説明

券媒体処理装置及び券媒体処理方法

【課題】複製困難な券媒体の発行及びこの券媒体を用いた改札処理を可能とする券媒体処理装置及び券媒体処理方法を提供する。
【解決手段】改札処理に必要な改札情報を有する券媒体の発行指示を受け付ける指示手段と、前記指示手段を介して発行指示を受け付けたのに基づいて、特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する原券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた前記識別子によって得られた値を鍵として、改札処理に必要な改札情報を暗号化した二次元コードを作成する二次元コード作成手段と、前記二次元コード作成手段により作成された二次元コードを前記原券媒体に印刷する印刷手段と、を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二次元コードを有する券媒体を処理する券媒体処理装置及び券媒体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、改札処理の省力化を目的として、改札機が導入されている。この改札機は、利用者が駅構内や遊戯施設などの施設内に入場する場合や、施設内から出場する場合などに、入場券や乗車券などの券媒体の改札情報に基づいて入場処理または出場処理といった改札処理を行う。
【0003】
このような改札機を利用するための券媒体としては、改札情報を磁気情報として記録した磁気式の券媒体や、改札情報を記憶したメモリを有し改札機との間で無線通信が可能な券媒体(ICチップを内蔵したICカードや携帯端末機器などを含む)などが実用化されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、券媒体として、二次元バーコードからなる券情報を有する携帯端末機器、二次元バーコードが印刷された媒体を利用し、入出場処理等を行う券情報処理システムが開示されている。特に、ここでは、券媒体が乗車券として利用される場合に、中央管理装置で生成された乗車券情報が当該乗車券で入場できる乗車区間の全駅に配信され、入場時には二次元バーコードを用いた入場が行われた旨の情報つまりネガティブ情報が全入場可能駅に配信され、出場時には二次元バーコードを用いた出場が行われた旨の情報つまりネガティブ情報が全出場可能駅に配信されることで、不正な使用を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−59249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、複製困難な券媒体の発行及びこの券媒体を用いた改札処理を可能とする券媒体処理装置及び券媒体処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の態様によれば、
改札処理に必要な改札情報を有する券媒体の発行指示を受け付ける指示手段と、前記指示手段を介して発行指示を受け付けたのに基づいて、特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する原券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた前記識別子によって得られた値を鍵として、改札処理に必要な改札情報を暗号化した二次元コードを作成する二次元コード作成手段と、前記二次元コード作成手段により作成された二次元コードを前記原券媒体に印刷する印刷手段と、を備えたことを特徴とする券媒体処理装置が提供される。
【0008】
この発明の他の態様によれば、
特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取る第1読取手段と、前記券媒体から二次元コードを読み取る第2読取手段と、前記第1読取手段により読み取られた前記識別子によって得られた値を鍵として、前記第2読取手段により読み取られた前記二次元コードから改札処理に必要な改札情報を復号化する復号化手段と、前記復号化手段により復号化された前記改札情報に基づいて改札処理を行う改札手段と、を備えたことを特徴とする券媒体処理装置が提供される。
【0009】
また、この発明の他の態様によれば、
改札処理に必要な改札情報を有する券媒体の発行指示を受け付け、発行指示を受け付けたのに基づいて、特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する原券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取り、読み取った前記識別子により得られた値を鍵として、改札情報を暗号化した二次元コードを作成し、作成した二次元コードを前記原券媒体に印刷する、ことを特徴とする券媒体処理方法が提供される。
