券売機
【課題】ICカード及び券の挿入・取出口が共通である発券装置において操作者による操作が簡単であって誤操作を防止する。
【解決手段】発券装置4と接客部とを有する券売機である。発券装置4は、ICカード及び券を通過させ接客部に開口する共通の処理口17と、ICカードに読み書き処理を行うリーダ/ライタ48と、処理口17とリーダ/ライタ48とを結ぶICカード搬送路R1でICカードを搬送するICカード搬送部22と、券が置かれる用紙部23と、発券処理を行う発券処理部24,25,27,91,31と、用紙部23と発券処理部と処理口17とを結ぶ券搬送路R3で券を搬送する券搬送部24,25,27,91,31とを有している。ICカードを処理口17から排出するときにその旨を、券を処理口17から排出するときにその旨を、それぞれ、接客部のディスプレイに表示する。
【解決手段】発券装置4と接客部とを有する券売機である。発券装置4は、ICカード及び券を通過させ接客部に開口する共通の処理口17と、ICカードに読み書き処理を行うリーダ/ライタ48と、処理口17とリーダ/ライタ48とを結ぶICカード搬送路R1でICカードを搬送するICカード搬送部22と、券が置かれる用紙部23と、発券処理を行う発券処理部24,25,27,91,31と、用紙部23と発券処理部と処理口17とを結ぶ券搬送路R3で券を搬送する券搬送部24,25,27,91,31とを有している。ICカードを処理口17から排出するときにその旨を、券を処理口17から排出するときにその旨を、それぞれ、接客部のディスプレイに表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入金指示に従って券、例えば乗車券、食券、入場券、各種のチケットを作成して払い出す券売機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通系ICカードの普及は目覚しく、定期券はもとよりストアード・フェア(SF/Stored Fare/蓄積料金)への利用、電子マネーへの利用等と用途も拡がり、発行枚数も増加している。このような中、券売機へのICカードの利用も増加している。
【0003】
券売機は、一般に、客が操作する接客部と、硬貨を処理する硬貨装置と、紙幣を処理する紙幣装置と、券の券面を印刷する印刷装置と、カードを処理するカード処理装置と、各装置用及び券売機全体用の制御部、等といった各装置機器によって構成されている。ICカードは、接客部から導入され、カード処理装置によって読取り及び書込みの処理を受ける。
【0004】
上記の券売機として、従来、特許文献1に開示された乗越精算機が知られている。この乗越精算機においては、単一の投入口から券及びカードを投入可能とし、返却すべき券の発行とカードの返却とが同一の取出口を通して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2531545号公報(第3〜5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の乗越精算機においては、カード及び券の投入口が共通であり、それらの取出口が共通であるが、投入口と取出口とは互いに別々に設けられていた。そのため、装置の全体が大型にならざるを得なかった。また、投入されたカードを処理する機構と、券を印刷して搬出する機構とが別々のユニットとして設けられていた。そのため、やはり装置の全体が大型にならざるを得ず、しかも装置全体のコストが高いという問題があった。
【0007】
上記の問題点を解消するため、本発明者等は種々の実験を行い、カードや券の投入及び取出しを共通の処理口を通して行うことが小型化及びコスト低減に有効であることを知見した。しかしながら、この場合には、共通の処理口においてカードの返却が行われているのか、あるいは券の発行が行われているのかが分からず、券購入者等といった操作者が誤操作をする可能性が高かった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、ICカードの処理機能と券の発券機能とを併せて有する発券装置を小型に低コストで製作できるようにすることを目的とする。また、本発明は、操作者による操作が簡単であって誤操作を防止できる発券装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る券売機は、発券装置と接客部とを有する券売機であって、(A)前記発券装置は、ICカード及び券を通過させることができる共通の処理口と、前記ICカードによる券購入や積み増しを可能とするために前記ICカードに対して読取り処理及び書込み処理を行うICカード処理部と、前記処理口と前記ICカード処理部とを結ぶカード搬送路に沿ってICカードを搬送するICカード搬送手段と、前記券が置かれる用紙部と、前記券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部と、前記用紙部と前記発券処理部と前記処理口とを結ぶ券搬送路に沿って券を搬送する券搬送手段とを有しており、(B)前記接客部は画像を表示する画像表示手段を有しており、前記処理口は前記接客部に開口しており、(C)前記ICカードを前記処理口から排出するときにICカードを排出することの画像表示を前記画像表示手段に行い、さらに前記券を前記処理口から排出するときに券を排出することの画像表示を前記画像表示手段に行う表示制御手段を具備していることを有することを特徴とする。
【0010】
ICカードは各種の情報を記憶するための公知のカードであり、例えば人が手のひらに乗せることができる程度の大きさ、例えば85.6mm×54mm程度の大きさのカードである。ICカードは、通常、任意の材質、例えば紙、樹脂によって形成された基材にICチップを固着することによって形成されている。ICカードには非接触式カードと接触式カードがある。非接触式カードの場合は、相手側からの電波を受けて発電を行うために基材上にアンテナが装備される。また、接触式カードの場合は、相手側から給電を受けるために基材上に入力端子が装備される。
【0011】
本発明に係る券売機は、前記処理口の近傍に設けられた発光手段と、前記ICカード及び前記券が前記処理口から互いに異なったタイミングで排出される開始から抜取りまでの間に前記発光手段を点滅発光又は点灯発光させる発光制御手段とを有することができる。これにより、ICカード及び券の処理口からの排出を操作者に注意でき、操作者によるそれらの取り忘れを防止できる。
【0012】
本発明に係る券売機は、券を前記処理口から前記券搬送路へ搬送させる搬送制御手段と、前記券搬送路へ搬送された前記券に記憶された情報を読取る読取り手段と、前記読取り手段で読取った情報に基づいて払戻金を演算し該払戻金を、前記券の挿入後に続いて挿入する前記ICカードに前記ICカード処理部によって積み増し金として記憶させる演算制御手段と、を有することができる。この構成により、ICカードを利用しての払戻金の処理を実現でき、ICカードの有効利用を達成できる。
【0013】
本発明に係る券売機は、(A)前記発券装置に含まれる制御部及び前記接客部の動作を制御する制御部に通信線を介して接続された券売機側制御部を有することができ、(B)前記発券装置、前記発券装置に含まれる制御部、前記接客部、及び前記接客部の動作を制御する制御部のための電源と、前記券売機側制御部のための電源と、を互いに独立した電源とすることができ、(C)前記券売機側制御部のための電源の中にバックアップ電源を備えることができ、(D)前記ICカード処理部は前記券売機側制御部のための電源から給電を受けることができる。
【0014】
この構成により、主たる電源からの通電が何らかの理由で遮断された場合でも、ICカードの処理を継続して行い、途中状態で無く完結した状態で終了させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ICカードと券とで投入口及び取出口が処理口として共通であるので、投入口と取出口とが別々に設けられる場合に比べて、ICカードの搬送系と券の搬送系とを小型の一体構造に容易に形成でき、発券装置を小型な一体構造に形成することができ、従って発券装置を用いた券売機を小型に形成できる。また、ICカードと券とで投入口及び取出口を共通とすることにより、それらが別々である券売機に比べて、部品コスト及び製作コストを大幅に低減できる。
【0016】
なお、カードや券の投入及び取出しを共通の処理口を通して行うことにした場合には、共通の処理口においてカードの返却が行われているのか、あるいは券の発行が行われているのかが分からず、券購入者が誤操作をするおそれがある。これに対し本発明では、ICカードを処理口から排出するときにICカードを排出することの画像表示を画像表示手段に行い、券を処理口から排出するときに券を排出することの画像表示を画像表示手段に行うことにしたので、ICカード及び券に関する接客案内表示が行われ、客である操作者に対して注意が促され、ICカードや券の取り忘れを防止できる。また、操作者は共通の処理口から何が排出されているのかを明確に認識することができるので、誤操作をすることなく券の購入を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る券売機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】その券売機の正面図である。
【図3】その券売機の背面図である。
【図4】本発明に係る券売機で用いる発券装置の内部構造の正面図である。
【図5】図4の発券装置を構成するICカード搬送部を示す図である。
【図6】図4の発券装置を構成する主要搬送部及び主要処理部を示す図である。
【図7】図6の主要処理部の1つである切断部及び印字部を示す図である。
【図8】図4の発券装置を構成する他の主要搬送部及び他の主要処理部を示す図である。
【図9】図1に示す券売機の制御系の一実施形態を示すブロック図である。
【図10】通常発券時の用紙搬送状態を示す図である。
【図11】通常発券時のICカード搬送部の駆動状態を示す図である。
【図12】ICカード挿入時の用紙搬送状態を示す図である。
【図13】ICカード挿入時のICカード搬送部の駆動状態を示す図である。
【図14】ICカードでの券購入時の用紙搬送状態を示す図である。
【図15】ICカードでの券購入時のICカード搬送部の駆動状態を示す図である。
【図16】払戻し処理時の第1の用紙搬送状態を示す図である。
【図17】払戻し処理時の第2の用紙搬送状態を示す図である。
【図18】ディスプレイ上の案内表示画面の実施形態を示す図である。
【図19】ICカード搬送部の従来の駆動系の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る券売機を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0019】
(券売機)
図1は本発明に係る券売機の一実施形態の斜視図であり、図2はその券売機の正面図であり、図3はその券売機の背面図である。本実施形態では、券売機1は、客である操作者によるICカードの投入又は現金の投入に応じて乗り物の乗車券を発行するものとする。もちろん、乗車券以外の券を発行することも可能である。
【0020】
券売機1は設置面Gの上に置かれている。設置面Gは、例えば、建物内部の床面であり、通常は、水平面である。設置面Gが水平面でない場合には、ボルト・ナット等を用いた高さ調整機構等を利用して券売機1の基準面が水平面となるように調整される。券売機1は、ケーシング2と、ケーシング2の前面に設けられた接客パネル3とを有している。ケーシング2の内部には、図3に示すように、発券装置4と、係員操作部6と、硬貨装置7と、紙幣装置8と、硬貨回収金庫9とが設けられている。
【0021】
接客パネル3は操作者が対面する部分である。接客パネル3には、入力用のタッチパネルを備えた画像表示手段としてのディスプレイ11と、必要に応じて操作者が操作するボタンスイッチ等が設けられた操作パネル12と、操作者が硬貨を投入する部分である硬貨投入口13と、硬貨が返却される部分である硬貨返却口15と、操作者が紙幣を挿入するための開口である紙幣挿入口14と、紙幣が払い出されるための開口である紙幣返却口16と、開口である処理口17とが設けられている。処理口17は発券装置4の1つの構成要素であり、操作者は、ICカード又は払戻し券を処理口11へ挿入して発券装置4へ投入する。また、発券装置4は、処理口17を通してICカード又は券を外部へ排出する。処理口17の近傍には発光手段としての赤色LED(Light Emitting Diode)18が設けられている。
【0022】
図3において係員操作部6には、接客パネル3に設けられた各種の要素の動作を制御するための接客部制御部が格納されている。この接客部制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メモリ等を含んで構成されている。本実施形態では、接客パネル3、それに取り付けられた各種の要素機器、及びそれらの要素機器の動作を制御する接客部制御部の全体を接客部と呼ぶことがある。
【0023】
図3の硬貨装置7は接客パネル3に開口した硬貨投入口13及び硬貨返却口15を構成要素として含んでおり、硬貨投入口13から投入された硬貨に対して各種の処理を行い、また、処理後の硬貨を必要に応じて硬貨返却口15へ排出する。硬貨装置7はその処理のための制御回路を備えている。この制御回路は、例えば、CPU、ROM、RAM、メモリ等を含んで構成されている。
【0024】
紙幣装置8は接客パネル3に開口した紙幣挿入口14及び紙幣返却口16を構成要素として含んでいる。紙幣装置8は、紙幣挿入口14から投入された紙幣に対して各種の処理を行い、また、処理後の紙幣を必要に応じて紙幣返却口16から外部へ部分的に排出する。操作者は部分的に排出された紙幣を外部へ抜取ることができる。紙幣装置8は上記の処理を達成するための制御回路を備えている。この制御回路は、例えば、CPU、ROM、RAM、メモリ等を含んで構成されている。
【0025】
(発券装置)
図4は、発券装置4の一実施形態を示している。発券装置4は筐体、支持体又はフレーム21を有している。フレーム21の上端部の接客側(図の左側)の端面に処理口17が設けられている。この処理口17が券売機1の接客パネル3に開口していることは既述の通りである。フレーム21には、ICカード搬送部22と、用紙部23と、第1フィード部24と、第2フィード部25と、切断部26と、印字部27と、メイン搬送部28とが設けられている。
【0026】
ICカード搬送部22はフレーム21の上端部であって処理口17に連続して略水平な直線状に設けられている。ICカード搬送部22は、図5に示すように、処理口17に連続して設けられた共通の搬送部31と、第1通路切換部材32を挟んで共通の搬送路31に連続している第2搬送部33と、第2通路切換部材34を挟んで第2搬送部33に連続している第3搬送部35とを有している。第3搬送部35の内部には、ICカードの情報を読み取るためのリーダ機能とICカードに情報を書き込むためのライタ機能とを併せて有するICカード処理部としてのリーダ/ライタ48が設けられている。
