説明

前処理液、カートリッジ、インクジェット記録装置及び記録方法、インク記録物

【課題】インクジェット方式で吐出しても泡立ちが少ない前処理液、及び、それを用いたカートリッジ、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及び記録物を提供する。
【解決手段】(I)記録媒体にインクジェット記録を行う前に、記録媒体表面を処理するための前処理液であって、一般式(I)で示される含フッ素4級アンモニウム塩化合物を含有する前処理液。


(式中、RはH、炭素数1〜4の分岐していてもよい低級アルキル基又はフェニル基、R〜Rは炭素数1〜10の分岐していてもよい低級アルキル基、XはSO又はCO、YはI又はBr、mは正の整数、nは4以上の整数を表し、C2n−1は分岐構造を有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理液、該前処理液又はこれとインクジェット用インクを収容したカートリッジ、該カートリッジを搭載したインクジェット記録装置、該前処理液を用いたインクジェット記録方法及びインク記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録を行うに際し、インクを吐出する前に、記録媒体表面に前処理液を適用することは周知である。
例えば特許文献1には、カチオン性化合物として第4級アンモニウム塩を含有する前処理液を用いることが提案されている。
このような前処理液において、カチオン性化合物として、カチオン性のフッ素系界面活性剤を用いることも考えられる。しかし、前処理液をインクジェット方式で記録媒体表面に吐出する場合、前処理液にフッ素系界面活性剤を含有させると、泡立ちにより吐出安定性が低下するといった問題があった。
一方、特許文献2には、現像剤に、パーフルオロアルケニル基を有する含フッ素第4級アンモニウム塩を用いることが提案されている。しかし、インクジェット記録の前処理液に関する記載はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、インクジェット方式で吐出しても泡立ちが少ない前処理液、該前処理液又はこれとインクジェット用インクを容器中に収容したカートリッジ、該カートリッジを搭載したインクジェット記録装置、該前処理液を用いたインクジェット記録方法及びインク記録物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は、次の1)〜5)の発明によって解決される。
1) 記録媒体にインクジェット記録を行う前に、記録媒体表面を処理するための前処理液であって、一般式(I)で示される含フッ素4級アンモニウム塩化合物を含有することを特徴とする前処理液。
【化1】

(式中、RはH、炭素数1〜4の分岐していてもよい低級アルキル基又はフェニル基、R〜Rは炭素数1〜10の分岐していてもよい低級アルキル基、XはSO又はCO、YはI又はBr、mは正の整数、nは4以上の整数を表し、C2n−1は分岐構造を有する。)
2) 1)に記載の前処理液、又は該前処理液とインクジェット用インクを容器中に収容したことを特徴とするカートリッジ。
3) 2)に記載のカートリッジが搭載され、インクジェット用インクに刺激を印加し飛翔させて画像を形成するインク飛翔手段を備えたインクジェット記録装置であって、インクジェットヘッドのノズルプレート面がシリコン樹脂を含有する撥インク層を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
4) 1)に記載の前処理液を用いる記録媒体表面の前処理工程、及びインクジェット用インクに刺激を印加し飛翔させて記録媒体に画像を形成するインク飛翔工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
5) 記録媒体上に、1)に記載の前処理液とインクジェット用インクを用いて形成された画像を有することを特徴とするインク記録物。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、インクジェット方式で吐出しても泡立ちが少ない前処理液、該前処理液又はこれとインクジェット用インクを容器中に収容したカートリッジ、該カートリッジを搭載したインクジェット記録装置、該前処理液を用いたインクジェット記録方法及びインク記録物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】インクジェット記録装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
一般に界面活性剤は発泡性を有し、フッ素系界面活性剤も同様である。したがって、従来公知のフッ素系界面活性剤を含有する前処理液をインクジェット方式で吐出した場合、泡立ちを防止することはできない。また、フッ素の作用で表面張力が低下するためノズル面に対しても濡れ性が上がり、ノズル周辺部にインクが付着して不均一なインク溜まりが発生し、インク滴の吐出方向が曲げられたり、大きなばらつきが生じたりして吐出安定性が低下することもある。
そこで、本発明者らは、インクジェット方式で吐出しても泡立ちなどの問題を生じない前処理液について鋭意検討した結果、フッ素系界面活性剤の発泡性は疎水基(フッ素基)及び親水基(アルキル基、アリール基など)の長さや構造により異なることを知見し、更に、前処理液に前記一般式(I)で表される特定の含フッ素4級アンモニウム塩化合物を含有させれば、上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
一般的なフッ素系界面活性剤は、疎水基として次の式で表されるパーフルオロアルキル基を持つ。
CFCF(CFCF− (但し、mは0以上の整数)
この構造では炭素原子は直鎖状に並び、パーフルオロアルキル基は直鎖状に長く伸びている。
これに対し、本発明で用いる一般式(I)で表される化合物は、炭素鎖が分岐した側鎖状のC2n−1基を有し、特にパーフルオロアルケニル基を有することが好ましい。このパーフルオロアルケニル基は、例えばヘキサフルオロプロペンオリゴマーであり、次の構造のものが例示される。
【化2】