【0010】
また、この発明の他の態様によれば、
特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取り、前記券媒体から二次元コードを読み取り、読み取った前記識別子により得られた値を鍵として、読み取った前記二次元コードから改札処理に必要な改札情報を復号化し、復号化した前記改札情報に基づいて改札処理を行う、ことを特徴とする券媒体処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複製困難な券媒体の発行及びこの券媒体を用いた改札処理を可能とする券媒体処理装置及び券媒体処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本実施形態における改札システムの一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示した改札システムの券売機の一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図3】図3は、図1に示した改札システムの改札機の一構成例を概略的に示すブロック図である。
【図4】図4は、本実施形態における券媒体の発行処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、本実施形態における券媒体を用いた改札処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、本実施形態における券媒体を用いた他の改札処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
特に、本実施形態においては、券媒体処理装置の一例として券売機及び改札機について説明するとともに、券媒体処理方法の一例として券売機における券媒体の発行方法及び改札機における券媒体を利用した改札処理について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における改札システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【0016】
この改札システムは、改札機1や券売機2などの機器と、これらの機器に対する上位機器(あるいは外部機器)として機能するホストコンピュータ4と、を有している。図示した例の改札システムが駅務システムに相当する場合、改札機1や券売機2などの機器は、複数の駅にそれぞれ設置されており、また、ホストコンピュータ4は、各駅の駅サーバや鉄道会社各社の社局サーバなどに相当する。
【0017】
改札機1は、駅構内や遊戯施設などの各種施設の改札口(あるいは出入口)などにおいて利用者が通行可能な改札通路に沿って配置されている。この改札機1は、利用者が所持している券媒体の券情報(あるいは改札情報)に基づいて改札処理、つまり施設内に入場する際の入場処理や施設内から出場する際の出場処理などの処理を行う。このような改札処理では、改札機1は、券媒体から読み取った券情報に基づいて改札通路の通行の可否を判定する。
【0018】
券売機2は、利用者の操作に応じて券媒体を発行する発行業務を行う。より具体的には、券売機2は、施設内への入場券、各種乗車券、定期券、特急券、回数券などの各種券媒体を発行する。なお、詳述しないが、券売機2には、券媒体の券情報に基づいて利用額の不足分を精算し、精算券を発行する精算機も含まれる。
【0019】
このような券売機2によって発行される券媒体の形態としては、券情報つまり改札処理に必要な改札情報を暗号化した二次元コードを有するものである。なお、券売機2は、二次元コードを有する券媒体のほかに、無線式の券媒体や磁気式の券媒体の発行が可能となるように構成されても良い。券売機2によって発行された券媒体は、いずれも上記した改札機1で利用可能となる。
【0020】
ホストコンピュータ4は、図示した改札システム上の改札機1や券売機2などの下位の各種機器を監視し、各種機器における処理データを集計したり、各種機器の動作状況を管理したりする。このホストコンピュータ4は、制御部41、通信部42、メモリ43などを有している。制御部41は、ホストコンピュータ4の制御のみならず、改札システム全体の制御を行う。通信部42は、各種機器との間で種々の情報の送受信を行うインターフェースである。メモリ43は、ホストコンピュータ4を制御するための制御データなどの各種データに加えて、各種機器から送信された各種情報を記憶している。
【0021】
次に、上述した改札システムに適用可能な券売機2の構成について説明する。
【0022】
図2は、券売機2の構成を概略的に示すブロック図である。
【0023】
