説明

剥離面を備えた保護フィルム

表面の保護で用いるフィルム(10)を開示し、フィルム(10)は、少なくとも1つの剥離層(14)と、任意に接着層(12)および/または中間層とを含む。剥離層(14)は、剥離層と一体的に形成されたか、または剥離層に適用された不連続の高分子ビーズであるかのいずれかである、複数の三次元突起部(13)を有する。本開示は、製造、保存、輸送または使用の間の、基材表面を保護するのに用いるフィルムに関する。本開示は、また、上記フィルムを作製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年6月27日に出願された米国仮特許出願第61/133,356号の出願日の利益を主張する。
【0002】
(背景)
本開示は、製造、保存、輸送または使用の間の、基材表面を保護するのに用いるフィルムに関する。本開示は、また、上記フィルムを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
表面保護フィルムは、マスキングフィルムとしても知られており、物理的障壁をもたらして基材の破損、汚染、引っかき傷、こすれた傷または他の傷を防ぐために典型的に使用されている。マスキングフィルムは、例えば、基材の製造、出荷または使用前の保存の間にそのような保護をもたらすために使用することができる。そのようなフィルムは、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ガラス、研磨された金属や塗装された金属、および光沢セラミックスなどの比較的滑らかな面を特に保護するために表面用の保護被膜として多くの用途で使用することができる。例えば、テレビ、モニターおよび他のディスプレイ用の光学基材には、表面を保護するとともに、破損せず、表面上に接着剤の残留物、他の汚染物質や微粒子を残すことなく取り除くことができるマスキングフィルムが必要である。
【0004】
伝統的には、マスキングフィルムはコロナ処理されたフィルム、または接着剤コーティング紙や接着剤コーティングフィルムを含んでいた。コロナ処理されたフィルムは、静電放電を受けてフィルムの表面が酸化したフィルムである。この酸化によってフィルムの表面張力および極性表面に対する引力が増大する。そのようなコロナ処理されたフィルムは、典型的には滑らかなフィルムであり、非常に正確なコロナ処理に依存して接着を促進する。コロナ処理されたフィルムは、エンボス加工されない限り典型的にしわが寄りやすく、フィルムを使用し取り扱うことが困難である。さらなる不都合は、コロナ処理の接着促進効果が時間とともに消えるということである。
【0005】
一般には、従来のマスキングフィルムは使用し取り扱うことが比較的難しい。マスキングフィルムは表面に接着することを目的とするものであるので、マスキングフィルムがロールに巻回されるか、または接着面がマスキングフィルムの一部と接触する場合、マスキングフィルムはそれ自体に接着する可能性がある。いわゆるブロッキングは、遅れや無駄な材料を含めて処理を困難にする可能性がある。自己接着の傾向を低減するために、マスキングフィルムは弱い接着剤で被覆することができる。マスキングフィルム上の弱い接着剤は、フィルムがロール上でそれ自体に密接に接着することを防止することができるが、弱い接着剤は、保護表面に対して十分な接着をもたらさない可能性がある。
【0006】
他のフィルムは接着面に対向する1つの艶消し面を備えることができ、多くの場合、ワンサイド艶消し(「OSM」)マスキングフィルムと称する。艶消し面の凹凸は接着用の良好な表面をもたらさず、マスキングフィルムに対してブロッキング防止特性をもたらす。
【0007】
低い自己接着性を有するが、基材に対して十分な接着性をもたらして適切な保護を提供するマスキングフィルムが必要である。さらに、緩衝効果を有するとともに平坦基材の取り扱いを簡単にするマスキングフィルムが必要である。
【0008】
他の用途では、表面に接着しないが、その代りに、基材ではさまれて物理的分離をもたらす材料を使用することが望まれている可能性がある。そのような用途は、例えば、光学等級ガラスやプラスチック基材を合わせる製造作業で一般に使用される。そのような用途では、紙や他の材料を基材に挟むために使用して、破損に対して保護する。挟む用のシートも、積み重ねた脆弱で傷付き易い基材間で用いられ、エンドユーザへの出荷の間に非常に滑らかな光学基材間に分離をもたらす。
【0009】
したがって、基材表面の保護で用いる、低価格の非接着性材料が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(要旨)
1つの実施形態では、マスキングフィルムは、少なくとも1つの三次元剥離面を有する高分子フィルムウェブを含む。
【0011】
1つの実施形態では、三次元剥離面は、フィルムと一体的に形成された複数の隆起突起部を含む。
【0012】
1つの実施形態では、隆起突起部は複数の間隔の離れたリブを含む。
【0013】
1つの実施形態では、三次元剥離面は重合体ナブを含む。
【0014】
1つの実施形態では、マスキングフィルムは三次元剥離面に対向する接着層を含む。
【0015】
これらの実施形態および他の実施形態は、図面および添付の請求の範囲を参照して明細書をさらに読み込むことで明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、基材に接着されたことを示すマスキングフィルムの断面図であり、剥離層と、接着層とを含み、剥離層は開口部を備えた複数の突起部を有する三次元剥離面を含む。
【図1A】図1Aは、基材に接着されたことを示すマスキングフィルムの断面図であり、剥離層と、接着層とを含み、剥離層は偏菱形エンボスパターンを有する三次元剥離面を含む。
【図1B】図1Bは、基材に接着されたことを示すマスキングフィルムの断面図であり、剥離層と、接着層とを含み、剥離層は多平面フィルムを含む。
【図2】図2は、第1の剥離層と、コア層と、第2の剥離層とを有するマスキングフィルムの断面図であり、各剥離層は、開口部のない複数の突起部を有する三次元剥離面を含む。
【図3】図3は、2つの剥離面を有する単層フィルムを含むマスキングフィルムの断面図である。
【図4】図4は、接着層と、間隔の離れた長手方向リブを含む三次元剥離面を備えた剥離層とを有するマスキングフィルムの斜視図である。
【図4A】図4Aは、接着層がない以外は、図4の実施形態に類似するマスキングフィルムの断面図である。
【図5】図5は、接着層と、高分子ビーズを含む三次元表面を有する剥離層とを有するマスキングフィルムの斜視図である。
【図5A】図5Aは、図5のA−Aの線および矢印に沿って見た、図5のマスキングフィルムの断面図である。
【図6】図6は、2つの三次元剥離面を備えたフィルムの別の実施形態の断面図である。
【図7】図7は、真空積層工程の概略説明図である。
【図8】図8は、実施形態を確認するのに役立つエンボスおよび/または真空形成工程の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
マスキングフィルムが、米国特許第4,395,760号、第5,100,709号、第5,693,405号、第6,040,046号、第6,326,081号、第6,387,484号で説明されており、参照によって本明細書に援用されるものとする。
