説明

制御装置のための機能パラメータを定める方法

本発明は、制御装置(22)のための機能パラメータ(20)を定める方法と、提示される方法が実施される制御装置(22)と、に関する。制御装置(22)は、技術システム(10)の制御のために設けられ、本方法では、少なくとも1つの目標変数がシステム挙動に対して予め設定され、機能パラメータ(20)の変更が実行され、機能パラメータ(20)に対する獲得された応答から、設定されたパラメータ(20)の評価が、予め設定された少なくとも1つの目標変数を考慮して実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置のための機能パラメータを定める方法、及び、そのような制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のための噴射システムの場合、利用される制御装置内で実現される制御装置機能は、製造業者及びエンドユーザの目標変数又は評価基準に関する要求に従って、機能パラメータを介して定める必要がある。
【0003】
システムに対する要求が増えるほど機能の複雑性が増し、機能パラメータの数も増加する。しかしながら同時に、顧客は構造の簡素化を要求する。なぜならば、複雑なソフトウェア構造は、専門知識を用いてのみ操作され、適用が非常に困難だからである。
【0004】
上記の制御装置機能は、パラメータ集合を用いて、多くの場合に複数のパラメータ集合を用いて、定数、特性曲線、特性マップを介して、固定の設定を決定するという可能性を提供する。その際、機能の複雑性が、また、特性マップの数も絶えず増すことに注意されたい。せいぜいのところ各パラメータによる影響を知っている機能の専門家は、このような程度で、顧客の要求に応じて機能を構築することが可能である。
【0005】
顧客は、複数の考えられる最適なトレードオフ(Kompromiss)の中から自身の所望のトレードオフを獲得する。要求からの逸脱は、反復によって補正されうる。
【発明の概要】
【0006】
このような背景から、請求項1の特徴を備えた機能パラメータを定める方法と、請求項10の特徴を備えた制御装置と、が提示される。実施形態は、従属請求項、及び、以下の記載から明らかとなろう。
【0007】
自動適用する(selbstapplizierend)機能を使用することによって、複数の機能パラメータ、機能特性曲線、及び、機能特性マップが、利用者のための、動作点に依存した1つ又は少数の重み付け特徴マップに減らされうる。従って、制御装置機能の複雑性が増したとしても、複雑性が顧客又は利用者のために下げられる。適用は、目標変数及び基準の設定、又は、これら目標変数及び基準の重みの設定として行われる。従って、利用者は、所望の要求をシステム上に実装するために、機能の専門家である必要はない。さらに、利用者は機能パラメータすら知らなくてもよい。
【0008】
本方法によって、適用は、制御装置内のある機能に対して実在の目標変数又は基準を直接設定することにより可能となる。
【0009】
ソフトウェア構造がますます複雑になることによって、適用の際の専門的な要求及びコストが、内部でも顧客のところでも上がる。制御装置内の重み特性マップと共に、自動適用する機能を利用することによって、システム挙動を、直接的に目標変数又は評価基準を介して、又は、これら目標変数又は評価基準の重みを介して変更し設定することが可能となる。これによって、利用者のために、複数の機能パラメータ、機能特性曲線、及び機能特性マップが、動作点に依存した1つ又は少数の重み特性マップに減らされうる。
【0010】
本発明は、目標変数の設定を介して適用を可能とし、その際、集中(Konzentration)は、目標変数のために行われ、機能パラメータのためには行われない。これにより、利用者のために複雑性が下げられることになり、機能の専門家は調整(Abstimung、チューニング)のために必要ではない。
【0011】
提示される方法を用いて、設定の客観的評価による系統的な手続きが可能である。さらに、要求を適合させるための反復(Rekursion)に、より少ないコストが掛かる。場合によっては、制御装置内の特性マップ構造の縮小も達成される。
【0012】
本発明によって、制御装置機能を創り出し、又は、生成した制御装置機能を拡張することが可能であり、従って、この制御装置機能は自律的に適用する。機能の目的は、目標変数又は基準の1つ以上の重み特性マップを介する構成において、適用技術者又は顧客によって予め設定される。機能は、このために必要な内部の機能パラメータを学習する。
【0013】
本発明の更なる別の利点、及び、構成は、以下の明細書の記載、及び、添付の図面から明らかとなろう。
【0014】
先に挙げた特徴及び以下で解説される特徴は、各示される組み合わせのみならず他の組み合わせにおいても、又は単独でも、本発明の枠組みを逸脱することなく利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】記載される方法の可能な実施の概略図を示す。