【化3】

この「炭素鎖が分岐した側鎖状のC2n−1基」の立体構造は塊状になる。このように塊状の疎水基が存在することで、界面活性剤の発泡性が抑制されると推測される。またフッ素の作用で撥水性が発揮され、ノズルプレートへのインク固着性が改善される。一方で表面張力の低下によりノズル面に対して濡れ性が上がり周辺部にインクが付着してインク吐出安定性が低下する可能性もあるが、一般式(I)で表される化合物を用いるとこのような問題も生じない。4級アンモニウム塩タイプであることによりノズル面に対し静電的な反発力を保持できるため、濡れ性を悪化させることなく吐出性が保持されると推測している。
【0009】
一般式(I)で表される化合物としては、例えば次の化合物例1〜54に示す構造のものが挙げられる。いずれもパーフルオロアルケニル基を有している。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0010】
一般式(I)で表される化合物の前処理液への添加量は、0.05〜20重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%であるが、特に限定されるものではない。
一般式(I)で表される化合物は水に対し溶けにくい性質を持つことから、水溶性有機溶剤に溶解して用いることが望ましい。また、これらの化合物は単独で又は二種以上を混合して用いることも可能であるし、他の界面活性剤と混合して用いることも可能である。
本発明の前処理液の組成は、通常の場合、インクジェット用インクから有彩色着色剤成分を除き、かつ一般式(I)で表される化合物を加えたものとする。見かけ上は無色又は淡色であり、また処理液の特性はインクとほぼ同じである。
このことから本発明の前処理液は、インクジェット用ヘッド及びノズルからインク同様に噴射することが可能である。またローラーやフェルトなどにより前記処理液を記録媒体に塗布することも可能である。
【0011】
本発明に係る前処理液及びインクジェット用インクで用いられる材料は、例えば以下のとおりである。
インクジェット用インクに用いられる着色剤として特に限定はないが、例えば以下に挙げる顔料が好適に用いられる。また、これらの顔料は複数種類を混合して用いても良い。
無機の黒色顔料であるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒径が10〜50nm、BET法による比表面積が50〜400平方メートル/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9を有するものが好ましい。
このようなものとしては、例えば、#2200B、#2300、#2350、#2400B、#2450B、#2600、#2650、#2700B、#650B、#750B、MA600、MCF88、#850、#900、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#260、#95、CF9、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#45L、#47、#50、#52、MA7、MA8、MA11、MA14、MA77、MA100、MA100R、MA100S、MA220、MA200RB、MA230(以上、三菱化学社製)、Raven700、同760ULTA、同780ULTRA、同790ULTRA、同820、同850、同860ULTRA、同880ULTRA、同890、同890H、同1000、同1020、同1035、同1040、同1060ULTRA、同1080ULTRA、同1100ULTRA、同1170、同1190ULTRA、同1200、同1250、同1255、同1500、同2000、同2500ULTRA、同3000(以上、Columbian社製)、REGAL99R、同250R、同300R、同330R、同400R、同415R、同500R、同660R、MOGAL L、MONARCH700、同800、同880、同900、同1000、同1100、(以上、CABOT社製)、Color BlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、NIPex35、同60、同70、同90、同150、同160IQ、同170IQ、同180IQ、PRINTEX12、同25、同30、同31、同35、同55、同60、同60A、同75、同80、同85、同90、同95、同140U、同140V、同155C、同200、同300、同300IP、同301、SPECIAL BLACK4、同4A、同5、同6、同100、同250、同350、同550(以上、degussa社製)等を使用することができる。なお、これらに限定されるものではない。
【0012】
その他の無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等が挙げられ、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラツク、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料等が挙げられる。
より具体的には色別に以下のものが挙げられる。
イエローインク用顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、同2、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同73、同74、同75、同83、同93、同95、同97、同98、同114、同128、同129、同151、同154等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
マゼンタインク用顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同7、同12、同48(Ca)、同48(Mn)、同57(Ca)、同57:1、同112、同123、同168、同184、同202等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
シアンインク用顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同15:3、同15:34、同16、同22、同60、C.I.バットブルー4、同60等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
また、本発明で用いる各インクに含有される顔料は、本発明のために新たに製造されたものでも使用可能である。
【0013】
前処理液には有彩色着色剤成分は用いないが、記録媒体と同等の淡色の着色剤は用いることが可能である。例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどの白色系無機顔料などが挙げられる。これらを前処理液に添加することにより、ノズルからの噴射性を更に安定させることが可能となり、また画像濃度や発色性の更なる改良が可能となる。
以上に挙げた着色剤は、高分子分散剤や界面活性剤を用いて水性媒体に分散させることにより前処理液やインクジェット用インクとすることができる。
このような顔料粉体を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。
【0014】
水溶性樹脂の具体例としては、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。
これらの水溶性樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であり、中でも重量平均分子量3000〜20000のものが、インクジェット用インクに用いた場合に、分散液の低粘度化が可能であり、かつ分散も容易であるという利点があるので特に好ましい。
【0015】
また、水溶性界面活性剤の具体例としては、アニオン性界面活性剤として、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0016】
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクを所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、着色剤の他に、水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。
湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル類;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類;プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独で又は複数混合して用いられる。
【0017】
また、浸透剤は前処理液やインクジェット用インクと被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。
浸透剤としては、下記式(II)〜(V)で表されるものが好ましい。すなわち、下記式(II)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(III)のアセチレングリコール系界面活性剤、下記式(IV)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤、及び下記式(V)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
【0018】
【化13】

