説明

剥離コーティングおよび方法

【課題】剥離コーティング、剥離コーティングの剥離力を変更する方法、およびコーティングされた製造物を製造する方法を提供する。
【解決手段】i)少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマー;およびii)少なくとも1種の剥離剤:を含む剥離コーティングであって、その剥離力は、マルチローブエマルジョンポリマーの量を変えることにより変更する。熱および湿度の老化条件下、改善された安定性を有する剥離コーティングが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離コーティングおよび接着剤に関する。特に、本発明は、接着剤のための剥離コーティングとしてのマルチローブ水性エマルジョンポリマーに関する。本発明はさらに、熱、湿度、老化に対して耐性であり、かつ所望のレオロジーを有し、コーティング重量および調節可能な巻いてあるのをほどく剥離力の制御を提供するマルチローブ水性エマルジョンポリマー剥離コーティングに関する。さらに、本発明は剥離コーティングの剥離力を変更する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着テープは典型的にはそれ自体の裏地上にロール状に巻き取られている(自己巻き取りテープ(self−wound tape)とも呼ばれる)。自己巻き取りテープの裏地は、剥離コーティングとして機能するように設計され、一方、ラベルおよびシートは典型的には接着剤および剥離コーティングの交互層において剥離シートあるいはコーティングに積層されて、ラベルおよび対応するシートの他の表面と偶発的に接着するのを防止する。剥離コーティングは、接着剤でコーティングされた物品が巻いてあるのをほどかれるか(unwind)、あるいは剥離コーティングから剥離することを可能にするために、接着剤でコーティングされた物品に対して十分低い接着力を有するように設計される。剥離コーティングの接着力が接着剤でコーティングされた物品に対して十分低くない場合、接着剤でコーティングされた物品は巻いてあるのをほどくおよび剥離コーティングからの剥離の問題を有するであろう。
【0003】
さらに、許容できる被覆性を有するために、および/または紙などの多孔質基体中に浸透する物質の量を最小にするために、剥離コーティングのレオロジーを調節することが必要であることが多い。このような場合、増粘剤を剥離コートに添加して、所望のレオロジー特性が達成される。一貫性のあるコーティング重量および巻いてあるのをほどく安定性は、所望のレオロジー特性を達成するために増粘剤を添加することの所望の効果であるが、増粘剤の添加は剥離コートの感水性も増大させる可能性があり、このことは望ましくない。さらに、ある増粘剤はシステムの伸長レオロジーを増大させることができ、その結果、被覆性がさらに不良になる。
【0004】
これらの問題を解決することを目指す剥離コーティングは、米国特許第5,621,030号に開示されている。米国特許第5,621,030号は、湿潤重量基準で約10〜約80部のスルホスクシナメート界面活性剤;および湿潤重量基準で約20〜約90部のアクリルコポリマーを含む剥離コーティングを開示している。この特許は前記問題を解決することを試みているが、通常の手段により固体および増粘剤レベルを調節することはコーティング品質に対して有害な影響を及ぼすので、所望の感水性および最適の被覆性は依然として達成されない。
【特許文献1】米国特許第5,621,030号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、このような高レベルの増粘剤を必要としない、接着性物品のための代替剥離コーティングを提供することが望ましい。
【0006】
本発明は、恒久的接着剤および再配置可能な接着剤(例えば、感圧性接着剤(PSA)を包含するが、これに限定されない))のどちらについても均一な剥離特性および広範囲の剥離レベルを提供できるマルチローブエマルジョンポリマーから製造される水性剥離コーティングであって、剥離コートが必要とされる用途においてマルチローブエマルジョンポリマーに対する剥離剤の量により決定される剥離のレベルを有するものを提供することにより、この問題を解決する。
さらに、本発明は、その剥離力を接着性物品の接着力に対して変更できる水性剥離コーティングを提供する。本発明の水性剥離コーティングの他の重要な特性は、Rhoplex(登録商標) R−308、R−225およびR−253(Rohm and Haas Companyより商業的に入手可能)などの通常の剥離コーティングに対して、熱および湿度にさらされた後の老化が改善されていることである。本発明に関して、コーティング後の架橋反応を必要としない、安定な剥離性能および再接着値における最小損失が望ましく;ならびにコーティングに対する許容できる剥離性能および有機溶媒あるいは補助溶媒を必要としない乾燥が望ましい。熱および湿度に対する安定性は、老化前の初期結果と比較した剥離力における増加(%)を定量化することにより測定される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、(a)少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマー、および(b)少なくとも1種の剥離剤を含む剥離コーティングを提供する。本発明は、少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマー及び少なくとも1種の剥離剤の混合物を基体上にコーティングし、これを乾燥させることにより形成される、コーティングされた基体も提供する。