すなわち、券売機2は、制御部21、通信部22、メモリ23、表示部24、指示手段及び入力手段として機能する操作部25、音声出力部26、金額処理部27、搬送部28、読取手段として機能する読取部29、二次元コード作成手段として機能する二次元コード作成部30、印刷手段として機能する印刷部31などを有している。
【0024】
制御部21は、券媒体Tの発行指示を受け付けた場合に、券売機2を構成する各部の制御を行うものである。通信部22は、上位のホストコンピュータ4との通信を行うインターフェースである。メモリ23は、券売機2の制御に必要な制御データや、各種券媒体Tを発行する発行業務を行うのに必要な各種情報などを記憶している。
【0025】
表示部24は、液晶表示器などで構成されている。この表示部24は、制御部21による制御に基づいて、券売機2を利用する利用者に対して券媒体Tの発行業務に必要な各種操作を案内する画面や、発行する券媒体Tの内容などの種々の情報を案内する画面などを表示する。
【0026】
操作部25は、各種ボタンや、接触を検知したのに基づいて対応する情報を出力するタッチパネルなどで構成されている。この操作部25は、制御部21による制御に基づいて、利用者による各種操作の入力を受け付ける。より具体的には、操作部25は、券媒体Tの発行指示を受け付けたり、改札情報を生成するために必要な情報、例えば、券媒体Tが乗車券である場合には乗車区間などの情報の入力を受け付けたりする。表示部24及び操作部25の少なくとも一部は、例えば、タッチパネル内蔵の液晶表示器などで構成される。
【0027】
音声出力部26は、制御部21による制御に基づいて、券売機2を利用する利用者に対して券媒体Tの発行業務に必要な各種操作を案内する音声や、発行する券媒体Tの内容などの種々の情報を案内する音声などを図示しないスピーカーから出力する。金額処理部27は、制御部21による制御に基づいて、利用者によって投入された現金あるいは金額カード(すなわちストアードフェアカードやクレジットカードなど)の金額を処理する。
【0028】
搬送部28は、券媒体Tの発行指示を受け付けた場合に、制御部21による制御に基づいて、券媒体Tとなる原券媒体50を収容している収容部28Aから原券媒体50を取り出し、読取部29及び印刷部31に搬送し、排出部28Bから券媒体Tを排出する。収容部28Aに収容されている原券媒体50は、複製困難な固有の識別子51を有している。排出部28Bから排出される券媒体Tは、識別子51に加えて二次元コード52を有している。
【0029】
識別子51は、ユニークな値に対応するバーコード等で形成されている。このような識別子51は、特定波長範囲の光のみによって読取可能である。特定波長範囲とは、例えば、赤外光の波長範囲や、紫外光の波長範囲などである。このような識別子51は、例えば、通常の複写機では複製できないインクなどを用いて形成されている。したがって、識別子51は、通常、可視化されていない場合もあり得る。また、識別子51は、ユニークな値に対応したホログラムなどであっても良く、特殊な材料及び特殊な加工技術を組み合わせて形成される。
【0030】
このような識別子51を有する原券媒体50は、予め所定サイズにカットされた券紙に識別子51をプレ印刷したものであっても良いし、券媒体発行時にカットした際に確実に識別子51が含まれるように形成したロール紙であっても良い。
【0031】
読取部29は、制御部21による制御に基づいて、搬送部28により搬送された原券媒体50から識別子51を読み取る。より具体的には、読取部29は、例えば、識別子51を読み取るための特定波長範囲の光を発生する光源を備え、この光源からの光を原券媒体50に向けて照射し、読取可能となった識別子51を走査して光学的に読み取るものである。
【0032】
二次元コード作成部30は、制御部21による制御に基づいて、改札情報を暗号化した二次元コードを作成する。より具体的には、二次元コード作成部30は、操作部25を介して入力された情報(乗車区間など)に基づいて改札情報(乗車区間や有効期限など)を生成する一方で、読取部29により読み取られた識別子51からユニークな値を得て、この値を鍵として、生成した改札情報を暗号化した(つまり、改札情報に対応した暗号を生成した)上で、これに対応した二次元コードを作成するものである。
【0033】
印刷部31は、制御部21による制御に基づいて、搬送部28により搬送された原券媒体50に対して、二次元コード作成部30により作成された二次元コード52を印刷する。このとき、印刷部31は、識別子51と二次元コード52とがそれぞれ後に読取可能となるように識別子51に重ならない位置に二次元コード52を印刷する。印刷部31により印刷される二次元コード52は、識別子51と同様に、特定波長範囲の光のみによって読取可能であっても良いし、可視化されていても良い。
【0034】
