説明

剛性を改善したタイヤトレッド

本発明は、新品状態において走行面上に通じる複数個の外部キャビティ(21)及び新品状態で走行面内に半径方向に且つ全体的に配置された複数個の内部キャビティを含む少なくとも1つの連続した溝を備えた少なくとも2つの摩耗層を有するトレッド(10)であって、連続溝(2)の各外部キャビティは、内部キャビティと外部キャビティとの連続性を保証する連結チャネル(23)によって連続溝(2)の少なくとも2つの内部キャビティ(22)に連結され、トレッドは、新品状態においてトレッドの転動面上に開口した複数個の切り込み(30)を更に有し、切り込みの各々は、単一の溝の2つの連続して位置する外部キャビティと少なくとも2つの連結チャネルと少なくとも1つの内部キャビティとを互いに連結していることを特徴とするトレッドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッドに関し、特に、これらトレッドのトレッドブロックパターン及び雨天における路面上の表面水を排除するよう経時的に長く続く性能を有し、摩耗率の面で不利とはならないかかるトレッドを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、雨天運転条件下においてタイヤを使用するには、タイヤと路面との接触領域に存在する水をできるだけ迅速に排除してトレッドの構成材料がこの路面に接触するようにすることが必要である。タイヤの前に押し出されなかった水は、タイヤトレッドに形成されている溝及び切り込み中に流れ込み又は少なくとも部分的にこれらによって集められる。
【0003】
定義
【0004】
トレッドのトレッドブロックパターンは、本明細書においては、路面に接触するようになったトレッドの部分の幾何学的形状を意味し、このトレッドブロックパターンは、切れ目(溝、切り込み、ウェル、キャビティ)によって互いに画定された隆起要素によって形成される。
【0005】
溝は、本明細書においては、路面に接触する踏み面(トレッド表面)上に開口した中空部を意味し、この中空部は、タイヤの通常の使用条件下において互いに決して接触することはない溝の画定材料の壁に適した平均幅を有する。溝は、断面及びこれらが踏み面に沿って辿る線の点で任意の形状を有することができると共に任意の方向に配向可能である。溝が踏み面に沿って辿る線という用語は、本明細書においては、踏み面上に溝によって形成されたエッジの辿る幾何学的線を意味している。溝は、トレッドの外部に向かって開口した端を有するのが良く又は変形例として周方向に連続していても良い。
【0006】
切り込みという用語は、本明細書では、或る特定の加重条件下において、切り込みを画定する材料の壁が接触パッチの通過の際に少なくとも部分的に互いに接触するような僅かな平均幅の薄いスリットを意味している。
【0007】
本明細書において、「半径方向」又は「半径方向に」という用語は、タイヤに関して考えたときに、タイヤの回転軸線に垂直な方向である方向を指示するために用いられ、これに対し、トレッドだけを考慮したとき、かかる用語は、トレッドの厚さ方向に対応している。さらに、「周方向」という用語は、中心がタイヤの回転軸線に一致した円の接線方向に一致した方向を指示するために用いられている。この同じ方向は、トレッドの長手方向に一致し、このトレッドは、これがタイヤに組み込まれる前に扁平なストリップのように形成される。
【0008】
トレッドに設けられた中空部(又はキャビティ)の全容積は、新品のままの状態においてトレッドの踏み面上に開口している場合があり又は開口していない場合がある中空部の容積の全ての和に等しい。これら中空部の中には、トレッドが部分的に摩耗状態になった後に接触パッチ上に上方に開口可能なものがある。
【0009】
トレッドの全体積は、タイヤを取り外さなければならない(タイヤを更生するかこのタイヤを新品のタイヤで交換するかのいずれかのため)時点前における走行中に摩滅可能な材料の全体積と中空部の全容積の和に等しい。
【0010】
トレッドの全厚Eは、走行中に摩滅するようになった材料の厚さに一致する。従来、この全厚Eは、溝を再溝づけ作業中、部分的に再切断することができるようにするために設けられた厚さを考慮に入れていない。この全厚Eは、踏み面と摩耗指標の外面との間で新品のままのタイヤについて測定される。タイヤのクラウン補強材とこの全厚Eとの間で半径方向には一般に、トレッドの追加の厚さE*が設けられる。
【0011】
重車両の操舵又は耐力アクスル向きのタイヤの場合、これらタイヤのトレッドがトレッドの全厚(この全厚は、水を部分的に再切断することができるようにするために設けられる場合のある厚さを考慮に入れていない)に等しい深さの周方向(又は長手方向)溝を備えることはありふれたことである。この溝深さは、一般に、かかるアクスル向きのタイヤに関して13〜18mmである。それにも関わらず、被動アクスル向きのタイヤの場合、溝の深さは、24mmという大きな値である場合がある。かくして、路面上に存在する水の排除の観点において、安全性能と呼ばれる最小限度の性能よりも良好に働き、しかもトレッド摩耗レベルとは無関係にそのように働くトレッドを得ることが可能である。
【0012】
先行技術のタイヤに関し、中空部の全容積は、一般に、走行中に摩滅するようになったトレッドの全体積の15〜25%である(全体積は、中空部の全容積が追加された材料の体積に一致している)。
【0013】
さらに、これらタイヤは、新品のままの状態では比較的大きい接触パッチ中の中空部の有効容積Veを有することが分かっている(有効という用語は、本明細書では、路面上に存在する液体で潜在的に満たすことが可能であることを意味している)。この接触パッチのところで踏み面上に開口した中空部のこの容積は、315/70R22.5サイズのタイヤに関し、平均で100cm3程度である。接触パッチのところで踏み面上に開口した中空部の有効容積Veは、タイヤがETRTO規格で定められたその公称インフレーション及び静荷重条件を受けたときに評価される。
【0014】
溝又はより一般的に言ってキャビティは、接触パッチのところの水を排除するうえで必要不可欠であるが、結果として生じるトレッド材料の減少は、このトレッドの耐摩耗性に相当な悪影響を及ぼし、従って、摩耗速度の増大の結果としてタイヤの有効寿命を縮める。他のタイヤの性能上の観点、特に取り扱い性、耐ロードノイズ性及び転がり抵抗性能上の観点も又、悪影響を受ける場合がある。また、摩滅するようになったタイヤの高さに等しい作業高さを有するよう形成されたこれら溝は、耐久性に関する問題の原因となる場合のあることが判明している。或る特定の走行条件下において、例えば石のような異物がこれら溝の中に嵌まり込んでこれら溝の底部を攻撃する場合があり、それによりゴム中に破断部が見えるようになることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、タイヤに複数本の溝を作ることは、トレッドの幅が所与の場合にトレッド材料の量を減少させ、従って、摩耗速度の増大の結果としてタイヤの有効寿命を縮めるという欠点をもたらす。
【0016】
さらに、溝は、圧縮強さ及び剪断強さを低下させる。というのは、これら溝は、切り込みにより画定された部分と比較すると変形に対して敏感である材料の部分を画定しているからである。これは、切り込みの場合、これら切り込みを画定する材料の壁が少なくとも接触パッチで互いに接触することができるからである。溝が存在しているところのこの強度の減少により、変形が増大すると共に結果的にトレッドの耐摩耗性が低下し、一定走行距離が短いにもかかわらず大きな摩耗が観察される(そして、これは、トレッドの摩耗速度の増大に対応している)。さらに、転がり抵抗の増大及びかくしてトレッドを構成する材料の変形サイクルと関連したヒステリシス損の増大の結果としてのかかるタイヤを装着した車両の燃料消費量の増加が観察される。
【0017】