(式中、Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、kは5〜20の整数)
【化14】

(式中、m、nは0〜40の整数)
【化15】

(式中、Rは分岐していてもよい炭素数6〜14の炭化水素鎖、nは5〜20の整数)
【化16】

(式中、Rは炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、nは20以下の自然数)
【0019】
前記式(II)〜(V)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0020】
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクには、従来公知のポリマー粒子を添加することができる。これらのポリマー粒子は樹脂エマルジョンの状態で用いられ、ポリウレタン系、スチレンアクリル系、アクリルシリコン系から選ばれた少なくとも1種類であることが好ましい。特に水系顔料分散体には、ポリウレタン系樹脂エマルジョンが紙への定着性等の点でより好ましい。
樹脂エマルジョンは、インクジェット用インクの調製原料として使用する際、又は前処理液やインクジェット用インク調製後において、O/W型のエマルジョンとして存在するものである。ポリウレタン系樹脂のエマルジョンには、比較的親水性の通常のポリウレタン系樹脂を乳化剤を使用してエマルジョン化したものと、樹脂自体に乳化剤の働きをする官能基を共重合等の手段で導入した自己乳化型樹脂のエマルジョンがある。いずれも使用可能であるが、インクジェット用インクの成分の組み合わせによって、顔料及びエマルジョン粒子の分散安定性に若干の差があるので注意を要する。
顔料や分散剤との各種組み合わせにおいて、常に分散安定性に優れているのはアニオン型自己乳化型ポリウレタンのエマルジョンである。その際、顔料の固着性・分散安定性の面でポリウレタン系樹脂はポリエステル型よりポリカーボネート型の方が好ましく、更にポリエステル型、ポリカーボネート型よりエーテル型の方が好ましい。理由は定かではないが、非エーテル型は耐溶剤性に弱いものが多く、インクの高温保存時に粘度が凝集しやすい。また、理由は定かではないが、水系顔料分散体及び水系顔料インクに前記樹脂エマルジョンを添加し、加熱処理をすることで、処理時間短縮が可能である。
【0021】
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクの表面張力は、20〜60dyne/cmであることが好ましく、記録媒体との濡れ性と液滴の粒子化の両立の観点からは30〜50dyne/cmであることが更に好ましい。
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクの粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましく、吐出安定性の観点からは3.0〜10.0cPであることが更に好ましい。
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクのpHは、3〜11であることが好ましく、接液する金属部材の腐食防止の観点からは6〜10であることが更に好ましい。
【0022】
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクには防腐防黴剤を添加することができる。防腐防黴剤の添加によって、菌の繁殖を抑えることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。防腐防黴剤としては、ベンゾトリアゾール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクには防錆剤を添加することができる。防錆剤の添加によって、ヘッド等の接液する金属面に被膜を形成し、腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクにはpH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
【0023】
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクには酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤の添加によって、腐食の原因となるラジカル種が生じた場合にも酸化防止剤がラジカル種を消滅させるので腐食を防止することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系化合物類やアミン系化合物類が代表的であり、フェノール系化合物類としては、ハイドロキノン、ガレート等の化合物、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系化合物が挙げられ、アミン系化合物類としては、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N′−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニルエチレンジアミン、フェノチアジン、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、4,4′−テトラメチル−ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
