説明

削孔装置

【課題】 従来の掘削装置を大型化することなく、長尺鋼管を精度よく打設することができるようにする。
【解決手段】 削岩機11と、この削岩機11を搭載してスライドさせるガイドセル12と、このガイドセル12に、取付けアーム17を介して取付けられた、長尺鋼管21を把持する把持部材16及びこの把持部材16と上記ガイドセル12との距離を伸縮させる油圧シリンダー18とを備えたスライドセントライザー15と、基台14に取付けられ、上記ガイドセル12を昇降させる昇降手段13とを備えた削孔装置10を用いて、切羽前方の地山に打設されたガイド管内に上記長尺鋼管21を挿入した後、上記昇降手段13により上記ガイドセル12を上昇させるとともに、上記油圧シリンダー18を作動させて把持部材16とガイドセル12との距離を縮めて、削孔ロッド30の接続部と上記削岩機11とを接続し、上記長尺鋼管21を上記地山内に推進するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の鋼管を切羽の地山などに打設する際に使用される削孔装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、軟弱な地盤にトンネルを掘進する際には、トンネル掘削に先立って切羽前方の地山を補強する地山先受工が行われている。地山先受工の一例としては注入式長尺先受工法がある。この工法は、図6(a)に示すように、切羽前方の地山50に、トンネル掘削に一般に使用されるドリルジャンボ等の削孔装置60を用い、支保工51の背面から5度程度の仰角を付けて複数の鋼管52を接続しながら打ち込み、この鋼管52内に図示しない注入管を挿入して上記地山50内に地盤固化剤を注入し、上記地山50を補強するもので、図6(b)に示すように、上記長尺の鋼管53を、切羽天端部に沿って必要な補強の範囲(例えば、仰角θが120度である範囲)に打設した後、上記鋼管53内に充填材を充填して補強する。
上記長尺の鋼管53を打設する際には、図7(a)に示すように、上記鋼管52内に、先端部に削孔用の拡径ビット31を備えた削孔ロッド30を挿入し、この削孔ロッド30の他端側を上記削孔装置60のガイドセル62に搭載された削岩機61に接続し、上記地山50を削孔しながら上記鋼管52を上記地山50内へ挿入する。このとき、上記鋼管52としては、3m程度の長さのものを順次継ぎ足して長尺の鋼管53を打設する。また、支保工51を延長して構築するためには、上記鋼管52の上記支保工51から下の部分を撤去する必要があることから、撤去作業を容易にするため、図7(b)に示すように、長尺の鋼管53の最後端部の管54を、鋼管52に代えて、塩化ビニル管などの破砕し易い樹脂製の管としている(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2000−186490号公報
【特許文献2】特開2003−155888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の注入式長尺先受工法では、複数本の鋼管52を継ぎ足して長尺の鋼管53としているため、所望の打設角度が得られないなど、長尺の鋼管53を精度よく打設することが困難であるだけでなく、鋼管52,52の接続作業に時間と手間がかかるので、作業効率が悪いといった問題点があった。
そこで、上記予め9m程度の長尺鋼管を準備し、これを地山50内に挿入することも考えられるが、この場合には、上記長尺鋼管を打設するための、ストロークの大きな大型の削孔装置を準備する必要である。しかしながら、大型の削孔装置は装置が高価で、装備に時間や手間がかかるだけでなく、大型の削岩機を用いて、トンネル70の横断面となる切羽天端部に沿って上記長尺鋼管を多数打設することは、トンネル70の径がかなり大きな場合を除いては現実的には困難である。
【0004】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、従来の削孔装置を大型化することなく、長尺鋼管を精度よく打設することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の請求項1に記載の発明は、その出力軸において、先端部に削孔用ビットを備えた削孔ロッド後端の接続部に接続される削岩機と、この削岩機を搭載してスライドさせるガイドセルとを備え、地山内に長尺の鋼管を打設するための削孔装置であって、上記ガイドセルに、長尺鋼管を把持しながらスライドさせるスライド機構と上記長尺鋼管の把持部とガイドセルとの距離を伸縮させる手段とを備えたスライドセントライザーを取付けるとともに、上記ガイドセルを上下させる機構を設けて、予め形成された削孔または、地山に打設された管内に上記長尺鋼管を挿入する際には、上記長尺鋼管を上記削孔または上記管方向にスライドさせ、上記長尺鋼管を打設する際には、上記ガイドセルを上昇させるとともに、上記長尺鋼管の把持部とガイドセルとの距離を縮めて、上記長尺鋼管内に別途挿入された上記削孔ロッドの接続部と上記削岩機とを接続可能としたものである。