本発明の目的は、溝及び切り込みを備えたトレッドであって、水排除に関する最低限の安全性能と同等又はこれよりも優れた性能を備えることができ、しかもトレッド摩耗レベルとは無関係にこのことが当てはまると同時に摩耗に対する有効寿命の観点で性能をかなり向上させ、転がり抵抗を減少させ、そして攻撃に耐えるトレッドの能力を向上させたトレッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的を達成するため、路面に接触するようになった踏み面を備えた厚さEのタイヤトレッド)であって、トレッドは、少なくとも2つの摩耗層、即ち、その厚みの中に位置する少なくとも第1及び第2の摩耗層を有する形式のトレッドが提案される。第1の層は、トレッドが新品である場合、外部に最も近い層であって路面に接触する最初の層である。さらに、このトレッドは、少なくとも1本の連続溝を備え、連続溝は、新品のままの状態において踏み面上に開口した複数個の外部キャビティ及び複数個の内部キャビティで形成され、複数個の内部キャビティは、新品のままの状態において踏み面内に半径方向に且つ全体として配置されている。
【0019】
本明細書では、摩耗層は、この摩耗層の溝の最大深さに関連づけられたトレッドの部分を意味している。摩耗層は、トレッドの全厚よりも小さく且つこの摩耗層中に存在する溝又はキャビティの最大深さに等しい厚さを有する。本発明のトレッドは、少なくとも2つの摩耗層を有し、これら摩耗層の溝又はキャビティの中には、これら摩耗層のうちの1つにのみ形成されているものがある。当然のことながら、この形態では、各摩耗層は、先の摩耗層が完全に摩滅する前に有効状態になり、かかる場合、少なくとも2つの摩耗層相互間にはオーバーラップが存在する。摩耗層は、この摩耗層の内部に形成されたキャビティ又は溝が路面と接触状態にあるタイヤの踏み面上に開口するやいなや、有効状態になって雨天において路面上に存在する水を排除する。第1の摩耗層は、新品のままの状態において半径方向外側に最も近いところに位置するトレッドの部分に対応している。
【0020】
第1の摩耗層は、新品のままの状態では踏み面内において、外部キャビティの半径方向最も内側の箇所までトレッドの厚み中に延びる。半径方向最も内側という表現は、新品のままの状態において踏み面から最も遠くに位置する箇所を意味するものと理解されるべきである。
【0021】
この第1の摩耗層の後に、考慮対象の摩耗層の内部キャビティの最も内側の箇所までトレッドの厚み中に延びる層として構成された別の摩耗層が設けられる。この層は、内部キャビティの半径方向最も外側の箇所から延びている。
【0022】
外部キャビティは、トレッドの全厚Eよりも小さい平均深さP1、平均長さL1及び踏み面に垂直な断面平面で見て断面積S1を有する(これら好ましい構成は、本明細書において説明する全ての変形例に当てはまる)。
【0023】
内部キャビティは、トレッドの全厚Eよりも小さい平均高さP2(この高さは、キャビティを画定する壁の半径方向最も外側の箇所と半径方向最も内側の箇所との間で測定されている)、平均長さL2及び断面積S2を有する(これら好ましい構成は、本明細書において説明する全ての変形例に当てはまる)。
【0024】
同一の連続溝のこれらキャビティの全ては、内部キャビティの平均長さと外部キャビティの平均長さの差が最も長い平均長さの多くても20%に等しい(即ち、0.80≦L1/L2≦1.20)ようなものであり、内部キャビティの平均断面積と外部キャビティの平均断面積の差が最も大きい平均断面積の多くても20%に等しい(即ち、0.80≦S1/S2≦1.20)ようなものである。
【0025】
さらに、連続溝の各外部キャビティは、内部キャビティと外部キャビティとの連続性を提供する連結チャネルによって同一の溝の少なくとも2つの内部キャビティに連結されている。各連結チャネルは、一方において内部キャビティに連結されると共に他方において外部キャビティに連結された2つの端を有し、各連結チャネルは、断面(溝の平均方向に垂直な断面平面で見て)を有し、これら断面の面積は、それぞれ、この連結チャネルによって互いに連結されている内部キャビティ及び外部キャビティの横断面積に等しい。
【0026】
このトレッドは、新品のままの状態においてトレッドの踏み面上に開口した複数個の切り込みを更に有し、切り込みの各々は、同一の溝の2つの連続して位置する外部キャビティと少なくとも2つの連結チャネルと少なくとも1つの内部キャビティとを互いに連結している。
【0027】
これら連結キャビティが設けられていることにより、水が同一溝の外部キャビティから内部キャビティに循環し、かくして、接触パッチの水を良好に排除すると同時に水力学的損失水頭を減少させることが可能である。
【0028】
各層は、トレッドの全厚Eの多くても75%に等しい厚さを有する(各摩耗層は、これに特有であり、且つ全体が或る他の層中には見受けられない溝又はキャビティを有する)。
【0029】
有利には、各内部キャビティの半径方向外側に位置したトレッドの厚さは、トレッドの全厚Eの25%を超える。
【0030】
外部キャビティ及び内部キャビティは、好ましくは、トレッドの全厚Eの多くても75%に等しい平均深さを有する。
【0031】
このトレッド構造により、水を満足のいくほど排除すると同時に新品のままの状態においてトレッドの剛性の減少を制限するのに適した中空部の容積が得られ、この容積の中空部は、第1の使用段階の際には外部キャビティにより、次に、別の使用段階では内部キャビティだけで形成され、これら内部キャビティと外部キャビティは、連結チャネルによって互いに連結されている。本発明の溝は、新品のままの状態においてトレッドの踏み面上に規則的に且つ不連続に開口した連続溝になぞらえることができる。この溝は、新品のままの状態において踏み面と交差する波形の全体的形状を採用するのが良い。特に圧縮の面でトレッドの剛性が増大しているのは、内部キャビティの半径方向外側及び外部キャビティの半径方向内側にゴム状材料が設けられていることによる。
【0032】
新品のままの状態での表面のところの中空部の比率を減少させることにより、本発明のトレッドは、更に、石の保持の影響を受けにくいという利点を有し、従って、溝の底部のところの破断に対して良好な耐性を提供し、かかる破断は、ゴム状材料中への石の侵入によって引き起こされる。表面のところの中空部の比率という表現は、本明細書では、踏み面上に開口した外部キャビティの表面積とトレッドの全表面積の比である。同一溝の内部キャビティが新品のままの状態では踏み面上に開口していないということにより、効果的に、新品のままの状態での中空部の比率を減少させることができると同時に溝内の効果的な水排除性を提供することができる。
【0033】
好ましくは、本発明のトレッドは、トレッドが部分的に摩耗したときに内部キャビティが外部に対して開口状態になるようトレッドの厚み内に配置されているようなものであり、この部分摩耗は、第1の摩耗層の全摩滅量よりも少ない。部分摩耗が〜よりも少ないという表現は、摩耗の結果としてのトレッドの厚さの減少が第1の摩耗層の摩耗に対応し、即ち、外部キャビティが消えてなくなることに対応した厚さの減少よりも少ないことを意味している。この有利な形態では、摩耗層相互間のオーバーラップの距離は、正であると呼ばれる。
【0034】
好ましくは、摩耗層相互間のこのオーバーラップ距離は、第1のキャビティの深さP1の半分未満である。
【0035】
この変形例は、トレッド摩耗レベルとは無関係に、接触パッチに存在する水を排除する中空部のほぼ一定の作業容積を保証するという利点を有する。
【0036】
好ましくは、本発明のトレッドは、同一溝の外部キャビティを内部キャビティに連結する各連結チャネルがゼロよりも大きく且つ外部キャビティの周方向長さL1よりも短い長さLiを有するようなものである。(Liは、外部キャビティの一端と内部キャビティの一端との間で周方向に測定した最も短い長さである)。例えば、各連結チャネルの長さLiは、ゼロよりも大きく且つL1の多くても50%に等しい。
【0037】
本発明の変形例では、トレッドは、同一溝の2つの連続して位置する摩耗層の内部キャビティと外部キャビティがトレッドの厚さ方向に全体的にも部分的にもオーバーラップせず、即ち、これらキャビティが溝の平均方向に互いに完全にずれているようなものである。溝の平均方向は、濡れた路面上を走行しているとき、溝が水を流すことができる方向に一致し、この方向は、一般に、溝の最も大きな寸法方向に一致している。
【0038】
内部キャビティと外部キャビティが厚みの中に全体的にも部分的にもオーバーラップしていないこの変形例は、外部キャビティから内部キャビティまで水の辿る経路中の水力学的損失水頭を最小限に抑えるという利点を提供する。外部キャビティと内部キャビティのオーバーラップ又は重なり合い―全体的又は部分的に―の場合、外部キャビティの一端が内部キャビティの一端を越えて位置することを意味し、このことは、本発明の範囲に含まれるが、水が溝を通ってどのように流れるかという観点から判断すると望ましさの度合いが低いと考えられる。