【0027】
リーダ/ライタ48は、ストアード・フェアを利用する際にICカードから切符購入代金を差し引く処理をしたり、チャージ料金の投入による蓄積料金の積み増し処理を行う。
【0028】
共通の搬送部31は一対の搬送ベルト37a及び37bのベルト部分同士を対面させること、例えば互いに面接触させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ38a及び38bによって駆動されて周回移動する。第2搬送部33は一対の搬送ベルト39a及び39bのベルト部分同士を対面させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ41a及び41bによって駆動されて周回移動する。第3搬送部35は一対の搬送ベルト42a及び42bのベルト部分同士を対面させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ43a及び43bによって駆動されて周回移動する。
【0029】
ICカード搬送部22は2つの電動モータ44a及び44bを有している。これらのモータ44a,44bの出力軸には駆動ベルト46a及び46bが掛けられている。一方の駆動ベルト46aは、共通の搬送部31の上下の駆動ローラ38a及び38bのそれぞれにたすき掛けの関係(すなわち互いに逆回転させる関係)で掛けられ、さらに第3搬送部35の上側の搬送ベルトの駆動ローラ43aに掛けられている。駆動ローラ43aは一方向動力伝達要素としての一方向クラッチ47aを介して駆動ベルト46aに連結されている。
【0030】
他方の駆動ベルト46bは、第2搬送部33の上下の駆動ローラ41a及び41bのそれぞれに、たすき掛けの関係で掛けられ、さらに第3搬送部35の下側の搬送ベルトの駆動ローラ43bに掛けられている。駆動ローラ43bは一方向動力伝達要素としての一方向クラッチ47bを介して駆動ベルト46bに連結されている。なお、上側駆動ローラ43aに属する一方向クラッチ47aは、図5における反時計方向の回転を駆動ローラ43aへ伝え、正時計方向の回転に対しては空回りして回転を伝えないようになっている。
【0031】
同様に、下側駆動ローラ43bに属する一方向クラッチ47bも、図5における反時計方向の回転を駆動ローラ43bへ伝え、正時計方向の回転に対しては空回りして回転を伝えないようになっている。第3搬送部35内の駆動ローラ43a,43bに一方向クラッチ47a,47bを介在させているのは、ICカードをリーダ/ライタ48に対して停止させる工程を実現させるためである。
【0032】
共通の搬送路31、第2搬送路33及び第3搬送路35は、処理口17とリーダ/ライタ48とを結ぶICカード搬送路R1を形成している。このICカード搬送路R1は水平方向に直線状に延在している。ここで水平というのは、厳密に水平であることはもとより、若干の傾斜がある場合も含む意味である。また、直線状というのは、厳密に直線であることはもとより、比較的硬質の材料から成るICカードをこのICカード搬送路R1に沿って搬送する際にそのICカードに過剰な曲げ応力を発生させることのない程度に若干の曲がり状態がある場合も含む意味である。ICカード搬送路R1の先方(図5の右方)には試し刷りによって作製された券、いわゆる試刷券、を収容するための回収箱54が設けられている。
【0033】
第2搬送部33を構成する下側搬送ベルト39bは第2通路切換部材34の前方位置で下方(すなわちICカード搬送路R1から離れる方向)へ曲がっている。そして、その曲って延在する部分は補助搬送ベルト51と対面している。下側搬送ベルト39bと補助搬送ベルト51とは協働して分岐路R2を形成している。分岐路R2の途中には廃札処理部としてのパンチ機構52が設けられている。また、分岐路R2の先方(すなわち下方)には、券を収容するための券回収箱53が設けられている。券回収箱53は、ロール紙の先端部分の券及びその終端部分の券や、入力ミスが行われた券や、払戻し券等を回収して保管する容器である。
【0034】
ICカード搬送路R1と分岐路R2とは、第2通路切換部材34を移動させることによって選択することができる。また、共通の搬送部31と第2搬送部33との間に設けられた第1通路切換部材32は、自らの移動により、ICカード搬送路R1と後述する券搬送路R3とのいずれか一方を搬送路として選択できる。ICカード搬送路R1と券搬送路R3とは共通の搬送部31において共通の搬送路となっている。
【0035】
図4の用紙部23は、枚葉紙として発行される券の切断前の状態であるロール紙56a及び56bをそれらの中心部分において支持する支持軸57a及び57bと、ロール紙56a,56bを収容できる空間領域と、補助ローラ58a及び58bと、テンションローラ59a,59b及び59cとによって構成されている。用紙部23は、上段ロール紙56a又は下段ロール紙56bの一方から紙を送り出し、当該段の紙が無くなったときに段を切換えて紙の送出を継続する。
【0036】
テンションローラ59a,59b及び59cは、例えば特許第3959281号公報に開示されているテンションローラを用いることができる。簡単に説明すれば、略円弧状の複数(本実施形態では6枚)の弾性部材から成る羽根を含んで形成されている。これらの羽根の弾性変形によりロール紙56a及び56bの送り出し動作を円滑に行っている。
【0037】
図4において、第1フィード部24は、上段ロール紙56aの収容領域と下段ロール紙56bの収容領域との間に設けられている。また、第2フィード部25は、第1フィード部の用紙搬送方向の下流側に連続して設けられている。第1フィード部24は、図6において、上段ロール紙56aの巻き出し部分を搬送するための送りローラ対61aと、下段ロール紙56bの巻き出し部分を搬送するための送りローラ対61bとを有している。
【0038】
送りローラ対61a及び61bは、ぞれぞれ、フィードローラ62a及び62b並びにそれに対向した従動ローラ63a及び63bを有している。動力伝達系の詳しい図示は省略しているが、フィードローラ62a及び62bは電動モータ64の出力軸に動力伝達系を介して連結されている。発券装置4の稼動時には、フィードローラ62a及び62bのいずれか一方がモータ64によって駆動されて回転する。
【0039】
第1フィード部24は、ロール紙56a,56bの装填の際に作動して、ロール紙56a,56bの発券装置4への自動装填を行う部分である。また、第1フィード部24は、ロール紙56a,56bの装填が完了した後には、フィードローラ62a,62bを駆動せず、第2フィード部25によるロール紙56a,56bの搬送に従動するようになっている。
【0040】
第2フィード部25は、フィードローラ65a及び65bと、それらのフィードローラに対向した従動ローラ66a及び66bと、フィードローラ65a,65bを駆動する電動モータ67とを有している。モータ67の出力軸とフィードローラ65a,65bとは駆動ベルト68によって連結されている。
【0041】
切断部26は、ロール紙56a,56bを小型券に切断するための第1カッタ部70と、ロール紙56a,56bを大型券に切断するための第2カッタ部71とを有している。切断部26は、第2フィード部25と略同じ位置に設けられている。第1カッタ部70は第2のフィードローラ65bの左側に設けられている。第2カッタ部71は第2のフィードローラ65bの右側に設けられている。図6では、第1カッタ部70又は第2カッタ部71によってロール紙56a,56bを切断して得られた券を符号56cで示している。
【0042】
印字部27は、所定の情報を券に印刷して券面を形成するサーマルヘッド72と、切断された券56cを搬送する搬送部とを有している。そしてその搬送部は、サーマルヘッド72に対向して設けられ回転により券56cを搬送するプラテンローラ73と、プラテンローラ73を駆動するための電動モータ74とを有している。モータ74の出力軸とプラテンローラ73とは駆動ベルト76で連結されている。サーマルヘッド72は画像信号供給部から伝送される画像信号に従って券56cの表面に券面を印字する。サーマルヘッドを用いた印字方式は感熱発色方式である。他の印字方式を採用しても良い。
【0043】
印字部27における用紙搬送速度は、第1フィード部24及び第2フィード部25の用紙搬送速度と同期するように制御される。印字部27は、プラテンローラ73によって券56cを搬送しながら、サーマルヘッド72とプラテンローラ73との接触面においてサーマルヘッド72により券56cに印刷を行う。印字部27の搬送部は、切断部26においてロール紙56a,56bの切断が終了した後に用紙の搬送を開始する。
【0044】
印字部27は、図7において、切断マーク位置C1においてロール紙56a,56bの先端を検知できるようになっている。切断マーク位置C1は、ロール紙56a,56bの先端がサーマルヘッド72とプラテンローラ73とに挟み込まれる位置である。この切断マーク位置C1の検知は、例えば、サーマルヘッド72の近傍に配置したセンサによって行うことができる。切断マーク位置C1においてロール紙56a,56bの先端を検知した上で、第1カッタ部70によってロール紙を切断すれば小型券が作製され、第2カッタ部71によってロール紙を切断すれば大型券が作製される。本実施形態では、ロール紙56a,56bの幅が57.5mmであり、小型券は57.5mm×30mmであり、大型券は57.5mm×85mmであるものとする。
【0045】
切断部26は、例えば特許第3959281号公報に開示された切断部を用いることができる。詳しくは同公報に説明されているが、図7を用いて簡単に説明する。図7は、第1カッタ部70がロール紙56a,56bを切断し、第2カッタ部71は切断待機の状態にある場合を示している。
【0046】
第1カッタ部70及び第2カッタ部71は、ロール紙56a,56bを切断するカッタ77と、カッタ77を駆動する電動モータ78と、モータ78の回転力をカッタ77に伝達するリンク機構79とを有している。カッタ77は、リンク機構79と一体に移動して回転する回転刃86と、位置不動の固定刃87とを有している。回転刃86の先端切刃部分と固定刃87の先端切刃部分とが離れている状態のときにそれらの刃の間にロール紙56a,56bを通しておいた状態で、モータ78を作動してリンク機構79を動かすことにより回転刃86を回転させることにより、ロール紙56a,56bを切断することができる。
【0047】
第1カッタ部70及び第2カッタ部71は、ロール紙56a,56bの切断を検知する光センサ(以下、切断完了センサ81という)と、切断を待機する状態にあることを検出する光センサ(以下、切断待機センサ82という)とを、互いに対向する180°の角度位置関係で有している。切断完了センサ81及び切断待機センサ82は、例えば、発光部と受光部とを有した透過型光センサである。モータ78の出力軸には、切欠き部83を備えた略円板状の検知片84が取り付けられており、この切欠き部83を切断完了センサ81又は切断待機センサ82によって検知することにより、それぞれ、用紙の切断が終了したこと、又は用紙の切断を待っていることが検知される。
【0048】
図4のメイン搬送部28は、図8に示すように、印字部27に連続したターン部90と、ターン部90に連続した第4搬送部91と、第4搬送部91に連続した共通の搬送部31とを有している。共通の搬送部31は、図4においてICカード搬送部22を構成している共通の搬送部31である。図7において第1カッタ部70を用いてロール紙56a,56bを切断して得られた小型券は、ロール紙の搬送方向と直角方向の長さがロール紙の幅、すなわち57.5mmであり、ロール紙の搬送方向の長さが30mmである。ターン部90は小型券についての搬送方向を90°回転させて、小型券の搬送方向を短手方向から長手方向へと変換する。
【0049】
第4搬送部91の内部には、券の裏面に磁気情報の書込みを行うヘッドであるライトヘッド92と、ライトヘッド92で書込まれた情報を確認のために読取るヘッドであるリードヘッド93とが設けられている。
【0050】
第4搬送部91は一対の搬送ベルト94a及び94bのベルト部分同士を対面させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ96及び駆動ベルト97によって駆動されて周回移動する。各駆動ローラ96は電動モータ98の出力軸に掛けられた駆動ベルト99によって駆動される。
【0051】
図4において、ロール紙を切断する切断部26、券に券面を印字する印字部27、ターン部90、ライトヘッド92、そしてリードヘッド93は、券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部を構成している。そして、用紙部23、第1フィード部24、第2フィード部25、印字部27、メイン搬送部28、及び共通の搬送部31から成る搬送系は、用紙部23と発券処理部26,27,90,92,93と処理口17とを結ぶ券搬送路R3を形成している。券搬送路R3は、第1通路切換部材32の所でICカード搬送路R1と交差している。第1通路切換部材32は自らが移動することにより、用紙の搬送路をICカード搬送路R1と券搬送路R3とで切換える。
【0052】
処理口17に連続している共通の搬送部31は、処理口17から投入されたICカードや券を発券装置4の内部へ導入する機能を有している。この場合、搬送部31の上側ベルトは反時計方向へ周回移動し、下側ベルトは正時計方向へ周回移動する。処理口17から投入される券としては、例えば操作者が誤って購入してしまった券に対して払戻し処理を行う際のその券が考えられる。
【0053】
また、共通の搬送部31は、券搬送路R3に沿って搬送されてきた小型券又は大型券や、ICカード搬送路R1に沿って送られて来たICカード等を処理口17へ向けて送り出す機能を有している。この場合、搬送部31の上側ベルトは正時計方向へ周回移動し、下側ベルトは反時計方向へ周回移動する。さらに、共通の搬送部31は、複数枚の回数券を発券する際に必要となる枚数の回数券を集積した後にそれらを処理口17へ送出する機能を有している。回数券を集積する際には、共通の搬送路31によって形成される搬送路内にストッパ(図示せず)を突出させて、回数券を集積する。
【0054】
操作者がICカードや券を処理口17へ挿入した場合には、そのICカード等は途中までは操作者の手によって押し進められ、途中から搬送部31によって自動的に搬送されて機内へ導入される。また、共通の搬送部31から処理口17へ排出された券やICカードは、その一定量を機内に残した状態で外部へ排出される。そして、この状態で、操作者によって抜き取られるのを待機する。
