説明

券硬貨分離装置

【課題】硬貨識別部材が硬貨識別を行う際の通過経路であるスリットに、硬貨を詰まり難くすることができる券硬貨分離装置を提供する。
【解決手段】券硬貨を分離可能でかつ接近離間する一対の固定側ローラ群6及び可動側ローラ群7のうち、可動側ローラ群に支持フレーム24を取り付け固定する。支持フレーム24に硬貨識別センサ23を平面回動可能に取り付け、支持フレーム24の下方位置において引出部材45を取り付け固定する。可動側ローラ群が離間位置に移動する際、その可動側ローラ群7に設けた掛止突部で引出部材45を引き出すことにより、硬貨識別センサ23を平面方向に回動させてセンサ自体を強く揺らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば整理券等の券類と硬貨とを分離する券硬貨分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路線バス等の運賃箱には、乗車した場所を証明する整理券と、運賃である硬貨とを分離する券硬貨分離装置が搭載されている。この種の券硬貨分離装置の一例が、例えば特許文献1等に開示されている。図20に示すように、この種の券硬貨分離装置81には、運賃箱に投入された整理券と硬貨とを複数の回転ローラ群で分離及び搬送するローラ機構82と、ローラ機構82により分離及び搬送された硬貨の種類を識別する硬貨識別センサ83とが設けられている。
【0003】
ローラ機構82には、券硬貨分離装置81の装置本体に対して位置が固定された固定側ローラ群84と、この固定側ローラ群84に対して相対位置が変化する可動側ローラ群85とが設けられている。可動側ローラ群85は、モータ等(図示略)を駆動源として固定側ローラ群84に対して接近離間可能であって、固定側ローラ群84に接近した近接位置(図20の実線で示す状態)と、固定側ローラ群84に対して所定距離を置いた離間位置(図20の一点鎖線で示す状態)との2位置をとる。
【0004】
これらローラ群84,85には、整理券と硬貨とを分離する分離ローラ86,87と、分離ローラ86,87で分離された硬貨を一枚ずつ硬貨識別センサ88に搬送する搬送ローラ89,90とが各々設けられている。一対の分離ローラ86,87及び搬送ローラ89,90も、可動側ローラ群85の移動に伴って接近離間する。分離ローラ86,87は、水平方向に対して傾斜配置されるとともに、ローラ群84,85が近接位置にあるときは整理券のみを通過可能な隙間を有し、ローラ群84,85が離間位置にあるときは整理券及び硬貨の両方が下方に通過可能な間隔をとる。
【0005】
運賃箱に整理券及び硬貨が投入されると、近接位置にある分離ローラ86,87の隙間を整理券が通過して下方に落ち、硬貨が分離ローラ86,87の外周上を搬送ローラ89,90に向かって転がり落ちることにより、整理券と硬貨とが分離される。分離ローラ86,87に沿って転がり落ちた硬貨は、搬送ローラ89,90で一枚ずつ硬貨識別センサ88の検出スリット88aに通され、硬貨が検出スリット88aを通り抜ける際に硬貨識別センサ88によって硬貨種類が識別される。
【0006】
この種の券硬貨分離装置81には、固定側ローラ群84と可動側ローラ群85との間における硬貨詰まり(整理券詰まりも含む)の有無を検出する詰まり検出センサ91が設けられている。詰まり検出センサ91が硬貨詰まりを検出すると、モータ等(図示略)を駆動源として可動側ローラ群85が固定側ローラ群84に対して離間し、固定側ローラ群84と可動側ローラ群85との間に広い間隔を生じさせる。これにより、ローラ間に詰まっていた硬貨や整理券が下方に落下し、ローラ間の硬貨詰まりが解消される。
【特許文献1】特開平10−91834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の技術を用いたとしても、ローラ間における硬貨詰まりは解消できても、仮に硬貨の落下方向が硬貨識別センサ88の検出スリット88aに対してずれていたりすると、硬貨が検出スリット88aを通過するその通過過程で、スリット88aの内面に引っ掛かり、硬貨が検出スリット88aで詰まる場合があった。こうなると、硬貨識別センサ88の検出スリット88aが塞がれてしまうことになり、これが原因で正確な硬貨識別が行えない問題が生じていた。このため、運賃箱に投入された硬貨を正確に識別するために、硬貨識別センサ88の検出スリット88aに硬貨を詰まらないようにする対策を講じる必要があった。
【0008】
本発明の目的は、硬貨識別部材が硬貨識別を行う際の通過経路であるスリットに、硬貨を詰まり難くすることができる券硬貨分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、券硬貨投入口から投入された券及び硬貨を一対の分離ローラで券のみを巻き込み、前記硬貨については前記分離ローラ上を滑落させて硬貨識別部材に導くことにより前記券硬貨を分離し、当該硬貨の種類を前記硬貨識別部材で識別する券硬貨分離装置において、前記硬貨識別部材は、厚さ方向に前記硬貨が通過可能なスリットを備えた扁平薄箱形状を有し、前記硬貨識別部材を平面方向に回動させて前記スリットに詰まった前記硬貨を当該スリットから離脱させて硬貨詰まりを解消する硬貨詰まり防止機構を備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、硬貨識別部材を平面方向に回動させるので、硬貨識別部材を平面方向に強く揺らすことが可能となる。従って、仮に硬貨識別部材のスリットに硬貨が詰まっていたとしても、硬貨識別部材が強く揺らされることで、この詰まり硬貨がスリットから飛び出すことになる。よって、スリットに詰まった硬貨をスリットから離脱させることが可能となり、硬貨識別部材のスリットに硬貨が詰まらないようにすることができる。また、硬貨識別部材を平面方向に回動させるので、例えば、硬貨識別部材自体を水平方向(水面方向)に対して所定角度だけ傾かせる構造を採る場合に比べて、機構サイズが小さく済み、当該券硬貨分離装置の小型化にも効果がある。
【0011】
本発明では、少なくとも前記分離ローラを含む一対の可動側ローラ群及び固定側ローラ群を近接位置に位置させることにより、前記分離ローラ間の隙間を券のみを通過させることで券硬貨を分離し、詰まり検出手段で券硬貨詰まりを検出した際に、前記可動側ローラ群を前記固定側ローラ群に対して相対移動させて離間位置に位置させることにより、ローラ間の間隔を広くして前記券硬貨詰まりを解消する可動機構を備え、前記硬貨詰まり防止機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置するとき、前記硬貨識別部材を平面回動させて、前記硬貨識別部材の前記スリットにおける前記硬貨詰まりを解消することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、可動側ローラ群が離間位置に位置すれば、可動側ローラ群が移動したその移動量の分だけ、硬貨詰まり防止機構を作動させる際に必要な動作スペースを広くとることが可能となる。従って、硬貨詰まり防止機構を作動させるにあたって、これを比較的広いスペースで作動させることが可能となり、硬貨識別部材のスリットに詰まった硬貨をより確実にスリットから抜け出させることが可能となる。また、可動側ローラ群が近接位置から離間位置に移動し可動側ローラ群が離間位置にしたときは、固定側ローラ群と可動側ローラ群との間の間隔が広くなることに伴い、硬貨識別部材を平面回動させる際のその回動スペースを広くとることが可能となる。