説明

削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機

【課題】大深度掘削の場合でも駆動部自重による座屈曲りや継ぎ足し部のガタによる掘削軸全長の曲がり(撓み)の影響を受けることなく意図した方向への掘削作業ができ、削孔曲がりが生じた場合でも容易に修正できる多軸掘削機を提供する。
【解決手段】駆動装置7の下部に3本の掘削軸8,8,8が並列垂設され、各掘削軸8,8,8の下端に設けられた掘削ヘッド10とその上方の撹拌スクリュー(撹拌部)9により同時に複数の縦孔を掘削する多軸掘削機1において、掘削ヘッド10と撹拌スクリュー(撹拌部)9の間には、掘削軸同士を掘削軸が回転可能に連結するとともに孔曲がりを修正するための削孔曲がり修正装置14を備えた非回転の下部軸連結装置13が設けられ、また、撹拌スクリュー(撹拌部)9の直上部にも同様の上部軸連結装置12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下端部に掘削ヘッドを有しその上方にスクリューロッド、撹拌ロッド等の撹拌部を備える複数の掘削軸(掘削作業ロッド)が連結装置により軸列方向に連結されてなる地盤掘削用の多軸掘削機であって、該連結装置に掘削方向に曲がりが生じたときにこれを適正方向に修正するための削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建造物の基礎工事や地盤改良工事等において、削孔を形成するのに1本の掘削作業ロッドによる単軸掘削機や複数本の掘削作業ロッドを並設した多軸掘削機が用いられている。中でも土留め壁や止水壁等としての地中連続壁を形成する場合は多軸掘削機が好適に用いられる。
【0003】
これらの掘削機を用いて地中に垂直縦孔を掘削していく途中で、地盤内の硬岩や地層の変化等により掘進方向が曲げられたり、掘削ロッドの長さ等の掘削機の形態と地盤強度と掘削深さとの関係で掘進方向が曲がったり、削孔軸が捩れたりして、必要な施工精度が得られなく場合がある。そのため、従来から、種々の掘進方向修正装置や掘削機の姿勢制御方法が検討されてきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、削孔ビット上方の連結装置に、孔壁に対して押圧自在の押圧手段を複数設けることにより回転縦軸の精度誤差修正を行う多軸掘削機が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、削孔方向を基軸とする捩れ角度を検出するジャイロセンサを備えるとともに、削孔ビット上方の非回転保持部材に削孔に対して進退自在の姿勢制御用壁面押圧手段を備えた多軸の地盤削孔機が開示されている。
【0006】
また、特許文献3、特許文献4には、駆動手段の下方に上部保持部材があり、削孔ビット上方に孔曲がりを修正するための押圧板を複数備えた下部保持部材がある多軸削孔機が開示されている。
【0007】
更に、孔曲がりを修正するための機構を削孔軸の上下方向に複数設けた削孔機も知られている。例えば、特許文献5には、上部ガイド機構および下部ガイド機構、上部ガイド機構と中間部ガイド機構と下部ガイド機構により掘削機の姿勢を制御する掘削機が開示されている。
【0008】
また、特許文献6には、オーガースクリューの上下2箇所の中断部に進退動作する押え板と傾斜計を備えた姿勢制御装置を設けた掘削オーガーが開示されている。
【0009】
また、特許文献7には、駆動軸の上下方向の2箇所に、先端にローラーと応力センサーとを備えた伸縮可能な支え腕のある縦孔掘削用装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平05−017331号公報
【特許文献2】特開2000−073396号公報
【特許文献3】特開2000−192501号公報
【特許文献4】特開平09−013365号公報
【特許文献5】特許第3254614号公報
【特許文献6】特許第3086592号公報
【特許文献7】特開平09−004354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の通り、特許文献1〜特許文献4には、多軸削孔機において、軸同士を束ねている軸連結部に掘削孔壁面を反力として孔曲がりを修正するための押圧自在の押圧手段を設けたものが開示されている。これらでは押圧手段は削孔ビット上方の掘削先端部に近い位置での軸連結部に設けられているため、削孔先端部付近を水平に変位させ任意の掘進方向への修正動作が可能である。