【0055】
(制御系及び給電系)
図9は本実施形態の発券機に用いられている制御系及び電力供給系をブロック図によって示している。同図において、券売機側制御部101は、券売機1の全体の制御を行う制御部であり、CPU、ROM、RAM、メモリを備えたコンピュータによって構成されている。例えば、ROM内にOS(オペレーティング・システム)が記憶され、メモリ内に制御系プログラムが記憶されている。券売機側制御部101は、例えば、ICカードに記録された情報に対する積み増し(加算)処理や減算処理を行ったり、ICカードへ書込むための情報の演算処理を行う。
【0056】
券売機側制御部101への給電は、商用100V(ボルト)電源に接続されたPC電源部102によって行われている。PC電源部102はマザーボードに関する所定の規格であるATXに準拠した電源ユニットであるATX電源103と、バックアップ用電源104とを有している。通常の稼動時においては、券売機側制御部101への給電はATX電源103によって行われる。このATX電源103からの給電が何らかの理由によって遮断された場合には、バックアップ用電源104からの給電が行われて、制御部101による制御が継続される。
【0057】
接客部制御部5は、図1の接客パネル3上に設けられた各種機器の動作を制御する制御部である。例えば、ディスプレイ11に映し出される映像を制御する。接客部制御部5は例えばプリント基板上に形成された回路であり、例えば図3の係員操作部6内に収納されている。接客部制御部5は、券売機側制御部101からの指令に基づいて接客パネル3上の各種機器要素の動作を制御する。
【0058】
図9に示した硬貨装置7及び紙幣装置8は、それぞれ、図3に同じ符号で示した装置である。これらの装置は、それぞれ、コンピュータによって構成された制御部を備えている。各装置内の制御部はそれぞれのメモリ内に記憶したプログラムに従って所定の機能を実現する。硬貨装置7及び紙幣装置8の制御部は、それぞれ、券売機側制御部101からの指令に基づいて硬貨装置7及び紙幣装置8のそれぞれの内部の機器要素の動作を個別に制御する。
【0059】
接客部制御部5、硬貨装置7及び紙幣装置8への給電は、商用100V電源に接続されたユニット電源部106によって行われている。また、接客部制御部5、硬貨装置7の制御部、及び紙幣装置8の制御部の各制御部と、券売機側制御部101との通信は、公知の通信形態の1つである“ARCNET HUB”を通して行われる。
【0060】
発券装置4は図3に同じ符号で示した装置である。発券装置4の内部の機械的な構成は図4に示した通りである。図4には図示していないが、コンピュータによって構成された制御部が発券装置4内の適所に配設されている。この制御部は、図9の券売機側制御部101からの指令に基づいて発券装置4の各構成要素の動作を制御する。発券装置4内のリーダ/ライタ48以外の構成要素への給電は、接客部制御部5等への給電と同様に、ユニット電源部106によって行われる。
【0061】
一方、発券装置4の構成要素の1つであるリーダ/ライタ48及びその制御部への給電は、発券装置4内の他の構成要素とは異なって、券売機側制御部101のための電源であるPC電源部102によって行われる。また、リーダ/ライタ48の制御部と券売機側制御部101との通信は、RS−232Cに準拠したシリアル通信によって行われる。
【0062】
以上の構成により、電源供給の停止の検知からOSのシャットダウンまでの間、リーダ/ライタ48への電源供給が可能である。また、券売機側制御部101とリーダ/ライタ48の制御部との間の通信は専用回線であるため、リーダ/ライタ48の制御部への通信も支障無く行うことができる。こうして、電源供給が停止された場合でも、リーダ/ライタ48は即座に動作を停止することはなく、ICカードの更新動作が保証される。ICカードの更新動作が保証されれば、途中処理状態(未完了)にならないため、ICカード内のデータのデータ整合性も保たれる。
【0063】
(制御モード)
図9において、券売機側制御部101は、接客部制御部5から伝送される信号に基づいて、操作者が接客パネル3を通してどの制御モードを指定したかを判定する。接客部制御部5、硬貨装置7の制御部、紙幣装置8の制御部、及び発券装置4の制御部の各制御部は、券売機側制御部101からの指令に基づいて、個々の制御モードに対応した固有の制御プロセスを実現する。制御モードとしては、例えば、(1)通常発券モード、(2)ICカードでの券購入モード、(3)ICカードチャージ(積み増し)モード、そして(4)払戻し処理(ICカード積み増し)モード等といった各種の制御モードがある。以下、主に発券装置4が各制御モードにおいて実行する動作について説明する。
【0064】
≪1:通常発券モード≫
まず、通常発券モードについて説明する。この制御モードは、図1の接客パネル3から投入された現金及び操作者による接客パネル3を通しての指示に応じて、要求された券を処理口17から排出する制御モードである。この制御モードにおいては、図10において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第1通路切換部材32が共通の搬送部31をメイン搬送部28内の第4搬送部91へ繋げる位置に設定される。
【0065】
他方、図11において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44a及びモータ44bの両方を正時計回転させる。これにより、共通の搬送部31はICカード、券等といった用紙を処理口17へ向けて搬送する状態に設定され、第2搬送部33は用紙を処理口17の反対方向へ搬送する状態に設定される。
【0066】
以上の設定により、発券装置4内では、図10において、ロール紙及びそれから切断された券等といった用紙が、用紙部23、第2フィード部25、印字部27、及びメイン搬送部28によって券搬送路R3に沿って搬送される。搬送される用紙は、切断部26によって小型券又は大型券のいずれかに切断され、印字部27によって券面が印字され、必要に応じてターン部90によって搬送方向に対する姿勢が変換され、ライトヘッド92によって磁気情報が書込まれ、そしてリードヘッド93によって確認のための読取りが行われる。
【0067】
読取られた情報が操作パネル3を通じて指示された情報に合致していれば、券は第4搬送部91から共通の搬送部31へ送られ、その一部が処理口17から外部へ排出され、操作者による抜き取りを待つ状態となる。券が処理口17から排出されるとき、図1のディスプレイ11にその旨が案内表示として画像表示される。この案内表示については後述する。リードヘッド93によって読取られた情報が操作パネル3を通じて指示された情報と合致していなければ、すなわちライトヘッド92により書込みミスが生じた場合には、第1通路切換部材32が第4搬送部91をICカード搬送部22の第2搬送部33へ繋げる位置に切換えられ、第2通路切換部材34が分岐路R2を選択する位置に設定される。これにより、書込みミスを有する券は第4搬送部91からICカード搬送部22の第2搬送部33へ入り、さらに第2搬送部33から分岐路R2へ入り、最終的に券回収箱53へ回収される。
【0068】
≪2:ICカードでの券購入モード≫
次に、ICカードでの券購入モードについて説明する。この制御モードは、操作者が図1の操作パネル3の処理口17にICカードを挿入し、操作者が希望する情報を操作パネル3を通じて入力し、その入力情報に従って券を処理口17から発行し、ICカードに記録されている情報から入力情報を減算し、そして減算処理後のICカードを処理口17から返却する制御モードである。
【0069】
この制御モードは、(a)ICカードを図4のリーダ/ライタ48まで搬送してそこに停止させるICカード導入工程と、(b)操作者が図1の接客パネル3を通じて入力した情報に基づいて券を発行する発券工程と、(c)ICカードに記録されている情報をリーダ/ライタ48によって読取り及び必要情報を書込むICカード処理工程と、(d)処理後のICカードを処理口17へ返却するICカード返却工程とを有している。以下、個々の処理工程について説明する。
【0070】
<a:ICカード導入工程>
この処理工程においては、まず、図12において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第1通路切換部材32が共通の搬送部31を第2搬送部33へ繋げる位置に設定される。また、第2通路切換部材34が第2搬送部33を第3搬送部35へ繋げる位置に設定される。
【0071】
他方、図13において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44aを反時計回転させ、モータ44bを正時計回転させる。このとき、第3搬送部35の上段搬送ベルトの一方向クラッチ47aは、駆動ベルト46aが反時計方向へ周回移動するので、ロック状態(動力伝達状態)となり、上段搬送ベルトは用紙を第2搬送部33からリーダ/ライタ48へ向かう方向へ搬送する。一方、第3搬送部35の下段搬送ベルトの一方向クラッチ47bは、駆動ベルト46bが正時計方向へ周回移動するので、フリー状態(空回り状態)となり、下段搬送ベルトは自由回動状態である。これにより、共通の搬送部31、第2搬送部33及び第3搬送部35はICカードを処理口17の反対方向へ搬送する状態に設定される。
【0072】
以上の設定により、発券装置4内では、図12に示すように、処理口17に挿入されたICカードが直線状のICカード搬送路R1に沿って搬送され、そのICカードがリーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置に到達する。すると、モータ44aの回転が停止され、ICカードはリーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置に停止する。
【0073】
<b:発券工程>
上記のICカード導入工程が実行されている間又はその後、操作者が操作パネル3を通して発券の指示を行うと、図10を用いて説明した上記の「通常発券モード」の場合と同じ処理が実行されて、所定の券面が印字され、所望の情報が磁気記録された、所望の大きさの券が処理口17から発行される。券の排出時、ディスプレイ11上にその旨の案内表示が行われる。
【0074】
<c:ICカード処理工程>
上記の発券工程が実行され、さらに券の抜取りが終わった後、又はその前後の任意のタイミングにおいて、図11のリーダ/ライタ48に対向して停止しているICカードに記録されている情報がリーダ/ライタ48によって読取られ、その読取り情報が図9の接客部制御部5へ伝送される。接客部制御部5は、接客パネル3(図1参照)を通して入力された券の購入情報とリーダ/ライタ48から伝送された記録情報とを比較して更新情報を演算し、その更新情報をリーダ/ライタ48へ伝送する。リーダ/ライタ48は伝送されて来た更新情報をICカードへ上書きする。
【0075】
<d:ICカード返却工程>
上記の発券工程により処理口17から券の一部が排出され、さらに操作者によってその券が抜き取られ、さらにICカードに対してリーダ/ライタ48によって所定の読み書き処理が終了した後に、ICカード返却工程が実行される。
【0076】
このICカード返却工程においては、まず、図14において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第2通路切換部材34が第3搬送部35を第2搬送部33へ繋げる位置に設定される。また、第1通路切換部材32が第2搬送部33を共通の搬送部31へ繋げる位置に設定される。
【0077】
他方、図15において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44aを正時計回転させ、モータ44bを反時計回転させる。このとき、第3搬送部35の上段搬送ベルトの一方向クラッチ47aは、駆動ベルト46aが正時計方向へ周回移動するので、フリー状態となる。一方、第3搬送部35の下段搬送ベルトの一方向クラッチ47bは、駆動ベルト46bが反時計方向へ周回移動するので、ロック状態となる。これにより、第3搬送部35、第2搬送部33及び共通の搬送部31はICカードをリーダ/ライタ48から処理口17へ搬送する。搬送されたICカードは一部分が処理口17の外へ張り出し、操作者の抜き取りを待つ状態となる。ICカードが処理口17から排出されるとき、図1のディスプレイ11にその旨が案内表示として画像表示される。この案内表示については後述する。
【0078】
≪3:ICカードチャージ(積み増し)モード≫
次に、ICカードチャージ(積み増し)モードについて説明する。この制御モードは、ICカードに記録されている残金情報に積み増し金を加算する処理を行う制御モードである。図9の券売機側制御部101がこの制御モードを選択すると、図12に関連して説明したように、既述の「2:ICカードでの券購入モード」における「a:ICカード導入工程」と同様の制御が実行される。その結果、処理口17から挿入されたICカードがICカード搬送路R1に沿って搬送されて、リーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置まで搬送されてそこに停止する。
【0079】
その後、操作者が操作パネル3を通して積み増し金を投入すれば、図9の接客部制御部5はその金額を認識し、その金額に対応した信号を発券装置4内のリーダ/ライタ48の制御部へ伝送する。リーダ/ライタ48は伝送されたその金額信号に基づいてICカードの残額情報を更新する。
【0080】
次に、図14に関連して説明した、上記の「2:ICカードでの券購入モード」における「d:ICカード返却工程」と同様の制御が実行されて、積み増し処理が完了したICカードの一部分が処理口17の外へ張り出すまで搬送され、操作者の抜取りを待つ状態となる。ICカードの排出時、ディスプレイ11上にその旨の案内表示が行われる。
【0081】
≪4:払戻し処理(ICカード積み増し)モード≫
次に、払戻し処理(ICカード積み増し)モードについて説明する。この制御モードは、操作者が間違って購入してしまった券を払い戻して、払戻し金額をICカードへ積み増すという処理を行う制御モードである。この制御モードは、客である操作者が係員へ申告を行い、それに応じて係員が図3に示す券売機の背面から指示操作を行うことにより実行される制御である。
【0082】
この制御モードは、間違って購入してしまった券を図16の発券装置4へ処理口17から再投入し、続いて又は前もってICカードを投入し、再投入した券の金額情報を読取り、読取った金額情報をICカードの記録内容に払戻金情報として積み増し、処理後のICカードを処理口17から操作者へ返却し、処理後の券は発券装置4内の券回収箱53へ回収する、という制御モードである。
【0083】
