説明

剪断加工工具の異物付着検出方法及び異物付着監視装置

【課題】剪断加工工具を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、人による目視観察、あるいは通常の可視光光学画像の画像解析によるのではなく、剪断加工工具に付着する異物を検出する異物付着検出方法及び異物付着監視装置を提供する。
【解決手段】剪断加工工具2は棒状の金属が当接する凹部10を有し、剪断加工工具の先端のうち凹部10を含まない部分を底部12とし、剪断加工工具表面のうち、少なくとも底部12の一部を含み凹部の頂点11を含まない任意の領域を基準領域13として定め、少なくとも凹部の頂点11を含む任意の領域を検査領域14として定め、棒状の金属を剪断加工した後に、剪断加工工具の基準領域と検査領域を含む表面の温度を測定し、基準領域13内の最高温度を基準温度、検査領域14内の最高温度を検査温度とし、前記検査温度が、前記基準温度に予め定めた一定温度を付加した温度よりも高温となったときに異物付着ありと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剪断加工工具を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、剪断加工工具に付着する異物を検出する異物付着検出方法及び異物付着監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
棒鋼の熱間圧延設備において、熱間圧延機を出た鋼材は、途中に配置された熱間切断機で分割切断され、冷却床に送られ冷却される。冷却された鋼材は切断装置に送られ、通常複数本を同時に切断して定寸の棒鋼製品となる。切断装置として、剪断による切断を行うコールドシャーが採用されることが多い。
【0003】
コールドシャーを用いた剪断加工装置では、図3に示すように、下刃用刃物台5に下刃物3が取り付けられ、上刃用刃物台4に上刃物2が取り付けられている。上刃物2と下刃物3はそれぞれ、剪断する製品形状に沿った複数のカリバー(凹部10)が彫られている。複数の圧延製品1が下刃用刃物台5の上に送られてきて、下刃物3の各カリバーに沿って下刃物3の先まで送られ、各圧延製品1がストッパー6に当接した後に所定の長さで停止する。圧延製品1は押さえ装置7によって下刃用刃物台5に固定され、上刃用刃物台4に取り付けられた上刃物2が下降して上刃物2と下刃物3によって圧延製品1を剪断する。その後、上刃物2が上昇し、剪断された材料を搬送して完了となり、同じ動作を繰り返し行う。
【0004】
剪断加工の際、剪断加工により圧延製品から発生したバリや小片等の異物が上刃物のカリバー部に付着することがある。上刃物のカリバー部に異物が付着したまま次の剪断加工を行うと、この異物により圧延製品に凹状の疵がプリントされてしまうため、製品品質不良となる。従来、上刃物に付着するバリや小片の検出方法として、監視カメラによる目視確認を実施して異物の付着有無を確認していた。
【0005】
特許文献1には、上刃物へのバリ・小片の付着異物を画像処理により検出し、検出結果に基づいて切断停止を自動的に判断可能にした、コールドシャー刃内の異物付着検出による切断自動停止方法が開示されている。これにより、人力によるのではなく、画像処理を用いた機械的な方法であり、不良品発生を防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−138127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法は、異物の有無を通常の光学画像から判断しており、付着異物が微小である場合には検出が困難となる。また、剪断加工に際して大きな衝撃や振動が発生するため、撮像用カメラが振動し、また撮像方向が変動し、上刃物の異物付着箇所を正確に捉えることが困難となり、付着した異物を検出できない場合、あるいは異物が付着していなくても異物付着ありと誤検出してしまう課題が懸念される。
【0008】
本発明は、剪断加工工具を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、人による目視観察、あるいは通常の可視光光学画像の画像解析によるのではなく、剪断加工工具に付着する異物を検出する異物付着検出方法及び異物付着監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)棒状の金属(好ましくは圧延製品1)を剪断加工するための剪断加工工具2は棒状の金属が当接する凹部10を有し、剪断加工工具2を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、剪断加工工具2に付着する異物を検出する異物付着検出方法であって、