【図2】本方法の更なる別の可能な実施を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、実施形態を用いて図面に概略的に示され、以下では図面を参照してより詳細に記載される。
【0017】
図1には、例えば機能パラメータのような、パラメータ変更(Parametervariation)を、目標システム又はシステム10上で直接実行する方法の手続きが図示されており、ここでは、システム10は、異なる動作点において駆動される。ステップ12において、システム応答から、システム10からの基準が計算される。計算された基準と予め設定された目標変数とから、例えば、数学的モデル又は基準モデル14が形成され、この数学的モデル又は基準モデル14は、パラメータに対する、目標変数及び基準の依存関係(Abhaengigkeit)を作る。
【0018】
最適化プログラム16は、重み付け特性マップ18からの予め設定された重み付け基準に基づいて、このモデル14上で最適化を施し、最適な機能パラメータ20を定め、この最適な機能パラメータ20を制御装置22の本来の機能に提供し、常に新たに更新することが可能であり、その際、最適化プログラム16は、例えば、勾配の観察又は評価によって、システム応答の展開(Entwicklung)、又は、当該システム応答に応じて計算される基準の展開を考慮することが出来る。
【0019】
従って、システム10は初めに、制御装置機能の始動パラメータにより稼動する。ここでは、システム10は任意の動作点に、設定された機能パラメータ20により駆動され、その際にシステム10は初期値を伝達し、この初期値に応じて基準が計算される。この基準を用いて、基準モデル又は挙動モデル14が作成される。最適化プログラム16は、挙動モデル14の、測定される範囲において、予め設定された重み付けにより最適パラメータを定め、この結果を用いて、対応する機能パラメータを変更する。
【0020】
即ち、システム10は始動時に、例えば予め設定され又は引き継がれた機能パラメータを利用する。しかしながら、この機能パラメータは通常ではシステム10に対して調整されておらず、即ち、この機能パラメータはシステム10にとって最適ではない。
【0021】
機能パラメータ20の決定の開始に際しては、通常、挙動モデル14は存在しない。しかしながら、類似したシステム10の挙動モデル14を保存することも可能である。
【0022】
システム10は様々な動作点に駆動され、その際に、様々な動作点での自身の挙動を学習する。この工程において、最適化プログラム16は、機能に対してパラメータ組み合わせを予め設定し、このパラメータ組み合わせは、挙動モデル14の改善に関する最適化プログラム16の診断に相当する。従って、システム10の挙動を改善すべきパラメータ組み合わせが試される。挙動モデル14は、基準、及び、パラメータ組み合わせの分だけ拡張される。拡張されたパラメータ組み合わせ、及び、対応する基準によって、新たに拡張された挙動モデル14が計算される。
【0023】
最適化プログラム16は挙動モデル14を利用し、パラメータ設定が、システム10の挙動の改善又は悪化に繋がったかどうかを検査する。これによって最適化プログラム16は次第に、基準に関してシステムの最適な挙動が設定され又は得られるパラメータの組み合わせを定める。このことは、最適な挙動が見つかるまで挙動モデル14が発展する反復過程において行われる。このことは、動作点ごとに実行される。
【0024】
最適化プログラム16はその都度、測定される範囲において挙動モデル14の最適パラメータを定め、挙動の更なる改善が実現可能であるかについて診断を出す。最適化プログラム16のタスクは、重み付け特性マップからの設定に従って挙動モデル14の基準を評価することにある。
【0025】
その際に、最適化プログラム16への設定は、重みの総和基準であってもよく、当該総和基準について、最適化プログラム16はパラメータの解を見つける。代替的に、最適化プログラム16が多目的最適化を介して複数の機能パラメータ20を伝達し、機能パラメータの選択が、メモリからの基準の重み付けを介して、又は最適パラメータのモデルを介して行われるように、機能は設計されうる。この場合に、基準モデル14の学習後にはいつでも、重み付け基準がシフトされうる。機能パラメータ20は即時有効である。利用者は、このようなやり方で、機能パラメータ20を知ることなく適用することが出来る。
【0026】
ここでは、以下の2つの過程が生成する。
1.機能パラメータ20の迅速な入力(Einlernen)、及び、重み付け特性マップ18の調整による適用
2.寿命時間に渡る機能パラメータ20のゆっくりとした適合
【0027】
過程の切り替えは、学習された稼働中の挙動の情報を介して行われうる。
【0028】
第2の過程の後に、多目的最適化を介して、機能のための最適パラメータのモデル又はメモリが存在する場合には、重みは常に、例えば、様々な重み特性マップの切り替えによって、又は、重みに対する直接的な閉ループ制御によって変更することが出来る。
