説明

前立腺癌を検出するための造影剤

本発明は、ヒト又は動物における前立腺癌を診断するための造影剤に関する。これらの造影剤は、前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができるターゲティングモジュール及び検出可能ユニットを含んだ化合物である。本発明は、ヒト又は動物における前立腺癌を診断するためにそのような化合物を使用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌を診断するための化合物に関し、当該化合物は、前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができるターゲティングモジュール及び検出可能ユニットを含む。
【0002】
本発明は、前述の化合物を含んだ診断用組成物にも関する。
【0003】
さらに、本発明は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌を診断するための薬物の製造におけるそのような化合物及び診断用組成物の使用に関する。
【0004】
本発明は、前述の化合物及び診断用組成物を使用することにより、ヒト又は動物における前立腺癌をin vivoで診断する方法にも関する。
【背景技術】
【0005】
前立腺癌は、アメリカ合衆国において最も一般的な男性悪性腫瘍であり、男性の癌関連死における2番目に主要な原因である(Jemal et al.(2003)in Cancer Statistics in CA Cancer J. Clin.,53:5−26)。全ての男性癌のうち29%、及び、男性の癌関連死のうち11%を占めている。小さな前立腺癌腫を、30から49歳の男性のうち30%に、50歳以上の男性のうち40%に、及び、60から70歳の男性のうち64%において検出した(Sakr at al.(1993) in J.Urol.,150:379−385)。
【0006】
年齢調整罹患率は、この何十年のうちに着々と増加し、1980年代後半から1990年代前半の前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングの広範囲に及ぶ使用に付随して劇的に増加した。
【0007】
一般に、前立腺癌腫は、高分化型腫瘍であり、通常は非常にゆっくりと成長する。結果、多くの無症状及び潜伏性のケースが存在する。前立腺癌腫の形態は、4つのカテゴリーに区別することができる。
● 無症状/潜伏性の前立腺癌腫は、通常、未発見のままであり、検死が行われた場合のみ検出されることが多い。従って、この種の癌は、通常の臨床ルーチンにおいて役割を果たさない。
● 偶発的な前立腺癌腫(T1−腫瘍)は、治験、触診、及び超音波検査を介して明らかにすることができない。前立腺切除後の組織学的検査によってのみ検証することができる。治療処置は、患者の年齢、腫瘍のステージ及びグレード次第である。
● 潜伏前立腺癌腫は、転移した癌腫として臨床的及び症候的に発生する。原発性腫瘍の症状はなく、前立腺癌腫の存在は、転移性細胞における上昇したレベルのPSAの検出を介してのみ可能である。原発性悪性腫瘍部位の同定は、腫瘍のサイズが非常に小さい場合に特に難しい場合が多い。
● 臨床的前立腺癌腫(T2〜T4腫瘍)は、触診、超音波検査、及び組織学的検査により診断することができる。増加したPSAレベルは、臨床的に明らかにされた前立腺腫瘍の存在に対する重要な指標であり得る。
【0008】
上記の特徴及び前立腺癌の罹患率を考慮して、年1回のスクリーニングが50歳を超えた全ての男性に対して一般的に推奨されている。そのような大規模な対象に対するスクリーニングには、非侵襲製の検出方法、及び、信頼でき、臨床的に認可されたマーカーの使用が要求される。
【0009】
現在、前立腺癌のスクリーニングは、3つの異なる診断アプローチ、すなわち、理学的検査、生化学的検査、及び画像分析の組合せに基づいている。
【0010】
理学的検査は、一般的に、直腸診(DRE)により行われる。直腸診は、膀胱流出路閉塞の症状を有したいかなる患者においても必須である。この種の検査は、前立腺のサイズ及び堅さを評価するために使用される。他のアプローチには、いかなる膨張、触知可能な腎腫瘤、及び、膀胱の膨張又は圧痛も検出するための視診、打診、及び触診による腹部の検査が含まれる。
【0011】
経験豊富な医師は、例えば直腸診により腫瘍をうまく検出することができるけれども、この種の診断は、特に初期のステージの腫瘍の存在を除外して、それ自体で悪性腫瘍と良性腫瘍特とを明確に信頼して区別するのには決して適していない。
【0012】
大幅な生化学的分析は、前立腺特異抗原血清モニタリングに頼っている。モノクローナルな抗体イムノアッセイにより決定される、血清PSAに対する正常に受け入れられた高いレベルは、4ng/mlである。しかし、前立腺癌を有した一部の男性は正常なレベルのPSAを有することができ、上昇したレベルのPSAは、年齢、梗塞等、他の要因によるものでもあり得る。従って、PSAモニタリング自体は、腫瘍の存在を除外又は確証するのに十分ではない。PSAモニタリングは、検出された腫瘍の悪性度と良性度との区別も可能にしない。
【0013】
血液測定は、PSAモニタリングを補い、全血球数、血漿粘度測定、赤血球沈降速度等の決定を含むことができる。また、これらの生化学的アプローチのどれも、確信して腫瘍の有無を除外することはできない。
【0014】
従って、前記2種類の診断アプローチ、すなわち、DRE及びPSAモニタリングは、経直腸的超音波(TRUS)により誘導される生検分析により補助されなければならない。
【0015】
直腸診及び/又は上昇したPSA値に対して異常な所見を有した大部分の男性は、組織のいかなる異常な領域の生検も有した経直腸的超音波検査を受けるべきである。これまで、生検は、通常、エコー発生性の中心領域、又は、触知可能な異常の領域を標的にしている。腫瘍発達の領域は経直腸的超音波分析において容易に同定できないため、通常の超音波走査中に、前立腺の異なる領域から12回、又は、時にはそれ以上の生検を行う。これらの標的生検は、従って、個々の患者における系統的生検と組み合わされ、後の組織学的分析が続くことが多い。
【0016】
組織学的分析は、経験豊富な病理組織学者により行われた場合に、腫瘍が悪性又は良性であるかの優れた指標を与えることができるけれども、依然として、癌を含んだ前立腺の異なる領域から得られた多数の組織試料における形態学的徴候及びいくつかの分子マーカーの発現は劇的に変わる。従って、各生検は、最も高悪性度の病巣でさえ、前立腺癌の存在を見落とす可能性がある。TRUSにより誘導された針生検は、臨床的に局在化された前立腺癌の34%まで見落とす恐れがあり、最初に陰性の針生検を有した約10から19%の患者を、第2の生検に対して前立腺癌で診断した(Keetch et al.(1994)in J.Urol.151:1571−1574)。
【0017】
まとめると、前述の標準的な方法のどれもが、前立腺癌を信頼して診断するために十分に感受性が高く特異的であるわけではなく、この癌の早期発見を難しくしている。初期のステージの前立腺腫瘍は、その定義上触知不可能であり、全前立腺腫瘍のうち約3分の1が、DER位置に到達できない。PSAの上昇は癌に特異的ではなく、さらに、前立腺癌を有した男性は正常なPSAレベルを有している場合が多い。TRUSにより誘導された生検は、関連する組織部位を見落とし、偽陰性の結果を生じる恐れがある。
【0018】
さらに、TRUSにより誘導された生検に成功し、腫瘍組織から組織試料を得たとしても、該組織が悪性又は良性であるかどうかに関する組織学的評価は、煩わしいものでありえ、経験豊富で指定された病理組織学者を必要とする。試料の解釈は、前立腺組織の変わりやすい正常及び悪性の病理組織学によってさらにより複雑にされる。優勢な悪性の病変部、すなわち腺癌に加えて、皮膚の前癌性の病変部がそれだけで発見されるか、又は、実在する侵襲性疾患に付随する。これらの病変部は、「前立腺上皮内過形成(PIN)」という用語の下グループ化され、低いグレードのPINから高いグレードのPINまで変わり得る。
【0019】
悪性又は前悪性の病理組織学を用いた患者の予後は、ある程度、存在するいかなる侵襲性腫瘍のグレード、サイズ、及びステージにも依拠する。前立腺癌の組織学的類別は、腺性の区別を評価する。最も一般的に類別するシステムは、いわゆるGleasonシステムである。「Gleasonスコア」は、特に均一性の欠如を考慮に入れる。Gleasonスコアに基づき、腫瘍発達における5つのグレードを区別することができ、それに基づき、治療に関する決定が行われる。
【0020】
現在、前立腺癌診断の状況は、検出された細胞腫の総数が臨床的に明らかになったものの数を超え、同時に、有意な程度の偽陰性結果が生じるようなものである。さらに、腫瘍の悪性度又は良性度に対する決定は簡単ではない。
【0021】