【0008】
本発明はさらに、(a)少なくとも1つの水性マルチローブエマルジョンポリマーおよび少なくとも1つの剥離剤を提供する工程、および(b)マルチローブポリマーを含んでなる少なくとも1つの水性ポリマーのTgを変える工程を含む、剥離コーティングの剥離力を変更する方法も提供する。
【0009】
本発明の水性剥離コーティングは、基体上にコーティングされた場合のフィルム形成および有効寿命などの、所望のレオロジー挙動および表面特性を提供するマルチローブエマルジョンポリマーから製造される。これらの結果は、熱可塑性ポリマー、ポリマーのブレンドあるいは充填ポリマーの少なくとも1つの層、あるいはその複数の層の適用により達成できる。また、本発明の水性剥離コーティングは、引裂特性、伸長特性、および引張特性を包含する所望の物理的フィルム特性を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の1つの態様において、適当な量の剥離剤を有する水性マルチローブポリマーは老化前後で、低い固形分であっても、所望の巻いてあるのをほどくまたは剥離力を提供するのに驚くほど有効である。ここで、剥離力は、これらが接触する接着性物品の接着力に応じて調節できる。この剥離コーティングは、例えば、ゴム系接着剤、ホットメルト接着剤、反応性ホットメルト接着剤、およびアクリル系接着剤を包含するが、これに限定されない接着剤の剥離コーティングとして有用である。
【0011】
PSAにおける剥離レベルの重要性は、例えば、D.Satas、第23章、「剥離コーティング」、感圧性接着剤技術ハンドブック(“Release Coatings 、Handbook of Pressure Sensitive Adhesives Technology)、第2版、D.Satas編、Van Nostrand Reinhold、1989により記載され、これは、「超低剥離」(0.15〜0.30N/dm)から「非常に堅固な剥離」(20〜80N/dm)までの範囲の7つの異なる剥離レベルを定義する。
【0012】
本発明の剥離コーティングは、剥離コーティングとしての機能以外の他の性質を有する。さらに、溶媒耐性および接着性は本発明の剥離コーティングの重要な特性である。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「マルチローブ(mult−lobe)」なる用語は、非球状のエマルジョンポリマー粒子形態をさす。本発明に従って用いられる好適なマルチローブエマルジョンポリマーは、米国特許第4,791,151号において記載されている。
【0014】
本明細書において用いられる場合、低固形分なる用語は、15〜45%固形分の範囲の固形分を有するマルチローブ配合物をさす。
【0015】
本明細書において用いられる場合、「分散液」なる用語は、少なくとも2つの異なる相を含む物質の物理的状態をさし、ここにおいて第一相は第二相中に分配され、第二相は連続媒体である。ポリマー分散液は、水性第二相中に分配された第一相を含有し、第二相は過半量が水であり、半分未満の量の水溶性あるいは水混和性液体、例えば、低級アルキルアルコール、ケトン、あるいはグリコールを含有しうる。
【0016】
他に規定のない限り、本明細書において用いられる粒子サイズなる用語は、キャピラリー流体力学分別装置、例えば、200nmでの紫外線検出を用いたMatec CHDF−2000装置(Matec Applied Sciences、MA)を用いて決定される重量平均粒子直径をさす。粒子サイズ基準は、50〜800nmの米国標準技術局(NIST)トレース可能なポリスチレン標準、例えばDuke Scientific Corporation、CAにより供給されるものにより得られる。
【0017】
本明細書において用いられる「Tg,∞」なる用語は、重量平均分子量により決定される高分子量ポリマーのガラス転移温度をさす。高分子量は、Fox式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.、第1巻、第3号、123ページ(1956))を用いて決定されるMw50000以上である。すなわち、モノマーM1およびM2のコポリマーのTg,∞を計算するには、
1/Tg,∞=w(M1)/Tg(M1)+w(M2)/Tg(M2)
(式中、Tg,∞はコポリマーについて計算されるガラス転移温度である。
w(M1)はコポリマーにおけるモノマーM1の重量分率である。
w(M2)はコポリマーにおけるモノマーM2の重量分率である。
Tg(M1)はM1の高分子量ホモポリマーのガラス転移温度であり、Tg(M2)はM2の高分子量ホモポリマーのガラス転移温度である。