従って、硬貨識別部材を平面回動させるに際し、硬貨識別部材をできるだけ多くの回動量で平面回動させることができ、硬貨識別部材のスリットに詰まった硬貨をより確実にスリットから離脱させることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記硬貨詰まり防止機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置する際、その位置移動に連動して前記硬貨識別部材の平面回動を開始して前記硬貨詰まりを解消し、前記可動側ローラ群が前記近接位置に戻る際、その位置移動に連動して平面回動開始前の初期状態に復帰する連動機構であることを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、可動側ローラ群が近接位置から離間位置、若しくは離間位置から近接位置に戻る際に、その動きに連動して硬貨識別部材の平面回動を行う連動機構を設けたので、可動側ローラ群の位置移動動作を利用して硬貨識別部材を平面回動させることが可能となる。従って、硬貨詰まり防止機構(連動機構)が可動側ローラ群の位置移動を利用した機械的構造となるので、例えば、硬貨識別部材を平面回動させるための専用モータ等を用意する必要がなく、部品コスト抑制等に効果がある。また、例えばこれら動作を別々に行う場合に比較して、これら両動作を行う際に要する処理時間を短く済ますことも可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、硬貨識別部材が硬貨識別を行う際の通過経路であるスリットに、硬貨を詰まり難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した券硬貨分離装置の第1実施形態を図1〜図15に従って説明する。
【0017】
図1に示すように、路線バスやワンマン運行式鉄道等の車内には、運賃を収受する集金機器として運賃箱1が設置されている。運賃箱1の上面には、運賃としての硬貨2を投入する投入先として運賃投入口3が設けられている。運賃箱1は、運賃投入口3に投入された硬貨2を識別、計数、保管等するとともに、乗車場所を証明する整理券4が硬貨2と一緒に運賃投入口3に投入された場合、硬貨2と整理券4との分離や、整理券4の番号読み取りについても同時に行う。なお、運賃投入口3が券硬貨投入口に相当し、整理券4が券に相当する。
【0018】
運賃箱1には、運賃投入口3から投入された硬貨2と整理券4とを分離する図2に示すような券硬貨分離装置5が内蔵されている。券硬貨分離装置5には、運賃箱1の装置本体1aに取り付け固定された固定側ローラ群6と、この固定側ローラ群6に対して相対移動可能な状態で装置本体1aに取り付けられた可動側ローラ群7とが設けられている。可動側ローラ群7は、駆動モータ等(図示略)を駆動源として固定側ローラ群6に対して装置本体1aの幅方向(図2の矢印A方向)にスライド移動し、固定側ローラ群6に対して接近した近接位置と、固定側ローラ群6に対して所定間隔を置いて位置する離間位置との間を水平方向に往復移動可能である。
【0019】
券硬貨分離装置5には、券硬貨を分離する一対の分離ローラ8,9が設けられている。この分離ローラ8,9は、固定側ローラ群6の枠体を形成する固定フレーム10に回動可能に支持された固定側分離ローラ8と、可動側ローラ群7の枠体を形成する可動フレーム11に回動可能に支持された可動側分離ローラ9とから成る。これら分離ローラ8,9は、自身の回動軸心L1,L2が券硬貨分離装置5の長さ方向(図2の矢印B方向)に沿いつつ互いに平行に並ぶとともに、分離ローラ8,9の軸方向両端部のうち装置本体1aの中央側に位置する端部(図2では下側端部)が下を向くように、水平方向に対して傾斜して配置されている。
【0020】
固定側ローラ群6には、券硬貨分離装置5の各種ローラ群の回転駆動源となる回転モータ12がモータブラケット13を介して取り付けられている。回転モータ12の回転軸の先端には、第1連結歯車群14を介して固定側分離ローラ8及び可動側分離ローラ9が連結されている。分離ローラ8,9は、その上端で第1連結歯車群14を介して回転モータ12に連結され、回転モータ12の回転時においてこれら2つの分離ローラ8,9で整理券4を巻き込むべく、ともに内向き方向(図2の矢印C1,C2方向)に回転する。
【0021】
可動側ローラ群7が固定側ローラ群6に対して近接位置に位置するとき、固定側分離ローラ8と可動側分離ローラ9との間には整理券4のみ通過可能な隙間が生じる。このため、運賃投入口3に整理券4及び硬貨2が投入された際は、分離ローラ8,9間の隙間から整理券4が分離ローラ8,9に巻き込まれつつ下方に落下し、固定側分離ローラ8及び可動側分離ローラ9の外周面間に生じる谷部分を通路部15として硬貨2が分離ローラ8,9に沿って滑落することにより、整理券4と硬貨2とが分離される。
【0022】
図3〜図5に示すように、券硬貨分離装置5において分離ローラ8,9の斜め下方位置には、分離された硬貨2の移動経路上において落下硬貨の受け部分として機能する一対の掻き上げローラ16,17が設けられている。これら掻き上げローラ16,17は、偏心回転するローラであって、固定フレーム10に回動可能に取り付けられた固定側掻き上げローラ16と、可動フレーム11に回動可能に取り付けられた可動側掻き上げローラ17とから成る。これら掻き上げローラ16,17は、自身の偏心軸心L3,L4(図4及び図5参照)が分離ローラ8(9)の回動軸心L1(L2)と平行に並ぶとともに、掻き上げローラ16,17の軸方向両端部のうち分離ローラ8(9)側の端部(図3では左側端部)が下を向くように、水平方向に対して傾斜して配置されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、券硬貨分離装置5において掻き上げローラ16,17の下方位置には、分離された硬貨2を一枚ずつ下方に搬送する一対の送りローラ18,19が設けられている。送りローラ18,19は、固定フレーム10に回動可能に取り付けられた固定側送りローラ18と、可動フレーム11に回動可能に取り付けられた可動側送りローラ19とから成る。これら送りローラ18,19も、自身の回動軸心L5,L6が分離ローラ8(9)の回動軸心L1(L2)と平行に並ぶとともに、送りローラ18,19の軸方向両端部のうち分離ローラ8(9)側の端部(図3では左側端部)が下を向くように、水平方向に対して傾斜して配置されている。固定側送りローラ18と可動側送りローラ19との間の間隔は、可動側ローラ群7が近接位置に位置するとき、硬貨2が1枚通過可能な幅に設定されている。
【0024】
図2に示すように、固定フレーム10には、分離ローラ8の回動軸心L1に沿って延びるシャフト軸20が回動可能な状態で取り付け支持されている。シャフト軸20は、軸途中にユニバーサルジョイント20aを有する回動軸であって、一端が第2連結歯車群21を介して回転モータ12の回転軸に連結され、他端が第3連結歯車群22を介して掻き上げローラ16,17及び送りローラ18,19に連結されている。
【0025】
券硬貨分離装置5が作動して回転モータ12が回転した際、回転モータ12の回転力は第2連結歯車群21、シャフト軸20及び第3連結歯車群22を介して掻き上げローラ16,17及び送りローラ18,19に伝達される。このとき、回転モータ12の回転力で掻き上げローラ16,17が各々外向き方向(図5の矢印C3,C4方向)に偏心回転するとともに、送りローラ18,19は一方(固定側送りローラ18)が内向き方向(図5の矢印C5方向)に、他方(可動側送りローラ19)が外向き方向(図5の矢印C6方向)に回転する動作状態をとる。これにより、分離ローラ8,9で分離された硬貨2が掻き上げローラ16,17に至ると、掻き上げローラ16,17でその落下が一旦受け止められつつ自重とローラ回転とで硬貨2が送りローラ18,19に搬出され、その硬貨2が送りローラ18,19で一枚ずつ下方に搬送される。
【0026】
図3〜図5に示すように、送りローラ18,19の下方位置には、運賃投入口3に投入された硬貨2の種類を識別する硬貨識別センサ23が設けられている。硬貨識別センサ23は、固定フレーム10に固着された断面略L字形状の金属製の支持フレーム24に取り付け支持されていることから、固定側ローラ群6と一体化された取り付け関係を有しており、可動側ローラ群7が離間位置に移動した場合であっても、固定側ローラ群6との間の位置関係を維持する。硬貨識別センサ23は、硬貨識別センサ23の長さ方向両端部のうち分離ローラ8(9)側の端部(図3では左側端部)が下を向くように、水平方向に対して傾斜して配置されている。硬貨識別センサ23は水平方向に対して傾斜して配置されていることから、その上面23aが傾斜面となっている。なお、硬貨識別センサ23が硬貨識別部材に相当し、支持フレーム24がフレームに相当する。