【0039】
本発明の有利な一実施形態によれば、中空部の全容積は、トレッドの全体積Vの少なくとも7%に等しく且つ多くても12%に等しい。
【0040】
本発明の別の有利な実施形態によれば、各摩耗層に関する中空部の有効容積Ve(積載状態では)は、次の関係式、即ち、
〔数1〕
0.4Se<Ve<0.8Se
を満たし、上式において、0.4及び0.8は、ミリメートルで表された高さであり、Seは、タイヤが推奨リムに取り付けられた状態において公称荷重及び圧力下における静的条件下で測定されたトレッドの接触パッチの外部輪郭によって画定された表面積(mm2で表される)である。
【0041】
0.4mm及び0.8mmという高さは、雨天における路面上に存在する場合があり、トレッドと路面との良好な接触状態を維持するために排除されなければならない水の平均深さに対応している。これら平均高さに表面積Se―この表面積は、同一路面上のトレッドの接触パッチの輪郭によって画定されると共にmm2で表されている(踏み面上に開口したキャビティに対応した表面積を本明細書では考慮する)―を乗算して得られた値は、キャビティの有効容積Ve(積載状態において)の指標を与える。この容積VeがSeの0.4倍未満である場合、満足のいく水排除結果を得るには十分ではない。この容積VeがSeの0.8倍を超える場合、適当なトレッド強度又は剛性を得る観点からは過剰であるとみなされる。
【0042】
接触パッチの中空部の有効容積Veは、トレッドが路面に接触したところでの接触パッチから水を排除する際に役割を果たす。
【0043】
特に接触パッチにおけるトレッドの表面のところの中空部の比率(新品のままの状態におけるトレッドの踏み面上に開口した中空部の表面積と接触パッチの全表面積の比)を増大させるため、トレッドは、複数の対をなす外部キャビティで形成された少なくとも1つの溝を有し、これら外部キャビティの各々の延長部として連結チャネルが設けられ、これら連結チャネルは、同一の内部キャビティ内に開口する。この内部キャビティの容積は、外部キャビティの容積と比較するとかなり少ない場合があり又はかかる内部キャビティの容積を所望の性能及び該当するタイヤに従って当業者によって適合させることができる。
【0044】
別の変形例では、中空部Veの有効容積は、トレッドの摩耗レベルにつれて増大し、従って、1つの摩耗層から次の摩耗層に増大する。
【0045】
別の変形例では、本発明のトレッドは、少なくとも1つの溝を有し、かかる溝の外部キャビティの各々の両端の延長部として2つの連結チャネルが設けられ、これら連結チャネルは各々、別々の内部キャビティ内に開口する。さらに、各内部キャビティ並びにこの内部キャビティを2つの外部キャビティに連結している連結チャネルの新品のままの状態でのトレッドの踏み面に向かう半径方向延長部として本発明のトレッドを成形したり脱型したりすることができるようにする切り込みが設けられる。
【0046】
2つの摩耗層を有するトレッドについて上述した内容を3つ以上の摩耗層、特に3つの摩耗層について容易に適用することができる。かかる変形例では、本発明のトレッドは、第2の摩耗層の半径方向内側の延長部として設けられた第3の摩耗層内に位置する追加のキャビティを有する。これら追加のキャビティは、追加の連結チャネルによって第2の摩耗層の内部キャビティに連結されている。これら追加のキャビティは、第3の摩耗レベルを定め、トレッド摩耗が実際に第2のキャビティを摩滅させた後、踏み面上に開口する。この変形例の一用途は、非常に厚いトレッドを有するタイヤについて特に有利である。
【0047】
連結チャネルにより互いに連結された一連の外部キャビティと内部キャビティにより形成され、本発明の要旨をなす連続溝は、トレッドに沿う又はタイヤに沿う任意の方向に(即ち、長手方向、横方向又はこれら方向のうちの一方又は他方の方向に対して斜めに)差し向けることができる。
【0048】
有利には、本発明の溝は、本質的に、トレッドの最も長い寸法(このトレッドがタイヤに装着されたときにこの最も長い寸法がトレッドの長手方向であるにせよ周方向であるにせよいずれにせよ)に一致した方向に差し向けられる。
【0049】
特に有利な一変形例では、本発明のトレッドは、十字形の溝のネットワークを形成するために第1の方向に本発明の第1の複数本の連続した溝を有すると共に第1の方向と交差する第2の方向に本発明の第2の複数本の連続溝を有する。有利には、本発明のこれら第1及び第2の複数本の溝は、これら第1及び第2の複数本の溝の内部キャビティが十字形格子効果を高めるために互いに連結されるよう配置されている。「互いに連結され」という表現は、流体が2種類の複数本の溝の種々の内部キャビティ相互間を循環することができるということを意味している。
【0050】
有利な変形例では、本発明のトレッドは、十字形の溝のネットワークを形成するために第1の方向に本発明の第1の複数本の溝を有すると共に第1の方向と交差する第2の方向に本発明の第2の複数本の溝を有する。本発明のこれら第1及び第2の複数本の溝は、これら第1及び第2の複数本の溝の内部キャビティがこの場合、トレッドの摩耗レベルとは無関係に、実質的に一定のままである中空部の比率を得るよう異なる深さのところに配置されるのが良い。中空部の比率という表現は、考慮対象の摩耗レベルにおける考慮対象の踏み面上の中空部の表面積とトレッドの全表面積の比である。内部キャビティは、これらが外部キャビティに連結されている場合であっても、トレッドがいったん摩耗状態になると、これら内部キャビティが新たな踏み面上に現れるまで中空部の踏み面比率に寄与するとはみなされない。
【0051】
別の変形例では、一連の内部キャビティ及び外部キャビティで形成された連続溝の平均方向に平行な方向に差し向けられた少なくとも1本のチャネルを設けることを計画することが可能であり、このチャネルは、この溝の内部キャビティの深さに一致した深さのところに位置し、トレッドの踏み面の方へのこのチャネルの延長部として又はトレッドの内面の方へのこのチャネルの延長部として切り込みが設けられている。トレッドの内面という用語は、トレッドが取り付けられたタイヤとトレッドが接触状態にある表面である。これら切り込み及びチャネルは、トレッドを成形しているときに容易に形成できる。このチャネルの断面は、チャネルがトレッド摩耗に続いて踏み面上に開口すると、雨天において路面上に存在する水の正確な流れに適した断面で形成されるよう定められる。このチャネルは、第1の摩耗層の厚さに等しい又はより薄い部分摩耗後、踏み面上に開口することによって新たな溝を形成するよう設計されている。
【0052】
この変形例では、トレッドは、連続溝の複数個の内部キャビティと連通状態にある少なくとも1つのチャネルを配置する手段を更に有するのが良い。かくして、濡れた路面上を運転しているときに水を排除する性能が、少なくともトレッド表面上に開口したチャネルが見え、新たな溝を形成する部分摩耗条件後、向上する。
【0053】
本発明のトレッドの満足のゆく剛性レベルを維持するため、内部キャビティ及び外部キャビティの延長部としての切り込みがこれら切り込みを画定する対向した壁の相対運動を機械的に制止する手段を備えることが有利である。かかる手段は、対向した壁が波形になっている形態を取るのが良く又はこれら壁上に成形され、互いに係合するのに適した凸部の形態をとっても良い。
【0054】
本発明は又、本発明に従って構成されたトレッドを備えたタイヤに関し、このトレッドの半径方向外側には、カーカス補強材とクラウン補強材とから成るタイヤカバーが載せられている。このタイヤのトレッドは、上述の変形例のうちの1つの場合のように製作され、溝の或る特定の寸法は、タイヤの公称使用条件下におけるタイヤの接触パッチの平均長さに関連づけられ、これら公称使用条件は、ETRTO又はJATMA規格で定められている。
【0055】
踏み面上に開口したキャビティ及び踏み面の下に位置するキャビティで形成された周方向に差し向けられている溝の各々について、水の排除を可能にするために接触パッチには常時少なくとも1つの外部キャビティが存在することが有利である。本発明のトレッドを備えたタイヤの公称条件下における接触パッチの平均長さをTで表した場合(この平均長さは、この接触パッチの外側輪郭により画定された全表面積をこの表面積の幅Wで除算して得られる)、周方向溝のこれら外部キャビティの平均長さが接触パッチの平均長さTの25%〜75%であることが依然として好ましい。