この制御モードは、(a)払戻したい券を第4搬送部91の待機位置P1まで搬送すると共に、記録されている金額をリードヘッド93によって読取る券導入読取工程と、(b)ICカードをリーダ/ライタ48まで搬送してそこに停止させるICカード導入工程と、(c)ICカードに記録されている情報をリーダ/ライタ48によって読取り及び必要情報を書込むICカード処理工程と、(d)処理後のICカードを処理口17へ返却するICカード返却工程と、(e)払い戻しを終了した券を待機位置P1から券回収箱53まで搬送して該回収箱53に回収する券回収工程とを有している。以下、個々の工程について説明する。
【0084】
<a:券導入読取工程>
この工程においては、まず、図16において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第1通路切換部材32が共通の搬送部31をメイン搬送部28内の第4搬送部91へ繋げる位置に設定される。他方、図13において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44aを反時計回転させる。他方のモータ44bを回転させるか否かは任意である。以上の設定により、処理口17から挿入した払戻し券は券搬送路R3に沿って第1搬送路31から待機位置P1へと搬送される。待機位置P1はリードヘッド93を越えライトヘッド92よりも前の位置である。この搬送の途中、リードヘッド93により払戻し券に記憶されている磁気情報が読取られる。
【0085】
<b:ICカード導入工程>
券導入読取工程の後、ICカード導入工程が実行される。この工程においては、図12に関連して説明したような、既述の「2:ICカードでの券購入モード」における「a:ICカード導入工程」と同様の制御が実行される。その結果、処理口17から挿入されたICカードがICカード搬送路R1に沿って搬送されて、リーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置まで搬送されてそこに停止する。
【0086】
<c:ICカード処理工程>
ICカードがリーダ/ライタ48に対向して配置された後、そのICカードに記録されている情報がリーダ/ライタ48によって読取られ、その読取り情報が図9の接客部制御部5へ伝送される。接客部制御部5は、上記の券導入読取工程において第4搬送部91のリードヘッド93によって払戻し券から読取られた情報とリーダ/ライタ48から伝送された記録情報とを比較して更新情報を演算し、その更新情報をリーダ/ライタ48へ伝送する。リーダ/ライタ48は伝送されて来た更新情報をICカードへ上書きする。
【0087】
<d:ICカード返却工程>
ICカードに対する更新情報の書込みが終了した後、図14に関連して説明した、上記の「2:ICカードでの券購入モード」における「d:ICカード返却工程」と同様の制御が実行されて、ICカードが図17に示すようにその一部分が処理口17の外へ張り出すまでICカード搬送路R1に沿って搬送され、操作者の抜取りを待つ状態となる。ICカードの排出時、ディスプレイ11上にその旨の案内表示が行われる。
【0088】
<e:券回収工程>
ICカードが処理口17へ返却されて抜き取られた後、又はその返却処理が開始される前、第1通路切換部材32が第4搬送部91をICカード搬送部22の第2搬送部33へ繋げる位置に切換えられ、第2通路切換部材34が分岐路R2を選択する位置に設定される。これにより、払戻し券は第4搬送部91からICカード搬送部22の第2搬送部33へ入り、さらに第2搬送部33から分岐路R2へ入り、最終的に券回収箱53へ回収される。
【0089】
(案内表示)
以上の説明の通り、本実施形態では図4において、排出口である処理口17をICカードと券とで共通にしたため、処理口17からICカードと券とが必然的に互いに異なったタイミングで排出される。ICカードと券とで排出口が別々であれば、客である操作者は自分が取り出そうとしているものがICカードであるのか、あるいは券であるのかを、特別な注意を払うまでも無く容易に認識できる。しかしながら、ICカードと券とで排出口が共通である本実施形態においては、何等かの措置を講じておかないと、操作者が排出されたものをICカードと券とで誤認するおそれがある。
【0090】
このような問題を解消するため、本実施形態では、共通の処理口17から排出されたものがICカードであるのか、あるいは券であるのかを図1のディスプレイ11の画面上に画像として表示することにより、操作者の注意を促すことにした。具体的には、図9の接客部制御部5内に格納されたプログラム内にそのための画走表示ルーチンを設けている。
【0091】
例えば、処理口17からICカードが排出されることに対して、図18(a)に示すような、ICカードが排出されることを示す画像表示を実現するための画像データをプログラム内に含んでいる。また、切符のような券が排出されることに対して、図18(b)に示すような、券が排出されることを示す画像表示を実現するための画像データをプログラム内に含んでいる。
【0092】
図4において処理口17からICカード又は券が排出されたとき、又はその直前、又はその直後、図9において発券装置4の制御部から券売機側制御部101へ、処理口17からICカード又は券が排出されたことを示す信号が伝送される。この信号は、処理口17の近傍に配置したセンサによって検知することができるし、あるいは、搬送系の駆動モータに設けたエンコーダの出力パルスに基づいて検知することもできる。
【0093】
ICカード又は券の排出信号を受けた券売機側制御部101は、接客部制御部5へ向けてICカードの排出画像(図18(a))又は券の排出画像(図18(b))を表示することの指示信号を伝送し、これにより、図1のディスプレイ11にICカードに関する表示(図18(a))又は券に関する表示(図18(b))が行われる。これにより、操作者は共通の処理口17から何が排出されているのかを明確に認識することができる。そのため、操作者は誤操作をすることなく券の購入を行うことができる。
【0094】
(処理口の注意表示)
図9の接客部制御部5に記憶されたプログラム内には、図2の処理口17の近傍、実施形態では左上方の近傍に設けたLED18の点滅又は点灯を制御するためのルーチンが含まれている。
【0095】
図4において処理口17からICカード又は券の排出が開始されてから操作者によってそのICカード又は券が抜き取られるとき、排出が開始されたことの信号及び抜き取られたことの信号が図9の発券装置4の制御部から券売機側制御部101へ伝送される。排出開始信号から抜取り完了まで間、券売機側制御部101は接客部制御部5へ赤色LED18を点滅又は点灯すべき旨の指令を伝送する。
【0096】
以上により、図1において処理口17からICカード又は券が排出されている間には、近傍に設けられているLED18が点滅又は点灯し、操作者に注意を促す。これにより、操作者が処理口17からICカード又は券を抜き取るのを忘れることを防止できる。
【0097】
(総説)
以上の説明から理解できるように、本実施形態では、ICカードによる券購入や積み増しを可能とするためにICカードに対して読取り処理及び書込み処理を行うICカード処理部は、図4のリーダ/ライタ48によって構成されている。また、処理口17とICカード処理部48とを結ぶICカード搬送路R1に沿ってICカードを搬送するICカード搬送手段は、共通の搬送路31、第2搬送部33、第3搬送部35によって構成されている。
【0098】
また、券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部は、切断部26、印字部27、ターン部90、ライトヘッド92、リードヘッド93等によって構成されている。また、用紙部23と発券処理部26,27,90,92,93と処理口17とを結ぶ券搬送路R3に沿って券を搬送する券搬送手段は、第1フィード部24、第2フィード部25、印字部27、第4搬送部91、共通の搬送部31によって構成されている。
【0099】
本実施形態では図4においてICカード、発行券及び払戻し券で投入口及び取出口が共通であり、ICカード搬送路R1と券搬送路R3の一部が共通の搬送部となっており、その共通の搬送部をICカード搬送路又は券搬送路として選択的に用いるようにしている。仮にICカードと券との処理口が別々であったり、ICカード及び券の投入口と取出口とが別々であったりすると、発券装置を小型な一体構造に形成することが非常に困難であるが、ICカードと券とで処理口が共通である本実施形態によれば、ICカードの搬送系と券の搬送系とを小型の一体構造に容易に形成でき、発券装置を小型な一体構造に形成することができる。
【0100】
また、仮に、硬質であるICカードの読取り・書込み部と、軟質である券の読取り・書込み部とが同じ場所や同じ搬送系内に設けられているとすると、ICカードの搬送制御と券の搬送制御とが複雑になり、故障を招き易い。これに対し、本実施形態では、ICカードの読取り・書込み部と、券の読取り・書込み部とを異なった所に設けたので、ICカード及び券の搬送を安定して行うことができ、ICカード等の詰まりや損傷を防止できる。
【0101】
また、図5に示したICカード搬送部22の駆動系を考えた場合、通常の駆動方法に基づけば、例えば図19に示すように、共通の搬送部31、第2搬送部33、第3搬送部の3個の搬送部は3個のモータ111a,111b,111cを用いて個々に駆動するのが一般的である。
【0102】
これに対し本実施形態では、図5に示したように、1つの搬送部である第3搬送部35を独自に停止状態にさせることを可能にするために、駆動ローラ43a,43bに一方向クラッチ47a,47bを介在させると共に、隣の搬送部である第2搬送部33のための動力モータ44bによってその第3搬送部35を駆動する構成とした。これにより、駆動源であるモータの設置場所を小さくでき、部品コストを低減できることになった。
【0103】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0104】
例えば、本実施形態では図4において券回収箱53に通じる分岐路R2をICカード搬送路R1の途中に設けたが、分岐路R2は必ずしも設けなくても良い。そしてこの場合には、第2搬送路33を取り除くことが可能である。
また、本実施形態では用紙部23に2つのロール紙56a,56bを設置する構成としたが、1つのロール紙だけを設置する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0105】
1.券売機、 2.ケーシング、 3.接客パネル、 4.発券装置、 5.接客部制御部、 6.係員操作部、 7.硬貨装置、 8.紙幣装置、 9.硬貨回収金庫、 11.ディスプレイ(画像表示手段)、 12.操作パネル、 13.硬貨投入口、 14.紙幣挿入口、 16.紙幣返却口、 17.処理口、 18.赤色LED(発光手段)、 21.フレーム、 22.ICカード搬送部(ICカード搬送手段)、 23.用紙部、 24.第1フィード部(券搬送手段)、 25.第2フィード部(券搬送手段)、 26.切断部(発券処理部)、27.印字部(発券処理部)、 28.メイン搬送部、 31.共通の搬送部、 32.第1通路切換部材、 33.第2搬送部、 34.第2通路切換部材、 35.第3搬送部、 37a,37b.搬送ベルト、 38a,38b.駆動ローラ、 39a,39b.搬送ベルト、 41a,41b.駆動ローラ、 42a,42b.搬送ベルト、 43a,43b.駆動ローラ、 44a,44b.電動モータ、 46a,46b.駆動ベルト、 47a,47b.一方向クラッチ(一方向動力伝達要素)、 48.リーダ/ライタ(ICカード処理部)、 51.補助搬送ベルト、 52.パンチ機構(廃札処理部)、 53.券回収箱、 54.試刷券回収箱、 56a,56b.ロール紙、 56c.券、 57a,57b.支持軸、 58a,58b.補助ローラ、 59a,59b,59c.テンションローラ、 61a,61b.送りローラ対、 62a,62b.フィードローラ、 63a,63b.従動ローラ、 65a,65b.フィードローラ、 66a,66b.従動ローラ、 67.電動モータ、 70.第1カッタ部、 71.第2カッタ部、 72.サーマルヘッド、 73.プラテンローラ、 74.電動モータ、 76.駆動ベルト、 77.カッタ、 78.電動モータ、 79.リンク機構、 81.切断完了センサ、 82.切断待機センサ、 83.切欠き部、 84.検知片、 86.回転刃、 87.固定刃、 90.ターン部(発券処理部)、 91.第4搬送部、 92.ライトヘッド(発券処理部)、 93.リードヘッド(発券処理部)、 94a,94b.搬送ベルト、 96.駆動ローラ、 97.駆動ベルト、 98.電動モータ、C1.切断マーク位置、 G.設置面、 P1.待機位置、 R1.ICカード搬送路、R2.分岐路、 R3.券搬送路
【技術分野】
【0001】
本発明は、入金指示に従って券、例えば乗車券、食券、入場券、各種のチケットを作成して払い出す券売機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通系ICカードの普及は目覚しく、定期券はもとよりストアード・フェア(SF/Stored Fare/蓄積料金)への利用、電子マネーへの利用等と用途も拡がり、発行枚数も増加している。このような中、券売機へのICカードの利用も増加している。
【0003】
券売機は、一般に、客が操作する接客部と、硬貨を処理する硬貨装置と、紙幣を処理する紙幣装置と、券の券面を印刷する印刷装置と、カードを処理するカード処理装置と、各装置用及び券売機全体用の制御部、等といった各装置機器によって構成されている。ICカードは、接客部から導入され、カード処理装置によって読取り及び書込みの処理を受ける。
【0004】
上記の券売機として、従来、特許文献1に開示された乗越精算機が知られている。この乗越精算機においては、単一の投入口から券及びカードを投入可能とし、返却すべき券の発行とカードの返却とが同一の取出口を通して行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2531545号公報(第3〜5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の乗越精算機においては、カード及び券の投入口が共通であり、それらの取出口が共通であるが、投入口と取出口とは互いに別々に設けられていた。そのため、装置の全体が大型にならざるを得なかった。また、投入されたカードを処理する機構と、券を印刷して搬出する機構とが別々のユニットとして設けられていた。そのため、やはり装置の全体が大型にならざるを得ず、しかも装置全体のコストが高いという問題があった。
【0007】