上記のほかに、硫黄系化合物としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルβ,β′−チオジブチレート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が例示され、リン系化合物類としては、トリフェニルフォスファイト、トリオクタデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールフォスファイト等が例示される。
【0024】
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクの作成方法としては、着色剤を分散させる従来公知の方法でよい。例えば、まず着色剤を公知の分散機で分散し、必要に応じて遠心分離、濾過等により粗大粒子等を取り除き、着色剤分散液(ミルベース)を得る。なお、着色剤を含まない前処理液については、この工程は不要である。次に湿潤剤、浸透剤、界面活性剤、水等を混合し、均一に混合するように攪拌を行い、次いで、この混合液に対してポリマー粒子、酸化チタン、消泡剤を添加攪拌し、その後、ミルベース、pH調整剤、pH緩衝材を添加し攪拌して、前処理液又はインクジェット用インクを得る。
得られた前処理液又はインクジェット用インクは、原材料に由来するか又は製造過程で発生した粗大粒子を取り除くため、濾過工程を経ることが望ましい。濾過に用いるフィルター孔径は、直径0.5〜10μmが望ましく、製造効率と前処理液又はインクジェット用インクの吐出信頼性の面から3〜7μmがより好ましい。
【0025】
本発明に係る前処理液やインクジェット用インクは容器中に収容してカートリッジとして用いることができるが、その際、前処理液やインクジェット用インクを脱気することが望ましく、好ましくは溶存酸素濃度を5ppm以下とする。
また、インクジェット用インクに刺激を印加し飛翔させて画像を形成するインク飛翔手段を備えたインクジェット記録装置に、上記カートリッジを搭載して用いることができる。その際、インクジェットヘッドのノズルプレート面がシリコン樹脂を含有する撥インク層を有する記録装置であっても好適に用いることができる。
また、本発明の前処理液は、これを用いて記録媒体表面を処理し(前処理工程)、次いで、インクジェット用インクに刺激を印加し飛翔させて記録媒体に画像を形成する(インク飛翔工程)インクジェット記録方法に適用することができる。
その際、普通紙等の記録媒体に対して前処理液を付着させた後、付着液が記録媒体に浸透し、見かけ上、記録媒体表面に液がなくなった直後に、該液体の付着部分に、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤を含有する水系顔料インクを付着させて画像を形成させることが好ましい。これにより、画像のにじみがなく解像度に優れ、また高濃度の画像が得られる。
【0026】
図1に本発明に係るインクジェット記録装置の一例を示す。
この装置は、装置本体101と、装置本体101に装着した用紙を装填するための給紙トレイ102と装置本体101に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ103とを備えている。そして、装置本体101の上カバー111の上面は略平坦な面であり、装置本体101の前カバーの前面112が上面に対して斜め後方に傾斜し、この傾斜した前面112の下方側に、前方(手前側)に突き出した排紙トレイ103及び給紙トレイ102を備えている。更に、前面112の端部側には、前面112から前方側に突き出し、上カバー111よりも低くなった箇所にカートリッジ装填部104を有し、このカートリッジ装填部104の上面に操作キーや表示器などの操作部105を配置している。このカートリッジ装填部104にカートリッジの脱着を行うための開閉可能な前カバー115を有している。
図示を省略したが、この装置は、ノズルプレートを有するインクジェットヘッド、前処理液又はインクジェット用インクを収容したカートリッジを備えており、該ノズルプレートの吐出面にはシリコン樹脂などからなる撥インク層を有する。このインクジェットヘッドに、記録信号に応じてパルス電圧を印加することにより、ノズルから前処理液及びインクジェット用インクが吐出される。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」は「重量部」である。
【0028】
実施例1
(前処理液1の調製)
下記処方の材料を混合し30分攪拌した後、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、更に真空脱気して前処理液1を得た。