【0056】
図示しなかった変形例では、トレッドは、トレッドの長手方向に差し向けられた連結チャネルによって互いに連結された複数個の外部キャビティ及び内部キャビティで形成されている複数本の溝を有し、これら溝は、新品のままの状態において踏み面上に開口した外部キャビティが互いにずれた状態で配置されると共に内部キャビティも又、全て互いにずれるように配置されるような配置状態になっている。かかる配置状態の利点は、それにより、特に横方向加重(例えば、コーナリングの際)トレッドの剪断強度の減少が制限されるということにある。
【0057】
本発明の他の特徴及び他の利点は、本発明の内容である幾つかの実施形態を非限定的な例として示す添付の図面を参照して以下に与えられる説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の連続溝を備えたトレッドの踏み面の部分図である。
【図2】図1のトレッドのII‐II線矢視断面図である。
【図3】図1のトレッドのIII‐III線矢視断面図である。
【図4】図1のトレッドのIV‐IV線矢視断面図である。
【図5】全体が踏み面下に位置した連続チャネルが設けられている変形実施形態の断面図である。
【図6】新品のままの状態の本発明のトレッドの部分図である。
【図7】図6のトレッドの踏み面の平面図である。
【図8】第2の摩耗層までのトレッド摩耗に続く図7のトレッドの踏み面の平面図である。
【図9】1つの内部キャビティに連結された1対の外部キャビティを有する連続溝の変形例の部分図である。
【図10】2つの内部キャビティに連結された1つの外部キャビティを有する連続溝の変形例の部分図である。
【図11】トレッドが2つの交差方向に差し向けられた本発明の溝を備えた変形例の部分図であり、これら溝が相互に連結されている状態を示す図である。
【図12】内部キャビティ及び連結チャネルを踏み面に連結する切り込みが踏み面上に開口したウェルを備えている本発明の変形例を示す図である。
【図13】内部キャビティの端のところの連結チャネルの勾配が互いに異なる本発明のトレッドの変形例の断面図である。
【図14】溝及び切り込みが波形経路を辿っている変形例を示す図である。
【図15a−15b】トレッドの内側の方への同一の連続溝の外部キャビティの延長部として制止手段を備えた切り込みが設けられている変形例を示す図である。
【図16】3つの摩耗層を有するトレッドの変形例を示す図である。
【図17】3つの摩耗層を有するトレッドの別の変形例を示す図である。
【図18】一連の外部キャビティ及び内部キャビティで形成された連続溝に加えて、トレッドの外部上に開口すると共に連続溝の内部キャビティに連結された横方向チャネルを有するトレッドの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図を理解しやすくするために、同一の参照符号は、これら参照符号が互いに類似した性質の要素を示している場合に本発明の変形例を説明するために用いられており、これは、構造上の性質であれ機能上の性質であれいずれであっても良い。
【0060】
図1は、新品のままの状態のトレッド10の一部を示しており、このトレッドは、厚さE、走行中、路面に接触するようになった踏み面又はトレッド表面11及びトレッドの厚さを定めると共に踏み面11と反対側に位置した表面12を有している。トレッドのこの部分は、本発明の連続溝2を有している。溝2は、新品のままの状態では踏み面11上に開口した長さL1の細長い形状の一連の複数個の外部キャビティ21及び新品のままの状態ではトレッド内に完全に位置した長さL2の一連の複数個の内部キャビティ22で形成されている。内部キャビティ22と外部キャビティ21を連結し、かくして溝の主要方向に溝2の連続性を保証する連結チャネル23が形成されている。これら連結チャネル23は、溝の主要方向で測定して長さLiを有している。液体が内部キャビティと外部キャビティとの間で正確に流れるようにするために、連結チャネルは、外部キャビティに連結された一端を有し、この端は、外部キャビティの断面に等しい断面を有している。これら同一の連結チャネルは、内部キャビティに連結された別の端を有し、この別の端は、内部キャビティの断面に等しい断面を有している。この特定の場合、外部キャビティと内部キャビティの断面は、実質的に同一であり、各連結チャネルは、その端のうちの一方から他方まで実質的に同一の断面を維持している。当然のことながら、この断面を変更して2つの端相互間で変化させても良い。
【0061】
本発明の溝2では、あらゆることは、トレッドの使用中、互いに受け持つ2つの摩耗層I,IIを備えたトレッドであるかのようなものであり、各摩耗層は、踏み面上に種々のキャビティを有している。第1の層Iには踏み面上の外部キャビティ21の外観が見え、第2の層IIには新たな踏み面上の内部キャビティ22の外観が見える。内部キャビティが現れる前に、連結チャネルは、自分の役割を果たし、特に溝の連続性を保証し続ける。
【0062】
図2は、図1のII‐II線で示した断面平面でとった図1の断面図である。
この図2は、トレッドの全厚E(この厚さは、走行中、摩滅可能な厚さに一致している)の約74.5%に等しい深さP1にわたりトレッド中に延びる面積S1の外部キャビティ21の断面を示している。
【0063】
この外部キャビティ21の各側の延長部として連結チャネル23が設けられ、これら連結チャネルは、外部キャビティを図3に断面で見える内部キャビティ22に連結している。
【0064】
図3は、図1のIII‐III線で示された断面平面でとった図1の断面図である。
【0065】
この図3は、外部キャビティ21の面積S1に実質的に等しい面積S2を有していて、切り込みにより踏み面に向かって延びる内部キャビティ22の断面を示している。
【0066】
この内部キャビティ22は、外部キャビティ21の寸法と同等の寸法を有し、外部キャビティ及び内部キャビティのそれぞれの長さL1,L2(図4参照)は、この場合、実質的に同一である。トレッド摩耗度とは無関係にトレッドがその踏み面上に溝つき要素を常時有するようにするためには、この場合のように、外部キャビティ21が完全に見えなくなる前に同一溝2の内部キャビティ22が見えるようにすることが有利である。すると、これは、新品のままの状態でのトレッドの踏み面と外部キャビティ21の最も内側の箇所との間に延びる第1の摩耗層Iを形成し、第2の層がトレッドの内側の最も近くに位置する内部キャビティ22の箇所まで延びる。当然のことながら、第1のキャビティが完全に摩滅した後にのみ第2のキャビティが見えるように計画することが可能である。
【0067】
図4は、図1のIV‐IVで示した断面平面で取った図1の断面図である。
【0068】
この図4は、長さLiの連結チャネル23より互いに接合された一連の外部キャビティ21と一連の内部キャビティ22を示している。さらに、新品のままの状態では踏み面11上に開口した切り込み30が1つの内部キャビティ22と2つの連結チャネル23と2つの外部キャビティ21を互いに連結している。この切り込み30は、本発明の溝を成形したり脱型したりするのを容易にするために切り込みが新品のままの状態において踏み面11上に開口するようトレッド内に配置されている。当然のことながら、この切り込みがこの踏み面11と反対側の面であるトレッドの面12上に開口する措置が講じられるのが良く、この場合、溝及び切り込みを備えたトレッドをこれがタイヤを形成するようケーシングと組み合わされる前に成形する必要がある。
【0069】
第1の摩耗層Iが完全に摩滅すると、当初内部に位置したキャビティ22は、新たな踏み面上に開口し、摩滅可能なトレッドの残りの高さが所与の場合、場合によっては、路面上に存在する水のリザーバとして働くのに十分な場合がある。
【0070】