剪断加工工具表面のうち、剪断時進行方向15の先端に位置し凹部10を含まない部分を底部12とし、凹部10のうち剪断時進行方向の反対側先端部分であって棒状の金属と接する部分を凹部の頂点11とし、
剪断加工工具表面のうち、少なくとも底部12の一部を含み凹部の頂点11を含まない任意の領域を基準領域13として定め、少なくとも凹部の頂点11を含む任意の領域を検査領域14として定め、
棒状の金属を剪断加工した後に、剪断加工工具の基準領域と検査領域を含む表面の温度を測定し、基準領域13内の最高温度を基準温度、検査領域14内の最高温度を検査温度とし、
前記検査温度が、前記基準温度に予め定めた一定温度を付加した温度よりも高温となったときに異物付着ありと判定することを特徴とする異物付着検出方法。
(2)剪断加工工具2の表面温度測定は、二次元平面的に温度測定が可能な非接触の温度計8を用いることを特徴とする請求項1に記載の異物付着検出方法。
(3)検査領域14は基準領域13を包含することを特徴とする請求項1又は2に記載の異物付着検出方法。
(4)棒状の金属を剪断加工するための剪断加工工具2は棒状の金属が当接する凹部10を有し、剪断加工工具2を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、剪断加工工具2への異物付着有無を監視する異物付着監視装置であって、
該異物付着監視装置は、剪断加工工具表面の温度を測定する温度計8と、温度計8の温度測定結果を演算する演算装置9とを有し、
剪断加工工具表面のうち、剪断時進行方向15の先端に位置し凹部10を含まない部分を底部12とし、凹部のうち剪断時進行方向の反対側先端部分であって棒状の金属と接する部分を凹部の頂点11とし、
予め、剪断加工工具表面のうち、少なくとも底部12の一部を含み凹部の頂点11を含まない任意の領域を基準領域13として定め、少なくとも凹部の頂点11を含む任意の領域を検査領域14として定め、
温度計8は、棒状の金属を剪断加工した後に、剪断加工工具2の基準領域と検査領域を含む表面の温度を測定し、
演算装置9は、温度計8で測定した温度のうち、基準領域13内の最高温度を基準温度、検査領域14内の最高温度を検査温度とし、前記検査温度が、前記基準温度に予め定めた一定温度を付加した温度よりも高温となったときに異物付着ありとして信号を発することを特徴とする異物付着監視装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、剪断加工工具を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、温度計で剪断加工工具表面の温度を測定し、剪断時に圧延製品が接触する凹部の頂点を含む検査領域の最高温度を検査温度として把握し、剪断加工工具の底部を含む基準領域の最高温度を基準温度として把握し、「温度差=検査温度−基準温度」が所定のしきい値よりも高くなったときを異物付着ありと判定することにより、精度良く異物付着の有無を判断することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明における剪断加工工具と温度計の位置関係を示す図である。
【図2】剪断加工工具における基準領域と検査領域の関係を示す図である。
【図3】剪断加工装置の全体を示す概略図である。
【図4】基準温度と検査温度の測定結果を示す図である。
【図5】異物付着ありとなしの場合の剪断加工工具の凹部の頂点温度を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、剪断加工装置の上刃物を「剪断加工工具」と称し、図2(a)に示すように、上刃物のカリバー部をその形状に基づいて「凹部10」と称する。また、剪断加工工具表面のうち、剪断時進行方向15の先端に位置し凹部10を含まない部分を底部12とし、凹部10のうち剪断時進行方向15の反対側先端部分であって棒状の金属と接する部分を凹部の頂点11とする。対象とする剪断加工工具2は上刃物であるから、剪断時進行方向15とは下方を意味する。
【0013】
本発明において、剪断加工する対象は、棒状の金属であればいずれの場合にも適用することができる。棒状の金属としては、例えば熱間圧延を終了した圧延製品1、好ましくは棒鋼に適用することができる。以下、熱間圧延を終了した棒鋼を対象として説明を行う。
【0014】
図2(b)に示すように、剪断加工工具2の凹部10の特に凹部の頂点11に付着異物21が付着する。付着異物21は、剪断時の加工発熱により温度が上昇している。従って、凹部の頂点11付近の剪断加工工具2の表面温度を計測することにより、付着異物の有無が検出できるのではないかと考えた。しかし、凹部の頂点付近における剪断加工工具の表面温度は変動が大きく、図5に示すように、付着異物が付着しているときと付着していないときの凹部の頂点11の温度分布は重なっており、単純な温度測定では付着異物の有無を検出できないことがわかった。