・グリセリン 8.5部
・ジエチレングリコール 17.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・化合物例1の界面活性剤 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 23.7部
・2−ピロリドン 2.0部
・純水 44.3部

(ブラックミルベース)
・カーボンブラック(MONARCH880、CABOT社製) 20部
・ノニオン系界面活性剤(RT−100、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

(イエローミルベース)
・C.I.Pigment Yellow 74
(イエローNo.34、大日精化社製) 20部
・ノニオン系界面活性剤(RT−100、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

(マゼンタミルベース作成)
・C.I.Pigment Red 122 20部
(クロモフタールJETマゼンタDMQ、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・ノニオン系界面活性剤(RT−100、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

(シアンミルベース作成)
・C.I.Pigment Blue 15.3
(クロモファインブルー A−220JC、大日精化社製) 20部
・ノニオン系界面活性剤(RT−100、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

上記のそれぞれの混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製:KDL型、メディア:0.3mmφジルコニアボール使用)で循環分散し、その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やごみを除去し、体積平均粒子径70nmの水系ブラックミルベースA、イエローミルベースA、マゼンタミルベースA、シアンミルベースAをそれぞれ得た。

【0029】
(インクの調製)
上記のようにして得た各色ミルベースAを用いて、下記処方の混合物を調製し、30分攪拌後、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、更に真空脱気してインクジェット用インクを得た。
(ブラックインク1)
・ブラックミルベースA 40.0部
・グリセリン 8.5部
・ジエチレングリコール 17.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 13.7部
・2−ピロリドン 2.0部
・純水 14.3部

(イエローインク1)
・イエローミルベースA 50.0部
・グリセリン 3.5部
・ジエチレングリコール 23.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 10.0部
・純水 8.5部

(マゼンタインク1)
・マゼンタミルベースA 60.0部
・グリセリン 2.5部
・ジエチレングリコール 20.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 6.0部
・純水 6.5部

(シアンインク1)
・シアンミルベースA 45.0部
・グリセリン 4.5部
・ジエチレングリコール 24.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 10.0部
・純水 11.5部

得られた前処理液1及び各色インク1をカートリッジに充填した。
次にインクジェットプリンター(リコー社製:IPSiO GX5000)を改造し、ノズルプレート面にシリコン樹脂を含有する撥インク層を有するインクジェットヘッドを5ヶ装着し、上記カートリッジを挿入した。ゼロックス社製PPC用紙4200を用い、始めに前処理液を吐出し、次いで、各色インクを吐出するように印刷パターンチャートを印字した。得られたインク記録物の画像濃度をXriteで測定したところ、ベタ部の濃度は均一であり、文字のエッジ部のにじみも見られず、細線の解像度も良好なものであった。
さらに、前処理液1のカートリッジを確認したところ、ノズルからの前処理液の吐出にムラは見られず、カートリッジの中で泡は発生していなかった。
【0030】
実施例2
(前処理液2)
下記処方の材料を混合し30分攪拌後、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、更に真空脱気して前処理液2を得た。

・グリセリン 8.5部
・ジエチレングリコール 17.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・化合物例28の界面活性剤 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 23.7部
・2−ピロリドン 2.0部
・純水 44.3部

得られた前処理液2をカートリッジに充填した。
実施例1と同じプリンターを用い、前処理液1のカートリッジに代えて、前処理液2のカートリッジを装着しヘッド洗浄を行った。各色カートリッジは実施例1と同じとした。次いで、実施例1と同様にゼロックス社製PPC用紙4200を用い、始めに前処理液を吐出し、次いで各色インクを吐出するように印刷パターンチャートを印字した。
得られたインク記録物の画像濃度をXriteで測定したところ、ベタ部の濃度は均一であり、文字のエッジ部のにじみも見られず、細線の解像度も良好なものであった。
さらに、前処理液2のカートリッジを確認したところ、ノズルからの前処理液の吐出にムラは見られず、カートリッジの中で泡は発生していなかった。
【0031】
実施例3
(白色ミルベース)
・酸化チタン(テイカ社製) 20部
・ノニオン系界面活性剤(RT−100、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

上記の混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製:KDL型、メディア:0.1mmφジルコニアボール使用)で循環分散し、その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やごみを除去し、体積平均粒子径70nmの水系白色ミルベースAを得た。