前立腺癌を診断するために取りかからなければならない診断アプローチのかなり煩わしく複雑な相互作用を考慮すると、生検を腫瘍で苦しむ組織から得ることができる可能性を上げ、悪性及び良性の腫瘍組織に対する病理組織学的決定を補助する診断方法の必要が継続してある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
前立腺癌を診断するために使用することができる化合物を提供することが本発明の目的である。前立腺癌を検出するための診断方法を提供することが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の上記及び他の目的は、続く説明から明らかになるように、独立請求項の内容により解決される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態に関する。
【0024】
一態様における本発明は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌を診断するための化合物に関し、当該化合物は、少なくとも1つのターゲティングモジュール及び少なくとも1つの検出可能ユニットを含み、前記ターゲティングモジュールは前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる。そのような化合物は造影剤として機能することができる。
【0025】
そのような前立腺癌特異的マーカーは、クロモグラニンA(GRN−A)、グルタチオンS−転移酵素π(GSTPI)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、DD3PCA3(DD3)、及び、テロメア逆転写酵素(テロメラーゼ、TERT)を含めた群から選択することができる。好ましい癌特異的マーカーは、テロメラーゼである。
【0026】
前記ターゲティングモジュールは、前記前立腺癌特異的分子マーカーと特異的に相互作用することができるいかなる分子でもあり得る。一般的に、前記ターゲティングモジュールは、抗体、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、及び、小さな有機分子を含めた群から選択される少なくとも1つの分子である。一般的に、そのようなターゲティングモジュールは、前立腺、前立腺組織、及び、前立腺癌に苦しむ細胞に容易に入り込むことができるべきである。細胞膜及び組織境界を横切り容易に浸透するとして知られ、前述の前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用するペプチド、ペプチド模倣薬、及び、小さな有機分子の使用が好ましい。TERTの場合、前記ターゲティングモジュールは、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の小分子抑制物質から選択されることが好ましい場合がある。
【0027】
これらの化合物は、Strahl et al.(Mol. Cell.Biol.(1996),16:53−56)、Sun et al.(J.Med.Chem.(1997),40:2113−2116)、Perry et al.,(J.Med.Chem(1998),14:3253−3260)、Perry et al.(J.Med.Chem.(1999),42:2679−2684)、Harrison et al.(Biororgan.Med.Chem.Lett(1999),9:2463−2568)、Perry et al.(Anticancer Drug Des(1999),14:373−382)、Wheelhouse et al.(J.Am.Chem.Soc(1998),120:3261−3262)、Izbicka et al.(Anticancer Drugs(1999),59:539−644)、及び、Fedoroff et al.(Biochemistry(1998),12367−12374)において詳細に記載されている。TERTの小分子抑制物質に対するさらなる参照及び例を、Gowan et al.(Mol.Pharmacology(2001),60(5):981−988)又はFletcher et al.(Expert opinion on therapeutic agents(2001),5(3):363−378)において見つけることができる。
【0028】
前記検出可能ユニットは、磁気共鳴画像法(MRI)等の周知の検出方法により、例えば顕微鏡法、好ましくは蛍光顕微鏡法等の光学検出アプローチにより、超音波により、X線検出により、陽電子放出断層撮影(PET)により、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)により、陽電子放射断層撮影・コンピュータ断層撮影(PET−CT)により検出することができるいかなる種類の分子でもあり得る。現在、11C及び18F等のPETにより、99mTc、123/5/131I、67Ga等のSPECTにより、ナノリン光体(nanophosphore)若しくは半導体ナノ結晶体、カルボシアニン染料、テトラピロールベースの染料、δアミノレブリン酸、蛍光ランタニドキレート、フルオレセイン若しくはフルオレセイン関連フルオロフォアのような発光材料等の光学検出により、又は、(被包型ガス)気泡、シェル被包型液滴、若しくはナノ粒子等の超音波画像法により検出することができるコントラスト増強材料が好ましい。フルオレセイン、又は、フルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアが特に好ましい。
【0029】
特に好ましい実施形態において、前記化合物は、TERTを認識する、且つ、ペプチド、ペプチド模倣薬、並びに、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の小分子抑制物質から成る群から選択されるターゲティングモジュールに頼っている。前記検出可能ユニットは、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、又は、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択されることが好ましい。
【0030】
本発明は、前述の化合物、及び、任意選択で薬剤的に受け入れできる賦形剤を含む診断用組成物にも関する。
【0031】
そのような組成物は、TERTを認識する、且つ、ペプチド、ペプチド模倣薬、並びに、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の小分子抑制物質から成る群から選択されるターゲティングモジュールを有した化合物に頼っていることが好ましい。前記検出可能ユニットは、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、又は、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択されることが好ましい。
【0032】
別の実施形態は、ヒト又は動物における前立腺癌を診断するための医薬組成物の製造における前述の化合物の使用に関する。好ましくは、これらの医薬組成物は、ヒト又は動物における前立腺癌のin vivoでの診断に使用される。ターゲティングモジュール及び検出可能なマーカーを含む化合物は、上記と同じ化合物であり得る。従って、検出可能なターゲティングモジュールは、前述のGRN−A、GSTPI、PSCA、PSMA、DD3、及びTERT等の前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる。ターゲティングモジュールは、ここでも、抗体、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、及び、小さな有機分子を含めた群から選択されることが好ましく、検出ユニットも上記と同じ基準に従い選択することができる。そのような組成物は、TERTを認識する、且つ、ペプチド、ペプチド模倣薬、並びに、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の小分子抑制物質から成る群から選択されるターゲティングモジュールを有した化合物に頼っていることがより好ましい。前記検出可能ユニットは、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、又は、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択されることが好ましい。
【0033】
本発明の別の実施形態は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌をin vivoで診断する方法に関し:
(a)ターゲティングモジュール及び検出可能なマーカーを含んだ化合物を前記ヒト又は動物の対象に投与するステップであって、前記ターゲティングモジュールは前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる、ステップ;