【0015】
剪断加工の対象となる圧延製品は、熱間圧延を終了した直後の鋼材であり、冷却床で冷却しているとはいえ、高温を維持している。そのため、剪断加工工具2は、その下方に配列された圧延製品1から輻射熱を受けて温度が上昇する(図3)。温度上昇の程度は、圧延製品のサイズや剪断加工のインターバルによっても変動し、圧延製品の断面形状が大きいほど高温となり、また剪断加工を行う時間間隔が短くなるほど高温となる。剪断加工工具2の表面のうち、圧延製品からの輻射熱を受けて特に高温となるのは、図2に示す剪断加工工具の底部12であることがわかった。一方、剪断加工工具に異物が付着する場合には凹部の頂点11に付着する(図2(b))。そして、剪断加工工具の底部12の温度と凹部の頂点11の温度を対比したところ、異物21が付着していないときには底部12に比較して凹部の頂点11の方が温度が低く、異物21が付着しているときには逆に底部12に比較して凹部の頂点11の方が温度が高くなっていることが判明した。
【0016】
即ち、剪断加工工具の表面温度を測定し、凹部の頂点11の温度が底部12の温度よりも高くなったときに異物付着ありと判定すれば、異物付着の有無を精度良く判定できることがわかった。
【0017】
一方、図1に示すように、剪断加工工具2の表面温度を測定する温度計8は非接触温度計とし、剪断加工工具2から一定距離離れたところに温度計8を配置して剪断加工工具表面温度を測定する。剪断加工工具2の停止位置はその都度若干変動することがあり、また温度計自身が振動を受けて視野方向が変動することがある。そのため、剪断加工工具2の特定位置を正確に狭い測温視野として捉えることが困難な場合がある。また、剪断加工工具は同時に2〜16本の多数の圧延製品について剪断を行うので、圧延製品の数に対応する数の凹部10を有している。ひとつひとつの凹部の頂点11について温度を計測するためには詳細な設定が必要である。これに対し、すべての凹部の頂点11を含む領域を検査領域として定め、検査領域内で最も高い温度を示した点における温度を最高温度として抽出すれば、いずれかの凹部に異物が付着したときにはその箇所の温度が最高温度として選ばれる。従って、凹部の頂点の位置を正確に把握することなく、また多数の凹部の頂点それぞれについて個別に温度を測定することなく、異物付着箇所の温度を計測することができる。
【0018】
本発明は、図2(c)に示すように、剪断加工工具表面のうち、少なくとも底部12の一部を含み凹部の頂点11を含まない任意の領域を基準領域13(図2(c)の一点鎖線の領域)として定め、少なくとも凹部の頂点11を含む任意の領域を検査領域14(図2(c)の二点鎖線の領域)として定め、棒状の金属を剪断加工した後に、剪断加工工具2の基準領域と検査領域を含む表面の温度を測定し、基準領域13内の最高温度を基準温度、検査領域14内の最高温度を検査温度とする。基準領域13の範囲内では、付着異物の有無にかかわらず、底部12の温度が最も高いので、計測された基準温度は底部12の温度を示すこととなる。一方、検査領域14においては、付着異物が付着しているときは凹部の頂点11の温度が最も高く、検査温度は凹部の頂点11の温度を示し、付着異物が付着していないときは凹部の頂点以外の地点であってたまたま検査領域14の中で最高温度だった部分の温度が検査温度として示される。例えば図2(d−1)(d−2)に示すように、基準領域13は図2(c)と同様に定め、検査領域14として底部12を含む領域を選んだ場合、異物付着時には凹部の頂点11が最高温度となるので凹部の頂点11の温度が検査温度となり、異物が付着していないときには底部12が最高温度となるので底部12の温度が検査温度となる。
【0019】
以上のように基準領域、検査領域、基準温度、検査温度を定義した上で、図2(b)に示すように底部12から凹部の頂点11までの距離を凹部高さHとし、具体的には図2(d−1)(d−2)に示すように、基準領域13として底部12を含み底部12から凹部高さHの1/3までの領域であって、幅方向は剪断加工工具2の全幅領域を選定し、検査領域14としては底部12と凹部の頂点11を両方含み、幅方向は剪断加工工具の全幅となる領域を選定した。基準領域13として底部12の一部を含めばよい。図1に示すように、剪断加工工具2が移動上限の待機位置にあるときに、その表面温度を温度計8(サーモピクス温度計)によって計測した。剪断加工工具2と温度計8との距離は4775mmであった。また、角度は材進逆方向より11.3°であった。画像処理によって基準温度と検査温度とを算出した。