あらゆることは、溝2が半径方向に(即ち、トレッドの厚み中に)波形の線を辿るかのようなものであり、新品のままの状態では踏み面上に開口していて、新品のままの状態ではトレッド内に完全に位置した部分(内部キャビティ)と交互に位置する一連の部分(外部キャビティ)を有し、連結キャビティは、内部キャビティ及び外部キャビティの容積部相互間の連続性を提供している(即ち、流体が外部から内方に、又その逆の方向に流れることができるようにする)。かくして、接触パッチが路面に接触しているとき、この路面上の水を外部キャビティにより内部キャビティに向かって排除することができる。当然のことながら、接触パッチにおいて完全に又は部分的に開口した少なくとも1つの外部キャビティが存在するようにすることが必要である。外部キャビティの寸法及び内部キャビティの寸法は、接触パッチの長さが所与の場合にこの条件を満たすよう定められる。
【0071】
この同じ図1は、走行中に摩滅可能なトレッドの全厚を定める摩耗指標TWIの存在を示している。このタイヤ摩耗指標は、内部キャビティ22の底部中に成形され、この摩耗指標は、法上の要件に適合するためにこの場合1.6mmに等しい高さを有している。
【0072】
これら構成により、各々が新品のままの状態では内部キャビティの最も内側の箇所から踏み面までの距離に等しい全深を有する通常の水で達成できる全体的剛性よりも高い全体的剛性を新品のままの状態で得ることが可能である。少なくともトレッド摩耗の当初の部分の間(即ち、外部キャビティの深さの75%分が摩滅するまで)、水を排除したり集めたりする機能は、この溝により実行される。というのは、外部キャビティ内に集められた水は、連結チャネル及び内部キャビティ内に流れることができるからである。このようにして排除された水は、次に、別の外部キャビティを経て再び現れる場合がある。有利には、種々のキャビティ相互間の連結部は、溝内の流体の流れを減じることがないようにするのに適している。
【0073】
第1の摩耗層Iが完全に摩耗すると、内部キャビティ22は、踏み面上にこれらの全長にわたって開口し、そして、路面上に存在する水のうちの何割かを保持するリザーバとして働くことができる。
【0074】
しかしながら、この場合、図5に示されているように、溝2の全体的向きと同一又は実質的に同一の全体的向きを備えた連続チャネル40の存在をこの溝に結びつけることが有利であり、この連続チャネルの機能は、部分摩耗に続いて現れて踏み面上に開口する新たな連続溝を形成することにより、その結果、第2の摩耗層IIの内部キャビティ22も又、この新たな踏み面上に現れるようになる。この場合、水が流れることができるようにする機能が保持され、その理由は、チャネル40が水を排除することができ、そして水を流出させることができる連続溝になり、本発明の溝2の内部キャビティ22がこの変形例においては互いに途切れている水収容リザーバを形成するからである。
【0075】
本発明のトレッドの一部分の断面図であるこの図5は、連結チャネル23により互いに連結された複数個の外部キャビティ21及び複数個の内部キャビティ22を有する溝2の存在及びチャネル40の存在を示しており、これらキャビティの断面積は、チャネル40が新たな踏み面上に見え始める深さに対応したトレッドの部分摩耗に続いて新たな溝が形成されるやいなや水が流れることができるようにするのに適している。
【0076】
好ましくは、トレッド内に形成されたチャネルは、適当な水排除容積を提供するような寸法のものであり、特に、これらチャネルは、内部キャビティの高さに実質的に等しい高さを有するのが良い。この変形例では、路面から水を排除する中空部の作業容積をほぼ一定に又は一定に維持し、上述したトレッドを備えるタイヤの有効寿命全体を通じてそのようにすることが可能である。
【0077】
本発明の複数個の内部キャビティ及び複数個の外部キャビティで形成された連続溝を、タイヤトレッド中で任意の方向に差し向けることができる。
【0078】
本発明に従って連続であり且つ厚みが波形の溝をトレッド中に形成してこれら溝が新品のままの状態では踏み面上に開口せず、トレッドが部分的に摩耗した後にのみ開口するようにするのが良い。当然のことながら、これらを、
‐本発明の溝で次第に置き換えられる浅い溝か
‐トレッドの新品のままの状態において踏み面上に開口した本発明の溝かのいずれかと組み合わせることが賢明である。
【0079】
外部キャビティと内部キャビティとのオーバーラップ度aは、部分トレッド摩耗後に、外部キャビティが完全に見えなくなる前に内部キャビティが踏み面上に開口するよう設けられる。
【0080】
本発明のトレッドを有する315/70R22.5サイズのタイヤの別の実施形態が以下において与えられる。
【0081】
図6は、このトレッドの一部分だけを示しており、このトレッドの長手方向は、この図では軸線XX′の方向で示されている。このトレッドは、258mmに等しい幅Wのものであり、その全厚Eは、新品のままの状態のタイヤの踏み面を摩耗指標から隔てる距離として測定された9.4mmに等しい(これらタイヤ摩耗指標は、1.6mmの溝高さを指示するように配置されている)。さらに、トレッドとタイヤクラウン補強材との間には追加の厚さE*(この場合、6.6mmに等しい)が設けられている。このトレッドは、長手方向の向きの(即ち、このトレッドがタイヤにいったん組み込まれると周方向に差し向けられる)3つの連続した溝2を備えており、これら溝の各々は、一連の外部キャビティ21及び一連の内部キャビティ22で形成され、外部キャビティ21は、新品のままの状態ではトレッドの踏み面11上に開口し、内部キャビティ22は、新品のままの状態では踏み面の下に完全に収まった状態で形成されている。
【0082】
連結チャネル23が外部キャビティを内部キャビティに連結している。各連結チャネルは、これが連結された外部キャビティの断面積に等しい面積の端及びこの連結チャネルが同様に連結された内部キャビティの断面積に等しい面積の他方の端を有している。これら連続溝には全て、トレッドの長手方向に実質的に差し向けられた主要方向を有している。変形例として、内部キャビティ又は外部キャビティの断面積よりも小さい断面積の連結チャネルを同様に使用できる。
【0083】
この特定の場合、各外部キャビティの長さL1は、150mmに等しく、各内部キャビティの長さL2は、110mmに等しく、連結チャネルの長さLiは、15mmに等しい。
【0084】
各外部キャビティ21は、12mmに等しい平均幅及び7mm(即ち、全厚Eの74.5%)の深さを有している。外部キャビティを画定する壁は、踏み面の垂線と15°の平均角度をなすのが良く、これら壁は、外部キャビティの底部に向かう方向に互いに収斂する傾向がある。
【0085】
各内部キャビティは、9mmに等しい平均幅及び7mm(即ち、全厚Eの74.5%)の深さを有する。内部キャビティを画定する壁は、踏み面の垂線と15°の平均角度をなすのが良く、これら壁は、内部キャビティの底部に向かう方向に互いに収斂する傾向がある。
【0086】
さらに、踏み面の方への内部キャビティ22及び連結チャネル23の延長部として切り込み30が設けられ、これら切り込みを画定する壁は、これら壁相互間の相対運動をできるだけ制限し、かくして高い剛性を維持するよう互いに係合した凹んだパターン及び隆起したパターンを備えている。この特定の場合、同一切り込みの対向した壁を隔てる平均距離は、0.4mmに等しい。注目されるように、外部キャビティ21は、互いに実質的に同一の寸法を有し、これら外部キャビティは、これら外部キャビティがロードノイズに与える影響を減少させると共にこれら外部キャビティが濡れた路面上における走行時に水をピックアップする効率を増大させるよう長手方向に互いにずれるよう配置されている。
【0087】
3mmに等しいオーバーラップが外部キャビティと内部キャビティとの間に設けられ、その結果、部分トレッド摩耗に続き、外部キャビティが完全に見えなくなる前に内部キャビティが踏み面上に開口するようになっている。
【0088】
図7は、路面と接触状態にある第1の摩耗層が存在している場合の図6のトレッドの踏み面の平面図である。理解できるように、踏み面は、周方向に差し向けられた3つの連続した溝及びこれら溝相互間に軸方向に挿入されるように設けられた2つの切り込みを有し、これら切り込みの半径方向内方の延長部として周方向に連続したチャネル40が設けられている。
【0089】
このトレッドは、トレッドの材料の全体積Vと中空部の全容積の和に等しい体積の9%に等しい中空部の全容積Vcを有している。
【0090】
