説明

刺繍枠の装着装置

【課題】テーブル上において刺繍枠1を急速に動かす場合でも、磁石68に吸着されている接合部材22の背面は引止片75で挟まれ、安定した吸着状態を維持し、刺繍枠1が不測の動きをすることはなく、予定した美しい良品質の刺繍模様が期待できるようにする。
【解決手段】テーブルの上をXY方向に作動させる基枠Bに対し着脱自在に装着する刺繍枠1の連結部材5には、一面に、磁石68の表面68aに平行する当接面22bを備え、他面には引寄部材73の引止片75を係合させる為の係合面22eを備える板状の接合部材22を備えさせ、一方基枠Bには、弾力性を有する板状の押下片74と、押下片74の先部から下方に延びる状態に形成される板状の引止片75を備えさせ、磁石68の表面68aに接合部材22の一面を吸着させた状態では、その他面に上記引止片75を係合させる状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍ミシンの基枠に対して刺繍枠を装着させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、刺繍ミシンの基枠に対して刺繍枠を装着させるための装置は広く知られている。例えばこの種の刺繍枠の装着装置としては特許文献1に示されるものがある。
特許文献1における図3、即ち、本件の図面における図15において、基枠Bは、刺繍ミシン(1又は複数の多頭刺繍ミシン)のテーブルTの面上においてX−Y軸方向に駆動自在に載置されている。この基枠は、各ミシンの針落ち位置に対して、図示されていない駆動モータによって所定のタイミングでX軸,Y軸方向に移動される。
基枠Bには、刺繍枠1の一端に設けられる連結部材5を連結させる為の受止部63を備える本体部64が1又はほぼ等間隔で複数箇所に設けられている。
被刺繍布を保持した状態で上記テーブル面上をX−Y軸方向に移動させる為の刺繍枠1としては、上記特許文献1の図1、図6に周知のシンプルな刺繍枠が紹介されている。刺繍枠1としては、例えばリング状の外枠とリング状の内枠とを備えており、外枠の内周と内枠の外周との間に被刺繍布の端部を挟み込むことにより、被刺繍布を内枠の下側に展開した状態で保持するものである。刺繍枠1の一端には、例えば外枠の一端には、上記受止部63に連結させる為の連結部材5を備えさせ、上記受止部63における連結部材5に対向させる手前側面には磁石68を備えさせ、一方、上記受止部63の手前側面における磁石68の表面68aに対して、刺繍枠1の一端に備えさせた連結部材5の対向面に備えさせる接合部材22を磁気力を利用して吸着させることによって刺繍枠1の一端を上記受止部63に対して片持状態で着脱自在に連結させるようにしてある。
上記のように刺繍枠1を基枠Bに対して片持ち状に装着する方式のものについてはワンタッチによる着脱性を向上させる利点がある為、磁力を利用したものが多い。なお図において、65は凹溝、66は溝底、68bは磁石における磁極、Dは連結部材5と受止部63で構成される連結機構を夫々示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登2525492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように刺繍枠1の一部に連結部材5を備えさせ、これを基枠Bの受止部63に対して、磁石を利用して片持ち状に装着する方式のものは、ワンタッチ装着が可能な為作業効率は向上するが、近来、基枠Bのテーブル面上でのX−Y軸方向への移動速度が急激に向上すること、或いは、刺繍枠1の大型化、さらには、刺繍枠1に装着される被刺繍布の重量化等、多彩な理由によって、運転作業中、基枠Bから刺繍枠1が離反し、被刺繍布に誤った縫製が施される問題点がある。
そこで、別に装着具を付設して刺繍枠1を基枠Bに固く装着させることも考えられているが、刺繍枠1の着脱に時間がかかり、作業の能率を低下させる問題点がある。
【0005】
本件出願の目的は、基枠の受止部の磁石に対して刺繍枠を連結する場合、受止部に刺繍枠の連結部材を近づけて磁石に吸着させるだけでのワンタッチ操作で、両者の連結を可能にする刺繍枠の装着装置を提供しようとするものである。
他の目的は、刺繍枠に大きな慣性が加わる場合でも、磁石に吸着されている接合部材の背面には引止片があり、接合部材は磁石と、引止片で挟まれて安定した状態になるようにした刺繍枠の装着装置を提供しようとするものである。
他の目的及び利点は図面及びそれに関連した以下の説明により容易に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における刺繍枠の装着装置は、刺繍ミシンのテーブルTの面上においてX−Y軸方向に駆動させる基枠Bには、刺繍枠1の一端に設けられる連結部材5を連結させる為の受止部63を備えさせ、被刺繍布Sを保持した状態で上記テーブル面上をX−Y軸方向に移動させる為の刺繍枠1の一端には上記受止部63に連結させる為の連結部材5を備えさせ、上記受止部63における連結部材5に対向させる手前側面63aには磁石68を備えさせ、上記受止部63の側面における磁石68の表面68aに対して、刺繍枠1の一端に備えさせた連結部材5の対向面を吸着させることによって刺繍枠1の一端を上記受止部63に対して着脱自在に連結させるようにしてある刺繍枠の装着装置において、
上記連結部材5は、一面には、刺繍枠1を受止部63に連結してテーブル面上に載置した状態において上記磁石68の表面68aに平行する当接面22bを備え、他面には引寄部材73の引止片75を係合させる為の係合面22eを備える板状の接合部材22と、刺繍枠1の一部と上記接合部材22とを、板状の接合部材22における係合面22eの側に間隙G2が形成される状態で連結する持出部材23とを備え、一方、基枠Bの上記受止部63においては、弾力性を有する板状の押下片74と、押下片74の先部から下方に延びる状態に形成される板状の引止片75と、上記引止片75の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、下向きの斜面76aに向けて手前側から奥の磁石68の表面68aの方向に力を加えることによって引止片75の先部を浮上させるようにした板状の持上片76とを備えている引寄部材73を、上記引寄部材73における引止片75が上記磁石表面68aの手前側において、奥側に上記接合部材22が位置する間隙G4を残すような突出状態で位置し、かつ、その突出状態にある引止片75の弾力的な上下動を可能にする為に押下片74の元部74aの側を、受止部63に固着し、さらに、上記引止片75の下部75aと、その下部75aにおける下方の滑り面S3との間隙G3は、接合部材22が磁石68の表面68aに接した状態では後退できないように上記接合部材22の高さ寸法H1よりも短小に定めたものである。