【0018】
本開示全体にわたって使用するように、単数形態「ある、1つの(a、an、the」」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「1つの層」への言及は複数の層を含む。
【0019】
ウェブまたはフィルムを説明するために本明細書で使用される「積層物」または「複合物」は同義語である。両方は、多層単一ウェブを形成するために接合された少なくとも2つのウェブまたはフィルムを含むウェブ構造を称する。ウェブは、接着性積層、熱積層、圧力積層およびそれらの組み合わせを含めた積層工程、および当業者に公知の他の積層技術によって同時押出し成形することができるか、または接合することができる。積層物を形成するために使用する接着剤は、限定されないが、アクリレート系接着剤、例えば、粘着付与剤と組み合わせることができる酢酸ビニル/エチルヘキシルアクリレート共重合体などの水性接着剤を含めて、市販の多くの感圧性接着剤のいずれかであってもよい。他の接着剤としては、感圧性熱溶融性接着剤や両面テープが挙げられる。
【0020】
本明細書で使用するように、用語「重合体」は、単独重合体、例えば、ブロック、グラフト、インパクト、ランダムおよび交互共重合体などの共重合体、三元重合体など、およびそれらのブレンドおよび変形物を含む。さらに、別に具体的に限定されない限り、用語「重合体」は、イソタクチック配置、シンジオタクチック配置およびランダム配置などの材料の可能なすべての立体化学配置を含むことが意図される。
【0021】
窓ガラス、モニター、テレビまたは他のディスプレイ用の光学材料のシート、または他の同様の基材などの極めて平坦な表面を有する基材の取り扱いは困難である可能性がある。そのような基材の1枚を別のシート上から取り除こうとする場合、シート同士がともにくっつく傾向がある。空気がシート間に存在しないか、または空気がシート間を流れることができない場合もあるので、基材シートはともにくっつく可能性がある。空気が不足すると、シート間は真空になり、時には、第2のシートは第1のシートと共に実際に持ち上げられる。しかし、第2のシートは短い距離だけ持ち上がることができ、その後真空が解放され、第2のシートは落下する。この落下は第2のシートに対して修復至難な破損を招く可能性がある。
【0022】
この取り扱いの問題に解決策をもたらすために、マスキングフィルムの実施形態は、三次元剥離面を有する剥離層を含む。いくつかの実施形態では、マスキングフィルムは、接着層と、三次元剥離面を備えた剥離層とを含む。他の実施形態では、マスキングフィルムは、フィルムの両側に位置する2つの三次元剥離面を含む。マスキングフィルムは単層または多層を含んでいてもよい。接着層と剥離層との間、または2つの剥離層の間に中間層を介在していてもよい。
【0023】
さらなる実施形態は、2つの剥離面を含むマスキングフィルムを含む。そのようなマスキングフィルムは、さらに、剥離層間に中間層を含んでいてもよい。各剥離層は三次元剥離面を有する。2つの剥離面を含む実施形態は、積み重ねられた光学基材中の紙要素の交換において用いるのに有利である。
【0024】
実施形態によるマスキングフィルムが間に置かれた基材は、積み重ねられたシート間にギャップを生成して基材シート間に空隙を付与することによって、互いに接着することが防止される。
【0025】
一般には、剥離層の実施形態はフィルムを含む。本明細書で使用するように、「フィルム」は重合体を含む薄いシートまたはウェブを称する。フィルムは、例えば、押出し成型工程または吹き込み工程において溶融熱可塑性重合体を押出すことによって製造することができる。重合体をさらにローラー間で処理し、冷却してウェブを形成することができる。フィルムは、例えば、単層フィルム、同時押出し成形フィルムおよび複合フィルムであり得る。複合フィルムは、同時押出し成形工程によって、または1つ以上のフィルムをともに接着することによって製造してもよい。
【0026】
フィルムは、流れ方向、横方向およびz方向を有するように次元的に説明することができる。流れ方向は、フィルムが製造工程を通る方向によって規定される。典型的には、フィルムは、幅よりはるかに長い長さを有する長いシートまたはウェブとして製造され、そのような場合には、流れ方向は、通常、シートの長さ(x方向とも称する)である。
【0027】
シートの横方向または横断方向(y方向または幅とも称する)は流れ方向に垂直である。フィルムの厚みはz方向において測定される。三次元形成フィルムのz方向は、形成フィルムのいずれかの三次元特徴のうちの高さおよびフィルムの厚みを含む。
【0028】
三次元形成フィルムは、フィルムの少なくとも1つの表面上に三次元特徴を形成するために処理されたフィルムである。したがって、三次元形成フィルムは、z方向寸法のロフトを有し、それはフィルムの名目厚みより著しく大きい。典型的には、ロフトはフィルムの名目厚みの少なくとも1.5倍である。三次元形成フィルムの例は、突起部が開口部を備えていてもよいし、開口部を備えていなくてもよい連続的な平坦な領域から延在する複数の突起部を有するフィルムである。
【0029】
ある特定の実施形態では、三次元形成フィルムは多平面フィルムを含んでいてもよい。多平面フィルムは、z方向に互いから一定間隔で配置された連続表面および不連続表面を有するフィルムである。多平面フィルムは、連続表面または不連続表面のいずれかまたは両方から突起部が生じるという点で三次元フィルムと区別される。隆起は利用可能な平面のうちのいずれかまたはすべてに形成されていてもよい。多平面フィルムの例は米国特許第7,518,032号に開示されており、その開示は参照によって本明細書に援用されるものとする。
【0030】
三次元形成フィルムの三次元特徴は任意の適切な工程を使用して製造することができる。通常、エンボス加工工程、油圧成形(hydroform)工程または真空形成工程が有利に使用することができる。三次元特徴は、円形、楕円形、三角形、正方形、五角形、六角形または任意の他の所望の形状である断面を有していてもよい。
【0031】
三次元フィルムの突起部のパターンは、規則的な幾何学的配列またはランダム配列のいずれかで存在していてもよい。規則的な幾何学パターンの典型的な配列としては、限定されないが、直線または波状ラインである連続ライン(隆起リブ)、60度正三角形配列、正方形パターン配列、または間隔および角度が混在しているが、突起部のクラスタまたはグループで繰り返す配列上の直線または波状の突起部が挙げられる。ランダム配列は、個々の突起部の、または突起部のクラスタまたはグループの任意の規則的な繰り返しパターンがないランダムである。
【0032】
