説明

制御盤消火設備

【課題】制御盤毎に消火装置を設置する場合にスペース的な制限を受けず適切に設置可能とする。
【解決手段】制御盤10の各々につき、換気装置16と共に、換気閉鎖装置18、消火装置24及び制御装置12を一体化して盤に配置し、消火装置24に消火剤を盤内に導入して放出する放出配管25を連結する。消火装置24は、消火ガスを盤内に放出するガス消火装置、又は、塩化物を含む酸化剤と還元剤を反応させて発生する塩化物を含むエアロゾルを盤内に放出するエアロゾル消火装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機室、電気室、防災センターに設置されるサーバーラック、受変電盤等の制御盤内で発生する火災を早期に検知して消火する制御盤消火設備に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、サーバーラック、受変電盤等のような複数配置された制御盤内で発生する電気回路上の異常通電による発熱、発煙、発火などにより室内で発生した火災を消火する消火設備としては、通信機室、電気室全体に消火ガスを放出して消火する全域ガス消火設備が用いられている。
【0003】
まず火災検知については、制御盤毎に、高感度の熱感知器や煙感知器を盤内に設置し、盤内の異常温度上昇や発煙を捉え、火災検知信号を発信する火災検知システムや、複数の制御盤にサンプリングチューブを配管し、ポンプで吸引したエアーの中の煙粒子を高感度煙検知器で検知して発煙を捉え、火災検知信号を発信する高感度火災検知システムが用いられる。
【0004】
また消火制御としては、通信機室、電気室全体にガス消火設備、予作動式スプリンクラー設備等を設置し、火災検知信号に基づき消火装置を起動して消火活動を行うものや、制御盤毎にガス消火装置或いは消火器を設置し、各制御盤の火災信号に基づき、消火装置を自動起動或いは手動操作して消火活動を行うシステムが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−078807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の消火設備にあっては次のような問題点がある。
【0007】
まず全域ガス消火設備の場合、室内の煙感知器、熱感知の作動に連動して、室内全体に消火ガスを放出するが、例えばサーバーラックとして設置した制御盤のようにファンによる換気装置が付いている場合は、火災が発生した制御盤内に消火に必要な量の消火ガスが入ることが保証できないという問題がある。
【0008】
また室内全体に消火ガスを放出するため、放出後に室内に人が入ることができず、その後の適切な対応が行えない問題がある。
【0009】
また消火ガスを放出した後、ガス容器全部を交換することになるため、費用が掛かる等の問題がある。
【0010】
また、大きなガスボンベの設置スペースが必要となり、配管工事が必要なとなるため、設備コストが大きく経済的な負担が増大する問題がある。
【0011】
さらに既存建物への設置は、スペース確保等の問題から制約が大きいという問題がある。
【0012】
一方、制御盤内に消火装置を設置する消火設備の場合は、全域ガス消火設備に比べ、設備コストを大幅に低減できるメリットがあるが、例えばサーバーラックとして設置した制御盤にあっては、消火装置を設置する盤内のスペースは限定的であり、消火装置の設置に必要とするスペース確保ができない問題がある。
【0013】
本発明は、制御盤毎に消火装置を設置する場合にスペース的な制限を受けず適切に設置可能とし、迅速、確実に消火を行うことができる制御盤消火設備を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、監視対象とする制御盤における盤内の火災を検知して消火する制御盤消火設備に於いて、
制御盤からサンプリング配管を介して吸引した空気に含まれる煙粒子から火災を検知する高感度煙検知器と、
制御盤の内部に設置されて火災検知する火災感知器と、
制御盤に設けられた換気装置の吸気側もしくは排気側に設置されて換気通路を開閉する換気開閉装置と、
盤内に消火剤を噴出して消火する消火装置と、
高感度煙感知器からの火災検知信号を検出した時に、制御盤の換気閉鎖装置を閉鎖位置に動作して盤内を密閉状態とし、制御盤の密閉状態で火災感知器から出力された火災検知信号に基づいて異常が発生した制御盤を特定し、特定した制御盤の消火装置を起動して消火させる制御装置と、
を備え、
換気装置と共に、換気閉鎖装置、消火装置及び制御装置を一体化して盤に配置し、消火装置に消火剤を盤内に導入して放出する放出配管を連結する。