【0007】
また好ましくは、刺繍ミシンのテーブルTの面上においてX−Y軸方向に駆動させる基枠Bには、刺繍枠1の一端に設けられる連結部材5を連結させる為の受止部63を備えさせ、被刺繍布S を保持した状態で上記テーブル面上をX−Y軸方向に移動させる為の刺繍枠1の一端には上記受止部63に連結させる為の連結部材5を備えさせ、上記受止部63における連結部材5に対向させる手前側面63aには磁石68を備えさせ、上記受止部63の側面における磁石68の表面68aに対して、刺繍枠1の一端に備えさせた連結部材5の対向面を吸着させることによって刺繍枠1の一端を上記受止部63に対して着脱自在に連結させるようにしてある刺繍枠の装着装置において、
上記連結部材5は、一面には、刺繍枠1を受止部63に連結してテーブル面上に載置した状態において上記磁石68の表面68aに平行する当接面22bを備え、他面には引寄部材73の引止片75を係合させる為の係合面22eを備える板状の接合部材22と、刺繍枠1の一部と上記接合部材22とを、板状の接合部材22における係合面22eの側に間隙G2が形成される状態で連結する持出部材23とを備え、さらに上記連結部材5には、上記接合部材22に並設する状態で、上記磁石68の表面68aに平行する当接面20bを備える板状の第2接合部材20と、第2接合部材20の上部から折曲げ状に刺繍枠1の方向に延びる受圧部材19と、刺繍枠1の一部と上記第2接合部材20とを連結する第2持出部材21とを備え、
一方、基枠Bの上記受止部63においては、弾力性を有する板状の押下片74と、押下片74の先部から下方に延びる状態に形成される板状の引止片75と、上記引止片75の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、下向きの斜面76aに向けて手前側から奥の磁石68の表面68aの方向に力を加えることによって引止片75の先部を浮上させるようにした板状の持上片76とを備えている引寄部材73を、上記引寄部材73における引止片75が上記磁石表面68aの手前側において、奥側に上記接合部材22が位置する間隙G4を残すような突出状態で位置し、かつ、その突出状態にある引止片75の弾力的な上下動を可能にする為に押下片74の元部74aの側を、受止部63に固着し、
さらに基枠Bの上記受止部63には、上記引寄部材73に並設する状態で、弾力性を有する板状の押え板79と、押え板79の先部から斜め下方に延びる状態に形成される板状の当付片80と、上記当付片80の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、手前側から奥の磁石68の表面68aの方向に力を加えることによって当付片80の下部を浮上させるようにした板状の案内片81とを備えている浮止部材78を、上記磁石68の表面68aに上記接合部材22の当接面22bが吸着された状態において上記受圧部材19を、上記浮止部材78における当付片80の下部で弾力的に下方に押圧可能に浮止部材78の元部79aを、受止部63に固着し、さらに、上記引止片75の下部75aと、その下部75aにおける下方の滑り面S3との間隙G3は、接合部材22が磁石68の表面68aに接した状態では後退できないように上記接合部材22の高さ寸法H1よりも短小に定めたものである。
【0008】
また好ましくは、上記基枠Bにおける受止部63の下部から、手前側に向けて幅広の張出片85を突設させ、その張出片85の突出長さL1は、前端部87の一部が刺繍枠1の一部と重合しうる長さに設定し、その重合部W1においては、対向する一方の面には横幅方向に向けて、相互に適当な間隔W2を隔てて複数の嵌合突部88を並設し、他方の面には、上記複数の嵌合突部88に対応する複数の嵌合凹部89を相対的に並設具備させ、これらの複数の嵌合突部88と複数の嵌合凹部89との位置関係は、上記磁石68の表面68aに上記接合部材22の当接面22bが吸着された状態において相互に掛り合うように設定したものであればよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、基枠Bの受止部63の磁石68に対して刺繍枠1を連結する場合、受止部63に刺繍枠の連結部5の接合部材22を近づけて磁石68に吸着させるだけでのワンタッチ操作で、両者の連結が行われる特長があり、刺繍ミシンの基枠Bに対する刺繍枠1の着脱が極めて短時間で行われる作業上の効果がある。
【0010】
さらに本発明にあっては、刺繍枠1が重い場合、或は刺繍枠1をX−Yに急速に動かす場合等、刺繍枠1に大きな慣性が加わる場合でも、磁石68に吸着されている接合部材22の背面、即ち、係合面22eには引止片75が係合しており、接合部材22は磁石68と、引止片75で挟まれて安定した状態になっていて接合部材22に衝撃が及んでも接合部材22と磁石68との吸着状態は強く維持される特長がある。従って、刺繍模様の縫製中において、刺繍枠1が不測の動きをすることはなく、予定した美しい良品質の刺繍模様が期待できる効果がある。
【0011】
さらに、受止部63の磁石68に対して刺繍枠1を連結する場合、磁石68の手前側には引止片75が垂下がっていて邪魔になるように思われるが、上記引止片75の下部75aの下方には、滑り面S3との間に間隙G3が形成してあると共に、引止片75の先部を浮上させるようにした持上片76を備えているので、受止部63の磁石68に対して刺繍枠1の連結部5を連結する場合は、単純に接合部材22を磁石68に近づける操作でもって、引止片75の下部75aは浮上して、下方の滑り面S3との間隙G3を大きくし、上記接合部材22を磁石68に対してワンタッチで吸着させることの出来る作業上の効果を維持することが出来る。
【0012】