なお、上記長尺鋼管とは、その長さが、通常使用される鋼管(普通鋼管:長さは3m程)の長さの2〜5倍の長さを有する鋼管をいう。
本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の削孔装置において、スライドセントライザーを、上記長尺鋼管を把持する把持部と、一端側が上記ガイドセルに取付けられ、他端側が上記把持部に取付けられた、例えば、油圧ジャッキのような伸縮装置とから構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、削孔装置の削岩機を搭載するガイドセルに、長尺鋼管を把持しながらスライドさせるスライド機構と上記長尺鋼管の把持部と、油圧ジャッキなどのガイドセルとの距離を伸縮させる手段とを備えたスライドセントライザーを取付けるとともに、上記ガイドセルを上下させる機構を設けて、予め形成された削孔または、地山に打設された管内に上記長尺鋼管を挿入する際には、上記長尺鋼管を上記削孔または上記管方向にスライドさせ、上記長尺鋼管を打設する際には、上記ガイドセルを上昇させるとともに、上記長尺鋼管の把持部とガイドセルとの距離を縮めて、上記長尺鋼管内に別途挿入された上記削孔ロッドの接続部と上記削岩機とを接続可能としたので、従来の削孔装置を大型化することなく、長尺鋼管を精度よく打設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の形態について説明する。
図1は、本発明の最良の形態に係る削孔装置10の構成を示す図で、11は長尺鋼管21の内部に挿入された削孔ロッド30に接続される削岩機、12は上記削岩機11を搭載してスライドさせるガイドセル、13は基台14上に設置されガイドセル12を昇降させるための昇降手段、15,15は上記長尺鋼管21を把持してスライドさせるスライドセントライザーで、上記削孔ロッド30は、先端部に削孔用のビット(拡径ビット)31を備え、基端部が、カップリング32を介して、上記削岩機11の出力軸11aに接続される。
上記スライドセントライザー15は、詳細には、図2に示すように、長尺鋼管21をその下部から把持する把持部材16と、上記ガイドセル12に、上記ガイドセル12の両外側に突出するように取付けられた取付アーム17,17を介して取付けられた2本の油圧シリンダー18,18とを備えたもので、上記油圧シリンダー18,18の固定部であるシリンダー部18a,18aが上記取付アーム17,17にそれぞれ固定され、可動部であるシリンダロッド18b,18bの先端部が上記把持部材16に取付けられる。これにより、長尺鋼管21を把持する把持部材16を、ガイドセル12に対して昇降させることができるので、長尺鋼管21とガイドセル12との距離を伸縮させることができる。
また、本例では、挿入前あるいは挿入初期段階において、上記スライドセントライザー15とともに上記長尺鋼管21を確実に保持するため、削岩機11の上部に上記長尺鋼管21の後端側を保持する保持部材19を取付ている。
【0008】
図3(a)〜(e)は、本発明の削孔装置10を用いて長尺鋼管を切羽前方の地山50に打設方法を示す模式図で、本例では、まず、図3(a)に示すように、長尺鋼管21の打設に先行して、上記長尺鋼管21の径よりも径が大きく、長さが3m程度の、通常使用される鋼管と同じ長さのガイド管22を地山50の切羽面に最も近い位置の支保工51の背面から5度程度の仰角を付けて打ち込み、このガイド管22をガイドとして長尺鋼管21を打設する。このとき、上記ガイド管22が地山50の既に打設された長尺鋼管21により補強されていない部分に露出しないように、上記ガイド管22を、ガイド管22全体が、既に打設された長尺鋼管21の下側(支保工51側)に位置するような箇所に打込むことが好ましい。