【0012】
しかし、大深度掘削の場合は、駆動部からの掘削軸長が長くなるため、駆動部自重による座屈曲りや継ぎ足し部のガタにより掘削軸全長に曲がり(撓み)が発生し、これが作用することにより前記押圧手段を作動させても削孔先端部付近の変位が意図しない方向へ働き、孔曲がりを修正し難くなることがある。
【0013】
また、上記の通り、特許文献5〜特許文献7には掘削軸の上下方向に離れて複数段の前記押圧手段を設けたものが記載されている。これらでは押圧の自由度が増えるとともに、掘削軸を上下方向の複数段で支えることができるので前記掘削軸全長の曲がり(撓み)の発生に対しても対処し易くなるが、特許文献5〜特許文献7のものは上記問題の解決を図ったものではないので、上記問題を確実に解決できるものではない。
【0014】
例えば、特許文献6のように、オーガースクリューの近接した上下2箇所の中断部に前記押圧手段を設けても前記問題に対しては十分な効果は得られない。また、特許文献5〜特許文献7のものは、単軸掘削機に対応できても多軸掘削機に必ずしも対応できるものではない。
【0015】
本発明者らは、上述のような課題に鑑み、掘削ヘッドの上方に撹拌スクリュー等による撹拌部が設けられており複数の掘削軸が連結装置によって連結されている多軸掘削機を用いて大深度掘削を行う場合でも精度よく掘削できる多軸掘削機について鋭意検討した結果、前記連結装置を上下2箇所に設け、これら連結装置を削孔曲がり修正機能を備えたものにすれば良いことを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、掘削ヘッドの上方に撹拌スクリュー等による撹拌部が設けられており複数の掘削軸が連結装置によって連結されている多軸掘削機において、大深度掘削の場合でも駆動部自重による座屈曲りや継ぎ足し部のガタによる掘削軸全長の曲がり(撓み)の影響を受けることなく意図した方向への掘削作業ができ、削孔曲がりが生じた場合でも容易に修正できる多軸掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機は、下端に掘削ヘッドを有し、該掘削ヘッドの上方に撹拌部が備わった複数本の掘削軸が並列配置されてなる地盤掘削用の多軸掘削機であって、前記複数の掘削軸を連結する軸連結装置を、下部軸連結装置とその上方に間隔をおいた上部軸連結装置の2段に設け、前記下部軸連結装置及び上部軸連結装置のそれぞれに、掘削孔壁面に反力をとって前記掘削軸の連結位置を変位させ、掘削方向を修正する削孔曲がり修正手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
下端に掘削ヘッドを有し該掘削ヘッドの上方に撹拌部が備わった複数本の掘削軸が回転駆動装置に接続して垂下し横断面上において所定の軸列をなして配設された多軸掘削機は、従来から地中ソイルセメント柱列壁を構築するのに好適に用いられており、多軸掘削機としての基本構造は本発明においても特に変わるところはなく、従来の各種構造の多軸掘削機に適用することもできる。
【0019】
多軸掘削機では、通常、掘削軸同士を連結する軸連結装置が少なくとも掘削ヘッドの上部に設けられているが、本発明の多軸掘削機ではこの軸連結装置が2段に設けられ、これらのいずれにも削孔曲がり修正機能が備わっていることを特徴とするものである。
【0020】
軸連結装置は、上下2箇所に設けることによって複数の掘削軸での回転掘削が安定するだけでなく、2段の軸連結装置を操作することで、特に多軸掘削機の先端部付近だけでの調整容易に行うことができるという効果がある。
【0021】
すなわち、大深度の場合には、駆動部からの掘削軸長が長くなり、駆動部自重による座屈曲げや、継ぎ足し部のガタにより掘削軸全長に曲がりが発生することがあり、先端変位が意図しない方向に働くことがあるのに対し、先端部の2段の削孔曲がり修正手段を制御すれば、上方の継ぎ足し部のガタと無関係に削孔曲がりを修正することができる。
【0022】