そして、横軸を基準温度、縦軸を「温度差=検査温度−基準温度」として図4に示した。ここで、異物付着なしの場合を□、異物付着ありの場合を◆として表した。図4から明らかなように、異物付着なしの場合の「□」はいずれも温度差がゼロであった。これは、検査領域14として底部12を含んでいるため、異物付着がない場合には底部12の温度が最高温度となり、検査温度と基準温度のいずれも底部の温度が選択されるので、温度差がゼロになるのである。また、異物付着ありの場合にはいずれも温度差が10℃以上となった。従って、温度差のしきい値としてプラスの値で10℃未満の値を予め定めておけば、温度差がしきい値よりも高くなったときに「異物付着あり」と判断することにより、異物付着の検出漏れもなく、誤検出もなく、良好な検出が可能となることがわかった。
【0020】
上記図2(d−1)(d−2)の例では、検査領域14として底部12を含む領域を選択した。これに対し、図2(c)のように検査領域14として底部12を含まない領域を選択しても良い。異物付着ありのときは凹部の頂点11の温度が検査領域14における最高温度であって検査温度として選択され、図4の◆と同じ分布を示す。一方、異物付着なしの場合には、検査領域内の最高温度は底部の温度より低い温度となるので、検査温度は基準温度(底部の温度)より低く、「温度差」はマイナスとなり、図4のX軸より下方に分布することとなる。従ってこの場合も、温度差のしきい値としてプラスの値で10℃未満の値を予め定めておけば、温度差がしきい値よりも高くなったときに「異物付着あり」と判断することにより、異物付着の検出漏れもなく、誤検出もなく、良好な検出が可能となる。
【0021】
基準領域13の定め方としては、少なくとも底部12の一部を含み凹部の頂点11を含まない任意の領域とすることができる。ただし、基準領域13の境界が凹部の頂点11の極めて近くとなると、凹部の頂点11の温度を基準領域内の温度と誤認する可能性があるので好ましくない。好ましくは、基準領域13の上方側(底部と反対側)の境界を、底部からの距離で凹部高さHの2/3程度とすると良い。底部からの距離が凹部高さHの1/3程度とするとより好ましい。また、剪断加工工具の幅方向については、剪断加工工具の全幅の領域を基準領域とすることにより、底部のうちで最も高い温度を示した部分を基準温度とすることができ、好ましい。ただし、底部の温度は幅方向でそれほどの大きな偏差を生じないので、底部のうちの一部のみを含む領域を基準領域としてもかまわない。
【0022】
剪断加工工具の表面温度測定のための温度計として、二次元平面的に温度測定が可能な非接触の温度計を用いることができる。具体的には、サーモピクスカメラ又はサーモトレーサの中から選択すると良い。
【0023】
また、検査領域14は基準領域13を包含することとすれば、図4(a)に示すように、異物付着がないときには検査温度として底部温度が選択されるので基準温度と等しくなり、検査温度と基準温度の差がゼロと表示されるのでわかりやすい。
【0024】
剪断加工工具への異物付着ありの判定は、「温度差=検査温度−基準温度」と予め定めたしきい値との対比によって行い、温度差がしきい値よりも高いときには異物付着ありと判定する。しきい値としては、プラスの値で10℃未満の値であれば良い。1〜5℃の範囲内の値とするとより好ましい。
【0025】
本発明の異物付着監視装置においては、図1に示すように、剪断加工工具2表面の温度を測定する温度計8と、温度計8の温度測定結果を演算する演算装置9とを有する。温度計8は、棒状の金属を剪断加工した後に、剪断加工工具2の基準領域と検査領域を含む表面の温度を測定する。演算装置9では、温度計8の測定結果を受信し、基準領域13内の最高温度を基準温度、検査領域14内の最高温度を検査温度とし、前記検査温度が、前記基準温度に予め定めた一定温度を付加した温度よりも高温となったときに異物付着ありとして信号を発する。信号として電気信号を発出し、剪断加工装置の制御装置に入力することにより、異物付着時は自動的に剪断加工装置の運転を止めることができる。また、信号として発光表示あるいは音による表示を行うことにより、操作者に異物付着を知らせ、操作者が剪断加工装置の運転を止めることもできる。
【実施例】
【0026】
図3に示すような、棒鋼の熱間圧延設備の冷却床出口に配置されたコールドシャーにおいて、本発明を適用した。剪断加工する棒鋼のサイズはφ19mm〜φ120mmの範囲であり、上刃物(剪断加工工具)と下刃物にはそれぞれ棒鋼のサイズに応じて3〜16個の凹部が配置されている。剪断加工工具の幅は10〜115mmである。剪断加工される圧延製品の温度は5〜500℃の範囲内にある。
【0027】