【0015】
消火装置は、消火ガスを盤内に放出するガス消火装置、又は、塩化物を含む酸化剤と還元剤を反応させて発生する前記塩化物を含むエアロゾルを盤内に放出するエアロゾル消火装置である。
【0016】
制御装置は、高感度煙感知器からの火災検知信号を検出した時に、各制御盤の換気閉鎖装置を閉鎖位置に動作すると共に換気装置による換気を停止して盤内を密閉状態とする。
【0017】
制御装置は、異常発生を特定した制御盤の機器に対し、制御盤電源の遮断、コンピュータのデータバックアップを含む異常対応処理を指示する。
【0018】
制御装置は、所定時間を経過しても火災感知器から火災検出信号が出力されない場合、換気閉鎖装置を開放位置に動作する。
【0019】
更に、バックアップ消火装置を設け、制御装置は、消火装置を起動した後に、バックアップ消火装置を起動する。

【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通信機室、電気室、防災センターに設置されるサーバーラック、受変電盤等の制御盤内で発生する火災を早期に検知し、複数の制御盤の中から異常が発生した制御盤を特定し、盤内に消火ガスやエアロゾルなどの消火剤を放出し、確実に消火を行うことができる。
【0021】
また全域ガス消火設備が部屋全体に消火ガスを放出するのに対し、本発明は異常が発生した制御盤の盤内のみ消火剤を放出するため、放出後も安全に入室でき、異常の発生に対する必要な対応が容易にできる。
【0022】
また消火装置から放出した消火剤を放出配管により導いて盤内に放出させることにより、消火剤を盤内に均一になるように放出し、確実に消火することができる。
【0023】
また、放出する消火剤、例えば消火ガスの放出量は異常が発生した盤内の消火に必要な限定された量で済み、万一火災が発生して放出した後の復旧に要するコストを大きく低減できる。
【0024】
また全域ガス消火設備は消火ガスの放出に伴い室内が加圧されるため、構造物の強度を大きくし、避圧口を設けるなどの対策が必要であるが、本発明の制御盤内に消火剤を放出する設備では、このような必要はなく、設備コストを大幅に低減できる。
【0025】
また盤に設置されている換気装置の盤外側に換気閉鎖装置を設置すると共に、換気設置装置と一体に消火装置及び制御装置を設置することにより、制御盤の盤内には火災感知器を設けるだけで済み、盤内の設置スペースに影響されることなく消火設備機器を設置することができる。
【0026】
また換気装置、換気閉鎖装置、消火装置及び制御装置を一体化できるため、制御盤上部外側の設置スペースが少なくてよく、一体化に伴い装置間の配線が不要で、設置工事が簡単にできる。
【0027】
また、異常を特定した制御盤での消火剤放出に際しては、換気装置の開口部が閉鎖されているため、盤内に放出した消火剤を拡散させることなく、制御盤内に十分な時間滞留させ、消火性能を減じることがない。

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による消火制御システムの実施形態を示した説明図
【図2】図1の制御盤の詳細を示した説明図
【図3】図2の制御装置の詳細を示した説明図
【図4】図3の制御装置による消火制御処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明による制御盤消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、例えば通信機室には制御盤10が複数台設置されており、制御盤10は例えばサーバーラックであり、通信システムで使用する複数のサーバーが収納され、各種の通信サービスを提供している。
【0030】
このような複数の制御盤10における盤内収納機器の発熱、発煙、発火を検知して消火する制御盤消火設備として、本実施形態にあっては、各制御盤10の盤天井側に設置された換気装置16と一体に、制御装置12、換気閉鎖装置18及び消火装置24を設置し、消火装置24からは盤内に放出配管25が引き込まれている。
【0031】
制御盤10の各々に設けた制御装置12に対しては高感度煙検知装置14が設けられている。高感度煙検知装置14には、制御盤10のそれぞれに配管したサンプリングチューブ15が集合配管として連結され、ポンプによりサンプリングチューブ15を介して各制御盤10の盤内の空気を吸入して高感度煙検知装置14に導入し、レーザ光による煙粒子のパルスカウント又は積分などにより火災を高感度に検出するようにしている。
【0032】