従来から、掘削ヘッドや掘削ヘッドの近傍に削孔曲がり修正機能を設けた単軸掘削機や多軸掘削機は幾つか知られているが、前述の通り、大深度掘削での削孔曲がりには十分対応できない。本発明のように上下2箇所に削孔曲がり修正機能を設けることによって、大深度掘削で削孔曲がりが生じた場合でもより十分な対応ができる。
【0023】
先端部における安定的な曲がり修正機能を考えた場合、削孔曲がり修正機能を備えた下部軸連結装置の設置位置は、通常、掘削ヘッドと前記撹拌部との間とし、削孔曲がり修正機能を備えた上部軸連結装置の設置位置は、通常、撹拌部の直上部とするのが好ましい。
【0024】
本発明の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機における前記削孔曲がり修正機能は、シリンダ機構等の作動機構で水平方向に伸縮し削孔壁に対して押圧自在な修正制御板により削孔曲がり修正を行うもの等を利用することができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0025】
好適なものとしては、下部軸連結装置及び上部軸連結装置における前記掘削軸同士間の連結部の軸列線を跨ぐ両側面のそれぞれに、各々軸列線に対しほぼ対象位置関係になるように設けられた、孔壁に押圧自在で掘削軸の軸列線方向に対して直交する方向での相互に反対方向に伸縮可能な一対の修正制御板と、該修正制御板を作動させる作動機構とによるものである。
【0026】
修正制御板の位置及び形態としては、修正制御板を隣り合う掘削軸の中間位置の側方に設け、削孔壁への押圧面の水平断面を凹溝状とすることが考えられる。
【0027】
この配置構造では修正制御板は、隣り合う掘削軸の掘削による相重なる削孔の孔内側に突起した箇所を押圧することになるが、修正制御板における削孔壁への押圧面を凹溝状にすることにより接触面積が増え押圧効果が得られ易くなる。
【0028】
本発明おいて、削孔曲がり修正手段は軸連結装置に備わっており、修正制御板は反対方向に作動するように対をなして軸連結装置の狭い連結部に設けているので、作動機構も含めると同一水平面内に設けることが難しい場合もある。その場合は、修正制御板を上下方向2段になるように段差をつけて設けてもよい。
【0029】
本発明の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機のより具体的な形態の一つとしては、撹拌部に撹拌スクリューが設けられており、下部軸連結装置の直上部には下部スクリュー振止が備わっているとともに、駆動装置と上部軸連結装置との間に中間掘削軸振止が備わっている構造のものとすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機を用いれば、大深度掘削のように駆動装置からの掘削軸長が長くなった場合でも、駆動部自重による座屈曲りや継ぎ足し部のガタによる掘削軸全長の曲がり(撓み)の影響を受けることなく意図した方向への掘削作業ができ、削孔曲がりが生じた場合でも容易に修正できるので施工効率、施工精度が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機の一実施形態の全体を示す図である。(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機における削孔曲がり修正装置を備えた軸連結装置の一実施形態を示す図である。(a)は修正制御板の設置構造の一例を示す平断面図、(b)は軸連結装置の全体を示す正面図、(c)はA矢視図である。
【図3】修正制御板の他の形態例を示す平断面図である。
【図4】本発明の多軸掘削機による掘削施工での削孔曲がり修正装置の動作原理(修正制御板の動作)を示す多軸掘削機の側面方向からの模式図である。
【図5】比較として示す従来の削孔曲がり修正機能付き多軸掘削機による掘削施工での削孔曲がり修正装置の動作原理(修正制御板の動作)を示す多軸掘削機の側面方向からの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0033】
図1は、本発明の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機の一実施形態の全体を示す図である。(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0034】