(前処理液3)
下記処方の材料を混合し30分攪拌後、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、更に真空脱気して前処理液3を得た。

・白色ミルベースA 40.0部
・グリセリン 8.5部
・ジエチレングリコール 17.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・化合物例2の界面活性剤 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 13.7部
・2−ピロリドン 2.0部
・純水 14.3部

次にインクジェットプリンター(リコー社製:IPSiO GX3000)を改造し、インクジェットヘッドを保持するキャリッジの上流側に、記録媒体に接触するようにフェルト状の塗布部材を設置した。フェルトには前処理液が適時滴下するようタンクを設置した。このタンクに前処理液3を充填しフェルトに充分前処理液を含浸させた。
この改造機に実施例1で作成したインク1の各色カートリッジ4ヶを挿入した。次いでゼロックス社製PPC用紙4200を用い印刷パターンチャートを印字した。
得られたインク記録物の画像濃度をXriteで測定したところ、ベタ部の濃度は均一であり、文字のエッジ部のにじみも見られず、細線の解像度も良好なものであった。
【0032】
実施例4
(前処理液4)
下記処方の材料を混合し30分攪拌後、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、更に真空脱気して前処理液4を得た。
次いで、この前処理液4をカートリッジに充填した。

・グリセリン 8.5部
・ジエチレングリコール 17.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・化合物例37の界面活性剤 2.5部
・ウレタン樹脂エマルジョン(W−5661、三井化学社製) 23.7部
・2−ピロリドン 2.0部
・純水 44.3部

(ブラックミルベース)
・カーボンブラック(NIPex150、デグサ社製) 20部
・アニオン系界面活性剤(A−51−B、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

(イエローミルベース)
・C.I.Pigment Yellow 74
(イエローNo.34、大日精化社製) 20部
・アニオン系界面活性剤(A−51−B、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

(マゼンタミルベース作成)
・C.I.Pigment Red 122 20部
(クロモフタールJETマゼンタDMQ、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・アニオン系界面活性剤(A−51−B、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

(シアンミルベース作成)
・C.I.Pigment Blue 15.3
(クロモファインブルー A−220JC、大日精化社製) 20部
・アニオン系界面活性剤(A−51−B、竹本油脂社製) 5部
・純水 80部

上記のそれぞれの混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製:KDL型、メディア:0.3mmφジルコニアボール使用)で循環分散し、その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やごみを除去し、体積平均粒子径70nmの水系ブラックミルベースB、イエローミルベースB、マゼンタミルベースB、シアンミルベースBをそれぞれ得た。

【0033】
(インクの調製)
上記のようにして得た各色ミルベースBを用いて、下記処方の混合物を調製し、30分攪拌後、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、更に真空脱気してインクジェット用インクを得た。
(ブラックインク2)
・ブラックミルベースB 40.0部
・グリセリン 8.5部
・ジエチレングリコール 17.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 1.5部
・アクリル樹脂エマルジョン(J−450、BASF社製) 13.7部
・2−ピロリドン 2.0部
・純水 15.3部

(イエローインク2)
・イエローミルベースB 50.0部
・グリセリン 3.5部
・ジエチレングリコール 23.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 1.5部
・アクリル樹脂エマルジョン(J−450、BASF社製) 10.0部
・純水 9.5部

(マゼンタインク2)
・マゼンタミルベースB 60.0部
・グリセリン 2.5部
・ジエチレングリコール 20.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 1.5部
・アクリル樹脂エマルジョン(J−450、BASF社製) 6.0部
・純水 7.5部

(シアンインク2)
・シアンミルベースB 45.0部
・グリセリン 4.5部
・ジエチレングリコール 24.5部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・アニオン系界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩) 1.5部
・アクリル樹脂エマルジョン(J−450、BASF社製) 10.0部
・純水 12.5部