このような券売機2は、必要に応じて、磁気式の券媒体を処理する磁気券処理部や無線式の券媒体を処理するカードリーダライタなどを備えていても良い。これらの磁気券処理部及びカードリーダライタについては説明を省略する。
【0035】
次に、上述した改札システムに適用可能な改札機1の構成について説明する。
【0036】
図3は、改札機1の構成を概略的に示すブロック図である。
【0037】
すなわち、改札機1は、制御部11、通信部12、メモリ13、表示部14、ドア制御部15、第1読取手段として機能する第1読取部16、第2読取手段として機能する第2読取部17、復号化手段として機能する復号化部18、改札手段として機能する改札処理部19などを有している。
【0038】
制御部11は、券媒体Tによる改札処理に際して、改札機1を構成する各部の制御を行うものである。通信部12は、上位のホストコンピュータ4との通信を行うインターフェースである。メモリ13は、改札機1の制御に必要な制御データや、改札処理を行うのに必要な各種データなどを記憶している。
【0039】
表示部14は、液晶表示器などで構成されている。この表示部14は、制御部11による制御に基づいて、改札機1を利用する利用者に対して操作を案内する画面や有効性の判定結果などに対応した案内画面を表示する。ドア制御部15は、改札機1に設けられているドア機構15Aの開閉を制御するものであり、有効性の判定結果に対応して改札通路を開放したり閉鎖したりする。
【0040】
第1読取部16は、制御部11による制御に基づいて、利用者が持参する券媒体Tから識別子51を読み取る。より具体的には、第1読取部16は、利用者によって翳された券媒体Tから識別子51を読み取り可能な所定の読取エリアを有している。このような第1読取部16は、例えば、識別子51を読み取るための特定波長範囲の光を発生する光源を備え、この光源からの光を読取エリアに翳された券媒体Tに向けて照射し、読取可能となった識別子51を走査して光学的に読み取るものである。このような第1読取部16は、先に説明した券売機2の読取部29と実質的に同一構成のものである。
【0041】
第2読取部17は、制御部11による制御に基づいて、利用者が持参する券媒体Tから二次元コード52を読み取る。この第2読取部17は、利用者によって翳された券媒体Tから二次元コード52を読み取り可能な所定の読取エリアを有している。この第2読取部17が有する読取エリアは、第1読取部17が有する読取エリアと実質的に同一である。このような第2読取部17は、例えば二次元コード52が可視化されている場合には、二次元コード52を光学的に読み取るスキャナなどによって構成される。また、二次元コード52が可視化されていない場合、例えば識別子51と同様の特定波長範囲の光によって読取可能に形成されている場合には、第1読取部16が第2読取部17の機能を兼ね備えていても良い。
【0042】
復号化部18は、制御部11による制御に基づいて、二次元コード52から改札処理に必要な改札情報を復号化する。より具体的には、復号化部18は、第1読取部16により読み取られた識別子51からユニークな値を得て、この値を鍵として、第2読取部17により読み取られた二次元コード52から改札情報を復号化する(つまり、二次元コード52から得られた暗号を解読する)。
【0043】
改札処理部19は、制御部11による制御に基づいて、復号化部18により復号化された改札情報に基づいて改札処理を行う。より具体的には、改札処理部19は、券媒体Tが有する改札情報に基づいて券媒体Tの有効性、つまり、利用者の改札通路の通行を許可するか否かを判定する。また、改札処理部19は、改札通路の通行を許可すると判定した場合に、固有の識別子51を有する券媒体Tが改札処理済(つまり、入場済みあるいは出場済み)である旨の改札記録を生成する。
【0044】
このような改札機1は、必要に応じて、磁気式の券媒体を処理する磁気券処理部や無線式の券媒体を処理するカードリーダライタなどを備えていても良い。これらの磁気券処理部及びカードリーダライタについては説明を省略する。
【0045】
なお、制御部11は、改札処理部19による改札処理に際して、券媒体Tの識別子51に対応したネガティブ情報の有無を判断する判断手段としての機能を有している。ここで、ネガティブ情報とは、券媒体Tを所持する利用者の改札通路の通過を許可しない情報であり、たとえば、入場処理に際して読み取った識別子51に対応する券媒体Tが既に入場済である旨の情報あるいは既に出場済である旨の情報などが相当し、また、出場処理に際して識別子51に対応する券媒体Tが既に出場済である旨の情報などが相当する。
【0046】
次に、券媒体Tの発行処理について券売機2の各部の動作とともに説明する。
【0047】
図4は、本実施形態における券媒体Tの発行処理を説明するためのフローチャートである。
【0048】