【0027】
硬貨識別センサ23には、図4及び図5に示すように枠体として平板形状で樹脂製のセンサホルダ25が設けられている。このセンサホルダ25の下面には、送りローラ18,19から送られてきた硬貨2の識別判定を実際に行う部位としてセンサ本体26が取り付け固定されている。硬貨識別センサ23の中央位置には、硬貨2の通過経路となる検出スリット27が貫設されている。また、支持フレーム24にも、検出スリット27と相対する位置において硬貨2を通し得る検出スリット28が貫設されている。送りローラ18,19から一枚ずつ硬貨2が硬貨識別センサ23に送り出されると、この硬貨2は硬貨識別センサ23の検出スリット27を通過し、この通過過程においてセンサ本体26が硬貨2の種類を識別することにより、運賃箱1に投入された硬貨2の種類識別が行われる。なお、検出スリット27がスリットに相当する。
【0028】
券硬貨分離装置5には、券硬貨の搬送経路上において券硬貨の詰まり有無を検出する詰まり検出センサ29(図4参照)が設けられている。この種の券硬貨分離装置5においては、図4の一点鎖線円枠内に示すように、硬貨2が送りローラ18,19の間において幅方向に並んで詰まる場合があり、このような状態になると、運賃箱1に投入された硬貨2が硬貨識別センサ23に至らず、硬貨2の種類識別に支障を来す。詰まり検出センサ29は、このような硬貨詰まりや整理券詰まりを監視し、例えば光学式センサを用いた場合、発光素子が出力した光を受光素子で受光できれば詰まり無しと判定し、整理券4や硬貨2が詰まってこれらで光が遮断されると、詰まり有りと認識する。
【0029】
詰まり検出センサ29で券硬貨詰まり有りと判定された場合、可動側ローラ群7を相対移動させ得る駆動モータが回動を開始し、近接位置に位置する可動側ローラ群7が固定側ローラ群6から離れる向きにスライド移動を始め、可動側ローラ群7は図6に示すような離間位置に位置する。このとき、図5に示すように、固定側ローラ群6と可動側ローラ群7との間の間隔Wbが広くなることから、詰まった硬貨2や整理券4が下方に落下して硬貨識別センサ23に送られることにより、硬貨詰まりや整理券詰まりが解消される。なお、詰まり検出センサ29が詰まり検出手段に相当する。
【0030】
図7及び図8に示すように、券硬貨分離装置5には、硬貨識別センサ23の上面23aに硬貨2が載った際にその硬貨2を下方に滑落させることにより、硬貨識別センサ23の上面23aに硬貨2が載ったままの状態になることを防止する硬貨排除機構K1が設けられている。この硬貨排除機構K1を以下に説明すると、支持フレーム24において固定フレーム10側の側端部には、略長方形状の支持部材30が取り付け固定されている。支持部材30の反分離ローラ8,9側の端部には、断面円形状の貫通孔31が貫設されている。
【0031】
支持部材30には、金属片を折り曲げ加工することにより形成された図7〜図13に示す可動部材32が、第1回動支持ピン33により硬貨識別センサ23の上面23aに沿って平面回動可能に取り付けられている。可動部材32は、自身の中央部やや反分離ローラ8,9側寄りの位置に折り曲げ形成された断面略コ字形状の取付部34と、支持部材30の貫通孔31とに、第1回動支持ピン33を回動可能な状態で挿通して抜け止めを施すことにより、支持部材30(即ち、支持フレーム24)に連結されている。即ち、可動部材32は、第1回動支持ピン33の軸心Laを支点として硬貨識別センサ23の上面23aに沿う回動方向(図10及び図11の矢印D方向)に沿って平面回動可能に支持フレーム24に取り付けられている。
【0032】
図7に示すように、可動部材32においてその分離ローラ8,9側寄りの位置には、可動側ローラ群7の移動方向に沿う向きに延びる第1長孔35が貫設されている。また、支持フレーム24においてフレーム長さ方向略中央位置には、板形状のピン取付片36が折り曲げ形成されている。ピン取付片36には、頭部が大径の回動規制ピン37が第1長孔35にその軸部を通した状態で取り付け固定されている。可動部材32が平面回動する際、回動規制ピン37が第1長孔35の端縁に当接することにより、その平面回動量が設定されている。
【0033】
図7及び図9〜図13に示すように、可動部材32において分離ローラ8,9側の端部には、硬貨識別センサ23の上面23aに対して垂直方向に立設する板状の支持壁38が、送りローラ18,19から落下してくる硬貨を受けるべく可動側ローラ群7の移動方向に沿う向きに延設されている。この支持壁38は、送りローラ18,19から搬送された硬貨2をその内面で受けることにより、硬貨2が検出スリット27を通過することを補助する壁として働く。可動部材32は、送りローラ18,19から搬送された落下硬貨を硬貨識別センサ23の上面23aで支持壁38により受け得る規制位置(図10、図12及び図14に示す状態)と、支持壁38を硬貨識別センサ23から離間させることにより硬貨識別センサ23の上面23aを開放して同上面23aに載った硬貨2を下方に落下させる開放位置(図11、図13及び図15に示す状態)との2位置間を、第1長孔35に沿って平面回動する。
【0034】
図8及び図10〜図15に示すように、支持フレーム24と可動部材32との間には、例えばコイルスプリング等から成る第1付勢ばね39が介装されている。第1付勢ばね39は、図10〜図13に示すように、その一端が支持壁38のばね係止孔38aに係止され、支持フレーム24の側部に折り曲げ形成されたばね係止片40に他端が係止された取り付け状態をとり、平面回動可能な可動部材32を、支持壁38が固定フレーム10側に向かう回動方向(図10及び図11の矢印D1方向)に常時付勢する。
【0035】
図7、図8、図10、図11、図14及び図15に示すように、可動部材32において反分離ローラ8,9側の端部には、硬貨識別センサ23の上面23aに対して垂直に立設する板状の当接壁41が、可動部材32の支持壁38に対して直交する方向(硬貨識別センサ23の長さ方向)に沿う向きで延設されている。当接壁41は、支持壁38と同じく可動部材32を折り曲げ加工することにより形成され、第1回動支持ピン33に対して支持壁38の反対側に配置されている。
【0036】
図14及び図15に示すように、可動フレーム11においてフレーム長さ方向端部には、可動フレーム11の幅方向に延びる略棒形状の押込部42が取り付けられている。この押込部42は、可動側ローラ群7が近接位置に位置する際に、可動部材32の当接壁41を押し込み可能であって、可動フレーム11と押込部42との間に介装された例えばコイルスプリングから成る第2付勢ばね43により固定側ローラ群6側に常時付勢されるとともに、基端にある大径の頭部42aで抜け止めがなされている。第2付勢ばね43は、押込部42の外周に巻き掛けられるとともに、一端が可動フレーム11の内壁面に当接し、押込部42の中央やや先端寄りの位置に突設された突出部42bに他端が当接する。
【0037】
可動側ローラ群7が近接位置から離間位置にスライド移動する際、当接壁41を押し込んでいた押込部42が当接壁41から離間し、可動部材32が第1付勢ばね39の付勢力で支持壁38を開放する側に平面回動することにより、可動部材32が開放位置(図11、図13及び図15に示す状態)に位置し、支持壁38が開放状態となる。一方、可動側ローラ群7が離間位置から近接位置にスライド移動する際、押込部42が当接壁41を押し込み、可動部材32を第1付勢ばね39の付勢力に抗して支持壁38を閉じる側に平面回動させることにより、可動部材32が規制位置(図10、図12及び図14に示す状態)に位置し、支持壁38が閉状態となる。
【0038】
