管底部61bが制御棒駆動機構本体上部90bおよび制御棒駆動機構ハウジング9により軸方向に挟まれた構成となっている。さらに、結合部材63が制御棒駆動機構本体90の下部の切り欠き部に嵌合され、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aとボルト64で締結された構造となっている。このような構造により、スクラム時において図5において矢印で示されたように荷重が伝達され支持される。
【0053】
スクラム時では、ピストン19が制御棒駆動機構本体90内の上限位置まで高速で到達し、制御棒駆動機構本体90に設置されたバッファ69と接触して停止する。このことで、制御棒駆動機構本体90に対して上方への荷重が作用する。しかしこの荷重は、図示されたような荷重伝達経路により支持されて、制御棒駆動機構本体90の浮上がりが防止される。
【0054】
即ち、制御棒駆動機構本体90に上方への荷重が作用し、この荷重が結合部材63、制御棒駆動機構ハウジング9、スタブチューブ71に伝達され、スタブチューブ71を支点71で支持している原子炉圧力容器下部底部1aを経て原子炉圧力容器1に伝達される。
【0055】
c)制御棒駆動機構ハウジングが破断した時における支持
制御棒駆動機構ハウジング9に万一ひび等が発生し破断したような状況を仮定する。
【0056】
制御棒駆動機構ハウジング9が破断すると、制御棒駆動機構本体90の支持を期待できない状態となる。このような場合であっても、本実施の形態1によれば、制御棒駆動機構ハウジング9の自重を図6において矢印で示されたような荷重伝達経路により支持が可能である。
【0057】
即ち、破断した制御棒駆動機構ハウジング9の自重が、結合部材63、制御棒駆動機構本体90、制御棒駆動機構本体上部90b、制御棒案内管61、炉心支持板62に伝達されて支持される。
【0058】
d)地震発生時における支持
制御棒案内管61は、炉心支持板62の上部に乗って支持されている状態にある。地震発生時には、このような制御棒案内管61に対して上方へ向かって浮き上がらせるような荷重が作用する。
【0059】
しかしこの場合も、図7において矢印で示されたような荷重伝達経路によりこの荷重が支持され、制御棒案内管61の浮上がりを防止することができる。
【0060】
即ち、この荷重が制御棒案内管61における制御棒案内管底部61bから制御棒駆動機構本体上部90bを経て制御棒駆動機構本体90、結合部材63、制御棒駆動機構ハウジング9、スタブチューブ71を支点71で支持している原子炉圧力容器下部底部1aを経て原子炉圧力容器1に伝達されて支持される。
【0061】
(2)実施の形態2
本発明の実施の形態2による制御棒駆動機構について、図8〜図10を用いて説明する。尚、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0062】
上記実施の形態1では、結合部材63が制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aに対してボルト64で締結されている。これに対し本実施の形態2では、図8、図8におけるDで囲まれた部分を拡大した図9、図8におけるB−B線に沿う横断面を示した図10に示されたように、結合部材63が制御棒駆動機構本体90の下部においてボルト64により締結されている点が相違する。
【0063】
このような構成においても、制御棒駆動機構本体90と制御棒駆動機構ハウジング9との間で軸方向の荷重伝達および回転の拘束が可能であり、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0064】
(3)実施の形態3
本発明の実施の形態3による制御棒駆動機構について、図11を用いて説明する。
【0065】
上記実施の形態1では、制御棒駆動機構本体90の外周側とスプールピースフランジ部60aの内周側に左右対称に形成された円弧状の切り欠き部に、結合部材63が収納されている。
【0066】
これに対し本実施の形態3では、制御棒駆動機構本体90の外周側とスプールピースフランジ部60aの内周側に加えて、さらに制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aの内周側に左右対称に円弧状の切り欠き部が形成されており、結合部材63が収納されている。
【0067】
このように、本実施の形態3では結合部材63の収納箇所が拡張されており、結合部材63の厚みもより厚くなっている。このため、結合箇所における強度が向上している。
【0068】
本実施の形態3によっても、制御棒駆動機構本体90と制御棒駆動機構ハウジング9との間で軸方向の荷重伝達および回転の拘束が可能であり、上記実施の形態1、2と同様の効果が得られる。
【0069】
(4)実施の形態4
本発明の実施の形態4による制御棒駆動機構について、図12を用いて説明する。
【0070】
図12に、本実施の形態4における制御棒駆動機構本体90、制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9a、スプールピースフランジ部60aを結合部材63aを用いて固定する横断面構造を示す。
【0071】
上記実施の形態1では、制御棒駆動機構本体90の外周側とスプールピースフランジ部60aの内周側に左右対称に形成された円弧状の切り欠き部に、円が2分割された形状を有する結合部材63が収納されている。
【0072】
本実施の形態4では、制御棒駆動機構本体90の下部外周側において、中心から放射状に延在するように4個の直方体形状の切り欠き部が形成されており、この切り欠き部内にSUS304等のステンレス材で製造されたキー63aが結合部材として嵌合されており、それぞれが制御棒駆動機構ハウジング下部フランジ9aとボルト64により締結されている。
【0073】