上記の問題点を解消するため、本発明者等は種々の実験を行い、カードや券の投入及び取出しを共通の処理口を通して行うことが小型化及びコスト低減に有効であることを知見した。しかしながら、この場合には、共通の処理口においてカードの返却が行われているのか、あるいは券の発行が行われているのかが分からず、券購入者等といった操作者が誤操作をする可能性が高かった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、ICカードの処理機能と券の発券機能とを併せて有する発券装置を小型に低コストで製作できるようにすることを目的とする。また、本発明は、操作者による操作が簡単であって誤操作を防止できる発券装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る券売機は、発券装置と接客部とを有する券売機であって、(A)前記発券装置は、ICカード及び券を通過させることができる共通の処理口と、前記ICカードによる券購入や積み増しを可能とするために前記ICカードに対して読取り処理及び書込み処理を行うICカード処理部と、前記処理口と前記ICカード処理部とを結ぶカード搬送路に沿ってICカードを搬送するICカード搬送手段と、前記券が置かれる用紙部と、前記券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部と、前記用紙部と前記発券処理部と前記処理口とを結ぶ券搬送路に沿って券を搬送する券搬送手段とを有しており、(B)前記接客部は画像を表示する画像表示手段を有しており、前記処理口は前記接客部に開口しており、(C)前記ICカードを前記処理口から排出するときにICカードを排出することの画像表示を前記画像表示手段に行い、さらに前記券を前記処理口から排出するときに券を排出することの画像表示を前記画像表示手段に行う表示制御手段を具備していることを有することを特徴とする。
【0010】
ICカードは各種の情報を記憶するための公知のカードであり、例えば人が手のひらに乗せることができる程度の大きさ、例えば85.6mm×54mm程度の大きさのカードである。ICカードは、通常、任意の材質、例えば紙、樹脂によって形成された基材にICチップを固着することによって形成されている。ICカードには非接触式カードと接触式カードがある。非接触式カードの場合は、相手側からの電波を受けて発電を行うために基材上にアンテナが装備される。また、接触式カードの場合は、相手側から給電を受けるために基材上に入力端子が装備される。
【0011】
本発明に係る券売機は、前記処理口の近傍に設けられた発光手段と、前記ICカード及び前記券が前記処理口から互いに異なったタイミングで排出される開始から抜取りまでの間に前記発光手段を点滅発光又は点灯発光させる発光制御手段とを有することができる。これにより、ICカード及び券の処理口からの排出を操作者に注意でき、操作者によるそれらの取り忘れを防止できる。
【0012】
本発明に係る券売機は、券を前記処理口から前記券搬送路へ搬送させる搬送制御手段と、前記券搬送路へ搬送された前記券に記憶された情報を読取る読取り手段と、前記読取り手段で読取った情報に基づいて払戻金を演算し該払戻金を、前記券の挿入後に続いて挿入する前記ICカードに前記ICカード処理部によって積み増し金として記憶させる演算制御手段と、を有することができる。この構成により、ICカードを利用しての払戻金の処理を実現でき、ICカードの有効利用を達成できる。
【0013】
本発明に係る券売機は、(A)前記発券装置に含まれる制御部及び前記接客部の動作を制御する制御部に通信線を介して接続された券売機側制御部を有することができ、(B)前記発券装置、前記発券装置に含まれる制御部、前記接客部、及び前記接客部の動作を制御する制御部のための電源と、前記券売機側制御部のための電源と、を互いに独立した電源とすることができ、(C)前記券売機側制御部のための電源の中にバックアップ電源を備えることができ、(D)前記ICカード処理部は前記券売機側制御部のための電源から給電を受けることができる。
【0014】
この構成により、主たる電源からの通電が何らかの理由で遮断された場合でも、ICカードの処理を継続して行い、途中状態で無く完結した状態で終了させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ICカードと券とで投入口及び取出口が処理口として共通であるので、投入口と取出口とが別々に設けられる場合に比べて、ICカードの搬送系と券の搬送系とを小型の一体構造に容易に形成でき、発券装置を小型な一体構造に形成することができ、従って発券装置を用いた券売機を小型に形成できる。また、ICカードと券とで投入口及び取出口を共通とすることにより、それらが別々である券売機に比べて、部品コスト及び製作コストを大幅に低減できる。
【0016】
なお、カードや券の投入及び取出しを共通の処理口を通して行うことにした場合には、共通の処理口においてカードの返却が行われているのか、あるいは券の発行が行われているのかが分からず、券購入者が誤操作をするおそれがある。これに対し本発明では、ICカードを処理口から排出するときにICカードを排出することの画像表示を画像表示手段に行い、券を処理口から排出するときに券を排出することの画像表示を画像表示手段に行うことにしたので、ICカード及び券に関する接客案内表示が行われ、客である操作者に対して注意が促され、ICカードや券の取り忘れを防止できる。また、操作者は共通の処理口から何が排出されているのかを明確に認識することができるので、誤操作をすることなく券の購入を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る券売機の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】その券売機の正面図である。
【図3】その券売機の背面図である。
【図4】本発明に係る券売機で用いる発券装置の内部構造の正面図である。
【図5】図4の発券装置を構成するICカード搬送部を示す図である。
【図6】図4の発券装置を構成する主要搬送部及び主要処理部を示す図である。
【図7】図6の主要処理部の1つである切断部及び印字部を示す図である。
【図8】図4の発券装置を構成する他の主要搬送部及び他の主要処理部を示す図である。
【図9】図1に示す券売機の制御系の一実施形態を示すブロック図である。
【図10】通常発券時の用紙搬送状態を示す図である。
【図11】通常発券時のICカード搬送部の駆動状態を示す図である。
【図12】ICカード挿入時の用紙搬送状態を示す図である。
【図13】ICカード挿入時のICカード搬送部の駆動状態を示す図である。
【図14】ICカードでの券購入時の用紙搬送状態を示す図である。
【図15】ICカードでの券購入時のICカード搬送部の駆動状態を示す図である。
【図16】払戻し処理時の第1の用紙搬送状態を示す図である。
【図17】払戻し処理時の第2の用紙搬送状態を示す図である。
【図18】ディスプレイ上の案内表示画面の実施形態を示す図である。
【図19】ICカード搬送部の従来の駆動系の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る券売機を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
【0019】
(券売機)
図1は本発明に係る券売機の一実施形態の斜視図であり、図2はその券売機の正面図であり、図3はその券売機の背面図である。本実施形態では、券売機1は、客である操作者によるICカードの投入又は現金の投入に応じて乗り物の乗車券を発行するものとする。もちろん、乗車券以外の券を発行することも可能である。
【0020】
券売機1は設置面Gの上に置かれている。設置面Gは、例えば、建物内部の床面であり、通常は、水平面である。設置面Gが水平面でない場合には、ボルト・ナット等を用いた高さ調整機構等を利用して券売機1の基準面が水平面となるように調整される。券売機1は、ケーシング2と、ケーシング2の前面に設けられた接客パネル3とを有している。ケーシング2の内部には、図3に示すように、発券装置4と、係員操作部6と、硬貨装置7と、紙幣装置8と、硬貨回収金庫9とが設けられている。
【0021】
接客パネル3は操作者が対面する部分である。接客パネル3には、入力用のタッチパネルを備えた画像表示手段としてのディスプレイ11と、必要に応じて操作者が操作するボタンスイッチ等が設けられた操作パネル12と、操作者が硬貨を投入する部分である硬貨投入口13と、硬貨が返却される部分である硬貨返却口15と、操作者が紙幣を挿入するための開口である紙幣挿入口14と、紙幣が払い出されるための開口である紙幣返却口16と、開口である処理口17とが設けられている。処理口17は発券装置4の1つの構成要素であり、操作者は、ICカード又は払戻し券を処理口11へ挿入して発券装置4へ投入する。また、発券装置4は、処理口17を通してICカード又は券を外部へ排出する。処理口17の近傍には発光手段としての赤色LED(Light Emitting Diode)18が設けられている。
【0022】
図3において係員操作部6には、接客パネル3に設けられた各種の要素の動作を制御するための接客部制御部が格納されている。この接客部制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メモリ等を含んで構成されている。本実施形態では、接客パネル3、それに取り付けられた各種の要素機器、及びそれらの要素機器の動作を制御する接客部制御部の全体を接客部と呼ぶことがある。
【0023】
図3の硬貨装置7は接客パネル3に開口した硬貨投入口13及び硬貨返却口15を構成要素として含んでおり、硬貨投入口13から投入された硬貨に対して各種の処理を行い、また、処理後の硬貨を必要に応じて硬貨返却口15へ排出する。硬貨装置7はその処理のための制御回路を備えている。この制御回路は、例えば、CPU、ROM、RAM、メモリ等を含んで構成されている。
【0024】
紙幣装置8は接客パネル3に開口した紙幣挿入口14及び紙幣返却口16を構成要素として含んでいる。紙幣装置8は、紙幣挿入口14から投入された紙幣に対して各種の処理を行い、また、処理後の紙幣を必要に応じて紙幣返却口16から外部へ部分的に排出する。操作者は部分的に排出された紙幣を外部へ抜取ることができる。紙幣装置8は上記の処理を達成するための制御回路を備えている。この制御回路は、例えば、CPU、ROM、RAM、メモリ等を含んで構成されている。
【0025】
(発券装置)
図4は、発券装置4の一実施形態を示している。発券装置4は筐体、支持体又はフレーム21を有している。フレーム21の上端部の接客側(図の左側)の端面に処理口17が設けられている。この処理口17が券売機1の接客パネル3に開口していることは既述の通りである。フレーム21には、ICカード搬送部22と、用紙部23と、第1フィード部24と、第2フィード部25と、切断部26と、印字部27と、メイン搬送部28とが設けられている。
【0026】
ICカード搬送部22はフレーム21の上端部であって処理口17に連続して略水平な直線状に設けられている。ICカード搬送部22は、図5に示すように、処理口17に連続して設けられた共通の搬送部31と、第1通路切換部材32を挟んで共通の搬送路31に連続している第2搬送部33と、第2通路切換部材34を挟んで第2搬送部33に連続している第3搬送部35とを有している。第3搬送部35の内部には、ICカードの情報を読み取るためのリーダ機能とICカードに情報を書き込むためのライタ機能とを併せて有するICカード処理部としてのリーダ/ライタ48が設けられている。
【0027】
リーダ/ライタ48は、ストアード・フェアを利用する際にICカードから切符購入代金を差し引く処理をしたり、チャージ料金の投入による蓄積料金の積み増し処理を行う。
【0028】
共通の搬送部31は一対の搬送ベルト37a及び37bのベルト部分同士を対面させること、例えば互いに面接触させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ38a及び38bによって駆動されて周回移動する。第2搬送部33は一対の搬送ベルト39a及び39bのベルト部分同士を対面させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ41a及び41bによって駆動されて周回移動する。第3搬送部35は一対の搬送ベルト42a及び42bのベルト部分同士を対面させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ43a及び43bによって駆動されて周回移動する。
【0029】
ICカード搬送部22は2つの電動モータ44a及び44bを有している。これらのモータ44a,44bの出力軸には駆動ベルト46a及び46bが掛けられている。一方の駆動ベルト46aは、共通の搬送部31の上下の駆動ローラ38a及び38bのそれぞれにたすき掛けの関係(すなわち互いに逆回転させる関係)で掛けられ、さらに第3搬送部35の上側の搬送ベルトの駆動ローラ43aに掛けられている。駆動ローラ43aは一方向動力伝達要素としての一方向クラッチ47aを介して駆動ベルト46aに連結されている。
【0030】
他方の駆動ベルト46bは、第2搬送部33の上下の駆動ローラ41a及び41bのそれぞれに、たすき掛けの関係で掛けられ、さらに第3搬送部35の下側の搬送ベルトの駆動ローラ43bに掛けられている。駆動ローラ43bは一方向動力伝達要素としての一方向クラッチ47bを介して駆動ベルト46bに連結されている。なお、上側駆動ローラ43aに属する一方向クラッチ47aは、図5における反時計方向の回転を駆動ローラ43aへ伝え、正時計方向の回転に対しては空回りして回転を伝えないようになっている。
【0031】
同様に、下側駆動ローラ43bに属する一方向クラッチ47bも、図5における反時計方向の回転を駆動ローラ43bへ伝え、正時計方向の回転に対しては空回りして回転を伝えないようになっている。第3搬送部35内の駆動ローラ43a,43bに一方向クラッチ47a,47bを介在させているのは、ICカードをリーダ/ライタ48に対して停止させる工程を実現させるためである。
【0032】
共通の搬送路31、第2搬送路33及び第3搬送路35は、処理口17とリーダ/ライタ48とを結ぶICカード搬送路R1を形成している。このICカード搬送路R1は水平方向に直線状に延在している。ここで水平というのは、厳密に水平であることはもとより、若干の傾斜がある場合も含む意味である。また、直線状というのは、厳密に直線であることはもとより、比較的硬質の材料から成るICカードをこのICカード搬送路R1に沿って搬送する際にそのICカードに過剰な曲げ応力を発生させることのない程度に若干の曲がり状態がある場合も含む意味である。ICカード搬送路R1の先方(図5の右方)には試し刷りによって作製された券、いわゆる試刷券、を収容するための回収箱54が設けられている。
【0033】