このような高感度煙検知装置14の検出感度は、一般的な煙感知器で火災を検出する減光濃度10%/mに対し、例えば0.005%/mの減光濃度で火災を検出することができ、一般の煙感知器に対し約2000倍程度の感度を持ち、非常に薄い煙であっても検知することができる。
【0033】
一方、高感度煙検知装置14は、検出感度はきわめて高いが、その分、コストが一般の煙感知器に対して高く、したがって複数の制御盤10に対し1台の高感度煙検知装置14を設け、各制御盤10の盤内の空気をサンプリングチューブ15で集合的に吸入して、盤内での異常発熱、発煙、着火などによる煙の発生を高感度で検出している。
【0034】
制御盤10のそれぞれには、内部の温度上昇を防ぐために、モータにより回転駆動されるファンを備えた換気装置16が盤天井側に設けられている。本実施形態にあっては、制御盤10の天井側に通常設けている換気装置16の盤外側となる位置に、換気通路を開閉する換気閉鎖装置18を設けている。換気閉鎖装置18としては例えばモータダンパを設置する。モータダンパはモータにより回転する羽根板を備えており、羽根板の回転で開口部を閉鎖することができる。
【0035】
制御装置12は、高感度煙検知装置14により複数の制御盤10のいずれかにおける異常発熱、発煙、着火などによる煙を高感度で検出して煙検出信号が得られたとき、換気閉鎖装置18を閉鎖制御し、制御盤10内を密閉状態とするようにしている。
【0036】
また本実施形態にあっては、高感度煙検知装置14で火災検知信号が出力されたときに、制御装置12は換気閉鎖装置18を閉鎖制御すると同時に換気装置16を停止しており、これによって、より確実に制御盤10の盤内の密閉状態が確保されている。
【0037】
制御盤10の盤内のそれぞれには火災感知器20が個別に設置されている。火災感知器20としては、一般的な煙感知器や熱感知器、更には熱感知線などを使用することができる。火災感知器20は制御盤10内での異常発熱、発煙、着火などにより発生した煙を検知して火災検知信号を自己の制御盤10の制御装置12に送る。
【0038】
このとき制御装置12により換気閉鎖装置18は閉鎖制御されており、これによって制御盤10は密閉状態にあることから、異常発熱や発煙などで発生した熱や煙を外部に拡散させてしまうことがない。これによって火災感知器20を確実に作動して火災検知信号を制御装置12に出力させ、制御装置12において、高感度煙検知装置14からの火災検知信号では不明であった異常発生場所となる制御盤10が自己の制御盤であることを特定する。
【0039】
更に制御盤10のそれぞれには消火装置24が設けられている。本実施形態で使用する消火装置としては、ガス消火装置とエアロゾル消火装置がある。ガス消火装置はガス消火容器(ガスボンベ)内にCO、N、ハロンガス、FM−200などの消火用ガスを封入し、消火装置起動信号により容器弁を開き、放出配管25を介して制御盤内の放出した消火ガスが盤内に均一に分布可能とする位置に消火ガスを放出する。
【0040】
またエアロゾル消火装置は、カリウムなどの塩化物を含む酸化剤と金属シリコンなどの還元剤とを反応させてエアロゾル(微粒子)を盤内に放出することで消火させる。盤内に放出されるエアロゾルには例えば硝酸カリウムなどの塩化物が含まれており、この塩化物が火災の炎に作用し、燃焼反応を妨げることにより、消火することができる。
【0041】
消火装置24の起動により消火用ガスまたは消火用エアロゾルを盤内に放出した場合、このとき換気閉鎖装置18の閉鎖制御と換気装置16の停止で盤内は密閉状態に置かれているため、盤内に放出された消火用ガスもしくは消火用エアロゾルは外部に拡散することなく、制御盤内に十分な時間、滞留させることができ、消火性能を維持することができる。
【0042】
また制御装置12は、火災発生が特定された自己の制御盤10の消火装置24を起動する際に、制御盤の電源を遮断しており、電源遮断によって制御盤に対する通電継続が断たれ、通電状態に起因した過熱状態が維持されなくなり、消火ガスやエアロゾルを放出した後に、時間の経過に伴ってガスやエアロゾルが散出しても、再着火することを確実に防止している。
【0043】
また制御盤10内に収納されているサーバ等のコンピュータに対し、制御装置12はデータバックアップなどの指示を行うことで、異常発生に伴うデータ喪失を未然に防止するようにしている。
【0044】
図2は図1の制御盤1台を取り出して示している。図2において、監視対象とする制御盤10に対しては高感度煙検知装置14に対するサンプリングチューブ15が配管され、換気閉鎖装置18及び換気装置16の換気通路を介して制御盤10内の空気をポンプにより吸引し、高感度煙検知装置14に導入して煙粒子を検知するようにしている。