さらに本発明にあって、上記磁石68の表面68aに上記接合部材22の当接面22bが吸着された状態において、刺繍枠1の連結部材5における受圧部材19を、上記浮止部材78における当付片80の下部で弾力的に下方に押圧可能に構成し、基枠Bにおける受止部63の下部から、手前側に向けて幅広の張出片85を突設させ、上記磁石68の表面68aからその張出片85の突出長さL1を、前端部87の一部が刺繍枠1の一部と重合しうる長さに設定し、その重合部W1においては、上下に対向する一方の面には横幅方向に向けて相互に適当な間隔W2を隔てて複数の嵌合突部88を並設し、他方の面には、上記複数の嵌合突部88に対応する複数の嵌合凹部89を相対的に並設具備させ、これらの複数の嵌合突部88と複数の嵌合凹部89との位置関係は、上記磁石68の表面68aに上記接合部材22の当接面22bが吸着された状態において相互に掛り合うように設定する場合には、前述の接合部材22を磁石68に対してワンタッチで吸着させることの出来る作業上の効果を維持しながら、接合部材22に衝撃が及んでも接合部材22と磁石68との吸着状態をより一層強く維持できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】刺繍枠の一部と、基枠における受止部との関係を説明する為の斜視図。
【図2】(A)は、上枠を下枠に合着した状態を示す刺繍枠の平面図で、上枠の基板材34を固定係合部材61を残す状態で一部破断し、下枠側の可動係合部材54が見えるようにした一部破断平面図、(B)は可動係合部材の平面図。
【図3】上枠を除いて下枠のみの斜視図。
【図4】(A)は、下枠から上枠を離した状態を示す側面図。(B)は上枠を下枠に軽く合着させた状態を示す側面図。(C)は上枠を下枠に対して弾力的に押しつけた合着状態を示す側面図。
【図5】図2におけるV−V線位置の断面図を示し、(A)は、図4の(B)の状態における断面図、(B)は、図4の(C)の状態における断面図。
【図6】図2におけるVI−VI線位置の断面図を示す。
【図7】図2におけるVII−VII線位置の断面図を示し、 (A)は、図4の(A)の状態における断面図、(B)は、図4の(C)の状態における断面図。
【図8】図2におけるVIII−VIII線位置の断面図を示し、(A)は、図4の(A)の状態における断面図、(B)は、図4の(B)の状態における断面図。(C)は、図4の(C)の状態における断面図。
【図9】刺繍枠の一部と、基枠における受止部との関係を説明する為の斜視図で、引寄部材73と浮止部材78とで形成される止着部材を本体部から分離して示す斜視図。
【図10】刺繍枠における連結部材と、基枠における受止部との連結機構Dを説明する為に相互間を分離した状態で示す平面図。
【図11】基枠における受止部を説明する為に、刺繍枠における連結部材の方向から見た正面図。
【図12】図10及び図14における刺繍枠の一端に設けられる連結部材を、基枠に設けられる受止部に対して着脱をする状態を順々に説明する為のXII−XII 線位置の端面図。
【図13】図10及び図14における刺繍枠の一端に設けられる連結部材を、基枠に設けられる受止部に対して着脱をする状態を順々に説明する為のXIII−XIII 線位置の端面図。
【図14】刺繍枠における連結部材と、基枠における受止部との連結機構Dにおける嵌合突起と、嵌合凹部との関係を説明する為に相互間を分離した状態で示す背面図。
【図15】従来例に係る基枠と、連結機構と、連結部材との部材相互の関係を説明する為の一部を省略した分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1、図15に表れている基枠Bは、刺繍ミシンのテーブルTの面上において、周知のように1又は複数並設する多頭刺繍ミシンに対応させて図面上を左右方向の長さを設定して配設するものであり、周知のようにX−Y軸方向に駆動させる。基枠Bには刺繍ミシンの数に対応させ数量だけ、後述の刺繍枠1の一端に設けられる連結部材5を連結させる為の受止部63を備えさせる。
受止部63は、木材又は軽金属で構成される基枠Bの側面に対し、その手前側面63aに磁石68を埋込み状態に具備させてもよいが、一般的には、磁石68を予め埋込み状態に具備させる別部材(例えば周知のように合成樹脂材、金属板、非磁性金属板等)で構成される箱状の本体部64を図1のように装着して構成する。
【0015】
基枠Bの手前側面63aに備えさせる磁石68は、例えば上記本体部64の手前側面63aに備えさせてある。手前側面63aにおいて、65は凹溝を示し、図10の状態においての両側面67の傾斜角は、図10の持出部材23の両側の外周斜面の傾斜角に対応させてあり、本体部64に連結部材5を連結させた状態では、両斜面は密着して本体部64に対して刺繍枠1が左右振れしないように構成してある。66は溝底を示し、其処には磁石68の平坦な表面68aが配置されている。
上記本体部64の内部には、上記平坦な表面68aを備える磁石68(周知のように永久磁性体とその両側に配置される磁極68bを備える)が埋込み状に備えられている。69は、図12、13に表れているように本体部64から延びた受部材で、上面S3を、図12、13に表れているように接合部材22、第2接合部材20等を押し進めるときの滑り面にしてある。なお、受部材69を形成しない場合は、張出片85の上面を滑り面とし、これもない場合は、テーブルTの上面を滑り面S3として利用するとよい。
【0016】
刺繍枠1は、図1、図15からも理解できるように周知であり、例えばリング状の外枠とリング状の内枠とを備えており、外枠の内周と内枠の外周との間に被刺繍布の端部を挟み込むことにより、被刺繍布を内枠の下側に展開した状態で保持するものである。そして刺繍枠1の一端には、例えば外枠の一端には、上記受止部63に連結させる為の連結部材5を備えさせる。或は図1〜図9に表れている後述の刺繍枠1のように特殊な用途に用いることが出来るように構成したものもある。これら周知の刺繍枠1は、被刺繍布S を保持した状態で上記テーブルTの面上をX−Y軸方向に移動させる為のもので、刺繍枠1の一端には夫々上記受止部63に連結させる為の連結部材5を備えさせる。
【0017】