ここにおいて、すべての温度はケルビン温度(°K)である)。
【0018】
ホモポリマーのガラス転移温度は、「ポリマーハンドブック」(Polymer Handbook)、第4版、J.Brandrup,E.H.ImmergutおよびE.A.Grulke編、Wiley−Interscience Publishers(1999)におけるものである。1より多くのガラス転移温度が報告されているならば、報告された値の平均が用いられる。
【0019】
本明細書において用いられる「測定されたTg」は、10℃/分の加熱率を用いた示差走査熱量測定法(DSC)により決定され、熱流対温度遷移における中点をTg値とするガラス転移温度を意味する。
【0020】
本明細書において用いられる場合、「(メタ)」なる用語の後に別の用語、例えば、アクリレートが続く用法は、アクリレートおよびメタクリレートの両方をさす。例えば、「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレートあるいはメタクリレートのいずれかをさし、「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルあるいはメタクリルのいずれかをさし、「(メタ)アクリル酸」なる用語は、アクリル酸あるいはメタクリル酸のいずれかをさし、「(メタ)アクリルアミド」なる用語は、アクリルアミドあるいはメタクリルアミドのいずれかをさす。
【0021】
本発明のエマルジョンポリマーは、1以上のエチレン性不飽和モノマーの重合により形成され、溶液重合プロセス、乳化重合プロセス、ミニエマルジョン重合プロセス、ミクロエマルジョン重合プロセス、あるいは懸濁重合プロセスを包含する当該分野において公知の任意の手段により重合することができる。乳化重合の実施は、D.C.Blackley、乳化重合(Emulsion Polymerization)(Wiley、1975)およびH.Warson、合成樹脂エマルジョンの用途(The Applications of Synthetic Resin Emulsions)、第2章(Ernest Benn Ltd.、London 1972)において詳細に説明されている。
【0022】
乳化重合プロセスあるいはミニエマルジョン重合プロセスを用いる本発明の態様において、通常の界面活性剤、例えば、アニオン性および/または非イオン性乳化剤、例えば、アルキル、アリール、アルキルアリールスルフェート、スルホネートあるいはホスフェートのアルカリ金属あるいはアンモニウム塩;アルキルスルホン酸;スルホコハク酸塩;脂肪酸;エチレン性不飽和界面活性剤モノマー;およびエトキシル化アルコールあるいはフェノールを用いることができる。界面活性剤の量は、モノマーの重量基準で、0.1、0.25、0.4%の下限から6、3、0.7%の上限までの範囲で変化し得る。界面活性剤範囲のすべては両端を含み、組み合わせ可能である。
【0023】
熱あるいはレドックス開始プロセスのいずれかをマルチローブポリマーの合成中に用いることができる。反応温度は、典型的には、反応の実施中全期間にわたって100℃より低い温度に維持される。反応温度は、制限なく、15℃、60℃、および75℃の下限から125℃、90℃および85℃の上限まで変化し得る。反応温度範囲のすべては両端を含み、組み合わせ可能である。エチレン性不飽和モノマーの重合により本発明のポリマーを形成する場合、通常のフリーラジカル開始剤、たとえば、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、t−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、アンモニウムおよび/またはアルカリ金属過硫酸塩、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸およびその塩、過マンガン酸カリウム、およびパーオキシ二硫酸のアンモニウムあるいはアルカリ金属塩を典型的には全モノマーの重量基準で0.01重量%から3.0重量%の量で用いることができる。適当な還元剤、例えば、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、硫黄含有酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩、例えば、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ハイドロサルファイト、硫化物、水硫化物あるいは亜ジチオン酸塩、ホルマジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、ナトリウム2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸、アセトン重亜硫酸、アミン、例えばエタノールアミン、グリコール酸、グリオキシル酸水和物、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸および前記酸の塩などとカップリングした同じ開始剤(あるいは本明細書において「酸化剤」と呼ばれる)を用いるレドックス系を用いることができる。鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、あるいはコバルトのレドックス反応触媒金属塩を用いることができる。