図7、図8、図10及び図11に示すように、券硬貨分離装置5には、硬貨識別センサ23の検出スリット27に硬貨2が詰まることを防ぐ硬貨詰まり防止機構K2が設けられている。なお、硬貨詰まり防止機構K2が連動機構、引出式連動機構を構成する。この硬貨詰まり防止機構K2を以下に説明すると、硬貨識別センサ23は、その4隅の角部のうち分離ローラ8,9及び可動部材32の両者に対して遠い側の角部32aで、第2回動支持ピン44により支持フレーム24に対して平面回動可能に取り付けられている。即ち、硬貨識別センサ23は、第2回動支持ピン44の軸心Lbを支点に、支持フレーム24の底壁24aに沿って平面回動可能に支持フレーム24に連結されている。
【0039】
図7及び図9に示すように、支持フレーム24において底壁24aの下方には、金属片を折り曲げ加工することにより形成された引出部材45が、複数(本例は2つ)の固定ピン46で硬貨識別センサ23の下面に取り付け固定されることにより、硬貨識別センサ23とともに支持フレーム24の底壁24aに沿って相対移動可能な状態で取り付けられている。引出部材45は、硬貨識別センサ23において分離ローラ8,9側の2つの角部で取り付け固定され、自身が支持フレーム24に対して相対移動した際に、これに伴って硬貨識別センサ23を平面回動させるべく動く。
【0040】
硬貨識別センサ23は、引出部材45の位置移動に伴い、硬貨識別センサ23の検出スリット27が各種ローラ群の軸心方向(図2等参照)に対して平行向きをとる通常位置(図10、図12、図14に示す状態)と、硬貨識別センサ23が平面回動して検出スリット27が各種ローラ群の軸心方向に対して傾斜向きをとるオフセット位置(図11、図13及び図15に示す状態)との2位置間を、第2回動支持ピン44を支点に円弧状の軌跡をとって平面回動する。
【0041】
各固定ピン46,46は、支持フレーム24の底壁24aにおいて可動側ローラ群7の移動方向に沿って形成された各第2長孔47,47を通して硬貨識別センサ23に至っている。これら第2長孔47,47は、支持フレーム24の幅方向に対して傾斜する形状をとっており、このような形状をとることにより、引出部材45がその移動方向(図10及び図11の矢印E方向)に沿い引き出し若しくは引き戻された際に、硬貨識別センサ23においてその角部32aに位置する第2回動支持ピン44を支点とした平面回動を許容する。硬貨識別センサ23が平面回動する際、固定ピン46が第2長孔47の端縁に当接することにより、その平面回動量が設定されている。
【0042】
図9及び図12〜図15に示すように、支持フレーム24と引出部材45との間には、例えばコイルスプリング等から成る第3付勢ばね48が介装されている。第3付勢ばね48は、支持フレーム24の底壁下面に係止固定された例えばねじ等から成る突設ピン49に一端が係止され、引出部材45に折り曲げ形成されたばね掛止片50に他端が係止された取り付け状態をとり、引出部材45(即ち、硬貨識別センサ23)を固定フレーム10側に引き込む方向(図10及び図11の矢印E1方向)に常時付勢する。なお、第3付勢ばね48が付勢手段に相当する。
【0043】
図12〜図15に示すように、引出部材45において可動側ローラ群7側の端部には、引出部材45を折り曲げ加工することにより掛止部51が形成されている。この掛止部51は、引出部材45を引き出す際に用いる部位であって、引出部材45の移動方向に対して垂直方向に立設されている。一方、可動フレーム11の内壁面には、金属製の断面L字形状を成す延出片52が固着されている。延出片52において引出部材45の掛止部51と対応する位置には、引出部材45の掛止部51に対して引っ掛かり可能な掛止突部53が突設されている。
【0044】
可動側ローラ群7が近接位置から離間位置にスライド移動する際、掛止突部53が引出部材45の掛止部51に引っ掛かって引出部材45を第3付勢ばね48の付勢力に抗して引き出すことから、引出部材45の移動に伴い硬貨識別センサ23が可動側ローラ群7側に平面回動し、硬貨識別センサ23がオフセット位置(図11、図13及び図15に示す状態)に位置する。一方、可動側ローラ群7が離間位置から近接位置にスライド移動する際、掛止突部53による掛止部51への引っ掛かりが解消され、第3付勢ばね48の付勢力で引出部材45が固定フレーム10側に移動することにより硬貨識別センサ23が固定フレーム10側に平面回動し、硬貨識別センサ23が初期状態である通常位置(図10、図12及び図14に示す状態)に復帰する。
【0045】
次に、本例の券硬貨分離装置5の作用を説明する。
運賃箱1において運賃投入口3に硬貨2及び整理券4が投入されたとき、詰まり検出センサ29で硬貨詰まり(整理券詰まりも含む)が検出されると、近接位置に位置する可動側ローラ群7が、固定側ローラ群6に対して離間する方向にスライド移動を開始して離間位置に位置する。このとき、固定側ローラ群6と可動側ローラ群7との間の間隔が広くなることから、ローラ間等に詰まっていた硬貨2が下方に落下し、硬貨詰まりが解消されることになる。詰まり解消後の硬貨2は、硬貨落下位置にもよるが硬貨識別センサ23の検出スリット27,28を順次通過し、硬貨識別センサ23で硬貨種類が識別される。
【0046】
また、可動側ローラ群7が近接位置からスライド移動して離間位置に位置する際、可動フレーム11に設けられた掛止突部53が引出部材45の掛止部51に引っ掛かって、引出部材45を可動側ローラ群7側にスライド移動させる。これにより、硬貨識別センサ23が第3付勢ばね48の付勢力に抗して第2回動支持ピン44を支点に図10及び図11の矢印E2方向に平面回動し、硬貨識別センサ23がオフセット位置(図11、図13及び図15に示す状態)をとる。硬貨識別センサ23がこのオフセット位置をとる過程においては、硬貨識別センサ23がその平面回動方向に強く揺れることになる。
【0047】
ところで、場合によっては、送りローラ18,19から硬貨識別センサ23に搬送された硬貨2が、若干傾いて検出スリット27に侵入することがあり、このような状況下においては、例えば図5に示すように硬貨2が検出スリット27に詰まってしまう状態となることも考えられる。硬貨2が検出スリット27に詰まってしまうと、詰まった後に搬送されてくる硬貨2が検出スリット27を通過できなくなり、このことも硬貨詰まりの原因となる。
【0048】
しかし、本例においては、可動側ローラ群7が離間位置に移動する際、硬貨識別センサ23を平面回動させてその平面方向に強く揺らしている。このため、検出スリット27に詰まった硬貨2は、硬貨識別センサ23が強く揺らされることによって検出スリット27から飛び出す動きをとることになり、検出スリット27に今まで詰まっていた硬貨2は検出スリット27から離脱する。これにより、仮に検出スリット27に硬貨2が詰まっても、この硬貨詰まり状態が解消される。
【0049】
また、可動側ローラ群7が離間位置に移動する際、可動側ローラ群7に設けられた押込部42で可動部材32をその当接壁41で押し込む状態が解消されることから、硬貨識別センサ23が平面回動するのと同時に、可動部材32が第1付勢ばね39の付勢力によって図10及び図11の矢印D1方向に平面回動し、可動部材32が開放位置(図11、図13及び図15に示す状態)に位置する動きをとる。このとき、硬貨識別センサ23の上面(即ち、傾斜面)23aをその下方位置で閉じていた支持壁38がセンサ幅方向にずれた開放状態となり、硬貨識別センサ23の上面23aがその下方で開口した状態となる。
【0050】
ところで、可動側ローラ群7を離間位置に位置させた際、詰まり硬貨を下方に落下させるが、場合によっては詰まり解消後の落下硬貨が検出スリット27に対してずれて落下したり、或いは多数の硬貨2がローラ間に詰まっていて、一つ前の硬貨2が検出スリット27を通過している際に次の硬貨2が検出スリット27に至って通過硬貨に弾かれたりするなどして、硬貨2が検出スリット27を正規に通過しないことも考えられる。このように、検出スリット27を通過しなかった硬貨2は、図5に示すように硬貨識別センサ23の上面23aに載った状態となってしまうことがあり、この場合においては、硬貨識別センサ23の上面23aに載った硬貨2によって検出スリット27が塞がれることも考えられ、ただ単に可動側ローラ群7を可動式にして固定側ローラ群6に対して離間させるだけでは、硬貨詰まりは解消されないことになる。