この多軸掘削機1は、自走可能なクローラ型のベースマシン2にステー4により直立状態にリーダマスト3に沿って駆動装置7が、その上部のシーブ5、リーダマスト3の上端のシーブ5を経由してベースマシン2上のウインチに導かれるワイヤー6により昇降自在に支持され、この駆動装置7の下部に3本の掘削軸8,8,8が並列垂設されたものである。
【0035】
駆動装置7内のモータから各掘削軸8,8,8に回転を分岐伝達して、各掘削軸8,8,8の下端に設けられた掘削ヘッド10とその上方の撹拌スクリュー(撹拌部)9により同時に複数の縦孔を掘削し、連続地中壁等を構築できるようになっている。
【0036】
そして、掘削ヘッド10と撹拌スクリュー(撹拌部)9の間には、掘削軸同士を掘削軸が回転可能に連結するとともに、孔曲がりを修正するための削孔曲がり修正装置14を備えた非回転の下部軸連結装置13が設けられている。
【0037】
さらに、撹拌スクリュー(撹拌部)9の直上部にも、掘削軸同士を掘削軸が回転可能に連結するとともに孔曲がりを修正するための削孔曲がり修正装置14を備えた非回転の上部軸連結装置12が設けられている。
【0038】
また、駆動装置7と上部軸連結装置12との中間付近にも結束バンド11が設けられている。
【0039】
このように、軸連結装置を上下方向の2箇所に設け、これらの軸連結装置12,13に各々孔曲がりを修正するための削孔曲がり修正装置14を備えたことにより、大深度掘削の場合でも駆動部自重による座屈曲りや継ぎ足し部のガタによる掘削軸全長の曲がり(撓み)の影響を受けることなく意図した方向への掘削作業ができ、削孔曲がりが生じた場合でも容易に修正できる。
【0040】
図2は、本発明の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機における削孔曲がり修正装置を備えた軸連結装置の一実施形態を示す図である。(a)は修正制御板の設置構造の一例を示す平断面図、(b)は軸連結装置の全体を示す正面図、(c)はAでの矢視図である。この構造は、上部軸連結装置12と下部軸連結装置13とで同じである。
【0041】
〔削孔曲がり修正装置付き軸連結装置の構造〕
この削孔曲がり修正装置付き軸連結装置100は、大略、3本の掘削軸102,102,102を回転可能に連結する連結枠と2つ連結部104,104に各々設けられた削孔曲がり修正装置101からなる。
【0042】
削孔曲がり修正装置101は、掘削軸102,102同士間の連結部104の軸列線Lを跨ぐ両側面のそれぞれに、各々軸列線Lに対しほぼ対称位置関係になるように段差をつけて設けられた、削孔壁103に押圧自在で掘削軸の軸列面方向に対して直交する方向での相互に反対方向に伸縮可能な一対の修正制御板105,105と、該修正制御板を作動させる作動機構からなる。
【0043】
作動機構は、ここでは油圧シリンダ107によるシリンダ機構である。図2(a)からわかるように、各対の修正制御板105,105の設置位置は、各掘削軸102により形成される削孔壁103の弧が重なった削孔壁が孔内に向かって突出している箇所である。
【0044】
削孔曲がり修正装置付き軸連結装置100の構造を図2(b)、図2(c)に沿ってより詳しく説明すると、連結部104内に設置された油圧シリンダ107以外の機器としては、削孔曲がり修正装置付き軸連結装置100の傾斜等を測定し、ベースマシン及び地上にてオペレータとの通信を行なうための傾斜計測機器・信号送受信器108、油圧シリンダ107へ油圧を分配・駆動するための油圧シリンダ制御バルブ109、各機器の電源となる信号伝送、油圧シリンダ制御バルブ駆動用電源110を装備している。
【0045】
掘削軸102の中心軸には、油圧供給用に油圧内管115が掘削軸102に内蔵され、掘削軸8との接続の際に油圧内管接続ジョイント114を介し、油圧源からの油圧を削孔曲がり修正装置付き軸連結装置100内に供給している。
【0046】
更に油圧スイベル部116を介し、連結部104内に設置された油圧シリンダ制御バルブ109へと油圧が供給される構成となっている。
【0047】
掘削軸102の外側軸には、傾斜信号や油圧シリンダ制御バルブ操作信号等を伝送するための信号伝送内管113が内蔵され、掘削軸8との接続の際には信号伝送ジョイント111を介すようになっている。
【0048】