このトレッドの各摩耗層は、接触パッチに中空部の有効全容積Veを有し、この有効全容積は、40cm3に等しい。mm3で表されたこの有効容積Veは、0.4St<Ve<0.8Stという関係式を満たし(本発明では、24120<40000<48240である)、表面積Stは、mm2で表される。この場合、表面積Stは、60300mm2に等しく、この表面積は、タイヤが推奨リムに取り付けられた状態で公称荷重及び圧力下における静的条件下において測定されたトレッドの接触パッチの外側輪郭によって画定されることにより定められる。
【0091】
図8は、トレッドが第2の摩耗層まで摩滅したときの図6のトレッドの踏み面の平面図である。図8は、踏み面上に開口し、互いに途切れた内部キャビティを示しており、新たな周方向溝は、踏み面上におけるチャネルの出現によって形成される。
【0092】
本発明の有利な別の変形例では、少なくとも1つの溝が図9に部分的に示されており、即ち、少なくとも1つの連続溝2が新品のままの状態では踏み面11上に開口した複数個の外部キャビティ211,212で形成されており、これら外部キャビティ211,212は、1対ずつ形成され、第1のキャビティの各対の延長部として連結チャネル231,232がそれぞれ形成されており、これら連結チャネルは、トレッド内に形成された内部キャビティ22の同一の第1の端中に開口するよう合体している。この内部キャビティの第2の端の延長部として2つの連結チャネルが設けられており、これら2つの連結チャネルは、トレッドの新品のままの状態では踏み面上に開口した別の1対の第1のキャビティに連結されている。図1を参照して説明した変形例の場合とちょうど同様に、踏み面の方への連結チャネル及び内部キャビティの延長部として切り込みが設けられ、この切り込みの端は、踏み面上に局所的にY字形の線を形成している。
【0093】
この変形例は、新品のままの状態ではトレッドの踏み面上に開口した外部キャビティの良好な分布状態を提供している。
【0094】
本発明の有利な別の変形例では、少なくとも1つの溝2が図10に部分的に示されている。この変形例では、溝2は、踏み面11上に開口した複数個の外部キャビティ21で形成され、各外部キャビティの延長部として2つの連結チャネル231,232が設けられ、各連結チャネルは、一端が内部キャビティ221,222中に開口している。したがって、この変形例では、内部キャビティの数は、外部キャビティの数である。この変形例により、タイヤが達成しようとする所望の結果に応じて選択された水排除容積分に関し、トレッド内の内部中空部の一様な分布状態を得ることができ、従って、トレッドの剛性に対する影響を少なくすることができる。切り込み301,302が踏み面11の方への内部キャビティ及び連結キャビティの延長部として設けられている。内部キャビティの対に属する各キャビティは、踏み面11に対して同一深さのところに位置しても良く、別々の深さのところに位置しても良い。
【0095】
図11の裏付けをもって示されている本発明の有利な別の変形例では、トレッドは、第1の複数本の長手方向に差し向けられた溝2′(即ち、このトレッドを備えたタイヤ上で周方向に延びる溝)及び第1の複数本の溝2′と交差するよう差し向けられた第2の複数本の溝2″を備えている。この特定の場合、これら複数本の溝のなす角度は、90°に等しいが、任意他の値を用いることが可能であることは極めて明瞭である。
【0096】
第1の複数本の溝2′の各々は、連結チャネル23′により互いに連結された複数個の内部キャビティ22′及び外部キャビティ21′で形成され、連結チャネル23′は、トレッドの第1の摩耗層及び第2の摩耗層を画定している。
【0097】
第2の複数本の溝2″の各々は、連結チャネル23″によって互いに連結された複数個の内部キャビティ22″及び外部キャビティ21″で形成されている。図示の変形例の構成は、トレッドの厚み内の位置が第1及び第2の溝2′,2″の内部キャビティについて実質的に同一であるようなものである。
【0098】
さらに、第1の溝2′と第2の溝2″は、これらの内部キャビティ22′,22″のところで互いに繋がっている。内部キャビティは、互いに交差して踏み面上と踏み面の下の両方にキャビティのネットワークを形成しており、このネットワークは、水の排除にとって非常に好都合である。
【0099】
さらに、踏み面の方への内部キャビティ及び連結チャネルの延長部として切り込み30′,30″が設けられ、これら切り込みは、互いに交差すると共にこれらの交差部のところに一種の井戸又はウェルを有している。これらウェル50は、濡れた路面上を走行しているときにトレッドが排除することができる水の量を増加させる利点を有する。
【0100】
図示していない変形例では、第1及び第2の複数本の溝2′,2″は、必ずしも、これらが互いに垂直であるように差し向けられる必要はない。かくして、周方向に差し向けられた第1の複数本の溝及び第1の複数本の溝に対して90°以外の角度をなす方向に差し向けられた第2の複数本の溝が設けられる場合がある。また、特に第1の複数本の溝2′周りの第2の複数本の溝2″に関して対称に(必ずしもそうである必要はないが)差し向けられた第3の複数本の溝を更に有する変形例を想定することが可能である。
【0101】
図12に示されている別の変形例では、トレッドが部分的に摩耗した後に踏み面上に現れる本発明の溝2が設けられており、即ち、外部キャビティ21は、新品のままの状態では踏み面上に開口していない。さらに、外部キャビティ21、踏み面の方への連結チャネル23及び内部キャビティ22の延長部として切り込み30が設けられ、この切り込みは、それ自体、複数個の拡幅部61,62を備えている。溝2の水排除効果を補足すると共に増大させるために、拡幅部61は、外部キャビティ21の外側寄りに形成され、拡幅部62は、内部キャビティ22の外側寄りに形成されている。これら拡幅部は、この場合、踏み面に実質的に垂直に差し向けられており、これら拡幅部は、必要ならばこの表面に対して90°以外の角度だけ傾けられても良い。これら拡幅部は、この場合、円筒形ウェルの形態をしている。
【0102】
図13は、タイヤの走行中、溝の内側に沿って進む水の流れに方向づけ効果を生じさせるのに有益な別の変形例を示しており、タイヤは、連結チャネル233,234によって互いに連結された複数個の外部キャビティ21及び内部キャビティ22で形成されている少なくとも1つの連続溝をそれ自体備えたトレッドを有している。
【0103】
この変形例では、内部キャビティ22の各側に位置した連結チャネル233,234は、それぞれ互いに異なる長さLi,Ljを有し、従って、互いに異なる平均勾配又は傾斜角A1,A2を有している(これら角度A1,A2は、踏み面に垂直な方向に関して測定されている)。好ましい変形例では、踏み面の垂線に対して最も急に傾けられた連結チャネル(即ち、最も長いチャネル)は、まず最初に路面に接触する側に位置している(矢印Rは、回転方向を示している)。この構成により、好ましい走行方向を有するトレッドブロックパターンが作られている(この好ましい方向を示すためにトレッド又はタイヤには目に見える手段が取り付けられるのが良い)。
【0104】
図6、図7及び図8に示された変形例に非常に似ている図14の変形例では、トレッドは、新品のままの状態では、長手方向の向きの複数本の連続溝を有し、これら溝2は、連結チャネル23によって互いに連結された一連の内部キャビティ22及び一連の外部キャビティ21で形成されている。長手方向グリップを向上させるため、これら溝2は、踏み面11上で、全体として波形の形のパターンを辿っている。また、図示の変形例では、2つの連続して位置する外部キャビティ相互間に位置する各切り込みには穴が形成されており、これら穴は、踏み面から内部キャビティ22まで延びている。さらに、トレッドは、長手方向切り込み40を有し、この長手方向切り込みは、同様に、溝2の形状に実質的に平行な全体として波形の形を有し、トレッドの厚み中へのこの切り込み40の延長部として、上述すると共にトレッドがいったん部分的に摩耗すると、新たな溝を形成するよう踏み面上に現れるチャネルが設けられている。
【0105】
この図14に示されている変形例では、各(第1又は第2の)キャビティは、湾曲した形状を有するが、当業者であれば任意他の幾何学的形状、特に直線又はジグザグの形状を選択することができる。
【0106】