【0024】
本発明に有用なエチレン性不飽和非イオン性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルエステルモノマー、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレン、置換スチレン、エチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、酪酸ビニルおよび他のビニルエステル、ビニルモノマー類、例えば、塩化ビニル、ビニルトルエン、およびビニルベンゾフェノン、および塩化ビニリデンが挙げられる。
【0025】
本発明に有用なエチレン性不飽和酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、1−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキルアリルスルホコハク酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ホスホエチル(メタ)アクリレート、ホスホプロピル(メタ)アクリレート、およびホスホブチル(メタ)アクリレート、ホスホアルキルクロトネート、ホスホアルキルマレエート、ホスホアルキルフマレート、ホスホジアルキル(メタ)アクリレート、ホスホジアルキルクロトネート、およびアリルホスフェートが挙げられる。
【0026】
本発明の幾つかの態様において、エチレン性不飽和モノマーの重合により形成されるポリマーは、共重合した多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびジビニルベンゼンを含有することができる。
【0027】
本発明の幾つかの態様において、水性分散液に特殊性能を付与する官能性モノマーを1以上のポリマー成分中に組み入れることが望まれる場合がある。かかる官能基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、ビニルアセトアセテート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレート、2,3−ジ(アセトアセトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、ビニルアセトアセトアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−(2−ビニルオキシエチルアミノ)−プロピオンアミド、N−(2−(メタ)アクリルオキシエチル)−モルホリノン−2,2−メチル−1−ビニル−2−イミダゾリン、2−フェニル−1−ビニル−2−イミダゾリン、2−(3−オキサゾリジニル)エチル(メタ)アクリレート、N−(2−ビノキシエチル)−2−メチルオキサゾリジン、4,4−ジメチル−2−イソプロペニルオキサゾリン、3−(4−ピリジル)プロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−5−ビニル−ピリジン、2−ビノキシエチルアミン、2−ビノキシエチルエチレン−ジアミン、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルオキシエチルジメチル−β−プロピオベタイン、ジエタノールアミンモノビニルエーテル、(メタ)アクリルオキシアセトアミド−エチルエチレン尿素、エチレンウレイドエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドエチル−エチレン尿素、アクリルアミドアルキルビニルアルキレン尿素、アルデヒド反応性アミノ基含有モノマー、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、およびアジリジン官能基を含有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。
【0028】
連鎖移動剤、例えば、ハロゲン化合物、例えば、テトラブロモメタン、アリル化合物、あるいはメルカプタン、例えば、アルキルチオグリコレート、アルキルメルカプトアルカノエート、およびC−C22直鎖あるいは分枝鎖アルキルメルカプタンは、それらなしでフリーラジカル生成開始剤を用いて得られるであろうものよりも、エチレン性不飽和モノマーの重合により形成されるポリマーの分子量を低下させるために、および/または異なる分子量分布を提供するために使用されうる。
【0029】