図3は、修正制御板の他の形状を示す平断面図である。修正制御板105は、削孔壁への押圧面が図2に示すものでは平面上であったが、ここでは凹溝状になっている。図2に示す修正制御板の配置構造では、修正制御板は隣り合う掘削軸の掘削による相重なる削孔の孔内側に突起した箇所を押圧することになるので、削孔壁への押圧面を凹溝状にすることにより接触面積が増え押圧効果が得られ易くなる。
【0049】
次に、上記削孔曲がり修正装置付き軸連結装置100における削孔曲がり修正装置101の動作について図2に基づき説明する。
【0050】
〔削孔曲がり修正装置の動作〕
(1)軸連結装置における動作
連結部104に設置された傾斜計測機器・信号送受信器108の傾斜計測機器により削孔曲がり修正装置付き軸連結装置100の傾斜が計測されると、信号送受信器108により計測信号が発信され、信号伝送内管113から信号伝送ジョイント111を介し、接続されている掘削軸8へと伝わり、ベースマシン及び地上にてオペレータがリアルタイムの削孔曲がり情報が得られる。その情報により、適切な修正操作を行う。
【0051】
修正動作に必要な指令は、油圧シリンダ107に作動油を供給することと、削孔曲がり修正装置14(下部修正装置)及び削孔曲がり修正装置14(上部修正装置)に、削孔曲がり情報伝達経路を利用して、それぞれ搭載された油圧シリンダ制御バルブ109を作動させる信号を送信することで、動作中は傾斜計測機器からの情報を確認しつつ、各油圧シリンダを作動させて削孔曲がり修正を行う。
【0052】
(2)多軸掘削機による掘削施工での動作原理
図4は、上記軸連結装置における動作に基づき、本発明の多軸掘削機1による掘削施工での削孔曲がり修正装置14の動作原理(修正制御板17の動作)を示すものである。図5は、比較として示す従来の削孔曲がり修正機能付き多軸掘削機20による掘削施工での削孔曲がり修正装置14の動作原理(修正制御板17の動作)を示すものである。
【0053】
図5に示す従来の削孔曲がり修正機能付き多軸掘削機20では、掘削ヘッド10の直上部の1箇所のみに削孔曲がり修正装置14が備わっている。削孔曲がり修正装置14の形態は様々なものがあるが、ここでは比較し易いように、水平方向での反対方向に伸縮可能で削孔壁19を押圧自在な対の修正制御板17が設けてある。
【0054】
従来通りの掘削方法で掘削していく途中で地盤内の硬岩に掘削ヘッドが当たったりすると掘進方向が曲げられる削孔曲がりが生じる。ここでは掘削軸8(掘削ヘッド10)が左にθ°曲がっている(左図)。
【0055】
これを傾斜計測器で検知することにより削孔曲がり修正装置14による修正動作(修正動作「1」)が働く。具体的には、曲げられた方向側の修正制御板17が油圧シリンダ機構等で伸長し削孔壁19を押圧することにより反力で掘削軸8(掘削ヘッド10)の曲がりが修正される。
【0056】
しかし、大深度掘削のように掘削軸8が長く、かつ削孔曲がりの原因が解消されないで掘削ヘッド10が固定されている場合は、上記のように曲がりは修正されず、掘削ヘッド10が支点となって発生するモーメント荷重が掘削軸8全体に伝わって軸曲がりが発生し、掘削軸8(掘削ヘッド10)の傾斜角度が(θ+α)°に増加してしまうことが起る。(右図)このように、従来の削孔曲がり修正機能付き多軸掘削機20では、削孔曲がりが解決できない場合がある。
【0057】
図4に示す本発明の削孔曲がり修正機能付き多軸掘削機1では、掘削ヘッド10の直上部の削孔曲がり修正装置14(下部修正装置)に加え、撹拌スクリュー(撹拌部)9の直上部にも同様の削孔曲がり修正装置14(上部修正装置)が備わっている。削孔曲がり修正装置14は軸連結装置に設けられており、その詳細は図3に示す通りである。
【0058】
従来通りの掘削方法で掘削していく途中で地盤内の硬岩に掘削ヘッドが当たったりすると掘進方向が曲げられる削孔曲がりが生じる。ここでは掘削軸8(掘削ヘッド10)が左にθ°曲がっている(左図)。
【0059】
これを削孔曲がり修正装置14(下部修正装置)に設けられた傾斜計測器で検知することにより削孔曲がり修正装置14(下部修正装置)による修正動作(修正動作「1」)が働く。具体的には、曲げられた方向側の修正制御板17が油圧シリンダ機構等で伸長し削孔壁19を押圧することにより反力で掘削軸8(掘削ヘッド10)の曲がりが修正される。
【0060】