図15a及び図15bは、新品のままの状態ではトレッド上に開口した各外部キャビティ21の半径方向内方の延長部としてトレッドの摩耗部分の底部まで切り込み80が設けられていることを特徴とするトレッドを部分的に示している。図15aは、本発明のトレッドの一部の立体斜視図であり、このトレッドは、連続していて、新品のままの状態では踏み面11からトレッドの内側に位置した摩耗層まで延びる溝2を有している。この溝は、チャネル23によって内部キャビティ22に連結された外部キャビティ21を有している。この変形例では、トレッドの内側の方への外部キャビティ21の延長部として切り込み80が設けられ、この切り込みの壁は、これら壁相互の相対運動を制止することができる手段82を備えている。さらに、切り込み80と組み合わさった拡幅部81を局所的に備えている。かかる構成は、切り込み80が外部キャビティの下に位置した構成と同一であり、踏み面上に開口した切り込み30には制止手段32が設けられ、この切り込みは、2つの外部キャビティ21と2つの連結チャネル23を互いに連結している。図15bは、トレッドの同一部分を平面図で示しており、図面の表面は、踏み面に相当している。踏み面上に開口したこの切り込み30は、その中間部のところに拡幅部31を更に有している。
【0107】
この変形例の利点は、これにより接触パッチのところのトレッドの平坦化が向上し、それにより結果として生じる応力レベルが減少するということにある。
【0108】
これまでに説明した変形例の全ては、本発明の溝が貫通する2つの摩耗層を有するトレッドを示している。
【0109】
以下の変形例では、トレッドの厚み内に事実上3つの摩耗層を画定する本発明の溝が示されている(3つというこの数は、本発明を限定するものではなく、本発明の説明を補足するうえでの単に追加の数値の例である)。
【0110】
これら変形例のうちの第1のもの(図16)では、種々の高さ位置の内部及び外部キャビティがトレッドの厚み内に重なり合ってはおらず、従って、これらキャビティは、周方向に互いにずれている。これら変形例のうちの第2のもの(図17)では、第3の摩耗層の内部キャビティは、トレッド厚み中で外部キャビティと重ね合わされており、即ち、これらの位置は、多かれ少なかれ厚み中の外部キャビティの並進運動によって得られる。
【0111】
図16は、トレッド厚み中に3つの連続して位置する摩耗層を画定する本発明の連続溝を示している。この変形例では、連続溝には、初期状態では踏み面11上に開口している外部キャビティ21を有し、これら外部キャビティの延長部として、第2の摩耗層内に位置する第1の内部キャビティ22まで連結チャネル23が設けられている。これら第1の内部キャビティ22自体の延長部として、第3の摩耗層III中に位置した第2の内部キャビティ24まで連結チャネル25が設けられている。図16に示されているこの変形例では、各外部キャビティ又は各内部キャビティの半径方向下には、他の内部キャビティが存在しない。最後に、新品のままの状態では踏み面の方へのこの溝の半径方向延長部として、かかる溝を成形したり脱型したりしやすくする切り込み30が設けられている。
【0112】
図17に示されている別の変形例では、トレッドは、3つの摩耗層I,II,IIIを有し、図示の溝は、第3の摩耗層IIIの内部キャビティ24を有し、これら内部キャビティ24は、厚さ方向に、摩耗層Iの外部キャビティ21とオーバーラップしている。図16及び図17に示されている変形例では、実質的に同一の寸法を有する種々のキャビティが示されており、種々のキャビティの長さをこれらの位置に従って適合させ又は変形例としてこれらキャビティのそれぞれの容積を適合させることは、当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく当業者の能力の範囲内にある。図17に示されているこの変形例では、第2の摩耗層IIの内部キャビティ22は、連結チャネル25によって第3の内部キャビティ24に連結されている。成形及び脱型を見込んで、踏み面11上に開口した切り込み30に加えて、外部キャビティ21とこの外部キャビティの半径方向内側に位置した内部キャビティ24を連結する切り込み35が設けられ、この切り込み35は又、連結チャネル23,25を互いに連結している。有利には、これら切り込み30,35は、これらを画定する壁に設けられた制止手段を備えている。
【0113】
図18に示されている変形例では、本発明のトレッドは、新品のままの状態ではトレッドの踏み面11の下に形成された横方向チャネル70を更に備え、これら横方向チャネルは、適当な数設けられていて、長手方向溝2(即ち、トレッドがいったんタイヤに組み込まれると周方向である溝)上に、特に、これら溝の内部キャビティ22上に開口している。これら同一の横方向チャネル70は、トレッドの外部側壁13上に開口するよう設計されており、かくして、これら横方向チャネル70は、トレッドの摩耗状態がどのようなものであれ、溝2の水排除能力を一段と向上させる。かくして、外部キャビティ21がトレッドの第1の摩耗層の摩滅によりいったん完全に消えると、これら横方向チャネル70は、新たな横方向溝を形成し、内部キャビティ22からトレッドの外部までの水の流れの連続性を保証する。
【0114】
当然のことながら、これら横方向チャネル70は、トレッドの部分摩耗に続き、かくして多かれ少なかれ複雑な一種のネットワークを形成することにより上述したように連結された溝の全てからの水の流れを向上させるために数本の溝2の幾つかの内部キャビティ22に連結されるのが良い。また、これら横方向チャネル70を周方向に差し向けられると共に新品のままの状態では全体が踏み面の下に形成された連続チャネルに連結することが可能である(図6〜図8に示されているチャネルと同様)。
【0115】
さらに、これらチャネル70は、部分摩耗後に踏み面上に現れることにより、表面のところの中空部の比率を増大させ、雨天に路面上に存在する水の層を切り込むうえで有益な横方向エッジを更に形成する。
【0116】
本発明は、説明すると共に図示した例には限定されず、本発明の範囲から逸脱することなくこれら例の種々の改造例又は追加例を想到できる。
【0117】
特に、トレッドがいったん部分的に摩耗した場合にのみ踏み面上に開口する一連の外部及び内部キャビティで形成された少なくとも1本の溝と新品のままの状態では踏み面上に開口している少なくとも1本の追加の溝の組み合わせを有することができ、この追加の溝は、トレッドの内側の最も近くに位置する本発明の溝の箇所の深さに少なくとも等しい深さを有する。
【0118】
本発明の種々の溝の内部キャビティは、トレッドの厚み内に種々の高さ位置で位置決めされても良い。
【0119】
さらに、本明細書は、全体が専ら、重車両に取り付けられるようになったタイヤへの用途に関するが、トレッドパターンを有するトレッドが本発明の一部をなすことは理解されるべきである。というのは、かかるトレッドは、タイヤに組み込まれるようになっているからである(製造時点かタイヤの更生時かのいずれかに)。
【0120】
本発明とは対照的に、特許文献(国際公開第02/38399号パンフレット)に記載された成形要素を用いて成形されるキャビティは、確かに種々の摩耗層を画定するが、外部キャビティと内部キャビティとの真の意味での連続性を示していない。というのは、これらキャビティ相互間には、濡れた路面上を走行しているときに水が流れることができるようにする連結チャネルが設けられていないからである。
【0121】
本発明のこれらトレッドパターンは、有効寿命全体を通じて接触パッチにおける満足のゆく水の排除作用を提供するが、従来型トレッドパターンと比較して高い全体的剛性を維持することができ、かくして、全体的性能が同一である場合にトレッドの厚さを減少させることができ、これは、当然のことながら、エネルギー消費量の面で望ましい。また、それにより、適当なゴムコンパウンドの使用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接触するようになった踏み面(11)を備えた厚さEのタイヤトレッド(10)であって、前記トレッドは、少なくとも2つの摩耗層、即ち、その厚みの中に位置する少なくとも第1及び第2の摩耗層を有する、トレッドにおいて、
前記トレッドは、少なくとも1本の連続溝(2)を備え、前記連続溝は、新品のままの状態において前記踏み面上に開口した複数個の外部キャビティ(21)及び新品のままの状態において前記踏み面(11)内に半径方向に且つ全体として配置された複数個の内部キャビティ(22)を有し、