(b)前記化合物の前記ターゲティングモジュールを前記前立腺癌特異的分子マーカーと反応させるステップ;
(c)前記検出可能なマーカーから生じることができる信号を測定することにより、前記前立腺癌特異的分子マーカーと前記化合物との相互作用を検出するステップ;
(d)ステップ(c)において測定された前記信号に基づき、前立腺癌の存在を決定するステップ;
を含む。
【0034】
ステップ(c)において、前記信号は、前記ヒト又は動物の体外で測定されることが好ましい場合がある。
【0035】
ターゲティングモジュール及び検出可能なマーカーを含む化合物は、上記と同じ化合物であり得る。従って、検出可能なターゲティングモジュールは、前述のGRN−A、GSTPI、PSCA、PSMA、DD3、及びTERT等の前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる。ターゲティングモジュールは、ここでも、抗体、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、及び、小さな有機分子を含めた群から選択されることが好ましく、検出ユニットも上記と同じ基準に従い選択することができる。
【0036】
好ましい態様において、これらの診断方法は、TERTを認識する、且つ、ペプチド、ペプチド模倣薬、並びに、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の小分子抑制物質から成る群から選択されるターゲティングモジュールを有した化合物に頼っている。検出可能ユニットは、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、若しくは、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択されることが好ましい。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌特異的分子マーカーをin vivoで検出する方法に関し:
(a)ターゲティングモジュール及び検出可能なマーカーを含んだ化合物を前記ヒト又は動物の対象に投与するステップであって、前記ターゲティングモジュールは前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる、ステップ;
(b)前記化合物の前記ターゲティングモジュールを前記前立腺癌特異的分子マーカーと反応させるステップ;
(c)前記検出可能なマーカーから生じることができる信号を測定することにより、前記前立腺癌特異的分子マーカーと前記化合物との相互作用を検出するステップ;
を含む。
【0038】
前記化合物、前記ターゲティングモジュール、前記検出可能ユニット、及び、前記前立腺癌特異的分子マーカーの性質は、上記と同じであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上記のように、前立腺癌の診断は、現在、種々の欠点を受けている。前立腺癌は、一般的にDRE、PSA血清レベルのモニタリング、TRUSにより誘導された生検、及び、生検試料の組織学的分析を含めた方法の組合せによってのみ効率的に診断することができる。それにもかかわらず、TRUSにより誘導された生検は、全ケースのうち約30%において偽陰性の結果を生じる恐れがあり、発達する腫瘍が良性又は悪性であるかどうかを早期に決定するのは現在難しい。
【0040】
本発明者等は、前立腺癌において過剰発現される特定の分子マーカーを使用して、前立腺癌のin vivoでの診断を単純化することができると発見した。
【0041】
特異的因子が特定の癌の種類において過剰発現され得ることは既知である。これは、腫瘍組織において前記特異的因子の蛋白質発現レベルを増加し、そのような癌特異的な特徴の増加した蛋白質レベルを、進行中の癌発達における信頼できる指標としてとることができる。
【0042】
Tricoli et al.(Clinical Cancer Research,(2004),10:3943−3953)及びdeKok et al.(Cancer Research,(2002),62:2695−2698)による刊行物から、前立腺癌は種々の分子マーカーの増加した発現により特徴づけられることが既知である。クロモグラニンA(GRN−A)、グルタチオンS−転移酵素π(GSTPI)、PSCA、PSMA、DD3、及びTERTの過剰発現が、前立腺癌の発達を示していると考慮される。特に、TERTに対しては、悪性の前立腺細胞腫において主に過剰発現されることが既知である。しかし、これら前述の因子の増加した蛋白質レベルに基づいたin vivoでの前立腺癌の早期診断は、これまで考慮されてきていない。
【0043】
前述の蛋白質等、前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができるターゲティングモジュールを画像分析技術により検出することができる分子部分と組み合わせた場合に、腫瘍の良性度又は悪性度だけでなくその位置も非常に正確に評価し、患者における悪性の前立腺癌組織の存在を検出することができるということが本発明の重要な態様である。
【0044】
本質的に、そのような化合物は、in vivoでの画像分析に使用することができる造影剤を構成する。これらの造影剤は前立腺癌特異的分子標的を特異的に認識して限局化するため、おそらく腫瘍を含有している前立腺内の組織領域を可視化するために使用することができる。分子標的は悪性の組織において主に発現されるため、早期に腫瘍の種類を区別することも可能である。そのようなおそらく進行している癌発達の領域を検出することにより、これらの前立腺の領域に経直腸的超音波により誘導された生検を集中させ、従って、上記の偽陰性結果の可能性を減らすことがさらに可能である。前記化合物はヒト又は動物に投与することができるため、従って、すでに初期のステージで前立腺癌をin vivoで検出することが本質的には可能である。
【0045】
一態様における本発明は、従って、ヒト又は動物における前立腺癌を検出するための造影剤に関する。そのような造影剤として使用することができる化合物は、少なくとも1つのターゲティングモジュール及び少なくとも1つの検出可能ユニットを含む。ターゲティングモジュールは、前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用するその能力により特徴づけられる。
【0046】
「前立腺癌特異的分子マーカー」という用語は、前立腺癌の発達中に増加したレベルを示すとして既知のいかなる細胞因子も意味している。そのような前立腺癌特異的分子標的は他の癌の種類においても過剰発現することができるということを当業者は理解するであろう。従って、そのような分子マーカーの有用性又は適合性は、正常な非発癌性組織と比較して、マーカーが増加した量で前立腺発癌性組織において観察されるという観察に基づくであろう。そのようなマーカーは、A2M、Akt−1、AMACR、Annexin 2、Bax、Bcl−2、Cadherin−1、Caspase8、Catenin、Cav−1、CD34、CD44、Clarl、Cox−2、CTSB、Cyclin D1、DD3、DRG−1、EGFR、EphA2、ERGL、ETK/BMK、EZH2、Fas、GDEP、GRN−A、GRP78、GSTP1、Hepsin、Her−2/Neu、HSP27、HSP70、HSP90、Id−1、IGF−1、IGF−2、IGFBP−2、IGFBP−3、IL−6、IL−8、KAI1、Ki67、KLF6、KLK2、Maspin、MSR1、MXI1、MYC、NF−kappaB、NKX3.1、OPN、p16、p21、p27、p53、PAP、PART−1、PATE、PC−1、PCGEM1、PCTA−1、PDEF、P13Kp85、P13Kp110、PIM−1、PMEPA−1、PRAC、Prostase、Prostasin、Prostein、PSA、PSCA、PSDR1、PSGR、PSMA、PSP94、PTEN、RASSF1、RB1、RNAseL、RTVP−1、ST7、STEAP、TERT、TIMP1、TIMP2、TMPRSS2、TRPM2、Trp−p8、UROC28、VEGFから成る群から選択することができる(Trisoli et al.,前記参照、deKok et al.,前記参照)。PTRF、EB1、Integrin 5 alpha、P13 Kinase、PAK3、ABP280、MCAM、TROY、Myosin VI、AMACR、HSP60、CDK7、TPD52、BRG1、BUB3、PSA、MSH2、GS28、plCln、Aurora kinase A、RBBP、CK1、ERAB、XIAPから成る群から選択することもできる(Varambally et al.,(2005)Cancer Cell,8,393−406)。