【0045】
制御盤10の換気装置16は通常、天井面側に設けられていることから、その外側にモータダンパなどを用いた換気閉鎖装置18を一体に設置し、高感度煙検知装置14で火災検知を行ったときに、制御装置12から換気閉鎖装置18を閉鎖制御し、併せて換気装置16を停止することで、制御盤10内を密閉状態とするようにしている。
【0046】
制御盤10の上部となる天井外側には、換気装置16及び換気閉鎖装置18と一体に制御装置12と消火装置24を設けている。なお、説明の都合上、制御装置12と消火装置24を両側に分けて配置しているが、両者を一体として換気装置16や換気閉鎖装置18に設けても良く、換気装置16、換気閉鎖装置18、制御装置12及び消火装置24の一体化は制御盤10の天井外側となる上部の設置スペースに対応して適宜の配置構成をとることができる。
【0047】
このように換気装置16、換気閉鎖装置18、制御装置12及び消火装置24を一体化して制御盤10の上部外側に設置することで、装置相互間の信号配線はコネクタなどを使用して内部的に行うことができ、配線が簡単になる。
【0048】
制御盤10内には火災感知器20に加え、この実施形態にあっては熱感知線22が設けられている。熱感知線22は、2本のよじられた鋼鉄製導体線を3層の絶縁体が被覆している。2本の導体線は感熱樹脂被覆により絶縁されており、平常時は2本の導体線の間は感熱樹脂被覆の介在により電気の導通はない。
【0049】
熱感知線22が設置されている場所の温度が上昇し、所定の感熱作動温度に達すると、内部の感熱樹脂被覆が熱により溶解し、よじられている2本の鉄製導体線が接触して電気的導通が生じ、この電気的導通を受信回路部で検出して火災検知信号を得ることができる。
【0050】
消火装置24としては例えばエアロゾル消火装置を使用する。エアロゾル消火装置は、カリウムなどの塩化物を含む酸化剤と金属シリコンなどの還元剤とを点火装置により燃焼反応させてエアロゾル(微粒子)を発生させ、発生したエアロゾルを盤内の下側まで引き込まれた放出配管25により案内し、例えば盤内下部からエアロゾル52を放出させる。このような放出配管25によるエアロゾル52の放出位置は、放出したエアロゾルが盤内に均一に分布できるような位置とする。
【0051】
またエアロゾル消火装置は酸化剤と還元剤の燃焼反応によりエアロゾルを放出することから、放出されたエアロゾルは最初高温であるが、充分に長い放出配管25を通って盤内に放出されることで、盤内に放出されたときには温度が充分に下がっている。またエアロゾル消火装置そのものも燃焼反応により過熱されるが、制御盤10の上部外側に設置されているため、エアロゾル消火装置が高温になっても制御盤10の内部に悪影響を及ぼすことはない。
【0052】
なお、制御盤10の上部外側には消火装置24に加えバックアップ消火装置を設けることもできる。バックアップ消火装置は、消火装置24の起動で消火ガスまたはエアロゾルを盤内に放出した後、放出した消火ガス、エアロゾルの濃度を継続維持するために起動する。
【0053】
また制御盤10には、内部に収納されたサーバーなどの機器に対する電源供給を行う電源部28が設けられており、この電源部28に対し、制御装置12より電源遮断を行えるようにしている。また制御盤10内にはサーバーなどのコンピュータ30が配置されていることから、必要に応じてコンピュータ30に対し、制御装置12からデータバックアップのための指示となるコマンドを送ることができるようにしている。
【0054】
図3は図2の制御装置の詳細を示したブロック図である。図3において、制御装置12にはプロセッサ32が設けられ、プロセッサ32に対し、入力部34、表示部36、操作部38、出力部40及び移報部42が設けられている。
【0055】
入力部34には、高感度煙検知装置14からの火災検知信号、火災感知器20からの火災検知信号、更に熱感知線22からの火災検知信号が入力されている。表示部36は、例えば図1に示した5台の制御盤10の状態を示す表示灯などが設けられており、火災を検知すると、火災を検知した表示盤を示す表示灯などを点灯する。
【0056】
操作部38は制御盤の上部外側に設置した制御装置12に対し制御盤前面又は裏面などの操作可能な位置に分離配置されて信号線接続され、分離配置された操作部38には必要な各種の操作釦などが設けられ、更に制御盤10に設けている消火装置24やバックアップ消火装置26を手動起動するための手動起動釦を設ける。
【0057】