形成フィルムは、例えば、真空を使用して高分子ウェブを成形構造に対して引き出す(draw)ことによって、または高圧ジェットまたは空気または水を使用してウェブを成形構造に対して押し付けることによって作製することができる。そのような工程は、米国特許出願公開第2004/0,119,208号および米国特許出願公開第2004/0,119,207号の教示、およびそれらで引用された先行技術文献から分かる。これらの公表された出願の開示およびそれらで引用された先行技術の開示は、参照によって本明細書に援用されるものとする。直接真空キャスト形成工程では、溶融重合体を成形構造上にダイから直接押出し、次いで、真空を施して成形構造の開口部に重合体を引き出す。フィルムを冷却し、フィルムの形状を設定し、フィルムを成形構造から取り除く。成形構造の開口部に引き出された重合体の部分は突起部になる。真空レベルおよび他の工程パラメータを調節して、開口部に重合体を引き出すとともに、フィルムを裂くことなく突起部を形成することができ、または、工程を実行してフィルムを裂いて突起部の頂点に開口部を形成することができる。
【0033】
他の実施形態では、剥離層は、油圧成形工程によって作成された形成フィルムであってもよく、油圧成形工程では、フィルムが成形構造上に支持されている間に、重合体フィルムの表面に対して高圧水の流れを導くことによって三次元突起部を形成する。高圧水は、真空と同様に成形スクリーン中でフィルムを開口部に押し付けて突起部を作成する。他の実施形態では、剥離層は再加熱工程で作製された形成フィルムであってもよく、再加熱工程では、前駆体高分子フィルムをほぼ融点に加熱し、次いで上記直接真空キャスト工程のように成形構造上に支持しながら真空を施す。本明細書で使用するように、用語「開口部を備えた形成フィルム」は、フィルムの突起部の頂点に開口部または穴を備えた三次元形成フィルムを称する。開口部を備えた形成フィルムは、突起部の頂点に開口部を作成する方法で、上記真空成形工程および油圧成形工程によって製造することができる。
【0034】
さらに他の実施形態では、突起部は、米国特許第7,083,843号で教示するようなピンプレートを使用してフィルムを変形することによって作成してもよく、その開示は、参照によって本明細書に援用されるものとする。他の実施形態では、突起部は、例えば複数の一定間隔で配置された突起部を有する第1のロールと、滑らかで硬い表面を有する第2のアンビルロールとの間に形成されたロール間隙(nip)にフィルムを通すことによってなど、前駆体フィルムを深エンボス加工することによって形成されてもよい。フィルムがロール間隙を通るので、フィルムは、第1のロールから突起部に対応する領域で変形される。深エンボスは、例えば、米国特許第5,229,186号に開示されており、その開示は、参照によって本明細書に援用されるものとする。
【0035】
三次元フィルムについて、三次元特徴のz方向寸法は、成形スクリーンの穴の直径の関数である。他の要因は、フィルム組成、フィルムの坪量、および開口部を形成する間のフィルムの温度などの三次元特徴のz方向高さにも寄与する。典型的には、より小さな直径の突起部はより大きな直径の開口よりz方向において短い。
【0036】
三次元形成フィルムは少なくとも1つの熱可塑性重合体を含んでいてもよい。例えば、三次元形成フィルムは、ポリエチレン、ポリエチレンの共重合体、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、ポリエチレンとポリプロピレンとのブレンド、ランダム共重合体ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクト共重合体、ポリブテン、メタロセンポリオレフィン、メタロセン線形低密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリエステルの共重合体、プラストマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸エチル)、環状オレフィン重合体、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリアミドの共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ(エチレン−コ−n−アクリル酸ブチル)、ポリ乳酸、ナイロン、再生可能な天然資源からの重合体、生分解性高分子、またはそれらのブレンドから選択された少なくとも1つの重合体を含んでいてもよい。
【0037】
典型的には、オレフィンモノマーはエチレンまたはプロピレンのいずれかであるが、熱可塑性ポリオレフィンはより高い分子量のオレフィンを含んでいてもよい。例えば、ポリオレフィンは、限定されないが、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンおよびデセンなどのオレフィンモノマーの重合体および共重合体を含んでいてもよい。デラウェア州ウィルミントンのE.I.du Pont de Nemours & Co.,Incから市販されている、販売名BYNELの線形低密度ポリエチレン−g−無水マレイン酸(LLDPE−g−MA)などの官能化オレフィンモノマーを使用してもよい。
【0038】
マスキングフィルムの層は、弾性重合体または半弾性重合体を含むこともできる。そのような弾性重合体または半弾性重合体の例としては、低結晶性ポリエチレン、メタロセン触媒低結晶性ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)またはスチレン/エチレン−ブタジエン/スチレン(SEBS)ブロック共重合体などのスチレンブロック共重合体、およびそのような重合体のブレンドが挙げられる。さらに、弾性材料は他の変性弾性材料または非エラストマー材料を含んでいてもよい。エラストマーブロック共重合体の例は、Kraton Polymers,LLC.製のKRATON(商品名)で販売されている。
【0039】
さらに、熱可塑性重合体に様々な充填材のいずれも添加してもよく、限定されないが、粗さ、帯電防止、耐磨耗性、印刷適性、加筆性、不透明性および色彩を含めていくつかの所望の特性をもたらしてもよい。そのような充填材は業界においてよく知られており、例えば、炭酸カルシウム(耐磨耗性)、マイカ(印刷適性)、二酸化チタン(色彩および不透明性)および二酸化ケイ素(粗さ)が挙げられる。典型的には、オレフィンモノマーはエチレンまたはプロピレンのいずれかであるが、熱可塑性ポリオレフィンはより高い分子量のオレフィンを含んでいてもよい。例えば、ポリオレフィンは、限定されないが、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンおよびデセンなどのオレフィンモノマーの重合体および共重合体を含んでいてもよい。
【0040】
接着層は基材の表面に接着することができ、剥離層は、フィルムが巻いた状態で保存された場合にそれ自体に接着する傾向を低減する三次元剥離面をもたらす。さらに、剥離面は基材の表面を傷つけることなく、基材の表面に対して緩衝作用および保護をもたらすことができ、保護表面をより容易に扱うことを可能にすることもできる。剥離層は、所望により、マスキングフィルムに対して強度および保護特性の大部分をもたらすように調合することができる。接触フィルム表面の樹脂、添加物および工程変数は、光学表面に対するいかなる残留物や汚れの移動を除去するように設計されている。
【0041】
上記検討から分かるように、突起部のロフトは、真空圧力量、油圧、温度、滞留時間(dwell time)、成形構造中の開口サイズ、およびフィルムを作製するために使用する重合体を変更することによって変えることができる。
【0042】