第2搬送部33を構成する下側搬送ベルト39bは第2通路切換部材34の前方位置で下方(すなわちICカード搬送路R1から離れる方向)へ曲がっている。そして、その曲って延在する部分は補助搬送ベルト51と対面している。下側搬送ベルト39bと補助搬送ベルト51とは協働して分岐路R2を形成している。分岐路R2の途中には廃札処理部としてのパンチ機構52が設けられている。また、分岐路R2の先方(すなわち下方)には、券を収容するための券回収箱53が設けられている。券回収箱53は、ロール紙の先端部分の券及びその終端部分の券や、入力ミスが行われた券や、払戻し券等を回収して保管する容器である。
【0034】
ICカード搬送路R1と分岐路R2とは、第2通路切換部材34を移動させることによって選択することができる。また、共通の搬送部31と第2搬送部33との間に設けられた第1通路切換部材32は、自らの移動により、ICカード搬送路R1と後述する券搬送路R3とのいずれか一方を搬送路として選択できる。ICカード搬送路R1と券搬送路R3とは共通の搬送部31において共通の搬送路となっている。
【0035】
図4の用紙部23は、枚葉紙として発行される券の切断前の状態であるロール紙56a及び56bをそれらの中心部分において支持する支持軸57a及び57bと、ロール紙56a,56bを収容できる空間領域と、補助ローラ58a及び58bと、テンションローラ59a,59b及び59cとによって構成されている。用紙部23は、上段ロール紙56a又は下段ロール紙56bの一方から紙を送り出し、当該段の紙が無くなったときに段を切換えて紙の送出を継続する。
【0036】
テンションローラ59a,59b及び59cは、例えば特許第3959281号公報に開示されているテンションローラを用いることができる。簡単に説明すれば、略円弧状の複数(本実施形態では6枚)の弾性部材から成る羽根を含んで形成されている。これらの羽根の弾性変形によりロール紙56a及び56bの送り出し動作を円滑に行っている。
【0037】
図4において、第1フィード部24は、上段ロール紙56aの収容領域と下段ロール紙56bの収容領域との間に設けられている。また、第2フィード部25は、第1フィード部の用紙搬送方向の下流側に連続して設けられている。第1フィード部24は、図6において、上段ロール紙56aの巻き出し部分を搬送するための送りローラ対61aと、下段ロール紙56bの巻き出し部分を搬送するための送りローラ対61bとを有している。
【0038】
送りローラ対61a及び61bは、ぞれぞれ、フィードローラ62a及び62b並びにそれに対向した従動ローラ63a及び63bを有している。動力伝達系の詳しい図示は省略しているが、フィードローラ62a及び62bは電動モータ64の出力軸に動力伝達系を介して連結されている。発券装置4の稼動時には、フィードローラ62a及び62bのいずれか一方がモータ64によって駆動されて回転する。
【0039】
第1フィード部24は、ロール紙56a,56bの装填の際に作動して、ロール紙56a,56bの発券装置4への自動装填を行う部分である。また、第1フィード部24は、ロール紙56a,56bの装填が完了した後には、フィードローラ62a,62bを駆動せず、第2フィード部25によるロール紙56a,56bの搬送に従動するようになっている。
【0040】
第2フィード部25は、フィードローラ65a及び65bと、それらのフィードローラに対向した従動ローラ66a及び66bと、フィードローラ65a,65bを駆動する電動モータ67とを有している。モータ67の出力軸とフィードローラ65a,65bとは駆動ベルト68によって連結されている。
【0041】
切断部26は、ロール紙56a,56bを小型券に切断するための第1カッタ部70と、ロール紙56a,56bを大型券に切断するための第2カッタ部71とを有している。切断部26は、第2フィード部25と略同じ位置に設けられている。第1カッタ部70は第2のフィードローラ65bの左側に設けられている。第2カッタ部71は第2のフィードローラ65bの右側に設けられている。図6では、第1カッタ部70又は第2カッタ部71によってロール紙56a,56bを切断して得られた券を符号56cで示している。
【0042】
印字部27は、所定の情報を券に印刷して券面を形成するサーマルヘッド72と、切断された券56cを搬送する搬送部とを有している。そしてその搬送部は、サーマルヘッド72に対向して設けられ回転により券56cを搬送するプラテンローラ73と、プラテンローラ73を駆動するための電動モータ74とを有している。モータ74の出力軸とプラテンローラ73とは駆動ベルト76で連結されている。サーマルヘッド72は画像信号供給部から伝送される画像信号に従って券56cの表面に券面を印字する。サーマルヘッドを用いた印字方式は感熱発色方式である。他の印字方式を採用しても良い。
【0043】
印字部27における用紙搬送速度は、第1フィード部24及び第2フィード部25の用紙搬送速度と同期するように制御される。印字部27は、プラテンローラ73によって券56cを搬送しながら、サーマルヘッド72とプラテンローラ73との接触面においてサーマルヘッド72により券56cに印刷を行う。印字部27の搬送部は、切断部26においてロール紙56a,56bの切断が終了した後に用紙の搬送を開始する。
【0044】
印字部27は、図7において、切断マーク位置C1においてロール紙56a,56bの先端を検知できるようになっている。切断マーク位置C1は、ロール紙56a,56bの先端がサーマルヘッド72とプラテンローラ73とに挟み込まれる位置である。この切断マーク位置C1の検知は、例えば、サーマルヘッド72の近傍に配置したセンサによって行うことができる。切断マーク位置C1においてロール紙56a,56bの先端を検知した上で、第1カッタ部70によってロール紙を切断すれば小型券が作製され、第2カッタ部71によってロール紙を切断すれば大型券が作製される。本実施形態では、ロール紙56a,56bの幅が57.5mmであり、小型券は57.5mm×30mmであり、大型券は57.5mm×85mmであるものとする。
【0045】
切断部26は、例えば特許第3959281号公報に開示された切断部を用いることができる。詳しくは同公報に説明されているが、図7を用いて簡単に説明する。図7は、第1カッタ部70がロール紙56a,56bを切断し、第2カッタ部71は切断待機の状態にある場合を示している。
【0046】
第1カッタ部70及び第2カッタ部71は、ロール紙56a,56bを切断するカッタ77と、カッタ77を駆動する電動モータ78と、モータ78の回転力をカッタ77に伝達するリンク機構79とを有している。カッタ77は、リンク機構79と一体に移動して回転する回転刃86と、位置不動の固定刃87とを有している。回転刃86の先端切刃部分と固定刃87の先端切刃部分とが離れている状態のときにそれらの刃の間にロール紙56a,56bを通しておいた状態で、モータ78を作動してリンク機構79を動かすことにより回転刃86を回転させることにより、ロール紙56a,56bを切断することができる。
【0047】
第1カッタ部70及び第2カッタ部71は、ロール紙56a,56bの切断を検知する光センサ(以下、切断完了センサ81という)と、切断を待機する状態にあることを検出する光センサ(以下、切断待機センサ82という)とを、互いに対向する180°の角度位置関係で有している。切断完了センサ81及び切断待機センサ82は、例えば、発光部と受光部とを有した透過型光センサである。モータ78の出力軸には、切欠き部83を備えた略円板状の検知片84が取り付けられており、この切欠き部83を切断完了センサ81又は切断待機センサ82によって検知することにより、それぞれ、用紙の切断が終了したこと、又は用紙の切断を待っていることが検知される。
【0048】
図4のメイン搬送部28は、図8に示すように、印字部27に連続したターン部90と、ターン部90に連続した第4搬送部91と、第4搬送部91に連続した共通の搬送部31とを有している。共通の搬送部31は、図4においてICカード搬送部22を構成している共通の搬送部31である。図7において第1カッタ部70を用いてロール紙56a,56bを切断して得られた小型券は、ロール紙の搬送方向と直角方向の長さがロール紙の幅、すなわち57.5mmであり、ロール紙の搬送方向の長さが30mmである。ターン部90は小型券についての搬送方向を90°回転させて、小型券の搬送方向を短手方向から長手方向へと変換する。
【0049】
第4搬送部91の内部には、券の裏面に磁気情報の書込みを行うヘッドであるライトヘッド92と、ライトヘッド92で書込まれた情報を確認のために読取るヘッドであるリードヘッド93とが設けられている。
【0050】
第4搬送部91は一対の搬送ベルト94a及び94bのベルト部分同士を対面させることによって形成されている。各搬送ベルトは、それぞれ、駆動ローラ96及び駆動ベルト97によって駆動されて周回移動する。各駆動ローラ96は電動モータ98の出力軸に掛けられた駆動ベルト99によって駆動される。
【0051】
図4において、ロール紙を切断する切断部26、券に券面を印字する印字部27、ターン部90、ライトヘッド92、そしてリードヘッド93は、券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部を構成している。そして、用紙部23、第1フィード部24、第2フィード部25、印字部27、メイン搬送部28、及び共通の搬送部31から成る搬送系は、用紙部23と発券処理部26,27,90,92,93と処理口17とを結ぶ券搬送路R3を形成している。券搬送路R3は、第1通路切換部材32の所でICカード搬送路R1と交差している。第1通路切換部材32は自らが移動することにより、用紙の搬送路をICカード搬送路R1と券搬送路R3とで切換える。
【0052】
処理口17に連続している共通の搬送部31は、処理口17から投入されたICカードや券を発券装置4の内部へ導入する機能を有している。この場合、搬送部31の上側ベルトは反時計方向へ周回移動し、下側ベルトは正時計方向へ周回移動する。処理口17から投入される券としては、例えば操作者が誤って購入してしまった券に対して払戻し処理を行う際のその券が考えられる。
【0053】
また、共通の搬送部31は、券搬送路R3に沿って搬送されてきた小型券又は大型券や、ICカード搬送路R1に沿って送られて来たICカード等を処理口17へ向けて送り出す機能を有している。この場合、搬送部31の上側ベルトは正時計方向へ周回移動し、下側ベルトは反時計方向へ周回移動する。さらに、共通の搬送部31は、複数枚の回数券を発券する際に必要となる枚数の回数券を集積した後にそれらを処理口17へ送出する機能を有している。回数券を集積する際には、共通の搬送路31によって形成される搬送路内にストッパ(図示せず)を突出させて、回数券を集積する。
【0054】
操作者がICカードや券を処理口17へ挿入した場合には、そのICカード等は途中までは操作者の手によって押し進められ、途中から搬送部31によって自動的に搬送されて機内へ導入される。また、共通の搬送部31から処理口17へ排出された券やICカードは、その一定量を機内に残した状態で外部へ排出される。そして、この状態で、操作者によって抜き取られるのを待機する。
【0055】
(制御系及び給電系)
図9は本実施形態の発券機に用いられている制御系及び電力供給系をブロック図によって示している。同図において、券売機側制御部101は、券売機1の全体の制御を行う制御部であり、CPU、ROM、RAM、メモリを備えたコンピュータによって構成されている。例えば、ROM内にOS(オペレーティング・システム)が記憶され、メモリ内に制御系プログラムが記憶されている。券売機側制御部101は、例えば、ICカードに記録された情報に対する積み増し(加算)処理や減算処理を行ったり、ICカードへ書込むための情報の演算処理を行う。
【0056】
券売機側制御部101への給電は、商用100V(ボルト)電源に接続されたPC電源部102によって行われている。PC電源部102はマザーボードに関する所定の規格であるATXに準拠した電源ユニットであるATX電源103と、バックアップ用電源104とを有している。通常の稼動時においては、券売機側制御部101への給電はATX電源103によって行われる。このATX電源103からの給電が何らかの理由によって遮断された場合には、バックアップ用電源104からの給電が行われて、制御部101による制御が継続される。
【0057】
接客部制御部5は、図1の接客パネル3上に設けられた各種機器の動作を制御する制御部である。例えば、ディスプレイ11に映し出される映像を制御する。接客部制御部5は例えばプリント基板上に形成された回路であり、例えば図3の係員操作部6内に収納されている。接客部制御部5は、券売機側制御部101からの指令に基づいて接客パネル3上の各種機器要素の動作を制御する。
【0058】
図9に示した硬貨装置7及び紙幣装置8は、それぞれ、図3に同じ符号で示した装置である。これらの装置は、それぞれ、コンピュータによって構成された制御部を備えている。各装置内の制御部はそれぞれのメモリ内に記憶したプログラムに従って所定の機能を実現する。硬貨装置7及び紙幣装置8の制御部は、それぞれ、券売機側制御部101からの指令に基づいて硬貨装置7及び紙幣装置8のそれぞれの内部の機器要素の動作を個別に制御する。
【0059】
接客部制御部5、硬貨装置7及び紙幣装置8への給電は、商用100V電源に接続されたユニット電源部106によって行われている。また、接客部制御部5、硬貨装置7の制御部、及び紙幣装置8の制御部の各制御部と、券売機側制御部101との通信は、公知の通信形態の1つである“ARCNET HUB”を通して行われる。
【0060】
発券装置4は図3に同じ符号で示した装置である。発券装置4の内部の機械的な構成は図4に示した通りである。図4には図示していないが、コンピュータによって構成された制御部が発券装置4内の適所に配設されている。この制御部は、図9の券売機側制御部101からの指令に基づいて発券装置4の各構成要素の動作を制御する。発券装置4内のリーダ/ライタ48以外の構成要素への給電は、接客部制御部5等への給電と同様に、ユニット電源部106によって行われる。
【0061】
一方、発券装置4の構成要素の1つであるリーダ/ライタ48及びその制御部への給電は、発券装置4内の他の構成要素とは異なって、券売機側制御部101のための電源であるPC電源部102によって行われる。また、リーダ/ライタ48の制御部と券売機側制御部101との通信は、RS−232Cに準拠したシリアル通信によって行われる。
【0062】
以上の構成により、電源供給の停止の検知からOSのシャットダウンまでの間、リーダ/ライタ48への電源供給が可能である。また、券売機側制御部101とリーダ/ライタ48の制御部との間の通信は専用回線であるため、リーダ/ライタ48の制御部への通信も支障無く行うことができる。こうして、電源供給が停止された場合でも、リーダ/ライタ48は即座に動作を停止することはなく、ICカードの更新動作が保証される。ICカードの更新動作が保証されれば、途中処理状態(未完了)にならないため、ICカード内のデータのデータ整合性も保たれる。