剪断加工工具の表面温度を測定する温度計8としてサーモピクスカメラを用い、図1に示すように配置した。剪断加工工具2と温度計8との距離は4775mmである。角度は材進逆方向より11.3°である。剪断加工工具2が上限の待機状態にあるときに、剪断加工工具2のすべての凹部10と底部12の全体を視野として二次元の温度分布を計測することができる。剪断加工工具表面における温度測定の解像度は320×240ドット、温度の測定精度は±2℃程度である。
【0028】
基準領域13、検査領域14として図2(d−1)(d−2)に示す領域を選択し、「温度差=検査温度−基準温度」と対比するしきい値として10℃を選択した。その上で、実際の剪断加工において本発明方法を適用したところ、剪断加工7840回の剪断加工において、異物付着ありを970回検出し、付着した異物を検出できなかった頻度はゼロ回、異物が付着していないのに異物付着ありと誤検出した頻度が15回であった。
【0029】
これに対し、従来方法として画像での目視確認による判定方法を適用した場合には、剪断加工6110回の剪断加工において、付着した異物を検出できなかった頻度が4回あった。異物が付着していないのに異物付着ありと誤検出した頻度は数多くあった。
【0030】
剪断加工工具の上刃物に異物が付着したときにその付着を検出できないと、この異物により圧延製品に凹状の疵がプリントされ、製品品質不良となるため最も好ましくない。付着した異物を検出できなかった頻度が、従来方法では4回発生したのに対して本発明法ではゼロ回であり、本発明によって製品品質を大幅に向上することができた。
【符号の説明】
【0031】
1 圧延製品(棒状の金属)
2 上刃物(剪断加工工具)
3 下刃物
4 上刃用刃物台
5 下刃用刃物台
6 ストッパー
7 押さえ装置
8 温度計
9 演算装置
10 凹部
11 凹部の頂点
12 底部
13 基準領域
14 検査領域
15 剪断時進行方向
21 付着異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の金属を剪断加工するための剪断加工工具は棒状の金属が当接する凹部を有し、該剪断加工工具を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、剪断加工工具に付着する異物を検出する異物付着検出方法であって、
剪断加工工具表面のうち、剪断時進行方向の先端に位置し凹部を含まない部分を底部とし、凹部のうち剪断時進行方向の反対側先端部分であって棒状の金属と接する部分を凹部の頂点とし、
剪断加工工具表面のうち、少なくとも底部の一部を含み凹部の頂点を含まない任意の領域を基準領域として定め、少なくとも凹部の頂点を含む任意の領域を検査領域として定め、
棒状の金属を剪断加工した後に、剪断加工工具の基準領域と検査領域を含む表面の温度を測定し、前記基準領域内の最高温度を基準温度、検査領域内の最高温度を検査温度とし、
前記検査温度が、前記基準温度に予め定めた一定温度を付加した温度よりも高温となったときに異物付着ありと判定することを特徴とする異物付着検出方法。
【請求項2】
前記剪断加工工具の表面温度測定は、二次元平面的に温度測定が可能な非接触の温度計を用いることを特徴とする請求項1に記載の異物付着検出方法。
【請求項3】
前記検査領域は前記基準領域を包含することを特徴とする請求項1又は2に記載の異物付着検出方法。
【請求項4】
棒状の金属を剪断加工するための剪断加工工具は棒状の金属が当接する凹部を有し、該剪断加工工具を用いて棒状の金属を剪断加工するに際し、剪断加工工具への異物付着有無を監視する異物付着監視装置であって、
該異物付着監視装置は、剪断加工工具表面の温度を測定する温度計と、該温度計の温度測定結果を演算する演算装置とを有し、
剪断加工工具表面のうち、剪断時進行方向の先端に位置し凹部を含まない部分を底部とし、凹部のうち剪断時進行方向の反対側先端部分であって棒状の金属と接する部分を凹部の頂点とし、
予め、剪断加工工具表面のうち、少なくとも底部の一部を含み凹部の頂点を含まない任意の領域を基準領域として定め、少なくとも凹部の頂点を含む任意の領域を検査領域として定め、
前記温度計は、棒状の金属を剪断加工した後に、剪断加工工具の基準領域と検査領域を含む表面の温度を測定し、
前記演算装置は、前記温度計で測定した温度のうち、前記基準領域内の最高温度を基準温度、検査領域内の最高温度を検査温度とし、前記検査温度が、前記基準温度に予め定めた一定温度を付加した温度よりも高温となったときに異物付着ありとして信号を発することを特徴とする異物付着監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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