本実施の形態4では、結合箇所が4箇所存在し増加しているため締結作業が増えるが、強度性が向上すると考えられる。ここで、切り欠き部及び結合部材は4個に限らず2個以上の数であればよく、また形状も直方体には限定されず任意の形状でよい。
【0074】
本実施の形態4においても、制御棒駆動機構本体90と制御棒駆動機構ハウジング9との間で軸方向荷重の伝達および回転の拘束が可能であり、上記実施の形態1〜3と同様の効果が得られる。
【0075】
上記実施の形態1〜4によれば、制御棒案内管を取り外すことなく原子炉圧力容器上部から制御棒駆動機構の据え付けおよび取り外しができるため、耐震裕度を高めるべく原子炉圧力容器を原子炉建屋の下部に設置することが可能である。制御棒案内管を取り外す必要がないため、その分工期を短縮することができる。
【0076】
また、結合部材により、制御棒駆動機構本体を回転方向において適切に拘束することができる。さらに、通常時、スクラム時、制御棒駆動機構ハウジングの破断時、さらには地震時のいずれにおいても、制御棒駆動機構本体の自重並びにそれぞれの場合において作用する加重を適切に支持することができる。
【0077】
上述した実施の形態はいずれも一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲内において様々に変形することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
9 制御棒駆動機構(CRD)ハウジング
9a 制御棒駆動機構(CRD)ハウジング下部フランジ
9b 制御棒駆動機構(CRD)ハウジング頂部
19 ピストン
60 スプールピース
60a スプールピースフランジ部
61 制御棒案内管
61a 制御棒案内管下部
61b 制御棒案内管底部
62 炉心支持板
63 結合部材
63a 結合部材
64 ボルト
65、66、67 マーキング
69 バッファ
70 マウンティングボルト
90 制御棒駆動機構(CRD)本体
90b 制御棒駆動機構(CRD)本体上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御棒案内管内に設置された制御棒と連結し、制御棒駆動機構ハウジング内に設置される沸騰水型原子力発電所の制御棒駆動機構において、
前記制御棒案内管の据付状態において制御棒駆動機構本体を原子炉圧力容器の上部から着脱が可能なように、
前記制御棒駆動機構本体における、前記制御棒案内管の内面底部より下方に位置する部位の外径が前記制御棒案内管の底部の開口部内径より小さく、かつ、
前記制御棒駆動機構本体における、前記制御棒駆動機構ハウジングの頂部より下方に位置する部位の外径が前記制御棒駆動機構ハウジング頂部の開口部内径より小さいことを特徴とする制御棒駆動機構。
【請求項2】
前記制御棒駆動機構ハウジングの下部に締結されたスプールピースを備え、
前記スプールピースは、前記原子炉圧力容器の下部側から着脱が可能であることを特徴とする請求項1記載の制御棒駆動機構。
【請求項3】
前記制御棒駆動機構本体は、前記制御棒案内管の底部より上方に位置し外周へ向かって張り出す張り出し部を有し、前記張り出し部の最大外径が前記制御棒案内管の底部の開口部内径より大きいことを特徴とする請求項1又は2記載の制御棒駆動機構。
【請求項4】
前記制御棒案内管の軸方向移動を制限するため、前記制御棒駆動機構ハウジングの上端と、前記制御棒駆動機構本体の前記張り出し部との間に、前記制御棒案内管の底部が軸方向において挟まれることを特徴とする請求項3記載の制御棒駆動機構。
【請求項5】
前記制御棒駆動機構本体の底部に、前記制御棒駆動機構ハウジングの底面と軸方向を一致させるための第1のマーキングが形成され、
さらに前記制御棒駆動機構本体の底部側面と、前記制御棒駆動機構ハウジングの底部側面とに、周方向の位置決めを行うための第2、第3のマーキングがそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の制御棒駆動機構。
【請求項6】
少なくとも、前記制御棒駆動機構本体の底部の外周側面と、前記制御棒駆動機構ハウジングの下部に締結されたスプールピースにおける前記制御棒駆動機構ハウジングと接触する部分における内周側面とに、あるいは少なくとも、前記制御棒駆動機構本体の底部の外周側面と、前記制御棒駆動機構ハウジングの下部に締結されたスプールピースにおける前記制御棒駆動機構ハウジングと接触する部分における内周側面と、前記制御棒駆動機構ハウジングの底部における内周側面とに、連続した空間を有するように切り欠き部がそれぞれ形成されており、
前記切り欠き部内に、前記制御棒駆動機構ハウジングと前記制御棒駆動機構本体のそれぞれの軸方向の荷重を相互に伝達し、かつ相互の回転を拘束するための結合部材が収納されており、
前記結合部材は、前記制御棒駆動機構ハウジング又は前記制御棒駆動機構本体に締結されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の制御棒駆動機構。
【請求項7】
前記切り欠き部は、円が2以上の数で放射状に分割された形状を有し、前記結合部材は前記数だけ収納されていることを特徴とする請求項6記載の制御棒駆動機構。
【請求項8】
前記切り欠き部は、中心から2以上の数で放射状に延在する形状を有し、前記結合部材は前記数だけ収納されていることを特徴とする請求項6記載の制御棒駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−257356(P2011−257356A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134126(P2010−134126)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)