【0063】
(制御モード)
図9において、券売機側制御部101は、接客部制御部5から伝送される信号に基づいて、操作者が接客パネル3を通してどの制御モードを指定したかを判定する。接客部制御部5、硬貨装置7の制御部、紙幣装置8の制御部、及び発券装置4の制御部の各制御部は、券売機側制御部101からの指令に基づいて、個々の制御モードに対応した固有の制御プロセスを実現する。制御モードとしては、例えば、(1)通常発券モード、(2)ICカードでの券購入モード、(3)ICカードチャージ(積み増し)モード、そして(4)払戻し処理(ICカード積み増し)モード等といった各種の制御モードがある。以下、主に発券装置4が各制御モードにおいて実行する動作について説明する。
【0064】
≪1:通常発券モード≫
まず、通常発券モードについて説明する。この制御モードは、図1の接客パネル3から投入された現金及び操作者による接客パネル3を通しての指示に応じて、要求された券を処理口17から排出する制御モードである。この制御モードにおいては、図10において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第1通路切換部材32が共通の搬送部31をメイン搬送部28内の第4搬送部91へ繋げる位置に設定される。
【0065】
他方、図11において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44a及びモータ44bの両方を正時計回転させる。これにより、共通の搬送部31はICカード、券等といった用紙を処理口17へ向けて搬送する状態に設定され、第2搬送部33は用紙を処理口17の反対方向へ搬送する状態に設定される。
【0066】
以上の設定により、発券装置4内では、図10において、ロール紙及びそれから切断された券等といった用紙が、用紙部23、第2フィード部25、印字部27、及びメイン搬送部28によって券搬送路R3に沿って搬送される。搬送される用紙は、切断部26によって小型券又は大型券のいずれかに切断され、印字部27によって券面が印字され、必要に応じてターン部90によって搬送方向に対する姿勢が変換され、ライトヘッド92によって磁気情報が書込まれ、そしてリードヘッド93によって確認のための読取りが行われる。
【0067】
読取られた情報が操作パネル3を通じて指示された情報に合致していれば、券は第4搬送部91から共通の搬送部31へ送られ、その一部が処理口17から外部へ排出され、操作者による抜き取りを待つ状態となる。券が処理口17から排出されるとき、図1のディスプレイ11にその旨が案内表示として画像表示される。この案内表示については後述する。リードヘッド93によって読取られた情報が操作パネル3を通じて指示された情報と合致していなければ、すなわちライトヘッド92により書込みミスが生じた場合には、第1通路切換部材32が第4搬送部91をICカード搬送部22の第2搬送部33へ繋げる位置に切換えられ、第2通路切換部材34が分岐路R2を選択する位置に設定される。これにより、書込みミスを有する券は第4搬送部91からICカード搬送部22の第2搬送部33へ入り、さらに第2搬送部33から分岐路R2へ入り、最終的に券回収箱53へ回収される。
【0068】
≪2:ICカードでの券購入モード≫
次に、ICカードでの券購入モードについて説明する。この制御モードは、操作者が図1の操作パネル3の処理口17にICカードを挿入し、操作者が希望する情報を操作パネル3を通じて入力し、その入力情報に従って券を処理口17から発行し、ICカードに記録されている情報から入力情報を減算し、そして減算処理後のICカードを処理口17から返却する制御モードである。
【0069】
この制御モードは、(a)ICカードを図4のリーダ/ライタ48まで搬送してそこに停止させるICカード導入工程と、(b)操作者が図1の接客パネル3を通じて入力した情報に基づいて券を発行する発券工程と、(c)ICカードに記録されている情報をリーダ/ライタ48によって読取り及び必要情報を書込むICカード処理工程と、(d)処理後のICカードを処理口17へ返却するICカード返却工程とを有している。以下、個々の処理工程について説明する。
【0070】
<a:ICカード導入工程>
この処理工程においては、まず、図12において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第1通路切換部材32が共通の搬送部31を第2搬送部33へ繋げる位置に設定される。また、第2通路切換部材34が第2搬送部33を第3搬送部35へ繋げる位置に設定される。
【0071】
他方、図13において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44aを反時計回転させ、モータ44bを正時計回転させる。このとき、第3搬送部35の上段搬送ベルトの一方向クラッチ47aは、駆動ベルト46aが反時計方向へ周回移動するので、ロック状態(動力伝達状態)となり、上段搬送ベルトは用紙を第2搬送部33からリーダ/ライタ48へ向かう方向へ搬送する。一方、第3搬送部35の下段搬送ベルトの一方向クラッチ47bは、駆動ベルト46bが正時計方向へ周回移動するので、フリー状態(空回り状態)となり、下段搬送ベルトは自由回動状態である。これにより、共通の搬送部31、第2搬送部33及び第3搬送部35はICカードを処理口17の反対方向へ搬送する状態に設定される。
【0072】
以上の設定により、発券装置4内では、図12に示すように、処理口17に挿入されたICカードが直線状のICカード搬送路R1に沿って搬送され、そのICカードがリーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置に到達する。すると、モータ44aの回転が停止され、ICカードはリーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置に停止する。
【0073】
<b:発券工程>
上記のICカード導入工程が実行されている間又はその後、操作者が操作パネル3を通して発券の指示を行うと、図10を用いて説明した上記の「通常発券モード」の場合と同じ処理が実行されて、所定の券面が印字され、所望の情報が磁気記録された、所望の大きさの券が処理口17から発行される。券の排出時、ディスプレイ11上にその旨の案内表示が行われる。
【0074】
<c:ICカード処理工程>
上記の発券工程が実行され、さらに券の抜取りが終わった後、又はその前後の任意のタイミングにおいて、図11のリーダ/ライタ48に対向して停止しているICカードに記録されている情報がリーダ/ライタ48によって読取られ、その読取り情報が図9の接客部制御部5へ伝送される。接客部制御部5は、接客パネル3(図1参照)を通して入力された券の購入情報とリーダ/ライタ48から伝送された記録情報とを比較して更新情報を演算し、その更新情報をリーダ/ライタ48へ伝送する。リーダ/ライタ48は伝送されて来た更新情報をICカードへ上書きする。
【0075】
<d:ICカード返却工程>
上記の発券工程により処理口17から券の一部が排出され、さらに操作者によってその券が抜き取られ、さらにICカードに対してリーダ/ライタ48によって所定の読み書き処理が終了した後に、ICカード返却工程が実行される。
【0076】
このICカード返却工程においては、まず、図14において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第2通路切換部材34が第3搬送部35を第2搬送部33へ繋げる位置に設定される。また、第1通路切換部材32が第2搬送部33を共通の搬送部31へ繋げる位置に設定される。
【0077】
他方、図15において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44aを正時計回転させ、モータ44bを反時計回転させる。このとき、第3搬送部35の上段搬送ベルトの一方向クラッチ47aは、駆動ベルト46aが正時計方向へ周回移動するので、フリー状態となる。一方、第3搬送部35の下段搬送ベルトの一方向クラッチ47bは、駆動ベルト46bが反時計方向へ周回移動するので、ロック状態となる。これにより、第3搬送部35、第2搬送部33及び共通の搬送部31はICカードをリーダ/ライタ48から処理口17へ搬送する。搬送されたICカードは一部分が処理口17の外へ張り出し、操作者の抜き取りを待つ状態となる。ICカードが処理口17から排出されるとき、図1のディスプレイ11にその旨が案内表示として画像表示される。この案内表示については後述する。
【0078】
≪3:ICカードチャージ(積み増し)モード≫
次に、ICカードチャージ(積み増し)モードについて説明する。この制御モードは、ICカードに記録されている残金情報に積み増し金を加算する処理を行う制御モードである。図9の券売機側制御部101がこの制御モードを選択すると、図12に関連して説明したように、既述の「2:ICカードでの券購入モード」における「a:ICカード導入工程」と同様の制御が実行される。その結果、処理口17から挿入されたICカードがICカード搬送路R1に沿って搬送されて、リーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置まで搬送されてそこに停止する。
【0079】
その後、操作者が操作パネル3を通して積み増し金を投入すれば、図9の接客部制御部5はその金額を認識し、その金額に対応した信号を発券装置4内のリーダ/ライタ48の制御部へ伝送する。リーダ/ライタ48は伝送されたその金額信号に基づいてICカードの残額情報を更新する。
【0080】
次に、図14に関連して説明した、上記の「2:ICカードでの券購入モード」における「d:ICカード返却工程」と同様の制御が実行されて、積み増し処理が完了したICカードの一部分が処理口17の外へ張り出すまで搬送され、操作者の抜取りを待つ状態となる。ICカードの排出時、ディスプレイ11上にその旨の案内表示が行われる。
【0081】
≪4:払戻し処理(ICカード積み増し)モード≫
次に、払戻し処理(ICカード積み増し)モードについて説明する。この制御モードは、操作者が間違って購入してしまった券を払い戻して、払戻し金額をICカードへ積み増すという処理を行う制御モードである。この制御モードは、客である操作者が係員へ申告を行い、それに応じて係員が図3に示す券売機の背面から指示操作を行うことにより実行される制御である。
【0082】
この制御モードは、間違って購入してしまった券を図16の発券装置4へ処理口17から再投入し、続いて又は前もってICカードを投入し、再投入した券の金額情報を読取り、読取った金額情報をICカードの記録内容に払戻金情報として積み増し、処理後のICカードを処理口17から操作者へ返却し、処理後の券は発券装置4内の券回収箱53へ回収する、という制御モードである。
【0083】
この制御モードは、(a)払戻したい券を第4搬送部91の待機位置P1まで搬送すると共に、記録されている金額をリードヘッド93によって読取る券導入読取工程と、(b)ICカードをリーダ/ライタ48まで搬送してそこに停止させるICカード導入工程と、(c)ICカードに記録されている情報をリーダ/ライタ48によって読取り及び必要情報を書込むICカード処理工程と、(d)処理後のICカードを処理口17へ返却するICカード返却工程と、(e)払い戻しを終了した券を待機位置P1から券回収箱53まで搬送して該回収箱53に回収する券回収工程とを有している。以下、個々の工程について説明する。
【0084】
<a:券導入読取工程>
この工程においては、まず、図16において、発券装置4内のICカード搬送部22内の第1通路切換部材32が共通の搬送部31をメイン搬送部28内の第4搬送部91へ繋げる位置に設定される。他方、図13において、ICカード搬送部22の駆動系を構成するモータ44aを反時計回転させる。他方のモータ44bを回転させるか否かは任意である。以上の設定により、処理口17から挿入した払戻し券は券搬送路R3に沿って第1搬送路31から待機位置P1へと搬送される。待機位置P1はリードヘッド93を越えライトヘッド92よりも前の位置である。この搬送の途中、リードヘッド93により払戻し券に記憶されている磁気情報が読取られる。
【0085】
<b:ICカード導入工程>
券導入読取工程の後、ICカード導入工程が実行される。この工程においては、図12に関連して説明したような、既述の「2:ICカードでの券購入モード」における「a:ICカード導入工程」と同様の制御が実行される。その結果、処理口17から挿入されたICカードがICカード搬送路R1に沿って搬送されて、リーダ/ライタ48に対する所定の読み書き可能位置まで搬送されてそこに停止する。
【0086】
<c:ICカード処理工程>
ICカードがリーダ/ライタ48に対向して配置された後、そのICカードに記録されている情報がリーダ/ライタ48によって読取られ、その読取り情報が図9の接客部制御部5へ伝送される。接客部制御部5は、上記の券導入読取工程において第4搬送部91のリードヘッド93によって払戻し券から読取られた情報とリーダ/ライタ48から伝送された記録情報とを比較して更新情報を演算し、その更新情報をリーダ/ライタ48へ伝送する。リーダ/ライタ48は伝送されて来た更新情報をICカードへ上書きする。
【0087】
<d:ICカード返却工程>
ICカードに対する更新情報の書込みが終了した後、図14に関連して説明した、上記の「2:ICカードでの券購入モード」における「d:ICカード返却工程」と同様の制御が実行されて、ICカードが図17に示すようにその一部分が処理口17の外へ張り出すまでICカード搬送路R1に沿って搬送され、操作者の抜取りを待つ状態となる。ICカードの排出時、ディスプレイ11上にその旨の案内表示が行われる。
【0088】
<e:券回収工程>
ICカードが処理口17へ返却されて抜き取られた後、又はその返却処理が開始される前、第1通路切換部材32が第4搬送部91をICカード搬送部22の第2搬送部33へ繋げる位置に切換えられ、第2通路切換部材34が分岐路R2を選択する位置に設定される。これにより、払戻し券は第4搬送部91からICカード搬送部22の第2搬送部33へ入り、さらに第2搬送部33から分岐路R2へ入り、最終的に券回収箱53へ回収される。
【0089】
(案内表示)