エンボス加工が施されていないフィルムの厚みは、通常、12.7ミクロン〜152.4ミクロンであるが、より典型的には12.7ミクロン〜76.2ミクロンの範囲内である。そのようなフィルムは、深エンボス加工工程後に、63.5ミクロン〜1069ミクロンの三次元特徴を有する。マスキングフィルムの構成要素として使用される深エンボスフィルムは、1インチ当たり約4〜約120のマクロセルを有していてもよい。マスキングフィルムの実施形態では、フィルムのセルは任意の形状を有しており、多くのパターンで配置していてもよい。セルの形状としては、限定されないが、円、楕円形、ダイヤモンド、舟形、隆線、チャンネル、三角形、四角形またはさらなる多面形状が挙げられる。
【0043】
エンボスフィルムは、フィルムに三次元特徴を加える任意の適切な工程によって作製してもよい。例えば、熱可塑性フィルムのウェブは、駆動プルロールのロール間隙を介して供給してもよく、または、ウェブは、例えば、エンボスロールのロール間隙を介して供給して、エンボスまたは深エンボスを形成してもよい。他の工程を使用して、所望の特性および寸法を備えたフィルムをエンボス加工してもよい。エンボス加工工程に先立って、フィルムを予め加熱して、フィルムのエンボス加工を促進するとともに、冷却後にフィルムに特徴を付与してもよい。例えば、フィルムの両側に隙間をおいたヒーターを使用して、フィルムの温度をその軟化点より高く上げてもよい。熱軟化フィルムは、次いで、金属エンボスロールおよびバックアップロールによって形成されたロール間隙に通してもよく、バックアップロールは、ゴム、ゴム状材料またはシリコーンゴムなどの弾性材料の外側層で被覆されている。ある特定の実施形態では、バックアップローラーは、表面粗さを有してフィルム上に艶消し面をもたらしてもよい。例えば、バックアップロールは、5〜150マイクロインチ(0.127〜3.81ミクロン)の表面粗さを有していてもよい。いくつかの用途では、ゴムロールを使用して、30〜100マイクロインチ(0.762〜2.54ミクロン)の表面粗さを有していてもよい。そのような実施形態では、一方側に艶消し面、他方にエンボス面を備えたフィルムが製造される。
【0044】
ある特定の他の実施形態では、フィルムは、次いで、高研磨で滑らかなクロムロールなどの研磨金属ロールおよび粗いバックアップロールによって形成されたロール間隙に通してもよい。本工程は、艶消し面および滑らかな対向面を備えたフィルムを製造し、そのようなフィルムは、例えば、1つの剥離面を有し、接着層で積層してもよく、第2の剥離面をもたらす他の層に積層してもよい。
【0045】
接着層は、滑らかな面または粗面に対して多少の接着特性を有する材料の層であり、凝集性単層に形成してもよい。使用時に、接着層は、保護される表面に適用される。ある特定の実施形態では、本開示のマスキングフィルムは、接着剤のコーティングなしで望ましい湿潤特性および接着特性を達成する。マスキングフィルムの好ましい実施形態では、接着層は、0〜60マイクロインチ(0〜1.524ミクロン)、またはより好ましくは0〜30マイクロインチ(0〜0.762ミクロン)の粗さを有する滑らかな面を含む。
【0046】
接着層は重合体を含んでいてもよい。接着層の重合体は、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ランダム共重合体ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクト共重合体、メタロセンポリオレフィン、メタロセン線形低密度ポリエチレン、プラストマー、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、アクリル酸の共重合体、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル)、環状オレフィン重合体、ポリアミドまたはポリ(エチレン−コ−n−アクリル酸ブチルから選択された少なくとも1つの重合体であってもよい。
【0047】
本開示のマスキングフィルムの実施形態は、メタロセンポリオレフィンを含む接着層を含む。本明細書で使用するように、「メタロセンポリオレフィン」は、オレフィンモノマーのメタロセン触媒重合によって製造されたポリオレフィンである。典型的には、オレフィンモノマーはエチレンまたはプロピレンのいずれかであるが、メタロセン重合としては、より高い分子量のオレフィンを重合することが可能な触媒を含むことができる。メタロセンポリオレフィンとしては、限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテンおよびデセンなどのオレフィンモノマーの任意の組み合わせの共重合体、例えば、メタロセンポリ(エチレン−コ−オクテン)共重合体などの、メタロセン触媒重合工程によって製造されたオレフィンの共重合体が挙げられる。メタロセンポリオレフィンのブレンドを、メタロセンポリオレフィンと他の重合体とのブレンドと同様に使用してもよい。メタロセンポリオレフィンは異なる重合工程によって調製されたポリオレフィンとは異なる。メタロセンポリオレフィンは、2.0未満の狭い分子量分布、制御された重合体構造、より高い熱的安定性、より高い透明度およびより高い耐衝撃性を特徴とすることができる。そのような特性に基づいて、当業者は、メタロセンポリオレフィンと他の工程によって製造したポリオレフィンを容易に見分けることができる。メタロセンポリオレフィンは、例えば、Dow Chemical Corp.および他の樹脂業者から市販されている。
【0048】
所望の特性を有する任意のメタロセンポリオレフィンをマスキングフィルムの実施形態において使用してもよい。例えば、メタロセンポリエチレン、メタロセンポリプロピレン、ならびにエチレンおよびプロピレンから誘導されたモノマー単位を含むメタロセン共重合体を含む重合体の群から選択されたメタロセンポリオレフィンを、マスキングフィルムの接着層において使用してもよい。そのような重合体は、所望レベルの接着特性および粘着特性をもたらす。メタロセン共重合体は、マスキングフィルムの接着層に所望の特性をもたらすこともできる。特に、メタロセン共重合体は、3〜12個の炭素原子を有するエチレン−高次αオレフィンから誘導されたモノマー単位、例えば、メタロセンポリ(エチレン−コ−オクテン)を含む。エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンおよびオクテンから誘導されたモノマー単位を含むメタロセン共重合体などの他のメタロセン共重合体を使用してもよい。ある特定の実施形態では、マスキングフィルムの接着層は、主としてポリエチレンから誘導されたモノマー単位、およびブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンまたはこれらのモノマーの組み合わせから誘導されたさらなるモノマー単位を含むメタロセン共重合体を含むことが有利であってもよい。メタロセンポリオレフィンのブレンドを使用してもよい。
【0049】
マスキングフィルムの実施形態は、1.0より大きく2.0未満の分子量分布(つまり、多分散性)を有するメタロセンポリオレフィンを含み、またはある特定の実施形態では、1.7未満の分子量分布、もしくは1.0より大きく1.5未満の分子量分布を有するメタロセンポリオレフィンが望ましい場合がある。