【0051】
しかし、本例においては、可動側ローラ群7が離間位置に位置する際、この位置移動とともに可動部材32を回動させることにより、傾斜する硬貨識別センサ23の上面(即ち、傾斜面)23aの周囲においてその下部の硬貨受け壁として働く支持壁38を硬貨識別センサ23から離間させて、硬貨識別センサ23の上面23aをその下部において開放する。これにより、硬貨識別センサ23の上面23aに載った硬貨2や、硬貨識別センサ23自体を平面回動させて検出スリット27から離脱させた詰まり硬貨が、硬貨識別センサ23の上面23aを滑り落ちてセンサ下方に落下し、センサ上面に硬貨2の載った状態が解消される。
【0052】
また、可動側ローラ群7が離間位置に位置して暫くすると、続いて可動側ローラ群7は近接位置に復帰すべく、固定側ローラ群6に近づく方向にスライド移動を開始する。このとき、引出部材45が第3付勢ばね48の付勢力により固定フレーム10側に引っ張られることから、硬貨識別センサ23が第3付勢ばね48の付勢力で第2回動支持ピン44を支点に図10及び図11の矢印E1方向に平面回動し、可動側ローラ群7が近接位置に位置すると硬貨識別センサ23が通常位置(図10、図12及び図14に示す状態)に復帰する。
【0053】
可動側ローラ群7が離間位置から近接位置に復帰する際は、可動側ローラ群7のスライド移動に伴って可動フレーム11の押込部42が当接壁41を徐々に押し込んでいく動作をとる。このとき、硬貨識別センサ23が戻り側に平面回動するのと同時に、押込部42による押し込み動作により可動部材32が第1付勢ばね39の付勢力に抗して図10及び図11の矢印D2方向に平面回動し、可動側ローラ群7が近接位置に位置すると可動部材32が規制位置(図10、図12及び図14に示す状態)に復帰する。このとき、傾斜する硬貨識別センサ23の上面23aは、その下部が支持壁38によって閉じられた状態となる。
【0054】
従って、本例の構成を採用すれば、硬貨識別センサ23の検出スリット27に硬貨2が詰まったとしても、可動側ローラ群7が近接位置から離間位置に位置する際に硬貨識別センサ23を平面回動させて強く揺らすことにより、検出スリット27に詰まった硬貨2を検出スリット27から離脱させてセンサ下方に落下させることが可能となる。従って、検出スリット27が詰まり硬貨で塞がれてしまう状況が生じ難くなり、硬貨通過経路上における硬貨詰まりをより確実に解消することが可能となる。
【0055】
また、仮に硬貨識別センサ23の上面23aに硬貨2が載った状態になったとしても、本例の構成においては可動側ローラ群7の離間位置への移動に伴い、可動部材32の回動動作により支持壁38を開状態にするので、傾斜面をとるセンサ上面に載った硬貨2がその開放位置からセンサ下方に落下することから、硬貨識別センサ23の上面23aに硬貨2が載ることを防止することが可能となる。このため、硬貨詰まりを解消すべく可動側ローラ群7を離間位置に位置させた際に、硬貨識別センサ23の検出スリット27がその載置硬貨で塞がれるような状況が生じ難くなり、このことも正確な硬貨識別を行うにあたって効果が高い。
【0056】
ところで、硬貨識別センサ23の上面23aに載った硬貨2を下方に落下させるに際し、可動側ローラ群7の離間位置への移動に連動して例えば硬貨識別センサ23自体を水平方向(水面方向)に対して所定角度だけ傾かせる構造を用いることも考えられる。しかし、この構造を用いると、硬貨識別センサ23を傾斜させ得る各種部品群が必要となることから、機構が大型化する懸念が生じる。しかし、本例の構造を採用すれば、可動部材32を設けてこれを平面回動させることで支持壁38を開状態にすることにより、硬貨識別センサ23に載った硬貨2を下方に落下させるので、機構サイズが小さく済み、券硬貨分離装置5の小型化にも効果がある。なお、硬貨識別センサ23の上面23aを滑り落ちた硬貨2は、例えば運賃箱1の硬貨回収箱(図示略)などに一時的に収容される。
【0057】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)可動側ローラ群7が離間位置にスライド移動する際、可動側ローラ群7で引出部材45を引き出して硬貨識別センサ23を図10及び図11に示す矢印E2方向に平面回動させることで平面方向に強く揺らしている。従って、仮に硬貨識別センサ23の検出スリット27に硬貨2が詰まっていたとしても、硬貨識別センサ23が強く揺らされることで、この詰まり硬貨が検出スリット27から飛び出すことになる。よって、検出スリット27に詰まった硬貨2を検出スリット27から離脱させることが可能となり、硬貨識別センサ23の検出スリット27に硬貨2が詰まらないようにすることができる。
【0058】
(2)硬貨通過経路上に硬貨2が詰まった場合、可動側ローラ群7が近接位置から離間位置にスライド移動するが、可動側ローラ群7が離間位置にしたときは、固定側ローラ群6と可動側ローラ群7との間の間隔が広くなることに伴い、硬貨識別センサ23を平面回動させる際のその回動スペースを広くとることが可能となる。従って、硬貨識別センサ23を平面回動させるに際し、硬貨識別センサ23をできるだけ多くの回動量で平面回動させることができ、硬貨識別センサ23の検出スリット27に詰まった硬貨2をより確実に検出スリット27から離脱させることができる。
【0059】
(3)硬貨識別センサ23を平面回動させるに際し、この回動運動が可動側ローラ群7のスライド移動に連動するようにした。このため、可動側ローラ群7がスライド移動する際の作動力を用いて硬貨識別センサ23を平面回動させることが可能となり、硬貨識別センサ23を平面回動させるための専用モータ等の特別な駆動源を用意する必要がない。また、可動側ローラ群7のスライド移動と、硬貨識別センサ23の回動動作とが同時に行われることにもなり、これら動作を別々に行う場合に比較して合計処理時間の短時間化を図ることもできる。なお、これらは支持壁38の開閉構造についても同様に言える。
【0060】
(4)硬貨識別センサ23を平面回動させるに際しては、引出部材45、第3付勢ばね48及び掛止突部53等の部材を用いた機械的構造でセンサ平面回動を成し得るので、例えばモータ等の電気的構造を用いた場合に比較して簡素な構造で硬貨識別センサ23を平面回動させることができる。なお、これは支持壁38の開閉構造についても同様に言える。
【0061】
(5)可動側ローラ群7が離間位置にスライド移動する際、可動側ローラ群7で可動部材32を図10及び図11の矢印D1方向に回動させることにより支持壁38を硬貨識別センサ23の上面23aから離間させ、これにより硬貨識別センサ23の上面23a(即ち、傾斜面)の下部を開放する。従って、仮に硬貨識別センサ23の上面23aの硬貨2が載っていたとしても、この硬貨2は硬貨識別センサ23の上面23aから下方に滑り落ちることになるので、硬貨識別センサ23の上面23aに硬貨2が載ることを防ぐことができる。また、硬貨識別センサ23の上面23aに載った硬貨2を下方に落下させる構造を採用しても、例えばセンサ自体を傾斜させる構造に比べて小型のもので済むことから、券硬貨分離装置5の小型化も満たすことができる。
【0062】
(6)硬貨通過経路上に硬貨2が詰まった際には、可動側ローラ群7が近接位置から離間位置にスライド移動するが、硬貨詰まり状態においては複数枚の硬貨2が硬貨通過経路上に蓄積された状態となるため、可動側ローラ群7が離間位置にスライド移動した際は、それまでに蓄積された硬貨2が一度に硬貨識別センサ23に至ることになる。このとき、全ての硬貨2が硬貨識別センサ23の検出スリット27を通ることができるとは限らず、スリット通過できなかった硬貨2が硬貨識別センサ23の上面23aに載り易いという現状がある。そこで、本例においては可動側ローラ群7が近接位置から離間位置に位置する際に、可動部材32を回動させて支持壁38を開放位置に位置させるようにしたので、硬貨識別センサ23の上面23aに硬貨2が乗り得る可能性の高い状況下で硬貨識別センサ23の上面23aを開放することから、硬貨2が硬貨識別センサ23の上面23aに載ることを防ぐ対策をより効果的に実施することができる。
