説明

剥離剤

【課題】シーリング材等のシリコーン系硬化物を、カッターナイフ等による切除を必要とせず、容易に被着体から剥離させることができる剥離剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I):
【化1】


〔式中、Rは、水素原子、酸素遊離基、ヒドロキシル基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物を含んでなる、シリコーン系硬化物用剥離剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材等のシリコーン系硬化物を被着体から剥離するために使用する剥離剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等のガラス目地に打設されたシリコーン系シーリング材を改修する場合、事前に既設シーリング材を除去する必要がある。既設シーリング材は、打設後8〜10年程度経過すると、経年劣化からガラスに対して非常に強固に接着し、また、脆くかつ硬くなる。現状では、作業員がカッターナイフ、電動ナイフ等を用いて既設シーリング材を除去している(特許文献1等)。しかしながら、この作業では簡単に既設シーリング材を除去できないため、長期間の工期が必要となる問題があった。さらに、作業員がカッターナイフでガラス表面をキズ付けることによる、ガラス補修費および補修工事が必要となる問題もあった。また、カッターナイフ等による作業員の裂傷も懸念されていた。
【0003】
さらには、カッターナイフ等による切除では、完全にシリコーン系シーリング材を除去することはできず、残留するシーリング材によって、新規シーリング材の打設が困難になる問題があった。この問題を解消する目的で、残留するシリコーン材を除去するための除去剤および除去方法が開発されている(特許文献2〜5)。
【特許文献1】実開平5−60799号公報
【特許文献2】特開平6−146614号公報
【特許文献3】特開平7−196963号公報
【特許文献4】特開2000−61390号公報
【特許文献5】特開2001−140365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シリコーン系硬化物を、カッターナイフ等による切除を必要とせず、容易に被着体から剥離させることができる剥離剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、下記一般式(I)で示される基を有するアミン化合物をシリコーン系硬化物に塗布し、次いで、好ましくは光を照射することで、容易にシリコーン系硬化物を被着体から剥離させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明には、以下のものが含まれる。
〔1〕下記一般式(I):
【0006】
【化1】

〔式中、Rは、水素原子、酸素遊離基、ヒドロキシル基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物を含んでなる、シリコーン系硬化物用剥離剤。
〔2〕上記アミン化合物を、剥離剤全量を基準に0.001重量%〜100重量%含んでなる、上記〔1〕に記載の剥離剤。
〔3〕上記アミン化合物が、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、およびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){[3,3−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル}ブチルマロネートからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、上記〔1〕または〔2〕に記載の剥離剤。
〔4〕溶剤をさらに含んでなる、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の剥離剤。
〔5〕上記溶剤が酢酸エステル系溶剤である、上記〔4〕に記載の剥離剤。
〔6〕可塑剤をさらに含んでなる、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の剥離剤。
〔7〕上記可塑剤がフタル酸系可塑剤である、上記〔6〕に記載の剥離剤。
〔8〕シリコーン系硬化物を光透過性部材から除去するための、上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の剥離剤。
〔9〕上記光透過性部材がガラスである、上記〔8〕に記載の剥離剤。
〔10〕上記シリコーン系硬化物がシリコーン系シーリング材である、上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の剥離剤。
〔11〕(1)上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の剥離剤を、被着体に付着したシリコーン系硬化物に塗布する工程と、
(2)該シリコーン系硬化物を、引っ張りまたは剪断力にて該被着体から剥離する工程と
を含む、シリコーン系硬化物の除去方法。
〔12〕(1)上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の剥離剤を、被着体に付着したシリコーン系硬化物に塗布する工程と、
(2)該シリコーン系硬化物に対して光を照射する工程と、
(3)該シリコーン系硬化物を、引っ張りまたは剪断力にて該被着体から剥離する工程と
を含む、シリコーン系硬化物の除去方法。
〔13〕上記被着体が光透過性部材である、上記〔11〕または〔12〕に記載の方法。