本例では、上記ガイド管22として塩化ビニル管などの樹脂製の管を用いている。そして、図4(a)に示すように、通常使用される鋼管(以下、普通鋼管という)52の外側に上記ガイド管22を被せ、上記普通鋼管52内に、先端部に削孔用の拡径ビット31を備え、基端部33が、カップリング32を介して、削孔装置10の削岩機11の出力軸11aに接続される削孔ロッド30を挿入するとともに、上記削岩機11をガイドセル12に沿って前進させ、切羽前方の地山50を削孔しながら上記普通鋼管52とガイド管22とを一体に推進する。上記ガイド管22の打設後には、上記普通鋼管52を回収するとともに、上記拡径ビット31の径を縮小して、上記削孔ロッド30を回収する。
次に、図3(b)に示すように、上記ガイド管22の中に長さ9m(図では、長さを短くしてある)の長尺鋼管21を挿入する。具体的には、図4(b),(c)に示すように、削孔装置10のガイドセル12にスライドセントライザー15,15を、上記ガイドセル12に沿って移動可能に取付けるとともに、削岩機11の上面にも保持部材19を設置して、上記スライドセントライザー15,15の把持部材16,16と上記保持部材19とにより、長尺鋼管21を上記削岩機11の上部に保持した後、後部のスライドセントライザー15,15を前方(切羽側)にスライドさせて上記長尺鋼管21を上記ガイド管22内に挿入する。このとき、上記挿入された長尺鋼管21内に、予め延長した削孔ロッド30を挿入し、上記長尺鋼管21の後端部に、上記削岩機11と接続するためのカップリング32を取付けておく。
【0009】
長尺鋼管21の挿入後には、図3(c)に示すように、上記長尺鋼管21内に図示しない削孔ロッドの拡径ビットにより、切羽前方の地山50を削孔しながら、上記長尺鋼管21を地山50内に打ち込む。詳細には、図5(a)に示すように、上記削岩機11を前方にスライドさせて上記カップリング32近傍まで移動させた後、昇降手段13により上記ガイドセル12を上昇させると同時に、油圧シリンダー18を作動させて、上記スライドセントライザー15の把持部材16とガイドセル12との距離を縮め、削岩機11の中心と長尺鋼管21の中心、すなわち、上記削岩機11の出力軸11aと上記カップリング32の接続部との高さを一致させた後、上記削岩機11の位置を調整して、上記削岩機11と上記カップリング32とを接続する。
なお、上記作業中には、上記長尺鋼管21に余分な力がかからないように、上記把持部材16と上記ガイドセル12との距離が縮まる速度を、ガイドセル12の上昇速度に同調させるようにする必要がある。これにより、長尺鋼管21の挿入角度を保持したまま、上記長尺鋼管21と削岩機11とを確実に接続することができる。
その後、図5(b)に示すように、削岩機11を稼動させながら上記削岩機11を前方にスライドさせることにより、上記長尺鋼管21を地山50内に打ち込む。
この段階では、上記長尺鋼管21は、ほとんどの部分が切羽前方の地山50内に挿入されるが、後部の3m程度は上記ガイド管22の中にある。そこで、本例では、図3(d)に示すように、上記長尺鋼管21の後端部に押し切り削孔用のダミー管23を接続し、上記長尺鋼管21の後端部を上記ガイド管22内の所定の位置にくるまで上記長尺鋼管21を上記ガイド管22内に挿入し打設する。本例では、上記長尺鋼管21を有効利用するため、上記長尺鋼管21の後端部をガイド管22の先端部近傍にくるまで挿入するようにしている。
【0010】
すなわち、図6(a)に示すように、上記カップリング32を取外して上記削岩機11を後方にスライドさせた後、削孔ロッド30を延長するとともに、上記長尺鋼管21の後端部に上記ダミー管23を接続する。そして、上記ダミー管23の後端部と削岩機11の出力軸11aとを上記カップリング32により接続した後、図6(b)に示すように、削岩機11を駆動させつつ前方にスライドさせ、上記長尺鋼管21を切羽前面の地山50内に更に挿入する。これにより、図3(e)に示すように、上記長尺鋼管21の後端部を上記ガイド管22の先端部近傍にくるまで上記地山50内に挿入することができる。
なお、上記カップリング32を省略して、ダミー管23の後端部と削岩機11の出力軸11aとを当接させた状態で上記長尺鋼管21を挿入するようにしてもよい。
【0011】
このように、本最良の形態によれば、先端部に拡径ビット31を備えた削孔ロッド30に接続される削岩機11と、この削岩機11を搭載してスライドさせるガイドセル12と、このガイドセル12に、取付アーム17を介して取付けられた、長尺鋼管21を把持する把持部材16及びこの把持部材16と上記ガイドセル12との距離を伸縮させる油圧シリンダー18とを備えたスライドセントライザー15と、基台14に取付けられ、上記ガイドセル12を昇降させる昇降手段13とを備えた削孔装置10を用いて、切羽前方の地山50に打設されたガイド管22内に上記長尺鋼管21を挿入した後、上記昇降手段13により上記ガイドセル12を上昇させるとともに、上記油圧シリンダー18を作動させて把持部材16とガイドセル12との距離を縮めて、上記長尺鋼管21内に別途挿入された削孔ロッド30の接続部と上記削岩機11とを接続し、上記地山50を削孔しながら、上記長尺鋼管21を上記地山50内に推進するようにしたので、大型の削孔装置を用いることなく、長尺鋼管21を容易に打設することができる。