【0050】
さらに、接着層は、重合体のブロックとしてメタロセンポリオレフィンを含む重合体を含んでいてもよく、ここで、他のブロックはメタロセンポリオレフィンを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。そのようなブロック共重合体は、用語が本明細書で使用されるように、メタロセンポリオレフィンと考えられる。
【0051】
2層マスキングフィルムの実施形態は、接着層と、剥離層とを含む。接着層はメタロセンポリエチレンと低密度ポリエチレンのブレンドを含む。剥離層は低密度ポリエチレンを含み、複数の突起部を含む剥離面を有する。
【0052】
そのような実施形態では、接着層は、マスキングフィルムの全体厚みに対してフィルムの5%〜30%であってもよく、また、他の実施形態では15%〜25%であってもよく、剥離層は、マスキングフィルムの全体厚みの残りの70%〜90%であってもよく、また、他の実施形態では75%〜85%であってもよい。より具体的な実施形態では、接着層はフィルムの15%〜20%である。マスキングフィルムは、所望の特性を付与する任意の重合体を含んでいてもよい。しかし、1つの実施形態では、接着層は、75%〜85%のメタロセンポリ(エチレン−コ−オクテン)共重合体および15%〜25%の低密度ポリエチレンから実質的になる。本実施形態は、限定されないが、ガラス、アクリレート、環状オレフィン重合体(「COP」)フィルム、またはトリアセチルセルロース(「TAC」)フィルムを含む基材などの、低い表面エネルギーの基材の急速で十分な湿潤を可能とする具体的な特性を有する。
【0053】
マスキングフィルムは、LCD組立品で用いる光学等級光管理フィルム(偏光子)などのLCD表示装置用光学フィルムの製造において特定の用途を有する。ある特定の用途では、メタロセンポリ(エチレン−コ−オクテン)共重合体を、メタロセンプラストマーまたは他のメタロセンポリオレフィンと置き換えてもよい。TACフィルムは、LCDの製造において偏光子保護層として典型的に使用される。低応力の溶媒キャスティングで形成されたTAC重合体は、極めて等方性のLCDカバーシートの必要条件を満足する独特の重合体系となる。そのような特性によって、溶媒キャストTACフィルムがLCDカバーシートの用途の大部分を占めることが可能となった。しかし、TACは柔軟フィルムであり、製造、巻回する場合、滑らかな表裏フィルム表面は、ともにくっつくか、ともにブロックして、質が悪い巻回ロール特性を引き起こす傾向がある。これはLCD組立品の欠陥の原因となる可能性もある。本開示のマスキングフィルムは、マスキングフィルムの構成物質および構造の他の組み合わせよりも良好にTACフィルムを保護するとともに、TACフィルムのより容易な取り扱いを可能とする。したがって、TACフィルムは、本開示のフィルムで被覆される場合、LCD組立品に、よりうまく、より効率的に使用することができる。
【0054】
異なる接着レベルを備えたマスキングフィルムの実施形態は、マスキングフィルムの接着面におけるある特定の重合体および共重合体の異なる割合で構成物質を組み込むことによって製造してもよい。
【0055】
ポリオレフィン(単独重合体または共重合体)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリエステル、スチレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、プラストマー、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル)、環状オレフィン重合体、ポリアミド、またはポリ(エチレン−コ−n−アクリル酸ブチル)およびポリオキシメチレン(polyoximethylene)、およびそれらの混合物などの第2の重合体を、比率を変えて、第1の重合体とブレンドして、フィルムの所望のレベルの接着をもたらすことができる。酸変性共重合体、無水物変性共重合体および酸/アクリレート変性共重合体も有用である。ポリエチレンのフィルムは特に適しており、したがって好ましい。低密度ポリエチレン単独重合体のフィルムは、さらに特に適しており、したがって、表面により良好に適合する傾向があるそれらの比較的低い引張係数により、より好ましい。
【0056】
マスキングフィルムは任意の所望の厚みであってもよい。しかし、ある特定の用途では、マスキングフィルムの全体厚みは60ミクロン〜200ミクロンである。
【0057】
マスキングフィルムの実施形態を図1に示す。図1では、マスキングフィルム10は基材16上に示されている。マスキングフィルム10は、接着層12と、剥離層14とを含む。接着層12は、基材16に接着をもたらすように調合されているが、基材16を破損することなく、また基材16にいかなる残留物も残すことなく、もはや必要でない場合に取り除かれるように調合されている。接着層12は、現在、当技術分野で公知であり、今後特有の表面を保護するために開発される任意の所望の調合物であり得る。また、当技術分野で公知のように、接着層は、非常に滑らかな表面で作製されて、基材表面との密接な接触を促進することが好ましい。
【0058】
図1で見られるように、剥離層14は三次元剥離面15を含む。本実施形態では、剥離面15は、剥離面15の平面部分から隆起した複数の突起部13を含む。隆起突起部は、積み重ねたマスキングフィルム10と隣接した基材の間に物理的分離を生み出す。複数の突起部13は、取り扱いの間に基材16を保護し、一方の基材が別の基材からより容易に分離されることを可能にする。本特有の実施形態では、剥離層は、突起部13が剥離層14の一体的な延出部分である形成フィルムを含む。
【0059】
剥離面15は、フィルムのベース面15から測定されて、50ミクロンより大きい平均高さを有する突起部13を含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、突起部の平均高さは100ミクロンより大きくてもよい。ある特定の実施形態では、剥離層の剥離面は、複数の突起部、複数の三次元開口部、深エンボス構造、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
図1の実施形態では、三次元突起部13は、円錐形状または漏斗形状で開口部を備えた突起部を含み、突起部13の頂点に開口部または開口11を有する。しかし、突起部が開口部を備える必要はなく、実際、開口部を備えないことが好ましいことが理解される。開口によって、破片が集まるかまたはフィルム内に捕捉される機会がもたらされる。破片は、そのとき、基材表面に傷をつけるか、または基材表面を破損する可能性がある。剥離層14として使用される三次元フィルムを、図1に示される方向に向かい合う方向に配向させることができ、ここで、突起部13は、接着層14に対して配向されるとともに接着層14に接触することを認識し理解されたい。
【0061】
図1Aは、基材116に接着させたマスキングフィルム110の別の実施形態を示す。マスキングフィルム110は、接着層112と、剥離層114とを含む。剥離層114は、剥離面115から延在する複数の三次元突起部113を含む剥離面115を有する。図1Aの実施形態では、剥離層114は、深エンボス加工工程によって都合よく形成してもよい。