【0047】
好ましい実施形態において、そのような前立腺癌特異的分子標的は、前立腺癌組織においてのみ過剰発現されるだけではなく、悪性の発癌性組織においても主に存在する、前述のGRN−A、GSTPI、PSCA、PSMA、DD3、及び、TERT等の蛋白質である。
【0048】
前立腺癌を検出するための特に好ましい前立腺癌特異的分子標的は、TERTの増加した発現である。通常、複製している細胞においてゲノム安定性及び結合性を確実にするが、複製していない細胞においては欠如している酵素テロメア逆転写酵素(テロメラーゼ、TERT)の増加した発現において前立腺癌を含めた多くの癌はある程度特徴づけられることが既知である。
【0049】
「ターゲティングモジュール」という用語は、前述の前立腺癌特異的分子標的構造体の1つと特異的に相互作用することができるいかなる分子部分にも関する。従って、そのようなターゲティングモジュールは、GRN−A、GSTPI、PSCA、PSMA、DD3、及び、TERT等の前立腺癌特異的分子標的を特異的に認識する抗体であり得る。そのような抗体は、モノクローナル又はポリクローナル起源のものであり得る。モノクローナルな抗体が使用される場合、マウス又はネズミ起源のものであり得る。抗体は、キメラのヒト化抗体、ヒト抗体、Fabフラグメント一本鎖抗体若しくは二重特異性抗体、又は、マウス−ヒトキメラ抗体でもあり得る。
【0050】
抗体と同様に、ポリペプチド又はペプチドを、その(ポリ)ペプチドが前述の蛋白質等の前立腺癌特異的分子標的と相互作用することができる限り、ターゲティングモジュールとして使用することができる。TERTと相互作用することができるポリペプチド及びペプチドの使用が、特に好ましい。
【0051】
本発明の目的に対して、ポリペプチドは、一般的に、ペプチド結合により連結された20以上のアミノ酸を含んだポリペプチド及び蛋白質を示す。ペプチドは、ペプチド結合により連結された2から19のアミノ酸を含む。好ましくは、ペプチドはより短い場合があり、好ましいペプチドの長さは、ペプチド結合により連結される約5から17及び10から15のアミノ酸の範囲内である。ポリペプチド及びペプチドという用語は自然発生のアミノ酸に限定されるよう意味しないことを理解されたい。さらに、ポリペプチド及びペプチドという用語の使用は、例えば増加した安定性又は新たな化学反応性を与えるようさらに誘導体化されたアミノ酸の使用も認識する。グリコシル化されたペプチド及びポリペプチドの使用も認識される。ターゲティングモジュールは、ペプチド模倣薬も含むことができる。
【0052】
同様に、ターゲティングモジュールは、ヒアルロン酸、燐灰石、及び、デルマタン硫酸等の高分子から選択することができる。
【0053】
当業者は、核酸をターゲティングモジュールとして使用することを、これらの核酸が前立腺癌特異的分子標的と相互作用することができる限り、考慮することもできる。そのような核酸は、アプタマー、アンチセンスDNA/RNA、ペプチド核酸(PNA)、低分子干渉RNA等であり得る。当業者は、骨格においてリン酸結合以外の連鎖を使用する核酸由来のターゲティングモジュールの使用も認識するであろう。MRI造影剤、19F−磁気共鳴画像法若しくは19F−NMR剤、放射性医薬剤、超音波薬剤、光学イメージング薬剤、又は、X線薬剤であるラベルを有したラベルされた核酸に基づいた、TERTを標的にするターゲティングモジュールは、造影剤が関わる限り本発明の一部も形成しない。しかし、それらは、前立腺癌を診断するための製剤の製造、又は、前立腺癌を診断する方法におけるそのような化合物の使用が関わる限り、本発明の一部を形成する。
【0054】
リン脂質のような脂質、例えばロイコシド刺激レクチン(leucoside stimulatory lectin)のようなレクチン、及び、糖類も、ターゲティングモジュールとして使用することができる。
【0055】
当然ながら、上記のもの等、前立腺癌特異的分子標的と特異的に相互作用する小さい有機分子も使用することができる。これらの小さい有機分子は、商業的に入手可能な化合物ライブラリーから得ることができる。
【0056】
従って、前立腺癌特異的分子標的と相互作用することができるいかなる種類の分子部分も、ターゲティングモジュールとして使用することができる。好ましくは、当業者は、細胞膜又は組織境界を横切り容易に浸透するとして知られ、従って、前立腺及び前立腺の組織を容易に横切ることができるそのようなターゲティングモジュールを考慮するであろう。その理由から、かなり短いポリペプチド、好ましくはペプチド、ペプチド模倣薬、及び有機小分子の使用が、特に好ましい。
【0057】
TERTが前立腺癌特異的分子標的として使用される場合、例えば、TERTの酵素活性の小分子抑制物質を使用することができる。そのような好ましいターゲティングモジュールは、例えば、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミドを含む。
【0058】
前述のGRN−A、GSTPI、PSCA、PSMA、及びDD3等、他の前立腺癌特異的分子標的の場合に対して、ペプチド又は小さい有機分子から作製されたターゲティングモジュールの使用も、そのようなターゲティングモジュールが前立腺の組織内により容易に浸透しそうであるならば好ましいことを理解されたい。
【0059】
前立腺癌を検出するための造影剤として使用することができる本発明による化合物は、上記のターゲティングモジュールだけでなく、少なくとも1つの検出ユニットも含む。この検出可能ユニットは、当技術分野において既知である分子イメージング技術により検出することができるいかなる分子部分でもあり得る。
【0060】
本発明の目的に対して、「分子イメ―ジング」は、生存している動物、器官、組織、及び、細胞又は分子レベルでの生物学的プロセス及び構造の特徴づけ並びに測定と広く呼ばれている。本発明の目的に対して特に使用することができる分子イメージングモダリティーは、放射性核種、磁気共鳴、及び光学イメージングに頼っている。
【0061】
核種医学技術は、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、及び、陽電子放射断層撮影・コンピュータ断層撮影(PET−CT)を含む。光学イメージングは、適した励起により、好ましくは可視又は紫外線スペクトルで放射線を放出する検出ユニットの使用に非常に頼っている。光学イメージングに対して、例えばレーザ走査型電子顕微鏡法又は蛍光顕微鏡法等の顕微鏡法を使用することができる。光干渉断層撮影法も、本明細書に記述されている前立腺癌特異的分子標的の検出等、個々の細胞又は分子の事象の目視評価に対して使用することができる。従って、本発明の目的に対して、検出可能ユニットは、MRI、PET、SPECT、PET−CT、超音波、X線、及び、例えば蛍光顕微鏡法等の光学方法を含めた前述の技術により検出することができるいかなる分子部分でもあり得る。これらの技術のうち一部が、より詳細に記述される。
〔共焦点レーザ走査型顕微鏡法〕
ターゲティングモジュールと前立腺癌特異的分子マーカーの相互作用を検出する好ましい実施形態の1つは、共焦点レーザ走査型顕微鏡法の使用に頼っており、さらなる好ましい実施形態において紫外線光源を使用することができる。共焦点顕微鏡法は、従来の光学顕微鏡法に比べいくつかの利点を提供し、最も重要な利点の1つは、画像を歪める焦点がずれた情報の除去、制御可能な被写界深度、及び、サブミクロンの解像度である。共焦点顕微鏡法のさらなる利点は、試料のうち焦点のずれた種々の部分における蛍光を取り除くことができるため、焦点の合った部分又は切片を妨害せず、その結果、標準的な光学顕微鏡法により得られる同種の画像よりもかなり鮮明でより良い解像度を示した画像を生じることである。
【0062】
共焦点走査型顕微鏡法の基本原理は、対物レンズの焦点が合わされた点に「結合」された顕微鏡レンズシステムの焦点にピンホールを有したスクリーンの使用である。対物レンズの焦点からの光のみがピンホールにて集められ、例えば電荷結合素子(CCD)であり得る検出器を通り抜けることができる。試料のうち焦点がずれた切片からの光は、ほぼ完全に取り除かれる。
【0063】
このように、共焦点顕微鏡は、x及びy方向に対して従来の顕微鏡よりも有意に優れた解像度を有している。さらに、共焦点顕微鏡は、z方向においてより浅い被写界深度を有している。このように、試料中焦点を走査することにより、試料の異なる面を見ることが可能であり、従って、試料の3次元画像を再構築することが可能である。さらに、共焦点顕微鏡法は、種々の波長の光と両立し得る。
【0064】
共焦点レーザ走査型顕微鏡が例えば内視鏡装置に統合された場合、アクチュエータを使用して、関心のある組織上で共焦点顕微鏡に走査させることができる。従って、第一の粗い走査を使用して組織の形態を決定することができ、例えばTERTの上方制御が見られる組織をこの選別から同定することができる。
【0065】