【0063】
(7)支持壁38の開閉動作と、硬貨識別センサ23の回動動作とを同時に行うので、これら動作を別々で行う場合に比較して合計処理時間を短時間化することができる。
(8)硬貨識別センサ23を平面回動させる場合、硬貨識別センサ23の回動支点を硬貨識別センサ23の配線の通る側にすれば、センサ配線が平面回動に影響を及ぼし難い。
【0064】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図16及び図17に従って説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態と比較して硬貨詰まり防止機構K2の構造が異なるのみであるので、同一部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0065】
図16及び図17に示すように、支持フレーム24の側部には、センサ長さ方向に沿って延びる支持軸61が設けられている。この支持軸61には、硬貨識別センサ23がその側部において支持軸61の軸心Lc回りに沿って軸心回動可能に取り付けられている。即ち、硬貨識別センサ23は、その側端部に位置する支持軸61の軸心Lcを支点にその軸心回り(図16の矢印F方向)に沿って軸心回動可能な状態で支持フレーム24に連結されている。
【0066】
また、可動側ローラ群7の可動フレーム11には、硬貨識別センサ23側に延出した突出片62が形成されている。突出片62の先端位置には、支持軸61と同一方向に飛び出すとともに硬貨識別センサ23の上面23aに当接した押込突部63が突設されている。押込突部63は、可動側ローラ群7が近接位置に位置する際、支持軸61よりも奥行き側(固定フレーム10側)に位置して硬貨識別センサ23を上方に起き上がらせ、可動側ローラ群7が離間位置に位置する際、支持軸61よりも手前側(可動フレーム11側)に位置して硬貨識別センサ23を自重で下方に軸心回動させる。
【0067】
可動側ローラ群7が近接位置から離間位置に移動する際、離間位置への移動に伴って押込突部63がセンサ上面に沿って支持フレーム24から離間するように動く。このとき、押込突部63が支持軸61よりも手前側に位置することになるため、硬貨識別センサ23は押込突部63による位置規制が解かれることになり、自重によって先端が下方に向かう方向(図16の矢印F1方向)に軸心回動し、図17に示すオフセット位置に硬貨識別センサ23を傾斜させる。これにより、硬貨識別センサ23が支持軸61の軸心Lc回りに回動して強く揺らされることになり、仮に検出スリット27に硬貨2が詰まっていた場合、この詰まり硬貨が検出スリット27から外方に飛び出ることになる。
【0068】
一方、可動側ローラ群7が離間位置から近接位置に復帰する際、近接位置への移動に伴って押込突部63がセンサ上面に沿って奥行き側に移動する。このとき、押込突部63が支持軸61よりも奥行き側に位置すると、押込突部63により硬貨識別センサ23に起き上がりの力が付与されることから、硬貨識別センサ23はその先端が上方に向かう方向(図16の矢印F2方向)に軸心回動し、傾斜する前の図16に示す通常位置に復帰する。従って、硬貨識別センサ23を軸回動させて強く揺らすことによっても、検出スリット27に詰まった硬貨2を外方に離脱させることが可能となる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図18及び図19に従って説明する。なお、本実施形態も、第1及び第2実施形態に比較して硬貨詰まり防止機構K2の構造が異なるのみであるので、同一部分には同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分ついてのみ詳述する。
【0070】
図18及び図19に示すように、支持フレーム24の上部には、硬貨識別センサ23の上面23aに沿う上壁24bがほぼ一面に亘って形成されている。硬貨識別センサ23は、支持フレーム24の上壁24b及び底壁24aに囲まれる状態で支持フレーム24に取り付け固定されている。上壁24bのほぼ中央位置には、硬貨識別センサ23の検出スリット27に繋がる通し孔71が貫設され、送りローラ18,19から硬貨2が搬送されると、その硬貨2は通し孔71を通じて検出スリット27に至る。
【0071】
上壁24bにおいて可動フレーム11側の端部には、略扇形状で金属製の押出片72が第3回動支持ピン73で支持フレーム24に連結されることにより、この第3回動支持ピン73を支点に支持フレーム24に対して平面回動可能に取り付けられている。即ち、押出片72は、第3回動支持ピン73の軸心Ldを支点として支持フレーム24の上壁24b(即ち、硬貨識別センサ23の上面23a)に沿う回動方向(図18の矢印G方向)に沿って平面回動可能に支持フレーム24に取り付けられている。
【0072】
押出片72において中央側寄りの位置には、押出片72の平面回動方向に沿って延びる第3長孔74が貫設されている。支持フレーム24において第3長孔74と対応する位置には、頭部が大径の回動制限ピン75が第3長孔74にその軸部を通した状態で取り付け固定されている。押出片72が平面回動する際、回動制限ピン75が第3長孔74の端縁に当接することにより、その平面回動量が設定されている。
【0073】
押出片72の先端には、押出片72が平面回動する際に通し孔71(即ち、検出スリット27)の上面を通過する押出突部76が延設されている。支持フレーム24と押出片72との間には、例えばコイルスプリング等から成る第4付勢ばね77が介装されている。第4付勢ばね77は、押出突部76が通し孔71を通過して可動フレーム11側に向かう回動方向(図18の矢印G1方向)に押出片72を常時付勢し、押出片72の基端に折り曲げ形成されたばね係止片72aに一端が係止され、支持フレーム24においてその上壁24bの角部に折り曲げ形成されたばね掛止片24cに係止されている。
【0074】
可動フレーム11には、固定フレーム10側に延出する突設片78が形成されている。この突設片78は、可動側ローラ群7が近接位置に位置する際に押出片72を押し込み可能であって、可動側ローラ群7が近接位置に位置する際に押出片72を押し込むことにより、第4付勢ばね77の付勢力に抗して押出片72を、第4付勢ばね77の付勢力による回動前の通常位置に位置させる。
【0075】
可動側ローラ群7が近接位置から離間位置に移動する際、可動側ローラ群7の移動に伴い突設片78が引き込み、突設片78による押出片72の位置規制が解除される。これにより、第4付勢ばね77の付勢力によって押出突部76が可動フレーム11に向かう方向(図18の矢印G1方向)に沿って押出片72が平面回動する。このとき、押出突部76が通し孔71の上面を通過し、押出片72は図19に示すオフセット位置に至る。このため、例えば検出スリット27に硬貨2が詰まっていたとしても、平面回動する押出片72の押出突部76によって詰まり硬貨が検出スリット27から弾き出されることになる。
【0076】
一方、可動側ローラ群7が離間位置から近接位置に復帰する際、近接位置への移動に伴って突設片78がセンサ上面に沿って奥行き側に移動する。このとき、突設片78が第4付勢ばね77の付勢力に抗して押出片72を押し込むことにより、押出片72が先程とは反対側の方向(図18の矢印G2方向)に平面回動し、詰まり硬貨を弾き出す前の図18に示す通常位置に復帰する。従って、押出片72を平面回動させてその先端の押出突部76で詰まり硬貨を弾き出すことによっても、検出スリット27に詰まった硬貨2を外方に離脱させることが可能となる。
【0077】