前記第1の摩耗層は、前記外部キャビティ(21)の半径方向最も内側の箇所まで前記トレッドの前記厚み中に延び、
1つおきの摩耗層は、考慮対象の前記摩耗層の内部キャビティ(22)の最も内側の箇所まで前記トレッドの前記厚み中に延び、前記外部キャビティ(21)は、平均深さP1、平均長さL1及び断面積S1を有し、
前記内部キャビティ(22)は、平均高さP2、平均長さL2及び断面積S2を有し、
前記外部キャビティ(21)及び前記内部キャビティ(22)は、前記内部キャビティの平均長さと前記外部キャビティの平均長さの差が最も長い平均長さの多くても20%に等しい(即ち、0.80≦L1/L2≦1.20)ようなものであり、前記内部キャビティの前記平均断面積と前記外部キャビティの前記平均断面積の差が最も大きい平均断面積の多くても20%に等しい(即ち、0.80≦S1/S2≦1.20)ようなものであり、
連続溝(2)の各外部キャビティ(21)は、前記内部キャビティと前記外部キャビティとの連続性を提供する連結チャネル(23)によって同一の溝の少なくとも2つの内部キャビティ(22)に連結されており、
前記トレッドは、新品のままの状態において前記トレッドの前記踏み面上に開口した複数個の切り込み(30)を更に有し、前記切り込みの各々は、同一の溝の2つの連続して位置する外部キャビティと少なくとも2つの連結チャネルと少なくとも1つの内部キャビティとを互いに連結し、各連結チャネルは、各々が前記連結チャネルによって互いに連結された前記内部キャビティ及び前記外部キャビティの前記断面積に等しい断面積を有する2つの端を備えている、トレッド。
【請求項2】
各内部又は外部キャビティの深さは、前記トレッドの全厚Eよりも小さい、請求項1記載のトレッド。
【請求項3】
新品のままの状態において、前記トレッドの各内部キャビティと踏み面との間の距離aが前記トレッドの全厚Eの25%を超える、請求項1又は2記載のトレッド。
【請求項4】
各摩耗層は、前記トレッドの全厚Eの多くても75%に等しい厚さを有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項5】
前記内部キャビティ(22)は、前記トレッドが前記第1の摩耗層の完全摩滅よりも少ない程度だけ部分的に摩耗したときに開放状態になる前記トレッドの厚み内に配置されている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項6】
同一の連続溝(2)の外部キャビティ(21)を内部キャビティ(22)に連結する各連結チャネル(23)は、ゼロよりも大きく且つ前記外部キャビティの前記長さL1の半分未満の長さLiを有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項7】
同一溝の前記内部キャビティと前記外部キャビティは、前記トレッドの厚さ方向に互いにオーバーラップしていない、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項8】
少なくとも2つの外部キャビティ(21)の各々の延長部として連結チャネル(23)が設けられ、該連結チャネルは、同一の内部キャビティ(22)上に開口している、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項9】
少なくとも1つの連続溝(2)の各外部キャビティ(21)の端の各々の延長部として2つの連結チャネル(23′、23″)が設けられ、該連結チャネルは各々、別々の内部キャビティ内に開口している、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項10】
前記トレッドは、前記第2の摩耗層の半径方向内側の延長部としての第3の摩耗層中に位置した追加のキャビティを有し、前記追加のキャビティは、追加の連結チャネルによって前記第2の摩耗層の前記内部キャビティに連結されている、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項11】
前記トレッドは、連結チャネルによって互いに連結された複数個の外部キャビティと内部キャビティで形成されている第1の複数本の連続溝を有し、該溝は、第1の方向に差し向けられており、前記トレッドは、連結チャネルによって互いに連結された複数個の外部キャビティと内部キャビティで形成されている第2の複数本の連続溝を有し、前記第2の複数本の溝の中には、十文字形の溝のネットワークを形成するよう第1の方向と交差した第2の方向に差し向けられているものがあり、前記第2の複数本の溝の第2のキャビティは、前記第1の複数本の溝の内部キャビティに連結されている、請求項1記載のトレッド。
【請求項12】
各内部又は外部キャビティの深さは、前記トレッドの全厚Eよりも小さい、請求項11記載のトレッド。
【請求項13】
新品のままの状態において、前記トレッドの各内部キャビティと踏み面との間の距離aが前記トレッドの全厚Eの25%を超える、請求項11又は12記載のトレッド。
【請求項14】
前記トレッドは、連結チャネルによって互いに連結された複数個の外部キャビティと内部キャビティで形成されている複数本の溝を有し、該溝は、トレッドの長手方向に差し向けられると共に新品のままの状態において前記踏み面上に開口した前記第1のキャビティが前記長手方向に互いにずれた状態で配置されるよう構成され、前記第2のキャビティも又、前記長手方向に互いにずれた状態で配置されている、請求項1記載のトレッド。
【請求項15】
各内部又は外部キャビティの深さは、前記トレッドの全厚Eよりも小さい、請求項14記載のトレッド。
【請求項16】
新品のままの状態において、前記トレッドの各内部キャビティと踏み面との間の距離aが前記トレッドの全厚Eの25%を超える、請求項14又は15記載のトレッド。
【請求項17】
連結チャネルにより互いに連結された少なくとも外部キャビティと内部キャビティで形成されている前記連続溝は、全体として波形の形状を有する、請求項1〜16のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項18】
新品のままの状態において、前記半径方向内側の方への前記トレッド上に開口した各外部キャビティの延長部として前記トレッドの底部まで切り込みが設けられ、該切り込みは、2つの連結チャネルにも2つの内部キャビティにも連結されている、請求項1〜17のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項19】
前記トレッドは、全体が前記トレッド内に位置すると共に前記第1の摩耗層の厚さに等しい又はより薄い部分摩耗後、前記踏み面上に開口することにより新たな溝を形成するよう設計された少なくとも1つのチャネルを更に有する、請求項1〜18のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項20】
前記トレッドは、少なくとも1本のチャネルを連続溝の複数個の内部キャビティと連通関係をなして配置する手段を更に有する、請求項19記載のトレッド。
【請求項21】
前記トレッドは、前記トレッドのエッジ上に開口した複数本のチャネル(70)を有し、該チャネルは、連続溝の少なくとも1つの内部キャビティ(22)内に開口している、請求項1〜20のうちいずれか一に記載のトレッド。
【請求項22】
請求項1〜21のうちいずれか一に記載のトレッドを備えたタイヤであって、周方向溝の前記外部キャビティの平均長さが前記タイヤの公称使用条件下で測定した前記タイヤの接触パッチの平均長さTの25%〜75%である、タイヤ。

【図1】
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【図2−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2013−505874(P2013−505874A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531364(P2012−531364)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064375
【国際公開番号】WO2011/039194
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)