共焦点走査型顕微鏡に対して、単色光又は多色光を使用することができる。しかし、240nmから280nmという波長を有した単色紫外線が好ましい場合がある。共焦点レーザ走査型顕微鏡として、LEICA DMLM等で、蛍光信号の信号強度を測定するためのQimaging Regita 2000R FASTCooled Mono 12−bitカメラ装置(www.qimaging.com)を有した顕微鏡を使用することができる。Leica DM6000は特に好ましい場合がある。
【0066】
細胞がその自然な組織の環境において検査されることになる本発明の目的に対して、共焦点レーザ走査型顕微鏡は内視鏡内に統合することができる。この目的に対して既知のシステムは、画像が走査される様式において主に異なる。2つのいくぶん進歩した市販のシステムが、例えばOptiscan社及びMauna Kir Technology社から入手可能である。Mauna Kirの機器は、コヒーレント光ファイバー束で画像が内視鏡の下に転送される近位走査システムである。選択された点又はファイバーは、遠心端にて標本にされた組織に画像化される。この共焦点レーザ内視鏡は、内視鏡のワーキングチャンネルを介して送達される。共焦点レーザ内視鏡の視野は狭いため、プローブの配置はスタンダードなビデオ内視鏡により導かれる。従って、内視鏡のプラットフォームは、ビデオイメージャも共焦点顕微鏡も含まなければならない。当然ながら、内視鏡ユニットは、得られた画像の処理を可能にするコンピュータ装置及びソフトウェアパッケージも含むことができるか、又は、それらに連結することができる。
【0067】
検出装置は、例えば、BQ6000フレームグラバーボードを介してコンピュータに接続されたOptronics DEI−700 CE three−chip CCDカメラであり得る。或いは、Hitachi HV−C20 three−chip CCDカメラを使用することができる。画像分析用ソフトウェアパッケージは、例えば、Bioquant True Color Windows(登録商標) 98 v3.50.6 画像分析ソフトウェアパッケージ(R&M Biometrics社,Nashville,TN)、又は、Image−Pro Plus 3.0画像分析ソフトウェアであり得る。使用することができる別のシステムは、デュアル・モードに基づいたBioView Duet system(BioView Ltd社,Rehovot,Israel)、全自動の顕微鏡(Axioplan 2,Carl Zeiss社,Jena,Germany)、XY電動8スライドステージ(Marzhauser社,Wetzler,Germany)、3CCDプログレッシブスキャンカラーカメラ(DXC9000,Sony社,Tokyo,Japan)、並びに、システムの制御及びデータの分析用コンピュータである。
【0068】
Optiscan社は、遠位走査(distal scanning)を使用する共焦点レーザ内視鏡を開発した。このシステムで、1本のファイバーが光を内視鏡の下に伝達し、遠位ヘッド(distal head)のファイバー端は空間的に走査され、オプティクスで組織に画像化される。Optiscan社は内視鏡をPentax社と共同開発した。その機器には共焦点顕微鏡が統合され、その結果、ワーキングチャンネルがはずされた。このシステムを使用して得られた組織の画像は、細胞核限局化の同定を可能にする解像度によるものである。
【0069】
他の小型の共焦点光学装置は、本明細書に援用する国際公開WO2004/113962 A2号に記載されている。生体組織の共焦点イメージングのためのシステムも、国際公開WO02/073246 A2号並びに米国特許第2005/0036667号に記載されており、どちらも同様に本明細書に援用する。
【0070】
光コヒーレンス断層撮影法
ヒト又は動物の対象の生体組織においてin vivoで前立腺癌特異的分子マーカーを発現する細胞を限局化することにおけるさらに別の可能性は、光コヒーレンス断層撮影法(OCT)の使用である。
【0071】
OCTは、超高解像度(数ミクロン)で数ミリメートルまでの浸透度(一般的に、1.5から2mm)を達成し、リアルタイムで3−Dの組織画像を生じるイメージングテクノロジーである。OCTは、任意に機能的及び分子的イメージングを達成するため、並びに、分光学的情報を与えるために3−D構造の画像(組織層、密度変化)を提供する。OCTは、−90dB程の小さい信号を測定することができる干渉法ベースの技術である。
【0072】
カプラーは、光源から生じる光を分割する。1つのアームは干渉計(interpherometer)の参照アームとして役立つけれども、もう一方のアームは光を試料まで伝え、従って、サンプルアームと呼ばれる。走査型オプティクスは左右走査の能力を与えるため、OCT機構は各側臥位に対してアキシャルスキャン(A−scan)を得る。全ての組み合わされたA−scanが、3−D構造の画像を形成する。
【0073】
各A−scanを得る際に、参照ミラー変位は深度情報を提供する。波長を走査することにより深度情報を得ることも可能である。さらに短い時間でより優れた深度情報を得るために、より進歩した技術がいくつか開発された。分光学的OCTは、いかなる移動部分もなしで前後走査のデータを提供するOCTの中で最も進歩している。
【0074】
現在最速のOCTシステムは、1フレームあたり1000回を超えるA−scanで、1秒あたりおよそ30フレームという速さで画像を生成することができる。方位解像度は、走査型オプティクス及び光フォーカスシステム(light focusing sytem)によってのみ制限される。距離解像度は、今度は光源に依存している。およそ70nmから930nmの帯域幅を有する市販のスーパールミネッセントダイオードを用いて現在入手可能である典型的な距離解像度は約5μmである。およそ1.5μmという最も優れた実証済みの解像度のうちの1つは、Ti:サファイア fsレーザを用いることによって達成した。
【0075】
本発明の目的に対して、上記のOCT装置、及び、特に分光学的OCT装置は小型化することができるため、すなわち内視鏡システムにおいて使用することができる。OCT技術を小型化するために、例えばOptics Letters29,2261(2004)の刊行物において練られた案を参照することができる。一般的に、内視鏡システムに使用することができる小型化されたOCT装置は以下のものを提供する:
光源。これは光源の帯域幅に比例する距離解像度を決定する。商業的に入手可能なSLD(スーパールミネッセントダイオード)は、およそ5μmの距離解像度を得る。より優れた解像度(1μmに近い解像度)は、Ti:サファイア fsレーザ又はタングステン電球(非常に低電力)が使用された場合に入手可能である。チューナブルレーザは、フーリエ領域OCTに必要とされる。
【0076】
光の送達を提供するためのファイバーオプティクス要素、マイケルソン干渉計を実現するための循環装置、及び/又は、ファイバーカプラー。
【0077】
検出要素。これはOCTの種類次第である。フォトダイオードが一般的に使用されるが、スペクトルOCTの場合は、スペクトル分解された検出(リニアCCDアレイと組み合わせたスペクトルアナライザ)が必要である。
【0078】
偏光又は位相(phase)OCTの場合、エンジン及びプローブ要素は偏光特性を維持することができなくてはならない。
【0079】
2光子イメージング
当然ながら、前立腺癌特異的マーカーが上方制御される細胞及び組織は、2光子イメージングテクノロジーを用いて限局化することもできる。2光子の方法により、in vivoでのリアルタイムの組織の3次元イメージングが可能である。この技術において、組織内の蛍光物質が低エネルギーの2つの光子を吸収することにより励起され、蛍光を放出するということが基本原理である。このことは、より高いエネルギーの1光子が蛍光物質を励起させる従来の(共焦点)顕微鏡法に対立する。
【0080】
2光子処理を生じるために、一般的に共焦点顕微鏡の焦点で得られる比較的高い光子束が必要とされる。結果として、共焦点顕微鏡法の利点は、3次元イメージング及び高解像度(〜0.2ミクロンの方位解像度、及び、〜0.5ミクロンの距離解像度)のように、2光子イメージングにも適用される。
【0081】
低エネルギーの励起光子のため、組織による1光子吸収は比較的少なく、組織における光子誘起の損害の量は最小限にされる。このことは、in vivoの利用にとって重要な利点である。さらに、低い吸収率により、光子は組織内により深く浸透し、0.5mmまでのイメージング深度を生じる。
【0082】
要するに、2光子イメージングは、高解像度の共焦点顕微鏡法という利点と大きなイメージング深度及び少ない量の光子誘起の損害を兼ね備えている。2光子イメージングは、in vivoでのリアルタイムの組織の細胞レベルまでの特徴づけを可能にし、疾患を診断するのに適していると証明した。
【0083】