【0062】
図1Bを参照して、マスキングフィルムの別の実施形態を示す。本実施形態では、基材216に接着されたマスキングフィルム210が示されている。マスキングフィルム210は、接着層212と、剥離層214とを含む。本実施形態における剥離層214は多平面フィルムを含む。一方側では、多平面フィルム214は、フィルムの平面215から上方に延在する突起部213を有する。反対側では、多平面フィルムは複数の突起部217を有し、突起部217は、示した実施形態において、突起部の頂点の開口218を終端とする。上述のとおり、剥離層214として使用されるフィルムは、突起部213が接着層212に対して配向されるとともに接着層212に接触するように反転していてもよいことが認識されよう。
【0063】
実施形態はまた、2つより多い層を含むマスキングフィルムも含む。マスキングフィルムの具体的な実施形態は、接着層と、コア層と、剥離層とを含む。少なくとも1つのコア層は、マスキングフィルムの接着層と剥離層の間に介在されていてもよい。そのような実施形態のコア層は、剛性、弾性率(modulus)、引き裂き抵抗などのフィルムの機械的特性を改善する任意の重合体を含んでいてもよい。例えば、コア層は、フィルムの製造および使用中に接着層の滑らかな面の潜在的破損を低減するか、またはフィルムの弾性率を改善するために調合してもよい。ある特定の実施形態では、マスキングフィルムは15,000psi(103.4MPa)より大きい弾性率を有するべきである。ある特定の実施形態では、マスキングフィルムの弾性率は、15,000psi(103.4MPa)より大きく350,000psi(2413.17MPa)未満であってもよい。ある特定の実施形態では、剥離層は240,000psi(1654.74MPA)(±15%)の弾性率を有するべきである。この範囲の弾性率は、マスキングフィルムの湿潤特性に影響することなく、接着層に対して保護をもたらすことが望ましい。
【0064】
例えば、コア層は、任意の熱可塑性重合体、熱硬化性重合体、または弾性重合体であってもよく、本明細書で説明するように、例えば、マスキングフィルムに所望の特性をもたらす。ある特定の実施形態では、コア層は、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ランダム共重合体ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクト共重合体、メタロセンポリオレフィン、メタロセン線形低密度ポリエチレン、プラストマー、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、アクリル酸の共重合体、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸メチル)、環状オレフィン重合体、ポリアミド、ポリ(エチレン−コ−n−アクリル酸ブチル)、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリエステル、およびそれらの組み合わせから選択された重合体を含んでいてもよい。コア層は、多層マスキングフィルムに所望の不透明性および/または色彩、剛性および靱性をもたらすことに役立つことができる。
【0065】
マスキングフィルムの実施形態は2つの剥離面を含んでいてもよい。2つの剥離面を備えたフィルムは単層フィルムまたは多層フィルムであってもよい。
【0066】
図2は、コア層21と、第1の剥離層22と、第2の剥離層26とを含むマスキングフィルム20の実施形態を表す。各剥離層22、26は、それぞれ、剥離面23、27を有する。剥離面23、27は、それぞれ、複数の突起部24、28を有する三次元表面を含む。突起部は剥離層の一体的な延出部分である。図2に示された実施形態では、三次元突起部24、28は、開口部を備えていないが、それにもかかわらず真空形成フィルムまたは油圧成形フィルムの特徴的な円錐形状を有する。
【0067】
マスキングフィルムの他の実施形態は、コア層21を省略してもよく、例えば、三次元表面が外に配向されるように一緒に積層された2つの三次元フィルムを含んでいてもよい。
【0068】
マスキングフィルムの両側の剥離面は、構造または特性が類似していてもよく、または異なっていてもよい。例えば、剥離面は、異なる構造、パターン、ロフト、網目数を有していてもよく、または異なる材料からなり得る。図3は、2つの剥離面31、32を含む単層マスキングフィルム30の実施形態を表す。剥離面31は、複数のエンボス加工33を有する三次元表面を含む。剥離面32は、5〜100マイクロインチ(0.127ミクロン〜2.54ミクロン)の表面粗さを有する艶消し面を含む。
【0069】
図4を参照して、マスキングフィルム40は、剥離層42と、接着層44とを含む。剥離層42は、複数の間隔の離れた隆起リブまたは隆線48を有する剥離層46を含む。そのようなフィルムは、隆起リブまたはワイヤーを有する成形ドラム上に溶融重合体をキャスティングすることによって都合よく作製してもよい。重合体が冷えてフィルムを形成するので、フィルム表面は、リブまたはワイヤーに対応して、フィルムに連続的な隆起線48をもたらす。剥離層42は、次いで、接着層44を被覆するかまたは接着層44に積層することができる。あるいは、マスキングフィルム40は、複数の間隔の離れたチャンネルまたは溝を有する成形構造上に剥離層42および接着層44を同時押出し成形し、次いで、同時押出し成形物に真空を施して(上記で検討するように)、剥離層を形成する重合体を溝に引き込むことによって作製することができる。重合体が冷えると、フィルムは重合体が溝に引き込まれた位置に対応する隆線を形成する。接着層ができるだけ滑らかなままであるように、剥離層44の表面が溝に引き込まれないことを確実にするように注意しなければならない。フィルムを作製する他の方法も都合よく使用してもよい。
【0070】
図4Aは、図4の実施形態の剥離層42の断面図を表す。図4Aに示す実施形態では、マスキングフィルムは、単層フィルム42であり、単層フィルム42は、図4のような剥離面46と一体的に形成された、複数の間隔の離れた三次元の隆起線48を含む剥離面46を有する。マスキングフィルムは、さらに、剥離面46に対向する第2の剥離面43を含む。剥離層42の第2の剥離面43は、隆起リブ48の裏面に対応する複数の空隙54を有する。
【0071】
図4および4Aの実施形態における隆起線48は、フィルムに有効な剛性をもたらす。これは、特に、図4Aの実施形態に有利であり、フィルムは、重ねられた基材において紙の代替品として使用することができる。
【0072】
図5および5Aは、剥離層52と、接着層54とを含むマスキングフィルム50を示す。剥離層52は、複数の高分子ビーズ58がその上に配置された剥離面56を含む。上記他の実施形態とは対照的に、ビーズ58は、剥離層52の一体的な延出部分として形成されていない。より正確に言えば、ビーズ58は、ポリエチレンなどの高分子材料の個々の不連続のビーズを含み、フィルムの表面に適用される。
【0073】