得られた各色インク2をカートリッジに充填した。
次に実施例1で用いたインクジェットプリンター(リコー製IPSiO GX5000)改造機に、前処理液4のカートリッジ及び各色インク2のカートリッジを装着し、ヘッド洗浄を行った。次いで、実施例1と同様にゼロックス社製PPC用紙4200に対し、始めに前処理液を吐出し、次いで各色インクを吐出するように印刷パターンチャートを印字し、得られたインク記録物の画像濃度をXriteで測定した。
得られた画像は、ベタ部の濃度が均一で、文字のエッジ部のにじみも見られず、細線の解像度も良好なものであった。
前処理液4のカートリッジを確認したところ、ノズルからの前処理液の吐出にムラは見られず、カートリッジの中で泡は発生していなかった。
【0034】
実施例5〜15
実施例1の前処理液における界面活性剤を、化合物例7,8,9,11,14,20,24,31,42,45,49にそれぞれ変えた点以外は、実施例1と同様にして前処理液を調製し、前処理液5〜15を得た。
得られた各前処理液を実施例1と同様にしてカートリッジに充填し、実施例1と同じインクジェットプリンター改造機により、ゼロックス社製PPC用紙4200に対し、始めに前処理液を吐出し、次いで実施例1で作成した各色インク1組成物を吐出するように印刷パターンチャートを印字した。
得られたインク記録物の画像濃度をXriteで測定したところ、ベタ部の濃度は均一で、文字のエッジ部のにじみも見られず、細線の解像度も良好なものであった。
さらに、各前処理液のカートリッジを確認したところ、ノズルからの前処理液の吐出にムラは見られず、カートリッジの中で泡は発生していなかった。
【0035】
比較例1
実施例1で得られた各色インク1をカートリッジに充填した。
次いで、実施例1と同様にして改造したインクジェットプリンター(リコー社製:IPSiO GX5000)に、上記カートリッジを装着し、ゼロックス社製PPC用紙4200に印刷パターンチャートを印字し、得られたインク記録物の画像濃度をXriteで測定した。
得られた画像は、ベタ部の濃度が不均一であり、全体に濃度が低く、文字のエッジ部のにじみが見られ、解像度の悪い画像となってしまった。
【0036】
比較例2
(前処理液5)
下記処方の材料を混合し30分攪拌後、孔径0.5μmのメンブランフィルターでろ過し、更に真空脱気して前処理液5を得た。

・グリセリン 8.5部
・ジエチレングリコール 17.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
・化合物例55の界面活性剤(炭素鎖が直鎖状のフッ素系界面活性剤) 2.5部
・アクリル樹脂エマルジョン 23.7部
・2−ピロリドン 2.0部
・純水 44.3部

得られた前処理液5をカートリッジに充填した。
次に実施例1で用いたインクジェットプリンター(リコー製IPSiO GX5000)改造機に、前処理液5のカートリッジ及び実施例4で作成した各色インク2のカートリッジを装着し、ヘッド洗浄を行った。次いで実施例1と同様にゼロックス社製PPC用紙4200に始めに前処理液を吐出し次いで各色インクを吐出するように印刷パターンチャートを印字し、得られたインク記録物の画像濃度をXriteで測定した。
得られた画像はベタ部の濃度は不均一で、文字のエッジ部はところどころでにじみが見られ、全体に解像度の低い画像となってしまった。前処理液5のカートリッジを確認したところ、ノズルからの前処理液の吐出にムラが見られ、カートリッジの中では泡が大量に発生していた。
【符号の説明】
【0037】
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 カートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前カバーの前面
115 前カバー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特許第2711098号公報
【特許文献2】特開平6−148942号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクジェット記録を行う前に、記録媒体表面を処理するための前処理液であって、一般式(I)で示される含フッ素4級アンモニウム塩化合物を含有することを特徴とする前処理液。
【化17】

(式中、RはH、炭素数1〜4の分岐していてもよい低級アルキル基又はフェニル基、R〜Rは炭素数1〜10の分岐していてもよい低級アルキル基、XはSO又はCO、YはI又はBr、mは正の整数、nは4以上の整数を表し、C2n−1は分岐構造を有する。)
【請求項2】
請求項1に記載の前処理液、又は該前処理液とインクジェット用インクを容器中に収容したことを特徴とするカートリッジ。
【請求項3】
請求項2に記載のカートリッジが搭載され、インクジェット用インクに刺激を印加し飛翔させて画像を形成するインク飛翔手段を備えたインクジェット記録装置であって、インクジェットヘッドのノズルプレート面がシリコン樹脂を含有する撥インク層を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載の前処理液を用いる記録媒体表面の前処理工程、及びインクジェット用インクに刺激を印加し飛翔させて記録媒体に画像を形成するインク飛翔工程を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
記録媒体上に、請求項1に記載の前処理液とインクジェット用インクを用いて形成された画像を有することを特徴とするインク記録物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−214902(P2010−214902A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66942(P2009−66942)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】