上記で定められてきたように、検出ユニットは、MRI、PET、SPECT、PET−CT、超音波、X線、及び、例えば蛍光顕微鏡法等の光学方法を含めた前述の技術により検出することができるいかなる分子部分でもあり得る。従って、検出ユニットは、以下の分子部分のうちどれでもあり得る。
〔磁気共鳴画像法〕
MRIに対して、以下の検出ユニット、例えば、鉄(Fe)、酸化鉄γ−Fe若しくはFe、スピネル構造を有したフェライトMFe(M=Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Cd)、グラネート(granate)構造を有したフェライトMFe12(M=Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)、マグネットプランバイト構造を有したフェライトMFe1219(M=Ca、Sr、Ba、Zn)、又は、例えばBaFe1222(M=Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Mg)のような他の六方晶系フェライト構造体のような、強磁性、反強磁性、フェリ磁性、若しくは、超常磁性の材料を使用することができる。全ての場合において、追加の0.01から5.00モル%のMn、Co、Ni、Cu、Zn、又はFでコアをドープすることができる。
【0084】
Gd(DTPA)、Gd(BMA−DTPA)、Gd(DOTA)、Gd(DO3A)のようなガドリニウムキレート、オリゴマー構造体、アルブミンGd(DTPA)20〜35、デキストランGd(DTPA)、Gd(DTPA)−24−カスケードポリマー、ポリリシン−Gd(DTPA)、MPEGポリリシン−Gd(DTPA)のような高分子構造体等の常磁性イオン(例えばランタニド、マンガン、鉄、銅)ベースのコントラスト検出ユニット、デンドリメリック構造体のランタニドベースのコントラスト増強ユニット、Mn(DPDP)、Mn(EDTA−MEA)、ポリ−Mn(EED−EEA)のようなマンガンベースのコントラスト増強ユニット、並びに、リポソームGd(DTPA)又は非プロトンイメージング剤等の常磁性イオンのキャリアとして高分子構造体並びにリポソームも使用することができる。
〔光学検出〕
光学検出に対しては、ナノリン光体(例えば、希土類ドープYPO又はLaPO)若しくは半導体ナノ結晶体(例えばCdS、CdSe、ZnS/CdSe、ZnS/CdS等のいわゆる量子ドット)、カルボシアニン染料、テトラピロールベースの染料(ポルフィリン、クロリン、フタロシアニン、及び、関連のある構造体)、デルタ−アミノレブリン酸、蛍光ランタニドキレート、フルオレセイン又は5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、若しくは、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、又は、ナフトフルオレセインのような他のフルオレセイン関連フルオロフォアのような発光材料を使用することができる。
〔超音波〕
超音波検出に対しては、シェル(例えば、蛋白質、脂質、界面活性剤、又はポリマー)、被包型ガス(例えば、空気、ペルフルオロプロパン、ドデカフルオロカーボン、六フッ化硫黄、ペルフルオロカーボン)、気泡(Amersham社のOptison、Schering社のLevovist等)、シェル(例えば、蛋白質、脂質、界面活性剤、又はポリマー)被包型液滴、又は、ナノ粒子(例えば、白金、金、タンタル)を使用することができる。
〔X線〕
X線検出に対しては、例えば、2,4,6−トリ−ヨードベンゼンのイオン性及び非イオン性誘導体のようなヨウ素化されたコントラスト増強ユニット、硫酸バリウムベースのコントラスト増強ユニット、例えばガドリニウムベースの化合物のような金属イオンキレート、高い割合のヨウ素を有したホウ素クラスター、ヨウ素化された多糖類のようなポリマー、高分子トリ−ヨードベンゼン、低い水溶性を示すヨウ素化された化合物由来の粒子、ヨウ素化された化合物を含有したリポソーム、トリグリセリド又は脂肪酸のようなヨウ素化された脂質を使用することができる。
〔PET〕
PET分析に対しては、例えば、18F−FDG(糖代謝)、11C−メチオニン、11C−チロシン、18F−FMT、18F−FMT若しくは18F−FET(アミノ酸)、18F−FMISO、64Cu−ATSM(低酸素症)、18F−FLT、11C−チミジン、18F−FMAU(増殖)のような11C、13N、15O、66/8Ga、60Cu、52Fe、55Co、61/2/4Cu、62/3Zn、70/1/4As、75/6Br、82Rb、86Y、89Zr、110In、120/4I、122Xe、及び、18Fベースのトレーサーを使用することができる。
〔SPECT〕
SPECTに対しては、例えば、99mTc、123/5/131I、67Cu、67Ga、111In、及び、201Tlのような放射性核種に基づいたコントラスト増強ユニットを使用することができる。
【0085】
上記のマーカーに加えて、例えば、毒素、放射性同位体及び化学療法薬剤、例えばYPO:PrのようなUV−C放出ナノ粒子、例えば拡張ポルフィリン構造体に基づいた化合物のような光線力学的治療法(PDT)薬剤、又は、例えば157Sm、177Lu、212/3Bi、186/8Re、67Cu、90Y、131I、114mIn、At、Ra、Ho等の放射線療法用ヌクレオチドを使用することができる。
【0086】
代案は、例えば、化学交換飽和移動(CEST)、感熱性MRI造影剤(例えばリポソーム)、pH感受性MRI造影剤、加圧酸素又は酵素反応性MRI造影剤、金属イオン濃度依存性MRI造影剤のような高性能のコントラスト増強ユニットでもある。
【0087】
好ましくは、磁気共鳴画像法目的のための検出ユニットは、鉄(Fe)、酸化鉄γ−Fe若しくはFeのような強磁性、反強磁性、フェリ磁性、若しくは、超常磁性の材料から選択される。Gd(DTPA)、Gd(BMA−DTPA)、Gd(DOTA)、Gd(DO3A)のようなガドリニウムキレート等の常磁性イオン(例えば、ランタニド、マンガン、鉄、銅)ベースのコントラスト検出ユニットも好ましい。
【0088】
光学検出アプローチに対しては、以下の検出ユニット、フルオレセイン又は5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、若しくは、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、若しくは、ナフトフルオレセインのような他のフルオレセイン関連及び/又は由来のフルオロフォアのような発光材料の使用が特に好ましい。
【0089】
本発明の特に好ましい実施形態において、造影剤は、TERTを認識するターゲティングモジュールから作製される。好ましくは、細胞膜又は組織を横切り容易に浸透するとして知られ、従って、前立腺及び前立腺の組織を容易に横切ることができるそのようなターゲティングモジュールを当業者は考慮するであろう。その理由から、かなり短いポリペプチド、特にペプチド、及び、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の有機小分子の使用が好ましい。検出可能ユニットは、11C、18F、99mTc、123/5/131I、67Ga、ナノリン光体、半導体ナノ結晶体、カルボシアニン染料、テトラピロールベースの染料、デルタ−アミノレブリン酸、蛍光ランタニドキレート、フルオレセイン若しくはフルオレセイン関連及び/又は由来のフルオロフォアのような発光材料、被包型ガス若しくは気泡、シェル被包型液滴、又は、ナノ粒子から成る群から選択されることが好ましい。検出可能ユニットは、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、又は、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択されることが特に好ましい。
【0090】
前述のGRN−A、GSTPI、PSCA、PSMA、及びDD3等、他の前立腺癌特異的分子標的の場合に対して、ペプチド又は小さい有機分子から作製されたターゲティングモジュールの使用も、そのようなターゲティングモジュールが前立腺の組織内により容易に浸透しそうであるならば好ましいことを理解されたい。ここでも、検出可能ユニットは、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、又は、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択されることが好ましい。
【0091】