まず、制御部21は、券媒体Tの発行処理を開始するか否かを判断する(ST11)。すなわち、制御部21は、操作部25を介した券媒体Tの発行指示の入力や改札情報の入力を受付可能な状態において、発行指示の入力や改札情報の入力を受け付け、且つ、金額処理部27を制御して券媒体Tを発行するのに必要な対価に相当する金額を処理した場合に、当該券媒体Tの発行処理を開始するものと判断する(ST11、YES)。
【0049】
そして、制御部21は、搬送部28を制御して、収容部28Aから原券媒体50を取り出す(ST12)。取り出される原券媒体50には、先に説明したように、固有の識別子51がプレ印刷されている。搬送部28は、収容部28Aが予め所定サイズにカットされた原券媒体50を収容している場合には、収容部28Aから1枚の原券媒体50を送出する。また、搬送部28は、収容部28Aがロール紙を収容している場合には、ロール紙を所定サイズにカットして得られた原券媒体50を送出する。そして、搬送部28は、原券媒体50を読取部29に搬送する。
【0050】
そして、制御部21は、読取部29を制御して、搬送部28により搬送された原券媒体50から識別子51を読み取る(ST13)。すなわち、読取部29は、識別子51を有する原券媒体50に対して、特定波長範囲の光を照射して識別子51を読み取り、識別子51の読み取りが正常に完了したのに伴い、読み取った識別子51により得られた値を二次元コード作成部30に出力する。
【0051】
そして、制御部21は、二次元コード作成部30を制御して、二次元コードを作成する(ST14)。すなわち、二次元コード作成部30は、識別子51により得られた値が読取部29から入力されたのに伴い、この値を鍵として改札情報を暗号化し、対応する二次元コードを作成する。そして、二次元コード作成部30は、作成した二次元コードに対応するデータを印刷部31に出力する。
【0052】
そして、制御部21は、印刷部31を制御して、搬送部28により搬送された原券媒体50に対して、二次元コード52を印刷する(ST15)。すなわち、印刷部31は、二次元コードに対応するデータが二次元コード作成部30から入力されたのに伴い、このデータに基づいて原券媒体50の所定位置に二次元コード52を印刷する。ここでの所定位置とは、例えば、プレ印刷されている識別子51に重ならない位置である。本実施の形態において、識別子51がプレ印刷された原券媒体50に二次元コード52を印刷したものが券媒体Tに相当する。
【0053】
そして、制御部21は、搬送部28を制御して、識別子51及び二次元コード52を有する券媒体Tを排出部28Bから排出する(ST16)。
【0054】
以上のようなステップを経て券媒体Tの発行処理を終了する。
【0055】
次に、券媒体Tを用いた改札処理について改札機1の各部の動作とともに説明する。
【0056】
図5は、本実施形態における券媒体Tを用いた改札処理を説明するためのフローチャートである。
【0057】
まず、制御部11は、券媒体Tが所定の読取エリアに翳されたと判定したのに基づいて(ST21、YES)、第1読取部16を制御して、券媒体Tから識別子51を読み取る(ST22)。すなわち、第1読取部16は、券媒体Tに対して、特定波長範囲の光を照射して識別子51を読み取り、識別子51の読み取りが正常に完了したのに伴い、読み取った識別子51により得られた値を復号化部18に出力する。
【0058】
そして、制御部11は、第2読取部17を制御して、券媒体Tから二次元コード52を読み取る(ST23)。すなわち、第2読取部17は、券媒体Tに対して、特定波長範囲の光を照射して二次元コード52を読み取り、二次元コード52の読み取りが正常に完了したのに伴い、読取結果を復号化部18に出力する。
【0059】
そして、制御部11は、復号化部18を制御して、第1読取部16から入力された値を鍵として、第2読取部17から得られた読取結果を復号化する(ST24)。すなわち、復号化部18は、識別子51から得たユニークな値を鍵として、二次元コード52から改札情報を復号化する。そして、復号化部18は、復号化した改札情報を改札処理部19に出力する。
【0060】
そして、制御部11は、改札処理部19を制御して、復号化部18から入力された改札情報に基づいて券媒体Tの有効性、つまり、利用者の改札通路の通行を許可するか否かを判定する(ST25)。制御部11は、改札処理部19により通行を許可する旨の判定がなされた場合には(ST26、YES)、ドア制御部15を制御してドア機構15Aを駆動し、改札通路を開放する(ST27)。また、制御部11は、改札処理部19により通行を許可しない旨の判定がなされた場合には(ST26、NO)、ドア制御部15を制御してドア機構15Aを駆動し、改札通路を閉鎖する(ST28)。
【0061】
以上のようなステップを経て券媒体Tによる改札処理を終了する。
【0062】
次に、乗車券や入場券などとして機能する券媒体Tを用いた改札処理について改札機1の各部の動作とともに説明する。