なお、実施形態はこれまでの構成に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・ 硬貨識別センサ23の平面回動動作は、必ずしも可動側ローラ群7が離間位置にスライド移動する際(スライド移動途中)において、そのスライド移動と同時に行われることに限定されない。例えば、引出部材45を作動させ得るモータを券硬貨分離装置5に搭載し、可動側ローラ群7の移動開始前や移動完了後に、このモータの駆動力で引出部材45を作動させることにより、硬貨識別センサ23を平面回動させてもよい。なお、これは支持壁38の開閉構造についても同様に言える。
【0078】
・ 硬貨識別センサ23の平面回動動作は、必ずしも可動側ローラ群7のスライド移動に連動することに限定されない。例えば、引出部材45を移動させ得るモータを券硬貨分離装置5に搭載し、このモータの駆動力を用いることにより、可動側ローラ群7のスライド移動に同期させて硬貨識別センサ23を平面回動させてもよい。なお、これは支持壁38の開閉構造についても同様に言える。
【0079】
・ 支持壁38を開閉させる際の可動部材32の動きは、第1回動支持ピン33を支点とした平面回動運動に限定されず、例えば軸心回りの回転運動などの他の動きをする可動部材を用いて支持壁38を開閉させてもよい。
【0080】
・ 支持フレーム24と可動部材32と間に設けた付勢手段は、ばね材から成る第1付勢ばね39に限定されず、これは例えばゴム等の他の弾性体を採用してもよい。なお、このことは、第2付勢ばね43、第3付勢ばね48及び第4付勢ばね77についても同様に言える。
【0081】
・ 硬貨識別センサ23が平面回動するに際しては、可動側ローラ群7が離間位置に位置するときに引出部材45が引き出されることにより、硬貨識別センサ23が第3付勢ばね48の付勢力に抗してオフセット位置に位置し、可動側ローラ群7が近接位置に位置するときに第3付勢ばね48の付勢力で元の通常位置に戻る関係に限定されない。即ち、可動部材32と同様の構造を用い、可動側ローラ群7が離間位置に位置する際には、ばね材の付勢力でオフセット位置に位置し、可動側ローラ群7が近接位置に戻る際には、その可動側ローラ群7の一部位に押し込まれて元の通常位置に復帰する構造でもよい。なお、これは支持壁38の開閉構造についても同様に言える。
【0082】
・ 硬貨識別センサ23の平面回動動作は、詰まり検出センサ29で硬貨詰まりを検出した際のローラ移動動作の一連処理として行われることに限定されない。即ち、詰まり検出センサ29で硬貨詰まりを検出して可動側ローラ群7を離間位置に移動させる動作とは独立し、例えば定期的に可動側ローラ群7を離間方向にスライド移動させることにより、硬貨識別センサ23の検出スリット27に硬貨2が詰まることを防止する動作を実施してもよい。なお、これは支持壁38の開閉構造についても同様に言える。
【0083】
・ 支持壁38の開閉動作と、硬貨識別センサ23の平面回動動作は、必ずしも同時に行われることに限定されず、これら動作が別々に実施されてもよい。
・ 券硬貨分離装置5で分離する券類は、車両においてその乗車位置を証明する整理券4に限定されず、これは例えば、債券、証券、食券、馬券、郵券等の種々の券に具体化してもよい。
【0084】
・ 券硬貨分離装置5には、必ずしも硬貨排除機構K1が搭載される必要はなく、これを省略してもよい。この場合、券硬貨分離装置5に硬貨詰まり防止機構K2のみ搭載された場合であっても、硬貨詰まり防止効果を満たすことは可能である。
【0085】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0086】
(1)券硬貨投入口から投入された券及び硬貨を一対の分離ローラで券のみを巻き込み、前記硬貨については前記分離ローラ上を滑落させて硬貨識別部材に導くことにより前記券硬貨を分離し、当該硬貨の種類を前記硬貨識別部材で識別する券硬貨分離装置において、前記硬貨識別部材に設けた硬貨通過用のスリットに詰まった前記硬貨を当該スリットから離脱させて硬貨詰まりを解消する硬貨詰まり防止機構を備えた。この構成によれば、例えば仮に硬貨識別部材の硬貨通路となるスリットに硬貨が詰まった状態となっても、その詰まり硬貨は硬貨詰まり防止機構によってスリットから離脱するので、硬貨識別部材のスリットに硬貨が詰まらないようにすることが可能となる。
【0087】
(2)少なくとも前記分離ローラを含む一対の可動側ローラ群及び固定側ローラ群を近接位置に位置させることにより、前記分離ローラ間の隙間を券のみを通過させることで券硬貨を分離し、詰まり検出手段で券硬貨詰まりを検出した際に、前記可動側ローラ群を前記固定側ローラ群に対して相対移動させて離間位置に位置させることにより、ローラ間の間隔を広くして前記券硬貨詰まりを解消する可動機構を備え、前記硬貨詰まり防止機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置するとき、前記硬貨識別部材に対して硬貨詰まり解消動作を行い、前記硬貨識別部材の前記スリットにおける前記硬貨詰まりを解消する。この構成によれば、可動側ローラ群が離間位置に位置すれば、可動側ローラ群が移動したその移動量の分だけ、硬貨詰まり防止機構を作動させる際に必要な動作スペースを広くとることが可能となる。従って、硬貨詰まり防止機構を作動させるにあたって、これを比較的広いスペースで作動させることが可能となり、硬貨識別部材のスリットに詰まった硬貨をより確実にスリットから抜け出させることが可能となる。
【0088】
(3)前記硬貨詰まり防止機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置する際、その位置移動に連動して硬貨詰まり解消動作を開始して前記硬貨詰まりを解消し、前記可動側ローラ群が前記近接位置に戻る際、その位置移動に連動して硬貨詰まり解消動作前の初期状態に復帰する連動機構である。この構成によれば、可動側ローラ群が近接位置から離間位置、若しくは離間位置から近接位置に戻る際に、その動きに連動して硬貨詰まり解消動作を行う連動機構を設けたので、可動側ローラ群の位置移動動作を利用して硬貨詰まり解消動作も行うことが可能となる。従って、硬貨詰まり防止機構(連動機構)が可動側ローラ群の位置移動を利用した機械的構造となるので、例えば硬貨詰まり解消動作の駆動源として専用モータ等を用意する必要がなく、部品コスト抑制等に効果がある。また、例えばこれら動作を別々に行う場合に比較して、これら両動作を行う際に要する処理時間を短く済ますことも可能となる。
【0089】
(4)前記硬貨詰まり防止機構は、前記硬貨識別部材においてその硬貨識別位置を初期状態として当該硬貨識別部材に動きを付与することにより、前記スリットに詰まった前記硬貨を当該スリットから離脱させる。この構成によれば、初期状態にある硬貨識別部材が硬貨詰まり防止機構で動きが付与されると、例えば硬貨識別部材の硬貨通路となるスリットに硬貨が詰まった状態となっていても、その詰まり硬貨はスリットから外方に飛び出す動きをとる。このため、硬貨識別部材のスリットに詰まった硬貨をより確実にスリットから離脱させることが可能となり、これは硬貨詰まり解消に効果が高い。
【0090】
(5)前記硬貨詰まり防止機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に移動する際、前記可動側ローラ群に設けた掛止突部で、前記硬貨識別部材に取り付け固定された引出部材を引き出すことにより、前記硬貨識別部材を相対移動可能に支持するフレームと前記引出部材との間に設けた付勢手段の付勢力に抗し、前記硬貨識別部材を前記初期状態に対してずれた位置に移動させて前記硬貨識別部材に前記動きを付与し、前記可動側ローラ群が前記近接位置に復帰する際、前記付勢手段の付勢力により、前記硬貨識別部材を元の位置に戻す引出式連動機構である。この構成によれば、可動側ローラ群が近接位置から離間位置に移動する際のその動きで可動部材を回動させることにより前記受け部を硬貨識別部材から離間させ、可動側ローラ群が離間位置から近接位置に戻る際は、付勢手段の付勢力で可動部材を先程とは反対側の回動向きに回動させることにより受け部を元の位置に復帰させるという機械的構造を用いた簡素な構成で、受け部を可動側ローラ群の移動に連動させて作動させることが可能となる。
【0091】