本発明による造影剤は1つのターゲティングモジュールのみを含んでいるわけではないことに当業者は明らかに気づいている。本発明による造影剤は、2つ、3つ、4つのターゲティングモジュールも含むことができる。ターゲティングモジュールは、同じ又は異なる1又は複数の前立腺癌特異的分子マーカーに特異的に結合することができる。1を超えるターゲティングモジュールが使用され、全てのターゲティングモジュールが同じ前立腺癌特異的分子標的を認識する場合、その造影剤の特異性を上げることができる。これは、特に、ターゲティングモジュールが分子マーカー内の異なる構造体を認識する場合のことであり得る。異なる前立腺癌特異的分子マーカーに特異的なターゲティングモジュールが使用された場合に、異なる分子標的の相伴う存在が例えば悪性の前立腺癌の発達を示す場合、選択性を上げることができる。相伴う存在は、例えば同じ細胞内の別々に限局化した信号を得ることにより検証することができる。
【0092】
同様に、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の検出可能ユニット等、1を超える検出可能ユニットを造影剤が含むことができるということに当業者は気づいている。1を超える検出可能ユニットの使用は、測定の感度を上げることができる。当然ながら、MRIからの結果を比較し、最終的には光学測定により検証することができるよう、異なる種類の検出可能ユニットを使用することができる。
【0093】
当業者は、前述のアプローチの組合せも考慮し、従って、例えば同時に、前立腺癌特異的分子マーカーに特異的なターゲティングモジュール及び検出可能ユニットから形成される1つの造影剤と、別の前立腺癌特異的分子マーカーを認識するターゲティングモジュール及び検出可能ユニットから形成される、異なる検出原理に頼った別の造影剤を使用するであろう。そのような造影剤の組合せにおける投与及び測定は、1つの実験における独立したアプローチによる前立腺癌の検出を可能にするであろう。
【0094】
ターゲティングモジュール及び検出可能ユニットを1つの化合物内で異なる方法により組み合わせることができるということに当業者は気づいている。例えば、ターゲティングモジュールは、結合により蛍光マーカーに連結された小さい有機分子であり得る。同様に、ターゲティングモジュールは、前述のMRI造影剤のうちどれにでも連結されるポリペプチドであり得る。ターゲティングモジュールと検出ユニットとの連結は、共有結合であり得るが、イオン結合でもあり得る。さらに、検出ユニットは、ターゲティングモジュールに直接連結することができるか、又は、スペーサーによってターゲティングモジュールから引き離すことができる。当業者は、前述の検出可能ユニットをポリペプチド等のターゲティングモジュールに連結することに精通している。例えば、化学結合を、例えば検出可能ユニットにおけるフッ化アシル官能性により与えることができる。他の共有結合の化学的作用も適用可能であるが、無水物、エポキシド、アルデヒド、ヒドラジド、アシルアジド、アリールアジド、ジアゾ化合物、ベンゾフェノン、カルボジイミド、イミドエステル、イソチオシアネート、NHSエステル、CNBr、マレイミド、トシレート、トレシルクロライド、無水マレイン酸、及び、カルボニルジイミダゾールに限定されない。前記結合は、ホモ並びに/又はヘテロ二官能性、及び/若しくは多官能性の架橋剤により確立することもできる。典型的な架橋剤は、それだけに限らないが、ビス(スルホスクシンイミド)ビス(ジアゾベンジジン)、アジプイミド酸ジメチル、ピメルイミド酸ジメチル、スベライミド酸ジメチル、ジスクシンイミジルスベレート、グルタルアルデヒド、N−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート等を含む。
【0095】
本発明による造影剤又は化合物は、以下の官能基:アルコール基、フェノール基、他の酸を有したエステルを含めたエステル基、カルボン酸基、アミド基、アミン基、メルカプト基、方香環システム、及び、複素環システムのうち1又は複数含むことができる。前記化合物の全体的な構造は、環状又は直線的であり得る。
【0096】
前記化合物は、全電荷を保有することができる。そのような場合において、前記化合物は、例えば、無機若しくは有機酸由来の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオン若しくはアニオン、アンモニウムイオン、置換されたアンモニウムイオン等、生理的に受け入れられる対イオンの塩の形で使用することができる。
【0097】
本発明は診断目的、すなわち前立腺癌の検出のための医薬組成物にも関するということが上記で定められてきた。診断用組成物とも呼ばれるそのような医薬組成物は、上記の化合物、及び、任意選択で薬剤的に受け入れられる賦形剤を含むであろう。
【0098】
これらの診断用製剤は、前述の造影剤及び好ましくはこれらの造影剤の好ましい形状を含むことを理解されたい。従って、診断用組成物は、TERTを認識するターゲティングモジュールから作製される造影剤を含むことが好ましい。当業者は、細胞膜又は組織を横切り容易に浸透するとして知られ、従って、前立腺及び前立腺の組織を容易に横切ることができるそのようなターゲティングモジュールをここでも考慮することが好ましい。その理由から、かなり短いポリペプチド、特にペプチド、及び、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の有機小分子の使用が特に好ましい。これらの場合において、検出可能ユニットは、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、若しくは、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択されることが好ましい。
【0099】
例えば、注射用の水又は緩衝液等の水性媒体等、造影剤は、好ましくは、例えば懸濁液、分散液等の従来の薬剤的又は獣医学的非経口投与の形で調合することができる。造影剤は、例えば、潤滑剤、可塑剤、抗酸化剤、重量モル浸透圧濃度調整剤、緩衝液、又は、pH調整剤等、薬剤的に受け入れられる希釈液及び製剤補助剤もさらに含むことができる。本発明による造影剤の最も好ましい製剤の1つは、非経口投与のための、又は、関心のある領域内への直接的な注入のための、無菌液若しくは懸濁液を含む。
【0100】
本発明の造影剤は、脈管構造内への、又は、直接の器官若しくは筋肉組織内へのその非経口投与が好ましいように調合することができるけれども、静脈内投与が特に好ましい場合がある。非経口ではない経路を介した投与も認識することができ、例えば、経皮投与、経鼻投与、経口投与、頬側投与、及び、舌下投与、又は、例えば消化管、膀胱、子宮、若しくは膣等の体腔内への投与を含む。本発明は、そのような投与に及ぶとみなされる。
【0101】
上記で定められているように、本発明による化合物及び診断用組成物を使用して、初期のステージで前立腺における発癌腫瘍形成を検出することができる。
【0102】
このように、本発明は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌を診断するための医薬組成物の製造における少なくとも1つのそのような化合物の使用にも関する。好ましくは、そのような医薬組成物は、ヒト又は動物の体内における前立腺癌のin vivoでの診断に使用される。
【0103】
上記の好ましい化合物も、そのような医薬組成物の製造における使用に好ましい。従って、化合物は、TERTと相互作用することができ、且つ、ペプチド、又は、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミド等の小分子抑制物質から作製することができるターゲティングモジュールを含み、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、若しくは、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択される検出ユニットをさらに含む。
【0104】
本発明の他の実施形態は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌をin vivoで診断する方法に関し:
(a)ターゲティングモジュール及び検出可能ユニットを含んだ化合物を前記ヒト又は動物の対象に投与するステップであって、前記ターゲティングモジュールは前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる、ステップ;
(b)前記化合物の前記ターゲティングモジュールを前記前立腺癌特異的分子マーカーと反応させるステップ;
(c)適した励起後に前記検出可能ユニットにより生じた信号を測定することによって、前記前立腺癌特異的分子マーカーと前記化合物との相互作用を検出するステップ;並びに、
(d)ステップ(c)において測定された前記信号に基づき、前立腺癌の存在を決定するステップ;
を含む。
【0105】
ステップ(c)において、前記信号の測定は、前記ヒト又は動物の体外で行われることが好ましい場合がある。
【0106】
一般的に、検出された信号が進行中の癌発達を本当に示しているかどうかを決定するために、明らかに非発癌性である細胞からの信号を標準対照として使用することに当業者は気づいている。