出力部42は、制御装置12からの制御信号やコマンドを、制御盤10に設けている換気装置16、換気閉鎖装置18、消火装置24、バックアップ消火装置26、電源部28、更にコンピュータ30に出力するようにしている。
【0058】
移報部42は外部の防災センターなどへの移報信号を出力するもので、本実施形態にあっては高感度煙検知装置14から火災検知信号が得られたときに初期火災検知信号を移報出力し、その後に火災感知器20もしくは熱感知線22から火災検知信号が得られたときに火災感知信号を移報出力するようにしている。
【0059】
この移報信号を受けた防災センター側の例えば火災受信機にあっては、制御盤10を設置している場所での火災発生につき、初期火災警報を出したり、その後の火災確定に伴う火災警報を出すことになる。
【0060】
プロセッサ32にはプログラムの実行により実現される機能として、高感度火災判定部44、換気制御部46、個別火災判定部48及び消火制御部50が設けられている。高感度火災判定部44は高感度煙検知装置14からの火災検知信号の有無を監視しており、高感度煙検知装置14からの火災検知信号の受信を判別すると、高感度火災に基づく初期火災検知を判定する。
【0061】
換気制御部46は、高感度火災判定部44で初期火災検知が判定された場合に、各制御盤10に設けている換気閉鎖装置18に制御信号を出力して閉鎖制御すると同時に換気装置16の停止制御を行う。
【0062】
個別火災判定部48は、換気制御部46による換気閉鎖装置18の閉鎖制御及び換気装置16の停止制御によって制御盤10を密閉状態とした状態で、自己の制御盤10に設けられている火災感知器20もしくは熱感知線22からの火災検知信号による個別火災検知の有無を判定しており、火災検知信号が得られると、自己の制御盤10での異常発生を特定する。
【0063】
消火制御部50は、個別火災判定部48で異常が特定された自己の制御盤の消火装置24に対し起動信号を送って消火起動制御を行うことで、消火ガスもしくはエアロゾルなどの消火剤を盤内に放出させる。
【0064】
ここで個別火災判定部48は、換気制御部46による換気装置16の停止及び換気閉鎖装置18の閉鎖制御を行った後、所定時間経過する間に、火災感知器20または熱感知線22からの火災検知信号が得られるか否か監視しており、所定時間を経過しても火災感知信号が得られない場合には、換気装置16及び換気閉鎖装置18を通常状態に復旧させ、制御盤10の換気を行って通常の運用状態に戻すようにしている。
【0065】
図4は図3の制御装置12による消火制御処理を示したフローチャートであり、制御装置12に設けたプロセッサ32による制御処理となる。
【0066】
図4において、消火制御処理は制御装置12の電源の投入に伴い、ステップS1で初期化及び自己診断を行い、異常がなければステップS2に進み、高感度煙検知装置14からの火災検知信号の受信の有無を判別している。
【0067】
ステップS2で高感度火災検知信号の受信を判別すると、ステップS3に進み、移報部42より外部の防災センターなどに対し初期火災検知信号を移報出力した後、ステップS4で各制御盤10の換気閉鎖装置18を閉鎖制御すると同時に、換気装置16を停止制御し、制御盤10を密閉状態とする。
【0068】
続いてステップS5で自己の火災感知器20もしくは熱感知線22による感知器火災検知信号の受信の有無をチェックしており、火災検知信号の受信のない場合には、ステップS6で所定時間の経過の有無をチェックし、もし所定時間を経過しても火災検知信号が受信されなかった場合には、ステップS7に進み、換気閉鎖装置18と換気装置16を通常状態に戻す復旧制御を行って、ステップS2に戻る。
【0069】
ステップS5で所定時間を経過する前に火災検知信号の受信が判別されると、ステップS8で移報部42より外部の防災センターなどに火災感知の移報出力を行った後、ステップS9で火災検知信号の受信に基づき自己の制御盤で異常が発生したことを判定し、ステップS10で自己の制御盤の消火装置24に対し消火起動信号を送って起動し、エアロゾルを放出配管254を介して盤内に放出させる。
【0070】
続いてステップS11で異常対応制御として例えば電源部28による電源供給を遮断したり、コンピュータ30に対してコマンドを送信してデータバックアップを行わせる。もちろんデータバックアップのコマンドは電源部28の電源遮断に先立って行われ、データバックアップが完了した後に電源部28による電源遮断を行うことになる。
【0071】