本発明の1つの態様において、剥離コーティングは、キャピラリー流体力学分別装置(CHDF)により測定すると、限定するものではないが、50nm、75nm、および100nmの下限から10000nm、5000nm、および1000nmの上限までの範囲の異なる粒子サイズ分布を有するポリマーのブレンドを含む。すべての粒子サイズ分布は、両端を含み、組み合わせ可能である。このブレンドを以下、多モード粒子サイズ分布と呼ぶ。乳化重合プロセスにおいて多モード粒子サイズ分布を形成する手段は、当業者には周知である。複数のサイズモードを有する2以上のポリマーを含む多モード粒子サイズ分布の形成は、シードポリマー、界面活性剤、ミニエマルジョン、あるいはpH調節剤、例えば、緩衝剤をポリマーの1つに添加することにより達成することができる。ミニエマルジョンの添加の場合、モノマーはミニエマルジョンの添加前、あるいは添加中に添加することができる。
【0030】
本発明のもうひとつ別の態様において、剥離コーティングは、異なる形態を有する粒子のブレンドを含むことができる。これらのブレンドは、ユニローブ(uni−lobe)およびマルチローブ粒子を含むことができる。
【0031】
本発明の幾つかの態様において、米国特許第5,521,266号に開示されているように、疎水性空洞を有する高分子有機化合物の存在下、フリーラジカル水性重合によりエマルジョンポリマーを形成することが望ましい。本発明の方法において有用な疎水性空洞を有する高分子有機化合物は、シクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体、疎水性空洞を有する環状オリゴ糖、例えば、シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトース、およびシクロイヌロラクトース;カリキサレン類;およびキャビタンド類を包含する。
【0032】
本発明の方法において有用なシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体は、特定の重合条件下で選択されるシクロデキストリンおよびシクロデキストリン誘導体の溶解度によってのみ制限される。本発明の方法において有用な、好適なシクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンが挙げられるが、これに限定されない。本発明の方法において有用な、好適なシクロデキストリン誘導体としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンのメチル、トリアセチルヒドロキシプロピルおよびヒドロキシエチル誘導体が挙げられるが、これに限定されない。好ましいシクロデキストリン誘導体は、メチル−b−シクロデキストリンである。
【0033】
本発明の方法において有用な、疎水性空洞を有する環状オリゴ糖、例えば、シクロイヌロヘキソース、シクロイヌロヘプトースは、Takaiら、Journal of Organic Chemistry、1994、第59巻、第11号、2967〜2975ページにより記載されている。
【0034】
本発明の方法において有用なカリキサレン類は、米国特許第4,699,966号、国際特許公開番号WO89/08092および日本国特許出願公開番号1988/197544および1989/007837において記載されている。
【0035】
本発明の方法において有用なキャビタンド類は、イタリア国特許出願番号22522A/89およびMoranら、Journal of American Chemical Society,第184巻、1982、5826〜5828ページにおいて記載されている。
【0036】
本発明のもうひとつ別の態様において、エマルジョンポリマーは、疎水性空洞を有する高分子有機化合物を用いた水性フリーラジカル重合により形成される。このようなエマルジョンポリマーが水性フリーラジカル重合により形成される場合、および重合において用いられる1以上のモノマーおよび/または連鎖移動剤が25〜50℃で200ミリモル/リットル以下の水溶解度を有する場合。
【0037】
本発明の剥離コーティングは少なくとも1つの剥離剤を含む。好適な剥離剤は、200〜10000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。重量平均分子量範囲のすべては両端を含み、組み合わせ可能である。所定の範囲の分子量は、剥離剤がフィルム形成段階の間にフィルム表面に移行するのを許容すると考えられる。もうひとつ別の態様によると、剥離剤は水分散性あるいは水混和性である。好適な剥離剤としては、例えば、長鎖炭化水素(C10超)、フルオロカーボン、シリコーン、アミド、リン酸エステルを含んでなる化合物が挙げられるが、これに限定されない。例えば、剥離剤は10より多い炭素の炭化水素疎水性物質(例えばC10より大)を有する界面活性剤であってよい。
【0038】
少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマーに対する少なくとも1種の剥離剤の量を変えると、剥離コーティングの剥離力が変わる。一般に、0.1%〜20%の広範囲にわたって剥離剤を添加することができる。さらに詳細には、剥離剤の量は剥離剤の化学的性質ならびにマルチローブエマルジョンポリマーの組成の両方に依存する。さらに、少なくとも1種の剥離剤に対して少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマーのTgを最適化することによっても、剥離コーティングの剥離力が変わる。最適Tgは制限なく、0℃、15℃、および25℃の下限から50℃、40℃、35℃の上限までの範囲である。すべての温度範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。Tgは、幾つかの方法により最適化することができ、そのうちの1つは、主鎖モノマー組成および比率を操作することである。一般に、剥離剤の量を調節し、Tgを変えることにより剥離力を変更する手段は当業者には周知である。