〔14〕上記シリコーン系硬化物がシリコーン系シーリング材である、上記〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシリコーン系硬化物用剥離剤によれば、シーリング材等のシリコーン系硬化物を、カッターナイフ等による切除を必要とせず、容易に被着体から剥離させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明のシリコーン系硬化物用剥離剤(以下、単に「剥離剤」とも称する)は、下記一般式(I):
【0009】
【化2】

〔式中、Rは、水素原子、酸素遊離基、ヒドロキシル基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物を含んでなる。
【0010】
上記Rにおける炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が挙げられる。なかでも、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、これらのアルキル基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシル基等で置換されていてもよい。
【0011】
上記Rにおける炭素数1〜18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−オクトキシ、n−ノニロキシ、n−デシロキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソキシ、シクロオクトキシ基等の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルコキシ基が挙げられる。なかでも、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。また、これらのアルコキシ基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシル基等で置換されていてもよい。
【0012】
上記Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0013】
上記アミン化合物としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)として既知の化合物、例えば、特開2006−76950等に記載されたもの等が挙げられ、具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){[3,3−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等、および、塩化シアヌル縮合型HALS(例えば、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−t−オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン等)、ならびに、高分子量型HALS(例えば、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}])等が挙げられる。
【0014】
上記のなかでも、汎用性の点から、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){[3,3−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等が好ましい。
また、本発明の剥離剤において、アミン化合物は、2種以上の混合物であってもよい。
【0015】
上記アミン化合物は、当該分野において既知の方法にしたがって製造することができる(例えば、特開2006−76950等)。また、ヒンダードアミン系光安定剤として市販されているアミン化合物(およびその混合物)も本発明の剥離剤に使用することができる。市販のヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、三共ライフテック株式会社から市販されているサノール(登録商標)LS−765、LS−292、LS−770、LS−2626およびLS−744、Ciba Specialty Chemicalsから市販されているCHIMASSORB(登録商標)119FL、2020および944、TINUVIN(登録商標)111、123、494、622、765、770、783、791、B75、C353、NORTM371、XT833およびXT850、株式会社アデカから市販されているアデカスタブ(登録商標)LAシリーズ(例えば、LA−57、LA−62、LA−52、LA−63P、LA−77)等が挙げられる。
【0016】
本発明の剥離剤は、上記アミン化合物を、シリコーン系硬化物を被着体から剥離するのに有効な量で含んでいればよいが、好ましくは剥離剤全量を基準に0.001重量%〜100重量%、より好ましくは0.2重量%〜100重量%、特に好ましくは50重量%〜100重量%含む。すなわち、本発明の剥離剤は、後述するように、溶剤、可塑剤等を含んでいてもよく、また、上記アミン化合物のみからなるものであってもよい。
【0017】
本発明の剥離剤は、上記アミン化合物に加えて、溶剤をさらに含んでいてもよい。本発明の剥離剤に使用可能な溶剤としては、例えば、酢酸エステル系溶剤(例えば、酢酸エチル)、その他のエステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、フェノール系溶剤、水等が挙げられる。環境安全性、浸透性の点から、好ましくは酢酸エステル系溶剤(特に酢酸エチル)が挙げられる。また、本発明の剥離剤において、溶剤は、2種以上の混合物であってもよい。
【0018】
本発明の剥離剤中の上記溶剤の含有量は、使用するアミン化合物の溶解性、剥離剤の塗布方法等に応じて適宜設定することができる。例えば、剥離剤全量を基準に0重量%〜99.999重量%、好ましくは50重量%〜99.8重量%、特に好ましくは80重量%〜99.8重量%とすることができる。