【0107】
本発明のさらに別の実施形態は、ヒト又は動物の対象における前立腺癌特異的分子標的を検出する方法に関し:
(a)ターゲティングモジュール及び検出可能ユニットを含んだ化合物を前記ヒト又は動物の対象に投与するステップであって、前記ターゲティングモジュールは前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる、ステップ;
(b)前記化合物の前記ターゲティングモジュールを前記前立腺癌特異的分子マーカーと反応させるステップ;並びに、
(c)適した励起後に前記検出可能ユニットにより生じた信号を測定することによって、前記前立腺癌特異的分子マーカーと前記化合物との相互作用を検出するステップ;
を含む。
【0108】
前述の診断方法、及び、前立腺癌特異的分子標的を検出する方法に使用される化合物は、上記の同じ化合物及び診断用組成物を含むことを理解されたい。同様に、前述の好ましい造影剤及び診断用組成物も、前述の診断、及び、前立腺癌特異的分子標的の検出方法において使用されるのが好ましいはずである。特に好ましい化合物は、ペプチド、又は、TERTの小分子抑制物質から作製されるターゲティングモジュール、及び、上記の検出ユニット等の検出ユニットを有した化合物である。
【0109】
本発明は、前述の造影剤及び診断用組成物を生成する方法にも関する。
【0110】
本発明は、いくつかの好ましい実施形態に関して記述されてきた。しかしこれは、いかなる方法においても本発明を限定するとして意味せず、当業者が、本発明の範囲及び真意内であるさらなる実施形態を同定する立場にいることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の対象における前立腺癌を診断するための化合物であって、当該化合物が、少なくとも1つのターゲティングモジュール及び少なくとも1つの検出可能ユニットを含み、前記ターゲティングモジュールが前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる、化合物。
【請求項2】
前記前立腺癌特異的マーカーが、クロモグラニンA(GRN−A)、グルタチオンS−転移酵素π(GSTPI)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、DD3PCA3(DD3)、及び、テロメア逆転写酵素(TERT)を含めた群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ターゲティングモジュールが、抗体、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、及び、小さな有機分子を含めた群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記ターゲティングモジュールが、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミドから成る群から選択されることが好ましいTERTの小分子抑制物質である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記検出可能ユニットは、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光顕微鏡法等の光学検出、超音波、X線検出、陽電子放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、及び、陽電子放射断層撮影・コンピュータ断層撮影(PET−CT)を含めた群から選択される方法により検出することができる、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記検出可能ユニットが、11C、18F、99mTc、123/5/131I、67Ga、ナノリン光体、半導体ナノ結晶体、カルボシアニン染料、テトラピロールベースの染料、デルタ−アミノレブリン酸、蛍光ランタニドキレート、フルオレセイン若しくは他のフルオレセイン関連及び/又は由来のフルオロフォアのような発光材料、被包型ガス若しくは気泡、シェル被包型液滴、又は、ナノ粒子を含めた群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記前立腺癌特異的マーカーが、クロモグラニンA(GRN−A)、グルタチオンS−転移酵素π(GSTPI)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、DD3PCA3(DD3)、及び、テロメア逆転写酵素(TERT)から成る群から選択され、検出可能ユニットが、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、若しくは、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
前記前立腺特異的マーカーがTERTであり、前記検出可能ユニットが、11C、18F、99mTc、123/5/131I、67Ga、ナノリン光体、半導体ナノ結晶体、カルボシアニン染料、テトラピロールベースの染料、デルタ−アミノレブリン酸、蛍光ランタニドキレート、フルオレセイン若しくは他のフルオレセイン関連及び/又は由来のフルオロフォアのような発光材料、被包型ガス若しくは気泡、シェル被包型液滴、又は、ナノ粒子から成る群から選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記ターゲティングモジュールが、3’−アジド−2’,3’−ジデオキシチミジン、二置換アントラキノン、フルオレノン、アクリジン、四環系ベースの化合物、ポルフィリンベースのグアニン四重鎖抑制物質、及び、ペリレンテトラカルボキシルジイミドから成る群から選択されることが好ましいTERTの小分子抑制物質であり、前記検出可能ユニットが、フルオレセイン、又は、5−アミノフルオレセイン若しくはフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、Oregon Green、Texas Red、Attodye、Cydye、Alexa647、Cy5、Cy3、又は、ナフトフルオレセイン等、他のフルオレセイン関連及び/若しくは由来のフルオロフォアから成る群から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の化合物、及び、任意選択で、少なくとも1つの薬剤的に受け入れできる賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
ヒト又は動物における前立腺癌を診断するための薬物の製造における、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の化合物、又は、請求項10に記載の組成物の使用。
【請求項12】
ヒト又は動物の対象における前立腺癌をin vivoで診断する方法であって:
(a)ターゲティングモジュール及び検出可能ユニットを含んだ化合物を前記ヒト又は動物の対象に投与するステップであって、前記ターゲティングモジュールが前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる、ステップ;
(b)前記化合物の前記ターゲティングモジュールを前記前立腺癌特異的分子マーカーと反応させるステップ;並びに、
(c)前記検出可能ユニットにより生じた信号を前記ヒト又は動物の体外で測定することによって、前記前立腺癌特異的分子マーカーと前記化合物との相互作用を検出するステップ;
(d)ステップ(c)において測定された前記信号に基づき、前立腺癌の存在を決定するステップ;
を含む方法。
【請求項13】
ヒト又は動物の対象における前立腺癌特異的分子マーカーをin vivoで検出する方法であって:
(a)ターゲティングモジュール及び検出可能ユニットを含んだ化合物を前記ヒト又は動物の対象に投与するステップであって、前記ターゲティングモジュールが、前立腺癌特異的分子マーカーと相互作用することができる、ステップ;
(b)前記化合物の前記ターゲティングモジュールを前記前立腺癌特異的分子マーカーと反応させるステップ;並びに、
(c)前記検出可能ユニットにより生じた信号を測定することによって、前記前立腺癌特異的分子マーカーと前記化合物との相互作用を検出するステップ;
を含む方法。

【公表番号】特表2010−507645(P2010−507645A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533995(P2009−533995)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054183
【国際公開番号】WO2008/050255
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】