削孔曲がり修正装置14(上部修正装置)に設けられた傾斜計測器が掘削軸8(撹拌スクリュー9)の傾斜を検知した場合は、削孔曲がり修正装置14(上部修正装置)による修正動作(修正動作「2」)が働く。具体的には、修正制御板17が先の修正動作「1」での修正制御板17の伸長方向とは反対方向に伸長し反力で掘削軸8(撹拌スクリュー9)全体の傾斜を矯正する。
【0061】
以上のように、本発明の削孔曲がり修正機能付き多軸掘削機1では、修正動作「1」と修正動作「2」によって大きなモーメント荷重が掘削軸8の先端部(掘削ヘッド10)を修正したい方向に変位させることができる。したがって、掘削軸8の一定長さが矯正されることにより掘進方向が基準点に向かうため高い削孔曲がり修正効果が得られる。
【符号の説明】
【0062】
1…多軸掘削機、2…ベースマシン、3…リーダマスト、4…ステー、5…シーブ、6…ワイヤー、7…駆動装置、8…掘削軸、9…撹拌スクリュー(撹拌部)、10…掘削ヘッド、11…結束バンド、12…上部軸連結装置、13…下部軸連結装置、14…削孔曲がり修正装置、15…下部スクリュー振止、16…中間掘削軸振止、17…修正制御板、18…削孔、19…削孔壁、20…従来の削孔曲がり修正機能付き多軸掘削機、
100…削孔曲がり修正装置付き軸連結装置、101…削孔曲がり修正装置、L…軸列線、102…掘削軸、103…削孔壁、104…(軸連結装置の)連結部、105…修正制御板、106…修正制御板の作動軌跡、107…油圧シリンダ、108…傾斜計測機器・信号送受信器、109…油圧シリンダ制御バルブ、110…信号伝送、油圧シリンダ制御バルブ駆動用電源、111…信号伝送ジョイント、112…掘削軸接続ジョイント、113…信号伝送内管、114…油圧内管接続ジョイント、115…油圧内管、116…油圧スイベル部、117…軸受、118…外圧用回転シール部、119…内部用回転シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に掘削ヘッドを有し、該掘削ヘッドの上方に撹拌部が備わった複数本の掘削軸が並列配置されてなる地盤掘削用の多軸掘削機であって、前記複数の掘削軸を連結する軸連結装置を、下部軸連結装置とその上方に間隔をおいた上部軸連結装置の2段に設け、前記下部軸連結装置及び上部軸連結装置のそれぞれに、掘削孔壁面に反力をとって前記掘削軸の連結位置を変位させ、掘削方向を修正する削孔曲がり修正手段が設けられていることを特徴とする削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機。
【請求項2】
前記削孔曲がり修正手段は、前記掘削軸の軸列線を跨ぐ両側にそれぞれ設けられた、掘削孔壁面に押圧自在で掘削軸の軸列線方向に対して直交する方向での相互に反対方向に伸縮可能な一対の修正制御板と、該修正制御板を作動させる作動機構とを備えたものであることを特徴とする請求項1記載の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機。
【請求項3】
前記修正制御板は、隣り合う掘削軸の中間位置の側方に位置し、削孔壁への押圧面の水平断面が凹溝状になっていることを特徴とする請求項2記載の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機。
【請求項4】
前記撹拌部には撹拌スクリューが設けられており、前記下部軸連結装置の直上部には下部スクリュー振止が備わっているとともに、前記駆動装置と前記上部軸連結装置との間には中間掘削軸振止が備わっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の削孔曲がり修正機能を備えた多軸掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−40527(P2013−40527A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179328(P2011−179328)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000179915)ジェコス株式会社 (27)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)