【0019】
本発明の剥離剤は、上記アミン化合物(および必要に応じて溶剤)に加えて、可塑剤をさらに含んでいてもよい。本発明の剥離剤に使用可能な可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤(例えば、ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート等)、アルキルベンゼン系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、シリコーンオイル系可塑剤等が挙げられる。また、汎用性の点から、好ましくはフタル酸系可塑剤(特にジイソノニルフタレート)が挙げられる。また、本発明の剥離剤において、可塑剤は、2種以上の混合物であってもよい。
【0020】
本発明の剥離剤中の上記可塑剤の含有量は、使用するアミン化合物、剥離剤の塗布方法等に応じて適宜設定することができる。例えば、剥離剤全量を基準に0重量%〜99.999重量%、好ましくは50重量%〜99.8重量%、特に好ましくは80重量%〜99.8重量%とすることができる。
【0021】
本発明の剥離剤は、上記アミン化合物(および必要に応じて溶剤および/または可塑剤)に加えて、当該分野で既知の添加剤、例えば、充填剤、チキソ剤、顔料、染料等をさらに含んでいてもよい。本発明の剥離剤中の当該添加剤の含有量は、当該分野で一般に使用される範囲の量とすることができる。例えば、剥離剤全量を基準に0重量%〜80重量%、好ましくは0重量%〜30重量%、特に好ましくは0重量%〜10重量%とすることができる。
【0022】
本発明の剥離剤は、シリコーン系硬化物を被着体から剥離するために使用される。本発明における「シリコーン系硬化物」は、オルガノポリシロキサンを主成分とする硬化物を意味し、本発明の剥離剤によって被着体から剥離可能である限り特に限定されないが、例えば、建築等に使用されるシリコーン系シーリング材、例えば、2成分形シリコーン系シーリング材(例えば、ペンギンシール2520(サンスター技研株式会社製))、1成分形シリコーン系シーリング材(例えば、ペンギンシール2505(脱オキシム形)(サンスター技研株式会社製))等が挙げられる。
【0023】
本発明において、シリコーン系硬化物が付着した被着体としては、本発明の剥離剤によって付着したシリコーン系硬化物が剥離可能である限り特に限定されないが、例えば、光透過性部材(例えば、ガラス(各種表面処理ガラスも含む)、アクリル、ポリカーボネート)等の各種建築部材が挙げられる。後述するように、剥離剤を塗布したシリコーン系硬化物は、特にシリコーン系硬化物と被着体との界面に対して光照射されることよって、より容易に被着体から剥離可能になることから、光透過性部材(特にガラス(各種表面処理ガラスも含む))が被着体として望ましい。
【0024】
本発明の剥離剤を用いるシリコーン系硬化物の被着体からの除去(剥離)は、例えば、
(1)本発明の剥離剤を、被着体(例えば、光透過性部材)に付着したシリコーン系硬化物(例えば、シリコーン系シーリング材)に塗布する工程と、
(2)該シリコーン系硬化物を、引っ張りまたは剪断力にて該被着体から剥離する工程と
を含む方法により行うことができる。
【0025】
好ましくは、
(1)本発明の剥離剤を、被着体(例えば、光透過性部材)に付着したシリコーン系硬化物(例えば、シリコーン系シーリング材)に塗布する工程と、
(2)該シリコーン系硬化物に対して光を照射する工程と、
(3)該シリコーン系硬化物を、引っ張りまたは剪断力にて該被着体から剥離する工程と
を含む方法により行うことができる。
【0026】
上記方法において、本発明の剥離剤のシリコーン系硬化物への塗布は、当該分野において既知の方法、例えば、刷毛塗り、ローラー塗り、噴霧等によって行うことができる。剥離剤の塗布量は、シリコーン系硬化物の性状、使用する剥離剤の性状等に応じて、必要であれば予備実験を行った上、適宜設定することができる。例えば、シリコーン系硬化物100重量部に対して、剥離剤中の上記アミン化合物の量が、0.0001重量部〜20重量部、好ましくは0.0001重量部〜10重量部、特に好ましくは0.001重量部〜5重量部となるように塗布することができる。
【0027】
本発明の剥離剤を塗布したシリコーン系硬化物は、剥離剤をシリコーン系硬化物中に浸透させるため、必要に応じて所定の時間放置する。当該時間は、シリコーン系硬化物および剥離剤の性状に応じて、必要であれば予備実験を行った上、適宜設定することができる。例えば、0.1時間〜30日間、好ましくは0.1時間〜7日間、特に好ましくは0.1時間〜50時間放置することができる。
【0028】
好ましくは、本発明の剥離剤を塗布したシリコーン系硬化物に対して、必要に応じて所定の時間放置した後、光を照射する。これによりシリコーン系硬化物は、より容易に被着体から剥離可能になる。この場合、特にシリコーン系硬化物と被着体との界面に光が照射されることが好ましい。この点で被着体としては光透過性部材(特にガラス(各種表面処理ガラスも含む))が好ましい。照射する光としては、特に限定されないが、例えば、日光、紫外線(波長10〜400nmの範囲のもの)等が挙げられる。なかでも、簡便性、効率性の点で、紫外線が好ましい。照射時間は、使用する光源等に応じて適宜設定することができる。例えば、0.5時間〜30日間、好ましくは0.5時間〜7日間、特に好ましくは0.5時間〜50時間とすることができる。
【0029】
本発明の剥離剤を塗布したシリコーン系硬化物を、必要に応じて所定の時間放置後、および好ましくは光を照射した後、引っ張りまたは剪断力によって被着体から剥離する。通常、本発明の剥離剤で処理したシリコーン系硬化物は、手で引っ張ることによって被着体から剥離させることができるが、当該分野で既知の手段によって、引っ張るか、または剪断力をかけることによっても、剥離させることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示に過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〜9および比較例1〜6〕