上記のように刺繍枠1は連結部材5を、基枠Bは受止部63を備えている刺繍枠の装着装置は、受止部63の側面における磁石68の表面68a(本件実施例においては2つの磁極68b、68bの表面で磁石68の表面を形成している)に対して、刺繍枠1の一端に備えさせた連結部材5の対向面を着脱自在に吸着させることによって、刺繍枠1の一端を上記受止部63に対して着脱自在に連結させるようにしてある。
【0018】
上記連結部材5は、板状の接合部材22と持出部材23とを備える。金属板状の丈夫な接合部材22は、図9、10、12、14に表れているように磁性材料でもって樹立状(垂直)に形成してあり、一面には、刺繍枠1を受止部63に連結してテーブル面上に載置した状態において上記磁石68の表面68aに平行する当接面22bを備え、他面には引寄部材73の引止片75を係合させる為の係合面22eを備える。
持出部材23は接合部材22と一体材で形成してあり、図示のように刺繍枠1の一部と、上記接合部材22とを、板状の接合部材22における係合面22eと刺繍枠1の側に間隙G2が形成される状態で連結してある。
その連結状態においては、図14に表れているように刺繍枠1における部材と、持出部材23の元部24とが別部材であってもよいし、一体に連続する部材であってもよい。
【0019】
さらに上記連結部材5には、図9、10、13、14に表れているように上記2つの接合部材22、22に並設する状態で、上記磁石68の表面68aに平行する当接面20bを備える板状の第2接合部材20を備え、その第2接合部材20の上部から折曲げ状に刺繍枠1の方向に延びる受圧部材19を一体材で形成具備する。また刺繍枠1の一部と上記第2接合部材20とは、上記の接合部材22と持出部材23の場合と同様に第2持出部材21で連結する。
【0020】
一方、基枠Bの上記受止部63においては、引寄部材73を備える。引寄部材73は、図9、10、11、12に表れているように一つの金属部材(例えば0.6mm厚さ寸法のステンレス板)で構成されている押下片74と、引止片75と、持上片76とを備えている。
押下片74は弾力性を備えさせる為に図12に表れているように比較的奥行方向に長く形成した板状の金属部材で構成されている。
板状の引止片75は、押下片74の先部から下方に延びる状態に形成される。引止片75の内面75bは、磁石68の表面68aに平行するように垂直面にしてあり、接合部材22の反当接面22eに弾力的に接合し得るようにしてある。
板状の持上片76は、図12に表れているように上記引止片75の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、下向きの斜面76aに向けて手前側から(図12(A)のように左側から)奥(右側方向)の磁石68の表面68aの方向に力を加えることによって引止片75の先部を、押下片74の弾力に抗して図12(B)のように浮上させるようにしてある。持上片76の傾斜角θは20°〜45°位が望ましい。図12では30°に設定してある。
【0021】
上記引寄部材73は、引止片75が上記磁石表面68aの手前側(図12(D)のように左側)において、奥側に上記接合部材22が位置する間隙G4を残すような突出状態で位置し、かつ、その突出状態にある引止片75の弾力的な上下動を可能にする為に押下片74の元部74aの側を、受止部63の上部にねじ73bを用いて固着してある。図10の73aは、隣接する部材相互間に形成した切れ目を示し、夫々の部材が個々に弾力的に上下作動するようにしたものである。
【0022】
さらに基枠Bの上記受止部63には、上記引寄部材73に並設する状態で浮止部材78を備えさせてある。上記引寄部材73と、浮止部材78とは図9に表れているように板状の一体材で止着部材71として構成してある。
浮止部材78は図10に表れているように弾力性を備える引寄部材73と同様な弾力性が得られるように引寄部材73と同じ板状の一体材で形成してある。浮止部材78は、図13に示されているように弾力性を有する板状の幅広くした押え板79と、押え板79の先部から斜め下方に延びる状態に形成され、かつ、図13に表れているように磁石68の表面68aよりも大きく刺繍枠1の側に突出して浮止効果を発揮する態様に形成してある板状の当付片80と、上記当付片80の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、手前側から奥の磁石68の表面68aの方向に力を加えることによって当付片80の下部を浮上させるようにした板状の案内片81とを備えている。
浮止部材78の元部79aは、上記磁石68の表面68aに上記接合部材22の当接面22bが吸着された状態において、上記連結部材5の受圧部材19を、上記浮止部材78における当付片80の下部で弾力的に下方に押圧可能に浮止部材78の元部79aは、受止部63に固着されている。
【0023】
さらに、上記引止片75の下部75aにおける下方の滑り面S3との間隙G3は、図12(D)のように、接合部材22が磁石68の表面68aに接した状態では後退できないように、上記接合部材22の高さ寸法H1よりも短小に定めてある。従って、当然のことながら、接合部材22の背面を構成する係合面22eと引止片75の一部分は重合し、接合部材22が磁石68の表面68aから離れようとしても引止片75が接合部材22の係合面22eを磁石68の方向に押しつけて接合部材22と磁石68の表面68aとの吸着状態を維持する。
【0024】
次に、図10、12、14に良く表れている刺繍枠1の側に備えられている複数の嵌合突部88と、受止部63の側に備えさせた嵌合凹部89との関係について説明する。
上記基枠Bにおける受止部63の下部から、図10、14に表れているように手前側(図面上左側)に向けて幅広の張出片85を突設させる。
その張出片85の突出長さL1は、前端部87の一部が図12に表れるように刺繍枠1の一部(持出部材23の下面の一部であってもよい)と重合しうる長さに設定する。
その重合部W1においては、刺繍枠1の一部に重合用の凹部86を形成し、そこに張出片85を図12(C)のように重合させる。そして図14のように対向させる一方の面(例えば刺繍枠1の一部)には横幅方向に向けて相互に適当な間隔W2を隔てて複数の嵌合突部88を並設し、他方の面(例えば張出片85)には、上記複数の嵌合突部88に対応する複数の嵌合凹部(又は嵌合用孔)89を相対的に並設具備させる。
これらの複数の嵌合突部88と複数の嵌合凹部89との位置関係は、上記磁石68の表面68aに上記接合部材22の当接面22bが吸着された状態において、図12(C)に表れているように相互に掛り合うように設定してある。