また、長尺鋼管21を用いれば、鋼管を継ぎ足すことがないので鋼管の構造が簡単になり、そのため、加工手間がかからないので、鋼管を安価に製造することができる。
【0012】
なお、上記最良の形態では、本発明の削孔装置10を長尺先受け工法に適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、長尺切羽補強工法などのように、長尺鋼管を打設する場合にも適用可能である。
また、長尺鋼管21の長さは9mに限るものではなく、トンネルの大きさや、用いる削孔装置10のストロークの長さ等により適宜設定されるものである。
また、上記例では、油圧シリンダー18を用いて、把持部材16とガイドセル12との距離を伸縮させるようにしたが、ガイドセル12にレールを立設し、このレールに把持部材を昇降動可能に取付けるなど、他の手段を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、従来の削孔装置を大型化することなく、長尺鋼管を精度よく打設することができるので、作業性を大幅に改善することができるとともに、工期を短縮することができる。また、構造が簡単で、加工手間がかからない長尺鋼管を打設することができるので、工費を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の最良の形態に係る削孔装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係るスライドセントライザーの構成を示す図である。
【図3】本発明の削孔装置を用いた長尺鋼管の打設方法の概要を示す図である。
【図4】本最良の形態に係る長尺鋼管の打設方法を示す図である。
【図5】本最良の形態に係る長尺鋼管の打設方法を示す図である。
【図6】本最良の形態に係る長尺鋼管の打設方法を示す図である。
【図7】従来の長尺先受工法の概要を示す図である。
【図8】従来の長尺鋼管の打設方法を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
10 削孔装置、11 削岩機、11a 出力軸、12 ガイドセル、
13 昇降手段、14 基台、15 スライドセントライザー、16 把持部材、
17 取付アーム、18 油圧シリンダー、18a シリンダー部、
18b シリンダーロッド、19 保持部材、21 長尺鋼管、22 ガイド管、
23 押し切り削孔用のダミー管、30 削孔ロッド、31 拡径ビット、
32 カップリング、50 地山、51 支保工、52 普通鋼管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その出力軸において、先端部に削孔用ビットを備えた削孔ロッド後端の接続部に接続される削岩機と、この削岩機を搭載してスライドさせるガイドセルとを備え、地山内に長尺の鋼管を打設するための削孔装置であって、上記ガイドセルに、長尺鋼管を把持しながらスライドさせるスライド機構と上記長尺鋼管の把持部とガイドセルとの距離を伸縮させる手段とを備えたスライドセントライザーを取付けるとともに、上記ガイドセルを上下させる機構を設けて、予め形成された削孔または、地山に打設された管内に上記長尺鋼管を挿入する際には、上記長尺鋼管を上記削孔または上記管方向にスライドさせ、上記長尺鋼管を打設する際には、上記ガイドセルを上昇させるとともに、上記長尺鋼管の把持部とガイドセルとの距離を縮めて、上記長尺鋼管内に別途挿入された上記削孔ロッドの接続部と上記削岩機とを接続可能としたことを特徴とする削孔装置。
【請求項2】
スライドセントライザーを、上記長尺鋼管を把持する把持部と、一端側が上記ガイドセルに取付けられ、他端側が上記把持部に取付けられた伸縮装置とから構成したことを特徴とする請求項1に記載の削孔装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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