【0063】
図6は、本実施形態における同一券媒体Tを用いた重複入場及び重複出場を防止するための他の改札処理を説明するためのフローチャートである。なお、図5のフローチャートで説明した改札処理と同一工程については詳細な説明を省略する。
【0064】
まず、制御部11は、券媒体Tが所定の読取エリアに翳されたと判定したのに基づいて(ST31、YES)、第1読取部16を制御して、券媒体Tから識別子51を読み取る(ST32)。そして、制御部11は、第2読取部17を制御して、券媒体Tから二次元コード52を読み取る(ST33)。
【0065】
そして、制御部11は、第1読取部16によって読み取られた識別子51に対応したネガティブ情報の有無を判断する(ST34)。この場合、制御部11は、ホストコンピュータ4に対して読み取った識別子51を元に問い合わせ、対応するネガティブ情報の有無の結果をホストコンピュータ4から受け取っても良いし、予めホストコンピュータ4から改札機1に配信されたネガティブ情報の中から、読み取った識別子51に対応するネガティブ情報を検索し、その検索結果に基づいて、ネガティブ情報の有無の判断結果としてもよい。
【0066】
そして、制御部11は、読み取った識別子51に対応したネガティブ情報が無いと判断したのに基づいて(ST34、NO)、復号化部18を制御して、第1読取部16から入力された値を鍵として、第2読取部17から得られた読取結果を復号化する(ST35)。
【0067】
そして、制御部11は、改札処理部19を制御して、復号化部18から入力された改札情報に基づいて券媒体Tの有効性を判定する(ST36)。制御部11は、改札処理部19により通行を許可する旨の判定がなされた場合には(ST37、YES)、ドア制御部15を制御してドア機構15Aを駆動し、改札通路を開放する(ST38)。また、制御部11は、改札処理部19により通行を許可しない旨の判定がなされた場合には(ST37、NO)、ドア制御部15を制御してドア機構15Aを駆動し、改札通路を閉鎖する(ST39)。
【0068】
一方、制御部11は、ステップST34において、読み取った識別子51に対応したネガティブ情報が有ると判断したのに基づいて(ST34、YES)、ドア制御部15を制御してドア機構15Aを駆動し、改札通路を閉鎖する(ST39)。
【0069】
以上のようなステップを経て券媒体Tによる改札処理を終了する。
【0070】
なお、本実施形態では、ステップST34において、制御部11は、第1読取部16によって読み取られた識別子51に対応したネガティブ情報の有無を判断したが、第2読取部17によって読み取られた二次元コード52を基に対応したネガティブ情報の有無を判断しても良い。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、券媒体Tの複製が困難となる。券媒体Tが有する複製困難な識別子51は、原券媒体を製造する際に大量に一括してプレ印刷されるため、券売機2での券媒体Tの発行時に時間がかかるとか、コストが高くなるとかいった課題を回避することができる。
【0072】
また、このような券媒体Tを用いた改札処理では、券媒体Tが不正に複製された場合を想定した不正監視を行う必要がなくなる。このため、ホストコンピュータ4などの改札機1よりも上位の機器で不正監視を行うシステムと比較して、負荷の軽減、導入コストの低減、処理時間の短縮が可能となる。
【0073】
また、改札機1などの券媒体処理装置は、利用者によって翳された券媒体Tから識別子51及び二次元コード52を読み取る構成であるため、券媒体Tを機体内に取り込んで搬送するといった機構が不要であり、装置本体のコストの低減が可能となる。
【0074】
また、券媒体Tが定期券などの有効期限内に複数回の使用が許可されたものである場合を除いては、使用済みの券媒体Tに対して以後の券媒体Tを所持する利用者の改札通路の通過を許可しないネガティブ情報(例えば、一度の入場処理が完了したのに基づいて入場済みである旨のネガティブ情報や、一度の出場処理が完了したのに基づいて出場済みである旨のネガティブ情報)を生成し管理することにより、同一券媒体Tを用いた重複した使用を防止することができる。
【0075】
したがって、複製困難な券媒体の発行及びこの券媒体を用いた改札処理を可能とする券媒体処理装置及び券媒体処理方法を提供することができる。
【0076】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…改札機(券媒体処理装置)
2…券売機(券媒体処理装置)
11…制御部(判断手段)
16…第1読取部(第1読取手段)
17…第2読取部(第2読取手段)
18…復号化部(復号化手段)
19…改札処理部(改札手段)
25…操作部(指示手段、入力手段)
29…読取部(読取手段)