なお、図においては刺繍枠1の下面の一部に複数の嵌合突部88を備えさせたが、上記複数の嵌合突部88と相手方の嵌合凹部89とは相対的なものであり、刺繍枠1の下面の一部に複数の嵌合凹部89を備えさせ、上記張出片85の対応する位置に複数の嵌合突部88を上向きに備えさせてもよい。
【0025】
上記構成のものについて使用の態様を説明する。先ず、図1、図15に表れるような準備状態から、被刺繍布を保持した状態の刺繍枠1における連結部材5を、基枠Bにおける受止部63に装着するのであるが、その操作は図12に表れているように行う。
図12(A)のように、受止部63における受部材69の上に連結部材5の連結部5aにおける接合部材22を載せ、上端の自由端である当接面22dを持上片76の下に滑り込ませる。この場合、連結部5aの持出部材23の傾斜角は持上片76のθ角と同じぐらいにすると入り易い。引続き、図12(B)のように、接合部材22を磁石68に近づけると、接合部材22は持上片76を持上げて、接合部材22が位置するべき間隙G4に進入する。この状態で、図12(C)のように、刺繍枠1を下降させ、テーブルTの上に乗せると、接合部材22は磁石68の表面68aに吸着され、同時に、それの手前側にある係合面22eは、引止片75の内面に、図12(C)のように、弾力的に接触し、それと実質的に一体化する。
【0026】
次に上記の動作と並行的に次のような動作も行われる。刺繍枠1における連結部材5を、基枠Bにおける受止部63に装着する為の図12(A)のような動作状態にあっては、連結部材5における受圧部5bと、浮止部材78との関係は図13(A)のようになる。即ち、受圧部材19は図示のように案内片81に下に潜り始める。引続き刺繍枠1を押し進めると、図13(B)のように受圧部5bにおける受圧部材19は案内片81の下に入り込み、磁石68に近付く。さらに刺繍枠1を押し進めながら図12(C)の場合と同様に、刺繍枠1を下降させ、テーブルTの上に乗せると、図13(C)のように受圧部5bにおける第2接合部材20は、磁石68の前面68aに吸着され、一体化する。それと同時に受圧部材19は、浮止部材78における弾力性のある押え板79の先端に存在する当付片80で押さえつけられる。
【0027】
さらに上記の動作と並行的に次のような動作も行われる。上記図12(B)の状態から図12(C)の状態に移る過程において(図13(B)の状態から図13(C)の状態に移る過程において)刺繍枠1を下降させると、刺繍枠1の下面に備えさせてあった嵌合突起88が、図12(C)のように、刺繍枠1を下降させてテーブルTの上に乗せる過程において、張出片85の嵌合凹部89に入り込み、両者は嵌合する。この嵌合状態においては、図14から理解できるように、基枠Bにおける受止部63が急速に左右に移動しても刺繍枠は容易に脱落することはない。
【0028】
次に、被刺繍布Sに刺繍を施した後は、基枠Bにおける受止部63から刺繍枠1の連結部材5を外す必要ある。この場合は、基枠Bにおける受止部63の磁石68に対して吸着されている接合部材22を、刺繍枠1のお尻を持上げて引戻すことにより、図12(C)の状態から図12(B)の状態にすれば、簡単に取外すことが出来る。
【0029】
次に刺繍枠について、前述した一般に知られている刺繍枠1とは異なる新規な例を示す刺繍枠1について図1〜図8を用いて以下に説明する。
1は、袖等(例えば、シャツ・セーター等の筒状の袖部分、靴下の筒状部分等S)の周面に刺繍を施す場合に用いることのできる刺繍枠で、これに袖等を装着した状態で、刺繍ミシンのテーブルTの上に置き、刺繍ミシンが備える周知の刺繍枠駆動機構に連結することによってテーブル上を前後左右(X−Y)方向に作動させて、袖等の周面に刺繍を施す場合に用いられる袖等の刺繍枠である。
袖等の任意の被刺繍布を装着するための刺繍枠1において、2は下枠、3は上枠を示す。
【0030】
下枠2は、下枠主体部2bの手前側に、周囲が受部材10で囲まれている刺繍用窓9を配している受枠部2aを備える。
上記受枠部2aにおける刺繍用窓(空間の領域)9は、袖等の筒状体Sの外周
面に予定される刺繍領域A(イニシャル或いは任意の絵やマーク、模様等を縫い表す領域)に対応する大きさに設定してある。
また上記受枠部2aの受部材10は、板状の硬質材、例えば金属材(又は硬質の合成樹脂材)で刺繍用窓9の周囲に一体状に配置されている。10aは手前側の受部材、10bは奥側の受部材、10cは左右側の受部材、10d は持出状に形成されている部材を示す。受部材10の外形は、図示のように袖等の筒状体Sに対して挿入可能な横幅(例えば、標準的な袖の寸法を基準にした場合には80mm〜90mm位になる)にして、かつ、薄く(例えば、強度を考慮すると2mm前後位になる)に形成してある。上面は袖等の刺繍領域Aの周囲を受け止め可能に平坦にしてあり、上に任意の滑り止シート12を配置しておくとよい。刺繍領域Aに対応する窓9としては、50〜60mm角の窓であればよい。
【0031】
下枠2の下面は刺繍ミシンのテーブルTの上面に沿って前後左右に向けて滑らかな横動を可能に平たくしてある。
受部材10の周囲において僅かに張り出している縁部11は、受部材10の周囲からはみ出す布部分Sを受け止める為のもので、11aは手前側の部材、11cは左右端の部材を示す。なお左右端の部材11cは、僅かに折り上げてあり、その受部材10cからの折り上げ寸法は、図6の押圧完了状態で布Sが左右端の部材11cで吊り下げられ、傾斜状になるよう(例えば、2〜3mm位)に挟着部分から離して設定してある。このように高くしておくと、図4(A)の状態で、左右端の部材11cの上に掛け渡していた布Sが、図4(B)の状態に移る過程において、袖等の刺繍領域Aが図6のように理想的に引き張られる効果が生ずる。
【0032】
下枠2の下枠主体部2bにおいて、15は受部材10と同様に板状の金属材等で形成してある基板材で、受部材10と一体材で構成してある。
16は、上記左右端の部材11cと同様に僅かに折り上げて、補強効果を高めるようにしてある縁部を示す。下枠2の下枠主体部2bの奥側には、基板材15の両側の各1部分を折り上げて上枠3に連結するための枢支部17を形成具備させてある。18は連結用のピン33を挿通するための枢支孔を示す。