以上の説明の通り、本実施形態では図4において、排出口である処理口17をICカードと券とで共通にしたため、処理口17からICカードと券とが必然的に互いに異なったタイミングで排出される。ICカードと券とで排出口が別々であれば、客である操作者は自分が取り出そうとしているものがICカードであるのか、あるいは券であるのかを、特別な注意を払うまでも無く容易に認識できる。しかしながら、ICカードと券とで排出口が共通である本実施形態においては、何等かの措置を講じておかないと、操作者が排出されたものをICカードと券とで誤認するおそれがある。
【0090】
このような問題を解消するため、本実施形態では、共通の処理口17から排出されたものがICカードであるのか、あるいは券であるのかを図1のディスプレイ11の画面上に画像として表示することにより、操作者の注意を促すことにした。具体的には、図9の接客部制御部5内に格納されたプログラム内にそのための画走表示ルーチンを設けている。
【0091】
例えば、処理口17からICカードが排出されることに対して、図18(a)に示すような、ICカードが排出されることを示す画像表示を実現するための画像データをプログラム内に含んでいる。また、切符のような券が排出されることに対して、図18(b)に示すような、券が排出されることを示す画像表示を実現するための画像データをプログラム内に含んでいる。
【0092】
図4において処理口17からICカード又は券が排出されたとき、又はその直前、又はその直後、図9において発券装置4の制御部から券売機側制御部101へ、処理口17からICカード又は券が排出されたことを示す信号が伝送される。この信号は、処理口17の近傍に配置したセンサによって検知することができるし、あるいは、搬送系の駆動モータに設けたエンコーダの出力パルスに基づいて検知することもできる。
【0093】
ICカード又は券の排出信号を受けた券売機側制御部101は、接客部制御部5へ向けてICカードの排出画像(図18(a))又は券の排出画像(図18(b))を表示することの指示信号を伝送し、これにより、図1のディスプレイ11にICカードに関する表示(図18(a))又は券に関する表示(図18(b))が行われる。これにより、操作者は共通の処理口17から何が排出されているのかを明確に認識することができる。そのため、操作者は誤操作をすることなく券の購入を行うことができる。
【0094】
(処理口の注意表示)
図9の接客部制御部5に記憶されたプログラム内には、図2の処理口17の近傍、実施形態では左上方の近傍に設けたLED18の点滅又は点灯を制御するためのルーチンが含まれている。
【0095】
図4において処理口17からICカード又は券の排出が開始されてから操作者によってそのICカード又は券が抜き取られるとき、排出が開始されたことの信号及び抜き取られたことの信号が図9の発券装置4の制御部から券売機側制御部101へ伝送される。排出開始信号から抜取り完了まで間、券売機側制御部101は接客部制御部5へ赤色LED18を点滅又は点灯すべき旨の指令を伝送する。
【0096】
以上により、図1において処理口17からICカード又は券が排出されている間には、近傍に設けられているLED18が点滅又は点灯し、操作者に注意を促す。これにより、操作者が処理口17からICカード又は券を抜き取るのを忘れることを防止できる。
【0097】
(総説)
以上の説明から理解できるように、本実施形態では、ICカードによる券購入や積み増しを可能とするためにICカードに対して読取り処理及び書込み処理を行うICカード処理部は、図4のリーダ/ライタ48によって構成されている。また、処理口17とICカード処理部48とを結ぶICカード搬送路R1に沿ってICカードを搬送するICカード搬送手段は、共通の搬送路31、第2搬送部33、第3搬送部35によって構成されている。
【0098】
また、券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部は、切断部26、印字部27、ターン部90、ライトヘッド92、リードヘッド93等によって構成されている。また、用紙部23と発券処理部26,27,90,92,93と処理口17とを結ぶ券搬送路R3に沿って券を搬送する券搬送手段は、第1フィード部24、第2フィード部25、印字部27、第4搬送部91、共通の搬送部31によって構成されている。
【0099】
本実施形態では図4においてICカード、発行券及び払戻し券で投入口及び取出口が共通であり、ICカード搬送路R1と券搬送路R3の一部が共通の搬送部となっており、その共通の搬送部をICカード搬送路又は券搬送路として選択的に用いるようにしている。仮にICカードと券との処理口が別々であったり、ICカード及び券の投入口と取出口とが別々であったりすると、発券装置を小型な一体構造に形成することが非常に困難であるが、ICカードと券とで処理口が共通である本実施形態によれば、ICカードの搬送系と券の搬送系とを小型の一体構造に容易に形成でき、発券装置を小型な一体構造に形成することができる。
【0100】
また、仮に、硬質であるICカードの読取り・書込み部と、軟質である券の読取り・書込み部とが同じ場所や同じ搬送系内に設けられているとすると、ICカードの搬送制御と券の搬送制御とが複雑になり、故障を招き易い。これに対し、本実施形態では、ICカードの読取り・書込み部と、券の読取り・書込み部とを異なった所に設けたので、ICカード及び券の搬送を安定して行うことができ、ICカード等の詰まりや損傷を防止できる。
【0101】
また、図5に示したICカード搬送部22の駆動系を考えた場合、通常の駆動方法に基づけば、例えば図19に示すように、共通の搬送部31、第2搬送部33、第3搬送部の3個の搬送部は3個のモータ111a,111b,111cを用いて個々に駆動するのが一般的である。
【0102】
これに対し本実施形態では、図5に示したように、1つの搬送部である第3搬送部35を独自に停止状態にさせることを可能にするために、駆動ローラ43a,43bに一方向クラッチ47a,47bを介在させると共に、隣の搬送部である第2搬送部33のための動力モータ44bによってその第3搬送部35を駆動する構成とした。これにより、駆動源であるモータの設置場所を小さくでき、部品コストを低減できることになった。
【0103】
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【0104】
例えば、本実施形態では図4において券回収箱53に通じる分岐路R2をICカード搬送路R1の途中に設けたが、分岐路R2は必ずしも設けなくても良い。そしてこの場合には、第2搬送路33を取り除くことが可能である。
また、本実施形態では用紙部23に2つのロール紙56a,56bを設置する構成としたが、1つのロール紙だけを設置する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0105】
1.券売機、 2.ケーシング、 3.接客パネル、 4.発券装置、 5.接客部制御部、 6.係員操作部、 7.硬貨装置、 8.紙幣装置、 9.硬貨回収金庫、 11.ディスプレイ(画像表示手段)、 12.操作パネル、 13.硬貨投入口、 14.紙幣挿入口、 16.紙幣返却口、 17.処理口、 18.赤色LED(発光手段)、 21.フレーム、 22.ICカード搬送部(ICカード搬送手段)、 23.用紙部、 24.第1フィード部(券搬送手段)、 25.第2フィード部(券搬送手段)、 26.切断部(発券処理部)、27.印字部(発券処理部)、 28.メイン搬送部、 31.共通の搬送部、 32.第1通路切換部材、 33.第2搬送部、 34.第2通路切換部材、 35.第3搬送部、 37a,37b.搬送ベルト、 38a,38b.駆動ローラ、 39a,39b.搬送ベルト、 41a,41b.駆動ローラ、 42a,42b.搬送ベルト、 43a,43b.駆動ローラ、 44a,44b.電動モータ、 46a,46b.駆動ベルト、 47a,47b.一方向クラッチ(一方向動力伝達要素)、 48.リーダ/ライタ(ICカード処理部)、 51.補助搬送ベルト、 52.パンチ機構(廃札処理部)、 53.券回収箱、 54.試刷券回収箱、 56a,56b.ロール紙、 56c.券、 57a,57b.支持軸、 58a,58b.補助ローラ、 59a,59b,59c.テンションローラ、 61a,61b.送りローラ対、 62a,62b.フィードローラ、 63a,63b.従動ローラ、 65a,65b.フィードローラ、 66a,66b.従動ローラ、 67.電動モータ、 70.第1カッタ部、 71.第2カッタ部、 72.サーマルヘッド、 73.プラテンローラ、 74.電動モータ、 76.駆動ベルト、 77.カッタ、 78.電動モータ、 79.リンク機構、 81.切断完了センサ、 82.切断待機センサ、 83.切欠き部、 84.検知片、 86.回転刃、 87.固定刃、 90.ターン部(発券処理部)、 91.第4搬送部、 92.ライトヘッド(発券処理部)、 93.リードヘッド(発券処理部)、 94a,94b.搬送ベルト、 96.駆動ローラ、 97.駆動ベルト、 98.電動モータ、C1.切断マーク位置、 G.設置面、 P1.待機位置、 R1.ICカード搬送路、R2.分岐路、 R3.券搬送路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発券装置と接客部とを有する券売機であって、
(A)前記発券装置は、
ICカード及び券を通過させることができる共通の処理口と、
前記ICカードによる券購入や積み増しを可能とするために前記ICカードに対して読取り処理及び書込み処理を行うICカード処理部と、
前記処理口と前記ICカード処理部とを結ぶICカード搬送路に沿ってICカードを搬送するICカード搬送手段と、
前記券が置かれる用紙部と、
前記券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部と、
前記用紙部と前記発券処理部と前記処理口とを結ぶ券搬送路に沿って券を搬送する券搬送手段と、を有しており、
(B)前記接客部は画像を表示する画像表示手段を有しており、前記処理口は前記接客部に開口しており、
(C)前記ICカードを前記処理口から排出するときにICカードを排出することの画像表示を前記画像表示手段に行い、さらに前記券を前記処理口から排出するときに券を排出することの画像表示を前記画像表示手段に行う表示制御手段を具備している
ことを有することを特徴とする券売機。
【請求項2】
前記処理口の近傍に設けられた発光手段と、
前記ICカード及び前記券が前記処理口から互いに異なったタイミングで排出される開始から抜取りまでの間に前記発光手段を点滅発光させる発光制御手段と
を有することを特徴とする請求項1記載の券売機。
【請求項3】
券を前記処理口から前記券搬送路へ搬送させる搬送制御手段と、
前記券搬送路へ搬送された前記券に記憶された情報を読取る読取り手段と、
前記読取り手段で読取った情報に基づいて払戻金を演算し該払戻金を、前記券の挿入の後に続いて挿入する前記ICカードに前記ICカード処理部によって積み増し金として記憶させる演算制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の券売機。
【請求項4】
前記発券装置に含まれる制御部及び前記接客部の動作を制御する制御部に通信線を介して接続された券売機側制御部を有しており、
前記発券装置、前記発券装置に含まれる制御部、前記接客部、及び前記接客部の動作を制御する制御部のための電源と、前記券売機側制御部のための電源と、は互いに独立しており、
前記券売機側制御部のための電源はバックアップ電源を備えており、
前記ICカード処理部は前記券売機側制御部のための電源から給電される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の券売機。
【請求項1】
発券装置と接客部とを有する券売機であって、
(A)前記発券装置は、
ICカード及び券を通過させることができる共通の処理口と、
前記ICカードによる券購入や積み増しを可能とするために前記ICカードに対して読取り処理及び書込み処理を行うICカード処理部と、
前記処理口と前記ICカード処理部とを結ぶICカード搬送路に沿ってICカードを搬送するICカード搬送手段と、
前記券が置かれる用紙部と、
前記券に所定の情報を記録し更に発券のための処理を行う発券処理部と、
前記用紙部と前記発券処理部と前記処理口とを結ぶ券搬送路に沿って券を搬送する券搬送手段と、を有しており、
(B)前記接客部は画像を表示する画像表示手段を有しており、前記処理口は前記接客部に開口しており、
(C)前記ICカードを前記処理口から排出するときにICカードを排出することの画像表示を前記画像表示手段に行い、さらに前記券を前記処理口から排出するときに券を排出することの画像表示を前記画像表示手段に行う表示制御手段を具備している
ことを有することを特徴とする券売機。
【請求項2】
前記処理口の近傍に設けられた発光手段と、
前記ICカード及び前記券が前記処理口から互いに異なったタイミングで排出される開始から抜取りまでの間に前記発光手段を点滅発光させる発光制御手段と
を有することを特徴とする請求項1記載の券売機。
【請求項3】
券を前記処理口から前記券搬送路へ搬送させる搬送制御手段と、
前記券搬送路へ搬送された前記券に記憶された情報を読取る読取り手段と、
前記読取り手段で読取った情報に基づいて払戻金を演算し該払戻金を、前記券の挿入の後に続いて挿入する前記ICカードに前記ICカード処理部によって積み増し金として記憶させる演算制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の券売機。
【請求項4】
前記発券装置に含まれる制御部及び前記接客部の動作を制御する制御部に通信線を介して接続された券売機側制御部を有しており、
前記発券装置、前記発券装置に含まれる制御部、前記接客部、及び前記接客部の動作を制御する制御部のための電源と、前記券売機側制御部のための電源と、は互いに独立しており、
前記券売機側制御部のための電源はバックアップ電源を備えており、
前記ICカード処理部は前記券売機側制御部のための電源から給電される、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の券売機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−150548(P2011−150548A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11443(P2010−11443)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000143396)株式会社高見沢サイバネティックス (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000143396)株式会社高見沢サイバネティックス (55)
【Fターム(参考)】
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