【実施例】
【0039】
表1にまとめるように、多モード粒子サイズ分布を有する水性マルチローブエマルジョンポリマーおよび比較例として通常の水性エマルジョンポリマーから剥離コーティングを製造した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
実施例1〜4
実施例1〜4は次のようにして試験した。
4.9%の剥離添加剤Aersol 22(商標)(Cytec Industries Inc.から市販)を有するサンプルをポリマーエマルジョン(固体上固体)中に配合し、次いで巻線ロッド(WWR)#0〜5を用いて実施例1〜4から製造された剥離コートをクレープ裏地(0.20m×0.25m)の平滑面に適用し、6〜8g/mの間のコート重量を得た。WWR#の適切な選択はサンプル1〜4の固形分、レオロジーおよびクレープ多孔性に依存する。コーティングされたサンプルを130℃〜190℃(剥離化学に依存する)のオーブン中30秒あるいは60秒間入れた。乾燥後、すべてのサンプルを試験前にCTR(22℃および50%相対湿度の恒温室)中に入れた。重複するサンプルを最低24時間、最高1週間、65℃、相対湿度60〜80%においた。
【0043】
標準的剥離試験に加えて、サンプルを裏抜け(strike−though)について試験した。裏抜けは、低粘度および低固形分で適用されたサンプルについての浸出の程度の定性的尺度である。典型的には、実際の剥離コーティング適用の間、コーティングは剪断および圧力を受ける。コーティングの間の剪断および圧力の組み合わせは、特にコーティング固形分が減少する場合、剥離コーティングを基体中に浸透させ、その結果、一貫性のない被覆、そして一貫性のない巻いてあるのをほどくことがもたらされる。
【0044】
剥離特性を試験するために、両面テープを用いて5cm×15cm剥離コーティングサンプルをスチールパネルに固定した。コーティングされた剥離の接触からの汚染源を回避した。約10cmの所望の接着剤でコーティングされたテープを剥離コーティングに適用し、2kgゴムローラーで各方向に1回転がすことによりプレスした。各試験について最低4パネル、初期について2パネル、老化について2パネル製造した。試験片をChemInstruments AR1000高速剥離試験機に取り付け、各試験片を0.3メートル/秒の速度で剥離させた。力/単位幅を測定し、老化前後で比較した。データを表にし、増加(%)を計算し、その結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマー;および
ii)少なくとも1種の剥離剤:
を含む剥離コーティング。
【請求項2】
i)請求項1記載の剥離コーティングを基体上に適用して、コーティングされた生成物を形成し;および
ii)コーティングされた生成物を乾燥すること:
を含む、コーティングされた生成物を製造する方法。
【請求項3】
(a)少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマーを提供する工程;および(b)(a)の量に対して少なくとも1種の剥離剤の量を変更する工程:を含む、剥離コーティングの剥離力を変更する方法。
【請求項4】
(a)少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマーおよび少なくとも1種の剥離剤を提供する工程(ここにおいて、剥離剤は0.1〜20%の範囲で提供される);および(b)少なくとも1種の水性マルチローブエマルジョンポリマーのTgを変更する工程:を含む、剥離コーティングの剥離力を変更する方法。
【請求項5】
Tgが0℃〜50℃の範囲である請求項4記載の方法。
【請求項6】
Tgが25℃〜35℃の範囲である請求項4記載の方法。
【請求項7】
粒子サイズ分布が50nm〜10000nmの範囲である請求項4記載の方法。
【請求項8】
粒子サイズ分布が100nm〜1000nmの範囲である請求項4記載の方法。
【請求項9】
剥離剤が界面活性剤を含む請求項4記載の方法。
【請求項10】
界面活性剤が10より多い炭素を有する炭化水素疎水性物質を含む請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2007−327051(P2007−327051A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−136274(P2007−136274)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】