【0033】
下枠2の奥部に位置する連結部材5は、図示外の刺繍ミシンが備える周知の刺繍枠駆動機構の対応接合部(磁石68)に着脱自在に接続させるための接合部材(磁性材)22を備える。接合部材22は基板材15に一体材の基板材15aを介して連結されている。なお、接合部材(磁性材)22を備える連結部材5は、刺繍枠1であれば、その内の何れの場所であってもよく、例えば上枠主体部3bの奥側の22aの位置に備えさせても良い。
【0034】
次に、上枠3は、上枠主体部3bの手前側に、周囲が上記受部材10に対応する形状に形成してある押え部材25で囲まれている刺繍用窓26を配している押え枠部3aを備える。
上記押え枠部3aにおいて、押え部材25は、上記受部材10の上面に存置させる袖等の筒状体Sの刺繍領域Aの周囲を上から押さえ付けて固定可能に対応平坦面に形成してある。
上記押え部材25は、内側に上記受枠部2aにおける刺繍用窓9に対応する大きさの刺繍用窓26を備え、刺繍用窓26の周囲は上記受部材10に対応する形状に、板状の金属材(又は硬質の合成樹脂材)で構成される押え部材25で囲んである。押え部材25における25aは手前側の押さえ部材、25bは奥側の押さえ部材、25cは左右側の押さえ部材を夫々示す。
【0035】
上記押え部材25の上方には、袖等の筒状体Sの内、上記押え部材25で押さえ付けた場合に押え部材25の周囲からはみ出す布部分Sをめくり返して収納できる収容空間30を周囲に形成する為の収納空間用壁板27を周設させてある。
上記袖等のめくり上部分の収納空間30は、上記押え部材25の外周縁から夫々上方に向けて一体材でもって立ち上げた状態の部材である収納空間用壁板27の外周側に夫々形成してある。収納空間30にあって、30aは手前側、30bは奥側、30cは左右側の空間を夫々示す。
【0036】
収納空間用壁板27にあって、27aは手前側の部材、27bは奥側の部材、27cは左右側の部材、27dは中間の部材を夫々示す。28は、収納空間30に収納した袖等のめくり上部分が上方に向けて脱出するのを防止する為の浮上防止壁で、収納空間用壁板27の上縁から一体材を延長して、図示のように折り曲げて形成してある。浮上防止壁における、28aは手前側の部材、28bは奥側の部材、28cは左右側の部材を示す。
なお、浮上防止壁の左右側の部材28cの自由端には、図6に表れているように、夫々板状の一体材を下向きに折り曲げた状態の連結片32が形成されており、連結片32に備えさせた枢支軸42によって、回動自在に両側のアーム状の連繋部材37、37の手前側に枢着してあり、これにより押え枠部3aは、連繋部材37に対して揺動自在になっている。
【0037】
押え部材25の下側には、シート状の滑り止め部材31(例えば、ゴムスポンジのシート)が任意の手段(例えば接着剤)により添着状に備えられており、図4(B)(C)の状態において、滑り止シート12の上に展開する状態で位置させる袖等の布部分Sを均等に、しかもソフトに、そして確実に不動状態に挟着できるようにしてある。
なお、押え部材25等を含む押え枠部3aは、図9に示されるように上枠主体部3cとは1体的に形成してもよいが、図1〜図8に表れている例においては上枠主体部3cとは別体に形成してある。
【0038】
上枠3の上枠主体部3における基板材34は、板状の金属材(又は硬質の合成樹脂材)で図示のように平担に構成され、基板材34の両側の各1部分は下向きに折り曲げて、補強材の役割をも果たす垂れ壁35を形成してある。32は基板材34の両側から下向きに延設した連結片で、連結用のピン33を備えており、上記下枠2における下枠主体部2bの枢支部17に設けてある上記枢支孔18にピン33を回動自在に挿通させ、下枠の下枠主体部2bに対して上枠3の上枠主体部3cを図4の(A)(B)に表れているように奥側において起伏自在に連結してある。
【0039】
次に上枠3の押え枠部3aと、上枠主体部3bとの連繋部3cについて説明する。連繋部3cとしては、押え枠部3aが、上枠主体部3bに対して上下方向に弾力的な曲がりが可能に構成した例として弾力連繋機構36を説明する。
上記上枠3における上枠主体部3bに対して、押え枠部3aは別体に形成してあって、押え枠部3aは上枠主体部3bに対して弾力的な上下動を可能に弾力連繋機構36を介して連繋してある。しかも、弾力連繋機構36と押え枠部3aとの連結は、押え枠部3aにおける押え部材25の下面が受枠部2aの受部材10の上面に沿うことを可能に、前後方向に傾動自在に連結してある。
【0040】
図において、押え枠部3aと、上枠主体部3bの両側には、夫々硬質材である金属、合成樹脂等の材料でもってアーム状に形成されている連繋部材37が配設してあり、連繋部材37の奥側には止孔38と、上下方向に長い長孔39が備えられ、手前側には枢着孔40が備えさせてある。止孔38と、長孔39と、枢着孔40には、図示のように上枠主体部3bの垂れ壁35から突設してある枢支ピン44と、案内軸43及び押え枠部3aの連結片32から突設してある枢支軸42が夫々挿通され、夫々抜け脱しないようにされている。50は付勢手段として例示する板バネで、元部52は夫々基板材34の手前側に固着されており、自由端に備える半円弧状の接触片51は、押え部材25の左右側25cの前後方向の中間点に接圧状態で接離自在に接触させてある。なお41は揺れ止ピンで、夫々連繋部材37の内側において、押え部材25の過剰な前後方向の揺動を防止出来るように浮上防止壁28の左右側28cの下側に向けて突設してある。
【0041】
上記弾力連繋機構36にあって、上枠主体部3bが図4(A)の状態にある場合(例えば、図示外の弱い力のばねにより、下枠主体部2bから図示の位置に持ち上げられている場合、又は手で持ち上げられている場合)には、上枠主体部3bに対して押え枠部3aは自重の為、垂れ下がった状態になる。従って、案内軸43は長孔39の上側に位置する。
次に、手でもって図4(B)の状態に、上枠主体部3b又は押え枠部3aを押し下げると、押え枠部3aの押え部材25は、受部材10の上面にある布Sに平行になり、均等に当たる。更に、上枠主体部3bを押し下げると、板バネ50の接触片51の高さはそのままの位置で元部52は更に僅かながら下降し、押え部材25に弾性力を加え、下方に向けて弾力的に押圧する。なおこれらの動作によって後述する係合機構53が連動的に機能し、上枠主体部3bの下降状態をロック(維持)する。