以下の各成分を、下記表1に示すように配合して各剥離剤を調製した。
〔配合成分〕
・アミン化合物:サノ−ル(登録商標)LS765(三共ライフテック株式会社)
ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート70重量%
メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート30重量%
・ジイソノニルアジペート:DINA(新日本理化株式会社)
・ジイソノニルフタレート:DINP(新日本理化株式会社)
・メチルアセチルリシノレート:リックサイザーC101(伊藤製油株式会社)
・アルキルベンゼン:アルケン200P(新日本石油株式会社)
・石油系炭化水素:ペガソールAS100(エクソンモービル化学有限会社)
・酢酸エチル
【0032】
上記の各剥離剤を用いて、以下のようにシーリング材の剥離実験を行った。その結果を表1に示す。
〔剥離試験〕
[1]剥離試験用試験体の作製
以下の材料を用いて、JIS A 1439:2004に規定される耐久性試験体(H型試験体)を作製した。シーリング材の養生条件は、前養生を23℃、7日間とし、後養生を50℃、7日間とした。
・シーリング材:2成分形シリコーン系シーリング材(ペンギンシール2520(脱ヒドロキシルアミン型)、サンスター技研株式会社製)
・プライマー:シラン系プライマーSD3(サンスター技研株式会社製)
・被着体:フロートガラス板/アルミニウム板
[2]剥離剤の塗布
上記の各剥離剤を、刷毛を用いて試験体中のシーリング材に薄く塗布した(塗布量:シーリング材100gに対し剥離剤0.2g)。
[3]剥離試験
シーリング材に剥離剤を塗布後、下記条件で試験体に光を照射した。その後、手でガラスを引っ張り、ガラスからシーリング材を剥離させた。
(1)サンシャインウェザーメーター(SWOM)50時間暴露
JIS A 1415:1999 6.4 紫外線カーボンアークランプによる暴露試験方法のWV−Aに準じて、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)を用いて、光を試験体のガラス表面から照射した。
(2)屋外放置68時間
光がガラス表面から照射されるように、ガラス表面を上側にして45℃の角度に傾けて南面に置いた。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表1に示されるように、本発明の剥離剤(実施例1〜9)をシーリング材に塗布した場合、手でガラスを引っ張ることによって、容易にガラスからシーリング材を剥離させることができた。一方、比較例1〜6の剥離剤では、ガラスからシーリング材を剥離させることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

〔式中、Rは、水素原子、酸素遊離基、ヒドロキシル基、または炭素数1〜18のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す〕
で示される基を有するアミン化合物を含んでなる、シリコーン系硬化物用剥離剤。
【請求項2】
上記アミン化合物を、剥離剤全量を基準に0.001重量%〜100重量%含んでなる、請求項1に記載の剥離剤。
【請求項3】
上記アミン化合物が、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールおよび1−トリデカノールとの混合エステル、およびビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル){[3,3−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル}ブチルマロネートからなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1または2に記載の剥離剤。
【請求項4】
溶剤をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載の剥離剤。
【請求項5】
上記溶剤が酢酸エステル系溶剤である、請求項4に記載の剥離剤。
【請求項6】
可塑剤をさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載の剥離剤。
【請求項7】
上記可塑剤がフタル酸系可塑剤である、請求項6に記載の剥離剤。
【請求項8】
シリコーン系硬化物を光透過性部材から除去するための、請求項1〜7のいずれかに記載の剥離剤。
【請求項9】
上記光透過性部材がガラスである、請求項8に記載の剥離剤。
【請求項10】
上記シリコーン系硬化物がシリコーン系シーリング材である、請求項1〜9のいずれかに記載の剥離剤。
【請求項11】
(1)請求項1〜7のいずれかに記載の剥離剤を、被着体に付着したシリコーン系硬化物に塗布する工程と、
(2)該シリコーン系硬化物を、引っ張りまたは剪断力にて該被着体から剥離する工程と
を含む、シリコーン系硬化物の除去方法。
【請求項12】
(1)請求項1〜7のいずれかに記載の剥離剤を、被着体に付着したシリコーン系硬化物に塗布する工程と、
(2)該シリコーン系硬化物に対して光を照射する工程と、
(3)該シリコーン系硬化物を、引っ張りまたは剪断力にて該被着体から剥離する工程と
を含む、シリコーン系硬化物の除去方法。
【請求項13】
上記被着体が光透過性部材である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
上記シリコーン系硬化物がシリコーン系シーリング材である、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。