高分子ビーズは、インパクト印刷工程(グラビア印刷など)、非インパクト印刷工程(インクジェット印刷など)、接着剤塗布装置、または溶融、半溶融または固体形態で不連続の高分子ビーズを排出または堆積することができる任意の他の装置を介して適用することができる。
【0074】
他の実施形態では、不連続の高分子ビーズが固体形態であるとともに剥離層が半溶融または軟化状態である間に、上記ビーズを剥離層の表面に適用してもよい。他の実施形態では、高分子材料が溶融温度であるか、溶融温度より高いかまたは溶融温度に近い間にビーズを適用する。ビーズがフィルム層に広がらないようにするために、剥離層の表面を急冷ロールと接触することによって高分子ビーズを急冷することは有利となり得る。
【0075】
高分子ビーズ58は、剥離層56に適用することができるとともに、意図した目的のために剥離層に十分に接着されたままであることができる任意の高分子材料を含んでいてもよい。高分子ビーズは、フィルムの特有の用途のために望まれる任意のサイズ、形状、寸法、パターンまたは間隔を有していてもよい。
【0076】
図6は、平面部61と、平面部61と一体的に形成された複数の突起部62を有するマスキングフィルム60の実施形態を表す。突起部62は平面部61の両側に延在する。示された実施形態では、突起部62はフィルムの両側に位置するが、これは必ずしもそうである必要はない。
【0077】
図7は、マスキングフィルムを製造するために使用することができる1つの工程の概略説明図である。押出成形機(図示せず)内で重合体を混合および溶融し、ダイ70に通し、ここで重合体はロール74上に溶融流またはカーテン72で現れる。製造される実施形態によって、ロール74は、滑らかなキャスティングロール、成形構造、またはテクスチャード加工キャスティングロールを含んでいてもよい。ウェブ76は、ロール74とロール78の間に形成されたロール間隙でウェブ72とまとめられる。2つのウェブ72、76はロール間隙で積層され、次いで、ロール74から取り除かれて最終フィルム構造物80を製造する。所望により、当技術分野で公知であり、例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第4,995,930号で教示されるように、真空を適用して積層を支援してもよい。さらに、製造される特有の実施形態によって、ウェブ76は、開口部を備えているか、または開口部のない三次元フィルム、エンボスフィルム、深エンボスフィルム、接着層などであってもよい。
【0078】
例えば、図1のマスキングフィルム10を作製することが望まれる場合、接着層12としての使用を意図する高分子材料は、ロール74上に溶融ウェブ72としてダイ70から押出され、この場合、滑らかな面のチルロールを含む。ウェブ74は、図1の三次元の開口部を備えたフィルム14を含み、プレスロール78とチルロール74の間に形成されたロール間隙でウェブ72と接触する。ロール間隙で熱と圧力を組み合わせると、開口部を備えたフィルム76が接着層72に接着され、それによって、図1の積層フィルム10がウェブ80として現れる。
【0079】
図2のマスキングフィルム20が望まれる場合、ウェブ72は、ロール74上にキャスティングされる第1の剥離層22およびコア層21用の材料の同時押出し成形物を含み、そのような実施形態では成形構造を含む。第2の剥離層26はウェブ76としてロール間隙にもたらされる。成形構造74を介してウェブ72に真空を適用することによって、当技術分野で公知なように、第2の剥離層26が形成され、最終フィルム20がウェブ80としてロール74から現れる。
【0080】
図8は、ある特定の実施形態を製造するために使用することができる別の工程の概略図を示す。図8の工程では、ダイ80からロール84上に溶融重合体ウェブ82を押出す。図7の工程でのように、ロール84は、成形構造、滑らかな面のキャスティングロール、テクスチャード加工表面のキャスティングロール、エンボスロールなどを含んでいてもよい。ニップロール86はテクスチャード加工ロールまたはエンボスロールを含むことができることが好ましいが、所望により滑らかなロールであってもよい。図8の工程は、例えば、図3、4Aおよび6に示す実施形態などのマスキングフィルムの作製に特に有利である。図6の実施形態では、特に、ニップロール86は、ゴムまたは他の材料の支持ロール上に配置された薄いスクリーンであってもよい。薄いスクリーンはフィルムの一方の側に表面トポグラフィーを付与し、一方、ロール84の表面は、好ましくは真空の支援下でフィルムの対向面に表面トポグラフィーを付与する。
【0081】
マスキングフィルムは、重ねられた基材間にはさんで、出荷、使用、製造、または組み立ての間に基材を保護することができる。マスキングフィルムは、特に、ガラスや他の光学媒体などの滑らかな面を備えた、重ねられた基材での使用に役立つことができる。マスキングフィルムは、基材間に設置されて、基材を保護するとともに、所望の剥離特性を可能とする。
【0082】
帯電の蓄積を抑制するマスキングフィルムは多くの用途において望ましい。ある特定の用途では、マスキングフィルムは、機械的破損および化学的破損または汚染だけでなく、ほこりなどの微粒子による汚染からもフィルムの部分を保護する。したがって、マスキングフィルムが、それ自体、基材の表面にほこりや他の粒子を移動させないことは、層状光学スクリーンなどのある特定の用途で望ましい。マスキングフィルムの帯電防止特性を改善するために、帯電防止剤を接着層および/または剥離層に添加してもよい。好ましくは、接着層または剥離層は、アイオノマーなどのフィルムの表面に移動せず、したがって、基材の表面を汚染する可能性を有さない帯電防止剤を含む。したがって、表面上のほこりを低減するために、具体的な実施形態の接着層はアイオノマーを含んでいてもよい。アイオノマーは、重合体構成要素の不連続の範囲のイオン相互作用により、独特の物理的特性を有する重合体である。ほとんどのアイオノマーは、少数であるがかなりの割合の構成モノマーがイオン群を有する重合体である。ある特定の実施形態では、アイオノマーはカリウムアイオノマーであってもよい。
【0083】
基礎的特性および新規の特性に影響することなく、本開示のマスキングフィルムの任意の層は、少なくとも1つの酸化防止剤、着色剤、顔料、清澄剤および/または核形成剤を含んでいてもよい。
【0084】
好ましい実施形態において、複合層状フィルムを本開示において用いる場合、接着層、コア層および/または剥離層などの任意の層を、当技術分野で公知の任意の同時押出し成形工程を使用して、同時押出ししてもよい。同時押出し成形を使用すると、異なる層からなる多層マスキングフィルムの比較的単純で容易な製造が可能となり、各々の層が特定の機能を行う。本開示の改善された多層マスキングフィルムの同時押出し成形は好ましいが、マスキングフィルムは単層または多層とすることができ、形態にかかわらず、所望により、マスキングフィルムは、任意の他の適切な方法を使用して製造することができることにさらに留意されたい。
【0085】
様々な任意の従来の方法は、保護される基材のテクスチャード加工表面に多層(または単層)マスキングフィルムを適用するために利用することができる。好ましくは、多層フィルムをロールから取り除き、ニップロールまたは同様のシステムによって表面に直接適用する。このように、多層フィルムの滑らかな側は、1つの操作において、テクスチャード加工基材に適用され、押し付けられる。所望により、結果生じた積層物は、さらなる処理のために圧縮ロールなどに通してもよい。本開示の積層物を形成するための適切な他の技術は、本明細書の記載を読むことで当業者に容易に明らかとなるだろう。