【0042】
次に、下枠2と上枠3との間には、上記下枠2の受部材10の上面に存置させる袖等の筒状体Sの刺繍領域Aの周囲を、上から上枠3の押え部材25で押さえ付けて固定した状態を維持するために緊緩自在にした係合機構53が左右対象位置に夫々備えさせてある。係合機構53の構成は、図9に表れるような構成でも良いが、次のように構成しても良い。
下枠2の上面には、図2(B)の平面図に表れているような可動係合部材54を備えさせる。可動係合部材54は、下枠2の下枠主体部2bの上面2eに枢支軸を立設状に備えさせ、その枢支軸に対して、自体の一端に備える枢支部(孔)54aを水平方向への回動を自在に枢着し、他端の係合部55を、係合位置(図2(A)の位置)と、退避位置(図8(B)の位置であって、図2(A)の位置から図面上、上に移動させた位置)との間を横動自在にしてある。
上記係合部55においては、図8に表れているように自由端の上部位置を傾斜面にして誘導部56とし、自由端の下部位置には凹状の係止部57を備えさせた。
さらに上記可動係合部材54は、常態では係合位置に止まるように一方向に巻きばね60を用いて付勢してある。
更に下枠主体部2bの側方位置には、上記可動係合部材54に連結子59を介して連なっていて、可動係合部材54を退避位置へ移動させるための操作片58を図2に表れていうように突出状に備えさせてある。
【0043】
一方、上枠3の上枠主体部3bの下面3eには、上記凹状の係止部57に係合させるための係止爪62を自由端に備えている固定係合部材61を、固定係合部材61の元部を下面3eに固定(固定部61a)させる状態で備えさせている。
上記係止爪62の位置は、押え部材25を受部材10に向けて移動(下動)させる過程において、係止爪62が図7(A)、図8(A)(B)のように誘導部56に当接して可動係合部材54を退避位置方向に移動させ、続いて、係止爪62が図7(B)、図8(C)のように上記凹状の係止部57に係合するように対応配設してある。
上記構成によれば、下枠2の受部材10の上面に存置させる袖等の筒状体Sの刺繍領域の周囲を、上から上枠3の押え部材25を下動させる過程(図4(A)の位置から図4(B)(C)の位置へ移動する過程)では、上記固定係合部材61の下降に伴い係合部55は上記した図7、図8から明らかなように動作を行い、受部材10に対する押え部材25の位置関係を維持する。
【0044】
上記構成の刺繍枠1を用いて、袖等の筒状体Sの刺繍領域Aに刺繍をする場合について説明する。なお図1における筒状体Sは、シャツの袖を例示する。S1は袖口で、ゴム編状になっている。S2は布状の部分を示す。
刺繍枠1は図1、図4(A)に表れているように受部材10に対する押え部材25の位置を開放状態(離れている状態)にする。次に任意の袖等の筒状体Sにおける刺繍領域Aが刺繍用窓9に重合するように、筒状体Sの内側に受枠部2aを相対的に挿入する。刺繍用窓9に重合する筒状体Sにおける刺繍領域Aを広げて皺を無くした後は、押え部材25を図4(A)の位置から図4(B)の位置に下降させる。
この場合、受部材10の左右端の部材11c、11cに掛け渡し状態になっていた部分Sは、押え部材25の滑り止部材31の下降により僅かに引き張られる状態になりながら受部材10の上に図4(B)の状態で押さえ付けられる。この状態から上枠3の基板材34を手でさらに押し下げると、基板材34は板バネ50のばね力(反発力)に抗して図4(C)の状態に下降する。すると、同時に板バネ50のばね力(押し圧力)により、受部材10と押え部材25との間に介在してあった部分Sは、平坦な受部材10の上面と、平坦な押え部材25の下面との間に挟まれたまま、即ち、平坦に展開したまま(周囲に折り目等作られることなく)、弾力的に上下から押圧固定される。
【0045】
しかも、受部材10と押え部材25との間は、押え部材25が上方から下降して、受部材10の上面に対しては、弾力的に近づくので、布部分Sの厚みが比較的大きな分厚いものであっても、極めて薄い布であっても、これらを共に正確に挟み付け固定する特長がある。従って、袖口近くの部分S1と、部分S2の間に布厚の差があっても均圧状に押圧固定される。
また、押え部材25が図4(A)の位置から図4(C)の位置に移動する過程においては、係合機構53の係止爪62が図7(A)(B)、図8(A)(B)(C)を用いて前述したように動作しながら下降して、上枠主体部3bの下降状態をロック(維持)する。
【0046】
次に、受部材10と押え部材25との間からはみ出た布部分Sは、袖のめくり上部分の収納空間30(30aの手前側と30bの奥側と30cは左右側の空間)に夫々めくり上げる。その結果、下枠2の下面は障害物がなく、平坦な滑り面となり、テーブルTの上をX −Y 方向に自由に滑らすことができる。
このようにして刺繍の準備が完了した後は、刺繍枠の奥側に備えさせる接合部材22を刺繍ミシンに備えさせる刺繍枠駆動機構の連結用の部材に連結し、周知のように操作して袖等の筒状体Sにおける刺繍領域Aに好みの刺繍を行う。
その後は、両側の操作片58、58を夫々内側に向けて押し付け、これに連なる可動係合部材54を夫々中央寄りの退避位置に退避させることにより、係止爪62をフリーにして上昇させ、受部材10と押え部材25との間を開き、袖等の筒状体Sを取り出す。
この場合、受部材10と押え部材25との間に挟まれていた刺繍領域Aは、上下からの圧力によって挟まれていたのであり、左右方向に強い力で引き張られていたのものではないので、受部材10と押え部材25との間から取り出した場合でも布が縮む恐れはなく、布に施した刺繍模様は、美しい状態を維持する。
【符号の説明】
【0047】