【0029】
図2には、パラメータが、システム30上で直接的に変更されず、変更による著しい影響を回避するために中間モデル32を介して変更されるという点で異なっている、図1と類似した手続きが示されている。
【0030】
中間モデル32はシステム30の代わりとなり、定められた状態において、同定、最適化により又はその他の演算により、システム30と合わせられる(ブロック35)。
【0031】
ステップ34において、中間モデル32の応答から、中間モデル32からの基準が計算される。その後、計算された基準及び目標変数から例えば、パラメータに対する目標変数及び基準の依存関係を作る数学的モデル又は基準モデル36が形成される。
【0032】
最適化プログラム38は、重み特性マップ40からの重み付け基準を設定することによって、このモデル36上で最適化を施し、最適な機能パラメータ42を定め、この最適な機能パラメータ42を本来の制御装置機能44に提供し、常に新たに更新することが出来る。最適化は、制御装置の運送後も計算されうる。
【0033】
代替案は、本方法を制御装置ソフトウェア以外で計算し、道具又は工具を介して、制御装置へのインタフェースを用いて実験車両に設定を伝送するということである。その後、調整の結果は、制御装置内で直接利用可能であり、又は、調整の後に工具を介して制御装置内に転送される必要がある。
【0034】
特別な利点は、制御装置ソフトウェアが変更される必要がないことである。但し、場合によっては、様々なセットアップ又は重みに対する閉ループ制御が実施できないことに注意されたい。さらに、追加的なツールが、適用のため、また、ユーザのためにも利用可能である必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
技術システム(10、30)の制御のために設けられる制御装置(22)のための機能パラメータ(20、42)を定める方法であって、少なくとも1つの目標変数がシステム挙動に対して予め設定され、前記機能パラメータ(20、42)の変更が実行され、前記機能パラメータ(20、42)に対する獲得された応答から、設定された前記機能パラメータ(20、42)の評価が、予め設定された前記少なくとも1つの目標変数を考慮して実行される、方法。
【請求項2】
前記機能パラメータ(20、42)は、前記システム(10、30)上で直接変更され、前記応答は前記システム(10、30)の応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機能パラメータ(20、42)は、中間モデル(32)を介して変更され、前記応答は前記中間モデル(32)の応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記応答から基準が計算され、前記計算された基準と前記予め設定された少なくとも1つの目標変数とから、前記システム(10、30)のモデル(14、36)が形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
最適化プログラム(16、38)が利用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化プログラム(16、38)は、前記応答の展開を考慮する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
複数の目標変数が予め設定され、前記システム挙動は、前記目標変数の重み付けを介して予め設定される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
制御装置ソフトウェア内で実施される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
制御装置ソフトウェア以外で実施される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
機能が実現される演算ユニットを備えた制御装置であって、前記制御装置(22)は、前記機能の機能パラメータ(20、42)を、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を用いて定めるよう構成される、制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−513877(P2013−513877A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543589(P2012−543589)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068750
【国際公開番号】WO2011/082908
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】