【実施例】
【0086】
多くの他の変形、変更および代替の実施形態が、本開示の概念から逸脱することなく、当業者によって、記載された物品および技術においてなされてもよい。したがって、先の説明および以下の実施例において参照する物品および方法は単なる例示であり、本開示の範囲に対する限定として意図されないことは明らかに理解されるべきである。
【0087】
実施例1
表1の組成を有する一連のフィルムを調製した。
【0088】
【表1】

サンプルNo.4は単層フィルムである。サンプルNo.7は同時押出し成形フィルムである。2つのフィルムを積層することによって他のすべてのサンプルを調製した。サンプルフィルムは坪量、曇りおよび厚み(ロフト)について測定し、接着についてテストした。特性およびデータを表2に記載する。
【0089】
【表2】

実施例2
1つの滑らかな接着面および対向する剥離面を有する一連の単層ポリエチレンフィルムを作製した。滑らかなチルロール上に前の実施例で用いた低密度ポリエチレン/スリップ剤のブレンドをキャスティングすることによってフィルムを作製した。図8に見られるように、テクスチャード加工または彫刻エンボスロールでフィルムの反対側に圧力を加えた。テクスチャード加工エンボスロールはゴムから作製され、1.397ミクロン(55マイクロインチ)の粗さを有する表面テクスチャを有していた。彫刻エンボスロールもゴムから作製され、ダイヤモンド形状パターンで一連の深い彫刻溝を有していた。次いで、フィルムの各表面を、180°剥離試験で特別の開発接着強度試験方法を使用して接着についてテストした。結果を表3に記載する。
【0090】
【表3】

実施例3
各側に剥離面を有する一連のポリエチレンフィルムを作製した。彫刻チルロール上に前の実施例で用いた低密度ポリエチレン/スリップ剤のブレンドをキャスティングすることによってフィルムを作製した。チルロールは、ダイヤモンドパターンの形状で一連の深い彫刻溝を含む彫刻面を有していた。図8に見られるように、テクスチャード加工エンボスロールでフィルムの反対側に圧力を加えた。テクスチャード加工エンボスロールはゴムから作製され、1.397ミクロン(55マイクロインチ)の粗さを有する表面テクスチャを有していた。次いで、フィルムの各表面を接着についてテストした。結果を表4に記載する。表4に見られるように、本実施形態では、フィルムは基材に接着しなかった。
【0091】
【表4】

実施例4
表5に記載した組成を有する一連の3層同時押出し成形フィルムを調製した(層2はコア層であり、層1および3は外側すなわち「表皮」層である)。フィルムは、成形スクリーン上に成型し、成形スクリーンは、周囲に巻き付けられ、真空を施して図4Aに表したフィルム材料を形成する薄いワイヤーを有する。フィルムの様々な物理的特性についてテストした。結果を表6に記載する。
【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【符号の説明】
【0094】
10 マスキングフィルム
11 開口
12 接着層
13 突起部
14 剥離層
15 剥離面
16 基材
70 ダイ
72 ウェブ(カーテン)
74 ロール
76 ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着層と、剥離層とを含み、該剥離層は複数の三次元突起部を有する剥離面を含む、フィルム。
【請求項2】
前記三次元突起部は前記剥離層の一体的な延出部分である、請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
前記突起部は真空形成された突起部である、請求項2記載のフィルム。
【請求項4】
前記突起部は油圧成形された突起部である、請求項2記載のフィルム。
【請求項5】
前記突起部は機械的に変形された突起部である、請求項2記載のフィルム。
【請求項6】
前記突起部は深エンボス突起部である、請求項5記載のフィルム。
【請求項7】
前記突起部は前記フィルムの長さに実質的に延在する隆線を含む、請求項2記載のフィルム。
【請求項8】
前記剥離層と前記接着層との間に配置された少なくとも1つの中間層をさらに含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項9】
前記三次元突起部は不連続の高分子ビーズを含む、請求項1記載のフィルム。
【請求項10】
第1の剥離面と、第2の剥離面とを含み、該第1の剥離面および第2の剥離面のうちの少なくとも1つは複数の三次元突起部を有する、フィルム。
【請求項11】
前記三次元突起部は前記剥離層の一体的な延出部分である、請求項10記載のフィルム。
【請求項12】
前記突起部は、真空形成された突起部、油圧成形された突起部、および機械的に変形された突起部から選択される、請求項11記載のフィルム。
【請求項13】
前記突起部は前記フィルムの長さに実質的に延在する隆線を含む、請求項11記載のフィルム。
【請求項14】
多層フィルムを含む、請求項10記載のフィルム。
【請求項15】
前記三次元突起部は不連続の高分子ビーズを含む、請求項10記載のフィルム。
【請求項16】
前記第1の剥離面は三次元突起部を含み、前記第2の剥離面は艶消し面を含む、請求項10記載のフィルム。
【請求項17】
前記第1の剥離面および第2の剥離面の両方は三次元突起部を含む、請求項10記載のフィルム。
【請求項18】
基材表面を保護する方法であって、
該基材表面と密接に接触してフィルムを設置することを含み、
該フィルムは、剥離面を有する少なくとも1つの剥離層を含み、
該剥離面は複数の三次元突起部を有する、方法。
【請求項19】
前記フィルムは、重ねられた基材において2つの隣接する基材表面間に位置する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記フィルムは、
a)接着層および剥離層を有するフィルム、
b)接着層、剥離層および該剥離層と該接着層との間に介在する少なくとも1つのコア層を有するフィルム、
c)剥離層および剥離面に対向する艶消し面を有するフィルム、
d)第2の剥離層を有し、該第2の剥離層は複数の三次元突起部を有するフィルム、から選択される、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−521071(P2011−521071A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510518(P2011−510518)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/003844
【国際公開番号】WO2009/158036
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(507274744)トレデガー フィルム プロダクツ コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】