A・・・刺繍領域、B・・・基枠、D・・・連結機構、T・・・テーブル、S・・・被刺繍布、S3・・・滑面、H1・・・引張作用形成用の高さ、1・・・刺繍枠、2・・・下枠、2a・・・受枠部、2b・・・下枠主体部、5・・・連結部材、3・・・上枠、3a・・・押え枠部、3b・・・上枠主体部、3c・・・連繋部、9・・・刺繍用窓(空間の領域)、10・・・受部材、10a・・・手前側、10b・・・奥側、10c・・・左右側、10d・・・持出部、14・・・嵌合突起、15・15a・・・基板材、19・・・受圧部材20・・・第2接合部材21・・・第2持出部材、22・・・接合部材(磁性材)、22b・・・当接面(対向面)、22c・・・下部、22d・・・上部、22e・・・反当接面、23・・・持出部材、24・・・連結元部、59・・・連結子、63・・・受止部、64・・・本体部、65・・・凹溝、66・・・溝底、67・・・側面、68・・・磁石、69・・・受部材、71・・・止着部材、73・・・引寄部材、74・・・押下片、75・・・引止片、76・・・持上片、78・・・浮止部材、79・・・押え板、80・・・当付片、81・・・案内片、85・・・突出片、86・・・重合用凹部、87・・・前端部、88・・・嵌合突起、89・・・嵌合凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍ミシンのテーブルの面上においてX−Y軸方向に駆動させる基枠には、刺繍枠の一端に設けられる連結部材を連結させる為の受止部を備えさせ、
被刺繍布を保持した状態で上記テーブル面上をX−Y軸方向に移動させる為の刺繍枠の一端には上記受止部に連結させる為の連結部材を備えさせ、
上記受止部における連結部材に対向させる手前側面には磁石を備えさせ、
上記受止部の側面における磁石の表面に対して、刺繍枠の一端に備えさせた連結部材の対向面を吸着させることによって刺繍枠の一端を上記受止部に対して着脱自在に連結させるようにしてある刺繍枠の装着装置において、
上記連結部材は、一面には、刺繍枠を受止部に連結してテーブル面上に載置した状態において上記磁石の表面に平行する当接面を備え、他面には引寄部材の引止片を係合させる為の係合面を備える板状の接合部材と、刺繍枠の一部と上記接合部材とを、板状の接合部材における係合面の側に間隙が形成される状態で連結する持出部材とを備え、
一方、基枠の上記受止部においては、弾力性を有する板状の押下片と、押下片の先部から下方に延びる状態に形成される板状の引止片と、上記引止片の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、下向きの斜面に向けて手前側から奥の磁石の表面の方向に力を加えることによって引止片の先部を浮上させるようにした板状の持上片とを備えている引寄部材を、上記引寄部材における引止片が上記磁石表面の手前側において、奥側に上記接合部材が位置する間隙を残すような突出状態で位置し、かつ、その突出状態にある引止片の弾力的な上下動を可能にする為に押下片の元部の側を、受止部に固着し、
さらに、上記引止片の下部と、その下部における下方の滑り面との間隙は、接合部材が磁石の表面に接した状態では後退できないように上記接合部材の高さ寸法よりも短小に定めていることを特徴とする刺繍枠の装着装置。
【請求項2】
刺繍ミシンのテーブルの面上においてX−Y軸方向に駆動させる基枠には、刺繍枠の一端に設けられる連結部材を連結させる為の受止部を備えさせ、
被刺繍布を保持した状態で上記テーブル面上をX−Y軸方向に移動させる為の刺繍枠の一端には上記受止部に連結させる為の連結部材を備えさせ、
上記受止部における連結部材に対向させる手前側面には磁石を備えさせ、
上記受止部の側面における磁石の表面に対して、刺繍枠の一端に備えさせた連結部材の対向面を吸着させることによって刺繍枠の一端を上記受止部に対して着脱自在に連結させるようにしてある刺繍枠の装着装置において、
上記連結部材は、一面には、刺繍枠を受止部に連結してテーブル面上に載置した状態において上記磁石の表面に平行する当接面を備え、他面には引寄部材の引止片を係合させる為の係合面を備える板状の接合部材と、刺繍枠の一部と上記接合部材とを、板状の接合部材における係合面の側に間隙が形成される状態で連結する持出部材とを備え、
さらに上記連結部材には、上記接合部材に並設する状態で、上記磁石の表面に平行する当接面を備える板状の第2接合部材と、第2接合部材の上部から折曲げ状に刺繍枠の方向に延びる受圧部材と、刺繍枠の一部と上記第2接合部材とを連結する第2持出部材とを備え、
一方、基枠の上記受止部においては、弾力性を有する板状の押下片と、押下片の先部から下方に延びる状態に形成される板状の引止片と、上記引止片の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、下向きの斜面に向けて手前側から奥の磁石の表面の方向に力を加えることによって引止片の先部を浮上させるようにした板状の持上片とを備えている引寄部材を、上記引寄部材における引止片が上記磁石表面の手前側において、奥側に上記接合部材が位置する間隙を残すような突出状態で位置し、かつ、その突出状態にある引止片の弾力的な上下動を可能にする為に押下片の元部の側を、受止部に固着し、
さらに基枠の上記受止部には、上記引寄部材に並設する状態で、弾力性を有する板状の押え板と、押え板の先部から斜め下方に延びる状態に形成される板状の当付片と、上記当付片の下部から手前側斜め上方に向けて斜めに延びる状態に形成され、手前側から奥の磁石の表面の方向に力を加えることによって当付片の下部を浮上させるようにした板状の案内片とを備えている浮止部材を、上記磁石の表面に上記接合部材の当接面が吸着された状態において上記受圧部材を、上記浮止部材における当付片の下部で弾力的に下方に押圧可能に浮止部材の元部を、受止部に固着し、
さらに、上記引止片の下部と、その下部における下方の滑り面との間隙は、接合部材が磁石の表面に接した状態では後退できないように上記接合部材の高さ寸法よりも短小に定めていることを特徴とする刺繍枠の装着装置。
【請求項3】
上記基枠における受止部の下部から、手前側に向けて幅広の張出片を突設させ、その張出片の突出長さは、前端部の一部が刺繍枠の一部と重合しうる長さに設定し、その重合部においては、対向する一方の面には横幅方向に向けて、相互に適当な間隔を隔てて複数の嵌合突部を並設し、他方の面には、上記複数の嵌合突部に対応する複数の嵌合凹部を相対的に並設具備させ、これらの複数の嵌合突部と複数の嵌合凹部との位置関係は、上記磁石の表面に上記接合部材の当接面が吸着された状態において相互に掛り合うように設定してあることを特徴とする請求項1又は2記載の刺繍枠の装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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