30…二次元コード作成部(二次元コード作成手段)
31…印刷部(印刷手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改札処理に必要な改札情報を有する券媒体の発行指示を受け付ける指示手段と、
前記指示手段を介して発行指示を受け付けたのに基づいて、特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する原券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた前記識別子によって得られた値を鍵として、改札情報を暗号化した二次元コードを作成する二次元コード作成手段と、
前記二次元コード作成手段により作成された二次元コードを前記原券媒体に印刷する印刷手段と、
を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。
【請求項2】
さらに、乗車区間を含む改札情報の入力を受け付ける入力手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の券媒体処理装置。
【請求項3】
特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取る第1読取手段と、
前記券媒体から二次元コードを読み取る第2読取手段と、
前記第1読取手段により読み取られた前記識別子によって得られた値を鍵として、前記第2読取手段により読み取られた前記二次元コードから改札処理に必要な改札情報を復号化する復号化手段と、
前記復号化手段により復号化された前記改札情報に基づいて改札処理を行う改札手段と、
を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。
【請求項4】
特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取る第1読取手段と、
前記券媒体から二次元コードを読み取る第2読取手段と、
前記第1読取手段により読み取られた前記識別子に対応したネガティブ情報の有無を判断する判断手段と、
前記判断手段により前記識別子に対応したネガティブ情報がないと判断されたのに基づいて、前記第1読取手段により読み取られた前記識別子によって得られた値を鍵として、前記第2読取手段により読み取られた前記二次元コードから改札処理に必要な改札情報を復号化する復号化手段と、
前記復号化手段により復号化された前記改札情報に基づいて改札処理を行う改札手段と、
前記判断手段により前記識別子に対応したネガティブ情報があると判断されたのに基づいて、改札通路を閉鎖するドア機構と、
を備えたことを特徴とする券媒体処理装置。
【請求項5】
改札処理に必要な改札情報を有する券媒体の発行指示を受け付け、
発行指示を受け付けたのに基づいて、特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する原券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取り、
読み取った前記識別子により得られた値を鍵として、改札情報を暗号化した二次元コードを作成し、
作成した二次元コードを前記原券媒体に印刷する、
ことを特徴とする券媒体処理方法。
【請求項6】
特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取り、
前記券媒体から二次元コードを読み取り、
読み取った前記識別子により得られた値を鍵として、読み取った前記二次元コードから改札処理に必要な改札情報を復号化し、
復号化した前記改札情報に基づいて改札処理を行う、
ことを特徴とする券媒体処理方法。
【請求項7】
特定波長範囲の光によって読み取り可能な固有の識別子を有する券媒体に対して、前記特定波長範囲の光を照射して前記識別子を読み取り、
前記券媒体から二次元コードを読み取り、
読み取った前記識別子に対応したネガティブ情報の有無を判断し、
前記識別子に対応したネガティブ情報がないと判断したのに基づいて、読み取った前記識別子により得られた値を鍵として、読み取った前記二次元コードから改札処理に必要な改札情報を復号化し、
復号化した前記改札情報に基づいて改札処理を行い、
前記識別子に対応したネガティブ情報があると判断されたのに基づいて、改札通路を閉鎖する、
ことを特徴とする券媒体処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−192209(P2011−192209A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59820(P2010−59820)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】