(6)前記技術的思想(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記硬貨詰まり防止機構は、前記硬貨識別部材をその初期状態から平面方向に引き出すことにより、当該硬貨識別部材に動きを付与する引出機構である。この場合、比較的簡単な構造で硬貨識別部材を強く揺らすことが可能となり、硬貨識別部材のスリットに硬貨が詰まった際に、この詰まり硬貨をより確実にスリットから離脱させることが可能となる。
【0092】
(7)前記技術的思想(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記硬貨詰まり防止機構は、前記硬貨識別部材を軸心回動させることにより、当該硬貨識別部材に動きを付与する軸心回動機構である。この場合、硬貨識別部材自体を軸心回動させるという簡素な構造で、可動側ローラ群が固定側ローラ群に対して離間する際に硬貨識別部材に動きを付与することが可能となる。
【0093】
(8)前記技術的思想(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記硬貨詰まり防止機構は、前記硬貨識別部材の表面に沿って相対移動可能な押出部材により、前記硬貨識別部材に詰まった硬貨を外方へ弾き出す弾き出し機構である。この場合、強い力で押出部材により詰まり硬貨を弾き出すようにすれば、詰まり硬貨をより確実にスリットから離脱させることが可能となる。
【0094】
(9)前記技術的思想(1)〜(8)のいずれかにおいて、前記分離ローラと前記硬貨識別部材との間に、前記硬貨が前記硬貨識別部材に導入される際に当該導入を補助する受け部を有し、前記硬貨識別部材の表面に前記硬貨が載った場合、当該受け部を前記硬貨識別部材から離間させて当該硬貨識別部材の前記表面を開放することにより、当該表面に載った前記硬貨を外方側に離脱させる硬貨排除機構を備えた。
【0095】
(10)前記技術的思想(9)において、前記硬貨排除機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置するとき、前記受け部を前記硬貨識別部材から離間して前記表面を開放する。
【0096】
(11)前記技術的思想(10)において、前記硬貨排除機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置するとき、その位置移動に連動して前記受け部を前記硬貨識別部材から離間させるとともに、前記可動側ローラ群が前記近接位置に戻るとき、その位置移動に連動して前記受け部を前記導入を補助し得る位置に復帰させる第2連動機構である。
【0097】
(12)運賃投入口から投入された券及び硬貨を取り込み、これら券硬貨を分離して当該分離後の前記硬貨の種類を識別して当該硬貨を計数し、前記券についても当該券種類を読み取る運賃箱において、前記技術的思想(1)〜(11)のうちいずれか一項に記載の券硬貨分離装置を備えた運賃箱。この場合、硬貨識別部材で硬貨識別を行う際の硬貨通過経路であるスリットに硬貨が詰まり難い券硬貨分離装置を搭載した運賃箱を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1実施形態における運賃箱の斜視図。
【図2】運賃箱に搭載される券硬貨分離装置の構成を示す平面図。
【図3】券硬貨分離装置の構成を示す縦断面図。
【図4】可動側ローラ群が近接位置に位置した際の搬送系ローラ部分の断面図。
【図5】可動側ローラ群が離間位置に位置した際の搬送系ローラ部分の断面図。
【図6】可動側ローラ群が離間位置に位置した際の券硬貨分離装置の構成を示す平面図。
【図7】硬貨識別センサ、硬貨排除機構及び硬貨詰まり防止機構を含んだ分解斜視図。
【図8】硬貨識別センサとその周りの部品群を上面から見た斜視図。
【図9】硬貨識別センサとその周りの部品群を下方から見た斜視図。
【図10】可動側ローラ群が近接位置の際の硬貨識別センサを上面から見た斜視図。
【図11】可動側ローラ群が離間位置の際の硬貨識別センサを上面から見た斜視図。
【図12】可動側ローラ群が近接位置に位置する際の券硬貨分離装置の正面図。
【図13】可動側ローラ群が離間位置に位置する際の券硬貨分離装置の正面図。
【図14】可動側ローラ群が近接位置に位置する際の券硬貨分離装置の背面図。
【図15】可動側ローラ群が離間位置に位置する際の券硬貨分離装置の背面図。
【図16】第2実施形態で硬貨識別センサとその回りの部品群を上面から見た斜視図。
【図17】可動側ローラ群が離間位置の際の硬貨識別センサを上面から見た斜視図。
【図18】第3実施形態で硬貨識別センサとその回りの部品群を上面から見た斜視図。
【図19】可動側ローラ群が離間位置の際の硬貨識別センサを上面から見た斜視図。
【図20】従来における券硬貨分離装置の概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0099】
2…硬貨、3…券硬貨投入口としての運賃投入口、4…券としての整理券、5…券硬貨分離装置、6…固定側ローラ群、7…可動側ローラ群、8,9…分離ローラ、12…可動機構としての回転モータ、23…硬貨識別部材としての硬貨識別センサ、24…フレームとしての支持フレーム、27…スリットとしての検出スリット、29…詰まり検出手段としての詰まり検出センサ、45…引出部材、48…付勢手段としての第3付勢ばね、53…掛止突部、K1…硬貨排除機構、K2…硬貨詰まり防止機構(連動機構、引出式連動機構)、Wb…間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
券硬貨投入口から投入された券及び硬貨を一対の分離ローラで券のみを巻き込み、前記硬貨については前記分離ローラ上を滑落させて硬貨識別部材に導くことにより前記券硬貨を分離し、当該硬貨の種類を前記硬貨識別部材で識別する券硬貨分離装置において、
前記硬貨識別部材は、厚さ方向に前記硬貨が通過可能なスリットを備えた扁平薄箱形状を有し、
前記硬貨識別部材を平面方向に回動させて前記スリットに詰まった前記硬貨を当該スリットから離脱させて硬貨詰まりを解消する硬貨詰まり防止機構を備えたことを特徴とする券硬貨分離装置。
【請求項2】
少なくとも前記分離ローラを含む一対の可動側ローラ群及び固定側ローラ群を近接位置に位置させることにより、前記分離ローラ間の隙間を券のみを通過させることで券硬貨を分離し、詰まり検出手段で券硬貨詰まりを検出した際に、前記可動側ローラ群を前記固定側ローラ群に対して相対移動させて離間位置に位置させることにより、ローラ間の間隔を広くして前記券硬貨詰まりを解消する可動機構を備え、
前記硬貨詰まり防止機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置するとき、前記硬貨識別部材を平面回動させて、前記硬貨識別部材の前記スリットにおける前記硬貨詰まりを解消することを特徴とする請求項1に記載の券硬貨分離装置。
【請求項3】
前記硬貨詰まり防止機構は、前記可動側ローラ群が前記離間位置に位置する際、その位置移動に連動して前記硬貨識別部材の平面回動を開始して前記硬貨詰まりを解消し、前記可動側ローラ群が前記近接位置に戻る際、その位置移動に連動して平面回動開始前の初期状態に復帰する連動機構であることを特徴とする請求項2に記載の券硬貨分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−108936(P2012−108936A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17518(P2012−17518)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【分割の表示】特願2006−262947(P2006−262947)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000144544)レシップホールディングス株式会社 (179)
【Fターム(参考)】