続いてステップS12でバックアップ消火指示の有無を判別しており、制御装置12の操作部38の操作又は遠隔操作などによりバックアップ消火指示が判別されると、ステップS13でバックアップ消火装置26の起動制御を行い、ステップS10で起動した消火装置20から放出した消火ガスやエアロゾルの濃度低下をバックアップ消火装置26の起動で補い、再着火を防止する。バックアップ消火装置の起動は火災感知器から火災検知状態に基づいて起動制御してもよい。
【0072】
ステップS12でバックアップ消火指示が判別されない場合には、ステップS14で復旧指示の有無を判別しており、復旧指示が判別されるとステップS15に進み、復旧処理を行った後、ステップS2に戻ることになる。
【0073】
ステップS11の異常対応処理の一部の処理は、ステップS2の高感度火災検知信号を受信した段階で行っても良い。例えば、データバックアップは初期火災を検知した段階で全ての制御盤に対して行っても良い。
【0074】
なお図1の実施形態にあっては、制御盤10のそれぞれに制御装置12を個別に設けているが、複数の制御装置12を一体化し、特定の制御盤10に設置するようにしても良い。
【0075】
また上記の実施形態にあっては複数の制御盤10に対し高感度煙検知装置14を1台設けた場合を例に取っているが、監視対象とする制御盤10の台数が増加する場合には、高感度煙検知装置14の検出可能な最大制御盤の台数を超えた場合に、更に高感度煙検知装置14を増やすようにしてもよい。
換気閉鎖装置18は換気装置16の吸気側(制御盤内側)もしくは排気側(制御盤外側)のどちらに設けて制御盤を密閉させても良い。
【0076】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【符号の説明】
【0077】
10:制御盤
12:制御装置
14:高感度煙検知装置
15:サンプリングチューブ
16:換気装置
18:換気閉鎖装置
20:火災感知器
22:熱感知線
24:消火装置
44:高感度火災判定部
46:換気制御部
48:個別火災判定部
50:消火制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象とする制御盤における盤内の火災を検知して消火する制御盤消火設備に於いて、
前記制御盤からサンプリング配管を介して吸引した空気に含まれる煙粒子から火災を検知する高感度煙検知器と、
前記制御盤の内部に設置されて火災検知する火災感知器と、
前記制御盤に設けられた換気装置の吸気側もしくは排気側に設置されて換気通路を開閉する換気開閉装置と、
盤内に消火剤を噴出して消火する消火装置と、
前記高感度煙感知器からの火災検知信号を検出した時に、前記制御盤の換気閉鎖装置を閉鎖位置に動作して盤内を密閉状態とし、前記制御盤の密閉状態で前記火災感知器から出力された火災検知信号に基づいて異常が発生した制御盤を特定し、特定した制御盤の消火装置を起動して消火させる制御装置と、
を備え、
前記換気装置と共に、前記換気閉鎖装置、消火装置及び制御装置を一体化して盤に配置し、前記消火装置に消火剤を盤内に導入して放出する放出配管を連結したことを特徴とする制御盤消火設備。

【請求項2】
請求項1記載の制御盤消火設備に於いて、前記消火装置は、消火ガスを盤内に放出するガス消火装置、又は、塩化物を含む酸化剤と還元剤を反応させて発生する前記塩化物を含むエアロゾルを盤内に放出するエアロゾル消火装置であることを特徴とする制御盤消火設備。

【請求項3】
請求項1記載の制御盤消火設備に於いて、前記制御装置は、前記高感度煙感知器からの火災検知信号を検出した時に、前記各制御盤の換気閉鎖装置を閉鎖位置に動作すると共に前記換気装置による換気を停止して盤内を密閉状態とすることを特徴とする制御盤消火設備。

【請求項4】
請求項1記載の制御盤消火設備に於いて、前記制御装置は、前記異常発生を検知した制御盤の機器に対し、制御盤電源の遮断、コンピュータのデータバックアップの異常対応処理を指示することを特徴とする制御盤消火設備。

【請求項5】
請求項1記載の制御盤消火設備に於いて、前記制御装置は、所定時間を経過しても前記火災感知器から火災検出信号が出力されない場合、前記換気閉鎖装置を開放位置に動作することを特徴とする制御盤消火設備。

【請求項6】
請求項1記載の制御盤消火設備に於いて、更に、バックアップ消火装置を設け、前記制御装置は、前記消火装置を起動した後に、前記バックアップ消火装置を起動することを制御盤消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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